説明

立体表示装置

【課題】立体表示時において、画面正面にいる観察者は3D画像を楽しむことができ、画面正面以外にいる観察者は、二重像でない2D画像を楽しむことができる立体表示装置を提供する。
【解決手段】一対の左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rを一つの画素102として、画素102が水平方向および垂直方向に多数配列された基板101と、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光を制御する三角プリズム402を複数有するプリズムシート401とを備える。三角プリズム402の各々は、画素102の各々に対応して設けられており、基板101の正面方向には、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光の両方を出射させるように制御し、前記正面の左右方向である斜め方向には、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光のいずれか一方のみを出射させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差原理に基づく立体表示装置に関し、特に、3次元(3D)/2次元(2D)の画像を同時に表示することができる立体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、両眼視差に基づく各種立体視方式を用いた立体表示装置が数多く提案されている。現在は、画質や左右画像のクロストーク並びに視聴位置の制限が緩いという観点から、特に大画面では眼鏡式の立体表示装置が主流である。
【0003】
一方、現状普及している2D画像のテレビセットが設置されている一般のリビングルームの置き換え用としては、裸眼で立体視することができ、かつ視聴範囲が大きい立体表示装置であることが望まれている。
【0004】
しかしながら、同時に多人数で視聴することができる立体視方式は確立されていない。部分的な解法として、2D画像と3D画像とを切り替える方式を用いた立体表示装置が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−221646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、テレビセット(立体表示装置)正面に位置するメインの観察者(ユーザ)がソファに座り、3D用眼鏡をかけてじっくりと3D番組を楽しむ一般的な場合を仮定する。この場合、家事等をしている他の観察者が3D用眼鏡をかけることは事実上無理なことが多いが、家事等の他のことをしながらでも、どんな番組であるかの筋を追う程度の楽しみ方が望まれている。
【0007】
しかしながら、従来の立体表示装置では、テレビセット正面に位置するメインの観察者を対象とすることが前提である。従って、この場合、立体表示時において、3D用眼鏡をかけたメインの観察者以外の他の観察者が画面を見ると、当該他の観察者は、左右の画像が混在した二重像を見ることになるため、画像が二重となって見えにくくなり、画像の内容や番組の筋等を把握することが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するものであり、立体表示時において、立体表示装置の正面にいるメインの観察者は従来通り3Dの迫力ある画像を楽しむことができるとともに、メインの観察者以外の観察者、例えば立体表示装置の正面以外の端にいる観察者は二重像でない2D画像を楽しむことができる立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの形態に係る立体表示装置は、一対の左眼用画素および右眼用画素を一つの画素として、前記画素が水平方向および垂直方向に多数配列された基板と、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光を制御する出射光制御素子を複数有する出射光制御手段とを備え、前記出射光制御素子の各々は、前記画素の各々に対応して設けられており、前記基板の正面方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光の両方を出射させるように制御し、前記正面の左右方向である斜め方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光のいずれか一方のみを出射させるように制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、立体表示時において、立体表示装置の正面にいるメインの観察者は、従来通り3Dの迫力ある画像を楽しむことができ、また、メインの観察者以外の観察者、例えば立体表示装置の正面以外にいる観察者は、二重像でない2D画像を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の詳細構成を示す図である。(a)は、同立体表示装置の一部断面図であり、(b)は、(a)の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る立体表示装置における単位画素周辺の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る立体表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る立体表示装置における単位画素周辺の拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2の変形例に係る立体表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る立体表示装置の一態様は、一対の左眼用画素および右眼用画素を一つの画素として、前記画素が水平方向および垂直方向に多数配列された基板と、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光を制御する出射光制御素子を複数有する出射光制御手段とを備え、前記出射光制御素子の各々は、前記画素の各々に対応して設けられており、前記基板の正面方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光の両方を出射させるように制御し、前記正面の左右方向である斜め方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光のいずれか一方のみを出射させるように制御するものである。
【0013】
本態様によれば、出射光制御素子によって、画面正面方向の位置に対しては左眼用画素および右眼用画素からの両方の出射光が出射され、画面斜め方向の位置に対しては左眼用画素および右眼用画素からの出射光のいずれか一方のみの出射光が出射される。これにより、立体表示時において、画面正面方向に位置する観察者は、3Dの迫力のある画像を楽しむことができ、また、画面斜め方向の位置にいる観察者は、二重像でない2D画像を楽しむことができる。
【0014】
また、本発明に係る立体表示装置の一態様において、前記出射光制御素子は、プリズムである、とすることができる。
【0015】
また、本発明に係る立体表示装置の一態様において、前記出射光制御素子は、左右非対称の三角プリズムである、とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る立体表示装置の一態様において、前記出射光制御素子は、遮光バリアである、とすることができる。
【0017】
以下、本発明に係る立体表示装置について説明するが、本発明は、特許請求の範囲の記載に基づいて特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、請求項に記載されていない構成要素は、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0018】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置1の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の概略構成を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る立体表示装置1は、複数のサブ画素103がマトリクス状に配置された基板101と、基板101の上方に配置されたプリズムシート401とを備える。複数のサブ画素103によって、所定の画像が表示される画面が構成される。
【0020】
複数のサブ画素103は、3D画像の左眼用画像が表示される左眼用画素103Lと、当該3D画像の右眼用画像が表示される右眼用画素103Rとに割り当てられている。本実施の形態において、左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとは隣り合うようにして水平方向に交互に配置されている。
【0021】
また、隣り合う左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとを一組として一つの画素102が構成されており、当該画素102は水平方向および垂直方向にマトリクス状に多数配列されている。左眼用画素103Lから出射する出射光は3D画像の左眼用画像に対応し、右眼用画素103Rから出射する出射光は3D画像の右眼用画像に対応する。
【0022】
プリズムシート401は、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rから出射する出射光を制御する出射光制御手段である。プリズムシート401は、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光を全反射および屈折させて立体表示装置の外部に出射させる複数の三角プリズム402(出射光制御素子)を備えている。
【0023】
複数の三角プリズム402の各々は、複数の画素102の各々に対応するように設けられており、画面正面(基板正面)の位置にいる観察者に対しては、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの両方の出射光(左眼用画像および右眼用画像の両方)を視認させるように、一方、画面正面以外の斜めの位置にいる観察者に対しては、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rのどちらか一方の出射光のみ(左眼用画像および右眼用画像のどちらか一方のみ)に限定して視認させるように構成されている。
【0024】
このように構成された本実施の形態に係る立体表示装置1によれば、プリズムシート401における各三角プリズム402によって、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光は、基板101の水平面に対して垂直な方向(つまり、画面垂直方向には)には両方の出射光が出射するように制御され、基板101の水平面(表示画面)に対して斜めの方向には(つまり、画面斜め方向には)、いずれか一方のみが出射するように制御される。これにより、図1に示すように、立体表示装置1の画面正面に位置する観察者20Cには、左眼用画素103Lからの出射光10Lおよび右眼用画素103Rからの出射光10Rの両方が到達する。一方、立体表示装置1の画面を斜め右方向から見る観察者(立体表示装置1に向かって斜め左側に位置する観察者)20Rには、右眼用画素103Rからの出射光10Rのみが到達し、立体表示装置1の画面を斜め左方向から見る観察者(立体表示装置1に向かって斜め右側に位置する観察者)20Lには、左眼用画素103Lからの出射光10Lのみが到達する。
【0025】
以上により、立体表示装置1の正面から画面を見る観察者20Cには、プリズムシート401があっても、三角プリズム402の屈折率の影響分のみ角度が変わるだけであって、左眼用画素103Lからの出射光10Lおよび右眼用画素103Rからの出射光10Rの両方の光が到達するので、画面に対向して画面正面に位置する観察者20Cは、左眼用画像と右眼用画像とを分離する3D用眼鏡(偏光フィルター付眼鏡)をかけることにより3D画像を見ることができる。
【0026】
また、立体表示装置1に対して斜め方向から画面を見る観察者20Lおよび20Rには、左眼用画素103Lの出射光10Lまたは右眼用画素103Rからの出射光10Rのいずれか一方のみが到達するので、画面に対向せず画面の斜め方向に位置する観察者20Lおよび20Rは、3D用眼鏡無し(裸眼)で二重像でない2D画像を見ることができる。
【0027】
なお、正面に位置する観察者20Cと斜め方向に位置する観察者20Lおよび20Rとの間には、3D用眼鏡無しで2D画像と3D画像とが混在する画像が見えることになる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る立体表示装置1の詳細構成について、図2を用いて説明する。図2の(a)は、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の一部断面図であり、図2の(b)は、(a)の平面図である。
【0029】
図2の(a)および(b)に示すように、立体表示装置1は、複数のサブ画素103が配置された基板101およびプリズムシート401に加えて、第1偏光フィルター201と、第2偏光フィルター202と、ブラックマトリクス203と、駆動トランジスタ210とを備える。
【0030】
複数のサブ画素103は、上述のように、左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとに割り当てられており、図2の(b)に示すように、左眼用画素103Lと右眼用画素103Rは、水平方向(行方向)においては交互に配置されており、垂直方向(列方向)には同じ眼用の画素が配置されている。
【0031】
また、サブ画素103は、赤色光を出射する赤色用画素(R)と緑色光を出射する緑色用画素(G)と青色光を出射する青色用画素(G)とにも割り当てられている。すなわち、サブ画素103には、左眼用画素103Lとしての、赤色用画素(R)、緑色用画素(G)、または、青色用画素(B)が存在するとともに、右眼用画素103Rとしての、赤色用画素(R)、緑色用画素(G)、または、青色用画素(B)が存在する。これらの赤色用画素(R)、緑色用画素(G)および青色用画素(B)は、図2の(b)に示すように、水平方向(行方向)に沿って配置された一列を、垂直方向に複数本設けられている。本実施の形態において、赤色用画素の列と緑色用画素の列と青色用画素の列とは、水平方向に沿ってこの順で繰り返して配置されている。
【0032】
各三角プリズム402は、透明樹脂等からなる透光部材によって構成されており、断面が三角形状の三角柱状に形成されたものである。プリズムシート401は、1つの三角プリズム402が1つの画素102に対応するようにして、所定のプリズムピッチで複数個設けることによって構成されている。
【0033】
本実施の形態において、各三角プリズム402は、図2の(a)に示すように、当該三角プリズム402の頂点が左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとの中点を通る垂線上に位置するように設けられている。また、両眼視差による3D表示を行うために、各三角プリズム402は、図2の(b)に示すように、当該三角プリズム402の綾線が垂直方向に沿って位置するように設けられている。この場合、RGBカラー表示を行うには、上述のように、赤色用画素、緑色用画素および青色用画素は、横ストライプ構成とすることが好ましい。
【0034】
第1偏光フィルター201と第2偏光フィルター202とは、互いに偏光方向が直交するように構成されており、サブ画素103によって画面に表示される3D用の合成画像を、左眼用画像と右眼用画像とに分離するためにパターン化されている。本実施の形態において、第1偏光フィルター201は、左眼用画素103Lの各々に対応するように設けられており、第2偏光フィルター202は、右眼用画素103Rの各々に対応するように設けられている。すなわち、第1偏光フィルター201と第2偏光フィルター202とは、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rと同様に、水平方向(行方向)においては交互に配置されているとともに、垂直方向(列方向)においては偏向方向を同じとする偏向フィルターが配置されている。
【0035】
ブラックマトリクス203は、隣接するサブ画素103において一方のサブ画素103の領域から他方のサブ画素103の領域に漏れる漏れ光を抑える非透過部である。本実施の形態において、ブラックマトリクス203は、図2の(b)に示すように、第1偏光フィルター201および第2偏光フィルター202(サブ画素103)の各々を囲むように設けられている。
【0036】
駆動トランジスタ210は、複数のサブ画素103の各々を駆動するための薄膜トランジスタであり、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rの各々に接続されている。左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rは、駆動トランジスタ210によって発光と非発光とが制御される。
【0037】
ここで、サブ画素103と駆動トランジスタ210とについて、図3を用いて詳述する。図3は、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置における単位画素(画素102)周辺の拡大断面図である。
【0038】
図3に示すように、各サブ画素103は、反射電極(下部電極)103a、EL発光層を含むEL層103bおよび透明電極(上部電極)103cからなる。また、各サブ画素103を駆動する駆動トランジスタ210は、ゲート電極211、ゲート絶縁膜212、一般には多結晶ポリシリコン(p−Si)からなる半導体層213、ソース電極214およびドレイン電極215によって構成される。
【0039】
駆動トランジスタ210の上には保護膜216が設けられており、ドレイン電極215と反射電極103aとを接続するためにコンタクト部217が設けられている。また、駆動トランジスタ210および各サブ画素103の全体を覆うように平坦化層220が形成されており、平坦化層220の上には画面全体を封止する封止基板230が設けられている。さらに、封止基板230の上には、第1偏光フィルター201、第2偏光フィルター202およびブラックマトリクス203が貼り付けられている。
【0040】
そして、本実施の形態に係る立体表示装置1では、一対の左眼用画素103Lおよび右眼用画素103R(一対の第1偏光フィルター201および第2偏光フィルター202)を1つの画素102とし、1つの画素102に1つの三角プリズム402が対応するようにしてプリズムシート401が設けられている。
【0041】
これにより、画素102から出射した主たる光線は、プリズムシート401の三角プリズム402から外部(空気中)に出射する際に、スネルの法則に従って中央よりに角度を変える。例えば、左眼用画素103Lから出射した主たる光線は、図2の実線矢印で示されるように、中央よりに角度を変えて三角プリズム402から空気中に出射する。一方、画素102から斜めに出射する光線(主たる光線よりも斜め方向に出射する光線)は、三角プリズム402の傾斜部の内面(傾斜面)で全反射して大きく角度を変える、あるいは、隣接するサブ画素に対峙する三角プリズム402を通って同様に角度を大きく変えることにある。例えば、左眼用画素103Lから斜め方向に出射する光線は、図2の破線矢印で示されるように、三角プリズム402の傾斜面で全反射して大きく角度を変えて三角プリズム402から外部(空気中)に出射する、あるいは、当該左眼用画素103Lに隣接する右眼用画素103Rに対向する三角プリズム402を通って角度を大きく変えて三角プリズム402から外部(空気中)に出射する。
【0042】
なお、本実施の形態において、三角プリズム402の頂点(プリズムセンター)が左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとの中点の垂線上に位置しているので、左眼用画素103Lから出射する光線と右眼用画素103Rから出射する光線とは、左右対称な出射状態となる。従って、図2では、左眼用画素103Lからの出射光のみの軌跡を示しているが、右眼用画素103Rからの出射光の軌跡は、図2における左眼用画素103Lからの出射光の軌跡と左右対称となる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る立体表示装置1の視野角特性について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。図4において、横軸は視野角を示し、縦軸は出射光の光強度を示している。また、破線で示す曲線は、左眼用画素103Lからの出射光の視野角特性を示しており、実線で示す曲線は、右眼用画素103Rからの出射光の視野角特性を示しており、各曲線は、いずれも最大光強度を1として規格化している。
【0044】
なお、図4に示す視野角特性は、図3に示す三角プリズム402において、プリズム頂角θをそれぞれ64度とし、三角プリズム402の屈折率を1.4(透明アクリル樹脂相当の屈折率)とし、また、プリズムピッチの基本単位を1と規定したときに、三角プリズムの高さを0.9とし、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rの配置はプリズムセンターを中心として0.18〜0.38とし、出射光は理想拡散面として算出した場合である。この例は、視野角が大きい領域(周辺領域)における2D画面の視聴範囲を広げる配置例である。
【0045】
この場合、図4に示すように、視野角が約−15度〜15度の範囲である中央付近の位置では、左眼用画素103Lの出射光および右眼用画素103Rの出射光の光強度は均等になっている。3D画像を長時間視聴する場合、左眼用画像と右眼用画像との輝度差は少ない方が望ましいが、一般的に輝度差10%以内であれば良いとされる。従って、図4に示すように、視野角が約−15度〜約15度の範囲の中央付近では、ハイビジョンの標準視距離3H(画面の高さの3倍)時の全画面をカバーしている。従って、この位置において、観察者(図1における観察者20C)は、3D用眼鏡によって通常通り高画質の3D画像を楽しむことができる。
【0046】
また、視野角が約−45度以下又は約45度以上である画面正面外側付近の位置では、左眼用画素103Lの出射光および右眼用画素103Rの出射光のいずれか一方のみが出現しているか、あるいは、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rの各出射光において一方の出射光に対する他方の出射光の光強度比が大きくなっている。左眼用画像と右眼用画像との二重像が気にならない領域は画像内容によって異なるものの、光強度の比で表すと、100:1ではどのような画像であっても二重像と視認されず、10:1程度では二重像として視認されても許容範囲内であり、また、2:1程度では文字の読み取り程度が可能な領域である。従って、視野角が約−45度以下又は約45度以上である斜めからの位置であれば2D可視領域と言え、この位置において、観察者(図1における観察者20Lおよび20R)は、3D用眼鏡無し(裸眼)で2D画像、つまり左眼用画像と右眼用画像とが二重像とならない画像を楽しむことができる。
【0047】
以上のとおり、本発明の実施の形態1に係る立体表示装置1によれば、出射光制御素子である三角プリズム402によって、画面正面の位置に対しては左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの両方の出射光が出射され、画面に対向しない画面斜め方向の位置に対しては左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光のいずれか一方のみの出射光が出射される。
【0048】
これにより、立体表示装置1に3D画像が表示されている場合において、画面正面に位置するメインの観察者は、3Dの迫力のある画像を楽しむことができ、また、画面正面以外にいる観察者等、メインの観察者以外の観察者は、二重像でない2D画像を楽しむことができる。
【0049】
なお、一般に発光部にELを使用したアクティブマトリクス駆動方式では、各サブ画素には、駆動トランジスタ以外に、発光させる各サブ画素を選択するための走査トランジスタや保持コンデンサ等も設けられるが、本発明の本質ではないので説明を省略している。また、EL層においても、EL発光層以外に、実用上各種特性を向上させるため複数の機能層が堆積されるが、これも本発明の本質ではないので説明を省略する。
【0050】
(実施の形態1の変形例)
次に、本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置1Aについて、図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置の概略構成を示す断面図である。図5において、図2に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0051】
図5に示す本変形例に係る立体表示装置1Aが実施の形態1に係る立体表示装置1と異なる点は、三角プリズムの構成である。すなわち、上記の実施の形態1における三角プリズム402は、左右対称であったのに対して、図5に示すように、本変形例における各三角プリズム402Aは、左右非対称となっている。
【0052】
具体的には、本変形例における各三角プリズム402Aの頂点は、左眼用画素103Lと右眼用画素103Rとの中点を通る垂線上に位置しておらず、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rのいずれか一方側に偏っている。本実施の形態では、各三角プリズム402Aの頂点が右眼用画素103R側にずれており、一方のプリズム頂角θを32度とし、他方のプリズム頂角θを40度としている。なお、その他のパラメータは実施の形態1と同様であり、また、三角プリズム402A以外の構成および動作も実施の形態1と同様なので説明は省略する。
