説明

立体異性強化アミンの製造方法

本発明は、式(I)[式中、R6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルケニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]事を含む、式(I)[式中、R6は水素である]で示される立体異性強化化合物を製造する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は、2003年12月4日出願の米国特許出願第60/527143号に対する優先権を主張するものであり、これを引用により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、立体異性強化アミンの製造方法に関するものである。本明細書に開示する立体異性強化アミンは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ酵素を阻害する化合物の製造に有用である。
【背景技術】
【0003】
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、身体免疫系の緩慢な崩壊と、中枢および末梢神経系の進行性荒廃を惹起する。1980年代初期に最初に認識されて以来、AIDSは急速に蔓延し、今や人口の比較的限られた部分の中で大流行に至っている。徹底的な研究の結果、原因因子であるヒトTリンパ球向性レトロウイルスIII(HTLV-III)(現在ではHIVと呼ばれるのがより一般的である)が発見された。
【0004】
HIVは、レトロウイルスとして知られるウイルスのクラスの成員であり、AIDSの病原因子である。レトロウイルスゲノムはRNAで構成されており、これが逆転写酵素によってDNAに変換される。次いでこのレトロウイルスDNAが宿主細胞の染色体に安定的に組み込まれ、宿主細胞の複製プロセスを利用して新たなレトロウイルス粒子を産生し、感染を他の細胞へと進展させる。HIVは、身体の免疫系で不可欠な役割を果たすヒトT-4リンパ球に対する特別な親和性を持っているように見える。この白血球へのHIV感染は、白血球数を涸渇させる。結局、免疫系は、種々の日和見疾患、特にニューモシスティスカリニ肺炎、カポジ肉腫、およびリンパ系の癌に対して無作用且つ無効な状態に陥る。
【0005】
HIVウイルスの形成と働きの正確なメカニズムは分かっていないが、このウイルスの同定が、この疾患の制圧に幾らかの進歩を導いた。例えば、薬物アジドチミジン(AZT)が、HIVウイルスのレトロウイルスゲノムの逆転写阻害に有効であることが判明し、その結果、AIDSに罹患した患者を治癒するまでには至らずとも制御する手段を与えることとなった。致死的なHIVウイルスを治癒できる、または少なくとも改善された制御手段を提供できる薬物への探索、ひいてはAIDSおよび関連疾患の処置に対する探索が続いている。
【0006】
レトロウイルスの複製は、通常ポリ蛋白の翻訳後プロセシングを特徴としている。このプロセシングはウイルスによってコードされているHIVプロテアーゼ酵素によって遂行される。それにより成熟ポリペプチドが生成し、続いてこれが感染性ウイルスの形成と機能を助ける。もしこの分子プロセシングが阻止されたならば、HIVの正常な産生は終結する。故にHIVプロテアーゼのインヒビターは抗HIVウイルス剤として機能し得る。
【0007】
HIVプロテアーゼはHIV構造蛋白pol25遺伝子からの翻訳産物の一つである。このレトロウイルスプロテアーゼは、別個の部位にある他の構造ポリペプチドを特異的に開裂させ、新しく活性化されたこれらの構造蛋白および酵素を放出し、それによってビリオンを複製適格にさせる。このようにして、有効な化合物によるHIVプロテアーゼの阻害は、HIV-1生活環の初期相において、感染したTリンパ球のプロウイルス組み込みを防止すると共に、後期においてはウイルスによる蛋白分解的プロセシングを阻害することができる。さらに、プロテアーゼインヒビターは、より容易に取得でき、ウイルス中でより長時間生存し、そして、恐らくはそのレトロウイルスプロテアーゼに対する特異性の故に、現在入手可能な薬物よりも毒性が低いという利点を有し得る。
【0008】
HIVプロテアーゼインヒビターとして有用な化合物の製造方法は、例えば米国特許第5962640号:米国特許第5932550号;米国特許第6222043号;米国特許第5644028号;WO02/100844、オーストラリア国特許第705193号;カナダ国特許出願第2179935号;欧州特許出願第0751145号;日本国特許出願第100867489号;Y. Hayahsi, et al., J. Org. Chem., 66, 5537-5544(2001);K. Yoshimura, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 8675-8680(1999);およびT. Mimoto, et al., J. Med. Chem., 42, 1789-1802(1999)に記載されている。多くのHIVプロテアーゼインヒビターは1またはそれ以上の不斉炭素原子を含む複雑な分子である。このような化合物を効率的に、そして立体化学の点で選択的に製造することは、合成化学者が直面している難問である。このニーズに対処する幾つかの立体選択的化学合成法が考案されてはいるが、一般にそれらは広範囲の分子に適用することができない。したがって、そのような複雑な分子の効率的な製造に利用できる立体選択的方法の開発に対する必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、水素、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8の各々は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(I)[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は前記と同意義であり、R6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法、
に関するものである。
【0010】
本発明の別の側面は、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CH2)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは1ないし3の整数である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0012】
本発明の別の側面は、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CH2)(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、およびC6-C14アリール[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;そして、
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれる]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の側面において、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれる]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素、弗素、メチルおよび-OCH3から個別に選ばれる]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0015】
本発明の別の側面では、式(I)[式中、
ZはSであり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5はメチルであり;そして、
R6は水素である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0016】
本発明の別の側面は、式(I)[式中、
Zは、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは1ないし3の整数である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-CH2CH=CH2、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素ならびにメチル、エチル、ブチルおよびペンチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素、弗素、塩素、C1-C10アルキルおよびC1-C10アルコキシから個別に選ばれる]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、式(IA):
【化2】

[式中、
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;そして、
R7はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、式(IC):
【化3】

[式中、
R1は前記と同意義であり、そしてR6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-CH2(C6-C14アリール)、および-CH2(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R7)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法、
に関するものである。
【0019】
本発明はさらに、式(IC)[式中、R1は-C(O)OC(CH3)3であり、そしてR6は-CH3である]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]事を含む、式(IA)[式中、R1は-C(O)OC(CH3)3である]で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法に関するものである。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、式(IC)[式中、R1は-CH2Phであり、そしてR6は-CH3である]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]事を含む、式(IA)[式中、R1は-CH2Phである]で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0021】
本発明の別の側面では、式(IB):
【化4】

[式中、
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;そして、
R7はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、式(ID):
【化5】

[式中、
R1は前記と同意義であり、そしてR6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-CH2(C6-C14アリール)、および-CH2(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R7)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、式(ID)[式中、R1は-C(O)OC(CH3)3であり、そしてR6は-CH3である]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む、式(IB)[式中、R1は-C(O)OC(CH3)3である]で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法に関するものである。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、式(ID)[式中、R1は-CH2Phであり、そしてR6は-CH3である]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]事を含む、式(IB)[式中、R1は-CH2Phである]で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0024】
さらに本発明においては、式(I)、(IA)、および(IB)で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法であって、該生体触媒が、アルカリプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、およびこれらの任意の組み合わせから選ばれる方法を提供する。本発明の別の側面では、該生体触媒が、Klebsiella oxytoca、Aspergillus melleus、Bacilius subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus lentus、およびブタ肝エステラーゼから選ばれる方法を提供する。
【0025】
本発明はさらに、式(I):
【化6】

[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、水素、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれ;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割のための方法であって、
上記式(I)の化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理し、式(I)[式中、R6は水素である]で示される立体異性強化化合物を得る方法に関するものである。
【0026】
本発明のさらに別の側面は、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;、
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0027】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CH2)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは1ないし3の整数である]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CH2)(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;、
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、およびC6-C14アリール[式中、C6-C14アリールは所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;そして、
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれる]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0029】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、およびC1-C10アルコキシから個別に選ばれる]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0030】
本発明はさらに、式(I)[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素、弗素、メチル、および-OCH3から個別に選ばれる]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0031】
本発明の別の側面では、式(I)[式中、
ZはSであり;
R1は、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5はメチルであり;そして、
R6は水素である]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0032】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-(CR7R8)(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;、
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0033】
本発明の別の側面は、式(I)[式中、
Zは、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;
R2およびR3は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは1ないし3の整数である]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0034】
本発明のさらに別の側面では、式(I)[式中、
Zは-(CR7R8)-であり;
R1は、-CH2Ph、-CH2CH=CH2、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3は水素であり;
R4およびR5は、水素ならびにメチル、エチル、ブチルおよびペンチルから個別に選ばれ;
R6は水素であり;そして、
R7およびR8は、水素、弗素、塩素、C1-C10アルキル、およびC1-C10アルコキシから個別に選ばれる]
で示される化合物の分割のための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0035】
本発明の別の側面は、式(II):
【化7】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15、または-Si(R15)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(II)[式中、R10、R11、R12、およびR13は前記と同意義であり、そしてR14は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法、
を提供する。
【0036】
本発明のさらに別の側面では、
式(II):
[式中、
R10は、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0037】
本発明のさらに別の側面では、
式(II):
[式中、
R10は、-C(O)OR15または-C(O)C(O)OR15であり;
R11は、水素またはC1-C10アルキルであり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、およびC2-C10アルキニルから個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;そして、
R15はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0038】
本発明のさらに別の側面では、
式(II):
[式中、
R10は、-C(O)OR15または-C(O)C(O)OR15であり;
R11は水素であり;
R12は水素であり;
R13はC2-C10アルケニルであり;
R14は水素であり;そして、
R15はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0039】
本発明のさらに別の側面は、
式(II):
[式中、
R10は、-C(O)OR15または-C(O)C(O)OR15であり;
R11は水素であり;
R12は水素であり;
R13はC2-C5アルケニルであり;
R14は水素であり;そして、
R15は-C(CH3)3である]
で示される立体異性強化化合物を製造するための、本明細書に記載の方法を提供する。
【0040】
本発明はさらに、式(IIA):
【化8】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、および-C(O)C(O)OR15から選ばれ;且つ、
R15およびR16の各々は、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(IIB):
【化9】

