説明

立体的意匠性織物及びその製造方法

【課題】本発明は、自動車、電車、船舶、住宅等の壁や天井等の内装材に好適な、意匠性や風合いに優れ、かつ基材に熱固定可能な立体的意匠性織物を提供することにある。
【解決手段】本発明の織物とは、複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に交絡することで形成される織物であって、前記テープは、表材と、この表材の裏面に貼り合わされた熱接着性不織布とから構成され、前記表材は、不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、及びフィルムから選ばれる少なくとも1種で形成されており、前記テープの交絡点では、一方のテープの熱接着性不織布と、他方のテープの表材が熱固定されている点に要旨を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性を備えかつ立体的意匠性に優れた織物に関する。この立体的意匠性織物は、自動車の座席、天井等の内装材あるいは住宅の壁、天井等に好適に使用し得る。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道、船舶及び住宅における内装材としては、発泡塩ビシートにエンボス加工を施した各種の壁面材、天井材、化粧合板、槍、杉、松等の羽目板、カラー鋼板等が数多く知られているものの、現状では意匠性に優れた新規の織物は限られている。また、スチーム加熱あるいはドライヤー、アイロン等でもって壁の下地である合板、石膏ボードあるいは自動車の座席、天井等に接着しうる織物は未だ見当たらない。
【0003】
織物の経糸・緯糸として、古代では樹皮あるいは植物の葉を裂いたものが用いられていた。しかし、近代では古代のように幅のあるテープを経糸・緯糸として製織する例は少なく、その中でも織物の裏面に熱接着性不織布を貼り合わせた例は知られていない。
【0004】
上述した従来技術に関連し、本発明者らは以下の様な従来技術を把握している。
短冊状テープを所定間隔で並列した経テープ群と緯テープ群を、接着剤を介して格子状に接着することによって得られる格子状シート(特許文献1)。
細長く短冊状のカーペットを組み合わせてなる組合せカーペット(特許文献2)。
織物・編み物などの布帛からなる表皮層と、この表皮層の裏側に配設された立体織物とを接着剤で結合した座席シート用布帛(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の格子状シートは、そもそも織物ではない。また経テープ群と緯テープ群とが単に積層されているに過ぎず、立体的意匠性に乏しく内装材としては使用できない。特許文献2に開示される格子状織物はカーペット材を材料としているため、織物が厚くまた重くなるため内装材には適さない。加えて、特許文献2ではカーペット材は固定されていない。そのため、カーペット材よりも薄い生地にすれば、織物の薄肉化と軽量化が可能となる一方で、織物の形が崩れるおそれがある。特許文献3に開示される座席シート用布帛は、接着剤4により布帛(表皮層3)と基材層2が固着されているため、布帛のもつやわらかな風合いが損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−136802号公報
【特許文献2】特開2009−142580号公報
【特許文献3】特開2010−196203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自動車、電車、船舶、住宅等の壁や天井等の内装材に好適な、意匠性や風合いに優れ、かつ基材に熱固定可能な立体的意匠性織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱接着性不織布を表材の裏面に貼り合わせた後、裁断して得られる素材を(以降、単に「テープ」と称することもある)、経糸・緯糸として用いて製織し、得られた織物を加熱すると、表材テープ同士が固定され、さらに布地本来のやわらかな風合いを損なうことのない織物が得られ、かつこの織物は基材に容易に熱固定できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、上記目的を達成し得た本発明の立体的意匠性織物とは、複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に交絡することで形成される織物であって、前記テープは、表材と、この表材の裏面に貼り合わされた熱接着性不織布とから構成され、前記表材は、不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、及びフィルムから選ばれる少なくとも1種で形成されており、前記テープの交絡点では、一方のテープの熱接着性不織布と、他方のテープの表材が熱固定されていることを特徴とする点に要旨を有するものである。