説明

立体画像用印画シート及びその製造方法

【課題】カールを低減できる立体画像用印画シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】貼合工程と、レンズ層形成工程と、応力相殺層形成工程と、受像層形成工程とを備え、前記貼合工程は、吐出ステップと、狭圧ステップと、移動剥離ステップと、冷却ステップと、を有し、前記移動剥離ステップの間中、前記接着性樹脂の温度が、前記接着性樹脂の融点をmpとしたときに、(mp-40)℃〜(mp-10)℃の範囲になるように制御され、前記冷却ステップの間中、前記狭圧フィルムは、曲率を持たないように平らな状態で搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像用印画シート及びその製造方法に関し、特に、3Dプリントや3D印刷に使用される立体画像用印画シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体画像を記録する記録シートとして、樹脂製の透明支持体の一方面にレンズ層(例えばレンチキュラーレンズ)を有し、他方面に画像を記録する受像層を設けた立体画像用印画シートが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などの透明樹脂からなるレンチキュラーレンズシートを基材とし、これの裏面に染料受容層を設けることを備えた立体写真用感熱転写記録シートについて開示されている。これらを備えることにより、極めて簡便に短時間で立体写真が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−282019公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の立体画像用印画シートでは、立体画像用印画シートの厚みが薄かったので、即ち、レンズ層と受像層との距離が短かったので、焦点距離を短くするためにレンズの曲率を小さくする必要があった。このため、光線が広がり易く視点画像が重なりやすくなるので、立体視をする場合に右目に入れるべき画像と、左目に入れるべき画像とうまく分けることができず、ぼやけが生じていた。
【0006】
ぼやけを解消するためには、厚い立体画像用印画シートを作製することにより、レンズ層と受像層との距離を長くして、レンズの曲率を大きくすることが必要である。
【0007】
しかしながら、押出成型法では、厚いシートの作製が可能であるが、押出成型法では熱可塑性樹脂を使用するので、受像層を塗布し、乾燥させるときの乾燥温度約120℃に耐えることができず、結局、レンズシートを作製できても受像層を形成することができなかった。
【0008】
そのため、耐熱性のあるPETフィルムを透明支持体とし、この透明支持体の片面にレンズ層を形成し、反対面に受像層を形成する方法が考えられるが、汎用のPETフィルムは188μm程度の厚みのものしか市販されておらず、ぼやけを防ぐために必要な立体画像用印画シート全体の厚み400μm以上のものを作製するためには厚みが不足していた。
【0009】
そこで、本発明者等は、汎用の耐熱性フィルムを複数枚ホットメルト方式により接着して厚みを稼ぎ立体画像用印画シートを作製する方法を見いだした。しかしながら、この方法には以下に示す課題があった。
【0010】
即ち、この方法で立体画像用印画シートを作製すると、シートにカール(反り)が発生するという課題が発生した。本発明者は、鋭意研究の結果、このカールの原因は以下の2つであることを突き止めた。
【0011】
1つめの原因としては、ホットメルト装置で使用される冷却ローラの曲面がシートに転写されるというものである。つまり、熱可塑性の接着性樹脂を間に挟んだ複数枚の耐熱性フィルムが、冷却ロール上に載置されて運ばれるとき、冷却ローラ上で接着性樹脂が固化することにより、冷却ローラの曲面が耐熱性フィルムに転写され、最終的に立体画像用印画シートを作製したとき、シートにカール(反り)が発生するというものである。
【0012】
2つめの原因としては、耐熱性フィルムの片面にレンズ層を形成することにより、耐熱性フィルムとレンズ層との収縮率等の物性の違いにより、カールが発生するというものである。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑み、複数の耐熱フィルムが貼着することにより厚みを厚く形成でき、カールも低減させることができる、レンズ層と受像層とを有する立体画像用印画シート及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、下記の発明によって解決することができる。
【0015】
即ち、本発明の立体画像用印画シートの製造方法は、第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとを含んだ複数の樹脂フィルムを貼り合わせて形成される透明支持体と、前記透明支持体の一方の面を構成する第1樹脂フィルムの面であるレンズ形成面に形成されるレンズ層と、前記レンズ層の形成により前記透明支持体に発生する応力を相殺するために前記透明支持体の他方の面を構成する第2樹脂フィルムの面である応力相殺面に形成される応力相殺層と、前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に形成される画像を記録する受像層と、を備えた立体画像用印画シートの製造方法であって、前記複数の樹脂フィルムを熱可塑性の接着性樹脂で貼り合わせて前記透明支持体を形成する貼合工程と、前記透明支持体を構成する前記複数の樹脂フィルムのうち、前記第1樹脂フィルムのレンズ形成面に前記レンズ層を形成するレンズ層形成工程と、前記第2樹脂フィルムの前記応力相殺面に前記応力相殺層を形成する応力相殺層形成工程と、前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に前記受像層を形成する受像層形成工程とを備え、前記貼合工程は、前記複数の樹脂フィルムの間に前記接着性樹脂を吐出する吐出ステップと、前記接着性樹脂を間に含む前記複数の樹脂フィルムを、温度調整された冷却ロールと、ニップロールとの間で狭圧して狭圧フィルムを形成する狭圧ステップと、前記狭圧フィルムを前記冷却ロール表面に載置して回転移動させ、剥離ロールに巻き掛けることによって前記狭圧フィルムを剥離させる移動剥離ステップと、剥離された前記狭圧フィルムを冷却ゾーンにおいて冷却する冷却ステップと、を有し、前記移動剥離ステップの間中、前記接着性樹脂の温度が、前記接着性樹脂の融点をmpとしたときに、(mp-40)℃〜(mp-10)℃の範囲になるように制御され、前記冷却ステップの間中、前記狭圧フィルムは、曲率を持たないように平らな状態で搬送されることを主要な特徴にしている。
【0016】
これにより、冷却ロールに載置されて移動している間の接着性樹脂の温度を(mp-40)℃〜(mp-10)℃に制御し、更に、冷却ゾーン内では平らな状態で搬送されるので、接着性樹脂が固化した際は平らな状態なので、接着性樹脂起因のカールを低減させることができる。
【0017】
また、応力相殺層形成工程を備えているので、レンズ層を形成したことにより発生する応力を相殺することができる。これにより、レンズ層を形成したことにより発生するカールを低減させることができる。
【0018】