[式中、R10は前記と同意義であり、そしてR14は、C1-C10アルキルである]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法、
に関するものである。
【0041】
R10が-C(O)OC(CH3)3である式(IIA)の立体異性強化化合物を製造するための本明細書に記載の方法であって、式(IIB)[式中、R10は前記と同意義であり、そしてR14はメチルである]の化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む方法もまた、本発明において提供する。
【0042】
本発明においては、式(II)および/または(IIA)で示される立体異性強化化合物を製造するための本明細書に記載の方法であって、該生体触媒が、アルカリプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、およびこれらの任意の組み合わせから選ばれる方法もまた提供する。本発明の別の側面では、該生体触媒が、Klebsiella oxytoca、Aspergillus melleus、Bacilius subtilis、およびブタ肝エステラーゼから選ばれる方法を提供する。
【0043】
本発明のさらに別の側面では、式(II):
【化10】

[式中、
R1は、水素、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、または-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R3およびR4は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R3およびR4が共に水素であることはなく;
R5は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれ;
R7およびR8は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割のための方法であって、
式(II)の化合物を、水性溶媒、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理し、R5が水素である式(II)の立体異性強化化合物を得ることを含む方法、
を提供する。
【0044】
本発明のさらに別の側面では、式(II):
【化11】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15、または-Si(R15)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
(i) 式(II)[式中、R10、R11、R12、R13、およびR14は前記と同意義である]の化合物を、キラル非ラセミ塩基で処理してジアステレオマー塩の混合物を得;
(ii) そのジアステレオマー塩を互いに分離し;そして、
(iii) このジアステレオマー塩を式(II)の立体異性強化化合物に変換する、
ことを含む方法を提供する。
【0045】
本発明のさらに別の側面では、式(II):
【化12】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15、または-Si(R15)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割方法であって、
(i) 式(II)[式中、R10、R11、R12、R13、およびR14は前記と同意義である]の化合物を、キラル非ラセミ塩基で処理してジアステレオマー塩の混合物を得;
(ii) そのジアステレオマー塩を互いに分離し;そして、
(iii) このジアステレオマー塩を式(II)の立体異性強化化合物に変換する、
ことを含む方法を提供する。
【0046】
本発明はさらに、式(IIA):
【化13】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、および-C(O)C(O)OR15から選ばれ;且つ、
R15およびR16の各々は、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割方法であって、
(i) 式(IIA)[式中、R10は前記と同意義である]の化合物を、キラル非ラセミ塩基で処理してジアステレオマー塩の混合物を得;
(ii) そのジアステレオマー塩を互いに分離し;そして、
(iii) このジアステレオマー塩を式(IIA)の立体異性強化化合物に変換する、
ことを含む方法に関するものである。
【0047】
R10が-C(O)OC(CH3)3である式(IIA)の化合物を分割する、本明細書に記載の方法もまた本発明において提供する。
【0048】
キラル非ラセミ塩基が(R)-(-)-2-フェニルグリシノールまたは(S)-(+)-2-フェニルグリシノールである、式(IIA)の化合物を分割する、本明細書に記載の方法もまた本発明に包含する。本発明において有用なその他の分割剤には、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオールのいずれかのエナンチオマーおよび1-フェニル-1-アミノエタンのいずれかのエナンチオマーを包含する(但しこれらに限定される訳ではない)その他のキラル非ラセミアミンがある。
【0049】
本明細書中使用する「含む」および「包含する」という語は、無制約的、非制限的意義で使用する。
【0050】
本明細書中使用する「HIV」という語は、ヒト免疫不全ウイルスを意味する。本明細書中使用する「HIVプロテアーゼ」という語は、ヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼ酵素を意味する。
【0051】
本明細書中使用する「C1-C10アルキル」という語は、別途指摘のない限り、直鎖、分枝、もしくは環状部分を有する飽和一価炭化水素ラジカル(融合および架橋した二環およびスピロ環状部分を包含する)、または前記部分の組み合わせを包含し、1-10個の炭素原子を含む。アルキル基が環状部分を有するためには、その基は少なくとも3個の炭素原子を持っていなければならない。このような基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等を包含するがこれらに限定されない。
【0052】
本明細書中使用する「C2-C10アルケニル」という語は、別途指摘のない限り、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有するアルキル部分[ここでアルキルは前記と同意義である]を包含し、このアルケニル部分のEおよびZ異性体を包含し、且つ2ないし10個の炭素原子を有する。
【0053】
本明細書中使用する「C2-C10アルキニル」という語は、別途指摘のない限り、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有するアルキル部分[ここでアルキルは前記と同意義である]を包含し、且つ2ないし10個の炭素原子を有する含む。
【0054】
「C3-C10シクロアルキル基」という語は、合計3ないし10個の環上炭素原子を有する(但しヘテロ原子を持たない)飽和または部分飽和単環または融合もしくはスピロ多環式環構造を意味することを意図している。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルなどの基がある。
【0055】
本明細書中使用する「C6-C10アリール」という語は、別途指摘のない限り、芳香族炭化水素から1個の水素を除去することによって誘導される有機ラジカル、例えばフェニルまたはナフチルを包含する。本明細書中使用する「Ph」および「フェニル」という語は-C6H5基を意味する。
【0056】
本明細書中使用する「4-10員環ヘテロ環」という語は、別途指摘のない限り、O、SおよびNから各々選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含む芳香族および非芳香族ヘテロ環式基[ここで各ヘテロ環式基はその環系に4-10個の原子を有し、但し、この基の環は隣接する2個のOまたはS原子を含まない]を包含する。さらに、このヘテロ環式基に含まれる硫黄原子は1または2個の硫黄原子によって酸化され得る。非芳香族ヘテロ環式基はその環系に4個の原子を有するのみであるが、芳香族ヘテロ環式基はその環系に少なくとも5個の原子を含まなければならない。このヘテロ環式基はベンゾ融合環系を包含する。4員環ヘテロ環式基の一例はアゼチジニル(アゼチジンから誘導する)である。5員環ヘテロ環式基の一例はチアゾリルであり、10員環ヘテロ環式基の一例はキノリニルである。非芳香族ヘテロ環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリルおよびキノリジニルである。芳香族ヘテロ環式基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。上に列挙した基から誘導される前記の基は、可能ならばC結合またはN結合であってよい。例えば、ピロールから誘導される基はピロール-1-イル(N結合)またはピロール-3-イル(C結合)であってよい。さらに、イミダゾールから誘導される基は、イミダゾール-1-イル(N結合)またはイミダゾール-3-イル(C結合)であってよい。2個の環上炭素原子がオキソ部分(=O)で置換されているヘテロ環式基の一例は、1,1-ジオキソチオモルホリニルである。
【0057】
「ヘテロアリール基」は、窒素、酸素、および硫黄から選ばれる1ないし5個のヘテロ原子を含む4ないし18個の環上原子を有する単環式または融合もしくはスピロ多環式芳香環構造を意味することを意図している。ヘテロアリール基の実例は、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、フリル、ピリジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、キノキサリニル、ベンズチアゾリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル等を包含する。
【0058】
本明細書中使用する「アルコキシ」という語は、別途指摘のない限り、O-アルキル基[ここで、アルキルは前記と同意義である]を包含する。
【0059】
本明細書中使用する「ハロゲン」および「ハロ」という語は、塩素、弗素、臭素または沃素を表す。
【0060】
「置換された」という語は、明記した基または部分が1またはそれ以上の置換基を有することを意味する。「置換されていない」という語は、明記した基が置換基を持たないことを意味する。「所望により置換されていてもよい」という語は、明記した基が1またはそれ以上の置換基で置換されていても置換されていなくてもよいことを意味する。
【0061】
当分野で用いられる慣例に従い、
【化14】

という記号は、当該部分または置換基が核またはバックボーン構造に結合している点である結合を示すために、本明細書の構造式で使用する。別の慣例によれば、本明細書中の幾つかの構造式では、炭素原子およびそれらに結合している水素原子は明確に記載されておらず、例えば
【化15】