加えて前記テープの幅が2〜100mmであり、テープの厚さが0.1〜5.0mmであることが好ましい。また前記熱接着性不織布は、長繊維不織布または短繊維不織布であり、これら不織布は融点70〜180℃の熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましい。さらに前記テープは、防汚処理、難燃処理、帯電防止処理、抗菌処理、消臭処理から選ばれる少なくとも1種の処理がされていることが好ましい。
【0010】
本発明には、前記立体的意匠性織物を用いて製造される自動車用または住居用内装材も含まれる。
【0011】
本発明の織物の製造方法は、不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、及びフィルムから選ばれる少なくとも1種で形成された表材と熱接着性不織布とを重ね、熱をかけてこれらを接着する工程、前記接着工程により得られる積層シートを、所定の幅に裁断するテープ化工程、前記テープ化工程で得られた複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に製織する交絡工程、及び前記交絡工程で得られた交絡物を加熱して、テープ間を熱固定する熱セット工程から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明で得られた立体的意匠性織物は、テープの交絡点において、テープ表材同士が熱接着性不織布によって固定されているため、織物の格子模様が崩れにくい。さらに本発明によれば、表材同士の熱固定に不織布を用いるため、布帛そのものの風合いを損なうことがない。そして立体的意匠性織物の裏面に熱接着性不織布が露出しているため、該織物を基材に容易に熱固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【図1】図1は本発明の織物の製法の一例を説明するための概略斜視図である。
【図2】図2は本発明の織物の製法の一例を説明するための概略斜視図である。
【図3】図3は図2のA−A’線断面図である。
【図4】図4は本発明の織物表面の一例を示す概略斜視図である。
【図5】図5は本発明の織物裏面の一例を示す概略斜視図である。
【図6】図6は本発明の織物の一例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る立体的意匠性織物に関して、実施例を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0015】
1.テープの製造(積層・接着化工程、テープ化工程)
本発明の立体的意匠性織物は、
1)表材と熱接着性不織布とを重ね、熱をかけてこれらを接着する工程(積層・接着化工程)、
2)前記接着工程により得られる積層シートを、所定の幅に裁断する工程(テープ化工程)、
3)前記テープ化工程で得られた複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に製織する工程(交絡工程)、及び
4)前記交絡物を加熱して、テープ間を熱固定する工程(熱セット工程)
を経て製造される。
図1は前記積層・接着化工程及びテープ化工程を説明するための概略斜視図である。図1に示すように、積層・接着化工程では、まず適当な平面状表材1と平面状の熱接着性不織布2とを積層し、適当な加熱手段(図示せず)でこれらを接着する。次いで、この積層シート3を所定幅(W1)で裁断することによって複数のテープ4が得られる。
【0016】
