説明

立体表示装置

【課題】構成を複雑化することなく、多様な形態で2次元表示と3次元表示とを切り替えることができるようにする。
【解決手段】互いに対向する第1の電極と第2の電極21Yとによって印加される電圧に応じて液晶層内の屈折率分布を変化させることにより、レンズ効果をオン状態とオフ状態とに可変制御することが可能なレンズアレイ素子を用いる。レンズアレイ素子において複数の所定の部分領域ごとにレンズ効果のオン・オフ制御が可能となるように、第1の電極および第2の電極21Yのうちいずれか一方を、複数の所定の部分領域に電気的に分離し、所定の部分領域ごとに液晶層に電圧を印加することが可能な構造とする。例えば第1の電極を全体として平面状の電極とし、その平面状の電極を、複数の所定の部分領域に対応する複数の分割電極11−1,11−2で構成し、複数の分割電極11−1,11−2ごとに所定の駆動電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変式のレンズアレイ素子を用いて、2次元表示と3次元表示とを電気的に切り替えることができる立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の両眼に視差のある視差画像を見せることで立体視を実現する2眼式または多眼式の立体表示装置が知られている。これらの立体表示装置を実現する方法としては、例えば、液晶ディスプレイなどの2次元表示装置と、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させる3次元表示用の光学デバイス(視差分離手段)とを組み合わせたものが知られている。3次元表示用の光学デバイスとしては、例えば図26に示したように、複数のシリンドリカルレンズ(円筒レンズ)303を並列配置したシリンドリカルレンズアレイ302が用いられる。このシリンドリカルレンズアレイ302を2次元表示装置からなる表示パネル301の表示面に対して対向配置する。各シリンドリカルレンズ303は、表示パネル301の表示面に対して縦方向に延在し、左右方向に屈折力を有するように配置する。表示パネル301の表示面には、規則的に複数の表示画素が2次元配列されている。一つのシリンドリカルレンズ303の背面に2つ以上の画素を配置し、各画素からの光線をレンズの屈折力により異なる水平方向に出射させることで両眼視差を満たし、裸眼での立体視が可能となる。
【0003】
図26では2眼式の立体表示の例を示しており、各シリンドリカルレンズ303に対して、表示パネル301の表示面における隣接する2本の画素列301R,301Lが割り当てられている。一方の画素列301Rには右視差画像を表示し、他方の画素列301Lに左視差画像を表示する。表示された各視差画像は各シリンドリカルレンズ303によって左右別々の光路402,403に振り分けられる。これにより、所定の位置、所定の方向から観察者400が立体表示装置を見た場合、左右の視差画像が適切に観察者400の左右の眼401R,401Lに到達し、立体像が知覚される。
【0004】
同様にして、多眼式の場合、3つ以上の視点に相当する位置および方向において撮影した複数の視差画像を、シリンドリカルレンズ303の横方向のレンズピッチ内で等分して割り当てて表示する。これにより、3つ以上の視差画像が、シリンドリカルレンズアレイ302によって連続的な異なる角度範囲に出射され、結像される。この場合、観察者400の視線の位置および方向の変化に応じて、複数の異なる視差画像が知覚される。視点変化に応じた視差画像の変化が多いほど、より現実に近い立体感を得ることができる。
【0005】
ところで、シリンドリカルレンズアレイ302としては、例えば樹脂成型された、形状およびレンズ効果が固定のレンズアレイを用いることができるが、この場合、レンズ効果が固定なので3次元表示専用の表示装置となってしまう。一方、シリンドリカルレンズアレイ302として、液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子を用いることができる。液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子の場合、レンズ効果の有無を電気的に切り替えることができるため、2次元表示装置と組み合わせて、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードを切り替えることができる。すなわち、2次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果の無い状態(屈折力の無い状態)とし、2次元表示装置からの表示画像光をそのままの状態で通過させる。3次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果を発生させた状態とし、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させることで立体視を実現する。
【0006】
図27(A),(B)、図28、図29(A),(B)、および図30(A),(B)を参照して、液晶レンズによる切り替え式(可変式)のレンズアレイ素子の構成例を説明する。なお、これらの図では、主として電極部分の構造を図示し、基板や配向膜等の構成要素を省略している。この可変式のレンズアレイ素子は、例えばガラス材料よりなる透明な第1の基板および第2の基板と、それら第1の基板および第2の基板の間に挟まれた液晶層130(図27(A),(B)参照)とを備えている。第1の基板と第2の基板は、間隔dを空けて対向配置されている。
【0007】
第1の基板上には、ITO膜(Indium Tin Oxide)などの透明な導電膜からなる第1の電極111がほぼ全面に一様に形成されている(図28、図30(A)参照)。第1の基板上にはまた、第1の電極111を介して液晶層130に接するように第1の配向膜が形成されている。第2の基板上には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の電極121Yが部分的に形成されている(図28、図30(A)参照)。第2の基板上にはまた、第2の電極121Yを介して液晶層30に接するように第2の配向膜が形成されている。
【0008】
図27(A),(B)は、このレンズアレイ素子におけるレンズ効果発生の基本原理を示している。なお、図27(A),(B)では基本原理を説明するため、可変レンズアレイ素子の構成を簡略化して示している。液晶層130は、液晶分子131を含み、第1の電極111と第2の電極121Yとに印加される電圧に応じて液晶分子131の配列方向が変化することでレンズ効果が制御されるようになっている。液晶分子131は、屈折率異方性を有し、例えば長手方向と短手方向とで通過光線に対して屈折率の異なる屈折率楕円体の構造を有している。液晶層130は、第1の電極111と第2の電極121Yとに印加される電圧の状態に応じて、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果が発生する状態とに電気的に切り替わるようになっている。
【0009】
