立体画像印刷装置
【課題】光学素子そのものを印刷技術により形成し、印刷画像と光学素子の位置精度向上による画質改善を図ることができる立体画像印刷装置を提供することにある。
【解決手段】立体画像印刷装置においては、用紙が搬送方向に沿って搬送され、この搬送される用紙にインジェットで画像が形成され、他の搬送路から供給された透明シートが用紙上に重ね合わされる。この透明シートには、画像に対応する配置で画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とするシリンドリカルレンズが搬送方向に延出されるように同様にインクジェットで形成される。用紙と透明シートとは、搬送方向に回転する熱圧着ローラで圧着されて貼り合わせ固定される。
【解決手段】立体画像印刷装置においては、用紙が搬送方向に沿って搬送され、この搬送される用紙にインジェットで画像が形成され、他の搬送路から供給された透明シートが用紙上に重ね合わされる。この透明シートには、画像に対応する配置で画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とするシリンドリカルレンズが搬送方向に延出されるように同様にインクジェットで形成される。用紙と透明シートとは、搬送方向に回転する熱圧着ローラで圧着されて貼り合わせ固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイを介して立体画像として認知可能な画像をインクジェット記録技術によってレンズアレイとともに記録媒体上に形成した立体画像表示シートを作成する立体画像印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を立体的に観察できる立体視の方式には、種々の方式があり、静止画のみならず、動画をも立体視可能な立体視画像表示装置、所謂、3次元ディスプレイが出現している。特に、近年、フラットパネルタイプで、且つ、専用の眼鏡等を必要としない方式の要望が高く、このタイプの立体視画像表示装置が開発されている。
【0003】
立体視画像表示装置としてホログラフィの原理を利用する方式が知られる他、2眼式、多眼式、超多眼式(多眼式の超多眼条件)、インテグラルフォトグラフィー方式(IP方式とも称せられる。)が知られている。これらの方式には、直視型或いは投射型の液晶表示装置或いはプラズマ表示装置等のように画素位置が固定されている表示パネル(表示装置)の直前に表示パネルからの光線を制御して観察者に向ける光線制御素子が設置され、比較的容易に立体視画像を表示することができる立体視画像表示装置がある。
【0004】
光線制御素子は、一般的にはパララクスバリア或いは視差バリアとも称せられ、光線制御素子上の同一位置でも角度により異なる画像が見えるように光線を制御している。具体的には、左右視差(水平視差)のみを与える場合には、スリット或いはレンチキュラーシート(シリンドリカルレンズアレイ)が用いられ、上下視差(垂直視差)も含める場合には、ピンホールアレイ或いはマイクロレンズアレイが用いられている。
【0005】
特に、基本的な原理が100年程度前に発明され立体写真に用いられてきたものと実質上同一であるインテグラルフォトグラフィー方式(以下、IP方式と称する。)は、視点位置の自由度が高く、楽に立体視できるという特徴があり、解像度の高い立体表示の実現も比較的容易であるとされている。水平視差のみで垂直視差のない1次元IP方式が例えば、非特許文献1に記載されている。
【0006】
IP方式に対して2眼方式或いは多眼方式は、立体視できる視点位置の範囲、即ち、視域が狭く、見にくいという問題があるが、立体画像表示装置としての構成は、最も単純であり、表示画像も比較的簡単に作成できる特徴がある。
【0007】
このようにディスプレイを利用した動画を立体視可能な表示装置に対し、静止画像を表示する印刷、写真分野において代表的な立体画像記録技術としてレーザ光の干渉原理を用いたホログラフィ技術が同様に知られている。しかし、レーザ光学システム或いは記録媒体に求められる画像解像力が非常に高いため、簡易でかつ印刷コストを抑えたシステムでは、立体視画像を記録できない問題がある。
【0008】
一方、上述したインテグラルフォトグラフィー方式(IP方式と称する。)は、写真技術から発生したこともあり、広い分野に適用することができる。既存のIP方式の印刷システムにおいては、予め製造されたレンチキュラーシート等が用いられ、その光学仕様に適合した画像データがレンチキュラーシート上に印刷されて立体画像が記録形成されている立体画像表示シートを作成することができる。また、既存印刷装置では、用紙などの媒体に画像が印刷された後に、レンチキュラーレンズがこの媒体に張り合わせられて立体画像が記録されている立体画像表示シートが作成される。また、特許文献1に記載されるように、直接レンチキュラーレンズの背面に立体画像情報が印刷されて立体画像が記録されている立体画像表示シートが作成されている。
【0009】
尚、IP方式は、写真に限られないことから、インテグラルイメージング方式(II方式)とも称せられる場合がある。
【0010】
IP方式においては、光学素子であるレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズのアレイピッチに用紙上に記録形成した画像が精度よく一致していることが要求されている。この要求を充足しない場合には、表示される画像に縞状のむら、所謂モアレが発生し、画像が不鮮明(ぼけ)になる等の不具合が発生する。しかし、既知の印刷装置にて実現されている立体画像表示シートでは、樹脂の成型により製造されたレンチキュラーシート等が用いられ、シート製造時の絶対位置精度、環境温度変化によりシートの伸縮などから、レンチキュラーシートと用紙上に印刷された画像位置を精度良く合致させることが困難である問題がある。従って、印刷される立体画像の品質が劣っている印刷物しか提供することができず、立体画像普及の妨げになっている。
【0011】
このレンチキュラーレンズと印刷画像の高精度位置合わせを実現するひとつの方法として、特許文献2においては、レンチキュラーシートのレンズ位置を検知して、検知信号に従って画像記録位置を合わせる方法が提案されている。この方式では、高精度なレンズ位置検出が要求され、このような高精度なレンズ位置検出が最大の課題とされている。
【0012】
また、特許文献3には、上記課題を解決するひとつの方法として、立体画像情報をインクジェット記録ヘッドにより印刷した用紙表面にレンチキュラーレンズを形成する為の他のインクジェット記録ヘッドを設けることが開示されている。この方式は、立体画像の印刷におけるレンズ位置と画像位置との高精度位置合わせを達成する方法のひとつと考えられる。しかし、様々なパターンの画像が印字され、画像記録用のインクが散布されている用紙表面は、表面性状が一様でなく、一様なレンズ形状を用紙上の全域に亘って均一に形成することに困難が伴い、レンチキュラーレンズ等をインクジェット記録用紙上に精度良く形成することが困難である問題がある。特に、特許文献3中にも記述されるように記録部材の表面に画像を記録し、その裏面にレンチキュラーレンズを形成することで、夫々のインク材料の付着性に合致した記録媒体表面の受容層とするような工夫が必要になる。また、インクジェット方式により形成されるレンチキュラーレンズには、次のような問題もある。レンチキュラーレンズは、通称カマボコレンズとも称せられるように多数のシリンドリカルレンズが隣接配置された形状を有している。記録される画像は、各シリンドリカルレンズの焦点位置に配置されることが望ましく、レンズの曲面部に対し一定の距離だけ離れた位置に立体印刷画像を配置する必要がある。このため、レンチキュラーレンズは、厚膜シート表面に凹凸が与えられた形状に形成される。このような形状をインクジェット記録方式により形成する場合、インクドロップレットにより曲面部を形成する以前に、曲面部体積より数倍〜数十倍の体積の厚膜層を形成することが要求される。
【0013】
インクジェット記録方式では、レンチキュラーレンズの曲面部のみを形成することは比較的容易に可能であるが、その下部の厚膜層が形成され、この厚膜層上に曲面部を形成することはインクを突出(インクジェット)して記録する性格上かなりの困難を伴うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−022091
【特許文献2】特開平8−137034
【特許文献3】特許第3555420号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Proc SPIE 6392, pp.639209, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、従来の立体画像形成装置(立体画像印刷装置)で作られた立体画像表示シートでは、立体画像視を可能とする光学素子と印刷画像との位置合わせを高精度化することができず、高い画質の立体画像を形成できないという問題がある。また、この立体画像印刷装置は、光学シートの搬送及び張り合わせなどの付帯設備が必要になるなど装置が大型化する問題がある。
【0017】
また、印刷画像表面に直接レンチキュラーレンズ等の光学素子が形成されている立体画像表示シートでは、均一な光学素子の形成が困難であり、厚膜化に困難が伴い、高い画質の立体画像を形成できないという問題がある。
【0018】
この発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、光学素子そのものを印刷技術により形成し、印刷画像と光学素子の位置精度向上による画質改善を図り、また、予め形成された光学素子の準備を不要として立体画像を表示することができる立体画像表示シートを作成する簡素な構造の立体画像印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による第1の態様は
画像を記録するための媒体搬送機構を設けており、この画像記録媒体に画像を記録するための記録手段と設けて画像を記録する。
【0020】
一方、光線制御素子を形成するための媒体搬送機構を設けて、この光線制御素子媒体に光線制御素子を形成するための形成手段を設けて光線制御素子を形成する。
【0021】
画像記録媒体表面に前記記録手段によって形成した画像表面に、光線制御素子形成手段によって光学素子を形成した光線制御素子媒体を張り合わせることを特徴としている。
【0022】
本発明による第2の態様は
先の光線制御素子は、シリンドリカルレンズアレイであることを特徴としている。
【0023】
本発明による第3の態様は
先の光線制御素子は、マイクロレンズアレイであることを特徴としている
マイクロレンズアレイはフライアイレンズとも蝿の目レンズとも呼ばれる。
【0024】
本発明による第4の態様は
先の光線制御素子を形成するための形成手段は、光線を制御するためのインクをノズルから突出するインクジェットヘッドと、前記インクを前記インクジェットヘッドへ供給する供給手段と、前記インクジェットヘッドからのインクの突出を制御するためのインクジェットヘッド制御手段にて構成することを特徴としている
本発明による第5の態様は
前記光線制御素子を形成するための形成手段は、光線を制御するためのインクをノズルから突出するインクジェットヘッドと、前記インクを前記インクジェットヘッドへ供給する供給手段と、前記インクジェットヘッドからのインクの突出を制御するためのインクジェットヘッド制御手段と、前記インクが前記媒体に付着した後、前記インクを硬化するための硬化手段にて構成することを特徴としている
本発明による第6の態様は
画像を記録するための媒体を搬送する手段とこの画像記録媒体に画像を記録するためのインクジェット形成手段を設けて画像を記録する。
【0025】
光線制御素子を形成するための媒体を搬送する手段とこの光線制御素子媒体に光線制御素子を形成するためのインクジェット形成手段を設けて光線制御素子を形成する。
【0026】
画像記録媒体表面に前記インクジェット形成手段によって形成した画像表面に、光線制御素子を形成するためのインクジェット形成手段によって光学素子を形成した光線制御素子媒体を張り合わせる手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の立体画像印刷装置によれば、光学素子と印刷画像の位置精度が高く、画質の高い立体画像を実現することが可能となる。また、立体視画像を形成するための光学素子を画像中の任意の領域に形成することが可能となるため、全画像の一部領域のみ立体視画像とすることも可能となる。また、光学シートなどの搬送、張り合わせ装置が不要になるため簡素な装置で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る立体画像印刷装置の全体構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図1に示される立体画像印刷装置において立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す斜視図である。
【図3】図2に示される画像形成部で作られる立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。
【図4】図2に示される画像形成部における立体画像表示シートの製造工程を概略的に示す斜視図である。
【図5】図1に示される立体画像印刷装置の画像形成回路を概略的に示すブロック図である。
【図6】(a)及び(b)は、図2に示されるヒートローラにおける立体画像表示シートの製造過程を概略的に示す一部正面図及び斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は、比較例に係るヒートローラにおける立体画像表示シートの製造過程を概略的に示す一部正面図及び斜視図である。
【図8】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートの断面構造を概略的に示す断面図である。
【図9】比較例に係る立体画像表示シートの断面構造を概略的に示す断面図である。
【図10】図1に示される立体画像印刷装置の変形例に係る立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す模式図である。
【図11】図1に示される立体画像印刷装置の他の変形例に係る立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す模式図である。
【図12】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートにおける光線軌跡を概略的に示す模式図である。
【図13】図12に示される立体画像表示シートの光線制御素子としてのレンチキュラーシートを概略的に示す斜視図である。
【図14】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートにおける立体画像の表示原理を説明する為の光線軌跡を示す展開図である。
【図15】図12に示される立体画像表示シートにおけるレンチキュラーレンズと要素画像との関係を概略的に示す斜視図である。
【図16】図2に示される画像形成部で作られる他の形態の立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。
【図17】図16に示される他の形態に係る立体画像表示シートの1例を概略的に示す平面図である。
【図18】図16に示される他の形態に係る立体画像表示シートの改良例を概略的に示す平面図である。
【図19】図5に示されるインクジェット駆動回路であって図18に示される立体画像表示シートを作成する為に画点数を増加させるインクジェット駆動回路を概略的に示すブロック図である。
【図20】(a)〜(e)は、図19に示されるインクジェット駆動回路に入力される信号を示す波形図である。
【図21】(a)〜(h)は、図19に示されるインクジェット駆動回路に入力されるビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンに従って発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る立体画像表示シートを製造する為の立体画像印刷装置について詳細に説明する。