図2は前記交絡工程を説明するための概略斜視図であり、図3は図2のA−A’線断面図である。これら図示例では、異なる積層・接着工程及びテープ化工程を経て製造された2種類のテープ(第1テープ13、第2テープ23)が用いられている。そして図2に示す様に、第1テープ13を緯方向のテープ、第2テープ23を経方向のテープとして、これらテープの表裏を揃えながら格子状に交絡する(図示例では平織りする)ことで交絡物50は製造される。すなわち前記交絡物50は、緯方向テープとして使用される第1テープ13を、第2テープ23の表面と裏面を交互に跨ぐように交絡させて製織される。そして第1テープ13が表側になるように第2テープ23と交絡する交絡点30では、第1テープの表材11と第2テープの表材21が第1テープの熱接着性不織布12を挟むようにして交絡しており、隣の交絡点31では、第1テープの表材11と第2テープの表材21が第2テープの熱接着性不織布22を挟むようにして交絡している。このように各交絡点30、31では、熱接着性不織布は2つの表材11、21に挟まれている(図3参照)。前記交絡物50を加熱し、2種類のテープ13、23間を熱固定することで、本発明の立体的意匠性織物51が製造できる。この立体的意匠性織物51は、各交絡点(交絡点30、31)でテープ13とテープ23とが固定されているため、織り目がずれにくい。またテープ13、23が各交絡点で固定されているため、得られた長尺の織物を必要な大きさに裁断しても耳部がほつれない。さらに全面にわたって複数の表材11、21が重なり合っているため、織物自体にコシがでる。
【0017】
図4、図5及び図6は以上のようにして得られる本発明の立体的意匠性織物51の一例を示す概略図及び写真である。図4は織物表面の斜視図、図5は織物裏面の斜視図、図6は織物表面の写真である。図4、図6に示すように、立体的意匠性織物51の表面は、第1表材11と第2表材21が交互に露出しており、この露出パターンに合わせた模様を形成している。また図6より明らかなように、表材の種類又は織組織を変えることで、立体的意匠性織物51の意匠表現を豊かにすることができる。さらに図5より、裏面には第1熱接着性不織布12と第2熱接着性不織布22が交互に露出していることがわかる。そして実質的に、立体的意匠性織物51の裏面全体に熱接着性不織布が存在することになるため、この不織布の熱接着性を利用すれば、立体的意匠性織物51を適当な基材に熱固定することが可能となる。
【0018】
さらに本発明では、表材11、21の裏面に熱接着性不織布12、22が貼り合わされたテープ13、23を織り上げるため、製造された立体的意匠性織物51を裏面からみたときに、第1熱接着性不織布12からなる第1ブロック14と、第2熱接着性不織布22からなる第2ブロック24が、織り模様に応じて点在している。これら第1ブロック14と第2ブロック24は、交絡物50を加熱するときに溶融した熱接着性不織布中の繊維によって、ブロック同士が熱融着されていてもよい。加熱温度によっては、熱接着性不織布中の繊維が充分に溶融されず、この溶融繊維が隣のブロックまで広がらないことがある。このようして得られる立体的意匠性織物51には図3、図5に示すようにブロック間の境界に間隙40ができる。この間隙40により、ブロック14、24間の拘束をゆるめることができ、立体的意匠性織物51を自在に折り曲げることが可能となる。
【0019】
本発明において、前記表材1は、不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、フィルムから選ばれる少なくとも1種から形成されている。これら素材を用いたテープ4を格子状に製織すると、得られる織物の模様が立体的になる。そのため本発明の織物は、布帛等から形成される内層材と異なり、織物の手触りや外観等の点で独特の風合いを有する。素材は織物の使用用途に応じて適宜選択すると良い。例えば、通気性が要求されるような内装材に本発明の立体的意匠性織物を用いる場合は、表材1には通気性を有する素材、例えば織物、不織布、人工皮革等を使用するとよい。
【0020】
表材1が繊維から構成される素材の場合、表材1の目付は、表材1の種類によって適宜選択されるが、好ましくは30〜1000g/m2であり、より好ましくは50〜700g/m2、さらに好ましくは70〜500g/m2である。目付が1000g/m2以下であれば、得られるテープ4の剛性を強くしすぎることないため、テープ4をしなやかに変形させることができる。テープ4がしなやかになるほど、円滑な製織が可能となるため好ましい。しかし目付が30g/m2未満になると、繊維間の隙間が広くなり、表材1の裏に配設されるものが透けて見えるようになる。例えば自動車の座席シート等の内装材に本発明の立体的意匠性織物を用いる場合、この内装材を貼り合わせ、固定するための下部基材が内装材の表側から透けて見えてしまうため好ましくない。