はメチル基を表し、
【化16】

はエチル基を表し、
【化17】

はシクロペンチル基を表す、等である。
【0062】
「立体異性体」という語は、同一の化学構造を持つが空間での原子または基の配置が異なっている化合物を指す。特に「エナンチオマー」という語は、或る化合物の、互いに重ね合わせることのできない鏡像である2個の立体異性体を指す。本明細書中使用する「ラセミ体の」または「ラセミ混合物」という語は、或る特定化合物のエナンチオマーの1:1混合物を指す。これに対して「ジアステレオマー」という語は、2またはそれ以上の不斉中心を含み、互いに鏡像でない一対の立体異性体の関係を指す。
【0063】
本明細書中使用する「立体化学的に強化された」生成物という語は、特定の立体異性体が、存在可能な別の立体異性生成物に比較して、統計学上有意に、より多量に存在している反応生成物を指す。例えば、或るエナンチオマーを他のエナンチオマーより多量に含んでいる生成物は、立体化学的に強化された生成物を構成する。同様に、或るジアステレオマーを他のジアステレオマーより多量に含んでいる生成物もまた、立体化学的に強化された生成物を構成する。本発明が包含する方法およびプロセスは「立体化学的に強化された」生成物を提供すると言える。このような場合、本発明が包含する方法およびプロセスは、存在し得る全立体異性体がほぼ同量で存在する立体異性化合物の混合物から出発して、少なくとも1つの立体異性体が他の立体異性体よりも統計学上有意に、より多量に存在する生成物を提供する。
【0064】
出発物質が立体異性体混合物、例えばラセミ混合物を構成する場合、キラル非ラセミ試薬または触媒、例えば生体触媒、光学活性塩基、または光学活性酸の存在下では、一つの立体異性体が別の立体異性体よりもゆっくり反応することがある。本明細書ではこのような反応を速度論的分割と称し、この場合、反応体エナンチオマーが異なる反応速度で分割して、立体化学的に強化された生成物と立体化学的に強化された未反応出発物質を生成する。速度論的分割は通常、出発物質の唯一の立体異性体と反応するに充分な量のキラル非ラセミ試薬または触媒を使用することにより達成する。
【0065】
本明細書中使用する「キラル非ラセミ塩基」という語は、エナンチオマー型で存在でき、対応する逆のエナンチオマーと同量では存在しない塩基性化合物を意味する。例えば、化合物2-フェニルグリシノールは逆の配置を持つ2種類のエナンチオマー、いわゆる(R)-および(S)-エナンチオマーとして存在する。(R)-および(S)-エナンチオマーが同量存在する場合、そのような混合物を「ラセミ体」であると言う。しかし、一方のエナンチオマーが他方よりも多量に存在する場合、この混合物は「非ラセミ型」であると言う。
【0066】
「分割」および「分割する」という語は、立体異性体混合物、例えば特定化合物の二種類のエナンチオマーを含むラセミ混合物から、立体異性化合物を物理的に分離する方法を意味する。本明細書中使用する「分割」および「分割する」とは、部分的および完全な分割の両者を包含することを意味する。
【0067】
「酵素的プロセス」、「酵素的方法」、「酵素的反応」、または「酵素的分割」という語は、酵素または微生物を使用する本発明に係るプロセスまたは方法または反応を指す。
【0068】
本明細書中使用する「生体触媒」という語は、動物、植物、微生物などから得られる酵素または酵素混合物を指す。この酵素または酵素群は、精製形態、粗製形態、他の酵素との混合物、微生物発酵ブロス、発酵ブロス、微生物体、濾液または発酵ブロスなどといった任意の形態で、単独または組み合わせて利用できる。加えて、この酵素または微生物体を例えば樹脂上に固定化してもよく、またはこれは架橋した酵素結晶の形態といった固体形態であってもよい。
【0069】
さらに、「立体選択的プロセス」とは、反応生成物のうち特定の立体異性体を、存在可能なその生成物の別の立体異性体に優先して産生するプロセスである。エナンチオ選択性は一般に以下のごとく定義する「エナンチオ過剰率」(ee)として定量する:[エナンチオ過剰率 % A(ee)=(エナンチオマーAの%) − (エナンチオマーBの%)][式中、AおよびBは出発物質から生成したエナンチオマー生成物である]。
【0070】
本発明化合物は不斉炭素原子を有することがある。本発明化合物の炭素-炭素結合は、本明細書において、実線
【化18】