【0030】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係+る立体画像印刷装置を示している。この立体画像印刷装置によって立体画像表示シート(立体視シート)が形成される。この立体画像表示シートは、レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズアレイ(両者を含めて単にレンズアレイと称する。)が記録媒体としての用紙10上に設けられて、レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズアレイを介して用紙10上に印刷された画像を立体画像として観察することができる。立体視の方式には、上述したように種々の方式があるが、この明細書では、主にIP方式(インテグラルフォトグラフィー方式)に係る画像が立体画像表示シートに印刷されているものとして以下に説明する。しかし、IP方式に係る画像が立体画像表示シートに印刷されている場合に限らず、多眼方式(2眼方式を含む。)に係る画像が立体画像表示シートに印刷される立体画像表示シートの作成にも適用することができることは、明らかである。
【0031】
図1に示される立体画像印刷装置は、複数枚の記録媒体10(以下単に用紙10と称する。)が格納されている用紙カセット11を備え、用紙カセット11の最上面の用紙10は、ピックアップローラ12に接触可能に配置され、ピックアップローラ12に接触されて一枚毎に搬送ローラ13,14に取り出される。取り出された用紙10は、搬送ローラ13,14によって搬送ベルト15へと搬送される。用紙10は、用紙カセット11に限らず、手差し台9から手差で搬送ローラ13,14に供給され、搬送ベルト15に搬送されても良い。
【0032】
搬送ベルト15の搬入口には、表面にバイアス電圧が印加されているチャッキングローラ16が設けられ、チャッキングローラ16によって用紙10に静電気が与えられて搬送ベルト16の表面に付着される。搬送ベルト15上には、用紙10に画像を形成するためのインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が搬送ベルト15に対向して配置されている。インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4には、夫々インクタンク21−1、21−2、21−3、21−4からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のインクがインク供給機構(図示せず)により供給され、用紙10にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の画点でインク画像を形成している。各インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4は、用紙10の搬送方向に直交する方向に沿って配置された多数のノズルを備えている。このインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4には、一例として、東芝テック製インクジェットヘッドCE2があり、このインクジェットヘッドのヘッドユニットは、636ノズルを有し、ヘッドユニットを用紙幅方向にライン状に4個配列してA4サイズ用紙へ300dpiで画像を形成することができる。
【0033】
インクジェットヘッドにおけるインクを突出させる原理等に関しては、多数の参考文献、例えば、第63回日本画像学会技術講習会、PP111、2007.7.19に記載されている。インクジェットヘッドは、公知技術であることから、ここでは詳述しないものとする。以下の説明では、インクジェットヘッドは、圧電素子の逆圧電効果によりその微細なノズルからインクを噴出する方式で画像を印刷するものとする。この4色のインクを突出するインクジェットヘッドにより、用紙10上には、フルカラーの画像が形成される。この形成されるフルカラーの画像は、後に説明するようにIP方式(II方式)にあっては、立体視のための多数の要素画像に相当し、この要素画像が光学素子(レンチキュラーレンズ)の光学特性に合致され、多角度から見た画像情報を融合した画像に相当している。レンチキュラーレンズを介してこれら要素画像を目視することによって画像を立体視することができる。
【0034】
4連のインクジェットヘッドにより表面に画像が形成された用紙10は、搬送ベルト15によって搬送され、レンチキュラーレンズを形成するための透明フィルム100がこの用紙10にローラ104により重ね合わされる。透明フィルム100は、二層構造に形成され、第1層の基材がポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で作られ、この基材上には、第2層としての熱可塑性樹脂が塗布され、この熱可塑性樹脂の面は、画像が記録された用紙の表面に接触され、後に述べる熱処理により貼り付けされている。本実施例においては、透明フィルム104は、図1に示されるようにロール状のロールフィルム101として用意され、このロールフィルム101は、搬送ローラ102によって用紙10をも搬送するローラ104に搬送される。この搬送過程でロールフィルム101は、画像記録用紙10の長さに応じてカッター103によって裁断され、例えば、用紙10と同一サイズに裁断調整されてローラ104で用紙10に張り合わされる。
【0035】
透明フィルム100が画像記録面に重ね合わされた用紙10は、光学素子としてのレンチキュラーレンズを形成するインクジェットヘッド30に対向される位置に搬送される。インクジェットヘッド30は、カラーインクを噴出するインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と同一のヘッドを本実施例では用いている。このインクジェットヘッド30は、必ずしも同一のヘッドである必要はないが、供給するインクは、画像記録用インクジェットヘッドとは異なり、紫外線を照射すると瞬時に硬化するUV硬化性インクが採用されている。このインクは、アクリル等からなる透明インクであり、ノズルから噴出される液滴量をコントロールすることで、用紙10上のインク付着部分に適切なメニスカスを有したレンズ形状の屈折部を形成することができる。
【0036】
立体視のために必要な光学素子は、画像記録された用紙10に重畳した透明フィルム100の表面上にインクジェットヘッド30により図3及び図4に示されるように形成される。図3には、カラーインクにより形成された画像50の表面に透明フィルム100が重畳され、透明フィルム100上にレンチキュラーレンズ51が形成されてレンチキュラーシート120が形成される様子が示されている。また、図4には、UV硬化性インクがインクジェットヘッド30から透明フィルム100上に噴出されてレンチキュラーシート120が形成される様子が示されている。用紙10上に形成された画像は、レンチキュラーシート120のレンチキュラーレンズ51を介して立体画像として外部から認識される。
【0037】
ここで、レンチキュラーシート120のレンチキュラーレンズ51は、図3及び図4に示されるように用紙10の搬送方向に沿って延出するように(レンチキュラーレンズ51の長手方向が用紙10の搬送方向に一致される。)インクジェットヘッド30によって形成され、また、各レンチキュラーレンズ51に対向して形成される画像50の要素画像も搬送方向に対して略直交する方向(或いは斜めに交叉する方向に)後に説明する各要素画像を構成する視差画像が配列されるようにインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4によって形成される。換言すれば、後に述べる各視差画像は、搬送方向に沿って(或いは、搬送方向に対して斜めの方向に沿って)延出されるように形成される。
【0038】
光学素子形成用のインクジェットヘッド30の近傍には、図1及び図2に示されるように紫外線ランプユニット40が配設されている。紫外線ランプユニット40としては、365nmを主波長とした水銀ランプを用いることができる。この紫外線ランプユニット40によってインクジェットヘッドにより記録された光学素子は、レンチキュラーレンズとして固定化される。また、紫外線ランプユニット40の搬送方向後段には、搬送ローラ102から供給された用紙10及び透明フィルム100を加熱処理によって貼り合わせるヒートローラ対110が配置されている。ヒートローラ対110は、用紙10及び用紙10上に重ねられた透明フィルム100を挟み込む上下のローラから構成され、下側ローラの内部には、ハロゲンランプなどの加熱源が配置されている。下側ローラの表面温度は、温度検知素子(図示せず)によって検知されてハロゲンランプへの電力供給が制御されて下側ローラの表面温度が一定に維持される。より詳細には、下側ローラは、基体及び表面層から構成され。基体がアルミ中空パイプで形成され、この基体表面を被覆する表面層がシリコンゴム等で形成されている。下側ローラは、図示しない駆動機構で駆動され、一定速度で下側ローラが回転されることにより用紙10及び透明フィルム100が加熱されながら搬送される。ヒートローラ対110の上側ローラは、下側ローラに従動されて回転され、紫外光により半硬化されるレンチキュラーレンズが圧接により変形しないように、即ち、かまぼこ型のレンチキュラーレンズがつぶれないように、ゴム硬度の低いゴムローラで形成されている。また、レンチキュラーレンズは、ヒートローラ対110により十分にレンチキュラーレンズが硬化されるよう加熱される。更に、ヒートローラ対110による透明フィルム100及び用紙10の加熱により、透明フィルム100の用紙表面側の熱可塑性樹脂が溶融されて用紙10に接着されて透明フィルム100と用紙10とが確実に一体化された立体視シート(立体画像表示シート)が製造される。
【0039】
図4に示すように光学素子形成用インクジェットヘッド30によりレンチキュラーレンズが形成されるが、この形成工程では、配列されたノズル中から選定された特定ピッチ毎のノズルからUV硬化性インク60が連続的に噴出されるようインクジェットヘッドが制御されてシリンドリカルなレンズが形成される。図4には、ノズルが一列に配置されているインクジェットヘッド30が示されているが、シリンドリカルなレンズ形状を与える為にノズルが複数列に亘って配置されている単一のインクジェットヘッド30或いは複数のインクジェットヘッド30が設けられても良い。インクの粘性に応じて複数回に亘ってインクをジェット噴射してレンズをシリンドリカル形状に成形することができる。インクが透明フィルム100上にシリンドリカル形状に滴下された状態では、UV光が照射される前にあることから、インクが硬化されていない形状が不安定な状態にあり、形状をそのままに維持することができない虞がある。従って、インクジェットヘッド30により形成されたインク滴は、直ちにUV光が照射されて硬化することが好ましく、この観点から、紫外線ランプユニット40は、光学素子形成用インクジェットヘッド30のノズル内のインクを硬化させることなく、透明フィルム100上のインク滴を即座に硬化させることができるように光学素子形成用インクジェットヘッド30の近傍に配置されることが好ましく、また、UV光がインクジェットヘッド30のノズル開口部を直接照射して、インクによる目詰まりなどを抑制するためUV光がノズル開口部に向けられることを遮断する遮光部材(図示せず)が設けられることが好ましい。
【0040】
図1に示される立体画像印刷装置は、図5に示すような駆動システムを備えている。このシステムにおいては、立体画像印刷装置の各部がメインコントローラ201によって制御される。即ち、メインコントローラ201からは、制御信号が駆動回路203に与えられ、駆動回路203からは、駆動信号がモータ駆動回路205に与えられてモータ駆動回路205によって各部のモータ204が駆動制御される。このモータ204の駆動制御に基づいてモータ204によって駆動されるピックアップローラ12、搬送ローラ13,14、チャッキングローラ16、搬送ベルト15及びヒートローラ対110等が駆動制御される。これら用紙搬送機構に関係する駆動に限らず、インク検知に基づくインクの供給機構の駆動制御が同様に実行される。
【0041】
また、このメインコントローラ201には、装置外のコンピュータ(PC)200から画像情報信号が供給される。このコンピュータ(PC)200は、印刷する画像データを保持して画像情報信号として出力している。このコンピュータ(PC)200は、立体画像印刷装置が複写システムに適用される場合には、複写システムに格納されたコンピュータであっても良く、この観点からは、コンピュータ(PC)200は、立体画像印刷装置に備えられても良く、コンピュータ(PC)200の外部から画像情報信号がこのコンピュータ(PC)200に入力されても良い。
【0042】
メインコントローラ201からは、画像情報信号が画像処理回路202に供給されて1フレームを構成する立体画像表示用の要素画像或いはフレーム画像に変換される。この変換された要素画像或いはフレーム画像の各色成分映像信号がインクジエット制御回路207に供給される。また、PC200からの立体画像表示シートの生成指示に基づいてメインコントローラ201からレンズパターン信号が画像処理回路202に与えられ、画像処理回路202において、要素画像或いはフレーム画像に対応したレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズを形成するためのレンズ生成信号がインクジェット制御回路207に供給される。インクジェット制御回路207では、各色成分映像信号及びレンズ生成信号に基づいてインクジェット駆動回路80を制御して各色成分映像信号及びレンズ生成信号に対応する駆動信号がインクジェット駆動回路80からインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4及びインクジェットヘッド30に供給される。従って、インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が駆動され、インクが吐出されて用紙10上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画点が形成されて画像が印刷される。また、インクジェットヘッド30が駆動されて透明シート100上にレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズが用紙10上に形成された画像に対応して形成される。
【0043】
上述したシステムにおいては、インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4は、用紙10が搬送される速度及びインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4の設置間隔から決定されるディレイ時間だけ駆動タイミングがずらされて駆動される。その結果、搬送される用紙10上に各色の画点(ドット)が視差画像を形成するようにカラー画像が形成される。レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズを形成するためのインクジェットヘッド30も同様に画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と同様に駆動される。
【0044】
インクジェットヘッド30によりマイクロレンズアレイを形成する場合には、画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4の設置位置と光学素子形成用インクジェットヘッド30の設置位置から決定される離間間隔及び用紙10が搬送される速度から決まるディレイ時間だけずらしてインクジェットヘッド30が駆動され、形成されたカラー画像の所定のドット位置に対して正確にマイクロレンズの形成位置が合わされてマイクロレンズが形成される。また、用紙の搬送方向に延出されるレンチキュラーレンズの形成にあっては、必ずしも画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と光学素子形成用インクジェットヘッド30の駆動タイミングを正確に一致させることは必要ない。レンチキュラーレンズの形成においては、インクにより形成された画像位置をオーバラップするようにレンチキュラーレンズが形成されれば良く、夫々インクジェットヘッド駆動タイミングのディレイを決定すれば良い。
【0045】