更に、複数の樹脂フィルムを貼合する貼合工程を有しているので、厚みの厚いシートを形成することができ、レンズ層のレンズの曲率を大きくして、立体視時のぼやけを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の立体画像用印画シートは、第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとを含んだ複数の樹脂フィルムを貼り合わせて形成される透明支持体と、前記透明支持体の一方の面を構成する第1樹脂フィルムの面であるレンズ形成面に形成されるレンズ層と、前記レンズ層の形成により前記透明支持体に発生する応力を相殺するために前記透明支持体の他方の面を構成する第2樹脂フィルムの面である応力相殺面に形成される応力相殺層と、前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に形成される画像を記録する受像層と、を備えた立体画像用印画シートであって、前記立体画像用印画シート全体の厚みが400μm以上になるように、前記複数の樹脂フィルムが貼り合わされて形成されていることを主要な特徴にしている。
【0020】
これにより、応力相殺層を備えているので、レンズ層を形成したことにより発生する応力を相殺することができる。このため、レンズ層を形成したことにより発生するカールを低減させることができる。
【0021】
更に、複数の樹脂フィルムを貼合して形成されているので、厚みの厚いシートを形成することができ、レンズ層のレンズの曲率を大きくして、立体視時のぼやけを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
立体画像用印画シートのカールを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の立体画像用印画シートの層構成を示す斜視図である。
【図2】立体画像用印画シートの製造方法の各製造工程の順番を示した説明図である。
【図3】貼合装置の概略構成を示す概略図である。
【図4】レンズ層形成装置の概略構成を示す概略図である。
【図5】応力相殺層形成装置の概略構成を示す概略図である。
【図6】受像層形成装置の概略構成を示す概略図である。
【図7】打抜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図8】汎用樹脂フィルムに熱電対を貼り付けて貼合工程を実施したときに熱電対によって測定される温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0025】
<立体画像用印画シートの構成>
本発明の立体画像用印画シートの一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の立体画像用印画シートの層構成を示す概略図である。図1に示すように、立体画像用印画シート10は、透明支持体12と、レンズ層14と、受像層16と、応力相殺層18と、を主に含んで構成される。
【0026】
透明支持体12は、複数の汎用樹脂フィルム12A、12Bを接着層12Cで接着することにより構成されている。汎用樹脂フィルム12A、12Bの厚みは、例えば1枚180μmの厚みのものを使用することができる。複数の汎用樹脂フィルム12A、12Bの接着は、ホットメルト方式が用いられホットメルト接着剤である接着層12Cにより行われる。図1において透明支持体12は、汎用樹脂フィルム2枚で構成されているが、2枚に限定されるものではなく、3枚以上の汎用樹脂フィルムを接着することによって構成されても良い。
【0027】
レンズ層14は、透明支持体12の一方の面に形成される。レンズ層14としては、レンチキュラーレンズが好適に用いられるが、レンチキュラーレンズ以外のレンズを用いることもできる。図1においては、レンチキュラーレンズの数は、例として4本で示されているが、4本に限定されるものではなく4本以外の適切な数でレンズ層14を構成することができる。
【0028】
透明支持体12の面のうち、レンズ層14が形成されている面の反対側の面には、応力相殺層18を介して受像層16が形成されている。応力相殺層18は、透明支持体12にレンズ層14が形成されることにより発生する応力で透明支持体12に反り(カールとも称する)が発生することを防ぐことができる。
【0029】
更に説明すると、透明支持体12にレンズ層14を形成すると、透明支持体12とレンズ層14との物性の違いにより、透明支持体12とレンズ層14との接合体に応力が発生し、その応力のために透明支持体12とレンズ層14との接合体に反りが発生する。
【0030】
そこで、透明支持体12の面のうちレンズ層14が形成されている面の反対側の面に透明支持体12と同じような物性を有する応力相殺層18を形成することにより、透明支持体12にレンズ層14を形成することにより発生する応力を相殺し、反りを軽減もしくは防ぐことができる。よって、応力相殺層18としては、レンズ層14と同じ材料を用いることが好ましい。
【0031】
受像層16は、応力相殺層18の面のうち透明支持体12が形成された面の反対側の面に形成されている。受像層16は、画像を形成するための着色剤(染料、顔料等)を取り込んで保持するための層である。よって、受像層16は、熱転写プリンタ、熱昇華型プリンタ、インクジェットプリンタ等、使用するプリンタの種類に応じた適切な材料を選択して形成することができる。ここで言うプリンタは、画像を形成する装置全般を意味し、以下において画像形成装置とも印画装置とも称する場合がある。
【0032】
このように、本発明の立体画像用印画シートは、複数の汎用樹脂フィルムを接着して構成されているので、コストの高い汎用でない厚い樹脂フィルムを使用しなくても、厚く形成することができ、その結果、レンズ層14と受像層16との距離を大きく(立体画像用印画シート全体の厚さが400μm以上)取ることができる。これにより、レンズ層14のレンズの曲率半径を大きくすることができるので、本発明の立体画像用印画シートは、受像層16に形成された立体視のための異なる画像を、右目と左目とに混ざることなく分けて入れることが可能になる。このため、立体画像用印画シートを目で見たとき、少なくとも片方の目に右目の画像と左目の画像とが混ざって見えることにより発生する画像ぼけを防ぐことができる。
【0033】
次に、本発明の立体画像用印画シートを構成する、各構成要素である透明支持体12、レンズ層14、受像層16、応力相殺層18について更に詳しく説明する。
【0034】
(1)透明支持体
透明支持体12は、できるだけ平滑なシート表面を有することが好ましい。また、透明支持体12の一方面に押出ラミネート法でレンズ層14を形成する際に、押出ダイからシート状に押し出された溶融状態のレンズ層用樹脂の熱に耐える必要があり、比較的耐熱性の高い樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等を挙げることができる。特に、平滑性が良好な点から、二軸延伸のポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0035】
また、立体画像用印画シート10に、熱転写インクシート装置やインクジェット装置等の印画装置によって画像を形成したときに上述した画像ボケが発生しないように透明支持体12の厚みは300μm以上あることが必要であり、複数枚の汎用樹脂フィルム12A,12Bをホットメルト接着剤(接着層12Cになる)で貼り合わせて厚くした透明支持体12が使用される。透明支持体12の厚みを調整することにより、立体画像用印画シート全体の厚みを400μm以上とすることが好ましく、500μm以上とすることが特に好ましい。なお、立体画像用印画シートの厚みの上限を記載しなかったが、厚くし過ぎて立体画像用印画シート10としての透明性に不具合が出る厚みを上限とすることができる。
【0036】
(2)レンズ層