このレンズアレイ素子では、図27(A)に示したように、印加電圧が0Vの通常の状態では、液晶分子131が第1の配向膜および第2の配向膜によって規定される所定の方向に一様に配列される。このため、通過光線の波面201は平面波となり、レンズ効果の無い状態となる。一方、このレンズアレイ素子では、複数の第2の電極121Yが、所定の間隔で離間配置されているため、第1の電極111と第2の電極121Yとの間に所定の駆動電圧を印加すると、液晶層130内での電界分布に偏りが生ずる。すなわち、第2の電極121Yが形成されている領域に対応する部分では駆動電圧に応じて電界強度が強くなり、複数の第2の電極121Y間の開口の中心部に行くほど電界強度が弱くなるような電界が発生する。このため、図27(B)に示したように、液晶分子131の配列が電界強度分布に応じて変化する。これにより、通過光線の波面202が変化し、レンズ効果が発生する状態となる。
【0010】
図28、図30(A)は電極部分の平面構成例を示している。図30(B)は図30(A)に示した電極構造である場合に形成されるレンズ形状を光学的に等価に示している。第2の電極121Yは、幅Lxの電極幅を有して縦方向(垂直方向)に延在している。そして、図30(A)に示したように第2の電極121Yは、レンズ効果を発生させたときのレンズピッチpに相当する周期間隔で複数、並列的に配置されている。レンズ効果を発生させる場合には、液晶層130を挟む上下の電極間で、液晶分子131の配列に変化を生じさせることが可能となるような所定の電位差を与えるようにする。例えば図29(B)に示したように、複数の第2の電極121Yについては所定の共通電圧(例えば0V)を印加し、第1の電極111には例えば矩形波状の所定の駆動電圧を印加する。
【0011】
第1の電極111は全面に形成され、第2の電極121Yは横方向に間隔を空けて部分的に形成されているので、第1の電極111と第2の電極121Yとの間で所定の電位差を生じさせると、上記した図27(B)に示した原理で、液晶層130内での電界分布に偏りが生ずるので、横方向(X軸方向)にレンズ効果が発生するように電界分布が変化する。すなわち、等価的には、図30(B)に示したように、Y軸方向に延在しX軸方向に屈折力のあるシリンドリカルレンズ31Yが、X軸方向に複数、並列配置されたようなレンズ状態となる。
【0012】
その他、裸眼での立体視が可能なものとして、パララックスバリア方式のものが知られている。パララックスバリア方式では、視差分離手段としてパララックスバリアと呼ばれる構造物を2次元表示パネルに対向配置し、2次元表示パネルに表示された左右の視差画像をパララックスバリアによって水平方向に視差分離することで立体視が行われる。パララックスバリアを例えば液晶ディスプレイを用いて可変式のバリアとすることで、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードでの切り替え表示が可能である。しかしながら、パララックスバリア方式の場合、3次元表示モードでは、パララックスバリアによって2次元表示パネルからの表示画像光が部分的に遮蔽されてしまうので、上記したシリンドリカルレンズを用いる方式に比べて観察画像が暗くなってしまう。
【0013】
特許文献1には、図27(A)等に示した電極構造における第2の電極121Yの部分を2層構造とした液晶レンズが開示されている。この液晶レンズでは、液晶層の片側に形成する透明電極の配置間隔を第1層目と第2層目とで変えることで、液晶層に形成される電界分布の制御をより最適化しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−9370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記したように可変式のレンズアレイ素子を用いることで、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードでの切り替え表示が可能である。しかしながら、従来では、この表示切り替えを図29(A)に示したように、全画面での2次元(2D)表示と全画面での3次元(3D)表示との切り替えを行うものに限られている。一方で、画面の一部分のみを3次元表示とし、その他の部分を2次元表示にすることができれば便利である。例えば3次元表示は2次元表示に比べて解像度が落ちるため、高い解像度が要求される映像部分については2次元表示とすることが考えられる、また、3次元表示でなくとも良い部分を含む映像素材の場合には、部分的に2次元表示にすることが考えられる。例えば字幕付きの映画を3次元表示する場合に、字幕の部分については2次元表示にすることなどが考えられる。このような多様な形態での表示を簡易な構成で実現できれば便利である。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、構成を複雑化することなく、多様な形態で2次元表示と3次元表示とを切り替えることができるようにした立体表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点に係る立体表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示パネルと、第1の電極と、第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、第1の電極と第2の電極とによって印加される電圧に応じて液晶層内の屈折率分布を変化させることにより、表示パネルからの表示画像光に対するレンズ効果をオン状態とオフ状態とに可変制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子とを備えているものである。そして、レンズアレイ素子において複数の所定の部分領域ごとにレンズ効果のオン・オフ制御が可能となるように、第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離され、所定の部分領域ごとに液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされているものである。
【0018】
本発明の第2の観点に係る立体表示装置は、画像表示を行う表示パネルと、第1の電極と、第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、第1の電極と第2の電極とによって印加される電圧に応じて、表示パネルからの表示画像光に対するレンズ効果を制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子とを備えているものである。そして、第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離され、所定の部分領域ごとに液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされているものである。
【0019】
本発明の第3の観点に係る立体表示装置は、画像表示を行う表示パネルと、第1の電極と、第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、第1の電極と第2の電極とによって印加される電圧に応じて、表示パネルからの表示画像光に対する屈折力の方向を制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子とを備えているものである。そして、第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離され、所定の部分領域ごとに液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされているものである。