上述したように、立体画像印刷装置では、レンチキュラーレンズ51が用紙搬送方向に沿って延出した形状に形成されているが、このようにレンチキュラーレンズ51が形成されることによって、印刷最終工程において、ヒートローラ110でレンチキュラーレンズ51が加熱されてもその形状を維持することができる。即ち、レンチキュラーレンズ51を形成するUV硬化インクは印刷工程においてUVランプの照射を受けても、完全硬化には至らず半固定状態にある。このUV硬化インクは、ヒートローラ110により加熱して完全固定化を施すが、本実施例のようにレンチキュラーレンズ51を用紙搬送方向に伸直するよう形成すれば図6(a)及び(b)に示すようにヒートローラ110との接触部における接触圧力が複数のレンズに分散し、半固定状態のUVインクによるレンズ形状がつぶれずにその形状を維持することができ、レンチキュラーレンズ51が良好な立体画像を作像することができる。
【0046】
仮にこれと直交する方向にレンチキュラーレンズを形成した場合には、図7(a)及び(b)に示すようにヒートローラ110の接触圧がレンズ一つ一つに集中し、レンズ形状が変形してしまい良好な立体画像を得ることができなくなる。
【0047】
画像50を立体視する為に透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズ51を形成されている構造が立体画像表示シートに好適する理由について、図8及び図9を参照して説明する。ここで、図8は、透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズを形成した立体画像表示シートの構造を示し、図9は、比較例に係る透明フィルム100とレンチキュラーレンズとが一体的に形成されている立体画像表示シートの構造を示している。
【0048】
レンチキュラーレンズの光学特性を満足するためのレンズ形状は、次のようなディメンションを備えている。レンチキュラーレンズのピッチPeが大きいとレンチキュラーレンズの存在が意識され、また、画像の精細度が低下するため、この観点からはピッチPeは、できるだけ小さいほうが望ましい。一方、立体画像を滑らかに表示させるためには、一つのレンズに対向される要素画像内には、できるだけ多数の視差画像が記録される必要がある。従って、いたずらにレンチキュラーレンズのピッチを細かくしても、記録するインクジェットヘッドのプリント解像度に限界がある以上、レンチキュラーレンズのピッチには、制約が生じる。
【0049】
既存インクジェットヘッドの解像力は、1インチ当たり1200ドット程度が現実的であり、この場合、1ドットの大きさは、約0.021mmとなる。レンチキュラーレンズのピッチPeは、0.5mm程度より小さくなるとレンズ間の境目によるスジが目立たなくなるため、これ以下のピッチが望ましい。これらのことを考慮して、本実施例では、レンズピッチPeを0.5mmに近く設定することとし、1200dpiインクジェットヘッドで形成することとして、レンチキュラーレンズのピッチPeをその整数倍にあたる0.504mmとしている。即ち、24ドットで1個のレンチキュラーレンズを形成することとしている。1ドットで1視差を表現することとすると1つのレンチキュラーレンズ内には24視差の画像情報を記録することができる。このように設計の場合、レンチキュラーレンズの形状は、Pe=0.5mm、HL=0.15mm及びHs=0.6mm程度の概算値のディメンションを有することとなる。透明フィルム100の厚みHsは、0.6mmに設定される。また、レンチキュラーレンズ51のレンズ高HLは、0.15mmに設定される。
【0050】
比較例として、このようなディメンションを有するレンチキュラーレンズ51及び透明フィルム100を図9に示されるようにインクジェットヘッドから吐出されるUV硬化特性を有するインクのみで形成する場合、透明フィルム100に相当するだけの圧膜Hsを形成する必要が生じる。レンチキュラーレンズ51及び透明フィルム100をインクジェットヘッドで形成するには、多量のインクが必要とされ、また、吐出した表面にレンズ形状を形成することが必要とされる。従って、非常に難度の高いプリンティング技術が要求される。この比較例のように、レンチキュラーレンズ51のみならず、透明フィルム100をもインクジェットヘッドで形成することは現実的でなく、上述したように、予め用意した透明フィルム100上にレンチキュラーレンズ51を形成することが実際的な立体視シート(立体画像表示シート)の製造に適している。
【0051】
尚、本実施例では、シリンドリカルなレンズがアレイ状に配列されたレンチキュラーレンズが採用され、一方向(例えば、左右の水平方向)にのみに視差が与えられている立体画像が表示される。従って、既に述べたように要素画像には、一方向(例えば、左右の水平方向)のみの視差画像が水平方向に配列される。
【0052】
水平及び垂直の2方向(上下、左右)に亘って立体画像を表示させることも可能である。2方向に亘る立体画像の表示では、要素画像内に2方向に亘る視差画像が水平並びに垂直方向に配列され、また、シリンドリカルレンズに代えてマイクロレンズ(フライアイレンズ)が形成される。このマイクロレンズ(フライアイレンズ)にあっても、光学素子形成用インクジェットヘッドによって形成することができる。シリンドリカルレンズを形成する際には、上述したように連続的にUV硬化性インクが噴出されているが、インクが断続的に噴出されることで等ピッチ間隔のマイクロレンズを形成することができる。
【0053】
図10及び図11には、図1及び図2に示された立体視画像印刷装置の変形例が示されている。
【0054】
図10は、図1及び図2と同一構成で、図1及び図2に示したシステムを簡略化している。即ち、図10に示す立体視画像印刷装置では、ロールフィルム101から透明フィルム100が供給されず、カットシートとして用意された透明フィルム100が図示しない透明フィルム供給部から、或いは、手差しでローラ104に供給されている。このようにカットシートとして透明フィルム100が供給されることによってカッター103が不要とされ、装置自体が簡素化される。
【0055】
図11に示す立体視画像印刷装置では、図10に示す装置と同様に透明フィルム100がカットシートとして用意され、搬送ローラ106を介して搬送ベルト15上に供給されている。この搬送ベルト15は、図1に示す搬送ベルト15とは異なり、透明フィルム100の供給路の下方に印刷搬送路部15−1が設けられ、また、透明フィルム100の供給路の下流側にレンズ形成搬送路部15−2が設けられている。印刷搬送路部15−1には、搬送ベルト15に対向してカラーインクを噴出するインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が配置され、レンズ形成搬送路部15−2には、搬送ベルト15に対向して光学素子としてのレンチキュラーレンズを形成するインクジェットヘッド30及び紫外線ランプユニット40が配置されている
図11に示された搬送ベルト15の印刷搬送路部15−1には、図11には示されていない搬送ローラ13,14によって用紙10が搬送され、印刷搬送路部15−1でインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4によって用紙10上に画像が形成される。この画像が形成された用紙10は、レンズ形成搬送路部15−2に向けて搬送方向を変更するベルトローラ15−3上で透明シート100に位置合わせされて用紙10の上面に透明シート100が重ね合わされる。印刷搬送路部15−1においては、用紙10上に載置された透明シート100には、インクジェットヘッド30によってレンチキュラーレンズが形成され、このレンチキュラーレンズが紫外線ランプユニット40からの紫外線で固化される。このレンチキュラーレンズが形成された透明シート100は、用紙10とともにヒートローラ対110に供給されて用紙10及び透明フィルム100が加熱されて両者が一体化される。この図11に示された装置は、図10に示す装置と同様にカッター103が不要とされ、装置自体を簡素化することができる。
【0056】
次に、上述した工程によって形成される立体画像表示シートを外部から視認することによって立体画像を観察することができるIP方式における表示原理について図12〜図15を参照して説明する。ここで、図12〜図15に示されたIP方式では、光線制御素子としてレンチキュラーシート120が用いられていることから、レンチキュラーシートの配列方向、例えば、水平方向の面内で立体視することができ、レンチキュラーシートの延出方向、例えば、垂直方向の面内では、立体視することができない一次元IP方式であることに注意されたい。
【0057】
図12は、立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。用紙10には、前述したようにインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4で各色の画点が高精細で印刷されて多数の要素画像が印刷されている。ここで、要素画像は、視差画像が配列されて構成され、各要素画像は、光線制御素子としてのレンチキュラーシート120の各レンチキュラーレンズに対向されるように形成され、各要素画像が対応するレンチキュラーレンズによって観察者側に投影される。IP方式では、観察者は、予め定められ、略全ての要素画像が投影されている視域内から立体画像表示シートを観察して正しい立体画像を観察することができる。視域内のある観察者位置44では、水平画角41及び垂直画角42の範囲で立体画像表示シートを観察することとなり、この範囲で要素画像内の視差画像が観察者の目に向けられる。従って、立体画像表示シートの前面及び背面の近傍に立体画像が仮想的に形成され、この立体画像が観察される。IP方式では、観察者が視域内で観察位置44を連続的に変更しても観察位置の変更前の立体画像とは異なる立体画像を連続的且つスムーズに観察することができる。ここで、観察位置44の変更に伴い要素画像中の異なる視差画像が次々に観察されて立体画像が観察される。
【0058】
図13は、光線制御素子として透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズ51を印刷して作られたレンチキュラーシート120を示している。水平ピッチPeは、要素画像内の視差画像の配列方向に一致する方向におけるピッチである。レンチキュラーレンズ51は、1次元IPでは、垂直方向(縦方向)に延出されている。ここで、モアレを減少する為にレンチキュラーレンズ51は、垂直方向でなく、垂直方向に対して斜めの方向に延出されても良い。
【0059】
図14(a)〜(c)は、図12に示した立体画像表示シートを基準にして垂直面内及び水平面内における光線再生範囲を概略的に示す展開図である。図14(a)は、立体画像表示シートの正面図、図14(b)は、立体画像表示シートからの光線軌跡を示す平面図及び図14(c)は、立体画像表示シートの側面内における光線軌跡を示す側面図を示している。
【0060】
図14(b)において、光線制御素子としてのレンチキュラーシート120と視距離面43との間の視距離L、視距離L上の視域幅W及びシート120の厚みHsに相当する光学ギャップdが定められれば、レンズ主点を介して視域幅Wが用紙10上に投影された間隔として要素画像の水平ピッチPhが決定される。ここで、IP方式にあっては、光学ギャップdは、レンチキュラーレンズ51の焦点距離に定められ、レンチキュラーレンズ51の焦点が用紙10上に位置されている。符号46は、視点位置と各レンズ中心とを結ぶ線を示し、視域幅Wは、用紙10の面上で要素画像同士が重なり合わないという条件から決定され、立体画像の表示に寄与する要素画像が視距離L上の視域面で互いに重ね合わされるように投影される関係にある。ここで、視域は、立体画像の表示に寄与する要素画像が全て投影される空間として規定され、視域幅W及び視距離Lで規定される。平行光線の組を持つ条件の1次元IP方式にあっては、要素画像の水平ピッチPhの平均値が用紙10上に形成される画点の水平ピッチの整数倍或いはこの整数倍よりわずかに大きく設定され、かつ、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが画素(画点)の水平ピッチの整数倍に等しく定められている。ここで、平行光線の組を持つ条件とは、要素画像からこの要素画像に対向するレンチキュラーレンズを介して射出される複数の光線の夫々は、他の要素画像からこの他の要素画像に対向するレンチキュラーレンズを介して射出される複数の光線の夫々に平行な関係にあり、複数のレンチキュラーレンズの夫々からは、互いに平行な関係で光線が観察者側に向けられていることを意味している。この関係は、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが光点としての画素(画点)の水平ピッチの整数倍に等しく定められている関係から成立している。
【0061】
図15は、図8に示した一次元IP方式の立体画像表示シートの一部分を概略的に示す斜視図である。要素画像48が印刷された用紙10の前面にシリンドリカルレンズアレイ(レンチキュラーシート)120が配置されている様子を示している。図15に示されるように用紙10の表面には、縦横比が3:1の画点34が横方向及び縦方向に夫々直線状にマトリクス状に配置され、各画点34は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のインクで印刷される。この配列は、一般にモザイク配列と呼ばれる。画点ピッチPpを有する画点34の形状が矩形状であるとすると、18列6行の画点34で要素画素が構成される。画点のサイズは、この例では、列方向3Pp及び行方向Ppのサイズを有するように形成され、1つの要素画像が列方向18(3×6)Pp及び行方向18Ppのサイズに形成される。また、IP方式に係るシリンドリカルレンズ51のピッチは、要素画像のピッチ18Ppに等しく形成され、各要素画像には、行方向の画点毎に視差画像が与えられていることから、18視差の視差画像が配分される。このような表示シートの構造では、要素画像が108画点からなることから、水平方向に18視差を与える立体画像の表示が可能となる。
【0062】
IP方式においては、要素画素の各画点には、視差画像が配分されているが、水平方向の行方向に沿って異なる視差画像が配分されて要素画像を形成している。視差画像は、視距離L上に配置された複数のカメラで撮影された複数の画像の夫々から切り出された画像に相当している。即ち、水平方向に配列された複数のカメラに撮影番号或いはカメラ番号を付して表示対象を撮影している場合を想定すると、同一の撮影番号或いはカメラ番号の画像から複数の視差画像が切り出されて異なる要素画像に配分され、要素画像が複数の異なる撮影番号或いはカメラ番号の視差画像で構成される。このように構成された要素画像が視域に投影されて立体画像が視域に表示される。
【0063】
尚、図示しない多眼方式の立体画像の表示光学系にあっては、観察者の両眼に向けて左右で異なる視差画像がレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズで収束されている。従って、観察位置を定める視距離面L上でしか立体画像を観察できず、また、この視距離面上に飛び飛びの間隔を空けて観察位置が設定される。通常、多眼方式では、視差画像の水平ピッチPhが用紙10上に形成される画点の水平ピッチの整数倍に等しく、かつ、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが画点の水平ピッチの整数倍よりわずかに小さく定められる。従って、IP方式の為に印刷される画像と多眼方式の為に印刷される画像とは明らかに異なる画像として用紙10上に形成される。
【0064】
従来のカラーインクによる印刷画像に別工程で製造されたレンチキュラーレンズシートを張り合わせる立体視画像印刷方式と比較すると、本発明の実施例に係る上述した立体画像表示シートを製造する方法では、カラーインクによる印刷画像とレンチキュラーレンズ等の光学素子との位置精度をきわめて高くすることができる。特に、同一の用紙表面に同一仕様のインクジェットヘッドで画像と光学素子を形成することができ、夫々の相対位置精度をμmオーダーにまで高めることが容易に可能となる。
【0065】
立体表示の為の画像の形成(印刷)にあっては、画像長さなどの絶対値を精度高く形成するに比べて、立体画像画質を高めるために印刷画像と光学素子(レンチキュラーレンズ)の相対位置を高めることが重要とされていることから、上述した立体画像シートを製造する方法による効果が大きい。また、光学素子をインクジェットヘッドにより形成するため、任意の位置並びに面積にすることが可能となる。例えば、用紙上の特定の部分にのみ立体画像を形成し、それ以外の領域には通常の印刷画像とすることも可能である。
【0066】