レンズ層14を構成する樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリレート-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、またはこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。溶融押出しのし易さを考慮すると、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリレート-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂のような溶融粘度の低い樹脂を用いるのが好ましい。また、後記するレンズ層形成工程でのレンズ層パターンの転写のし易さや連写されたレンズ層14の耐久性、あるいはレンズ層14の割れにくさ等を考慮するとグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いるのがより好ましい。
【0037】
図1を参照して、レンズ層14は50μm〜200μmの厚さ(T)を有し、その表面にレンチキュラーレンズ形状を備える。レンチキュラーレンズ形状は、例えば、100μm〜200μmのレンズ半径(R)、50μm〜100μmのレンズ高さ(H)、100μm〜318μmのレンズ間距離(P)で形成される。ただし、この数値に限定されるものではない。レンチキュラーレンズ形状とは、縦方向に長いかまぼこ型のレンズを横に並べた板状のレンズアレイ、つまり、シリンドリカルレンズが2次元的に配列を持った形状を意味する。
【0038】
(3)受像層
受像層16は、熱転写用インクシート装置から転写された色材を取り込んで着色するものと、インクジェット装置から吐出したインク液滴を取り込んで着色する両方の印画装置に適合した層を選択することができるが、ここでは熱転写方式による受像層の例で詳しく説明する。
【0039】
受像層16は、少なくとも1層の受像層を有し、少なくともポリマーラテックスを含有する。また、受像層16は、水溶性ポリマー、シリコーン、界面活性剤、その他の添加剤を含有しても良い。これら、ポリマーラテックス、水溶性ポリマー、シリコーン、界面活性剤、その他の添加剤については、以下に説明する。
【0040】
(ポリマーラテックス)
ポリマーラテックスについて説明する。本明細書中、ポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したもののことを言う。本実施の形態の受像層16に用いられるポリマーラテックスに用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、ポリウレタン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0041】
(水溶性ポリマー)
次に、水溶性ポリマーについて説明する。本実施の形態においては、受像層16に水溶性ポリマーを含有してもよく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が好ましく用いられ、なかでも後記する受像層形成工程において受像層16を塗布するときのセット性が良好であるという理由からゼラチンが好ましく用いられる。これらの水溶性ポリマーは受像層16の親疎水性の制御に有効であり、多量に使用し過ぎない場合はインクシートからの色材転写が良好であり、転写濃度も良好となる。水溶性ポリマーの使用量は、受像層16の固形分全体の質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。
【0042】
(シリコーン)
次にシリコーンについて説明する。本実施の形態において、受像層16にシリコーンを含有することが好ましく、ポリエーテル変性シリコーンを含有することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーンを含有することが特に好ましい。
【0043】
(界面活性剤)
次に界面活性剤について説明する。本実施の形態において、受像層16に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0044】
(その他の添加剤)
次にその他の添加剤について説明する。本実施の形態の受像層16には、必要に応じて、添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、防腐剤、造膜助剤、硬膜剤、マット剤(滑剤を含む)、酸化防止剤、その他の添加剤を含有させることができる。
【0045】
ちなみに、インクジェット方式に用いられるインク受像層は、例えばポリビニルアルコール、カチオン樹脂等の親水・吸水性のポリマーや樹脂、顔料、バインダー等からなる。
【0046】
(4)応力相殺層
本実施の形態では、透明支持体12の片方の面にラミネートされた応力相殺層18上に受像層16が形成される。応力相殺層18を構成する樹脂の少なくとも1種は、上記したレンズ層14を構成する少なくとも1種の樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。なお、応力相殺層18を構成する樹脂とレンズ層14を構成する樹脂とが複数の樹脂を含む場合、そのすべてが同じ樹脂であることが好ましい。応力相殺層18の樹脂材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリレート-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、またはこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。溶融押出し易さを考慮すると、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリレート-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂のような溶融粘度の低い樹脂を用いるのが好ましく、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いるのがより好ましい。
【0047】
応力相殺層18は、15μm〜50μmの厚さを有するのが好ましく、20μm〜30μmの厚さを有するのがより好ましい。応力相殺層18の厚さ及び樹脂材料を適宜選択することで、後記する立体画像用印画シート10の製造において応力相殺層18は、レンズ層14が透明支持体12に形成されることにより発生するカール(反り)を抑制することができる。
【0048】
<立体画像用印画シートの製造方法>
次に本発明の立体画像用印画シートの製造方法の一実施例について図面を参照して説明する。図2は、立体画像用印画シートの製造方法の各製造工程の順番を示した説明図である。図2に示すように、立体画像用印画シートの製造方法は、貼合工程と、応力相殺層形成工程と、受像層形成工程と、レンズ層形成工程と、打ち抜き工程とを主に含んで構成される。
【0049】
図1と図2とを参照して、貼合工程とは、複数の汎用樹脂フィルム12A、12Bをホットメルト方式で接合し、透明支持体12を形成する工程である。応力相殺層形成工程とは、汎用樹脂フィルム12Bに応力相殺層18を形成する工程である。
【0050】
なお、本実施例においては、2枚の汎用樹脂フィルム12A、12Bを接着することにより透明支持体12を形成すると説明しているが、汎用樹脂フィルムの枚数は、2枚に限定されるものではなく、3枚以上を接着することによって透明支持体12を形成しても良い。このように、貼り合わせる汎用樹脂フィルムの枚数、または、汎用樹脂フィルムの厚みを調整することにより所望の厚さの立体画像用印画シートを製造することができる。
【0051】
即ち、高価な特別仕様の厚い樹脂フィルムを使用して透明支持体を形成することによるコスト高を防ぎ、安価な汎用樹脂フィルムを複数枚貼り合わせて全体として400μm以上の厚みの立体画像用印画シートを製造することができる。これにより、低コストで画像ぼけのしない400μm以上の厚みの立体画像用印画シートを製造することができる。なお、画像ぼけを防ぐためには、立体画像用印画シートの厚みは、500μm以上が更に好ましい。