【0021】
表材1の厚さは、例えば0.01〜5.0mmであり、好ましくは0.05〜3.0mmであり、より好ましくは0.1〜2.5mmである。厚みが前記範囲内であれば、裁断されたテープ4が充分な剛性を有するため、製織の際にテープ4を屈曲することなく滑らかに送ることができる。このようにテープ送りが円滑にされれば、得られた織物の格子模様は一様となる。
【0022】
表材1は、使用用途に応じて防汚処理、難燃処理、帯電防止処理、抗菌処理、消臭処理等が施されていてもよい。またこれらの処理は、適宜組み合わせてもよい。
【0023】
また表材1は、単独の層から構成される素材であってもよく、複数の素材を積層した素材であってもよい。例えば、上述したような合成皮革の表面に光沢を与えるために表材1の表面にコーティングフィルムが貼り合わされた表材等も好ましく用いられる。
【0024】
表材の素材を様々に変更することにより、バリエーションに富んだ立体的意匠性織物を製造することができる。また同じ素材であってもその明度を変えるだけで、印象の異なる格子模様の織物が得られる。
【0025】
前記表材1の裏面には、上述したように熱接着性不織布2が貼り合わされている。接着剤や熱接着性フィルム等を用いて表材を固定すると、表材同士が面で固定されるため、得られた立体的意匠性織物は硬くなり、自由にその形状を変化させることが困難になり、さらに通気性も低下する。加えて接着剤は、表材1に浸み込むため立体的意匠性織物がより一層硬くなって、織物の風合いを大きく劣化させる。これらに対して、本発明のように、熱接着性不織布2の加熱によって表材同士を固定すると、熱接着性不織布2は狭い面積(特に狭い場合は、点状乃至線状)で表材1に熱固定されるため、表材1の素材特性を阻害することがない。例えば、(1)表材1の持つやわらかな風合いを損ないにくく、(2)表材1が通気性を有する場合には、その通気性を維持することができる。さらに、(3)接着剤等を塗布する場合に必要となる乾燥工程が本発明では不要となる、(4)加熱時に熱収縮が起こりにくい、(5)接着剤や溶融した熱接着性フィルムの一部が織物の表側に漏れ出すことがない等の優れた特性を有する。
【0026】
熱接着性不織布2としては、熱可塑性樹脂から得られる繊維(例えば、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して形成される繊維)が使用可能であり、長繊維不織布、短繊維不織布のいずれもが好適である。前記繊維としては、変性ポリエステル繊維、変性ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、あるいは複数の樹脂が複合された所謂バイコンポーネント繊維等の低融点繊維が好ましく例示できる。また、熱可塑性不織布2は、複数の熱可塑性繊維を配合して形成されてもよい。
【0027】
本発明の立体的意匠性織物が、自動車の天井等の高温になる面の内装材として用いられる場合があることを考慮すると、前記熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。一方、熱可塑性樹脂の融点が高くなると、熱接着性不織布を加熱する際の加熱温度を高温に設定しなければならない。その加熱により表材1が熱劣化するおそれがあるため、前記熱可塑性樹脂の融点は、180℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0028】
また熱接着性不織布2を構成する繊維の繊維径は、例えば繊度で0.5〜10.0デシテックス、好ましくは0.6〜5.0デシテックス、より好ましくは0.7〜3.0デシテックスである。
【0029】
前記熱接着性不織布2の目付は、例えば、10〜100g/m2であり、好ましくは20〜80g/m2であり、より好ましくは30〜70g/m2である。前記範囲内であれば、表材1を固定するための接着強度を充分に確保しながら、織物のやわらかな風合いを保つことができる。また製織後の織物を加熱しても、テープ同士の交絡点から溶融した熱接着性不織布2の繊維が表面に漏れることがない。そのため織物の意匠性を損なうことがないため好ましい。
【0030】