次に、多重分割時間による微細ドットを用紙10上に形成して視差画像数を増加することができるこの発明の他の実施例に係るインクジェット印刷方法について以下に説明する。
【0067】
上述したように、レンチキュラーレンズあるいはマイクロレンズアレイにより立体視画像を表示することができるIP方式においては、1つのレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズに対向する要素画像に多数の視差画像を記録するほど滑らかな立体画像が得られる。上述した実施例においては、レンズピッチを0.504mmとして1200dpiの解像度を有するインクジェットヘッドで記録する例を説明したが、以下の実施例に係る印刷方法では、24視差の画像を記録することが可能となる。
【0068】
IP方式において、立体画像の精細度を向上するためには、レンズピッチを精細化することが望ましく、実質的には0.3mm程度より小さくすると目視でレンズの存在が認められない画像を実現することが可能となる。しかしながら、インクジェットヘッドのノズルサイズを微細化することには製造上の限界があり、レンズピッチをいたずらに微小化しても1レンズ内に記録できる視差画像の数が減少し、滑らかな立体画像を得ることが困難となる。即ち、レンズピッチを精細化して高精細な立体画像を記録しようとしても、記録できる視差画像の数が減少してしまうため、滑らかな立体画像にならないという問題がある。下記に説明する実施例に係る印刷方法によれば、このような問題を解決することができ、更なる高精細立体画像を形成することができる。
【0069】
以下の実施例のインクジェット印刷方法では、2次元IP方式(水平方向のみならず、垂直方向においても立体視可能な方式)における立体画像の表示の為のマイクロレンズアレイ70を光学素子として用いる場合について説明するが、1次元IP方式の為に多数のレンチキュラーレンズ51が形成されるレンチキュラーシートに適用できることは明らかである。
【0070】
図16に示されるようにインクジェット記録ヘッド30によりマイクロレンズアレイ70が形成される。図16におけるマイクロレンズアレイ70の形成方式は、図4を参照したレンチキュラーレンズ51の形成方法と実質的に同一であるので、その詳細は、図4の説明を参照されたい。但し、レンチキュラーレンズ51は、インクが連続吐出されて形成されるに対してマイクロレンズアレイ70は、インクが間欠的に吐出されて形成される点が相違する点に注意されたい。
【0071】
以下の実施例の説明では、説明を簡単にするために、図17に示されるようにインクジェットヘッド30の4つのノズル72により1つのマイクロレンズ70が形成されると仮定する。また、要素画像内の画点(ドット)74も同様の構造のインクジェットヘッド20−1〜20―4で描かれるとすると、1つのレンズ70に対向する要素画像内に記録できる視差画像は、4つのノズル72で描かれる4画点で構成されることから、縦及び横(行列)に沿って4視差の画点が描かれることとなる。ここで、図17では、1つのマイクロレンズ70に対向する要素画像内に縦及び横(行列)に沿って4視差の画点74が用紙10に印刷されている様子が模式的に示され、説明の便宜上、インクジェットヘッド30及びインクジェットヘッド20−1〜20―4のノズルが符号72で示されている。また、図17には、1つのノズル72で1画点(ドット)を描く時間期間をTnで示し、この期間で定められるタイミングで各ノズル72からインクが吐出されて1画点(ドット)が描かれることを示している。通常は、次々にノズル71が作動されて4視差の画点が4Tnの期間で描かれ、また、4Tnの期間に1つのマイクロレンズ70が形成される。
【0072】
このような動作に対して、図18に示す実施例では、縦方向(用紙搬送方向)の視差画像数を増加することを可能とするため、インクジェットヘッド20−1〜20―4の駆動時間Tnを時分割、図示の例では、3分割してヘッドノズル72から吐出するインクドロップを微細化し、且つ、ドット形成位置をずらして形成している。即ち、インクジェットヘッド30は、上述したと同様に次々と駆動時間Tnで駆動されて4Tnの期間に各マイクロレンズ70が形成されている。これに対して、インクジェットヘッド20−1〜20―4は、夫々駆動時間Tn/3で駆動されて横方向(用紙搬送方向に対して直交する方向)に延びた画点(ドット)76が形成されている。従って、縦方向(用紙搬送方向)には、要素画像内に3×4画点76が形成され、図17に示される画点に比べて要素画像内に3倍の画点が形成され、3倍の12視差数が同一の要素画素に与えられている。即ち、1つのマイクロレンズ70内に縦12ドット、横4ドットのドットを形成することが可能となる。従って、縦方向の視差情報を従来方式の3倍にすることができる。このようにインクドロップの微細化及びドット形成位置の変更によって複数の微小ドット76を形成して視差画像情報を増加することができ、立体画像表示における解像度を向上することができる。
【0073】
尚、横方向(用紙搬送方向に対して直交する幅方向)の画点(ドット)は、ヘッドノズル72の幅で定まることから、横方向は、ヘッドノズル72の制約により、画点サイズが変わらず、横方向に延出された画点に形成されている。ここで、縦方向(用紙搬送方向)は、左右の目の方向(水平方向)に相当するように立体画像が観察されることが好ましい。一般に観察者が立体視する際には、上下動(垂直方向の動き)よりも水平方向(左右方向)の動きが大きい。従って、水平方向(左右方向)に相当する縦方向(用紙搬送方向)における視差数が増加される方が観察者にとってより違和感のない立体画像を観察することが可能となる利点がある。従って、描かれる印刷画像は、画像の水平方向が用紙搬送方向となることが好ましい。
【0074】
図19は、図18に示す微小ドット76を形成するインクジェットヘッド20−1〜20―4のインクジエットノズル72を駆動するインクジェット駆動回路80のブロック図を示している。この図19において、各インクジェットノズル72は、駆動部、例えば、圧電素子72−1〜72−nでインクの吐出が制御される。この駆動部72−1〜72−nは、夫々ノズル駆動回路82―1〜82−nからの駆動信号でインク吐出量並びにインク吐出のオン/オフが制御されている。ノズル駆動回路82―1〜82−nには、ノズル制御回路84−1〜84−nからノズル制御タイミング信号(Pdrv)が入力され、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)に同期して駆動信号を生成している。ノズル制御回路84−1〜84−nは、インクジェット制御回路207からのアドレス信号(address)の入力に応じてアドレス指定されてアクティブとされ、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)を出力する。従って、画像を形成する画点を形成する際には、このアドレス信号(address)で指定されたノズル制御回路84−1〜84−nがアクティブとされて対応するノズル72からインクが吐出される。
【0075】
ノズル制御回路84−1〜84−nの夫々には、インクジェット制御回路207からノズルを所定期間T0の間吐出させるためにインクジェット制御回路207をイネーブルとするファイア信号(Fire)が入力され、また、ファイア信号(Fire)が入力されている間各ノズル72からの突出タイミングを決定するビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)がインクジェット制御回路207から入力されている。
【0076】
どのノズルからインクを吐出するか指定するアドレス信号(address)、吐出信号であるファイア信号(Fire)及び各ノズル突出タイミングを決定するビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)は、夫々時間同期するようインクジェット制御回路207で制御信号として生成される。アドレス信号(address)で指定されたノズル制御回路84−1〜84−nでは、図20(a)に示すファイア信号(Fire)が入力されている期間T0に図20(c)〜(e)に示すあるビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンが入力されると、このビット信号のパターンに応じて図20(b)に示すノズル制御タイミング信号(Pdrv)がそのノズル制御回路84−1〜84−nから出力される。
【0077】
図21(a)〜(h)は、ビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターン、発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点76の関係を示している。図21(a)〜(h)において符号88は、ノズル72からインクが所定期間T0の間吐出され続けられて形成される画点の領域を示している。この領域88は、図17に示す画点74の領域に相当し、図18を参照した説明において時分割無しで形成される画点に相当している。
【0078】
ビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターン、発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点76は、下記のような関係となる。ここで、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)は、期間T0内において第1、第2及び第3パルスが発生されていることから、以下の説明では、第1、第2及び第3パルスと称して説明する。
【0079】
図21(a)に示されるようにビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)が全て零のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)が発生されない。図21(b)に示されるようにビット信号(Bit0)が“1“でビット信号(Bit1, Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭の第1の画点76のみが形成される。図21(c)に示されるようにビット信号(Bit1)が“1“でビット信号(Bit0, Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第2パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭から第2番目の画点76のみが形成される。図21(d)に示されるようにビット信号(Bit2)が“1“でビット信号(Bit0, Bit1)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭から第3番目の画点76のみが形成される。図21(e)に示されるようにビット信号(Bit0, Bit1)が“1“でビット信号(Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1及び第2パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1及び第2番目の画点76が形成される。図21(f)に示されるようにビット信号(Bit1, Bit2)が“1“でビット信号(Bit0)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第2及び第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第2及び第3番目の画点76が形成される。図21(g)に示されるようにビット信号(Bit0, Bit2)が“1“でビット信号(Bit1)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1及び第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1及び第3番目の画点76が形成される。そして、図21(h)に示されるように全てのビット信号(Bit0, Bit1, Bit2)が“1“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1、第2及び第3パルスが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1、第2及び第3番目の画点76が全て形成される。
【0080】
以上のようにビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンによりノズル制御タイミング信号(Pdrv)の時間タイミングが変更され、これに応じてインク吐出位置も変更される。図21(a)〜(h)に示されるように微細ドット76の位置の組み合わせを8通りに変化させることが可能で、1ノズルによって3視差画像を形成することが可能となる。従って、図18に示すドット形成を実現することができるようになり、縦方向にインクジェットヘッドノズルを3分割することができる。即ち、1レンズ内に縦方向12視差画像、横方向4視差画像を形成することで、より滑らかな立体画像形成を実現することができるようになる。このようにレンズピッチを小さくして画質を精細化すると同時に視差画像数を減らさず、滑らかな立体画像を得ることが可能となる。
【0081】
本実施例では1色画像について説明したが、カラー画像を形成する場合も同様にすればよく、それぞれの単色ドットを重ね合わせればよい。
【0082】
尚、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0083】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
光学素子そのものも印刷技術により形成し、印刷画像と光学素子の位置精度向上による画質改善を図り、また、光学素子の準備を不要とした簡素な立体画像印刷装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
10...用紙、11...用紙カセット、12...ピックアップローラ、15...搬送ベルト、20...インクジェットヘッド(画像作成用)、21...インクタンク、30...インクジェットヘッド(光学素子形成用)、31...インクタンク、40...紫外線ランプユニット、41...水平方向の視角、42...垂直方向の視角、43...視距離面、44...観察者の想定位置、46...視点とレンズ主点を結ぶ線、100...レンチキュラーシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイを介して立体画像として認知可能な画像をインクジェット記録技術によってレンズアレイとともに記録媒体上に形成した立体画像表示シートを作成する立体画像印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を立体的に観察できる立体視の方式には、種々の方式があり、静止画のみならず、動画をも立体視可能な立体視画像表示装置、所謂、3次元ディスプレイが出現している。特に、近年、フラットパネルタイプで、且つ、専用の眼鏡等を必要としない方式の要望が高く、このタイプの立体視画像表示装置が開発されている。
【0003】
立体視画像表示装置としてホログラフィの原理を利用する方式が知られる他、2眼式、多眼式、超多眼式(多眼式の超多眼条件)、インテグラルフォトグラフィー方式(IP方式とも称せられる。)が知られている。これらの方式には、直視型或いは投射型の液晶表示装置或いはプラズマ表示装置等のように画素位置が固定されている表示パネル(表示装置)の直前に表示パネルからの光線を制御して観察者に向ける光線制御素子が設置され、比較的容易に立体視画像を表示することができる立体視画像表示装置がある。
【0004】
光線制御素子は、一般的にはパララクスバリア或いは視差バリアとも称せられ、光線制御素子上の同一位置でも角度により異なる画像が見えるように光線を制御している。具体的には、左右視差(水平視差)のみを与える場合には、スリット或いはレンチキュラーシート(シリンドリカルレンズアレイ)が用いられ、上下視差(垂直視差)も含める場合には、ピンホールアレイ或いはマイクロレンズアレイが用いられている。
【0005】
特に、基本的な原理が100年程度前に発明され立体写真に用いられてきたものと実質上同一であるインテグラルフォトグラフィー方式(以下、IP方式と称する。)は、視点位置の自由度が高く、楽に立体視できるという特徴があり、解像度の高い立体表示の実現も比較的容易であるとされている。水平視差のみで垂直視差のない1次元IP方式が例えば、非特許文献1に記載されている。