、実線楔形
【化19】

、または点線楔形
【化20】

で示される。不斉炭素原子との結合を示す実線の使用は、その炭素原子における全ての可能な立体異性体の包含を示すことを意味する。不斉炭素原子との結合を示す実線楔形または点線楔形の使用は、示されている立体異性体のみが含まれていることを意味する。本発明化合物は1以上の不斉炭素原子を含むことが可能である。そのような化合物では、不斉炭素原子との結合を示す実線の使用は、全ての可能な立体異性体の包含を示すことを意味する。本発明化合物における、1またはそれ以上の不斉炭素原子との結合を示す実線の使用、および、同化合物における別の不斉炭素原子との結合を示す実線楔形または点線楔形の使用は、ジアステレオマー混合物の存在を示すことを意味している。
【0071】
本明細書中使用する「処理する」という語は、少なくとも2種類の化学反応体を相互に接触に至らせ、化学反応または変換が起こるようにさせることを意味する。例えば、本発明に係るプロセスでは、式(II)の化合物をキラル非ラセミ塩基で処理し、化学反応生成物として塩を得ることができる。このような反応では、式(II)の化合物を塩基で処理すると言う。こうした反応は、反応体の実体およびそれらの物理的性質に応じて、固相、液相、気相、溶液、または前記のいずれかの組み合わせにおいて起こり得る。
【0072】
本明細書中使用する「分離する」または「分離された」という語は、少なくとも2種類の異なる化学化合物を相互に物理的に単離するプロセスを意味する。例えば、化学反応が起こって少なくとも2種類の生成物(A)と(B)が生成する場合、(A)と(B)の両方を純な形で単離するプロセスを、(A)と(B)を「分離する」と称する。
【0073】
本明細書中使用する「加水分解された」という語は、本発明に係る生体触媒により仲介され得る化学反応であって、エステル、アミド、またはその両者を、対応するカルボン酸誘導体に変換する反応を意味する。例えば、或る反応が、R6が水素以外である式(I)の化合物を、R6が水素である式(I)の化合物に変換する時、式(I)の化合物が加水分解されたと言う。
【0074】
本明細書中使用する「変換する」という語は、出発物質または物質群に化学反応を起こさせて異なる化学生成物を生成させることを意味する。例えば、化学反応体(A)および(B)を相互に反応させて生成物(C)を生成させる時、出発物質(A)および(B)は生成物(C)に「変換された」と言うか、または(A)は(C)に「変換された」と言うか、または(B)は(C)に「変換された」と言う。さらに、本発明に係るプロセスでは、式(I)で示される化合物の塩型は、式(I)の化合物に「変換される」と言う。このような場合、「変換される」という語は、式(I)の化合物の非塩型が、通常は適当な酸、塩基、または酸と塩基の組み合わせとの反応により、対応する塩型から製造されたことを意味している。
【0075】
本発明に係る個別的立体異性化合物の溶液は、平面偏光を回転させることができる。本発明化合物の名称中の(+)または(-)記号の使用は、その立体異性体の溶液が平面偏光を、 (+)または(-)の向きに回転することを示す(これは当業者に既知の技術を用いて測定する)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
発明の詳細な説明
ジアステレオマー混合物は、当業者に既知の方法、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶により、それらの物理的化学的相違に基づいて個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適当な光学活性化合物(例えばアルコール)との反応により、そのエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、このジアステレオマー群を分離し、そしてその個々のジアステレオマーを、対応する純粋なエナンチオマーに変換する(例えば加水分解する)ことによって分離できる。ジアステレオマー混合物および純粋なエナンチオマーを包含するこれら異性体は全て本発明の一部であると考えられる。
【0077】
或いは、本発明に係る個々の立体異性化合物を不斉合成によってエナンチオマー的に強化された形態で製造することができる。不斉合成は、当業者に既知の技術、例えば、商業的に入手し得る、または当業者に既知の方法を用いて容易に製造できる不斉出発物質を使用して、または合成の終了時に除去できる不斉補助基を用いて、または酵素的方法を利用する中間体化合物の分割によって、実施できる。このような方法の選択は、出発物質の入手可能性、方法の相対的効率、およびそのような方法が特定の官能基を含む本発明化合物にとって有用であるかどうかという事を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)諸因子に依存する。係る選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0078】
本発明化合物が不斉炭素原子を含む場合、誘導される塩、プロドラッグおよび溶媒和物は、単一の立体異性体、ラセミ化合物、および/またはエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物として存在し得る。このような単一の立体異性体、ラセミ化合物、およびその混合物は全て本発明の範囲内にあることを意図している。
【0079】
当業者には一般に理解されているように、光学的に純粋な化合物はエナンチオマー的に純粋である化合物である。好ましくは本発明に係る光学的に純粋な化合物は、少なくとも90% (80%エナンチオ過剰率)、より好ましくは少なくとも95%(90% e.e.)、さらに好ましくは少なくとも97.5%(95% e.e.)、そして最も好ましくは少なくとも99%(98% e.e.) の単一立体異性体を含む。
【0080】
本発明方法で使用する誘導体が塩基である場合、所望の塩は、遊離塩基を無機酸、例えば塩酸;臭化水素酸;硫酸;硝酸;燐酸;等で、または有機酸、例えば酢酸;マレイン酸;琥珀酸;マンデル酸;フマル酸;マロン酸;ピルビン酸;蓚酸;グリコール酸;サリチル酸;ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸またはガラクチュロン酸;α-ヒドロキシ酸、例えばクエン酸または酒石酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸;芳香族酸、例えば安息香酸または桂皮酸;スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などで処理することを包含する、当分野で既知の適当な方法によって製造できる。
【0081】
本発明方法で使用する誘導体が酸である場合、所望の塩は、遊離酸を無機または有機塩基、例えばアミン(第一、第二または第三);アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物;などで処理することを包含する、当分野で既知の適当な方法によって製造できる。適当な塩の実例は、アミノ酸、例えばグリシンおよびアルギニン;アンモニア;第一、第二、および第三アミン;ならびに環状アミン、例えばピペリジン、モルホリン、およびピペラジンから誘導される有機塩;ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから誘導される無機塩を包含する。
【0082】
固体である誘導体、プロドラッグ、塩、または溶媒和物の場合、本発明方法で使用する誘導体、プロドラッグ、塩、および溶媒和物は異なる多形または結晶形で存在でき、これらの全てが本発明および明記した式の範囲内にあることを意図しているという事が、当業者には理解できるであろう。さらに、本発明で使用する誘導体、塩、プロドラッグおよび溶媒和物は互変異性体として存在でき、それらの全てが本発明の広範な範囲内にあることを意図している。
【0083】
性質が塩基性である本発明化合物は、種々の無機および有機酸によって多岐にわたる様々な塩を形成できる。このような塩は動物への投与のために薬学上許容できなければならないが、実際面では、本発明化合物を薬学上許容できない塩として反応混合物からまず単離し、次いでこれを、アルカリ性試薬による処理によって単純に遊離塩基化合物へと戻し、その後この遊離塩基を薬学上許容し得る酸付加塩に変換するのがしばしば望ましい。本発明に係る塩基化合物の酸付加塩は、その塩基化合物を、水性溶媒または適当な有機溶媒、例えばメタノールもしくはエタノール中で、実質上当量の選択した鉱酸または有機酸で処理することにより、容易に製造できる。溶媒を注意深く蒸発させると、所望の固体の塩が容易に取得できる。所望の酸塩は、溶液に適当な鉱酸または有機酸を加えることにより、有機溶媒中の遊離塩基溶液から沈殿させることもできる。
【0084】
性質が酸性である本発明化合物は、種々の薬理学上許容し得る陽イオンによって塩基塩を形成できる。このような塩の例はアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特にナトリウムおよびカリウム塩を包含する。これらの塩は全て常套技術によって製造できる。本発明に係る薬学上許容し得る塩基塩を製造するための試薬として使用する化学塩基は、本発明に係る酸性化合物によって非毒性塩基塩を形成するような塩基である。このような非毒性塩基塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどといった薬理学上許容し得る陽イオンから誘導される塩がある。これらの塩は、対応する酸性化合物を、所望の薬理学上許容し得る陽イオンを含む水溶液で処理し、次いで得られた溶液を好ましくは減圧下に蒸発乾固することによって容易に製造できる。或いは、この酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドを混合し、次いで得られた溶液を前記と同様に蒸発乾固することによって製造することもできる。いずれの場合も、反応の完結と所望最終生成物の最大収量を確実とするため、化学量論的量の試薬を使用するのが好ましい。
【0085】
本発明に使用する酵素の活性を「単位」で表記する。単位とは、室温におけるp-ニトロフェニルプロピオナートの1分間あたりの加水分解速度をμmol/分で表したものとして定義する。
【0086】
本発明に従って使用できる酵素の具体例は、動物および植物から取得できるもの、例えばウシ肝エステラーゼ、ブタ肝エステラーゼ、ブタ膵エステラーゼ、ウマ肝エステラーゼ、イヌ肝エステラーゼ、ブタホスファターゼ、大麦および馬鈴薯から得られるアミラーゼならびに小麦から得られるリパーゼである。その他の例は、Rhodotorula、Trichoderma、Candida、Hansenula、Pseudomonas、Bacillus、Achromobacter、Nocardia、Chromobacterium、Flavobacterium、Rhizopus、Mucor、Aspergillus、Alkaligenes、Pediococcus、Klebsiella、Geotrichum、Lactobaccilus、Cryptococcus、Pichia、Aureobasidium、Actinomucor、Enterobacter、Torulopsis、Corynebacterium、Endomyces、Saccaromyces、Arthrobacter、Metshnikowla、Pleurotus、Streptomyces、Proteus、Gliocladium、Acetobacter、Helminthosporium、Brevibacterium、Escherichia、Citrobacter、Absidia、Micrococcus、Microbacterium、PenicilliumおよびSchizophylliumといった微生物ならびに苔癬および藻類から得られるヒドロラーゼである。
【0087】
本発明において有用な微生物の具体例は、Rhodotorula minuta、Rhodotorula rubra、Candida krusei、Candida rugosa、Candida tropicalis、Candida utilus、Pseudomonas fragi、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas aeruginosa、Rhizopus chinensis、Mucor pusillus、Aspergillus niger、Alkaligenes faecalis、Torulopsis ernobii、Bacillus cereus、Bacillus subtilis、Bacillus pulmilus、Bacillus subtilis var. niger、Citrobacter freundii、Micrococcus varians、Micrococcus luteus、Pediococcus acidlactici、Klebsiella pneumoriae、Absidia hyalospora、Geotrichun candidum、Schizophyllum commune、Nocardia uniformis subtsuyanarenus、Nocardia uniformis、Chromobacterium chocolatum、Hansenula anomala var. ciferrii、Hansenula anomala、Hansenula polymorpha、Achromobacter lyticus、Achromobacter parvulus、Achromobacter sinplex、Torulopsis candida、Corynebacterium sepedonicum、Endomyces geotrichum、Saccaromyces carrvisial、Arthrobacter globiformis、Streptomyces grisens、Micrococcus luteus、Enterobacter cloacae、Corynebacterium ezui、Lactobacillus casei、Cryptococcus albidus、Pichia polimorpha、Penicillium frezuentans、Aureobasidium pullulans、Actinomucor elegans、Streptomyces grisens、Proteus vulgaris、Gliocladium roseum、Gliocladium virens、Acetobacter aurantius、Helminthosporium sp. Chromobacterium iodinum、Chromobacterium violaceum、Flavobacterium lutescens、Metschnikowia pulcherrima、Pleurotus ostreatus、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium divaricatum、Escherichia coli、Rodotolura minuta var. texensis、Trichoderma longibrachiatum、Mucor javanicus、Flavobacterium arbonescens、Flavobacterium heparinum、およびFlavobacterium capsulatumを包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0088】
本発明における使用に好適な商業的に入手可能な酵素の例は、Amano PS-30(Pseudomonas cepacia)、Amano GC-20(Geotrichum candidum)、Amano APF(Aspergillus niger)、Amano AK(Pseudomonas sp.)、Pseudomonas fluorescens リパーゼ(Biocatalyst Ltd.)、Amano Lipase P30(Pseudomonas sp.)、Amano P(Pseudomonas fluorescens)、Amano AY-30(Candida rugosa)、Amano N(Rhizopus niveus)、Amano R(Penicillium sp.)、Amano FAP(Rhizopus oryzae)、Amano AP-12(Aspergillus niger)、Amano MAP(Mucor meihei)、Amano GC-4(Geotrichum candidum)、Sigma L-0382およびL-3126(ブタ膵)、Lipase OF(Sepracor)、Esterase 30000(Gist-Brocades)、KID Lipase(Gist-Brocades)、Lipase R(Rhizopus sp.、Amano)、Sigma L-3001(小麦胚芽)、Sigma L-1754(Candida cytindracea)、Sigma L-0763(Chromobacterium viscosum)およびAmano K-30(Aspergillus niger)といったリパーゼを包含する。さらに、動物組織から誘導できる酵素の例には、ブタ肝由来のエステラーゼ、膵由来のキモトリプシンおよびパンクレアチン、例えばPorcine Pancreatic Lipase(Sigma)がある。本発明に係るプロセスを実施する際には、単一の酵素と同様、2またはそれ以上の酵素を使用することができる。
【0089】
緩衝剤は、無機酸塩緩衝剤(例えば燐酸二水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム)、有機酸塩緩衝剤(例えばクエン酸ナトリウム)、またはその他任意の適当な緩衝剤であってよい。緩衝剤の濃度は0.005ないし2M、好ましくは0.005ないし0.5Mまで変化させることができ、個別的対象化合物および使用する酵素または微生物に依存する。
【0090】
基質を可溶化するため、界面活性剤または界面活性剤混合物を反応混合物に添加できる。適当な界面活性剤の例は、非イオン性界面活性剤、例えばアルキルアリールポリエーテルアルコールを包含するがこれらに限定されない。使用できるこのような界面活性剤の一つが、Triton X-100(Sigma Chemical Company社製)として市販されているオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。有効量の界面活性剤を使用する。反応体または反応体群の実体、生成物または生成物群の実体、使用する溶媒および/または共溶媒、ならびに所望生成物または生成物群を単離する好ましい方法といった(但しこれらに限定されない)因子に応じて、使用量を0.05%ないし約10%まで変えることができる。このような界面活性剤または界面活性剤群が必要であるかどうかに拘わらず、特定の界面活性剤の選択および使用量は全て当業者の知識の範囲内の選択であり、過度の実験を行うことなく決定できる。
【0091】
或る量の有機溶媒または溶媒混合物を反応混合物に加えて反応体または生成物の溶解度を上げ、反応を容易にすることができる。適当な溶媒の例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルアルコール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールを包含するがこれらに限定される訳ではない。共溶媒の有効量は、使用する個別出発物質および酵素および/または微生物に応じて1%ないし約50%である。このような溶媒が必要であるかどうかに拘わらず、溶媒または溶媒群の実体および溶媒使用量は全て当業者の知識の範囲内の選択であり、過度の実験を行うことなく決定できる。
【0092】
本発明における緩衝液のpHまたは反応混合物のpHは、約4ないし約10、約5ないし約9、または約7ないし約8に維持できる。反応温度は約0ないし約100℃まで変わり得、出発物質の実体、使用する生体触媒、および使用する溶媒または溶媒混合物に依存する。反応時間は一般に1時間ないし400時間であり、出発物質の実体、使用する生体触媒、および使用する溶媒または溶媒混合物に依存する。適切な分析法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、質量分析、プロトン核磁気共鳴分光法(NMR)、または諸技術の組み合わせ、例えば液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)によって反応の進行を監視できる。反応の立体選択性は、当業者に既知の技術、例えばキラル固定層を用いるHPLCを使用して監視または決定できる。出発物質の変換をおよそ50%まで実施してよく、その後、生成物の酸と未反応出発物質を単離できる。
【0093】
使用する酵素の量は、出発物質1モルあたり約5単位ないし約12000単位まで変えることができる。必要とされる個々の酵素または酵素混合物の量は、温度、個別的対象化合物、使用する酵素および/または微生物、ならびに望ましい反応時間を包含する(但しこれらに限定されない)因子に依存する。実用上短い反応時間とするため、幾つかの場合には、特に酵素を固定化し、回転数を上げるため再使用できるような場合には、過剰の酵素または酵素群を使用するのが望ましいことがある。エステル基質の濃度は0.1g/Lないし100g/Lとすることができ、個別的対象化合物ならびに使用する酵素および/または微生物に依存する。
【0094】
本発明で使用する酵素および/または微生物は、粗製形態であっても固定化された形態であってもよい。これらは、立体特異性を失うことなく、また立体選択性を変化させることなく、種々の固体支持体上に固定化できる。固体支持体は、その酵素が共有結合しない不活性吸収剤とすることができる。その代わりに、酵素を例えば蛋白の疎水性もしくは親水性部分と不活性吸収剤の同様領域との相互作用により、または水素結合により、または塩橋の形成により、または静電相互作用により、吸収させる。不活性吸収材料は、合成ポリマー(例えばポリスチレン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレンおよびポリアミド)、鉱物性化合物(例えば珪藻土およびフラー土)、または天然ポリマー(例えばセルロース)を包含するがこれらに限定される訳ではない。このような物質の具体例には、Celite 545 珪藻土、Abelite XAD-8ポリマー樹脂ビーズおよびポリエチレングリコール8000がある。
酵素は、その酵素が共有結合する支持体(例えば、オキシラン-アクリルビーズおよびグルタルアルデヒド活性化支持体)に固定化することもできる。具体例には、Eupergit Cオキシラン-アクリルビーズおよびグルタルアルデヒド活性化Celite 545がある。その他の使用可能な固定化系は周知であり、酵素固定化の分野における通常の知識を有する者は容易に利用できる。
【0095】
所望生成物、光学的に純粋な(または強化された)未反応エステルおよび光学的に純粋な(または強化された)酸は、常法、例えば抽出、酸-塩基抽出、濾過、クロマトグラフィー、結晶化またはこれらの組み合わせを用いて加水分解混合物から単離できる。回収した酵素または微生物はリサイクルし、さらなる操作または精製を行って、または行わずに、次の反応に使用できる。
【0096】
最終反応生成物を相互に且つ反応成分から分離する方法は、濾過、蒸留、液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、昇華、結晶化、および上記の方法のいずれかの後に誘導体化することを包含するが、これらに限定されない。望ましい分離を実現するためにどの方法を選択するかは、反応成分、出発物質、および生成物の実体を包含する(但しこれらに限定されない)因子に依存する。これらの選択は当業者の知識の範囲内にあり、過度の実験をすることなく行うことができる。
【0097】
好都合な単離方法では、酵素的加水分解の後、pHをpH7.5ないし8に調節し(固定化した生体触媒の場合はこの生体触媒をまず濾過によって分離する)、有機溶媒、例えば塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、または基質がその中で溶解し安定であるその他任意の溶媒を用いてエステルを抽出することにより、未反応エステルから生成物の酸を分離する。有機抽出物を濃縮すると未反応出発物質が得られる。水相を濃縮すると生成物の酸が得られる。
【0098】
この酸を、選択的沈殿化またはクロマトグラフィーまたは当業者に既知のその他の方法により、緩衝剤の塩および酵素から遊離させることができる。これは、水相を約pH3またはこれ以下に酸性化し、有機溶媒、例えば塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、またはその酸がその中で溶解し安定であるその他任意の溶媒による抽出によって、その酸を単離することを包含する。有機抽出物を濃縮すると未反応出発物質と生成物の酸が得られ、これらを選択的沈殿化またはクロマトグラフィーまたは当業者に既知のその他の方法により、緩衝剤の塩および酵素から遊離精製することができる。
【0099】
所望により、未反応の立体異性強化出発物質または立体異性強化生成物のいずれをも、さらにラセミ化することができる。未反応の立体異性強化出発物質は、当業者に既知の方法、例えば塩基存在下および適当な溶媒もしくは溶媒群の存在下での加熱によってラセミ化できる。立体異性強化生成物は、これをエステルに変換し、塩基存在下および適当な溶媒の存在下に加熱することにより、さらにラセミ化できる。立体異性強化生成物は、当業者に既知の方法、例えばアルコールおよび適当な酸の存在下で生成物を加熱することによってエステルに変換できる。このようにして、式(I)および(II)の化合物の任意の立体異性体を、立体化学的に強化された形態で取得できる。
【0100】
式(II)の化合物は下に示すスキームIに従って製造できる。
【化21】

【0101】
一般に、N-保護グリシン誘導体、例えば化合物1から開始できるが、これは商業的に入手可能なグリシンから当業者に既知の方法に従って製造できる。次いでこの保護グリシン誘導体1を、末端カルボキシ基をO-アルキル化できる物質または物質の組み合わせと反応させ、化合物2を得る。カルボキシ基をO-アルキル化することが分かっている物質または物質の組み合わせの例は、ハロゲン化アルキル、アルキルスルホナートエステル、およびアルキルトリフルオロメタンスルホナートエステルを包含するがこれらに限定される訳ではない。この反応は、所望の変換を妨害しない塩基の存在下で実施できる。そのような塩基には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムのような無機塩基、ならびにトリエチルアミンまたはピリジンのような有機塩基があるが、これらに限定されない。
【0102】
或いは、化合物1のようなN-保護グリシン誘導体を、-OH基を適当な脱離基に変換する物質または物質の組み合わせの存在下でアルコールと反応させてもよい。そのような物質または物質の組み合わせの例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、シアヌル酸クロリド、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(HATU)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(HBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート(TBTU)、および3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)を包含するがこれらに限定されない。この反応は所望により添加剤の存在下で実施してもよい。好適な添加剤は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を包含するがこれらに限定されない。これらの添加剤が必要であるかどうかは、反応体の実体、溶媒、および温度に依存し、その選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0103】
一般にこれらの反応は、当該反応を妨害しない溶媒、例えばアルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、非競合的アルコール、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素中で実施できる。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、必要ならばこの変換における共溶媒として水を使用できる。さらに、このような反応は、個別的反応体、溶媒、およびその他所望により使用する添加剤に応じて、-20℃ないし100℃の温度で実施できる。
【0104】
化合物2のようなO-アルキル化グリシン誘導体は、この保護グリシン誘導体を、カルボキシラートをハロゲン化アシル誘導体に変換する物質または物質の組み合わせと反応させ、その後適当なアルコールと反応させることによって製造することもできる。例えば、アシルクロリドを含む化合物は、保護グリシン誘導体から、チオニルクロリドまたはオキサリルクロリドのような物質との反応によって製造できる。これらの反応は、適当な塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)、またはヘテロ芳香族塩基、例えばピリジンの存在下で実施できる。得られた化合物を単離し次いで適当なアルコールとさらに反応させることができ、またはそれらをin situで生成させ、単離精製せずに適当なアルコールと反応させることもできる。これらの反応は、所望の変換を妨害しない溶媒中で実施できる。好適な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、必要ならばこの変換における共溶媒として水を使用できる。さらに、このような反応は-20℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0105】
化合物2のようなO-アルキル化グリシン誘導体は、カルボキシラート基をアシルイミダゾールに変換する物質または物質の組み合わせと反応させ、その後適当なアルコールと反応させることによって、該カルボキシラートから製造することもできる。このカルボキシラートをアシルイミダゾールに変換なするための好適な物質にはカルボニルジイミダゾールがあるが、これに限定される訳ではない。アシルイミダゾール中間体を単離し次いでさらに適当なアルコールと反応させることができ、または、これをin situで生成させ、単離精製せずに適当なアルコールと反応させることもできる。これらの反応は、所望の変換を妨害しない溶媒中で実施できる。適当な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、必要ならばこの変換における共溶媒として水を使用できる。さらに、このような反応は-20℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0106】
式(II)で示されるラセミ化合物、例えばスキームIに示す化合物3は、アルキル基またはその誘導体でO-アルキル化されているグリシン誘導体、例えば化合物2から製造できる。係るO-アルキル化グリシン誘導体を、該化合物がクライゼン型転移を受けるような物質または物質の組み合わせと反応させて、式(II)の化合物を得ることができる。一般にこれらの反応は、所望の変換を妨害しない溶媒中で実施できる。好適な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、必要ならばこの変換における共溶媒として水を使用できる。さらに、このような反応は-78℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0107】
加えて、このようなクライゼン転移は、まず、この転移を施そうとする種のエノラート陰イオンを形成させることによって進めることができる。係るエノラート陰イオンは、O-アルキル化グリシン誘導体から、強塩基として機能できる物質または物質の組み合わせとの反応によって製造できる。例えば、このO-アルキル化グリシン誘導体をジイソプロピルアミドリチウム(LDA)と反応させて所望のエノラート陰イオンを形成させる。このような反応は、係る反応を促進することが分かっている添加剤、例えば塩化亜鉛(II)のようなルイス酸の存在下で行うこともできる。さらに、このような反応は所望の変換を妨害しない溶媒中で実施できる。好適な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。さらに、このような反応は-78℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0108】
式(I)の化合物、例えばスキームIに示す化合物10は、式(II)の化合物から製造できる。一般に、式(II)の化合物を親電子ハロゲン化試薬と反応させてラクトン、例えば4を得ることができる。好適な親電子ハロゲン化試薬にはN-クロロスクシンイミド(NCS)、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、およびN-ヨードスクシンイミド(NIS)があるがこれらに限定される訳ではない。これらの反応は所望の変換を妨害しない溶媒または溶媒混合物中で実施できる。好適な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、所望により反応混合物に水を添加できる。さらに、このような反応は-78℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0109】
保護ラクトン、例えばスキームIの化合物4を脱保護して化合物5のようなα-アミノラクトンを得ることができる。係る脱保護反応は、当業者に既知の方法であって例えばGreene et al., Protective Groups in Organic Synthesis; John Wiley & Sons, New York, (1999)に記載の方法を用いて実施できる。
【0110】
α-アミノラクトン、例えば化合物5は、この化合物に環状アミン、例えばスキームIに示す化合物6を生成する転移を受けさせる物質または物質の組み合わせと反応させることができる。一般にこれらの反応は、5のような化合物を水酸化バリウムのような物質と反応させることによって実施できる。これらの反応は所望の変換を妨害しない溶媒または溶媒混合物中で実施できる。適当な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、所望により反応混合物に水を添加できる。さらに、このような反応は-78℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0111】
環状アミン、例えば化合物5は遊離カルボキシアミンとして単離でき、または単離を容易にするために誘導体化できる。例えばスキームIに示すように、化合物5を水と有機溶媒の混合物中で水酸化バリウムと反応させて所望の環状アミンを得た。次いでこの環状アミンを(BOC)2Oと反応させてBOC保護アミンである化合物6を得た。
【0112】
次に環状アミン、例えば化合物6を、カルボキシラート基をO-アルキル化できる物質または物質の組み合わせと反応させてエステル、例えば化合物7を得ることができる。このような物質は先に記載しており、沃化メチル、メチルスルホナートエステル、および臭化メチルを包含するがこれらに限定されない。こうした反応は塩基として作用できる化合物の存在下に実施できる。好適な塩基には炭酸セシウム、炭酸カリウム、および炭酸ナトリウムがあるがこれらに限定されない。加えて、これらの反応は所望の変換を妨害しない溶媒または溶媒混合物中で実施できる。好適な溶媒には、アルキルもしくはアリールエーテル、アルキルもしくはアリールエステル、芳香族および脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、アルキルもしくはアリールニトリル、アルキルもしくはアリールケトン、芳香族炭化水素、またはヘテロ芳香族炭化水素がある。例えば、好適な溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t-アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2-ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレン、およびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物を包含するが、これらに限定されない。加えて、所望により反応混合物に水を添加できる。さらに、このような反応は-78℃ないし100℃の温度で実施できる。選択される個別的反応条件は、個別的対象化合物および選択される試薬に依存する。そのような選択は当業者の知識の範囲内にある。
【0113】
本発明方法を用いて、化合物7のような化合物を立体化学的に強化された形態に分割または製造できる。或いは7のような化合物を用いて式(II)で示される他の化合物を製造し、それを本発明方法に従って立体化学的に強化された形態に分割または製造できる。例えば、化合物7の第二ヒドロキシ基を酸化して、スキームIに示す対応ケトン8を得ることができる。このような酸化は、例えばPCCを用いる酸化、Swern条件下での酸化、またはpyr・SO3/DMSO/NEt3を用いる酸化といったような当業者に既知の方法によって実施できる。本発明方法を用いて、化合物8のような化合物を立体化学的に強化された形態に分割または製造できる。或いはこうした化合物を用いて他の類似体を製造し、それを本発明方法を用いて、立体化学的に強化された形態に分割または製造できる。
【0114】
例えば、化合物8のようなケトンを、ケトンの官能基をジハロメチレン部分、例えば-CF2-基に変換できる物質または物質の組み合わせと反応させることができる。係る反応は、当業者に既知の物質または物質の組み合わせ、例えば(ジエチルアミノ)スルファトリフルオリド(DAST)等を用いて実施できる。例えば、化合物8をジクロロメタン中55℃で(MeOCH2CH2)2NSF3(Air Products, Inc.によりDeoxo-Fluor(登録商標)として販売されている)と反応させるとジフルオロ化合物9が得られた。
【0115】
本発明方法を用いて、化合物9のような化合物を立体化学的に強化された形態に分割または製造できる。スキームIに示すように、化合物9のラセミ混合物をアセトニトリルと水の混合物中pH8および30℃で酵素Subtilisin Carlsbergと反応させると、立体化学的に強化された化合物10が生成した。窒素保護基を含む10のような化合物を、この保護基を除去することによりさらに操作すると、スキームIに示す化合物11のような第二環状アミンが得られる。
【0116】
或いは、スキームIに示す化合物3のような前駆体化合物を立体化学的に強化された形態に分割または製造することにより、スキームIに示す6、7、8、9、および10のような化合物を立体化学的に強化された形態で製造できる。3のような化合物を立体化学的に強化された形態に分割または製造した後、記載のように、これらを使用してそれ自身立体化学的に強化された生成化合物を製造することができる。
【0117】
ZがOまたはSである式(I)の化合物は、当業者に既知の方法に従って製造できる。例えば、Mimoto, T. et al. J. Med. Chem. 1999, 42, 1789;EP 0751145;米国特許第5644028、5932550、5962640、5932550、および6222043号、H. Hayashi et al., J. Med. Chem. 1999, 42, 1789;ならびにPCT公開第WO 01/05230 A1号を参照されたく、これらを引用により本明細書の一部とする。
【実施例】
【0118】
実施例
下記の実施例は本発明に係る特定の態様を説明することのみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意味しているものでは決してない。
【0119】
下記の実施例において、別途指摘のない限り、以下の説明中の温度は全て摂氏(℃)であり、別途指摘のない限り、部およびパーセントは全て重量によるものである。
【0120】
種々の出発物質およびその他の試薬は商業的供給業者、例えばAldrich Chemical CompanyまたはLancaster Synthesis Ltd.から購入し、別途指摘のない限り、さらなる精製をせずに使用した。
【0121】
下に開示する反応は、窒素、アルゴンの陽圧下に、または乾燥管を用いて、周囲温度で(別途記載のない限り)、無水溶媒中で実施した。ガラスで裏打ちしたシリカゲル60゜F 254プレート(Analtech(0.25mm))上で分析用薄層クロマトグラフィーを実施し、適当な溶媒比(v/v)で溶離した。反応を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)で検定し、出発物質の消費により判断して反応を終了させた。TLCプレートはUV、ホスホモリブデン酸染色、または沃素染色によって視覚化した。
【0122】
1H-NMRスペクトルは300MHzで稼働するBruker機器で記録し、13C-NMRスペクトルは75MHzで記録した。NMRスペクトルはDMSO-d6またはCDCl3溶液で取得し(ppmで報告)、クロロホルムをレファランス標準(7.25ppmおよび77.00ppm)に使用して、またはDMSO-d6(2.50ppmおよび39.52ppm)で取得した。必要に応じてその他のNMR溶媒を使用した。ピーク多重性を報告する場合、以下の略語を使用する:s=一重線、d=二重線、t=三重線、m=多重線、br=広幅、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線。結合定数を記載する場合はヘルツで報告する。
【0123】
赤外スペクトルは、ニートオイルとして、またはKBrペレットとして、またはCDCl3溶液としてPerkin-Elmer FT-IR分光計で記録し、記録の際は波数(cm-1)で記録した。質量分析はLC/MSまたはAPCIを用いて取得した。融点は全て未補正である。
【0124】
最終生成物は全て95%以上の純度であった(波長220nmおよび254nmのHPLCによる)。
以下の実施例および製造例において、「Et」はエチル、「Ac」はアセチル、「Me」はメチル、「Ph」はフェニル、(PhO)2POClはクロロジフェニルホスファート、「HCl」は塩酸、「EtOAc」は酢酸エチル、「Na2CO3」は炭酸ナトリウム、「NaOH」は水酸化ナトリウム、「NaCl」は塩化ナトリウム、「NEt3」はトリエチルアミン、「THF」はテトラヒドロフラン、「DIC」はジイソプロピルカルボジイミド、「HOBt」はヒドロキシベンゾトリアゾール、「H2O」は水、「NaHCO3」は炭酸水素ナトリウム、「K2CO3」は炭酸カリウム、「MeOH」はメタノール、「i-PrOAc」は酢酸イソプロピル、「MgSO4」は硫酸マグネシウム、「DMSO」はジメチルスルホキシド、「AcCl」はアセチルクロリド、「CH2Cl2」は塩化メチレン、「MTBE」はメチルt-ブチルエーテル、「DMF」はジメチルホルムアミド、「SOCl2」はチオニルクロリド、「H3PO4」は燐酸、「CH3SO3H」はメタンスルホン酸、「Ac2O」は無水酢酸、「CH3CN」はアセトニトリル、そして「KOH」は水酸化カリウムを意味する。
【0125】
実施例1:(2S)-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチル-N-Boc-プロリンの製造
【化22】

pH電極、オーバーヘッドスターラー、加熱用コイルおよび塩基添加用ラインを備えた50L反応器(718 Stat Titrino-Metrohm pH滴定器、BrinkmanInstruments, Inc.)に、Bacillus licheniformis由来のアルカリプロテアーゼ(Subtilisin Carlsberg、Altusから6-14%w/v溶液のCLEC-BLとして購入)(新鮮なCLEC 7L + リサイクルしたCLEC 5L(初期活性の80%)およびdi-water 24L)を入れた。2N NaOH 20mLを添加してこの懸濁液のpHを8.0に調節した。この懸濁液にラセミエステルの溶液(400g、1.36mol、1.00当量、アセトニトリル中、3.6L)を加え、混合物を30℃で262時間攪拌した。反応時間の間、溶液のpHを監視し、2N NaOHを定期的に加えてpH8.0に維持した(262時間の反応時間の間に合計246mLの塩基を加えた)。反応の進行を逆相HPLCで監視した。45-50%の出発物質が消費されたことが判明した後に反応を停止させた。酸のエナンチオ過剰率(% ee)は95.5%であると測定された。反応混合物をMTBE(16Lで3x)で抽出し、合した有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮して (R)体に富む粗製のスカレミックエステルI 220gを得た。残った水性スラリーをWhatman濾紙1で濾過した(CLEC-BLを除去するため)。CLECペーストを濾紙から除去し、所望により後の使用のために4℃で保存した。残留した水溶液を1N塩酸でpH5.5に酸性化し、MTBE(2x各々16L)で抽出した。この水溶液をpH5.0およびpH4.0で再度抽出した。生成物の酸を含有する有機画分をプールし、減圧濃縮すると固体残留物が得られた。この残留物を熱水(40-50℃、1000mL)に懸濁し、室温まで一晩放冷した。得られたスラリーを濾過し、結晶を40℃の真空乾燥器で一晩乾燥して白色固体の酸を得た(133g、98% ee、速度論的分割に関して69.8%収率、>98%HPLC純度)。
【化23】

【0126】
以下の分析法を用いて反応の進行を監視し、最終生成物の% eeと純度を測定した:
非キラルHPLC:
検出器の波長:200nm
カラム:Luna C-18、4.6 x 30mm
カラム温度:35℃
流速:1.5mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:25mM KH2PO4 pH2.5;B:アセトニトリル
ラン:勾配:5分間で35ないし70%のB、ポストラン2分間
保持時間:酸 1.63;エステル 3.28
【0127】
キラルHPLC:
検出器の波長:195nm
カラム:Chiralcel OJ-R、3μm、C-18、4.6 x 150mm
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:25mM KH2PO4 pH2.0;B:アセトニトリル;C:HPLC H2O
ラン:無勾配:75%のAおよび25%のBで17分間、その後75%のBおよび25%のCで3分間、最後に75%のAおよび25%のBで15分間
保持時間:酸 14.85(R)および15.84(S)
【0128】
試料の調製
サンプリングを行うたびに2個の試料を採取した。反応混合物から10mL採取しアセトニトリル10mLと混合することによって各試料を調製した。この溶液をボルテックス攪拌し、Beckman遠心管で遠心することにより層を分離した。上層100μLをアセトニトリル400μLでさらに希釈し、HPLCに注入した。
【0129】
実施例2:(2S)-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチル-N-Boc-プロリンの製造
【化24】

温度プローブ、攪拌棒、pH電極および塩基添加用ラインを備えた250mL三頚フラスコに、ラセミエステルの溶液(3g、10.23mmol、DMSO中1.00当量、15mL)およびpH8の50mM TRIS緩衝液(97.5mL)を入れた。この混合物のpHはおよそ7.64であった。次にBacillus licheniformis由来のアルカリプロテアーゼ(Subtilisin Carlsberg、Altusから6-14%w/v溶液のCLEC-BLとして購入)(37.5mL)を加えた。酵素を加えた後、混合物のpHはおよそ7.70であった。得られた混合物を加熱マントルを用いて徐々に40℃まで加熱した。1N水酸化ナトリウム(0.848mL)を添加して混合物のpHをpH8.0に調整した。反応の進行と共に反応混合物のpHを監視し、1N水酸化ナトリウムを定期的に添加してpH8に維持した(1N NaOH を合計17.7mL加えた)。得られた懸濁液を40℃で合計121時間攪拌した。反応の進行を、生成物の変換と% eeの両者を監視する逆相HPLCで監視した。HPLC分析が出発物質の43%が消費されたことを示した後に、反応を停止させた。この酸の% eeは94.6% eeと測定された。
【0130】
得られた混合物をMTBE(3 x 各々75mL)で抽出し、合した有機層をWhatman濾紙No.1で濾過してエマルジョン化した粒子を除去し、油水境界の識別を良好にさせた。エマルジョンに付随した水層を母液に戻した。有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮すると、(R)体に富む粗製のスカレミックエステルI 1.74gが得られた。
【0131】
残った水性スラリーをWhatman濾紙1で濾過した(CLEC-BLを除去するため)。CLEC-BLペーストを濾紙から除去し、所望により後の使用のために4℃で保存した。残留した水溶液を1N HClでpH5.3に酸性化し、MTBE 80mLで抽出した。後の4回の抽出ではpHをそれぞれ5.3、4.8、4.0、および3.9に下げて抽出を5回反復した。酸を含有する有機層をプールし、Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗製の酸1.460gを得た。次いで固体残留物をMTBE 150mLに再懸濁した。この酸を10mM燐酸カリウム緩衝液(pH4.2-4.5)75mLで2回洗浄してDMSOを除去した。有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮すると白色固体の酸が得られた(0.831g、98% ee、速度論的分割に関して58%収率、>98%HPLC純度)。
【化25】

【0132】
以下の分析法を用いて反応の進行を監視し、最終生成物の% eeと純度を測定した:
非キラルHPLC:
検出器の波長:200nm
カラム:Luna C-18、4.6 x 30mm
カラム温度:35℃
流速:1.5mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:25mM KH2PO4 pH2.5;B:アセトニトリル
ラン:勾配:5分間で35ないし70%のB、ポストラン2分間
保持時間:酸 1.63;エステル 3.28
【0133】
キラルHPLC:
検出器の波長:195nm
カラム:Chiralcel OJ-R、3□m、C-18、4.6 x 150mm
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/分
注入容量:10□L
移動相:A:25mM KH2PO4 pH2.0;B:アセトニトリル;C:HPLC H2O
ラン:無勾配:75%のAおよび25%のBで17分間、その後75%のBおよび25%のCで3分間、最後に75%のAおよび25%のBで15分間
保持時間:酸 14.85(R)および15.84(S)
【0134】
試料の調製
サンプリングを行うたびに2個の試料を採取した。反応混合物100μLをアセトニトリル1.9mLで希釈することによって各試料を調製した。溶液をボルテックス攪拌し、この溶液1mLをBeckman遠心管で遠心した。上層をHPLCに注入した。
【0135】
実施例3:N-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステルの分割
【化26】

N-tert-ブトキシカルボニル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル(5.0g、17.0mmol)に、ジオキサン中の4M HCl(2.0当量、8.5mL)を加えた。混合物を0℃で3時間攪拌した。HPLCによって反応の完結を判断した後、ジオキサンおよび過剰のHClを減圧除去して粗製残留物を得た。この粗製残留物をMTBE(3mL x 2)で洗浄し、乾熱器で乾燥して固体の4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル3.8g(〜95%純度)を得、これ以上精製せずに次の反応に使用した。
【0136】
4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル3.8gにK2CO3(3.8g)、MeOH(60mL)、およびBnBr(1.1当量、2.55mL)を加えた。得られた混合物を23℃で20時間攪拌した。混合物を濾過し、溶媒を減圧除去して残留物を得た。この残留物をMTBE(60mL)に溶解し、1N HCl(20mL x 3)、NaHCO3(20mL x 3)およびブライン(20mL x 1)で洗浄した。有機層を合し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を減圧除去するとN-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル4.3g(収率90%)が得られた。
【0137】
このラセミエステル(3.0g、10.6mmol)をアセトニトリル(9mL、15%)に溶解し、燐酸カリウム緩衝液(pH8.0、0.1M、60mL)を加えた。ブタ肝エステラーゼ(750mg、10〜15単位/mg)を加え、1N NaOHを定期的に加えて溶液のpHをpH8に維持した。
【0138】
反応の進行を逆相HPLCで監視した。20-24時間後、〜50%の変換に到達し、1N NaOHを添加して混合物のpHを8.3-8.4に調節し、溶液をMTBE(40mL x 3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮すると、残留するRエステル5(1.56g、〜52%)が得られた。残った水層のpHを、1N HClの添加によってpH3.5に調節し、MTBE(40mL x 3)で抽出した。合した有機層をNa2SO4で乾燥し溶媒を減圧除去するとN-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン(1.35g、47%)が得られた。
【0139】
4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル:
【化27】

【0140】
N-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル:
【化28】

【0141】
N-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン:
【化29】

【0142】
以下の分析法を使用した:
N-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン メチルエステル:Chiralcel AD-RH(4.6 x 100mm、3μm);流速:0.6mL/分;注入容量:5μL;移動相:ACN/H2O(20:80)、254nmで検出。
N-ベンジル-4,4-ジフルオロ-3,3-ジメチルプロリン:Chiralcel OD-RH(4.6 x 100mm、3μm);流速:0.6mL/分;注入容量:5μL;移動相:ACN/H2O(60:40)、254nmで検出。
【0143】
実施例4:(S)-3,3-ジメチル-N-Boc-ビニルグリシンの製造
【化30】

pH電極、オーバーヘッドスターラー、加熱マントルおよび塩基添加用ラインを備えた5L三頚フラスコに、アセトニトリル(280mL)中のラセミエステルI(78g、0.3mol、1.00当量)を入れた。
【0144】
別の容器にアルカラーゼ(接線濾過系を通過させ、元の体積の五分の一に濃縮した溶液350mL)および蒸留水(2.8L)を入れた。得られた溶液のpHをpH7.0に調節した。エステル溶液の入ったフラスコに酵素溶液を加えた。得られた懸濁液を30℃で51時間攪拌し、この間、1N NaOHを定期的に加えて溶液のpHを7.0に維持した(51時間にわたり合計95.8mLの塩基を加えた)。反応の進行を逆相HPLCで追跡し、出発物質の45%が消費されたと判断された後に反応を停止させた。
【0145】
混合物をMTBE(3 x 各々1.75L)で抽出し、合した有機層をMgSO4で乾燥し、減圧濃縮すると、(R)体に富む粗製スカレミックエステルI(>55%収率、およそ56% ee)50.81gが得られた。この粗製混合物は若干のカルボン酸<7%を含有しており、後にこれを酸-塩基抽出によって回収した。残留する水溶液を、Ultracelセルロースメンブレンを付けたPellicon 2接線流濾過に付した。残った溶液をpH4.0に酸性化し、MTBE(3 x 1.75L)で抽出した。酸を含有する画分をプールし、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮すると、淡黄色油状物が得られた(31g、91.4% ee、42%収率、>98% HPLC純度)。
【化31】

【0146】
以下の分析条件を使用した:
非キラルHPLC:
検出器の波長:200nm
カラム:Luna C-18、4.6 x 30mm
カラム温度:35℃
流速:1.5mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:25mM KH2PO4 pH2.5;B:アセトニトリル
ラン:勾配:5分間で30ないし70%のB、プレラン2分間
保持時間:酸 1.63;エステル 3.28
【0147】
キラルHPLC:
検出器の波長:200nm
カラム:Chiralcel OJ-R、3μm、C-18、4.6 x 100mm
カラム温度:制御せず
流速:0.5mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:25mM NaH2PO4 pH2.0;B:アセトニトリル
ラン:無勾配:25%のBで55分間、稼働の3分後
保持時間:酸 16.33(R)および17.97(S);エステル 50.40(S)、51.30(R)
【0148】
純粋なエステルのeeの分析方法
カラム:Chiralcel OD-RH、150 x 4.6mm
流速:0.8mL/分
温度:30℃
移動相:30%ACNおよび70% H2O
波長:205nm
試料の調製:
【0149】
試料の調製
サンプリングを行うたびに2個の試料を採取した。反応混合物から2 x 200μLを取って各試料を作製し、酢酸エチル1mLおよび1N HCl 100μLで希釈し、次いでボルテックス攪拌し、Beckman遠心管で遠心することにより層を分離した。上層(有機)100μLをアセトニトリル/水(1:1)400μLでさらに希釈し、HPLCに注入した。
【0150】
実施例5:(R)-3,3-ジメチル-N-Boc-ビニルグリシンの製造
【化32】

オーバーヘッドスターラーを備えたジャケット付き200mLフラスコに、ラセミ酸2、3,3-ジメチル-N-Boc-ビニルグリシン(93.3g、386.2mmol、1.00当量)、(R)-フェニルグリシノール(52.6g、386.2mmol、1.00当量)、メタノール(200mL)およびアセトニトリル(1800mL)を入れた。得られたスラリーを攪拌し、溶液が均一となるまで70-80℃に加熱した。この溶液を絶えず攪拌しながら徐々に室温まで冷却させると結晶化した。得られたスラリーを濾過し、結晶の塩(所望の(R)-エナンチオマーを含有する)を冷アセトニトリル100mLで洗浄し、集め、HPLCで分析した。1回目の結晶化後に得られた生成物の% eeを改善したい場合は2回目の結晶化を行うことができる。
【0151】
次にこの塩を酢酸エチル(別法として酢酸エチルの代わりにMTBEを使用できる)250mLに溶解することにより遊離の酸に変換した。次いで水(250mL)を加え、得られた溶液のpHを、1N塩酸の添加によりpH3に調節した。有機層を分離し、水相を酢酸エチル(200mL)で再度抽出した。抽出物を合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して透明な油状物を得、これを一晩減圧乾燥すると白色固体が得られた(37.4g、>98% ee、単離通算収率40.1%、>98%純度)。
【0152】
(R)-フェニルグリシノールのリサイクル
前工程由来の水層のpHを1N水酸化ナトリウムの添加によりpH8.0に調節し、溶液を酢酸エチル(またはMTBE)300mLで抽出した。次にこの抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。白色結晶の生成物を単離した(12.3g、>98%純度、回収は材料の40%のみからのものであり、残りのリサイクリング物質は工程4で生成した濾液から回収できることに留意されたい)。
以下の分析法を使用した:
【0153】
キラルHPLC条件
検出器の波長:205nm
カラム:Chiralcel OJ-RH、3μ、C-18、4.6 x 100mm
カラム温度:30℃
流速:0.6mL/分
注入容量:10μL
移動相:A:アセトニトリル(0.1% TFA):B:75% H2O(0.1% TFA)
ラン:無勾配:25%のA:75%のB、18分間
保持時間:酸 11.69(R)および12.9(S)/5.3 R-フェニルグリシノール
【0154】
実施例6:(2S)-4-オキソ-3,3-ジメチル-N-Boc-プロリンの製造
【化33】

ラセミエステル10mgをアセトニトリル100マイクロリットルに懸濁し、10% Bacillus lentusプロテアーゼ(BLP)を含有するKPB緩衝液900mLに加えた。16時間後に反応を停止させると、50%が変換して>98% eeの酸生成物(2S)-4-オキソ-3,3-ジメチル-N-Boc-プロリンが生成していた。Amano proleather FGFがもう一つの候補物質であり、これは、この反応を同様のエナンチオ選択性および反応性で遂行することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Zは、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1は、水素、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R7、-C(O)OR7、-C(O)C(O)OR7、または-Si(R7)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R4およびR5は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R6は水素であり;
R7およびR8の各々は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR9R9)t(C6-C14アリール)、および-(CR9R9)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(I)[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は前記と同意義であり、R6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR7R8)t(C6-C14アリール)、および-(CR7R8)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む前記方法。
【請求項2】
式(I)の化合物において、
Zが、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1が、-(CH2)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R8)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2およびR3が、水素、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R4およびR5が、水素、ハロ、メチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R6が水素であり;
R7およびR8が、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、およびC6-C14アリール[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR9、および-N(R9R9)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R9の各々が、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物において、
Zが、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1が、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;
R2およびR3が水素であり;
R4およびR5が、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6が水素であり;そして、
R7およびR8が、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物において、
Zが、O、S、C=O、C=CH2、または-(CR7R8)-であり;
R1が、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3が水素であり;
R4およびR5が、水素およびメチルから個別に選ばれ;
R6が水素であり;そして、
R7およびR8が、水素、弗素、メチル、および-OCH3から個別に選ばれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物において、
ZがSであり;
R1が、-CH2Ph、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3が水素であり;
R4およびR5がメチルであり;そして、
R6が水素である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物において、
Zが-(CR7R8)-であり;
R1が、-CH2Ph、-CH2CH=CH2、-C(O)OCH3、-C(O)OC(CH3)3、または-C(O)C(O)OCH3であり;
R2およびR3が水素であり;
R4およびR5が、水素ならびにメチル、エチル、ブチル、およびペンチルから個別に選ばれ;
R6が水素であり;そして、
R7およびR8が、水素、弗素、塩素、C1-C10アルキル、およびC1-C10アルコキシから個別に選ばれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式(IA):
【化2】

[式中、
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;そして、
R7はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、式(IC):
【化3】

[式中、
R1は前記と同意義であり、そしてR6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-CH2(C6-C14アリール)、および-CH2(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R7)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む前記方法。
【請求項8】
式(IB):
【化4】

[式中、
R1は、-CH2Ph、-C(O)OR7、または-C(O)C(O)OR7であり;そして、
R7はC1-C10アルキルである]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、式(ID):
【化5】

[式中、
R1は前記と同意義であり、そしてR6は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-CH2(C6-C14アリール)、および-CH2(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR7、および-N(R7R7)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む前記方法。
【請求項9】
式(II):
【化6】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15、または-Si(R15)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(II)[式中、R10、R11、R12、およびR13は前記と同意義であり、そしてR14は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれる]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む前記方法。
【請求項10】
式(II)の化合物において、
R10が、-C(O)OR15または-C(O)C(O)OR15であり;
R11が、水素またはC1-C10アルキルであり;
R12およびR13が、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、およびC2-C10アルキニ
ルから個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14が水素であり;そして、
R15がC1-C10アルキルである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(IIA):
【化7】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、および-C(O)C(O)OR15から選ばれ;且つ、
R15およびR16の各々は、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される立体異性強化化合物の製造方法であって、
式(IIB):
【化8】

[式中、R10は前記と同意義であり、そしてR14はC1-C10アルキルである]
で示される化合物を、水溶液、有機溶媒、または有機および水性溶媒混合物中で、生体触媒で処理する[ここで、少なくとも一つの立体異性体が選択的に加水分解される]ことを含む前記方法。
【請求項12】
生体触媒がアルカリプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、およびこれらの任意の組み合わせから選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
生体触媒がKlebsiella oxytoca、Aspergillus melleus、Bacillus subtilis、およびブタ肝エステラーゼから選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(II):
【化9】

[式中、
R10は、水素、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、-CH2CH=CH2、-C(O)R15、-C(O)OR15、-C(O)C(O)OR15、または-Si(R15)3[式中、C6-C14アリールは、所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R11は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、または-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R12およびR13は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR15R16)t(C6-C14アリール)、および-(CR15R16)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR15、および-N(R15R16)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ、但し、R12およびR13が共に水素であることはなく;
R14は水素であり;
R15およびR16は、水素、ハロ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、-(CR17R17)t(C6-C14アリール)、および-(CR17R17)t(4-10員環ヘテロ環)[式中、C6-C14アリールおよび4-10員環ヘテロ環は所望によりハロ、C1-C10アルキル、-OR17、および-N(R17R17)から選ばれる少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい]から個別に選ばれ;
R17の各々は、水素およびC1-C10アルキルから個別に選ばれ;そして、
tは0ないし5の整数である]
で示される化合物の分割方法であって、
(i) 式(II)[式中、R10、R11、R12、R13、およびR14は前記と同意義である]の化合物を、キラル非ラセミ塩基で処理してジアステレオマー塩の混合物を得;
(ii) そのジアステレオマー塩を互いに分離し;そして、
(iii) このジアステレオマー塩を式(II)の立体異性強化化合物に変換する、
ことを含む前記方法。
【請求項15】
キラル非ラセミ塩基が(R)-(-)-2-フェニルグリシノールまたは(S)-(+)-2-フェニルグリシノールである、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2007−521801(P2007−521801A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542037(P2006−542037)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003812
【国際公開番号】WO2005/054186
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】