前記表材1と前記熱接着性不織布2を積層し、表材1の裏面に熱接着性不織布を貼り合わせて積層シート3を製造する方法としては、積層布帛を熱的に接合する際に広く一般的に行われる方法であれば特に制限なく使用でき、例えば、熱をかけながら積層布帛をロール圧着したり、熱シリンダー上を通過させて圧着したり、熱をかけながら板プレスする方法等が挙げられる。前記ロール圧着には、ロールアップされた表材1、及び熱接着性不織布2を準備し、それぞれを巻き戻しながら表材1と熱接着性不織布2を積層した後、2〜3本のロールを組み合わせたカレンダーロールやエンボスロール等を通して圧着する方法が含まれる。圧着の際、コンベア付きの熱風循環式加熱機(乾燥機)を併用すると、熱接着性不織布2中の繊維が溶融し、表材1と熱接着性不織布2とが固定されるため好ましい。この熱接合時の加熱温度は熱接着性不織布2を構成する繊維の融点以上であればよく、例えば120〜180℃、好ましくは130〜175℃、より好ましくは140〜170℃である。
【0031】
前記積層シート3を所定の幅(W1)に裁断することにより、テープ4が得られる。積層シート3の裁断では、表材1として使用する不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、フィルム等が裁断できれば充分であり、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、積層シート3を等間隔に裁断できるスリッター等を使用するとよい。
【0032】
交絡物50は、上述したようにテープ4を複数本用いて格子状に織り上げることにより形成される。テープ4は、1種であっても複数種であってもよい。例えば、経方向で同じテープを用いても、異なるテープを用いてもよい。緯方向も同様である。さらに経方向と緯方向とで同素材のテープを用いても、異種のテープを用いてもよい。好ましくは、複数種のテープを用いて、立体的意匠性不織布の意匠性を高めることが推奨される。
【0033】
また、織物の外観は前記テープ4の幅(W1)に応じて様々に変化させることも可能である。テープ4のテープ幅(W1)は、例えば、2〜100mmであり、好ましくは3〜75mmであり、より好ましくは5〜50mmである。テープ幅(W1)が2mm以上であれば、織物の格子模様が明瞭となるため、他の織物等からは得ることのできない独特の模様を形成することができる。テープ幅(W1)が2mm未満になると、積層シート3を裁断することや、また裁断後のテープ4を巻き取ることが難しくなる等の製造上の問題が生じ得る。一方、テープ幅(W1)が100mmより太くなると、製織の際にテープ4が自重に耐えきれず撓んでしまい、作業が効率的に行えない。またこのようにテープ4が撓むと、製造された織物の一部に隙間が生じたり、織物表面に撓んだテープ4が山なりに突出するため、立体的意匠性織物51の意匠性を損ねてしまう。
【0034】
前記テープ4の厚さ(T1)は、例えば0.1〜5.0mmであり、好ましくは0.3〜4.0mm、より好ましくは0.5〜3.0mmである。テープ厚さ(T1)が0.1mm以上であれば、得られる織物51が立体的になるため好ましく、また5.0mm以下であれば、テープが分厚くなりすぎることなく、製織を円滑に行うことが可能である。またテープ厚さ(T1)を変えることでも、織物の外観を様々に変化させることができる。
【0035】
得られたテープ4のうち、製織の際に経糸として使用するテープは、製造後ビーム等に巻き取るとよい。また緯糸として製織するものはボビン等に巻いておくことが好ましい。なお、経糸として使用するテープもボビンに巻き取った後、ビーム等に巻き直してもよい。
【0036】
2.製織
上記テープ4の製織では、一般に広く利用されている製織方法が適宜採用される。そして織組織の種類にも特に制限はなく、図2で示した平織りの他、綾織り、杉綾織り、畳織り、朱子織り、トリプル織り等の織組織が好ましく例示できる。
【0037】
上記交絡物50を加熱することで、本発明の立体的意匠性織物51が製造できる。この加熱では、熱風循環式加熱機(乾燥機)を使用したり、あるいは熱ロールや熱板間を通過させる等の手段が適宜採用できる。この加熱によって、熱接着性不織布の繊維が加熱溶融することでテープが固定される。加熱温度を適切に設定すれば、熱接着性不織布2中の繊維が充分に溶融するため、より強固に表材同士を固定させることができる。また、溶融した熱接着性不織布2の繊維が交絡点から織物表面に漏れたり、表材が熱劣化することも防止できる。
【0038】