【0006】
IP方式に対して2眼方式或いは多眼方式は、立体視できる視点位置の範囲、即ち、視域が狭く、見にくいという問題があるが、立体画像表示装置としての構成は、最も単純であり、表示画像も比較的簡単に作成できる特徴がある。
【0007】
このようにディスプレイを利用した動画を立体視可能な表示装置に対し、静止画像を表示する印刷、写真分野において代表的な立体画像記録技術としてレーザ光の干渉原理を用いたホログラフィ技術が同様に知られている。しかし、レーザ光学システム或いは記録媒体に求められる画像解像力が非常に高いため、簡易でかつ印刷コストを抑えたシステムでは、立体視画像を記録できない問題がある。
【0008】
一方、上述したインテグラルフォトグラフィー方式(IP方式と称する。)は、写真技術から発生したこともあり、広い分野に適用することができる。既存のIP方式の印刷システムにおいては、予め製造されたレンチキュラーシート等が用いられ、その光学仕様に適合した画像データがレンチキュラーシート上に印刷されて立体画像が記録形成されている立体画像表示シートを作成することができる。また、既存印刷装置では、用紙などの媒体に画像が印刷された後に、レンチキュラーレンズがこの媒体に張り合わせられて立体画像が記録されている立体画像表示シートが作成される。また、特許文献1に記載されるように、直接レンチキュラーレンズの背面に立体画像情報が印刷されて立体画像が記録されている立体画像表示シートが作成されている。
【0009】
尚、IP方式は、写真に限られないことから、インテグラルイメージング方式(II方式)とも称せられる場合がある。
【0010】
IP方式においては、光学素子であるレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズのアレイピッチに用紙上に記録形成した画像が精度よく一致していることが要求されている。この要求を充足しない場合には、表示される画像に縞状のむら、所謂モアレが発生し、画像が不鮮明(ぼけ)になる等の不具合が発生する。しかし、既知の印刷装置にて実現されている立体画像表示シートでは、樹脂の成型により製造されたレンチキュラーシート等が用いられ、シート製造時の絶対位置精度、環境温度変化によりシートの伸縮などから、レンチキュラーシートと用紙上に印刷された画像位置を精度良く合致させることが困難である問題がある。従って、印刷される立体画像の品質が劣っている印刷物しか提供することができず、立体画像普及の妨げになっている。
【0011】
このレンチキュラーレンズと印刷画像の高精度位置合わせを実現するひとつの方法として、特許文献2においては、レンチキュラーシートのレンズ位置を検知して、検知信号に従って画像記録位置を合わせる方法が提案されている。この方式では、高精度なレンズ位置検出が要求され、このような高精度なレンズ位置検出が最大の課題とされている。
【0012】
また、特許文献3には、上記課題を解決するひとつの方法として、立体画像情報をインクジェット記録ヘッドにより印刷した用紙表面にレンチキュラーレンズを形成する為の他のインクジェット記録ヘッドを設けることが開示されている。この方式は、立体画像の印刷におけるレンズ位置と画像位置との高精度位置合わせを達成する方法のひとつと考えられる。しかし、様々なパターンの画像が印字され、画像記録用のインクが散布されている用紙表面は、表面性状が一様でなく、一様なレンズ形状を用紙上の全域に亘って均一に形成することに困難が伴い、レンチキュラーレンズ等をインクジェット記録用紙上に精度良く形成することが困難である問題がある。特に、特許文献3中にも記述されるように記録部材の表面に画像を記録し、その裏面にレンチキュラーレンズを形成することで、夫々のインク材料の付着性に合致した記録媒体表面の受容層とするような工夫が必要になる。また、インクジェット方式により形成されるレンチキュラーレンズには、次のような問題もある。レンチキュラーレンズは、通称カマボコレンズとも称せられるように多数のシリンドリカルレンズが隣接配置された形状を有している。記録される画像は、各シリンドリカルレンズの焦点位置に配置されることが望ましく、レンズの曲面部に対し一定の距離だけ離れた位置に立体印刷画像を配置する必要がある。このため、レンチキュラーレンズは、厚膜シート表面に凹凸が与えられた形状に形成される。このような形状をインクジェット記録方式により形成する場合、インクドロップレットにより曲面部を形成する以前に、曲面部体積より数倍〜数十倍の体積の厚膜層を形成することが要求される。
【0013】
インクジェット記録方式では、レンチキュラーレンズの曲面部のみを形成することは比較的容易に可能であるが、その下部の厚膜層が形成され、この厚膜層上に曲面部を形成することはインクを突出(インクジェット)して記録する性格上かなりの困難を伴うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−022091
【特許文献2】特開平8−137034
【特許文献3】特許第3555420号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Proc SPIE 6392, pp.639209, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、従来の立体画像形成装置(立体画像印刷装置)で作られた立体画像表示シートでは、立体画像視を可能とする光学素子と印刷画像との位置合わせを高精度化することができず、高い画質の立体画像を形成できないという問題がある。また、この立体画像印刷装置は、光学シートの搬送及び張り合わせなどの付帯設備が必要になるなど装置が大型化する問題がある。
【0017】
また、印刷画像表面に直接レンチキュラーレンズ等の光学素子が形成されている立体画像表示シートでは、均一な光学素子の形成が困難であり、厚膜化に困難が伴い、高い画質の立体画像を形成できないという問題がある。
【0018】
この発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、光学素子そのものを印刷技術により形成し、印刷画像と光学素子の位置精度向上による画質改善を図り、また、予め形成された光学素子の準備を不要として立体画像を表示することができる立体画像表示シートを作成する簡素な構造の立体画像印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による第1の態様は
画像を記録するための媒体搬送機構を設けており、この画像記録媒体に画像を記録するための記録手段と設けて画像を記録する。
【0020】
一方、光線制御素子を形成するための媒体搬送機構を設けて、この光線制御素子媒体に光線制御素子を形成するための形成手段を設けて光線制御素子を形成する。
【0021】
画像記録媒体表面に前記記録手段によって形成した画像表面に、光線制御素子形成手段によって光学素子を形成した光線制御素子媒体を張り合わせることを特徴としている。
【0022】
本発明による第2の態様は
先の光線制御素子は、シリンドリカルレンズアレイであることを特徴としている。
【0023】
本発明による第3の態様は
先の光線制御素子は、マイクロレンズアレイであることを特徴としている
マイクロレンズアレイはフライアイレンズとも蝿の目レンズとも呼ばれる。
【0024】
本発明による第4の態様は
先の光線制御素子を形成するための形成手段は、光線を制御するためのインクをノズルから突出するインクジェットヘッドと、前記インクを前記インクジェットヘッドへ供給する供給手段と、前記インクジェットヘッドからのインクの突出を制御するためのインクジェットヘッド制御手段にて構成することを特徴としている
本発明による第5の態様は
前記光線制御素子を形成するための形成手段は、光線を制御するためのインクをノズルから突出するインクジェットヘッドと、前記インクを前記インクジェットヘッドへ供給する供給手段と、前記インクジェットヘッドからのインクの突出を制御するためのインクジェットヘッド制御手段と、前記インクが前記媒体に付着した後、前記インクを硬化するための硬化手段にて構成することを特徴としている
本発明による第6の態様は
画像を記録するための媒体を搬送する手段とこの画像記録媒体に画像を記録するためのインクジェット形成手段を設けて画像を記録する。
【0025】
光線制御素子を形成するための媒体を搬送する手段とこの光線制御素子媒体に光線制御素子を形成するためのインクジェット形成手段を設けて光線制御素子を形成する。
【0026】
画像記録媒体表面に前記インクジェット形成手段によって形成した画像表面に、光線制御素子を形成するためのインクジェット形成手段によって光学素子を形成した光線制御素子媒体を張り合わせる手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の立体画像印刷装置によれば、光学素子と印刷画像の位置精度が高く、画質の高い立体画像を実現することが可能となる。また、立体視画像を形成するための光学素子を画像中の任意の領域に形成することが可能となるため、全画像の一部領域のみ立体視画像とすることも可能となる。また、光学シートなどの搬送、張り合わせ装置が不要になるため簡素な装置で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る立体画像印刷装置の全体構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図1に示される立体画像印刷装置において立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す斜視図である。
【図3】図2に示される画像形成部で作られる立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。
【図4】図2に示される画像形成部における立体画像表示シートの製造工程を概略的に示す斜視図である。
【図5】図1に示される立体画像印刷装置の画像形成回路を概略的に示すブロック図である。
【図6】(a)及び(b)は、図2に示されるヒートローラにおける立体画像表示シートの製造過程を概略的に示す一部正面図及び斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は、比較例に係るヒートローラにおける立体画像表示シートの製造過程を概略的に示す一部正面図及び斜視図である。
【図8】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートの断面構造を概略的に示す断面図である。
【図9】比較例に係る立体画像表示シートの断面構造を概略的に示す断面図である。
【図10】図1に示される立体画像印刷装置の変形例に係る立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す模式図である。
【図11】図1に示される立体画像印刷装置の他の変形例に係る立体画像表示シートを形成する画像形成部を概略的に示す模式図である。
【図12】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートにおける光線軌跡を概略的に示す模式図である。
【図13】図12に示される立体画像表示シートの光線制御素子としてのレンチキュラーシートを概略的に示す斜視図である。
【図14】図1及び図2に示される立体画像印刷装置によって作られた立体画像表示シートにおける立体画像の表示原理を説明する為の光線軌跡を示す展開図である。
【図15】図12に示される立体画像表示シートにおけるレンチキュラーレンズと要素画像との関係を概略的に示す斜視図である。
【図16】図2に示される画像形成部で作られる他の形態の立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。
【図17】図16に示される他の形態に係る立体画像表示シートの1例を概略的に示す平面図である。
【図18】図16に示される他の形態に係る立体画像表示シートの改良例を概略的に示す平面図である。
【図19】図5に示されるインクジェット駆動回路であって図18に示される立体画像表示シートを作成する為に画点数を増加させるインクジェット駆動回路を概略的に示すブロック図である。
【図20】(a)〜(e)は、図19に示されるインクジェット駆動回路に入力される信号を示す波形図である。
【図21】(a)〜(h)は、図19に示されるインクジェット駆動回路に入力されるビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンに従って発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る立体画像表示シートを製造する為の立体画像印刷装置について詳細に説明する。
【0030】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係+る立体画像印刷装置を示している。この立体画像印刷装置によって立体画像表示シート(立体視シート)が形成される。この立体画像表示シートは、レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズアレイ(両者を含めて単にレンズアレイと称する。)が記録媒体としての用紙10上に設けられて、レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズアレイを介して用紙10上に印刷された画像を立体画像として観察することができる。立体視の方式には、上述したように種々の方式があるが、この明細書では、主にIP方式(インテグラルフォトグラフィー方式)に係る画像が立体画像表示シートに印刷されているものとして以下に説明する。しかし、IP方式に係る画像が立体画像表示シートに印刷されている場合に限らず、多眼方式(2眼方式を含む。)に係る画像が立体画像表示シートに印刷される立体画像表示シートの作成にも適用することができることは、明らかである。
【0031】
図1に示される立体画像印刷装置は、複数枚の記録媒体10(以下単に用紙10と称する。)が格納されている用紙カセット11を備え、用紙カセット11の最上面の用紙10は、ピックアップローラ12に接触可能に配置され、ピックアップローラ12に接触されて一枚毎に搬送ローラ13,14に取り出される。取り出された用紙10は、搬送ローラ13,14によって搬送ベルト15へと搬送される。用紙10は、用紙カセット11に限らず、手差し台9から手差で搬送ローラ13,14に供給され、搬送ベルト15に搬送されても良い。
【0032】
搬送ベルト15の搬入口には、表面にバイアス電圧が印加されているチャッキングローラ16が設けられ、チャッキングローラ16によって用紙10に静電気が与えられて搬送ベルト16の表面に付着される。搬送ベルト15上には、用紙10に画像を形成するためのインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が搬送ベルト15に対向して配置されている。インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4には、夫々インクタンク21−1、21−2、21−3、21−4からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のインクがインク供給機構(図示せず)により供給され、用紙10にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の画点でインク画像を形成している。各インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4は、用紙10の搬送方向に直交する方向に沿って配置された多数のノズルを備えている。このインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4には、一例として、東芝テック製インクジェットヘッドCE2があり、このインクジェットヘッドのヘッドユニットは、636ノズルを有し、ヘッドユニットを用紙幅方向にライン状に4個配列してA4サイズ用紙へ300dpiで画像を形成することができる。
【0033】
インクジェットヘッドにおけるインクを突出させる原理等に関しては、多数の参考文献、例えば、第63回日本画像学会技術講習会、PP111、2007.7.19に記載されている。インクジェットヘッドは、公知技術であることから、ここでは詳述しないものとする。以下の説明では、インクジェットヘッドは、圧電素子の逆圧電効果によりその微細なノズルからインクを噴出する方式で画像を印刷するものとする。この4色のインクを突出するインクジェットヘッドにより、用紙10上には、フルカラーの画像が形成される。この形成されるフルカラーの画像は、後に説明するようにIP方式(II方式)にあっては、立体視のための多数の要素画像に相当し、この要素画像が光学素子(レンチキュラーレンズ)の光学特性に合致され、多角度から見た画像情報を融合した画像に相当している。レンチキュラーレンズを介してこれら要素画像を目視することによって画像を立体視することができる。
【0034】
4連のインクジェットヘッドにより表面に画像が形成された用紙10は、搬送ベルト15によって搬送され、レンチキュラーレンズを形成するための透明フィルム100がこの用紙10にローラ104により重ね合わされる。透明フィルム100は、二層構造に形成され、第1層の基材がポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で作られ、この基材上には、第2層としての熱可塑性樹脂が塗布され、この熱可塑性樹脂の面は、画像が記録された用紙の表面に接触され、後に述べる熱処理により貼り付けされている。本実施例においては、透明フィルム104は、図1に示されるようにロール状のロールフィルム101として用意され、このロールフィルム101は、搬送ローラ102によって用紙10をも搬送するローラ104に搬送される。この搬送過程でロールフィルム101は、画像記録用紙10の長さに応じてカッター103によって裁断され、例えば、用紙10と同一サイズに裁断調整されてローラ104で用紙10に張り合わされる。
【0035】
透明フィルム100が画像記録面に重ね合わされた用紙10は、光学素子としてのレンチキュラーレンズを形成するインクジェットヘッド30に対向される位置に搬送される。インクジェットヘッド30は、カラーインクを噴出するインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と同一のヘッドを本実施例では用いている。このインクジェットヘッド30は、必ずしも同一のヘッドである必要はないが、供給するインクは、画像記録用インクジェットヘッドとは異なり、紫外線を照射すると瞬時に硬化するUV硬化性インクが採用されている。このインクは、アクリル等からなる透明インクであり、ノズルから噴出される液滴量をコントロールすることで、用紙10上のインク付着部分に適切なメニスカスを有したレンズ形状の屈折部を形成することができる。
【0036】
立体視のために必要な光学素子は、画像記録された用紙10に重畳した透明フィルム100の表面上にインクジェットヘッド30により図3及び図4に示されるように形成される。図3には、カラーインクにより形成された画像50の表面に透明フィルム100が重畳され、透明フィルム100上にレンチキュラーレンズ51が形成されてレンチキュラーシート120が形成される様子が示されている。また、図4には、UV硬化性インクがインクジェットヘッド30から透明フィルム100上に噴出されてレンチキュラーシート120が形成される様子が示されている。用紙10上に形成された画像は、レンチキュラーシート120のレンチキュラーレンズ51を介して立体画像として外部から認識される。
【0037】
ここで、レンチキュラーシート120のレンチキュラーレンズ51は、図3及び図4に示されるように用紙10の搬送方向に沿って延出するように(レンチキュラーレンズ51の長手方向が用紙10の搬送方向に一致される。)インクジェットヘッド30によって形成され、また、各レンチキュラーレンズ51に対向して形成される画像50の要素画像も搬送方向に対して略直交する方向(或いは斜めに交叉する方向に)後に説明する各要素画像を構成する視差画像が配列されるようにインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4によって形成される。換言すれば、後に述べる各視差画像は、搬送方向に沿って(或いは、搬送方向に対して斜めの方向に沿って)延出されるように形成される。
【0038】
光学素子形成用のインクジェットヘッド30の近傍には、図1及び図2に示されるように紫外線ランプユニット40が配設されている。紫外線ランプユニット40としては、365nmを主波長とした水銀ランプを用いることができる。この紫外線ランプユニット40によってインクジェットヘッドにより記録された光学素子は、レンチキュラーレンズとして固定化される。また、紫外線ランプユニット40の搬送方向後段には、搬送ローラ102から供給された用紙10及び透明フィルム100を加熱処理によって貼り合わせるヒートローラ対110が配置されている。ヒートローラ対110は、用紙10及び用紙10上に重ねられた透明フィルム100を挟み込む上下のローラから構成され、下側ローラの内部には、ハロゲンランプなどの加熱源が配置されている。下側ローラの表面温度は、温度検知素子(図示せず)によって検知されてハロゲンランプへの電力供給が制御されて下側ローラの表面温度が一定に維持される。より詳細には、下側ローラは、基体及び表面層から構成され。基体がアルミ中空パイプで形成され、この基体表面を被覆する表面層がシリコンゴム等で形成されている。下側ローラは、図示しない駆動機構で駆動され、一定速度で下側ローラが回転されることにより用紙10及び透明フィルム100が加熱されながら搬送される。ヒートローラ対110の上側ローラは、下側ローラに従動されて回転され、紫外光により半硬化されるレンチキュラーレンズが圧接により変形しないように、即ち、かまぼこ型のレンチキュラーレンズがつぶれないように、ゴム硬度の低いゴムローラで形成されている。また、レンチキュラーレンズは、ヒートローラ対110により十分にレンチキュラーレンズが硬化されるよう加熱される。更に、ヒートローラ対110による透明フィルム100及び用紙10の加熱により、透明フィルム100の用紙表面側の熱可塑性樹脂が溶融されて用紙10に接着されて透明フィルム100と用紙10とが確実に一体化された立体視シート(立体画像表示シート)が製造される。
【0039】
図4に示すように光学素子形成用インクジェットヘッド30によりレンチキュラーレンズが形成されるが、この形成工程では、配列されたノズル中から選定された特定ピッチ毎のノズルからUV硬化性インク60が連続的に噴出されるようインクジェットヘッドが制御されてシリンドリカルなレンズが形成される。図4には、ノズルが一列に配置されているインクジェットヘッド30が示されているが、シリンドリカルなレンズ形状を与える為にノズルが複数列に亘って配置されている単一のインクジェットヘッド30或いは複数のインクジェットヘッド30が設けられても良い。インクの粘性に応じて複数回に亘ってインクをジェット噴射してレンズをシリンドリカル形状に成形することができる。インクが透明フィルム100上にシリンドリカル形状に滴下された状態では、UV光が照射される前にあることから、インクが硬化されていない形状が不安定な状態にあり、形状をそのままに維持することができない虞がある。従って、インクジェットヘッド30により形成されたインク滴は、直ちにUV光が照射されて硬化することが好ましく、この観点から、紫外線ランプユニット40は、光学素子形成用インクジェットヘッド30のノズル内のインクを硬化させることなく、透明フィルム100上のインク滴を即座に硬化させることができるように光学素子形成用インクジェットヘッド30の近傍に配置されることが好ましく、また、UV光がインクジェットヘッド30のノズル開口部を直接照射して、インクによる目詰まりなどを抑制するためUV光がノズル開口部に向けられることを遮断する遮光部材(図示せず)が設けられることが好ましい。
【0040】
図1に示される立体画像印刷装置は、図5に示すような駆動システムを備えている。このシステムにおいては、立体画像印刷装置の各部がメインコントローラ201によって制御される。即ち、メインコントローラ201からは、制御信号が駆動回路203に与えられ、駆動回路203からは、駆動信号がモータ駆動回路205に与えられてモータ駆動回路205によって各部のモータ204が駆動制御される。このモータ204の駆動制御に基づいてモータ204によって駆動されるピックアップローラ12、搬送ローラ13,14、チャッキングローラ16、搬送ベルト15及びヒートローラ対110等が駆動制御される。これら用紙搬送機構に関係する駆動に限らず、インク検知に基づくインクの供給機構の駆動制御が同様に実行される。
【0041】
また、このメインコントローラ201には、装置外のコンピュータ(PC)200から画像情報信号が供給される。このコンピュータ(PC)200は、印刷する画像データを保持して画像情報信号として出力している。このコンピュータ(PC)200は、立体画像印刷装置が複写システムに適用される場合には、複写システムに格納されたコンピュータであっても良く、この観点からは、コンピュータ(PC)200は、立体画像印刷装置に備えられても良く、コンピュータ(PC)200の外部から画像情報信号がこのコンピュータ(PC)200に入力されても良い。
【0042】
メインコントローラ201からは、画像情報信号が画像処理回路202に供給されて1フレームを構成する立体画像表示用の要素画像或いはフレーム画像に変換される。この変換された要素画像或いはフレーム画像の各色成分映像信号がインクジエット制御回路207に供給される。また、PC200からの立体画像表示シートの生成指示に基づいてメインコントローラ201からレンズパターン信号が画像処理回路202に与えられ、画像処理回路202において、要素画像或いはフレーム画像に対応したレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズを形成するためのレンズ生成信号がインクジェット制御回路207に供給される。インクジェット制御回路207では、各色成分映像信号及びレンズ生成信号に基づいてインクジェット駆動回路80を制御して各色成分映像信号及びレンズ生成信号に対応する駆動信号がインクジェット駆動回路80からインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4及びインクジェットヘッド30に供給される。従って、インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が駆動され、インクが吐出されて用紙10上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画点が形成されて画像が印刷される。また、インクジェットヘッド30が駆動されて透明シート100上にレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズが用紙10上に形成された画像に対応して形成される。
【0043】
上述したシステムにおいては、インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4は、用紙10が搬送される速度及びインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4の設置間隔から決定されるディレイ時間だけ駆動タイミングがずらされて駆動される。その結果、搬送される用紙10上に各色の画点(ドット)が視差画像を形成するようにカラー画像が形成される。レンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズを形成するためのインクジェットヘッド30も同様に画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と同様に駆動される。
【0044】
インクジェットヘッド30によりマイクロレンズアレイを形成する場合には、画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4の設置位置と光学素子形成用インクジェットヘッド30の設置位置から決定される離間間隔及び用紙10が搬送される速度から決まるディレイ時間だけずらしてインクジェットヘッド30が駆動され、形成されたカラー画像の所定のドット位置に対して正確にマイクロレンズの形成位置が合わされてマイクロレンズが形成される。また、用紙の搬送方向に延出されるレンチキュラーレンズの形成にあっては、必ずしも画像形成用インクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4と光学素子形成用インクジェットヘッド30の駆動タイミングを正確に一致させることは必要ない。レンチキュラーレンズの形成においては、インクにより形成された画像位置をオーバラップするようにレンチキュラーレンズが形成されれば良く、夫々インクジェットヘッド駆動タイミングのディレイを決定すれば良い。
【0045】
上述したように、立体画像印刷装置では、レンチキュラーレンズ51が用紙搬送方向に沿って延出した形状に形成されているが、このようにレンチキュラーレンズ51が形成されることによって、印刷最終工程において、ヒートローラ110でレンチキュラーレンズ51が加熱されてもその形状を維持することができる。即ち、レンチキュラーレンズ51を形成するUV硬化インクは印刷工程においてUVランプの照射を受けても、完全硬化には至らず半固定状態にある。このUV硬化インクは、ヒートローラ110により加熱して完全固定化を施すが、本実施例のようにレンチキュラーレンズ51を用紙搬送方向に伸直するよう形成すれば図6(a)及び(b)に示すようにヒートローラ110との接触部における接触圧力が複数のレンズに分散し、半固定状態のUVインクによるレンズ形状がつぶれずにその形状を維持することができ、レンチキュラーレンズ51が良好な立体画像を作像することができる。
【0046】
仮にこれと直交する方向にレンチキュラーレンズを形成した場合には、図7(a)及び(b)に示すようにヒートローラ110の接触圧がレンズ一つ一つに集中し、レンズ形状が変形してしまい良好な立体画像を得ることができなくなる。
【0047】
画像50を立体視する為に透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズ51を形成されている構造が立体画像表示シートに好適する理由について、図8及び図9を参照して説明する。ここで、図8は、透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズを形成した立体画像表示シートの構造を示し、図9は、比較例に係る透明フィルム100とレンチキュラーレンズとが一体的に形成されている立体画像表示シートの構造を示している。
【0048】
レンチキュラーレンズの光学特性を満足するためのレンズ形状は、次のようなディメンションを備えている。レンチキュラーレンズのピッチPeが大きいとレンチキュラーレンズの存在が意識され、また、画像の精細度が低下するため、この観点からはピッチPeは、できるだけ小さいほうが望ましい。一方、立体画像を滑らかに表示させるためには、一つのレンズに対向される要素画像内には、できるだけ多数の視差画像が記録される必要がある。従って、いたずらにレンチキュラーレンズのピッチを細かくしても、記録するインクジェットヘッドのプリント解像度に限界がある以上、レンチキュラーレンズのピッチには、制約が生じる。
【0049】
既存インクジェットヘッドの解像力は、1インチ当たり1200ドット程度が現実的であり、この場合、1ドットの大きさは、約0.021mmとなる。レンチキュラーレンズのピッチPeは、0.5mm程度より小さくなるとレンズ間の境目によるスジが目立たなくなるため、これ以下のピッチが望ましい。これらのことを考慮して、本実施例では、レンズピッチPeを0.5mmに近く設定することとし、1200dpiインクジェットヘッドで形成することとして、レンチキュラーレンズのピッチPeをその整数倍にあたる0.504mmとしている。即ち、24ドットで1個のレンチキュラーレンズを形成することとしている。1ドットで1視差を表現することとすると1つのレンチキュラーレンズ内には24視差の画像情報を記録することができる。このように設計の場合、レンチキュラーレンズの形状は、Pe=0.5mm、HL=0.15mm及びHs=0.6mm程度の概算値のディメンションを有することとなる。透明フィルム100の厚みHsは、0.6mmに設定される。また、レンチキュラーレンズ51のレンズ高HLは、0.15mmに設定される。
【0050】
比較例として、このようなディメンションを有するレンチキュラーレンズ51及び透明フィルム100を図9に示されるようにインクジェットヘッドから吐出されるUV硬化特性を有するインクのみで形成する場合、透明フィルム100に相当するだけの圧膜Hsを形成する必要が生じる。レンチキュラーレンズ51及び透明フィルム100をインクジェットヘッドで形成するには、多量のインクが必要とされ、また、吐出した表面にレンズ形状を形成することが必要とされる。従って、非常に難度の高いプリンティング技術が要求される。この比較例のように、レンチキュラーレンズ51のみならず、透明フィルム100をもインクジェットヘッドで形成することは現実的でなく、上述したように、予め用意した透明フィルム100上にレンチキュラーレンズ51を形成することが実際的な立体視シート(立体画像表示シート)の製造に適している。
【0051】
尚、本実施例では、シリンドリカルなレンズがアレイ状に配列されたレンチキュラーレンズが採用され、一方向(例えば、左右の水平方向)にのみに視差が与えられている立体画像が表示される。従って、既に述べたように要素画像には、一方向(例えば、左右の水平方向)のみの視差画像が水平方向に配列される。
【0052】
水平及び垂直の2方向(上下、左右)に亘って立体画像を表示させることも可能である。2方向に亘る立体画像の表示では、要素画像内に2方向に亘る視差画像が水平並びに垂直方向に配列され、また、シリンドリカルレンズに代えてマイクロレンズ(フライアイレンズ)が形成される。このマイクロレンズ(フライアイレンズ)にあっても、光学素子形成用インクジェットヘッドによって形成することができる。シリンドリカルレンズを形成する際には、上述したように連続的にUV硬化性インクが噴出されているが、インクが断続的に噴出されることで等ピッチ間隔のマイクロレンズを形成することができる。
【0053】
図10及び図11には、図1及び図2に示された立体視画像印刷装置の変形例が示されている。
【0054】
図10は、図1及び図2と同一構成で、図1及び図2に示したシステムを簡略化している。即ち、図10に示す立体視画像印刷装置では、ロールフィルム101から透明フィルム100が供給されず、カットシートとして用意された透明フィルム100が図示しない透明フィルム供給部から、或いは、手差しでローラ104に供給されている。このようにカットシートとして透明フィルム100が供給されることによってカッター103が不要とされ、装置自体が簡素化される。
【0055】
図11に示す立体視画像印刷装置では、図10に示す装置と同様に透明フィルム100がカットシートとして用意され、搬送ローラ106を介して搬送ベルト15上に供給されている。この搬送ベルト15は、図1に示す搬送ベルト15とは異なり、透明フィルム100の供給路の下方に印刷搬送路部15−1が設けられ、また、透明フィルム100の供給路の下流側にレンズ形成搬送路部15−2が設けられている。印刷搬送路部15−1には、搬送ベルト15に対向してカラーインクを噴出するインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4が配置され、レンズ形成搬送路部15−2には、搬送ベルト15に対向して光学素子としてのレンチキュラーレンズを形成するインクジェットヘッド30及び紫外線ランプユニット40が配置されている
図11に示された搬送ベルト15の印刷搬送路部15−1には、図11には示されていない搬送ローラ13,14によって用紙10が搬送され、印刷搬送路部15−1でインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4によって用紙10上に画像が形成される。この画像が形成された用紙10は、レンズ形成搬送路部15−2に向けて搬送方向を変更するベルトローラ15−3上で透明シート100に位置合わせされて用紙10の上面に透明シート100が重ね合わされる。印刷搬送路部15−1においては、用紙10上に載置された透明シート100には、インクジェットヘッド30によってレンチキュラーレンズが形成され、このレンチキュラーレンズが紫外線ランプユニット40からの紫外線で固化される。このレンチキュラーレンズが形成された透明シート100は、用紙10とともにヒートローラ対110に供給されて用紙10及び透明フィルム100が加熱されて両者が一体化される。この図11に示された装置は、図10に示す装置と同様にカッター103が不要とされ、装置自体を簡素化することができる。
【0056】
次に、上述した工程によって形成される立体画像表示シートを外部から視認することによって立体画像を観察することができるIP方式における表示原理について図12〜図15を参照して説明する。ここで、図12〜図15に示されたIP方式では、光線制御素子としてレンチキュラーシート120が用いられていることから、レンチキュラーシートの配列方向、例えば、水平方向の面内で立体視することができ、レンチキュラーシートの延出方向、例えば、垂直方向の面内では、立体視することができない一次元IP方式であることに注意されたい。
【0057】
図12は、立体画像表示シートを概略的に示す斜視図である。用紙10には、前述したようにインクジェットヘッド20−1、20−2、20−3、20−4で各色の画点が高精細で印刷されて多数の要素画像が印刷されている。ここで、要素画像は、視差画像が配列されて構成され、各要素画像は、光線制御素子としてのレンチキュラーシート120の各レンチキュラーレンズに対向されるように形成され、各要素画像が対応するレンチキュラーレンズによって観察者側に投影される。IP方式では、観察者は、予め定められ、略全ての要素画像が投影されている視域内から立体画像表示シートを観察して正しい立体画像を観察することができる。視域内のある観察者位置44では、水平画角41及び垂直画角42の範囲で立体画像表示シートを観察することとなり、この範囲で要素画像内の視差画像が観察者の目に向けられる。従って、立体画像表示シートの前面及び背面の近傍に立体画像が仮想的に形成され、この立体画像が観察される。IP方式では、観察者が視域内で観察位置44を連続的に変更しても観察位置の変更前の立体画像とは異なる立体画像を連続的且つスムーズに観察することができる。ここで、観察位置44の変更に伴い要素画像中の異なる視差画像が次々に観察されて立体画像が観察される。
【0058】
図13は、光線制御素子として透明フィルム100上に多数のレンチキュラーレンズ51を印刷して作られたレンチキュラーシート120を示している。水平ピッチPeは、要素画像内の視差画像の配列方向に一致する方向におけるピッチである。レンチキュラーレンズ51は、1次元IPでは、垂直方向(縦方向)に延出されている。ここで、モアレを減少する為にレンチキュラーレンズ51は、垂直方向でなく、垂直方向に対して斜めの方向に延出されても良い。
【0059】
図14(a)〜(c)は、図12に示した立体画像表示シートを基準にして垂直面内及び水平面内における光線再生範囲を概略的に示す展開図である。図14(a)は、立体画像表示シートの正面図、図14(b)は、立体画像表示シートからの光線軌跡を示す平面図及び図14(c)は、立体画像表示シートの側面内における光線軌跡を示す側面図を示している。
【0060】
図14(b)において、光線制御素子としてのレンチキュラーシート120と視距離面43との間の視距離L、視距離L上の視域幅W及びシート120の厚みHsに相当する光学ギャップdが定められれば、レンズ主点を介して視域幅Wが用紙10上に投影された間隔として要素画像の水平ピッチPhが決定される。ここで、IP方式にあっては、光学ギャップdは、レンチキュラーレンズ51の焦点距離に定められ、レンチキュラーレンズ51の焦点が用紙10上に位置されている。符号46は、視点位置と各レンズ中心とを結ぶ線を示し、視域幅Wは、用紙10の面上で要素画像同士が重なり合わないという条件から決定され、立体画像の表示に寄与する要素画像が視距離L上の視域面で互いに重ね合わされるように投影される関係にある。ここで、視域は、立体画像の表示に寄与する要素画像が全て投影される空間として規定され、視域幅W及び視距離Lで規定される。平行光線の組を持つ条件の1次元IP方式にあっては、要素画像の水平ピッチPhの平均値が用紙10上に形成される画点の水平ピッチの整数倍或いはこの整数倍よりわずかに大きく設定され、かつ、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが画素(画点)の水平ピッチの整数倍に等しく定められている。ここで、平行光線の組を持つ条件とは、要素画像からこの要素画像に対向するレンチキュラーレンズを介して射出される複数の光線の夫々は、他の要素画像からこの他の要素画像に対向するレンチキュラーレンズを介して射出される複数の光線の夫々に平行な関係にあり、複数のレンチキュラーレンズの夫々からは、互いに平行な関係で光線が観察者側に向けられていることを意味している。この関係は、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが光点としての画素(画点)の水平ピッチの整数倍に等しく定められている関係から成立している。
【0061】
図15は、図8に示した一次元IP方式の立体画像表示シートの一部分を概略的に示す斜視図である。要素画像48が印刷された用紙10の前面にシリンドリカルレンズアレイ(レンチキュラーシート)120が配置されている様子を示している。図15に示されるように用紙10の表面には、縦横比が3:1の画点34が横方向及び縦方向に夫々直線状にマトリクス状に配置され、各画点34は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のインクで印刷される。この配列は、一般にモザイク配列と呼ばれる。画点ピッチPpを有する画点34の形状が矩形状であるとすると、18列6行の画点34で要素画素が構成される。画点のサイズは、この例では、列方向3Pp及び行方向Ppのサイズを有するように形成され、1つの要素画像が列方向18(3×6)Pp及び行方向18Ppのサイズに形成される。また、IP方式に係るシリンドリカルレンズ51のピッチは、要素画像のピッチ18Ppに等しく形成され、各要素画像には、行方向の画点毎に視差画像が与えられていることから、18視差の視差画像が配分される。このような表示シートの構造では、要素画像が108画点からなることから、水平方向に18視差を与える立体画像の表示が可能となる。
【0062】
IP方式においては、要素画素の各画点には、視差画像が配分されているが、水平方向の行方向に沿って異なる視差画像が配分されて要素画像を形成している。視差画像は、視距離L上に配置された複数のカメラで撮影された複数の画像の夫々から切り出された画像に相当している。即ち、水平方向に配列された複数のカメラに撮影番号或いはカメラ番号を付して表示対象を撮影している場合を想定すると、同一の撮影番号或いはカメラ番号の画像から複数の視差画像が切り出されて異なる要素画像に配分され、要素画像が複数の異なる撮影番号或いはカメラ番号の視差画像で構成される。このように構成された要素画像が視域に投影されて立体画像が視域に表示される。
【0063】
尚、図示しない多眼方式の立体画像の表示光学系にあっては、観察者の両眼に向けて左右で異なる視差画像がレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズで収束されている。従って、観察位置を定める視距離面L上でしか立体画像を観察できず、また、この視距離面上に飛び飛びの間隔を空けて観察位置が設定される。通常、多眼方式では、視差画像の水平ピッチPhが用紙10上に形成される画点の水平ピッチの整数倍に等しく、かつ、レンチキュラーレンズ51の水平ピッチPeが画点の水平ピッチの整数倍よりわずかに小さく定められる。従って、IP方式の為に印刷される画像と多眼方式の為に印刷される画像とは明らかに異なる画像として用紙10上に形成される。
【0064】
従来のカラーインクによる印刷画像に別工程で製造されたレンチキュラーレンズシートを張り合わせる立体視画像印刷方式と比較すると、本発明の実施例に係る上述した立体画像表示シートを製造する方法では、カラーインクによる印刷画像とレンチキュラーレンズ等の光学素子との位置精度をきわめて高くすることができる。特に、同一の用紙表面に同一仕様のインクジェットヘッドで画像と光学素子を形成することができ、夫々の相対位置精度をμmオーダーにまで高めることが容易に可能となる。
【0065】
立体表示の為の画像の形成(印刷)にあっては、画像長さなどの絶対値を精度高く形成するに比べて、立体画像画質を高めるために印刷画像と光学素子(レンチキュラーレンズ)の相対位置を高めることが重要とされていることから、上述した立体画像シートを製造する方法による効果が大きい。また、光学素子をインクジェットヘッドにより形成するため、任意の位置並びに面積にすることが可能となる。例えば、用紙上の特定の部分にのみ立体画像を形成し、それ以外の領域には通常の印刷画像とすることも可能である。
【0066】
次に、多重分割時間による微細ドットを用紙10上に形成して視差画像数を増加することができるこの発明の他の実施例に係るインクジェット印刷方法について以下に説明する。
【0067】
上述したように、レンチキュラーレンズあるいはマイクロレンズアレイにより立体視画像を表示することができるIP方式においては、1つのレンチキュラーレンズ或いはマイクロレンズに対向する要素画像に多数の視差画像を記録するほど滑らかな立体画像が得られる。上述した実施例においては、レンズピッチを0.504mmとして1200dpiの解像度を有するインクジェットヘッドで記録する例を説明したが、以下の実施例に係る印刷方法では、24視差の画像を記録することが可能となる。
【0068】
IP方式において、立体画像の精細度を向上するためには、レンズピッチを精細化することが望ましく、実質的には0.3mm程度より小さくすると目視でレンズの存在が認められない画像を実現することが可能となる。しかしながら、インクジェットヘッドのノズルサイズを微細化することには製造上の限界があり、レンズピッチをいたずらに微小化しても1レンズ内に記録できる視差画像の数が減少し、滑らかな立体画像を得ることが困難となる。即ち、レンズピッチを精細化して高精細な立体画像を記録しようとしても、記録できる視差画像の数が減少してしまうため、滑らかな立体画像にならないという問題がある。下記に説明する実施例に係る印刷方法によれば、このような問題を解決することができ、更なる高精細立体画像を形成することができる。
【0069】
以下の実施例のインクジェット印刷方法では、2次元IP方式(水平方向のみならず、垂直方向においても立体視可能な方式)における立体画像の表示の為のマイクロレンズアレイ70を光学素子として用いる場合について説明するが、1次元IP方式の為に多数のレンチキュラーレンズ51が形成されるレンチキュラーシートに適用できることは明らかである。
【0070】
図16に示されるようにインクジェット記録ヘッド30によりマイクロレンズアレイ70が形成される。図16におけるマイクロレンズアレイ70の形成方式は、図4を参照したレンチキュラーレンズ51の形成方法と実質的に同一であるので、その詳細は、図4の説明を参照されたい。但し、レンチキュラーレンズ51は、インクが連続吐出されて形成されるに対してマイクロレンズアレイ70は、インクが間欠的に吐出されて形成される点が相違する点に注意されたい。
【0071】
以下の実施例の説明では、説明を簡単にするために、図17に示されるようにインクジェットヘッド30の4つのノズル72により1つのマイクロレンズ70が形成されると仮定する。また、要素画像内の画点(ドット)74も同様の構造のインクジェットヘッド20−1〜20―4で描かれるとすると、1つのレンズ70に対向する要素画像内に記録できる視差画像は、4つのノズル72で描かれる4画点で構成されることから、縦及び横(行列)に沿って4視差の画点が描かれることとなる。ここで、図17では、1つのマイクロレンズ70に対向する要素画像内に縦及び横(行列)に沿って4視差の画点74が用紙10に印刷されている様子が模式的に示され、説明の便宜上、インクジェットヘッド30及びインクジェットヘッド20−1〜20―4のノズルが符号72で示されている。また、図17には、1つのノズル72で1画点(ドット)を描く時間期間をTnで示し、この期間で定められるタイミングで各ノズル72からインクが吐出されて1画点(ドット)が描かれることを示している。通常は、次々にノズル71が作動されて4視差の画点が4Tnの期間で描かれ、また、4Tnの期間に1つのマイクロレンズ70が形成される。
【0072】
このような動作に対して、図18に示す実施例では、縦方向(用紙搬送方向)の視差画像数を増加することを可能とするため、インクジェットヘッド20−1〜20―4の駆動時間Tnを時分割、図示の例では、3分割してヘッドノズル72から吐出するインクドロップを微細化し、且つ、ドット形成位置をずらして形成している。即ち、インクジェットヘッド30は、上述したと同様に次々と駆動時間Tnで駆動されて4Tnの期間に各マイクロレンズ70が形成されている。これに対して、インクジェットヘッド20−1〜20―4は、夫々駆動時間Tn/3で駆動されて横方向(用紙搬送方向に対して直交する方向)に延びた画点(ドット)76が形成されている。従って、縦方向(用紙搬送方向)には、要素画像内に3×4画点76が形成され、図17に示される画点に比べて要素画像内に3倍の画点が形成され、3倍の12視差数が同一の要素画素に与えられている。即ち、1つのマイクロレンズ70内に縦12ドット、横4ドットのドットを形成することが可能となる。従って、縦方向の視差情報を従来方式の3倍にすることができる。このようにインクドロップの微細化及びドット形成位置の変更によって複数の微小ドット76を形成して視差画像情報を増加することができ、立体画像表示における解像度を向上することができる。
【0073】
尚、横方向(用紙搬送方向に対して直交する幅方向)の画点(ドット)は、ヘッドノズル72の幅で定まることから、横方向は、ヘッドノズル72の制約により、画点サイズが変わらず、横方向に延出された画点に形成されている。ここで、縦方向(用紙搬送方向)は、左右の目の方向(水平方向)に相当するように立体画像が観察されることが好ましい。一般に観察者が立体視する際には、上下動(垂直方向の動き)よりも水平方向(左右方向)の動きが大きい。従って、水平方向(左右方向)に相当する縦方向(用紙搬送方向)における視差数が増加される方が観察者にとってより違和感のない立体画像を観察することが可能となる利点がある。従って、描かれる印刷画像は、画像の水平方向が用紙搬送方向となることが好ましい。
【0074】
図19は、図18に示す微小ドット76を形成するインクジェットヘッド20−1〜20―4のインクジエットノズル72を駆動するインクジェット駆動回路80のブロック図を示している。この図19において、各インクジェットノズル72は、駆動部、例えば、圧電素子72−1〜72−nでインクの吐出が制御される。この駆動部72−1〜72−nは、夫々ノズル駆動回路82―1〜82−nからの駆動信号でインク吐出量並びにインク吐出のオン/オフが制御されている。ノズル駆動回路82―1〜82−nには、ノズル制御回路84−1〜84−nからノズル制御タイミング信号(Pdrv)が入力され、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)に同期して駆動信号を生成している。ノズル制御回路84−1〜84−nは、インクジェット制御回路207からのアドレス信号(address)の入力に応じてアドレス指定されてアクティブとされ、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)を出力する。従って、画像を形成する画点を形成する際には、このアドレス信号(address)で指定されたノズル制御回路84−1〜84−nがアクティブとされて対応するノズル72からインクが吐出される。
【0075】
ノズル制御回路84−1〜84−nの夫々には、インクジェット制御回路207からノズルを所定期間T0の間吐出させるためにインクジェット制御回路207をイネーブルとするファイア信号(Fire)が入力され、また、ファイア信号(Fire)が入力されている間各ノズル72からの突出タイミングを決定するビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)がインクジェット制御回路207から入力されている。
【0076】
どのノズルからインクを吐出するか指定するアドレス信号(address)、吐出信号であるファイア信号(Fire)及び各ノズル突出タイミングを決定するビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)は、夫々時間同期するようインクジェット制御回路207で制御信号として生成される。アドレス信号(address)で指定されたノズル制御回路84−1〜84−nでは、図20(a)に示すファイア信号(Fire)が入力されている期間T0に図20(c)〜(e)に示すあるビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンが入力されると、このビット信号のパターンに応じて図20(b)に示すノズル制御タイミング信号(Pdrv)がそのノズル制御回路84−1〜84−nから出力される。
【0077】
図21(a)〜(h)は、ビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターン、発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点76の関係を示している。図21(a)〜(h)において符号88は、ノズル72からインクが所定期間T0の間吐出され続けられて形成される画点の領域を示している。この領域88は、図17に示す画点74の領域に相当し、図18を参照した説明において時分割無しで形成される画点に相当している。
【0078】
ビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターン、発生されるノズル制御タイミング信号(Pdrv)及びこのノズル制御タイミング信号(Pdrv)で形成される画点76は、下記のような関係となる。ここで、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)は、期間T0内において第1、第2及び第3パルスが発生されていることから、以下の説明では、第1、第2及び第3パルスと称して説明する。
【0079】
図21(a)に示されるようにビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)が全て零のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)が発生されない。図21(b)に示されるようにビット信号(Bit0)が“1“でビット信号(Bit1, Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭の第1の画点76のみが形成される。図21(c)に示されるようにビット信号(Bit1)が“1“でビット信号(Bit0, Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第2パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭から第2番目の画点76のみが形成される。図21(d)に示されるようにビット信号(Bit2)が“1“でビット信号(Bit0, Bit1)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向先頭から第3番目の画点76のみが形成される。図21(e)に示されるようにビット信号(Bit0, Bit1)が“1“でビット信号(Bit2)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1及び第2パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1及び第2番目の画点76が形成される。図21(f)に示されるようにビット信号(Bit1, Bit2)が“1“でビット信号(Bit0)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第2及び第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第2及び第3番目の画点76が形成される。図21(g)に示されるようにビット信号(Bit0, Bit2)が“1“でビット信号(Bit1)が“0“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1及び第3パルスのみが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1及び第3番目の画点76が形成される。そして、図21(h)に示されるように全てのビット信号(Bit0, Bit1, Bit2)が“1“のパターンでは、ノズル制御タイミング信号(Pdrv)には、第1、第2及び第3パルスが発生される。従って、領域88内では、搬送方向沿って第1、第2及び第3番目の画点76が全て形成される。
【0080】
以上のようにビット信号(Bit0,Bit1, Bit2)のパターンによりノズル制御タイミング信号(Pdrv)の時間タイミングが変更され、これに応じてインク吐出位置も変更される。図21(a)〜(h)に示されるように微細ドット76の位置の組み合わせを8通りに変化させることが可能で、1ノズルによって3視差画像を形成することが可能となる。従って、図18に示すドット形成を実現することができるようになり、縦方向にインクジェットヘッドノズルを3分割することができる。即ち、1レンズ内に縦方向12視差画像、横方向4視差画像を形成することで、より滑らかな立体画像形成を実現することができるようになる。このようにレンズピッチを小さくして画質を精細化すると同時に視差画像数を減らさず、滑らかな立体画像を得ることが可能となる。
【0081】
本実施例では1色画像について説明したが、カラー画像を形成する場合も同様にすればよく、それぞれの単色ドットを重ね合わせればよい。
【0082】
尚、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0083】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
光学素子そのものも印刷技術により形成し、印刷画像と光学素子の位置精度向上による画質改善を図り、また、光学素子の準備を不要とした簡素な立体画像印刷装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
10...用紙、11...用紙カセット、12...ピックアップローラ、15...搬送ベルト、20...インクジェットヘッド(画像作成用)、21...インクタンク、30...インクジェットヘッド(光学素子形成用)、31...インクタンク、40...紫外線ランプユニット、41...水平方向の視角、42...垂直方向の視角、43...視距離面、44...観察者の想定位置、46...視点とレンズ主点を結ぶ線、100...レンチキュラーシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状記録媒体を搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、
この搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記形成画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とする光線制御素子が形成されるシート状透明媒体を前記第1の搬送部に搬送し、前記透明媒体を前記記録媒体上に重ね合わせる第2の搬送部と、
前記第1の搬送部上で前記透明媒体に前記光線制御素子を前記搬送方向に延出するように形成する素子形成部と、
前記記録媒体とともに前記搬送方向に搬送される前記透明媒体を前記光線制御素子上から付与された圧着力で前記記録媒体に圧着して固定する圧着部と、
を具備することを特徴とする立体画像印刷装置。
【請求項2】
前記光線制御素子は、シリンドリカルレンズアレイであることを特徴とする請求項1の立体画像印刷装置
【請求項3】
シート状記録媒体を搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、
前記搬送方向に対して略直交する方向に配列された複数のノズルを備え、前記搬送される記録媒体に前記複数のノズルからインクを吐出して視差画像を形成するインク吐出部と、
前記記録媒体に形成されるべき画像に従って前記搬送に同期して前記インク吐出部を駆動制御する駆動制御部であって、前記ノズルの駆動周期を時分割して駆動し、前記ノズルの配列方向に比べて前記搬送方向で微細化されたインク画点で前記視差画像を形成させる駆動制御部と、
前記視差画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とする光線制御素子が形成されるシート状透明媒体を前記第1の搬送部に搬送し、前記透明媒体を前記記録媒体上に重ね合わせる第2の搬送部と、
前記第1の搬送部上で前記透明媒体に前記光線制御素子を形成する素子形成部と、
前記記録媒体とともに前記搬送方向に搬送される前記透明媒体を前記記録媒体に圧着して固定する圧着部と、
を具備することを特徴とする立体画像印刷装置。
【請求項4】
前記光線制御素子は、マイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1の立体画像印刷装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは、前記視差画像で構成される要素画像に対向され、この要素画像は、前記搬送方向では、前記ノズルの配列方向に比べて多数の視差画像が配列されていることを特徴とする請求項4の立体画像印刷装置。
【請求項1】
シート状記録媒体を搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、
この搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記形成画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とする光線制御素子が形成されるシート状透明媒体を前記第1の搬送部に搬送し、前記透明媒体を前記記録媒体上に重ね合わせる第2の搬送部と、
前記第1の搬送部上で前記透明媒体に前記光線制御素子を前記搬送方向に延出するように形成する素子形成部と、
前記記録媒体とともに前記搬送方向に搬送される前記透明媒体を前記光線制御素子上から付与された圧着力で前記記録媒体に圧着して固定する圧着部と、
を具備することを特徴とする立体画像印刷装置。
【請求項2】
前記光線制御素子は、シリンドリカルレンズアレイであることを特徴とする請求項1の立体画像印刷装置
【請求項3】
シート状記録媒体を搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、
前記搬送方向に対して略直交する方向に配列された複数のノズルを備え、前記搬送される記録媒体に前記複数のノズルからインクを吐出して視差画像を形成するインク吐出部と、
前記記録媒体に形成されるべき画像に従って前記搬送に同期して前記インク吐出部を駆動制御する駆動制御部であって、前記ノズルの駆動周期を時分割して駆動し、前記ノズルの配列方向に比べて前記搬送方向で微細化されたインク画点で前記視差画像を形成させる駆動制御部と、
前記視差画像からの光線を制御して立体画像を可視可能とする光線制御素子が形成されるシート状透明媒体を前記第1の搬送部に搬送し、前記透明媒体を前記記録媒体上に重ね合わせる第2の搬送部と、
前記第1の搬送部上で前記透明媒体に前記光線制御素子を形成する素子形成部と、
前記記録媒体とともに前記搬送方向に搬送される前記透明媒体を前記記録媒体に圧着して固定する圧着部と、
を具備することを特徴とする立体画像印刷装置。
【請求項4】
前記光線制御素子は、マイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1の立体画像印刷装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは、前記視差画像で構成される要素画像に対向され、この要素画像は、前記搬送方向では、前記ノズルの配列方向に比べて多数の視差画像が配列されていることを特徴とする請求項4の立体画像印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−237318(P2010−237318A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83346(P2009−83346)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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