【0020】
本発明の第1、第2または第3の観点に係る立体表示装置では、レンズアレイ素子において互いに対向配置された第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離されていることで、液晶層への電圧印加の状態が所定の部分領域ごとに制御可能となる。これにより、レンズアレイ素子において、例えば複数の所定の部分領域のうちの一部の部分領域についてレンズ効果をオン状態に設定し、かつ、その他の部分領域についてレンズ効果をオフ状態に設定するような制御が可能となり、一部の部分領域にのみ3次元表示を行い、かつ、その他の部分領域での2次元表示を行うことが可能となる。また、例えば複数の所定の部分領域のすべてについてレンズ効果をオフ状態とオン状態とに切り替えるような制御も可能であり、全画面での2次元表示と3次元表示との切り替えを行うこともできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1、第2または第3の観点に係る立体表示装置によれば、レンズアレイ素子において、互いに対向配置された第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を、複数の所定の部分領域に電気的に分離し、所定の部分領域ごとに液晶層に電圧を印加することが可能な構造にしたので、構成を複雑化することなく、多様な形態で2次元表示と3次元表示とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る立体表示装置の全体構成の一例を示す断面図である。
【図2】立体表示装置の全体構成の他の例を示す断面図である。
【図3】(A)はレンズアレイ素子における電極部分の第1の構成例を示す斜視図であり、(B)は電極部分の第2の構成例を示す斜視図である。
【図4】立体表示装置に設定された部分領域についての説明図である。
【図5】立体表示装置における表示状態の切り替えについての説明図である。
【図6】(A)は立体表示装置における表示状態の一例を示す説明図あり、(B)は図6(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第1の構成例および駆動例を示す説明図、(C)は図6(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第2の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図7】レンズアレイ素子における電極部分に印加される駆動電圧の一例を示す波形図である。
【図8】部分領域の設定の変形例を示す説明図である。
【図9】部分領域の設定の他の変形例を示す説明図である。
【図10】部分領域の設定のさらに他の変形例を示す説明図である。
【図11】(A)は立体表示装置における表示状態の変形例を示す説明図あり、(B)は図11(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第1の構成例および駆動例を示す説明図、(C)は図11(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第2の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図12】(A)は立体表示装置における表示状態の変形例を示す説明図あり、(B)は図12(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第1の構成例および駆動例を示す説明図、(C)は図12(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第2の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図13】(A)は立体表示装置における表示状態の変形例を示す説明図あり、(B)は図13(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図14】(A)は立体表示装置における表示状態の変形例を示す説明図あり、(B)は図14(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第1の構成例および駆動例を示す説明図、(C)は図14(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第2の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図15】(A)は立体表示装置における表示状態の変形例を示す説明図あり、(B)は図15(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第1の構成例および駆動例を示す説明図、(C)は図15(A)に示した表示状態を実現するための電極部分の第2の構成例および駆動例を示す説明図である。
【図16】立体表示装置による表示形態の具体例を示す説明図である。
【図17】立体表示装置による表示形態の他の具体例を示す説明図である。
【図18】本発明の実施例に係る立体表示装置の第1の構成を示す断面図である。
【図19】実施例に係る立体表示装置の第2の構成を示す断面図である。
【図20】実施例に係る立体表示装置の電極部分の構成を示す斜視図である。
【図21】実施例に係る立体表示装置における表示パネルの構成を示す平面図である。
【図22】実施例に係る立体表示装置における電極部分の構成を示す平面図である。
【図23】表示品位の評価に用いた第1の測定系の構成を模式的に示す説明図である。
【図24】表示品位の評価に用いた第2の測定系の構成を模式的に示す説明図である。
【図25】実施例に係る立体表示装置の表示品位の評価結果を示す説明図である。
【図26】従来のシリンドリカルレンズを用いた立体表示の概念を示す説明図である。
【図27】従来の可変式のレンズアレイ素子の基本構成例を示す断面図であり、(A)はレンズ効果の無い状態、(B)はレンズ効果を発生させた状態を示す。
【図28】従来の可変式のレンズアレイ素子における電極部分の構成例を示す平面図である。
【図29】(A)は従来の可変式のレンズアレイ素子を用いた場合の表示状態の切り替えについての説明図であり、(B)は従来の可変式のレンズアレイ素子における電極部分に印加される駆動電圧の一例を示す説明図である。
【図30】(A)は従来の可変式のレンズアレイ素子の電極部分の構成例を示す斜視図であり、(B)は可変式のレンズアレイ素子によって形成されるレンズ形状を光学的に等価に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
[立体表示装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る立体表示装置の一例を示している。この立体表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示パネル2と、表示パネル2の表示面2A側に対向するように配置されたレンズアレイ素子1とを備えている。
【0025】