製織後もしくは交絡物50を加熱固定した後に、織物の用途に合わせて、織物に機能をもたせることも可能である。例えば、スプレー加工等により立体的意匠性織物51に防水機能をもたせてもよい。
【0039】
上記立体的意匠性織物51は、自動車、電車、船舶、住宅等の壁や天井等の内装材の材料として好適である。本発明の立体的意匠性織物51は、テープ4を用いて製織されているため、織物表面に立体的な格子模様が現れており、他の布帛にはない独特の印象を見る者に与えることができる。そして、立体的意匠性織物51の裏面には熱接着性不織布2が露出しているため、内装材を貼り合わせる基材に本発明の織物を重ね、スチームやドライヤー、アイロン等の簡易な加熱により、容易に内装材を基材に接着させることが可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0041】
実施例1
表材A(ナイロントリコットの上に黒色顔料を含有するポリウレタン樹脂を発泡コーティングすることにより得られた合成皮革)と熱接着性不織布を積層し、160℃に加熱したエンボスロール間を通して加圧接着した。その後スリッターを用いて幅5mmに裁断し経糸用テープを作製した。一方、表材B(黒色朱子織物)と熱接着性不織布を積層し、160℃に加熱したエンボスロール間を通して加圧接着した。その後スリッターを用いて幅5mmに裁断し、緯糸用テープを作製した。2種類のテープを用いて平織りした織物を、加熱したカレンダーロールに通過させ、前記2種のテープを固定した。得られた織物はチェック柄で黒色にコントラストのある意匠性に優れた織物であった。また、耳部にほつれは生じなかった。
【0042】
比較例1
表材Aを、スリッターを用いて幅5mmに裁断したものを経糸用テープとした。一方、表材Bを、スリッターを用いて幅5mmに裁断したものを緯糸用テープとした。2種類のテープを用いて平織りすると、チェック柄で黒色にコントラストのある意匠性に優れた織物が得られた。しかしテープが固定されていないため、本織物の織り目は解れ、耳部がほつれた。
【符号の説明】
【0043】
1 表材
2 熱接着性不織布
3 積層シート
4 テープ
11 第1表材
12 第1熱接着性不織布
13 第1テープ
14 第1ブロック
21 第2表材
22 第2熱接着性不織布
23 第2テープ
24 第2ブロック
30 交絡点
31 交絡点
40 間隙
50 交絡物
51 立体的意匠性織物
テープ厚み
テープ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に交絡することで形成される織物であって、
前記テープは、表材と、この表材の裏面に貼り合わされた熱接着性不織布とから構成され、
前記表材は、不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、及びフィルムから選ばれる少なくとも1種で形成されており、
前記テープの交絡点では、一方のテープの熱接着性不織布と、他方のテープの表材が熱固定されていることを特徴とする立体的意匠性織物。
【請求項2】
前記テープの幅が2〜100mmであり、テープの厚さが0.1〜5.0mmである請求項1に記載の立体的意匠性織物。
【請求項3】
前記熱接着性不織布は、長繊維不織布または短繊維不織布であり、これら不織布は融点70〜180℃の熱可塑性樹脂から構成されている請求項1または2に記載の立体的意匠性織物。
【請求項4】
前記テープは、防汚処理、難燃処理、帯電防止処理、抗菌処理、消臭処理から選ばれる少なくとも1種の処理がされている請求項1〜3のいずれかに記載の立体的意匠性織物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の立体的意匠性織物を用いた自動車用または住居用内装材。
【請求項6】
不織布、織物、編物、皮革、人工皮革、合成皮革、及びフィルムから選ばれる少なくとも1種で形成された表材と熱接着性不織布とを重ね、熱をかけてこれらを接着する工程、
前記接着工程により得られる積層シートを、所定の幅に裁断するテープ化工程、
前記テープ化工程で得られた複数本のテープを、その表と裏を揃えたまま、格子状に製織する交絡工程、及び
前記交絡工程で得られた交絡物を加熱して、テープ間を熱固定する熱セット工程
から構成されることを特徴とする立体的意匠性織物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate