立体表示装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は立体表示装置に係り、特に観察者が特別な眼鏡を装着することなく、立体画像を観察することのできる立体表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、立体画像や三次元画像を表示する立体表示装置として、両眼視差のある画像情報を右眼と左眼にそれぞれ独立に呈示する装置や、物体の断面像を移動スクリーンの移動に同期して順次表示する装置や、ホログラムを用いる装置等が提案されている。しかし、スクリーンを移動する装置やホログラムを用いる装置は、その情報量の多さから動画を表示するのが困難であるため、現時点では両眼視差画像を用いて立体画像を表示するタイプの立体表示装置を主体に開発が進められている。
【0003】この両眼視差画像を用いて立体画像を表示する立体表示装置は、従来の陰極線管(CRT)や液晶ディスプレイ等の表示装置を用いて構成するため、比較的容易に立体画像を得ることができる。そして、このような両眼視差の原理を利用する立体表示装置には、観察者が偏光眼鏡や液晶シャッタ眼鏡等の特別な眼鏡を装着して立体画像を観察する装置と、レンチキュラレンズやパララックスバリアのような特別な光学素子を視差画像分離手段として用い、それを表示面に配置して立体画像を観察する装置とがある。
【0004】このうち後者の立体表示装置は視差画像を空間的に分離して、それぞれの眼に独立に呈示するため、前者の立体表示装置に比し、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できるという利点がある。そこで、この眼鏡不要の立体表示装置について、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズを用いた方式を例にとって説明する。
【0005】 図8はレンチキュラレンズを用いた従来のレンチキュラ方式の立体表示装置の一例の構成説明用平面図を示す。同図において、従来のレンチキュラ方式の立体表示装置51は、表示装置52とレンチキュラレンズ53とから構成される。ここでは、右眼用画像54と左眼用画像55の2種類の視差画像を用いた2眼式の例であるが、3種類以上の視差画像を用いる多眼式の場合も同種である。レンチキュラレンズ53は、細長いシリンドリカルレンズを多数並べた構造になっている。
【0006】各シリンドリカルレンズの焦点面は表示装置52の表示面とされ、そこに立体画像を表示する。この立体画像は、両眼視差情報を有する右眼用画像54と左眼用画像55を、シリンドリカルレンズの数に応じて、画面の縦方向に長いストライプ状の画像に分割、抽出し、それらを交互に再配列させることにより作成してある。立体画像を表示する際、右眼用画像54と左眼用画像55が各シリンドリカルレンズと観察者の右眼57および左眼58の位置によって決まる場所に表示されるよう、表示装置52およびレンチキュラレンズ53の位置が調整される。
【0007】観察者がこのようなレンチキュラ方式の立体表示装置51を観察すると、観察者は、右眼57では右眼用画像54のみを、左眼58では左眼用画像55のみを見ることになり、観察者はこれらの画像54及び55を観察者の頭の中で融合することによって立体感のある画像を観察することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このようなレンチキュラ方式の立体表示装置51は、前述したように観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体視が可能である。しかしながら、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示するため、観察者が立体画像を観察できる位置が限定されてしまうという問題点がある。
【0009】 図9は、従来のレンチキュラ方式立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。レンチキュラレンズ53と表示装置52とからなるレンチキュラ方式の立体表示装置51において、表示装置52に表示された右眼用画像と左眼用画像は、立体表示装置51から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域60、左眼用画像領域61が周期的に形成される。すなわち、右眼用画像領域60から立体表示装置51を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域61から立体表示装置51を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、観察者59の右眼57を右眼用画像領域60に、左眼58を左眼用画像領域61に配置すると、観察者59はこれらの画像を頭の中で融合することにより立体画像を観察できる。
【0010】このような、観察者59の頭の位置調整は、最初に右眼用画像と左眼用画像とが極端に違う画像を呈示して判別がつくような状態で行われる。しかし、右眼用画像領域60及び左眼用画像領域61の幅は、観察者59の両眼間隔である60〜65mm以下であり非常に狭い。したがって、観察者59は、右眼57を右眼用画像領城60に、左眼58を左眼用画像領域61に位置した状態で頭を固定して観察しなければならない。そして、観察者59が頭の位置を動かした場合には、次のような問題点が生じる。
【0011】 図10は、図8に示した従来のレンチキュラ方式立体表示装置の問題点を説明するための部分平面図である。図10(a)〜(c)において、観察者59の観察位置に右眼用画像領域60と左眼用画像領域61が周期的に形成されている。図10(a)は、観察者59が正しい位置で観察している場合であり、観察者59の右眼57が右眼用画像領域60に、左眼58が左眼用画像領域61に位置している。一方、図10(b)は、観察者59が右側に、観察者59の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときは、観察者59の右眼57は左眼用画像領域61に、左眼58は右眼用画像領域60に位置する。また、図10(c)は、観察者59が左側に、観察者59の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときも図10(b)と同様に、観察者59の右眼57は左眼用画像領域61に、左眼58は右眼用画像領域60に位置する。
【0012】 図10(b)や図10(c)の場合のように、観察者59の右眼57が左眼用画像領域61に、左眼58が右眼用画像領域60に位置すると、立体視ができないばかりでなく、両眼視差から得られる立体情報と、それぞれの眼で観察する平面画像から得られる立体情報とに矛盾が生じる。このような逆立体視の状態は、観察者59に違和感を与え、さらにそれに伴う疲労感を生じさせる。ただし、一般には、右眼用画像と左眼用画像とは、わずかな視差があるという程度の違いしかないため判別がつきずらく、その結果、逆立体視の状態で長時間観察し、疲労を蓄積してしまう場合がある。
【0013】つまり、従来のレンチキュラ方式立体表示装置では、観察者59の観察位置に右限用画像領域60と左眼用画像領域61が周期的に配列しており、しかもそれぞれの幅が非常に狭いため、観察者59が頭の位置をわずかに動かすと逆立体視の状態になり疲労感をもたらし、さらに、一度頭の位置がずれてしまうとどの位置が正しい位置かがわからなくなり、結局逆立体視の状態で長時間観察してしまう場合があるという問題点がある。
【0014】このような問題点は、直視型の表示装置とレンチキュラレンズを用いるものに限らず、投射型表示装置とレンチキュラレンズを用いるもの、複数の投射型表示装置と2枚のレンチキュラレンズを用いるもの、さらには視差画像分離手段としてバララックスパリアを用いるものなど、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置について共通に存在する。
【0015】本発明は以上の点に鑑みなされたもので、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置において、逆立体視の状態を生じさせることが無く、しかも、容易に立体視ができる領域を見付けることが可能な立体表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示すると共に、複数の視差画像の繰り返し表示周期の間にそれぞれの視差画像の表示幅以上の複数の視差画像とは異なる画像である非表示部を設けて表示する表示装置と、表示装置の前面に設けられ、表示装置に表示された複数の視差画像と複数の視差画像とは異なる画像の光を表示装置から離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と複数の視差画像とは異なる画像の表示領域である非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有する構成としたものである。
