立体視用メガネ及び立体視用電子機器
【課題】複数の投射光の偏光軸が異なる構成であっても、その偏光軸の相違が、観察者が認識する色相に及ぼす影響を低減する。
【解決手段】右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320が対称軸330について線対称に配置された立体視用メガネ300において、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々が、入射側偏光板301および出射側偏光板308、ならびに入射側偏光板301と出射側偏光板308との間に位置する液晶304を含み、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々が、液晶304の印加電圧に応じて開閉し、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が、対称軸330に対して傾斜している。
【解決手段】右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320が対称軸330について線対称に配置された立体視用メガネ300において、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々が、入射側偏光板301および出射側偏光板308、ならびに入射側偏光板301と出射側偏光板308との間に位置する液晶304を含み、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々が、液晶304の印加電圧に応じて開閉し、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が、対称軸330に対して傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を立体視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
左右視差を有する右眼用映像と左眼用映像とを時分割表示することにより、立体視映像を認識させるフレームシーケンシャル方式の立体視方法が、従来から提案されている。このフレームシーケンシャル方式においては、時分割表示される映像と同期して交互に開閉する右眼用シャッタおよび左眼用シャッタを有するメガネ(アクティブシャッタメガネ)を利用者が着用することにより、左右視差を反映した異なる映像が利用者の右眼および左眼にそれぞれ提示され、立体視映像として認識される(特許文献1)。
【0003】
フレームシーケンシャル方式は、直視型表示装置でも、赤色光・緑色光・青色光それぞれに液晶ライトバルブを設ける投射型表示装置(三板式ライトバルブ方式の液晶プロジェクタ等)でも採用可能である。
【0004】
一般に、三板式ライトバルブを有する液晶プロジェクタにおいては、各液晶ライトバルブの視角特性の差から生じる表示ムラを回避するために、液晶ライトバルブごとにその液晶の配向方向を異ならせている。そのため、そのような液晶プロジェクタから投射される投射光は、色ごと(すなわち波長域ごと)に異なる偏光軸を有する偏光となっている。
【0005】
図1に示す例では、投射型表示装置100から投射された投射光Lpは、鉛直方向に振動する赤色偏光および青色偏光、ならびに水平方向に振動する緑色偏光を含む。投射光Lpはマットスクリーン等の散乱型スクリーン200により乱反射されるが、その反射光Lrには色ごとに多少の偏光成分が残存している。反射光Lrは、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320のうち開放されている方を透過して、透過光Ltとなる。
【0006】
ここで、図2(A)に示すように、液晶シャッタの入射側偏光板が鉛直方向の透過軸を有する場合、鉛直方向に振動する赤色偏光・青色偏光は入射側偏光板を透過するが、水平方向に振動する緑色偏光は入射側偏光板を透過しないため、透過光Ltは投射光Lpと比べて赤色および青色(すなわち紫色)を帯びた光となってしまう。また、図2(B)に示すように、入射側偏光板が水平方向の透過軸を有する場合、逆に、緑色偏光は透過するが赤色偏光・青色偏光は透過しないため、透過光Ltは投射光Lpと比べて緑色を帯びた光となってしまう。つまり、以上のような場合、目的の色相を忠実に表示できないという問題がある。
【0007】
この問題に対応する方法として、特定の波長の光の偏光軸を選択的に回転させる偏光モジュレータを使用して、各色の投射光の偏光軸を揃える方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−152897号公報
【特許文献2】特開2008− 20921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の偏光モジュレータを使用して偏光軸を回転させる方法を採用すると、投射型表示装置の構成が複雑になってしまい、製造が困難になるとともに製造コストが増大するという問題があった。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、複数の投射光の偏光軸が異なる構成であっても、その偏光軸の相違が、目的の色相に及ぼす影響を低減することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明にかかる立体視用メガネは、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタが対称軸について線対称に配置された立体視用メガネであって、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、入射側偏光板および出射側偏光板、ならびに前記入射側偏光板と前記出射側偏光板との間に位置する液晶を含み、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、前記液晶の印加電圧に応じて開閉し、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の偏光軸が、前記対称軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0012】
この発明で「対称軸」とは、立体視用メガネの中心線であり、右眼用シャッタと左眼用シャッタが並ぶ方向に垂直な直線である。そして、「偏光軸が対称軸に対して傾斜している」とは、偏光軸が対称軸と平行でなく、かつ、偏光軸が対称軸と直交していないことをいう。
【0013】
この発明によれば、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタの各々の入射側偏光板の偏光軸が対称軸に対して傾斜しているので、鉛直方向(すなわち対称軸と平行な方向)に振動する偏光と水平方向(すなわち対称軸と直交する方向)に振動する偏光とを有する光が立体視用メガネに入射した場合でも、透過光における、反射光のうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光のうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差が、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタの各々の入射側偏光板の偏光軸が対称軸に対して平行または直交する場合に比べて低減される。したがって、投射光の偏光軸の相違が目的の色相に及ぼす影響を低減することができる。
【0014】
ここで、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の前記偏光軸が、前記対称軸に対して45度±5度の範囲にあると好ましい。
この場合には、透過光における、反射光のうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光のうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差がより小さくなるため、投射光の偏光軸の相違が目的の色相に及ぼす影響をより低減することができる。
【0015】
また、前記右眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸と、前記左眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸とが、前記対称軸について線対称であると好ましい。
この場合には、各入射側偏光板が持つ視角特性の差を平均化することができる。
【0016】
次に、本発明にかかる立体視用電子機器は、偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を投射して、右眼用画像および左眼用画像を時分割表示する投射型表示装置と、上述した立体視用メガネとを備えることを特徴とする。
また、前記第1投射光および前記第2投射光は、相異なる色相を有し、前記第1投射光および前記第2投射光の各々は、2以上の相異なる方向の偏光軸を有すると好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】立体視用電子機器の概略図である。
【図2】従来技術における反射光、入射側偏光板の透過軸方向および透過光の関係を示す図である。
【図3】本願実施形態の投射型表示装置の構成例を示す図である。
【図4】本願実施形態の立体視用メガネの構成例を示す図である。
【図5】本願実施形態の立体視用メガネの液晶シャッタの断面図である。
【図6】入射光の水平方向成分および鉛直方向成分と偏光板の偏光軸の関係を示す図である。
【図7】偏光板の偏光軸の角度に対する入射光の水平方向成分および鉛直方向成分の強度の変化を示す図である。
【図8】本願実施形態にかかる入射側偏光板の偏光軸の角度を変化させた場合の、右眼用シャッタまたは左眼用シャッタを透過した光の色相の変化についての実験結果を示す図である。
【図9】本願の変形例にかかる立体視用メガネの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.実施形態>
図1は、本発明のひとつの実施形態に係る立体視用電子機器Dの概略図である。立体視用電子機器Dは、相互に視差を有するカラーの画像を立体視可能に表示する表示装置であり、投射型表示装置100と立体視用メガネ300とを含んで構成される。投射型表示装置100は、画像を表示するための投射光Lpを散乱型スクリーン200に投射する。観察者は立体視用メガネ300を装着する。投射光Lpを散乱型スクリーン200の表面で反射させた反射光Lrが立体視用メガネ300を透過して観察者に知覚される。
【0019】
図3は、投射型表示装置の概略図である。本実施形態の投射型表示装置100は、透過型の液晶パネルをライトバルブ110(110R,110G,110B)として利用した液晶プロジェクタである。投射型表示装置100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット102が設けられている。このランプユニット102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー106および2枚のダイクロイックミラー108によって赤色光、緑色光、および青色光に分離されて、各色光に対応するライトバルブ110R、110Gおよび110Bにそれぞれ導かれる。これらの各色光は、各ライトバルブによって変調され偏光となる。各色の偏光のうち、赤色偏光および青色偏光は鉛直方向の偏光軸を、緑色偏光は水平方向の偏光軸を有する。各色の偏光はダイクロイックプリズム112に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム112において、赤色偏光及び青色偏光は90度に屈折する一方、緑色偏光は直進する。これにより、赤色偏光、緑色偏光および青色偏光が混合された投射光Lpが、投射レンズ114を介して散乱型スクリーン200に投射される。