この立体表示装置は、全画面での2次元(2D)表示モードと、全画面での3次元(3D)表示モードと、部分的な3次元表示モードとの3つの表示モードを選択的に切り替えることが可能とされている。この立体表示装置では、図4に示したように、領域サイズの同じ部分領域が左右2つに設定されている。そして、各部分領域について2D表示と3D表示とを選択的に切り替えることが可能とされている。これにより、例えば図5(A)〜(D)に示したような表示状態を任意に選択可能とされている。すなわち、各部分領域をすべて2D表示にした状態(図5(A))と、各部分領域をすべて3D表示にした状態(図5(B))と、左側の部分領域を2D表示にし、かつ右側の部分領域を3D表示にした状態(図5(C))と、左側の部分領域を3D表示にし、かつ右側の部分領域を2D表示にした状態(図5(D))とに切り替え可能とされている。
【0026】
レンズアレイ素子1は、後述するように液晶レンズ方式による可変レンズアレイであり、部分領域ごとに電気的にレンズ効果のオン・オフ制御を行うことが可能なものである。レンズアレイ素子1は、表示モードに応じてレンズ効果を部分領域ごとに制御することで、表示パネル2からの光線の通過状態を部分領域ごとに選択的に変化させるようになっている。表示パネル2は、2次元表示を行う部分領域については2次元画像データに基づく映像表示を行い、3次元表示を行う部分領域については3次元画像データに基づく映像表示を行うようになっている。なお、3次元画像データとは、例えば、3次元表示における複数の視野角方向に対応した複数の視差画像を含むデータである。例えば2眼式の3次元表示を行う場合、右眼表示用と左眼表示用の視差画像のデータである。
【0027】
なお、本実施の形態では、レンズアレイ素子1における各基板面または表示パネル2の各基板面に平行な面内で横方向(水平方向)をX方向、縦方向(垂直方向)をY方向として説明する。基本的には、表示パネル2の表示面2Aの横方向がX方向、縦方向がY方向である。
【0028】
[表示パネル2の構成]
表示パネル2は、例えばR(赤色)用画素、G(緑色)用画素、およびB(青色)用画素からなる画素を複数有し、それら複数の画素がマトリクス状に配置されている。表示パネル2の画素は、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズのピッチpに対してN個(2以上の整数)分、配置されている。3次元表示モードでは、このN個分、3次元表示における光線数(視線数)を提示することになる。表示パネル2は、例えば液晶表示ディスプレイで構成することができる。表示パネル2を例えば透過型の液晶表示ディスプレイで構成した場合、バックライトからの光を画像データに応じて画素ごとに変調させることで2次元的な画像表示を行う。また、表示パネル2として、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイやフィールドエミッションディスプレイ(FED)等の自発光型のディスプレイを用いても良い。
【0029】
[レンズアレイ素子1の全体構成]
レンズアレイ素子1は、図1に示したように間隔dを空けて互いに対向配置された第1の基板10および第2の基板20と、それら第1の基板10および第2の基板20の間に配置された液晶層3とを備えている。第1の基板10および第2の基板20は、例えばガラス材料または樹脂材料よりなる透明基板である。第1の基板10上における第2の基板20に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第1の電極11がほぼ全面に形成されている。第1の基板10上にはまた、第1の電極11を介して液晶層3に接するように第1の配向膜13が形成されている。第2の基板20上における第1の基板10に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の電極21Yが部分的に形成されている。第2の基板20上にはまた、第2の電極21Yを介して液晶層3に接するように第2の配向膜23が形成されている。
【0030】
液晶層3は、液晶分子5を含み、第1の電極11と第2の電極21Yとに印加される電圧に応じて液晶分子5の配列方向が変化することでレンズ効果が制御されるようになっている。液晶分子5は、屈折率異方性を有し、例えば長手方向と短手方向とで通過光線に対して屈折率の異なる屈折率楕円体の構造を有している。液晶層3は、第1の電極11と第2の電極21Yとに印加される電圧の状態に応じて、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果が発生する状態とに電気的に切り替わるようになっている。なお、このレンズアレイ素子1において、そのレンズ効果発生の基本原理は、図27(A),(B)に示した液晶レンズと同様である。
【0031】
なお、図2に示したように、第2の電極21Yと第2の配向膜23との間に誘電体層25が配置されていても良い。誘電体層25を配置することにより、レンズアレイ素子1でレンズ効果を発生させる場合に、液晶層3内の屈折率分布をより理想的な状態にして理想的なレンズ効果を得ることができる。
【0032】
[レンズアレイ素子1の電極構造]
第2の電極21Yは、互いに間隔を空けて配置された複数のライン電極からなり、図1に示したように幅Lxの電極幅を有して縦方向に延在している。そして、第2の電極21Yは、レンズ効果を発生させたときのレンズピッチpに相当する周期間隔で複数、並列的に配置されている。レンズ効果を発生させる場合には、液晶層3を挟む上下の電極間で、液晶分子5の配列に変化を生じさせることが可能となるような所定の電位差を与えるようにする。第1の電極11は全体として平面状の電極である。第2の電極21Yは横方向に間隔を空けて部分的に形成されているので、第1の電極11と第2の電極21Yとの間で電圧を印加すると、図27(B)に示した場合と同様の原理で、液晶層3内での電界分布に偏りが生ずる。すなわち、第2の電極21Yが形成されている領域に対応する部分では駆動電圧に応じて電界強度が強くなり、第2の電極21Yから横方向に離れるほど電界強度が弱くなるような電界が発生する。すなわち、横方向(X方向)にレンズ効果(屈折力)が発生するように電界分布が変化する。すなわち、等価的には、図30(B)に示した場合と同様に、Y方向に延在しX方向に屈折力のあるシリンドリカルレンズ31Yが、X方向に複数、並列配置されたようなレンズ状態となる。
【0033】
図3(A)はレンズアレイ素子1の電極部分の第1の具体的な構成例を示している。図3(B)は第2の具体的な構成例を示している。なお、図3(A),図3(B)では説明の都合上、第2の電極21Yの数を少なめに簡略化して図示している。レンズアレイ素子1は、図4に示した各部分領域ごとにレンズ効果のオン・オフ制御が可能となるように、第1の電極11および第2の電極21Yのうちいずれか一方が、複数の部分領域に電気的に分離され、各部分領域ごとに液晶層3に電圧を印加することが可能な構造とされている。
【0034】
図3(A)は、第1の電極11を、左右の部分領域に対応する第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2とに分割した構造とし、各分割電極ごとに所定の駆動電圧を印加することが可能にしたものである。この構成の場合、第2の電極21Yを構成する複数のライン電極には、全体に所定の共通電圧が印加されるようする。
【0035】
図3(B)は、第2の電極21Yを構成する複数のライン電極を、左右の部分領域に対応させて第1の分離電極21Y−1と第2の分離電極21Y−2とに電気的に分離し、各分離電極ごとに所定の駆動電圧を印加することが可能にしたものである。この構成の場合、第1の電極11は全体として一様な1つの平面状の電極とし、全体に所定の共通電圧が印加されるようする。
【0036】
[レンズアレイ素子の製造]
このレンズアレイ素子1の製造を行う場合、まず、例えばガラス材料または樹脂材料よりなる第1の基板10および第2の基板20のそれぞれに、例えばITO膜などの透明導電膜を所定のパターンで形成して第1の電極11および第2の電極21Yを形成する。第1および第2の配向膜13,23は、ポリイミド等の高分子化合物を布で一方向に擦るラビング法や、SiO等の斜方蒸着法により形成する。これにより、液晶分子5の長軸を一方向に配向させる。第1および第2の配向膜13,23上には、第1の基板10と第2の基板20との間隔dを一様に保つために、シール材にガラス材料または樹脂材料からなるスペーサ4を分散させたものを印刷する。そして、第1の基板10と第2の基板20とを貼り合わせ、スペーサ入りのシール材を硬化させる。その後に、公知のTN、STN等の液晶材料を、シール材開口部から第1の基板10と第2の基板20との間に注入し、シール材開口部を封止する。そして、液晶組成物を等方相まで加熱してから、徐冷することにより、レンズアレイ素子1を完成させる。なお、本実施の形態においては、液晶分子5の屈折率異方性Δnが大きいほど、より大きいレンズ効果が得られるので、液晶材料をそのような内容組成にすることが好ましい。一方で、屈折率異方性Δnが大きい液晶組成物の場合、却って液晶組成物の物性を損ね、粘性が増加してしまうことによる基体間への注入が困難となったり、低温では結晶に近い状態になったり、内部電界が増大し、液晶素子の駆動電圧が高くなってしまうことがある。このため、製造性とレンズ効果との双方を考慮した内容組成にすることが好ましい。
【0037】
[立体表示装置の動作]
この画像表示装置では、レンズアレイ素子1において、複数の部分領域のすべてについてレンズ効果をオフ状態に設定して、表示パネル2からの表示画像光を屈折させることなく透過させることで全画面での2次元表示を行う。
【0038】
また、レンズアレイ素子1において、複数の部分領域のすべてについてレンズ効果をオン状態に設定して、表示パネル2からの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで全画面での3次元表示を行う。
【0039】
また、レンズアレイ素子1において、複数の部分領域のうちの一部の部分領域についてレンズ効果をオン状態に設定して、表示パネル2からの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで一部の部分領域での3次元表示を行う。かつ、その他の部分領域についてレンズ効果をオフ状態に設定して、表示パネル1からの表示画像光を屈折させることなく透過させることでその他の部分領域での2次元表示を行う。
【0040】
一例として、図6(A)に示したように左側の部分領域を3D表示にし、かつ右側の部分領域を2D表示にする場合について、レンズアレイ素子1の駆動方法を説明する。図6(B)は、図3(A)に示したように第1の電極11を第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。この場合、第2の電極21Yを構成する複数のライン電極には、全体に所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。第1の電極11については、3D表示にする左側の部分領域に対応する第1の分割電極11−1には、所定の駆動電圧を印加する。この所定の駆動電圧としては、例えば図7に示したような矩形波状の電圧を印加する。これにより、左側の部分領域についてはレンズ効果がオン状態となる。2D表示にする右側の部分領域に対応する第2の分割電極11−2には、第2の電極21Yと同電位となるように所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。これにより右側の部分領域についてはレンズ効果がオフ状態となる。
【0041】
図6(C)は、図3(B)に示したように第1の分離電極21Y−1と第2の分離電極21Y−2とに電気的に分離した構造にした場合の駆動例を示している。この場合、第1の電極11には、全体に所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。第2の電極21Yについては、3D表示にする左側の部分領域に対応する第1の分離電極21Y−1には、所定の駆動電圧を印加する。この所定の駆動電圧としては、例えば図7に示したような矩形波状の電圧を印加する。これにより、左側の部分領域についてはレンズ効果がオン状態となる。2D表示にする右側の部分領域に対応する第2の分離電極21Y−2には、第1の電極11と同電位となるように所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。これにより右側の部分領域についてはレンズ効果がオフ状態となる。
【0042】
<変形例>
この立体表示において、部分領域の設定の数や大きさは図4に示した例に限らず、種々の変形例が考えられる。その場合、電極構造は、部分領域の設定に応じた構造とすれば良い。例えば第1の電極11を部分領域に対応するような分割電極とすれば良い。
【0043】
[部分領域の設定の変形例]
図8(A)〜(C)は、画面の上下方向に複数の部分領域を設定した例を示している。図8(A)は、部分領域が上下方向に2つあり、上側の部分領域に比べて下側の部分領域のサイズを小さく設定した例を示している。図8(B)は、部分領域が上下方向に3つあり、上側の第1の部分領域に比べてサイズが小さい第2および第3の部分領域を下側に設定した例を示している。図8(C)は、上下方向に等分割で4つの部分領域を設定した例を示している。なお、図示したものよりも上下方向に細かく部分領域を設定することも可能である。最小の部分領域の大きさはレンズピッチに相当する部分まで細かく設定することが可能である。
【0044】
図9(A)〜(C)は、水平方向に複数の部分領域を設定した例を示している。図9(A)は、水平方向に等分割で3つの部分領域を設定した例を示している。図9(B)は、部分領域が水平方向に3つあり、左側の第1の部分領域に比べてサイズが小さい第2および第3の部分領域を左側に設定した例を示している。図9(C)は、部分領域が水平方向に3つあり、中央の第1の部分領域に比べてサイズが小さい第2および第3の部分領域を左右に設定した例を示している。なお、図示したものよりも水平方向に細かく部分領域を設定することも可能である。最小の部分領域の大きさはレンズピッチに相当する部分まで細かく設定することが可能である。
【0045】
その他、図10(A)〜(D)に示したように、上下方向と水平方向との双方に複数の部分領域を設定することも可能である。この他、例えば第1の電極11を部分領域に対応するような分割電極で構成する場合、外周部から接続端子が取れるような構造であれば種々の形態での部分領域の設定が可能である。
【0046】
[部分領域の設定および電極構造の変形例]
図11(B),(C)は、図11(A)に示したように、水平方向に等分割で3つの部分領域が設定され、左右の部分領域のみを3D表示にする場合について、電極構造の具体例とその駆動例を示している。図11(B)は、第1の電極11を各部分領域に対応させて第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2と第3の分割電極11−3とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。この場合、第2の電極21Yを構成する複数のライン電極には、全体に所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。第1の電極11については、3D表示にする左右の部分領域に対応する第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2とには、所定の駆動電圧を印加する。この所定の駆動電圧としては、例えば図7に示したような矩形波状の電圧を印加する。これにより、左右の部分領域についてはレンズ効果がオン状態となる。2D表示にする中央の部分領域に対応する第3の分割電極11−3には、第2の電極21Yと同電位となるように所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。これにより中央の部分領域についてはレンズ効果がオフ状態となる。
【0047】
図11(C)は、第2の電極21Yを第1の分離電極21Y−1と第2の分離電極21Y−2と第3の分離電極21Y−3とに電気的に分離した構造にした場合の駆動例を示している。この場合、第1の電極11には、全体に所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。第2の電極21Yについては、3D表示にする左右の部分領域に対応する第1の分離電極21Y−1と第2の分離電極21Y−2とには、所定の駆動電圧を印加する。この所定の駆動電圧としては、例えば図7に示したような矩形波状の電圧を印加する。これにより、左右の部分領域についてはレンズ効果がオン状態となる。2D表示にする中央の部分領域に対応する第3の分離電極21Y−3には、第1の電極11と同電位となるように所定の共通電圧(例えば0V)を印加する。これにより中央の部分領域についてはレンズ効果がオフ状態となる。
【0048】
図12(B),(C)は、図12(A)に示したように、上下方向に等分割で2つの部分領域が設定され、上側の部分領域のみを3D表示にする場合について、電極構造の具体例とその駆動例を示している。図12(B)は、第1の電極11を各部分領域に対応させて第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。また、図12(C)は、第2の電極21Yを、2つの部分領域に対応させて第1の分割電極21Y−10と第2の分割電極21Y−20とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。
【0049】
図13(B)は、図13(A)に示したように、上下方向に等分割で3つの部分領域が設定され、中央の部分領域のみを3D表示にする場合について、電極構造の具体例とその駆動例を示している。図13(B)は、第1の電極11を各部分領域に対応させて第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2と第3の分割電極11−3とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。
【0050】
図14(B),(C)は、図14(A)に示したように、上側に領域サイズの大きい1つの部分領域が設定されると共に、下側に領域サイズの小さい2つの部分領域が設定され、左下の部分領域のみを3D表示にする場合について、電極構造の具体例とその駆動例を示している。図14(B)は、第1の電極11を各部分領域に対応させて第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2と第3の分割電極11−3とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。また、図14(C)は、第2の電極21Yを、上下方向に第1の分割電極21Y−10と第2の分割電極21Y−20とに分割すると共に、第2の分割電極21Y−20をさらに第1の分離電極21Y−21と第2の分離電極21Y−22とに電気的に分離させた構造にした場合の駆動例を示している。
【0051】
図15(B),(C)は、図15(A)に示したように、全体が上下方向および左右方向に等分割され、合計で4つの部分領域が設定され、右上と左下側の部分領域のみを3D表示にする場合について、電極構造の具体例とその駆動例を示している。図15(B)は、第1の電極11を各部分領域に対応させて第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2と第3の分割電極11−3と第4の分割電極11−4とに分割した構造にした場合の駆動例を示している。また、図15(C)は、第2の電極21Yを、上下方向に第1の分割電極21Y−10と第2の分割電極21Y−20とに分割すると共に、第1の分割電極21Y−10を第1の分離電極21Y−11と第2の分離電極21Y−12とに電気的に分離させ、さらに第2の分割電極21Y−20を第3の分離電極21Y−13と第2の4離電極21Y−14とに電気的に分離させた構造にした場合の駆動例を示している。
【0052】
[表示形態の具体例]
以上説明したように、本実施の形態に係る立体表示装置によれば、複数の所定の部分領域ごとにレンズ効果のオン・オフ制御が可能となるようにレンズアレイ素子1を構成したので、構成を複雑化することなく、多様な形態で2次元表示と3次元表示とを切り替えることができる。これにより、例えば、立体写真や立体映像が表示されている部分に対して、字幕や文章などを読みやすく、高精細な2D表示での同画面内で表示することが可能となる。また、部分領域の設定を特定のパターンにしているので、複雑なドライバー回路や配線など、ほぼ不要にすることができ、安価に実施できる。
【0053】
図16(A),(B)および図17は、以上で説明した立体表示装置において、部分的に3次元表示を行う場合の表示形態の例を示している。図16(A),(B)は、領域サイズの同じ部分領域が左右2つに設定されている場合の表示形態の例を示している。例えば図16(A)に示したように、左側の部分領域には3D写真を表示し、右側の部分領域にはカレンダや時計などを2D表示する形態が考えられる。また、図16(B)に示したように、左側の部分領域には3Dでのゲーム画面を表示し、右側の部分領域にはゲームに関連する文字情報などを2D表示する形態が考えられる。
【0054】
図17は、部分領域が上下方向に2つあり、上側の部分領域に比べて下側の部分領域のサイズが小さく設定されている場合の表示形態の例を示している。このような部分領域が設定されている場合、例えば字幕付きの3D映画を表示するのに便利である。例えば上側の広い部分領域には3D映画の映像本体部分を3D表示し、下側の狭い部分領域には字幕を2D表示する形態が考えられる。
【実施例】
【0055】
次に、本実施の形態に係る立体表示装置の具体的な実施例について説明する。
【0056】