【0017】 また、本発明は、上記の目的達成のため、透過型のスクリーンと、スクリーン上に複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示する単一の投射型表示装置と、スクリーン上に投射型表示装置から投射された複数の視差画像の繰り返し表示周期の間に、それぞれの視差画像の表示幅以上の非表示部を形成する、スクリーンの投射型表示装置側に設けられた視差画像偏向集光手段と、スクリーンに表示された複数の視差画像の光をスクリーンから離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする。
【0018】
【0019】本発明では、観察者の観察位置には、複数の視差画像領域が周期的に形成されると共に、それら複数の視差画像領域の繰り返し周期の間に非表示領域が形成されるため、観察者の右眼と左眼の両方が複数の視差画像領域のうち隣接する二つの視差画像領域のそれぞれに位置する場合は立体画像を正常に観察できるが、観察者の右眼と左眼の一方が複数の視差画像領域のうち非表示領域に隣接する一つの視差画像領域に位置し、かつ、他方の眼が非表示領域に位置するように観察者の頭が動いた場合は、非表示領域に位置する眼では画像を見られないようにできる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】図1は本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態の平面図を示す。この立体表示装置1は、表示装置2と、表示装置2の前面に対向配置し、視差画像分離手段として作用するレンチキュラレンズ3とから構成され、表示装置2には視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で周期的に順次巡回的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像5のみが見えるように立体表示装置1が構成されている。
【0022】図2は、本発明の第1の実施の形態における立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。図1と共に説明した、表示装置2とレンチキュラレンズ3とからなるレンチキュラ方式の立体表示装置1においては、図2に示すように、表示装置2に表示された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部からの光は、立体表示装置1から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0023】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置1を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域11から立体表示装置1を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、図2に示すように観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左眼8を左眼用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像を頭の中で融合することによって立体画像を観察できる。そして、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12は以下のように作用する。
【0024】図3は、図1に示した実施の形態の立体表示装置の動作を説明するための部分平面図である。図3(a)〜(c)において、観察者9の観察位置に右眼用画像領域10、左眼用画像領城11及び非表示領域12が周期的に配列している。図3(a)は、観察者が正しい位置で観察している場合であり、観察者9の右眼7が右眼用画像領域10に、左眼8が左眼用画像領城11に位置しており、観察者9は立体視が可能な状態である。
【0025】一方、図3(b)は、観察者9が右側に、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このとき、観察者9の右眼7は非表示領域12に、左眼8は右眼用画像領域10に位置する。また、図3(c)は、観察者9が上記とは逆に左側に観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときは、観察者9の右眼7は左眼用画像領城11に、左眼8は非表示領域12に位置する。
【0026】したがって、図3(b)や図3(c)の場合は、両眼視差のある画像をそれぞれの眼で独立に見ているのではなく、片眼でしか画像を見ていないこととなり、立体視ができない。ただし、従来装置のような逆立体視の状態にはなっていないので、観察者9に疲労感を生じさせることはないばかりでなく、片眼でしか画像を見ていないため、容易に立体視ができていないことがわかる。したがって、図3(a)に示す正しい位置に頭の位置を戻すことが可能である。
【0027】すなわち、この第1の実施の形態によれば、両眼7及び8で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができ、正しい位置へ頭を戻すことが容易にできる。
【0028】図1及び図2に示した構成の第1の実施の形態は、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズ3を用い、2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5に、非表示部6を加え、それらを周期的に表示する表示装置2の前面にレンチキュラレンズ3を対向配置した態様の一例を示したものであり、以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0029】図1の構成において使用した表示装置2、レンチキュラレンズ3は、それぞれ具体的には次のようなものである。表示装置2は、モノクロ液晶表示素子を用いている。液晶表示素子には、右眼用画像4、左眼用画像5、非表示部6が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。右眼用画像4、左眼用画像5は視差画像であり、非表示部6は画像情報に関係なく常に黒を表示している。
【0030】レンチキュラレンズ3は、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形したものを用いており、表示装置2のおよそ3画素に1個の割合でシリンドリカルレンズが配色され、観察者は600mm離れた位置において立体画像が観察できるように設計している。
【0031】また、レンチキュラレンズ3は、表示装置2の表示面に密着させ接着剤にて固定されている。この際、レンチキュラレンズ3の溝方向と表示装置2の画面の縦方向が平行になるように位置合わせを行っている。
【0032】以上の構成部品からなる、本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態は、前記したように、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができないため、逆立体視の状態になることはなく、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見つけることが可能である。
【0033】次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は本発明になる立体表示装置の第2の実施の形態の構成説明用平面図を示す。図4において、立体表示装置21は、表示装置2と、表示装置2の前面に対向配置した視差画像分離手段として作用するパララックスバリア22とから構成されている。また、表示装置2には第1の実施の形態と同様に、視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で順次巡回的に、かつ、周期的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像のみが見えるように立体表示装置21が構成されている。
【0034】図5は、図4に示した本発明の立体表示装置の第2の実施の形態における観察視域を説明するための平面図である。表示装置2とパララックスバリア22とからなるパララックスバリア方式の立体表示装置21において、表示装置2に周期的に表示された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部からの光は、立体表示装置21から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0035】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置21を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左目用画像領域11から立体表示装置21を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。従って、図5に示すように、観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左目8を左目用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像を頭の中で融合することによって立体画像を正常に観察することができる。
【0036】また、この実施の形態では、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12が第1の実施の形態と同様に作用する。すなわち、非表示領域12は観察者9の頭の位置が図5に示すような正常な位置にないときには、両眼視差のある画像をそれぞれの眼で独立に見ているのではなく、片眼でしか画像を見ていないようにさせることができ、右眼7及び左眼8で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができ、正しい位置へ頭を戻すことが容易にできる。
【0037】図4及び図5に示した第2の実施の形態は、視差画像分離手段としてパララックスバリア22を用い、2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5に、非表示部6を加え、それらを周期的に表示する表示装置2の前面にパララックスバリア22を対向配置した態様の一例を示したものであり、以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0038】図5の構成において使用した表示装置2は、第1の実施の形態と同じように、モノクロ液晶表示素子を用いている。液晶表示素子には、右眼用画像4、左眼用画像5、非表示部6が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。右眼用画像4、左眼用画像5は視差画像であり、非表示部6は画像情報に関係なく常に黒を表示している。
【0039】一方、パララックスバリア22はガラスに不透明金属膜を蒸着し、エッチングにより光を透過させるストライプ状の領域を形成した構成とされている。表示装置2のおよそ3画素に1個の割合でパララックスバリア22の開口部が設けられ、観察者は600mm離れた位置において立体画像が観察できるように設計している。パララックスバリア22は、ガラス面を表示装置2の表示面に密着させ接着剤にて固定されている。この際、パララックスバリア22のストライプの方向と表示装置2の画面の縦方向が平行になるように位置合わせされている。
【0040】以上の構成部品からなる、本発明の第2の実施の形態の立体表示装置は、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができない。したがって、逆立体視の状態になることはない。そして、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見つけることが可能である。
【0041】なお、以上の第1及び第2の実施の形態において、視差画像分離手段はレンチキュラレンズ3やパララックスバリア22を用いたが、これに限らず、液晶表示素子を複数の線光源で照明する手段や、表示装置の前面に光の進行方向を制御する回折格子またはホログラムを配置する手段を用いても同様の立体表示装置が得られる。
【0042】また、表示装置2に右眼用画像4と左眼用画像5の2種類の視差画像を表示する2眼式の例で説明したが、3種類以上の視差画像を用いた多眼式の場合も、視差画像の繰り返し周期の間に非表示部を設ければ同様の立体表示装置が得られる。
【0043】表示装置2は、モノクロ液晶表示素子に限らず、任意の電子ディスプレイが利用できる。ただし、液晶表示素子、プラズマディプレイ等のフラットパネルディスプレイを用いた方が、視差画像分離手段と画素との位置合わせが容易になるので望ましい。さらに、カラーフィルタを内蔵したカラー表示、さらには、赤、緑、青色の画像を時分割表示してカラー表示を行う場合のいずれにも適用できる。また、表示装置2は、直視型の表示装置以外に、投射型の表示装置も適用でき、さらにモノクロ表示とカラー表示のいすれでもよい。
【0044】 非表示部6は、画像情報に関係なく常に黒を表示するように説明したが、右眼用画像4や左眼用画像5等の視差画像と全く異なる画像であればよい。非表示部6の幅は、それぞれの視差画像の幅以上であれば、観察者は逆立体視の状態になることはなく、しかも両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であることが容易にわかる。
【0045】次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態の構成説明用平面図を示す。図6において、立体表示装置31は、投射型表示装置32と、スクリーン33と、スクリーン33の前面に対向配置し、視差画像分離手段として作用するレンチキュラレンズ34と、スクリーン33の投射型表示装置32側に対向配置し、視差画像偏向集光手段として作用する軸ずらしレンチキュラレンズ35とから構成されている。また、スクリーン33には視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で周期的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像5のみが見えるように立体表示装置31が構成されている。
【0046】図7は、本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態における観察視域を説明するための平面図である。投射型表示装置32とスクリーン33とレンチキュラレンズ34と軸ずらしレンチキュラレンズ35とからなる投射型レンチキュラ方式の立体表示装置31において、スクリーン33上に投射された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部は、立体表示装置31から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が順次巡回的に、かつ、周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0047】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置31を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域11から立体表示装置31を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、図7に示すように観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左眼8を左眼用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像頭の中で融合することによって立体画像を正常に観察できる。
【0048】そして、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12は、第1や第2の実施の形態と同様に作用する。すなわち、両眼で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができる。
【0049】図6及び図7に示した第3の実施の形態は、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズ34を、視差画像偏向集光手段として軸ずらしレンチキュラレンズ35をそれぞれ用い、投射型表示装置32により2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5をスクリーン33上に投射表示すると共に、軸ずらしレンチキュラレンズ35により、右眼用画像4と左眼用画像5の繰り返し周期の間に非表示部6を形成し、それらを周期的に表示するスクリーン33の前面にレンチキュラレンズ34を対向配置した構成である。以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0050】図6及び図7の構成において投射型表示装置32は、投射型カラー液晶表示装置を用いている。これは、図6には図示していないが、光源からの光を複数のダイクロイックミラーを用い三原色の光束にそれぞれ分離した後、これらの光束で3枚の液晶表示素子をそれぞれ照明し、カラー画像信号により変調を受けた3枚の液晶表示素子を透過した3つの光束を再び複数のダイクロイックミラーで合成し、1本の投射レンズによりカラー画像を投射表示するものである。
【0051】液晶表示素子には、視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。これらの画像は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の面に結像するように、投射型表示装置32内の投射レンズのフォーカスが調整されており、投射画像の1画素が軸ずらしレンチキュラレンズ35の1つのシリンドリカルレンズの幅と等しく、かつ位置が一致するように位置合わせを行っている。
【0052】スクリーン33は、透過型のスクリーンであって、拡散剤を添加したアクリル樹脂を板状に成形したものである。
【0053】レンチキュラレンズ34は、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形したものを用いており、スクリーン33上のおよそ3画素に1個の割合でシリンドリカルレンズが配置され、観察者が2000mm離れた位置において立体画像を観察できるように設計している。レンチキュラレンズ34は、スクリーン33と間隙を設けて固定されている。この際、レンチキュラレンズ34の溝方向とスクリーン33上に投射表示された画像の縦方向が平行になるように位置合わせを行っている。
【0054】軸ずらしレンチキュラレンズ35は、レンチキュラレンズ34と同様に、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形した構成とされている。ただし、各シリンドリカルレンズの光軸は、以下の作用を持つように、ひとつおきに逆方向にずらしている。また、軸ずらしレンチキュラレンズ35も、スクリーン33と間隙を設けて固定されている。
【0055】投射型表示装置32から投射された光は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの位置にそれぞれ結像された後、スクリーン33上に、その幅が各シリンドリカルレンズの幅のおよそ2/3になるように集光されて右眼用画像4と左眼用画像5を表示させる。これらの右眼用画像4と左眼用画像5は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの位置に対応して画素ごとに繰り返し表示される。
【0056】ただし、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの光軸をずらせることにより、一組の右眼用画像4と左眼用画像5が隣接し、かつ右眼用画像4と左眼用画像5の繰り返し周期の間に、光が到達しない領域を形成する。その幅は右眼用画像4や左眼用画像5の幅と等しく、この光が到達しない領域が非表示部6になる。
【0057】以上の構成部品からなる、本発明の立体表示装置の第3の実施の形態では、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができないため、片眼でしか画像を見ていないこととなり、逆立体視の状態になることはない。また、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見付けることが可能である。
【0058】第1の実施の形態や第2の実施の形態では、表示装置2の表示面に非表示部6を形成するため、その分視差画像の解像度(画素数)が低下してしまう。すなわち、2眼式の場合、各視差画像の画素数は、表示装置2の1/3の画素数になる。これに対し、本実施の形態においては、視差画像偏向集光手段である軸ずらしレンチキュラレンズ35により非表示部6を形成するので、2眼式の場合、各視差画像の画素数は投射型表示装置32の1/2の画素数となり、第1の実施の形態や第2の実施の形態に比べて1.5倍に増やすことができる。
【0059】なお、以上の第3の実施の形態において、視差画像分離手段はレンチキュラレンズ34を用いたが、これに限らず、パララックスバリアや、光の進行方向を制御する回折格子またはホログラムを用いても同様の立体表示装置が得られる。
【0060】また、投射型表示装置32に右眼用画像4と左眼用画像5の2種類の視差画像を表示する2眼式以外に、3種類以上の視差画像を用いた多眼式の場合も、視差画像の繰り返し周期の間に非表示部を設ける構成であれば同様の立体表示装置が得られる。
【0061】また、投射型表示装置32は、投射型カラー液晶表示装置に限らず、任意の表示素子、例えば油膜に電子ビームで画像を書き込むもの、CRTを用いるもの、PLZTを用いるもの、さらには微小ミラーで光を偏向するもの等を用いた投射型表示装置が利用できる。さらに、モノクロ表示、カラーフィルタを内蔵したカラー表示、さらには、赤、緑、青の三原色の画像を時分割表示してカラー表示を行う場合のいずれにも適用できる。
【0062】また、視差画像偏向集光手段は、軸ずらしレンチキュラレンズ35以外にもホログラムのような回折型光素子を用いたり、偏向と集光を独立作用させる手段、例えば、偏向手段としてプリズムや回折格子等を、集光手段としてレンチキュラレンズやリニアフレネルレンズやホログラム等を組み合わせて用いてもよい。この場合、非表示部6の幅は、それぞれの視差画像の幅以上であれば、観察者は逆立体視の状態になることはなく、しかも両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であることが容易にわかる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置において、観察者の右眼と左眼の両方が複数の視差画像領域のうち隣接する二つの視差画像領域のそれぞれに位置する場合は立体画像を正常に観察できるが、観察者の右眼と左眼の一方が複数の視差画像領域のうち非表示領域に隣接する一つの視差画像領域に位置し、かつ、他方の眼が非表示領域に位置するように観察者の頭が動いた場合は、非表示領域に位置する眼では画像を見られないようにしたため、逆立体視の状態になることを防止でき、よって、逆立体視により観察者に疲労感を生じさせないようにできる。また、本発明によれば、正常な観察位置以外の観察位置では片眼でしか画像を見ていないため、容易に立体視ができていないことがわかり、よって、観察者が正しい観察位置を見付けることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図2】図1の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図3】図1の立体表示装置の動作を説明するための部分平面図である。
【図4】本発明になる立体表示装置の第2の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図5】図4の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図6】本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図7】図6の立体表示装置の観察領域を説明するための平面図である。
【図8】従来の立体表示装置の一例の構成説明用平面図である。
【図9】図8の従来の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図10】図8の従来の立体表示装置の問題点を説明するための部分平面図である。
【符号の説明】
1、21、31 立体表示装置
2 表示装置
3、34 レンチキュラレンズ
4 右眼用画像
5 左眼用画像
6 非表示部
7 右眼
8 左眼
9 観察者
10 右眼用画像領域
11 左眼用画像領域
12 非表示領域
22 パララックスバリア
32 投射型表示装置
33 スクリーン
35 軸ずらしレンチキュラレンズ
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は立体表示装置に係り、特に観察者が特別な眼鏡を装着することなく、立体画像を観察することのできる立体表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、立体画像や三次元画像を表示する立体表示装置として、両眼視差のある画像情報を右眼と左眼にそれぞれ独立に呈示する装置や、物体の断面像を移動スクリーンの移動に同期して順次表示する装置や、ホログラムを用いる装置等が提案されている。しかし、スクリーンを移動する装置やホログラムを用いる装置は、その情報量の多さから動画を表示するのが困難であるため、現時点では両眼視差画像を用いて立体画像を表示するタイプの立体表示装置を主体に開発が進められている。
【0003】この両眼視差画像を用いて立体画像を表示する立体表示装置は、従来の陰極線管(CRT)や液晶ディスプレイ等の表示装置を用いて構成するため、比較的容易に立体画像を得ることができる。そして、このような両眼視差の原理を利用する立体表示装置には、観察者が偏光眼鏡や液晶シャッタ眼鏡等の特別な眼鏡を装着して立体画像を観察する装置と、レンチキュラレンズやパララックスバリアのような特別な光学素子を視差画像分離手段として用い、それを表示面に配置して立体画像を観察する装置とがある。
【0004】このうち後者の立体表示装置は視差画像を空間的に分離して、それぞれの眼に独立に呈示するため、前者の立体表示装置に比し、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できるという利点がある。そこで、この眼鏡不要の立体表示装置について、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズを用いた方式を例にとって説明する。