【0053】
本変形例に係る立体表示装置1Aの視野角特性について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態1の変形例に係る立体表示装置の視野角特性を示す図である。なお、図6においても、破線で示す曲線は、左眼用画素103Lからの出射光の視野角特性を示しており、実線で示す曲線は、右眼用画素103Rからの出射光の視野角特性を示している。
【0054】
本変形例では、三角プリズム402Aを左右非対称に構成しているため、図6に示すように、3D画像を視聴できる領域(3D領域)は正面からずれる。本変形例では、各三角プリズム402Aの頂点が右眼用画素103R側にずれているので、画面に対向する位置にいる観察者は、画面に向かって右側にずれた位置において通常の3D画像を視聴することができる。
【0055】
以上のとおり、本変形例に係る立体表示装置1Aによれば、三角プリズム402Aが左右非対称に構成されているので、3D画像を視聴できる領域(3D領域)を正面からずらすことができる。これにより、画面に対向する位置にいる観察者は、画面の真正面からずれた位置で3D画像を楽しむことができ、また、画面を斜め方向から見る観察者は、実施の形態1と同様に、二重像でない2D画像を楽しむことができる。このように構成された本変形例に係る立体表示装置1Aは、広告等で真正面以外に視聴位置を設定したい場合に効果的な構成である。
【0056】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る立体表示装置2について、図7および図8を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態2に係る立体表示装置の概略構成を説明するための図である。図8は、本発明の実施の形態2に係る立体表示装置における単位画素周辺の拡大断面図である。なお、図7および図8において、図1および図2に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0057】
図7および図8に示す本実施の形態に係る立体表示装置2が図1および図2に示す実施の形態1に係る立体表示装置1と異なる点は、出射光制御手段の構成である。すなわち、実施の形態1では、出射光制御手段がプリズムシート401によって構成されていたが、本実施の形態では、出射光制御手段が遮光バリア部501によって構成されている。なお、その他の構成は、基本的に実施の形態1と同様であるので、詳しい説明は省略又は簡略化する。
【0058】
図7および図8に示すように、本実施の形態に係る立体表示装置2における遮光バリア部501は、一対の左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rごとに(つまり画素102ごとに)設けられた複数の遮光バリア502(出射光制御素子)を備える。また、遮光バリア502の間には、アクリル樹脂等の透明樹脂からなる封止樹脂503が充填されている。なお、遮光バリア部501の上には封止基板230が設けられており、封止基板230によって封止樹脂503が封止されている。
【0059】
各遮光バリア502は、所定の高さを有しており、実施の形態1の三角プリズム402と同様に、画面正面の位置にいる観察者に対しては、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの両方の出射光(左眼用画像および右眼用画像の両方)を視認させるように、一方、画面正面以外の斜めの位置にいる観察者に対しては、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rのどちらか一方の出射光のみ(左眼用画像および右眼用画像のどちらか一方のみ)に限定して視認させるように構成されている。
【0060】
本実施の形態において、遮光バリア502の高さは全て同じにしている。また、本実施の形態における遮光バリア502は、図7および図8の紙面垂直方向に沿って連続して形成された板状部材である。遮光バリア502の材料としては、種々の遮光部材を用いることができるが、例えば、黒色顔料系材料を用いることができる。
【0061】
このように構成された本実施の形態に係る立体表示装置2によれば、図7に示すように、画面中央部の視聴位置Aでは、画面中央における左眼用画素103Laおよび右眼用画素103Raから画面両端部における左眼用画素103Lb(103Lc)および右眼用画素103Rb(103Lc)までの全画素において、左眼用画素および右眼用画素の両方から出射光が到達する。これにより、視聴位置Aにいる観察者は、画面全体に渡って左眼用画像および右眼用画像を視認することができるので、3D用眼鏡によって合成画像を左右分離して3D画像を楽しめる。
【0062】
また、立体表示装置2に向かって右側端部周辺にいる視聴位置Bでは、視聴位置Aから離れるに従って、画面左側端部における右眼用画素103Rbから順に、右眼用画素が遮光バリア502によって隠れて右眼用画素からの出射光が遮光されていく。これにより、視聴位置Bにいる観察者は、視聴位置Aから離れた側の端においては、画面左側端部側における右眼用画像がほとんど欠けた左眼用画像のみとなった2D画像を見ることができ、その手前(端から視聴位置A側)においては、画面左側端部側における右眼用画像が一部欠けた左眼用画像との合成画像を二重像として見ることができる。
【0063】
また、視聴位置Bから少し離れた視聴位置Cでは、画面右側端部における右眼用画素103Rcも遮光バリア502によって隠れるので、右眼用画素からの出射光の全てが遮光バリア502によって遮光される。これにより、視聴位置Cには左眼用画素からの出射光だけが到達するので、視聴位置Cにいる観察者は、全画面に渡り左眼用画像のみを視認することができるので、二重像のない2D画像を見ることができる。
【0064】
また、視聴位置Cから更に外側の視聴位置Dでは、視聴位置Cから離れるに従って、画面左側端部の左眼用画素103Lbから順に、左眼用画素も遮光バリア502によって隠れるので左眼用画素からの出射光も遮光バリア502によって遮光されていく。これにより、視聴位置Dにいる観察者は、手前側の画面しか見えなくなり、全右眼用画像が欠けるとともに画面右側端部側における左眼用画像が一部欠けた2D画像を見ることができる。
【0065】
なお、視聴位置Dから更に外の視聴位置では、画面右側端部における左眼用画素103Lcも遮光バリア502によって隠れるので全画面見えなくなる。
【0066】
ここで、本実施の形態に係る立体表示装置2の視野角特性の一例について、図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る立体表示装置の視野角特性の一例を示す図である。図9において、横軸は視野角を示し、縦軸は出射光の光強度を示している。また、破線で示す曲線は、左眼用画素103Lからの出射光の視野角特性を示しており、実線で示す曲線は、右眼用画素103Rからの出射光の視野角特性を示しており、各曲線は、いずれも最大光強度を1として規格化している。
【0067】
なお、図9に示す視野角特性は、画素102のピッチを1(一単位)とすると、遮光バリア502の高さを0.33とし、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rの配置は画素102の中心を中心として0.17〜0.46(画素端が0.5)として算出した場合である。
【0068】
この場合、図9に示すように、視野角が約−15度〜約15度の範囲の中央付近の位置にいる観察者は、通常の3D画像を見ることができる。また、視野角が約−70度〜約−57度の範囲又は約57度〜約70度の範囲において、左眼用画像に対する右眼用画像の輝度比または右眼用画像に対する左眼用画像の輝度比が1/10以下のレベルとなっているので、この範囲の位置にいる観察者は、二重像とならない2D画像を見ることができる。
【0069】
以上のとおり、本発明の実施の形態2に係る立体表示装置2によれば、出射光制御素子である遮光バリア502によって、画面に対向する画面正面の位置に対しては左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの両方の出射光が出射され、画面に対向しない画面斜め方向の位置に対しては左眼用画素103Lおよび右眼用画素103Rからの出射光のいずれか一方のみの出射光が出射される。
【0070】
これにより、立体表示装置2に3D画像が表示されている場合において、画面正面に位置するメインの観察者は、3Dの迫力のある画像を楽しむことができ、また、画面正面以外の端にいる観察者等のメインの観察者以外の観察者は、二重像でない2D画像を楽しむことができる。
【0071】
なお、本実施の形態において、遮光バリア502の高さを高くすれば2D視聴領域を拡大することができるが、この場合、中央付近の3D領域が狭くなり、視聴位置が遠くなる特性となる。このような特性を有する立体表示装置は、広告用途として効果的な構成である。
【0072】
(実施の形態2の変形例)
次に、本発明の実施の形態2の変形例に係る立体表示装置2Aについて、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態2の変形例に係る立体表示装置の概略構成を示す断面図である。図10において、図7および図8に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0073】
図10に示す本変形例に係る立体表示装置2Aが実施の形態2に係る立体表示装置2と異なる点は、遮光バリアの高さである。すなわち、上記の実施の形態2における遮光バリア502の高さは、全画面一律であったのに対して、図10に示すように、本変形例における遮光バリア502Aの高さは、全画面一律になっていない。
【0074】
具体的には、本変形例における遮光バリア502Aの高さは、水平方向における画面中央では低くし、水平方向における画面左端および画面右端では高くしている。これにより、画面中央において通常の3D画像を見ることができる3D領域はそのまま(実施の形態2と同様)とし、画面両端において二重像とならない2D画像を見ることができる2D領域は拡大することができる。
【0075】
ここで、本変形例に係る立体表示装置2Aの視野角特性の一例について、図11を用いて説明する。図11は、本発明の実施の形態2の変形例に係る立体表示装置の視野角特性の一例を示す図である。なお、図11に示す視野角特性は、画素102のピッチを1とすると、画面中央における遮光バリア502Aの高さを0.33とし、画面左端および画面右端における遮光バリア502Aの高さを0.5とし、遮光バリア502Aの高さ以外のパラメータは、図9におけるパラメータと同様にして算出した場合である。
【0076】
図11に示すように、視野角が約−15度〜約15度の範囲の中央付近の位置にいる観察者は、通常の3D画像を見ることができる。また、視野角が約−70度〜約−52度の範囲又は約52度〜約70度の範囲において、左眼用画像に対する右眼用画像の輝度比または右眼用画像に対する左眼用画像の輝度比が1/10以下のレベルとなっているので、この範囲の位置にいる観察者は、二重像とならない2D画像を見ることができる。
【0077】
以上のとおり、本変形例に係る立体表示装置2Aによれば、画面端における遮光バリア502Aの高さを画面中央における遮光バリア502Aの高さよりも低くしているので、画面に対向する位置する観察者は広範囲で通常の3D画像を見ることができ、また、画面を斜め方向から見る観察者は、広範囲で二重像とならない2D画像を広い範囲で見ることができる。
【0078】
以上、本発明に係る立体表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。
【0079】
例えば、上記の実施の形態等では、表示素子としてアクティブマトリクス駆動方式のEL表示素子を例として説明したが、左眼用画素103Lおよび右眼用画素103R相当の部分から画素情報である光を出射させる構成のものであれば、本発明が成立することは明らかである。例えば、表示素子として液晶パネルを用いる場合はバックライトが必要になるが、この場合、バックライトの指向性をプリズムシート等の拡散特性によって制御できるので、本発明の自由度が増すという利点がある。
【0080】
また、上記の実施の形態では、偏光フィルター方式の立体視方式を用いたが、本発明は、偏向フィルター方式以外の両眼視差による立体視方法にも適用することができる。
【0081】
その他に、各実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態および変形例における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、立体表示を行う立体表示装置等として広く有用である。
【符号の説明】
【0083】
1、1A、2、2A 立体表示装置
10L、10R 出射光
20C、20L、20R 観察者
101 基板
102 画素
103 サブ画素
103a 反射電極
103b EL層
103c 透明電極
103L、103La、103Lb、103Lc 左眼用画素
103R、103Ra、103Rb、103Rc 右眼用画素
201 第1偏光フィルター
202 第2偏光フィルター
203 ブラックマトリクス
210 駆動トランジスタ
211 ゲート電極
212 ゲート絶縁膜
213 半導体層
214 ソース電極
215 ドレイン電極
216 保護膜
217 コンタクト部
220 平坦化層
230 封止基板
401 プリズムシート
402、402A 三角プリズム
501 遮光バリア部
502、502A 遮光バリア
503 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の左眼用画素および右眼用画素を一つの画素として、前記画素が水平方向および垂直方向に多数配列された基板と、
前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光を制御する出射光制御素子を複数有する出射光制御手段とを備え、
前記出射光制御素子の各々は、
前記画素の各々に対応して設けられており、
前記基板の正面方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光の両方を出射させるように制御し、
前記正面の左右方向である斜め方向には、前記左眼用画素および前記右眼用画素からの出射光のいずれか一方のみを出射させるように制御する、
立体表示装置。
【請求項2】
前記出射光制御素子は、プリズムである、
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記出射光制御素子は、左右非対称の三角プリズムである、
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記出射光制御素子は、遮光バリアである、
請求項1に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−76761(P2013−76761A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215399(P2011−215399)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】