【0052】
受像層形成工程とは、応力相殺層18に受像層16を形成する工程である。レンズ層形成工程とは、汎用樹脂フィルム12Aにレンズ層14を形成する工程である。打ち抜き工程とは、立体画像用印画シート10を所定のサイズで打ち抜く工程のことである。
【0053】
次に各工程の順番について図2、図1を参照して説明する。本発明の立体画像用印画シートを製造するためには、以下に示す工程順を採用することができる。
【0054】
(工程順の第1態様)
図2(A)は、工程順の第1の態様を示す説明図である。図2(A)、図1を参照して、第1態様では、最初に貼合工程を行い、汎用樹脂フィルム12Aと、汎用樹脂フィルム12Bとをホットメルト方式によりホットメルト接着剤を間に挟んで接合して、透明支持体12を形成する。このホットメルト接着剤が接着層12Cになる。
【0055】
次に、応力相殺層形成工程を行い、透明支持体12の一方の面に応力相殺層18を形成する。その後受像層形成工程を行い、形成された応力相殺層18の面のうち透明支持体12と接合されていない方の面に受像層16を形成する。
【0056】
受像層16が形成された後、レンズ層形成工程を行い、透明支持体12の面のうち応力相殺層18が形成された面の反対側の面にレンズ層14を形成する。その後、打ち抜き工程を行い、レンズ層14が形成されたシートを所定のサイズで打ち抜いて立体画像用印画シート10を作製する。
【0057】
(工程順の第2態様)
図2(B)は、工程順の第2の態様を示す説明図である。図2(B)、図1を参照して、第2態様では、最初に応力相殺層形成工程を行い、汎用樹脂フィルム12Bに応力相殺層18を形成する。
【0058】
次に、受像層形成工程を行い、形成された応力相殺層18の表面に受像層16を形成する。その後、貼合工程を行い、受像層16まで形成された汎用樹脂フィルム12Bと、汎用樹脂フィルム12Aとをホットメルト方式によりホットメルト接着剤を間に挟んで接合して、透明支持体12を形成する。このホットメルト接着剤が接着層12Cになる。
【0059】
その後、レンズ形成工程により、透明支持体12の面のうち応力相殺層18が形成されている面の反対側の面にレンズ層14を形成する。レンズ層14の形成後に、打ち抜き工程を行い、レンズ層14が形成されたシートを所定のサイズで打ち抜いて立体画像用印画シート10を作製する。
【0060】
(工程順の第3態様)
図2(C)は、工程順の第3の態様を示す説明図である。図2(C)、図1を参照して、第3態様では、最初に応力相殺層形成工程を行い、汎用樹脂フィルム12Bに応力相殺層18を形成する。
【0061】
次に、受像層形成工程を行い、形成された応力相殺層18の表面に受像層16を形成する。これら応力相殺層形成工程、受像層形成工程と同時、または順不同にレンズ層形成工程を行い、汎用樹脂フィルム12Aの表面にレンズ層14を形成する。
【0062】
次に、貼合工程により、レンズ層14が形成された汎用樹脂フィルム12Aと、受像層16まで形成された汎用樹脂フィルム12Bとをホットメルト方式によりホットメルト接着剤を間に挟んで接合する。このホットメルト接着剤が接着層12Cになる。この後、打ち抜き工程を行い、貼合工程により貼り合わせたシートを所定のサイズで打ち抜いて立体画像用印画シート10を作製する。
【0063】
次に、各工程について更に詳しく説明する。
【0064】
(1)貼合工程
貼合工程について図3を参照して説明する。図3は、貼合工程を行うための貼合装置300の概略構成を示す概略図である。貼合工程においては、ホットメルト法で貼合を行うので、貼合装置300は、ホットメルトラミネーションを行うための装置である。
【0065】
ホットメルト法(またはホットメルトラミネーション)とは、接着剤を有機溶剤に溶解させることなく、接着剤を加熱することにより適度な粘度にしてシートに塗布し、シートとシートとを接着する方法のことである。
【0066】
図3に示すように、貼合装置300は、接着性樹脂301と、ダイ302と、送り出しロール304と、ニップロール306と、冷却ロール308と、剥離ロール310と、冷却ゾーン312と、巻回ロール314と、を主に備えて構成される。
【0067】
熱可塑性の接着性樹脂301は、加熱により粘度調整されてダイ302から吐出される。ダイ302から吐出された接着性樹脂301は、送り出しロール304によって送り出された汎用樹脂フィルム12Aと、ニップロール306に巻き掛けられている汎用樹脂フィルム12Bと、の間に塗布される。
【0068】
汎用樹脂フィルム12Aと汎用樹脂フィルム12Bとは、接着性樹脂301を間に挟んでニップロールと冷却ロールとの間に挟まれて狭圧される。狭圧された汎用樹脂フィルム12A、12Bは、冷却ロール308上に載置され、冷却されながら送られる。剥離ロール310は、冷却ロール308から汎用樹脂フィルム12A、12Bを剥離させる。
【0069】
続いて汎用樹脂フィルム12A、12Bは、冷却ゾーン312によって冷却されて、間に挟まっている接着性樹脂301は固化する。冷却ゾーン312においては、汎用樹脂フィルム12A、12Bは、曲率を持たないように平らな状態を維持して搬送、冷却することが重要である。
【0070】
このとき、汎用樹脂フィルム12A、12Bが曲率を有していると(平らでない状態であると)、その状態で接着性樹脂301が固化し、立体画像用印画シート10を作製したときにカールが発生するからである。その後、汎用樹脂フィルム12A、12Bは、巻回ロール314に巻回される。固化した接着性樹脂301は、図1に示す接着層12Cになる。
【0071】
ここで、接着性樹脂301としては、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、接着性樹脂301の融点は、80℃から140℃であることが好ましく、110℃であることが更に好ましい。その理由は、低融点の樹脂はダイ302からの押出(吐出)が安定せず、高融点の樹脂は押出温度を高温にしなければならずラミネーション時(狭圧時)に汎用樹脂フィルム12A、12Bにダメージを与えやすいからである。
【0072】
また、冷却ロール308上から剥離させるまでは、汎用樹脂フィルム12A、12Bの間に挟まった接着性樹脂301の温度が、接着性樹脂301の融点をmpとしたときに、mp-40℃〜mp-10℃になるように冷却ロール308の表面温度及び冷却ロール308の回転速度(周速度)を制御することが好ましい。
【0073】
また、接着性樹脂301の温度が冷却ロール308上においてmp-(30)℃〜mp-(10)℃になるように冷却ロール308の表面温度及び冷却ロール308の回転速度(周速度)を制御することが最も好ましい。これにより、冷却ロール308上では接着性樹脂301は完全には固化しないので、冷却ロール308の曲率にあった形状で接着性樹脂301が固化することによる汎用樹脂フィルム12A、12Bのカールの発生を防ぐことができる。
【0074】
また、上記説明においては、工程順の第1の態様の場合を例にとって説明したが、工程順の第2態様の場合は、汎用樹脂フィルム12Bの代わりに、応力相殺層18と受像層16とが形成された汎用樹脂フィルム12Bを用いると考えればよい。
【0075】
冷却ゾーン312としては、冷風を吹き付ける装置や冷却ゾーン312内でフィルムを支持搬送するパスロールを冷却する装置等を好適に採用することができる。
【0076】
更に、工程順の第3態様の場合は、汎用樹脂フィルム12Aの代わりに、レンズ層14が形成された汎用樹脂フィルム12Aを用いると考え、汎用樹脂フィルム12Bの代わりに、応力相殺層18と受像層16とが形成された汎用樹脂フィルム12Bを用いると考えればよい。
【0077】
(2)レンズ層形成工程
次に、レンズ層形成工程について図4を参照して説明する。図4は、レンズ層形成を行うためのレンズ層形成装置39の概略構成を示す概略図である。図4に示すように、乾燥したレンズ層用の原料樹脂がホッパー40を介して押出機42に投入され、混練されながら溶融される。押出機42は単軸式押出機及び多軸式押出機のいずれでもよく、押出機42の内部を真空にするベント機能を含むものでもよい。押出機42で溶融された原料樹脂は、供給管を介して押出ダイ44に送られる。
【0078】
押出ダイ44から原料樹脂がシート状のレンズ層用樹脂シート46として溶融押し出しされる。一方、送出装置48からは帯状の透明支持体12が送り出される。
【0079】
そして、押出ダイ44から押し出されたレンズ層用樹脂シート46と、送出装置48から送り出された帯状の透明支持体12と、が型ローラ50とニップローラ52とでニップされる。型ローラ50のローラ表面には、レンチキュラーレンズの反転形状が形成されている。これにより、レンズ層用樹脂シート46がラミネートされた透明支持体12が形成されると共に、レンズ層用樹脂シート46の表面には型ローラ50によってレンチキュラーレンズのパターン形状が転写される。
【0080】
次に、透明支持体12は型ローラ50に巻き付くように搬送されることにより、型ローラ50内部に設けられた冷却手段(図示せず)により冷却固化された後、剥離ローラ54によって型ローラ50から剥離される。これにより、透明支持体12の一方面にレンズ層14が形成され、巻取装置56に巻き取られる。
【0081】
型ローラ50の温度は、ニップ部でのレンズ層用樹脂シート46の温度がガラス転移温度以上となっているように設定することが好ましい。一方、剥離ローラ54により透明支持体12を型ローラ50から剥離する場合、型ローラ50とレンズ層用樹脂シート46との接着が強すぎると、透明支持体12が不規則に剥離して突起状に変形する。したがって、型ローラ50の温度はレンチキュラーレンズの転写が可能な限りで低く設定することが好ましい。レンズ層用樹脂シート46として、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を採用した場合、型ローラ50の表面温度は30〜90℃、好ましくは40〜70℃とすることが好ましい。なお、型ローラ50の温度を制御するために、型ローラ50内部を熱媒体(温水、油)で満たし循環させる等の公知の手段が採用できる。
【0082】
また、レンズ層用樹脂シート46の熱分解により面状悪化などの問題を生じることから、押出ダイ44からの吐出温度は転写が可能な限りで低く設定することが好ましい。レンズ層用樹脂シートとしてグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を採用した場合、押出ダイ44からの吐出温度は240〜290℃、好ましくは250〜280℃とすることが好ましい。
【0083】
なお、上記説明は、貼合工程の後にレンズ形成工程を行う場合であるが、貼合工程の前にレンズ形成工程を行う場合には、送出装置48からは汎用樹脂フィルム12Aが送りだされ、汎用樹脂フィルム12Aの表面にレンズ層14が形成されることになる。
【0084】
型ローラ50の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として硬質クロムメッキ(HCrメッキ)、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0085】
ニップローラ52の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたものが採用できる。ニップローラ52には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラ50との間の透明支持体12とレンズ層用樹脂シート46とを所定の圧力でニップできる。加圧手段は、いずれも、ニップローラ52と型ローラ50とのニップ点における法線方向に圧力を印加する構成のもので、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段が採用できる。
【0086】
ニップローラ52には、ニップ力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラ52の背面側(型ローラ50の反対側)に図示しないバックアップローラを設ける構成、クラウン形状(中高形状とする)を採用する構成、ローラの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラの構成、及びこれらを組み合わせた構成等が採用できる。
【0087】
剥離ローラ54は、型ローラ50に対向配置され、透明支持体12を巻き掛けることによりレンズ層14がラミネートされた透明支持体12を型ローラ50より剥離するためのローラである。剥離ローラ54の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたものが採用できる。
【0088】
(3)応力相殺層形成工程
本実施の形態では、透明支持体12と受像層16との間に応力相殺層18を形成する応力相殺層形成工程を設ける。
【0089】
図5は応力相殺層形成工程を行う応力相殺層形成装置51の一例である。
【0090】
応力相殺層形成装置51の装置構成は、図5に示すように、図4のレンズ層形成装置39において、型ローラ50が鏡面ローラ58に置き換わっただけで、基本的構成は同じなので、説明は省略する。
【0091】
そして、押出ダイ44からは応力相殺層用樹脂シート60を押し出して透明支持体12の面のうちレンズ層が形成される面の反対側の面に応力相殺層18を形成する。応力相殺層18を形成する樹脂材料としては、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリエチレン樹脂から選択された樹脂を好適に使用できるが、レンズ層14を形成することによる応力を相殺するためには、レンズ層14と同じ樹脂、または似たような物性を有する樹脂を使用することが好ましい。
【0092】
なお、上記説明は、貼合工程の後に樹脂層形成工程を行う場合であるが、貼合工程の前に樹脂層形成工程を行う場合には、送出装置48からは汎用樹脂フィルム12Bが送り出され、汎用樹脂フィルム12Bの表面に応力相殺層18が形成されることになる。
【0093】
(4)受像層形成工程
図6は、受像層形成工程を行う受像層形成装置61の一例である。
【0094】
図6に示すように、片方の面に応力相殺層18が形成された透明支持体12は、送出装置62から送り出されて塗布装置64に搬送され、応力相殺層18の上に受像層形成用の塗布液66が厚さ2μm〜4μmで塗布される。
【0095】
受像層16を形成する塗布液は、水系塗布液であることが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液66の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることを言う。塗布液66の水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、オキシエチルフェニルエーテルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。塗布装置64としては、スライド塗布、バー塗布、スロット塗布、バー塗布等の公知の装置を使用することができる。
【0096】
応力相殺層18上に塗布液66が塗布された透明支持体12は乾燥装置68に搬送される。これにより、塗布液に含まれる溶媒が蒸発し、受像層16を応力相殺層18上に形成された後、巻取装置70に巻き取られる。
【0097】
乾燥装置68内は、40℃〜120℃に設定されることが好ましい。乾燥方法として、ヒータによる乾燥、熱風による乾燥、赤外線ヒータによる各種の乾燥方法を使用することができる。乾燥装置68では、乾燥速度が一定で、材料温度とほぼ湿球温度が等しい恒率乾燥期間と、乾燥速度が遅くなり、材料温度が上昇する減率乾燥期間を経て乾燥が進む。恒率乾燥期間では、外部から与えられた熱はすべて水分の蒸発に使われる。減率乾燥期間では、材料内部での水分拡散が律速になり、蒸発表面の後退等により乾燥速度が低下し、与えられた熱は材料温度上昇にも使われるようになる。
【0098】
なお、上記説明は、貼合工程の後に受像層形成工程を行う場合であるが、貼合工程の前に受像層形成工程を行う場合には、送出装置62からは応力相殺層18が形成された汎用樹脂フィルム12Bが送りだされ、応力相殺層18の上に受像層16が形成されることになる。
【0099】
そして、上記貼合工程と、レンズ形成工程と、受像層形成工程と、樹脂層形成工程と、巻取工程と、の各工程を経ることによって立体画像用印画シート原反10Aが形成される。そして、貼合工程で使用したドライラミ用接着剤12Cの固化反応が完了する前に次の打抜工程によって、立体画像用印画シート原反10Aを所定サイズに打ち抜く。
【0100】
(5)打ち抜き工程
図7は、打抜工程を行う打抜装置72の一例である。
【0101】
図7に示すように、打抜装置72は、主として、立体画像用印画シート原反10Aを搬送すると共に打ち抜きのときに搬送を一旦停止する搬送手段(図示せず)と、立体画像用印画シート原反10Aを打抜き刃で打ち抜く打抜き手段74と、で構成される。
【0102】
搬送手段は、帯状の立体画像用印画シート原反10Aを巻き取る巻取装置(図示せず)と、立体画像用印画シート原反10Aの搬送経路に配置された多数のパスローラ76とで構成され、巻取装置で立体画像用印画シート原反10Aを巻き取ることにより、立体画像用印画シート原反10Aを矢印A方向に搬送する。
【0103】
打抜き手段74は、主として、搬送される立体画像用印画シート原反10Aの上方(原反の表面側)に設けられ、図示しない昇降装置により矢印X−Y方向に昇降するカッタ保持板78と、下方(原反の裏面側)に設けられたカッタ受台80とで構成される。昇降装置としては、カッタ保持板78を精度良く昇降できるものであれば特に限定されないが、例えばシリンダ機構やクランク機構等を採用することができる。
【0104】
カッタ保持板78には、矩形枠状(額縁状)の打抜き刃82が立体画像用印画シート原反10Aの搬送方向に3個、原反の幅方向に2個、合計6個が精密に整列した状態で形成される。打抜き刃82は、立体画像用印画シート原反10Aの搬送方向に沿った一対の平行な裁断方向刃82Aと、裁断方向刃に直交する一対の平行な切断方向刃82Bと、により矩形枠状を呈する所謂トムソン刃構造に形成される。打抜き刃82は下方に向いており、カッタ保持板78の下面から下方に所定長さだけ突出して形成される。
【0105】
一方、カッタ受台80は、固定配置されると共に、打抜き刃82が衝突する平坦な受け面には、打抜き刃82の破損を防止する下敷フィルム84が配置される。下敷フィルム84としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に使用できる。
【0106】
上記の如く構成される打抜き手段74によれば、搬送される帯状の立体画像用印画シート原反10Aを一旦停止し、カッタ保持板78を下降させ、立体画像用印画シート原反10Aを介して打抜き刃82をカッタ受台80に衝突させる。これにより、一度に6枚の枚葉状の立体画像用印画シート10を打ち抜くことができる。
【0107】
なお、本実施の形態では、四角形状シートとして打ち抜く例で説明したが、四角形状シートに限定するものではない。
【0108】
<評価>
次に、貼合工程において、冷却ロール308の表面温度と、周速度(ライン速度とも言う)を変化させたときの立体画像用印画シート10のカールの度合いの評価について説明する。本評価においては、図3に示す装置を使用し、工程順の第2態様において立体画像用印画シート10を作製した。
【0109】
冷却ロール308は、直径500mm、面長(回転軸に平行な方向の長さ)1000mmのサイズのものを使用した。図3を参照して、汎用樹脂フィルム12Bの代わりに応力相殺層18と受像層16とが形成された汎用樹脂フィルム12B(支持体Bと称する)が使用され、支持体Bは、受像層16が下面(ニップロール306に接触する側)になるようにしてニップロール306に送り出された。
【0110】
汎用樹脂フィルム12Aは、送り出しロール304により送り出された。ダイ302から280℃の温度で吐出された接着性樹脂301は、支持体Bと汎用樹脂フィルム12Aとの間に吐出され、厚み30μmの接着層を形成した。このように、支持体Bと汎用樹脂フィルム12Aとは、接着性樹脂301によって接着されて、貼合体Aを形成した。
【0111】
貼合体Aとは、図2(B)において、貼合工程終了後に形成された汎用樹脂フィルム12A、接着層、汎用樹脂フィルム12B、応力相殺層18、受像層16からなるシートのことである。
【0112】
ここで、接着層の厚みは、巻き取った後に、断面をキーエンス製マイクロスコープを用いて測定した。また、接着性樹脂301の温度は、製造中に計測することは困難であるため、事前に製造と同じ押出温度・ライン速度、冷却ロール温度の条件で熱電対を貼り付けた汎用樹脂フィルム12Bを用いてテストし計測した値を接着性樹脂の温度とした。
【0113】
汎用樹脂フィルム12A、12Bは、厚みが188μmのPETフィルムを使用した。接着性樹脂301は、融点が110℃である三井化学製アドマー(LB548)を使用した。
【0114】
後述される条件で応力相殺層形成工程を行い、その後下記実施例、比較例で示される条件で貼合工程を行った後、後述されるような方法で、レンズ形成工程、打ち抜き工程を行って、2Lサイズの立体画像用印画シート10を作製した。作製した立体画像用印画シート10についてカール量の測定を行った。
【0115】
[実施例]
冷却ロール308の周速度(ライン速度)、表面温度をそれぞれ、50m/min、表面温度を80℃(実施例1)、50m/min、60℃(実施例2)、60m/min、100℃(実施例3)に設定して貼合を行い、3種類の貼合体Aを作製した。その際、冷却ロール308から剥離した時点での接着性樹脂301の温度は、それぞれ、90℃(融点-20℃)(実施例1)、70℃(融点-40℃)(実施例2)、100℃(融点-10℃)(実施例3)、であった。この接着性樹脂301温度は、事前に、汎用樹脂フィルム12Bの接着性樹脂が塗布される面に熱電対を貼り付けて実施例1〜3の条件で貼合工程を実施し、この熱電対によって温度を測定したもので、剥離ロール310で剥離されたときの温度を示すものである。
【0116】
更に、図8を参照して説明する。図8は、汎用樹脂フィルム12Bに熱電対を貼り付けて貼合工程を実施したときに熱電対によって測定される温度変化を示す図である。
【0117】
図8の縦軸は、熱電対で測定した測定値を示し、横軸は、経過した時間を示す。この図に示すように、熱電対が貼り付けられた汎用樹脂フィルム12Bをニップロール306と冷却ロール308とで狭圧した時点であるニップ時点Aでは、加熱された接着性樹脂301が塗布されるので、温度が上昇している。
【0118】
狭圧後すぐに冷却ロール308上に載置されて移動するので、冷却ロール308によって冷却され温度が下がってゆく。この冷却ロール308での冷却期間がAとBとの間である。その後、剥離ロール310によって剥離される時点が、剥離時点Bであり、B以後は、冷却ゾーン312で冷却される。このようにして、予め実施例1〜3の条件で熱電次いで測定した温度を、接着性樹脂301の温度とした。
【0119】
剥離した貼合体Aは、長さ20mの冷却ゾーン312において、5℃の冷却風を吹き付けられることにより冷却された。このようにして、接着性樹脂301は冷却されて固化し、接着性樹脂301が固化した貼合体Aは、冷却ロール308に接触していた面を外側にして巻回ロール314に巻き取られた。
【0120】
[比較例1]
貼合体Aを、冷却ゾーン312を通さずに巻回ロール314に巻き取った以外は上記実施例1と同様に行った。
【0121】
[比較例2]
周速度を10m/minにし、冷却ロール308の表面温度を20℃にした。その際、剥離時の接着性樹脂301の温度は40℃であった。それ以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0122】
[カール量の測定]
得られた立体画像用印画シート10についてカール量測定試験を行った。カール量測定試験は、表面が平坦な試験盤の上に立体画像用印画シート10を置き、試験盤表面から浮き上がっている立体画像用印画シート10端部の最大浮き上がり距離を測定することにより行った。
【0123】
[評価結果(カール量の測定結果)]
以下に評価結果を示す。
・実施例1:カールは、レンズ面側(冷却ロール側)を凹にして0.5mmであった。
・実施例2:カールは、レンズ面側(冷却ロール側)を凹にして3.5mmであった。
・実施例3:カールは、レンズ面側(冷却ロール側)を凹にして0.5mmであった。
・比較例1:カールは、レンズ面側(冷却ロール側)を凸(受像層側を凹)にして8mmであった。
・比較例2:カールは、レンズ面側(冷却ロール側)を凹にして9mmであった。
【0124】
以上より、接着性樹脂301の温度が、冷却ロールから剥離される時点において接着性樹脂301の融点をmpとしたときに、(mp-40)℃〜(mp-10)℃になるように接着性樹脂301の温度を制御することにより、カール量を0.5mmから3.5mmに押さえることができた。
【0125】
立体画像用印画シート10のカール量は、製品として4mm以下であれば問題ないので、接着性樹脂301の温度を冷却ロールでの冷却時に(mp-40)℃〜(mp-10)℃になるように制御することで、カール量の少ない立体画像用印画シート10を作製することができることが分かった。
【0126】
一方、比較例1では、実施例1と同じ冷却ロール308の条件で行っても、冷却ロール308と反対向きであり、巻回ロール314と同じ向きであるレンズ面側(冷却ロール側)を凸(受像層側を凹)とするカールを有している。これは、冷却ロール308を通っていないため、接着性樹脂301はまだ完全には固化していない状態で巻回ロール314に巻かれるため、巻回ロール314に巻かれた状態で接着性樹脂301の固化が進み、巻回ロール314の巻かれた状態が転写されたカールが発生したと考えられる。
【0127】
よって、これより、剥離後に冷却ゾーン312を通ることが必要であることが分かった。ここで、上記実施例においては、冷却ゾーン312の条件としては、長さ20mの冷却ゾーン312において、5℃の冷却風を吹き付けることであるが、追加の評価において、冷却ゾーン312では、シートの表面温度が(mp-60)℃以下になるまで冷却することで、冷却ロール308からの剥離時の接着性樹脂301の温度が(mp-40)℃〜(mp-10)℃であれば、カールを4mm以下に抑えられることを確認できた。
【0128】
また、比較例2より、貼合体Aの剥離時接着性樹脂301の温度が40℃のとき、冷却ゾーン312を通しても冷却ロール308と同じ向きであるレンズ面側(冷却ロール側)を凹にしたカールが発生した。
【0129】
これは、冷却ロール308で十分冷却されることにより、接着性樹脂301が完全に固化して、冷却ロール308の曲率が転写されたためと考えられる。これより、冷却ロール308で接着性樹脂301が完全に固化するほど冷却すると、冷却ロール308の曲率が転写されてカールが発生することが分かった。
【0130】
これらからは、冷却ロール上において、冷却され過ぎなければよいので、冷却ロール308からの剥離時の接着性樹脂301の温度の上限については、特制限がないように思われるが、融点に近い温度の場合は接着性樹脂が柔らかいため搬送中に剥がれやすくなるため、上限温度は、(mp-10)℃が好適である。
【0131】
上記評価においては、工程順の第2態様で評価を行ったが、工程の順番は評価結果に影響を及ぼさないので、工程順の第1態様、第3態様で行っても上記と同じ評価結果になる。
【0132】
次に、本評価のサンプルを作製するために行った、応力相殺層形成工程、受像層形成工程、レンズ層形成工程、打ち抜き工程の条件について説明する。これらの工程条件は、上記実施例1−3、比較例1−2において共通である。
【0133】
(応力相殺層形成工程)
汎用樹脂フィルム12Bとして厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(富士フイルム(株)製)を用い、図5の応力相殺層形成装置51を用いて汎用樹脂フィルム12Bの片面に応力相殺層18を形成した。
【0134】
即ち、鏡面ローラ58(φ350mm、表面温度15℃)とニップローラ52の間に20m/分で走行する汎用樹脂フィルム12Bを挿入する。一方、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂PETG(SKケミカル社製)の樹脂シートを、温度280℃に設定した押出ダイ44(吐出幅350mm)より、実測樹脂温度260〜280℃として押し出して、汎用樹脂フィルム12Bと鏡面ローラ58との間に供給する。これにより、汎用樹脂フィルム12Bに応力相殺層18が貼り合わされるので、鏡面ローラ58で冷却固定後に剥離ローラ54で剥離し巻取装置56で巻き取った。
【0135】
次に、応力相殺層18の上に受像層16を形成した。
【0136】
(受像層形成工程)
(1)ポリエーテル変性シリコーンの合成
ポリエーテル変性シリコーンの合成は、伊藤邦雄著「シリコーンハンドブック」(日刊工業新聞社、1990年、p.163)等に記載されている公知の方法を用いることができる。具体的には、撹拌装置と温度計付きガラスフラスコ内で、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体20質量部と片末端アリルエーテル化ポリオキシアルキレン40質量部とを混合し、溶媒としてイソプロピルアルコール20質量部を加えた。更に塩化白金酸を加えて86℃で2時間撹拌した後、赤外吸収スペクトルでSi−Hを示すピークが消失していることを確認し、更に30分間撹拌した。反応液を減圧濃縮することにより、ポリエーテル変性シリコーンを得た。
【0137】
(2)受像層塗布液の調製
下記の組成の受像層塗布液を調製した。
塩化ビニル/アクリル系共重合体ラテックス …20.0質量部(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%)
*塩化ビニル/アクリル系共重合体ラテックス …20.0質量部(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%)
*ゼラチン(10%水溶液)…2.0質量部
*ポリビニルピロリドン…0.5質量部(K−90、商品名、ISP(株)製)
*前記ポリエーテル変性シリコーン(100%)…1.5質量部
*アニオン性界面活性剤A1−1…0.5質量部
*水…50.0質量部
(3)受像層塗布液の塗布
図6の受像層形成装置61を用いて、上記の如く調整した受像層塗布液を応力相殺層18上に乾燥後の塗布量が、2.5g/mになるように塗設した。なお、塗布装置64としてはバー塗布装置を用いた。
【0138】
(レンズ層形成工程)
図4に示すレンズ層形成装置39を用いて、受像層及び応力相殺層が形成された透明支持体12の一方面(受像層のない面)にレンチキュラーレンズのレンズ層14を形成した。
【0139】
レンチキュラーレンズ形状が、半径150μm、レンズ高さ70μm、ピッチ254μmとなるように、ローラ表面にレンチキュラーレンズの反転形状が形成された型ローラ50を使用した。
【0140】
そして、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂PETG(SKケミカル製)を、温度280℃に設定した押出ダイ44(吐出幅330mm)より、実測樹脂温度260〜280℃として押し出した。
【0141】
一方、送出装置48から、受像層及び応力相殺層が形成された透明支持体12を20m/分の搬送速度で送り出した。
【0142】
そして、型ローラ50とニップローラ52との間でニップすることにより、透明支持体12の一方面(受像層のない面)にレンズ層14を形成した。これにより、立体画像用印画シート原反10A(図7に図示)を製造した。
【0143】
(打抜工程)
打ち抜き工程においては、図7の打抜装置72を用いて、製造した立体画像用印画シート原反10Aを2Lサイズの大きさに打ち抜いた。これにより、本発明の立体画像用印画シート10を得ることができた。
【符号の説明】
【0144】
10…立体画像用印画シート、10A…立体画像用印画シート原反、12…透明支持体12A…汎用樹脂フィルム、12B…汎用樹脂フィルム、12C…接着層、14…レンズ層、16…受像層、18…応力相殺層、39…レンズ層形成装置、40…ホッパー、42…押出機、44…押出ダイ、46…レンズ層用樹脂シート、48…送出装置、50…型ローラ、51…応力相殺層形成装置、52…ニップローラ、54…剥離ローラ、55…固形分、56…巻取装置、58…鏡面ローラ、60…応力相殺層用樹脂シート、61…受像層形成装置、62…送出装置、64…塗布装置、66…塗布液、68…乾燥装置、70…巻取装置、72…打抜装置、74…手段、76…パスローラ、78…カッタ保持板、80…カッタ受台、82…刃、82A…裁断方向刃、82B…切断方向刃、84…下敷フィルム、120…乾燥温度約、300…貼合装置、301…接着性樹脂、301…剥離時接着性樹脂、301…接着性樹脂、302…ダイ、304…ロール、306…ニップロール、308…冷却ロール、310…剥離ロール、312…冷却ゾーン、314…巻回ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとを含んだ複数の樹脂フィルムを貼り合わせて形成される透明支持体と、前記透明支持体の一方の面を構成する第1樹脂フィルムの面であるレンズ形成面に形成されるレンズ層と、前記レンズ層の形成により前記透明支持体に発生する応力を相殺するために前記透明支持体の他方の面を構成する第2樹脂フィルムの面である応力相殺面に形成される応力相殺層と、前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に形成される画像を記録する受像層と、を備えた立体画像用印画シートの製造方法であって、
前記複数の樹脂フィルムを熱可塑性の接着性樹脂で貼り合わせて前記透明支持体を形成する貼合工程と、
前記透明支持体を構成する前記複数の樹脂フィルムのうち、前記第1樹脂フィルムのレンズ形成面に前記レンズ層を形成するレンズ層形成工程と、
前記第2樹脂フィルムの前記応力相殺面に前記応力相殺層を形成する応力相殺層形成工程と、
前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に前記受像層を形成する受像層形成工程とを備え、
前記貼合工程は、
前記複数の樹脂フィルムの間に前記接着性樹脂を吐出する吐出ステップと、
前記接着性樹脂を間に含む前記複数の樹脂フィルムを、温度調整された冷却ロールと、ニップロールとの間で狭圧して狭圧フィルムを形成する狭圧ステップと、
前記狭圧フィルムを前記冷却ロール表面に載置して回転移動させ、剥離ロールに巻き掛けることによって前記狭圧フィルムを剥離させる移動剥離ステップと、
剥離された前記狭圧フィルムを冷却ゾーンにおいて冷却する冷却ステップと、
を有し、
前記移動剥離ステップの間中、前記接着性樹脂の温度が、前記接着性樹脂の融点をmpとしたときに、(mp-40)℃〜(mp-10)℃の範囲になるように制御され、
前記冷却ステップの間中、前記狭圧フィルムは、曲率を持たないように平らな状態で搬送される、立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項2】
前記立体画像用印画シート全体の厚みが400μm以上になるように、前記貼合工程において、必要枚数の前記複数の樹脂フィルムを貼り合わせる、請求項1に記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項3】
前記応力相殺層が、前記レンズ層を構成する少なくとも1種の樹脂を含んで構成される請求項1または2に記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項4】
前記応力相殺層形成工程を行い、
前記応力相殺層形成工程の後に、前記受像層形成工程を行い、
前記受像層形成工程の後に、前記貼合工程を行い、
前記貼合工程の後に、前記レンズ層形成工程を行う、
請求項1から3のいずれか一つに記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項5】
前記応力相殺層形成工程を行い、
前記応力相殺層形成工程の後に、前記受像層形成工程と前記レンズ層形成工程とを行い、
その後に、前記貼合工程を行う、
請求項1から3のいずれか一つに記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項6】
前記貼合工程を行い、
前記貼合工程の後に、前記応力相殺層形成工程を行い、
前記応力相殺層形成工程の後に、前記受像層形成工程を行い、
前記受像層形成工程の後に、前記レンズ層形成工程を行う、
請求項1から3のいずれか一つに記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項7】
前記冷却ステップでは、5℃の冷却風を前記狭圧フィルムに吹き付けることによって前記狭圧フィルムを冷却する請求項1から6のいずれか一つに記載の立体画像用印画シートの製造方法。
【請求項8】
第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとを含んだ複数の樹脂フィルムを貼り合わせて形成される透明支持体と、
前記透明支持体の一方の面を構成する第1樹脂フィルムの面であるレンズ形成面に形成されるレンズ層と、
前記レンズ層の形成により前記透明支持体に発生する応力を相殺するために前記透明支持体の他方の面を構成する第2樹脂フィルムの面である応力相殺面に形成される応力相殺層と、
前記応力相殺層の面のうち前記応力相殺面に相対する面とは反対側の面に形成される画像を記録する受像層と、
を備えた立体画像用印画シートであって、
前記立体画像用印画シート全体の厚みが400μm以上になるように、前記複数の樹脂フィルムが貼り合わされて形成されている立体画像用印画シート。
【請求項9】
前記応力相殺層が、前記レンズ層を構成する少なくとも1種の樹脂を含んで構成される請求項8に記載の立体画像用印画シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255879(P2012−255879A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128303(P2011−128303)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】