【0005】 図8はレンチキュラレンズを用いた従来のレンチキュラ方式の立体表示装置の一例の構成説明用平面図を示す。同図において、従来のレンチキュラ方式の立体表示装置51は、表示装置52とレンチキュラレンズ53とから構成される。ここでは、右眼用画像54と左眼用画像55の2種類の視差画像を用いた2眼式の例であるが、3種類以上の視差画像を用いる多眼式の場合も同種である。レンチキュラレンズ53は、細長いシリンドリカルレンズを多数並べた構造になっている。
【0006】各シリンドリカルレンズの焦点面は表示装置52の表示面とされ、そこに立体画像を表示する。この立体画像は、両眼視差情報を有する右眼用画像54と左眼用画像55を、シリンドリカルレンズの数に応じて、画面の縦方向に長いストライプ状の画像に分割、抽出し、それらを交互に再配列させることにより作成してある。立体画像を表示する際、右眼用画像54と左眼用画像55が各シリンドリカルレンズと観察者の右眼57および左眼58の位置によって決まる場所に表示されるよう、表示装置52およびレンチキュラレンズ53の位置が調整される。
【0007】観察者がこのようなレンチキュラ方式の立体表示装置51を観察すると、観察者は、右眼57では右眼用画像54のみを、左眼58では左眼用画像55のみを見ることになり、観察者はこれらの画像54及び55を観察者の頭の中で融合することによって立体感のある画像を観察することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このようなレンチキュラ方式の立体表示装置51は、前述したように観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体視が可能である。しかしながら、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示するため、観察者が立体画像を観察できる位置が限定されてしまうという問題点がある。
【0009】 図9は、従来のレンチキュラ方式立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。レンチキュラレンズ53と表示装置52とからなるレンチキュラ方式の立体表示装置51において、表示装置52に表示された右眼用画像と左眼用画像は、立体表示装置51から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域60、左眼用画像領域61が周期的に形成される。すなわち、右眼用画像領域60から立体表示装置51を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域61から立体表示装置51を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、観察者59の右眼57を右眼用画像領域60に、左眼58を左眼用画像領域61に配置すると、観察者59はこれらの画像を頭の中で融合することにより立体画像を観察できる。
【0010】このような、観察者59の頭の位置調整は、最初に右眼用画像と左眼用画像とが極端に違う画像を呈示して判別がつくような状態で行われる。しかし、右眼用画像領域60及び左眼用画像領域61の幅は、観察者59の両眼間隔である60〜65mm以下であり非常に狭い。したがって、観察者59は、右眼57を右眼用画像領城60に、左眼58を左眼用画像領域61に位置した状態で頭を固定して観察しなければならない。そして、観察者59が頭の位置を動かした場合には、次のような問題点が生じる。
【0011】 図10は、図8に示した従来のレンチキュラ方式立体表示装置の問題点を説明するための部分平面図である。図10(a)〜(c)において、観察者59の観察位置に右眼用画像領域60と左眼用画像領域61が周期的に形成されている。図10(a)は、観察者59が正しい位置で観察している場合であり、観察者59の右眼57が右眼用画像領域60に、左眼58が左眼用画像領域61に位置している。一方、図10(b)は、観察者59が右側に、観察者59の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときは、観察者59の右眼57は左眼用画像領域61に、左眼58は右眼用画像領域60に位置する。また、図10(c)は、観察者59が左側に、観察者59の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときも図10(b)と同様に、観察者59の右眼57は左眼用画像領域61に、左眼58は右眼用画像領域60に位置する。
【0012】 図10(b)や図10(c)の場合のように、観察者59の右眼57が左眼用画像領域61に、左眼58が右眼用画像領域60に位置すると、立体視ができないばかりでなく、両眼視差から得られる立体情報と、それぞれの眼で観察する平面画像から得られる立体情報とに矛盾が生じる。このような逆立体視の状態は、観察者59に違和感を与え、さらにそれに伴う疲労感を生じさせる。ただし、一般には、右眼用画像と左眼用画像とは、わずかな視差があるという程度の違いしかないため判別がつきずらく、その結果、逆立体視の状態で長時間観察し、疲労を蓄積してしまう場合がある。
【0013】つまり、従来のレンチキュラ方式立体表示装置では、観察者59の観察位置に右限用画像領域60と左眼用画像領域61が周期的に配列しており、しかもそれぞれの幅が非常に狭いため、観察者59が頭の位置をわずかに動かすと逆立体視の状態になり疲労感をもたらし、さらに、一度頭の位置がずれてしまうとどの位置が正しい位置かがわからなくなり、結局逆立体視の状態で長時間観察してしまう場合があるという問題点がある。
【0014】このような問題点は、直視型の表示装置とレンチキュラレンズを用いるものに限らず、投射型表示装置とレンチキュラレンズを用いるもの、複数の投射型表示装置と2枚のレンチキュラレンズを用いるもの、さらには視差画像分離手段としてバララックスパリアを用いるものなど、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置について共通に存在する。
【0015】本発明は以上の点に鑑みなされたもので、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置において、逆立体視の状態を生じさせることが無く、しかも、容易に立体視ができる領域を見付けることが可能な立体表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示すると共に、複数の視差画像の繰り返し表示周期の間にそれぞれの視差画像の表示幅以上の複数の視差画像とは異なる画像である非表示部を設けて表示する表示装置と、表示装置の前面に設けられ、表示装置に表示された複数の視差画像と複数の視差画像とは異なる画像の光を表示装置から離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と複数の視差画像とは異なる画像の表示領域である非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有する構成としたものである。
【0017】 また、本発明は、上記の目的達成のため、透過型のスクリーンと、スクリーン上に複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示する単一の投射型表示装置と、スクリーン上に投射型表示装置から投射された複数の視差画像の繰り返し表示周期の間に、それぞれの視差画像の表示幅以上の非表示部を形成する、スクリーンの投射型表示装置側に設けられた視差画像偏向集光手段と、スクリーンに表示された複数の視差画像の光をスクリーンから離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする。
【0018】
【0019】本発明では、観察者の観察位置には、複数の視差画像領域が周期的に形成されると共に、それら複数の視差画像領域の繰り返し周期の間に非表示領域が形成されるため、観察者の右眼と左眼の両方が複数の視差画像領域のうち隣接する二つの視差画像領域のそれぞれに位置する場合は立体画像を正常に観察できるが、観察者の右眼と左眼の一方が複数の視差画像領域のうち非表示領域に隣接する一つの視差画像領域に位置し、かつ、他方の眼が非表示領域に位置するように観察者の頭が動いた場合は、非表示領域に位置する眼では画像を見られないようにできる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】図1は本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態の平面図を示す。この立体表示装置1は、表示装置2と、表示装置2の前面に対向配置し、視差画像分離手段として作用するレンチキュラレンズ3とから構成され、表示装置2には視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で周期的に順次巡回的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像5のみが見えるように立体表示装置1が構成されている。
【0022】図2は、本発明の第1の実施の形態における立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。図1と共に説明した、表示装置2とレンチキュラレンズ3とからなるレンチキュラ方式の立体表示装置1においては、図2に示すように、表示装置2に表示された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部からの光は、立体表示装置1から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0023】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置1を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域11から立体表示装置1を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、図2に示すように観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左眼8を左眼用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像を頭の中で融合することによって立体画像を観察できる。そして、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12は以下のように作用する。
【0024】図3は、図1に示した実施の形態の立体表示装置の動作を説明するための部分平面図である。図3(a)〜(c)において、観察者9の観察位置に右眼用画像領域10、左眼用画像領城11及び非表示領域12が周期的に配列している。図3(a)は、観察者が正しい位置で観察している場合であり、観察者9の右眼7が右眼用画像領域10に、左眼8が左眼用画像領城11に位置しており、観察者9は立体視が可能な状態である。
【0025】一方、図3(b)は、観察者9が右側に、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このとき、観察者9の右眼7は非表示領域12に、左眼8は右眼用画像領域10に位置する。また、図3(c)は、観察者9が上記とは逆に左側に観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度動いた場合を示す。このときは、観察者9の右眼7は左眼用画像領城11に、左眼8は非表示領域12に位置する。
【0026】したがって、図3(b)や図3(c)の場合は、両眼視差のある画像をそれぞれの眼で独立に見ているのではなく、片眼でしか画像を見ていないこととなり、立体視ができない。ただし、従来装置のような逆立体視の状態にはなっていないので、観察者9に疲労感を生じさせることはないばかりでなく、片眼でしか画像を見ていないため、容易に立体視ができていないことがわかる。したがって、図3(a)に示す正しい位置に頭の位置を戻すことが可能である。
【0027】すなわち、この第1の実施の形態によれば、両眼7及び8で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができ、正しい位置へ頭を戻すことが容易にできる。
【0028】図1及び図2に示した構成の第1の実施の形態は、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズ3を用い、2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5に、非表示部6を加え、それらを周期的に表示する表示装置2の前面にレンチキュラレンズ3を対向配置した態様の一例を示したものであり、以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0029】図1の構成において使用した表示装置2、レンチキュラレンズ3は、それぞれ具体的には次のようなものである。表示装置2は、モノクロ液晶表示素子を用いている。液晶表示素子には、右眼用画像4、左眼用画像5、非表示部6が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。右眼用画像4、左眼用画像5は視差画像であり、非表示部6は画像情報に関係なく常に黒を表示している。
【0030】レンチキュラレンズ3は、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形したものを用いており、表示装置2のおよそ3画素に1個の割合でシリンドリカルレンズが配色され、観察者は600mm離れた位置において立体画像が観察できるように設計している。
【0031】また、レンチキュラレンズ3は、表示装置2の表示面に密着させ接着剤にて固定されている。この際、レンチキュラレンズ3の溝方向と表示装置2の画面の縦方向が平行になるように位置合わせを行っている。
【0032】以上の構成部品からなる、本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態は、前記したように、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができないため、逆立体視の状態になることはなく、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見つけることが可能である。
【0033】次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は本発明になる立体表示装置の第2の実施の形態の構成説明用平面図を示す。図4において、立体表示装置21は、表示装置2と、表示装置2の前面に対向配置した視差画像分離手段として作用するパララックスバリア22とから構成されている。また、表示装置2には第1の実施の形態と同様に、視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で順次巡回的に、かつ、周期的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像のみが見えるように立体表示装置21が構成されている。
【0034】図5は、図4に示した本発明の立体表示装置の第2の実施の形態における観察視域を説明するための平面図である。表示装置2とパララックスバリア22とからなるパララックスバリア方式の立体表示装置21において、表示装置2に周期的に表示された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部からの光は、立体表示装置21から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0035】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置21を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左目用画像領域11から立体表示装置21を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。従って、図5に示すように、観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左目8を左目用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像を頭の中で融合することによって立体画像を正常に観察することができる。
【0036】また、この実施の形態では、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12が第1の実施の形態と同様に作用する。すなわち、非表示領域12は観察者9の頭の位置が図5に示すような正常な位置にないときには、両眼視差のある画像をそれぞれの眼で独立に見ているのではなく、片眼でしか画像を見ていないようにさせることができ、右眼7及び左眼8で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができ、正しい位置へ頭を戻すことが容易にできる。
【0037】図4及び図5に示した第2の実施の形態は、視差画像分離手段としてパララックスバリア22を用い、2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5に、非表示部6を加え、それらを周期的に表示する表示装置2の前面にパララックスバリア22を対向配置した態様の一例を示したものであり、以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0038】図5の構成において使用した表示装置2は、第1の実施の形態と同じように、モノクロ液晶表示素子を用いている。液晶表示素子には、右眼用画像4、左眼用画像5、非表示部6が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。右眼用画像4、左眼用画像5は視差画像であり、非表示部6は画像情報に関係なく常に黒を表示している。
【0039】一方、パララックスバリア22はガラスに不透明金属膜を蒸着し、エッチングにより光を透過させるストライプ状の領域を形成した構成とされている。表示装置2のおよそ3画素に1個の割合でパララックスバリア22の開口部が設けられ、観察者は600mm離れた位置において立体画像が観察できるように設計している。パララックスバリア22は、ガラス面を表示装置2の表示面に密着させ接着剤にて固定されている。この際、パララックスバリア22のストライプの方向と表示装置2の画面の縦方向が平行になるように位置合わせされている。
【0040】以上の構成部品からなる、本発明の第2の実施の形態の立体表示装置は、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができない。したがって、逆立体視の状態になることはない。そして、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見つけることが可能である。
【0041】なお、以上の第1及び第2の実施の形態において、視差画像分離手段はレンチキュラレンズ3やパララックスバリア22を用いたが、これに限らず、液晶表示素子を複数の線光源で照明する手段や、表示装置の前面に光の進行方向を制御する回折格子またはホログラムを配置する手段を用いても同様の立体表示装置が得られる。
【0042】また、表示装置2に右眼用画像4と左眼用画像5の2種類の視差画像を表示する2眼式の例で説明したが、3種類以上の視差画像を用いた多眼式の場合も、視差画像の繰り返し周期の間に非表示部を設ければ同様の立体表示装置が得られる。
【0043】表示装置2は、モノクロ液晶表示素子に限らず、任意の電子ディスプレイが利用できる。ただし、液晶表示素子、プラズマディプレイ等のフラットパネルディスプレイを用いた方が、視差画像分離手段と画素との位置合わせが容易になるので望ましい。さらに、カラーフィルタを内蔵したカラー表示、さらには、赤、緑、青色の画像を時分割表示してカラー表示を行う場合のいずれにも適用できる。また、表示装置2は、直視型の表示装置以外に、投射型の表示装置も適用でき、さらにモノクロ表示とカラー表示のいすれでもよい。
【0044】 非表示部6は、画像情報に関係なく常に黒を表示するように説明したが、右眼用画像4や左眼用画像5等の視差画像と全く異なる画像であればよい。非表示部6の幅は、それぞれの視差画像の幅以上であれば、観察者は逆立体視の状態になることはなく、しかも両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であることが容易にわかる。
【0045】次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態の構成説明用平面図を示す。図6において、立体表示装置31は、投射型表示装置32と、スクリーン33と、スクリーン33の前面に対向配置し、視差画像分離手段として作用するレンチキュラレンズ34と、スクリーン33の投射型表示装置32側に対向配置し、視差画像偏向集光手段として作用する軸ずらしレンチキュラレンズ35とから構成されている。また、スクリーン33には視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5及び非表示部6が、それぞれ同じ幅で周期的に形成されている。そして、ある観察位置において、観察者の右眼7では右眼用画像4のみが、左眼8では左眼用画像5のみが見えるように立体表示装置31が構成されている。
【0046】図7は、本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態における観察視域を説明するための平面図である。投射型表示装置32とスクリーン33とレンチキュラレンズ34と軸ずらしレンチキュラレンズ35とからなる投射型レンチキュラ方式の立体表示装置31において、スクリーン33上に投射された右眼用画像、左眼用画像及び非表示部は、立体表示装置31から離れたある位置でそれぞれ集光され、右眼用画像領域10、左眼用画像領域11及び非表示領域12が順次巡回的に、かつ、周期的に形成される。各領域の幅は、観察者9の両眼間隔である60〜65mm程度である。
【0047】ここで、右眼用画像領域10から立体表示装置31を片眼で観察すると、全画面にわたって右眼用画像のみが見え、一方、左眼用画像領域11から立体表示装置31を片眼で観察すると、全画面にわたって左眼用画像のみが見える。したがって、図7に示すように観察者9の右眼7を右眼用画像領域10に、左眼8を左眼用画像領域11に配置すると、観察者9はこれらの画像頭の中で融合することによって立体画像を正常に観察できる。
【0048】そして、右眼用画像領域10と左眼用画像領域11の両側にある非表示領域12は、第1や第2の実施の形態と同様に作用する。すなわち、両眼で画像を観察している状態が正しい位置であることが一義的に決まり、その他の位置においては、逆立体視の状態にはならず、観察者9に疲労感をもたらすことはない。しかも、正しくない位置であることが容易に気付くことができる。
【0049】図6及び図7に示した第3の実施の形態は、視差画像分離手段としてレンチキュラレンズ34を、視差画像偏向集光手段として軸ずらしレンチキュラレンズ35をそれぞれ用い、投射型表示装置32により2種類の視差画像、すなわち右眼用画像4と左眼用画像5をスクリーン33上に投射表示すると共に、軸ずらしレンチキュラレンズ35により、右眼用画像4と左眼用画像5の繰り返し周期の間に非表示部6を形成し、それらを周期的に表示するスクリーン33の前面にレンチキュラレンズ34を対向配置した構成である。以下、これについてさらに具体的に説明する。
【0050】図6及び図7の構成において投射型表示装置32は、投射型カラー液晶表示装置を用いている。これは、図6には図示していないが、光源からの光を複数のダイクロイックミラーを用い三原色の光束にそれぞれ分離した後、これらの光束で3枚の液晶表示素子をそれぞれ照明し、カラー画像信号により変調を受けた3枚の液晶表示素子を透過した3つの光束を再び複数のダイクロイックミラーで合成し、1本の投射レンズによりカラー画像を投射表示するものである。
【0051】液晶表示素子には、視差画像である右眼用画像4と左眼用画像5が画面の縦方向に長いストライプ状で1画素ごとに表示されている。これらの画像は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の面に結像するように、投射型表示装置32内の投射レンズのフォーカスが調整されており、投射画像の1画素が軸ずらしレンチキュラレンズ35の1つのシリンドリカルレンズの幅と等しく、かつ位置が一致するように位置合わせを行っている。
【0052】スクリーン33は、透過型のスクリーンであって、拡散剤を添加したアクリル樹脂を板状に成形したものである。
【0053】レンチキュラレンズ34は、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形したものを用いており、スクリーン33上のおよそ3画素に1個の割合でシリンドリカルレンズが配置され、観察者が2000mm離れた位置において立体画像を観察できるように設計している。レンチキュラレンズ34は、スクリーン33と間隙を設けて固定されている。この際、レンチキュラレンズ34の溝方向とスクリーン33上に投射表示された画像の縦方向が平行になるように位置合わせを行っている。
【0054】軸ずらしレンチキュラレンズ35は、レンチキュラレンズ34と同様に、シリンドリカルレンズが多数並んだ構造になるように、金型によってアクリル板の表面を加工成形した構成とされている。ただし、各シリンドリカルレンズの光軸は、以下の作用を持つように、ひとつおきに逆方向にずらしている。また、軸ずらしレンチキュラレンズ35も、スクリーン33と間隙を設けて固定されている。
【0055】投射型表示装置32から投射された光は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの位置にそれぞれ結像された後、スクリーン33上に、その幅が各シリンドリカルレンズの幅のおよそ2/3になるように集光されて右眼用画像4と左眼用画像5を表示させる。これらの右眼用画像4と左眼用画像5は、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの位置に対応して画素ごとに繰り返し表示される。
【0056】ただし、軸ずらしレンチキュラレンズ35の各シリンドリカルレンズの光軸をずらせることにより、一組の右眼用画像4と左眼用画像5が隣接し、かつ右眼用画像4と左眼用画像5の繰り返し周期の間に、光が到達しない領域を形成する。その幅は右眼用画像4や左眼用画像5の幅と等しく、この光が到達しない領域が非表示部6になる。
【0057】以上の構成部品からなる、本発明の立体表示装置の第3の実施の形態では、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、観察者の右眼が左眼用画像を観察する位置に動いた場合、左眼では画像を見ることができず、また、左眼が右眼用画像を観察する位置に動いた場合、右眼では画像を見ることができないため、片眼でしか画像を見ていないこととなり、逆立体視の状態になることはない。また、両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であるため、容易に立体視ができる領域を見付けることが可能である。
【0058】第1の実施の形態や第2の実施の形態では、表示装置2の表示面に非表示部6を形成するため、その分視差画像の解像度(画素数)が低下してしまう。すなわち、2眼式の場合、各視差画像の画素数は、表示装置2の1/3の画素数になる。これに対し、本実施の形態においては、視差画像偏向集光手段である軸ずらしレンチキュラレンズ35により非表示部6を形成するので、2眼式の場合、各視差画像の画素数は投射型表示装置32の1/2の画素数となり、第1の実施の形態や第2の実施の形態に比べて1.5倍に増やすことができる。
【0059】なお、以上の第3の実施の形態において、視差画像分離手段はレンチキュラレンズ34を用いたが、これに限らず、パララックスバリアや、光の進行方向を制御する回折格子またはホログラムを用いても同様の立体表示装置が得られる。
【0060】また、投射型表示装置32に右眼用画像4と左眼用画像5の2種類の視差画像を表示する2眼式以外に、3種類以上の視差画像を用いた多眼式の場合も、視差画像の繰り返し周期の間に非表示部を設ける構成であれば同様の立体表示装置が得られる。
【0061】また、投射型表示装置32は、投射型カラー液晶表示装置に限らず、任意の表示素子、例えば油膜に電子ビームで画像を書き込むもの、CRTを用いるもの、PLZTを用いるもの、さらには微小ミラーで光を偏向するもの等を用いた投射型表示装置が利用できる。さらに、モノクロ表示、カラーフィルタを内蔵したカラー表示、さらには、赤、緑、青の三原色の画像を時分割表示してカラー表示を行う場合のいずれにも適用できる。
【0062】また、視差画像偏向集光手段は、軸ずらしレンチキュラレンズ35以外にもホログラムのような回折型光素子を用いたり、偏向と集光を独立作用させる手段、例えば、偏向手段としてプリズムや回折格子等を、集光手段としてレンチキュラレンズやリニアフレネルレンズやホログラム等を組み合わせて用いてもよい。この場合、非表示部6の幅は、それぞれの視差画像の幅以上であれば、観察者は逆立体視の状態になることはなく、しかも両眼で画像を観察できる位置が立体視可能な位置であることが容易にわかる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、視差画像を空間的に分離し、それぞれの眼に独立に呈示することで、観察者が特別な眼鏡を装着することなく立体画像を観察できる立体表示装置において、観察者の右眼と左眼の両方が複数の視差画像領域のうち隣接する二つの視差画像領域のそれぞれに位置する場合は立体画像を正常に観察できるが、観察者の右眼と左眼の一方が複数の視差画像領域のうち非表示領域に隣接する一つの視差画像領域に位置し、かつ、他方の眼が非表示領域に位置するように観察者の頭が動いた場合は、非表示領域に位置する眼では画像を見られないようにしたため、逆立体視の状態になることを防止でき、よって、逆立体視により観察者に疲労感を生じさせないようにできる。また、本発明によれば、正常な観察位置以外の観察位置では片眼でしか画像を見ていないため、容易に立体視ができていないことがわかり、よって、観察者が正しい観察位置を見付けることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる立体表示装置の第1の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図2】図1の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図3】図1の立体表示装置の動作を説明するための部分平面図である。
【図4】本発明になる立体表示装置の第2の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図5】図4の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図6】本発明になる立体表示装置の第3の実施の形態の構成説明用平面図である。
【図7】図6の立体表示装置の観察領域を説明するための平面図である。
【図8】従来の立体表示装置の一例の構成説明用平面図である。
【図9】図8の従来の立体表示装置の観察視域を説明するための平面図である。
【図10】図8の従来の立体表示装置の問題点を説明するための部分平面図である。
【符号の説明】
1、21、31 立体表示装置
2 表示装置
3、34 レンチキュラレンズ
4 右眼用画像
5 左眼用画像
6 非表示部
7 右眼
8 左眼
9 観察者
10 右眼用画像領域
11 左眼用画像領域
12 非表示領域
22 パララックスバリア
32 投射型表示装置
33 スクリーン
35 軸ずらしレンチキュラレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示すると共に、該複数の視差画像の繰り返し表示周期の間にそれぞれの視差画像の表示幅以上の前記複数の視差画像とは異なる画像である非表示部を設けて表示する表示装置と、前記表示装置の前面に設けられ、該表示装置に表示された前記複数の視差画像と前記複数の視差画像とは異なる画像の光を該表示装置から離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と前記複数の視差画像とは異なる画像の表示領域である非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】 透過型のスクリーンと、前記スクリーン上に複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示する単一の投射型表示装置と、前記スクリーン上に前記投射型表示装置から投射された前記複数の視差画像の繰り返し表示周期の間に、それぞれの視差画像の表示幅以上の非表示部を形成する、前記スクリーンの前記投射型表示装置側に設けられた視差画像偏向集光手段と、前記スクリーンに表示された前記複数の視差画像の光を該スクリーンから離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする立体表示装置。
【請求項1】 複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示すると共に、該複数の視差画像の繰り返し表示周期の間にそれぞれの視差画像の表示幅以上の前記複数の視差画像とは異なる画像である非表示部を設けて表示する表示装置と、前記表示装置の前面に設けられ、該表示装置に表示された前記複数の視差画像と前記複数の視差画像とは異なる画像の光を該表示装置から離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と前記複数の視差画像とは異なる画像の表示領域である非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】 透過型のスクリーンと、前記スクリーン上に複数の視差画像を画素ごとに順次巡回的に繰り返し表示する単一の投射型表示装置と、前記スクリーン上に前記投射型表示装置から投射された前記複数の視差画像の繰り返し表示周期の間に、それぞれの視差画像の表示幅以上の非表示部を形成する、前記スクリーンの前記投射型表示装置側に設けられた視差画像偏向集光手段と、前記スクリーンに表示された前記複数の視差画像の光を該スクリーンから離れた観察位置に集光して複数の視差画像領域と非表示領域を周期的に形成する視差画像分離手段とを有することを特徴とする立体表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【特許番号】第2891177号
【登録日】平成11年(1999)2月26日
【発行日】平成11年(1999)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−109058
【出願日】平成8年(1996)4月30日
【公開番号】特開平9−297284
【公開日】平成9年(1997)11月18日
【審査請求日】平成8年(1996)4月30日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平7−28015(JP,A)
【文献】特開 昭59−2033(JP,A)
【文献】特開 平7−287195(JP,A)
【文献】特開 平6−118343(JP,A)
【文献】特開 平7−5420(JP,A)
【登録日】平成11年(1999)2月26日
【発行日】平成11年(1999)5月17日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)4月30日
【公開番号】特開平9−297284
【公開日】平成9年(1997)11月18日
【審査請求日】平成8年(1996)4月30日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平7−28015(JP,A)
【文献】特開 昭59−2033(JP,A)
【文献】特開 平7−287195(JP,A)
【文献】特開 平6−118343(JP,A)
【文献】特開 平7−5420(JP,A)
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