図18および図19は、本実施例に係る立体表示装置の構成を示している。図19は、図18の構成に対して、第2の電極21Yと第2の配向膜23との間に誘電体層25が配置されたものであり、その他の構成は同じである。本実施例では、レンズアレイ素子1の第1の基板10および第2の基板20として、ガラス基板にITOからなる透明電極を設けた電極基板を用いた。そして、周知のフォトリソグラフィ法ならびにウェットエッチングもしくはドライエッチング法により、第1の電極11および第2の電極21Yの電極形状をパターンニングした。その電極上にポリイミドをそれぞれスピンコートして焼成し、各配向膜13,23を形成した。材料の焼成後には、各配向膜13,23の表面をラビング処理し、さらにはIPA等で洗浄−加熱乾燥させた。冷却後、ラビング方向が向き合うように第1の基板10および第2の基板20を所定の間隔dで貼り合わせた。この間隔dは、スペーサを全面に分散させることにより保持した。その後、シール材開口部から真空注入法によって、液晶材料を注入し、シール材開口部を封止した。そして、等方相まで液晶セルを加熱してから徐冷した。本実施例で用いた液晶材料は代表的なネマティック液晶であるMBBA(p-methoxybenzylidene-p'-butylaniline)を用いた。屈折率異方性Δnの値は、20℃で0.255である。
【0057】
【化1】

【0058】
表示パネル2としては、1画素の大きさが81μmのTFT−LCDパネルを用いた。この表示パネル2は、R(赤色)用画素、G(緑色)用画素、およびB(青色)用画素からなる画素を複数有し、それら複数の画素がマトリクス状に配置されている。また、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズのピッチpに対して、表示パネル2の画素数を2以上N個というように、整数倍にした。このN個分、3次元表示における光線数(視線数)を提示することになる。
【0059】
レンズアレイ素子1の電極構造としては、図20に示したように、第1の電極11を、上下方向に第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2とに分割した構造にした。第1の分割電極11−1の上下方向の長さW1は、第2の分割電極11−2の上下方向の長さW2に対して3倍の大きさにした。すなわち、
W1:W2=3:1
である。
【0060】
以下の表1に、実施例1〜4として設定した設計パラメータの値を[表1]に示す。Nは表示パネル2のレンズピッチpに対する画素数を示す。間隔sは、図20に示したように、第1の分割電極11−1と第2の分割電極11−2との距離である。その他、電極幅Lx等の意味は、図20に示した通りである。なお、本発明の構成は、以下に示す実施例の設計パラメータの値に限定されるものではない。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜4では、表示パネル2として、図21に示したような3インチWVGA(864×480画素)のものを用いた。図22(A),(B)は、図21に示した表示パネル2の画素構成に対応するレンズアレイ素子1の電極構造を示している。図22(A)は第1の基板10側、図22(B)は第2の基板20側の電極構造を示している。
【0063】
また、比較例として第1の電極11が分割されていない構造(図29(B)に示した構造)のものを用意した。その比較例1〜4として設定した設計パラメータの値を[表2]に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上記実施例1〜4と比較例1〜4では、第1の電極11への駆動電圧に用いる外部電源として、30Hz以上の矩形波を用いることを標準にした。その際の振幅電圧は5V〜10V程度であり、シリンドリカルレンズのピッチや上下電極基板のギャップなどに応じ、調整した。基板間隔dが厚くなるほど、振幅電圧は高く設定する必要がある。駆動振幅電圧を少しずつ上げ、その電圧を上げてもほとんど視認性が変わらなくなってくる領域があり、飽和直前の電圧値を駆動電圧とする。また、0V印加することで、2D表示モードにするときに凡その時間(OFF応答時間)を観測した。
【0066】
[立体表示装置の表示品位の評価]
上記実施例1〜4と比較例1〜4のそれぞれについて、立体表示装置の表示品位の評価を行った。図23、図24はその表示品位の評価に用いた測定系の概念を示している。図23は実施例1〜2と比較例1〜2の評価に用いた測定系、図24は実施例3〜4と比較例3〜4の評価に用いた測定系を示している。
【0067】
図23では、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズ31Yの1つのレンズ幅に対して、表示パネル2の画素が4画素分配置されるような構成にした。表示パネル2の1画素はR(赤),G(緑),B(青)の3つのサブピクセルからなる。このような構成の立体表示装置に対して、50mm離れたところに光強度を観測できるフォトダイオード80を配置し、表示パネル2に対して平行に移動できるような測定系とした。図23において、画素1と画素2のR,G.Bの全てを点灯して白表示になるようにしたもの(右眼用)と、画素3と画素4のR,G.Bの全てを点灯して白表示になるようにしたもの(左眼用)とに対して、それぞれの状況で、50mm離れたところに光強度を観測できるフォトダイオード80を配置し、移動方向に応じて光強度を計測した。
【0068】
図24では、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズ31Yの1つのレンズ幅に対して、表示パネル2の画素が2画素分配置されるような構成にした。図24において、画素1のR,G.Bの全てを点灯して白表示になるようにしたもの(右眼用)と、画素2のR,G.Bの全てを点灯して白表示になるようにしたもの(左眼用)とに対して、それぞれの状況で、50mm離れたところに光強度を観測できるフォトダイオード80を配置し、移動方向に応じて光強度を計測した。
【0069】
図25は、実施例1における光強度分布の測定結果を示している。図25において、横軸はフォトダイオード80による光強度の検出位置(mm)であり、縦軸は光強度(arbitrary unit(任意単位))となっている。図25において、光強度がピークとなる位置は、立体表示を行う場合の視線位置に対応する
【0070】
ここで、視距離500mm離れたところで、瞳間距離65mmに相当するクロストーク値を換算する。瞳距離65mm離れたところで、左眼には左眼用だけの光線が、右眼には右眼用だけの光線が観測されるのが理想であるが、図25のように、左眼の観測位置では左眼用の光線だけでなく、右眼用の光線のスソが重なっている。すなわち、これらはクロストークと定義され、限りなくゼロとすることが望ましい。クロストークを定量化するにあたり、
左右いずれかの強度/左右両方の強度合計×100(%)
と定義する。
さらに計測エリアを該当エリアで9か所(縦3×横3)とし、その平均値として示す。
[表3]には実施例1〜4のクロストーク量、[表4]には比較例1〜4のクロストーク量を示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
実施例1〜4において、全面3D表示モードであっても、部分的な3D表示モードであっても、そのクロストーク量は同じ結果となり、電極分割による影響は全くない結果となった。さらに、各実施例に対する比較例1〜4とで、クロストーク量は同じであり、電極分割することによる影響が全くない。
【0074】
一方、2D表示の定量化としては視野角に対しての輝度、色度などのパラメータがあげられる。実施例1〜4においては、液晶レンズ部のレンズ効果オフ時において、輝度ならび色度の視野角依存性を計測したところ、液晶レンズ部がない場合と比較して80〜90%の劣化となった。本実施例においては反射防止のためのARフィルムなどの対策を行っていないため、この程度の劣化は不可避であり、換言すれば、同対策を施せば、ほぼ2D表示時の劣化は見られないと考えられる。この2D表示の評価結果は全面2D表示モードであっても、部分的な2D表示モードであっても全く同じ結果となった。
【符号の説明】
【0075】
1…レンズアレイ素子、2…表示パネル、2A…表示面、3…液晶層、5…液晶分子、10…第1の基板、11…第1の電極、11−1…第1の分割電極、11−2…第2の分割電極、11−3…第3の分割電極、11−4…第4の分割電極、13…第1の配向膜、20…第2の基板、21Y…第2の電極、21Y−1…第1の分離電極、21Y−2…第2の分離電極、21Y−3…第3の分離電極、21Y−10…第1の分割電極、21Y−20…第2の分割電極、21Y−11,21Y−21…第1の分離電極、21Y−12,21Y−22…第2の分離電極、21Y−13…第3の分離電極、21Y−14…第4の分離電極、23…第2の配向膜、25…誘電体層、31Y…シリンドリカルレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に画像表示を行う表示パネルと、
第1の電極と、前記第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極とによって印加される電圧に応じて前記液晶層内の屈折率分布を変化させることにより、前記表示パネルからの表示画像光に対するレンズ効果をオン状態とオフ状態とに可変制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子と
を備え、
前記レンズアレイ素子において複数の所定の部分領域ごとにレンズ効果のオン・オフ制御が可能となるように、前記第1の電極および前記第2の電極のうちいずれか一方が、複数の前記所定の部分領域に電気的に分離され、前記所定の部分領域ごとに前記液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされている
立体表示装置。
【請求項2】
画像表示を行う表示パネルと、
第1の電極と、前記第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極とによって印加される電圧に応じて、前記表示パネルからの表示画像光に対するレンズ効果を制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子と
を備え、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離され、前記所定の部分領域ごとに前記液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされている
立体表示装置。
【請求項3】
画像表示を行う表示パネルと、
第1の電極と、前記第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された液晶層とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極とによって印加される電圧に応じて、前記表示パネルからの表示画像光に対する屈折力の方向を制御することが可能に構成されたレンズアレイ素子と
を備え、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちいずれか一方が、複数の所定の部分領域に電気的に分離され、前記所定の部分領域ごとに前記液晶層に電圧を印加することが可能な構造とされている
立体表示装置。
【請求項4】
前記レンズアレイ素子において、前記複数の所定の部分領域のすべてについてレンズ効果をオフ状態に設定して、前記表示パネルからの表示画像光を屈折させることなく透過させることで全画面での2次元表示を行い、
前記レンズアレイ素子において、前記複数の所定の部分領域のすべてについてレンズ効果をオン状態に設定して、前記表示パネルからの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで全画面での3次元表示を行い、
前記レンズアレイ素子において、前記複数の所定の部分領域のうちの一部の部分領域についてレンズ効果をオン状態に設定して、前記表示パネルからの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで前記一部の部分領域での3次元表示を行い、かつ、その他の部分領域についてレンズ効果をオフ状態に設定して、前記表示パネルからの表示画像光を屈折させることなく透過させることで前記その他の部分領域での2次元表示を行う
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の立体表示装置。
【請求項5】
前記第1の電極は全体として平面状の電極であり、
前記第2の電極は垂直方向に延在し、互いに間隔を空けて配置された複数のライン電極からなり、前記複数のライン電極には全体に所定の共通電圧が印加されるようになされ、
前記平面状の電極が、前記複数の所定の部分領域に対応する複数の分割電極で構成され、前記複数の分割電極ごとに所定の駆動電圧が印加されるようになっている
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記第1の電極は全体に所定の共通電圧が印加される平面状の共通電極であり、
前記第2の電極は垂直方向に延在し、互いに間隔を空けて配置された複数のライン電極からなり、
前記複数のライン電極が、前記複数の所定の部分領域ごとに電気的に分離されており、前記複数の所定の部分領域ごとに所定の駆動電圧が印加されるようになっている
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の立体表示装置。
【請求項7】
前記レンズアレイ素子は、レンズ効果をオン状態に設定した領域では、等価的に複数のシリンドリカルレンズを水平方向に並列配置したようなレンズ効果を発生させるものである
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の立体表示装置。
【請求項8】
複数の前記所定の部分領域はそれぞれ、領域サイズが同じものである
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の立体表示装置。
【請求項9】
複数の前記所定の部分領域として、第1の部分領域と、前記第1の部分領域よりも領域サイズの小さい1または2以上の第2の部分領域とを有し、
前記レンズアレイ素子において、前記第1の部分領域を前記一部の部分領域に設定して3次元表示を行い、かつ、前記第2の部分領域を前記その他の部分領域に設定して2次元表示を行う
請求項4に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−154197(P2011−154197A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15739(P2010−15739)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】