【0020】
投射型表示装置100は、さらに、画像の表示に同期して立体視用メガネ300を制御する制御部150を備える。
【0021】
図4は、立体視用メガネ300を前面側(散乱型スクリーン200から到来する反射光Lrの入射側)からみた構成図である。図4に示すように、立体視用メガネ300は、対称軸330に関して線対称に配置された右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320とを具備するアクティブシャッタメガネである。対称軸330は、立体視用メガネ300の中心線であり、右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320とが並ぶ方向に対して垂直な直線である。したがって、立体視用メガネ300を装着した観察者が上半身を正立させた姿勢で散乱型スクリーン200を視認する状態では、立体視用メガネ300の対称軸330は鉛直方向に平行な方向を向く。
右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320は液晶シャッタで構成されており、入射光を透過したり遮断したりするシャッタ動作を行う。
【0022】
図5は、本実施形態に用いられる立体視用メガネ300の右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の断面図である。右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々は、相対向する基板302と基板307との間隙内に液晶304を封止した構成の液晶シャッタである。基板302は反射光Lrの入射側に位置し、基板307は反射光Lrの出射側(観察者側)に位置する。基板302における液晶304との対向面の全域には電極303が形成され、基板307における液晶304との対向面の全域には電極306が形成される。電極303が形成された基板302と電極306が形成された基板307とは接着剤305により接着される。基板302のうち液晶304とは反対側の表面には入射側偏光板301が貼付され、基板307のうち液晶304とは反対側の表面には出射側偏光板308が貼付される。
【0023】
以上の構成において、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々は、電極303と電極306との間の電圧(液晶に対する印加電圧)に応じて開放されまたは閉鎖される。「開放される」とは、入射側偏光板301から入射した反射光Lrが液晶を透過して出射側偏光板308から観察者側に出射する状態になることであり、「閉鎖される」とは、入射側偏光板301から入射した反射光Lrが遮断されて観察者側に出射しない状態になることである。
【0024】
なお、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の液晶304の配向モードは特に限定されない。VA(Vertical Alignment)、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensated Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)等の様々な動作モードが採用されうる。
【0025】
投射型表示装置100が散乱型スクリーン200に右眼用画像と左眼用画像を投射光Lpとして時分割で交互に投射する。投射光Lpは散乱型スクリーン200で反射され反射光Lrとなり立体視用メガネ300に入射する。投射型表示装置100の制御部150は、右眼用画像を投射しているときは右眼用シャッタ310を開放するとともに左眼用シャッタ320を閉鎖し、左眼用画像を投射しているときは右眼用シャッタ310を閉鎖するとともに左眼用シャッタ320を開放する。その結果、反射光Lrは右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320のうち開放されている方を透過して透過光Ltとなって、利用者の右眼のみに右眼用画像が提示され、左眼のみに左眼用画像が提示されることにより、利用者に立体視画像が認識される。
【0026】
前述のように、立体視画像を表示するための投射光Lpおよび反射光Lrは、鉛直方向に振動する赤色成分および青色成分と水平方向に振動する緑色成分とを含む。したがって、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340の方向を鉛直方向または水平方向に設定した場合、図2を参照して説明したように、目的の色相を忠実に観察者に知覚させることが阻害される。以上のように各色光成分の振動方向の相違に起因した色相のズレが低減されるように、本実施形態では、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が、対称軸330に対して傾斜した方向に設定される。
【0027】
ここで、偏光軸(透過軸)340が対称軸330に対して角度θをなす入射側偏光板301に水平方向の偏光と鉛直方向の偏光とを入射した場合の透過光の強度について検討する。図6に示すように、入射光のうち、水平方向に振動する成分の振幅をPx、鉛直方向に振動する成分の振幅をPyとした場合に、入射光が鉛直方向から角度θ[°]だけ傾いた偏光軸を有する偏光板を透過した場合の、透過光の水平成分の強度Ixおよび透過光の鉛直成分の強度Iyは、
Ix=Px2cos2(90°−θ)
Iy=Py2cos2θ
と表せる。そして、透過光全体の強度は各成分の和、すなわちIx+Iyと表せる。
【0028】
図7は、鉛直方向に対する入射側偏光板301の偏光軸340の角度θと、透過光の水平成分の強度Ixおよび透過光の鉛直成分の強度Iyの関係を示すグラフである。強度Ixおよび強度Iyは、最小値が0となり最大値が1となるように正規化された相対強度である。
【0029】
角度θが0°である場合(入射側偏光板301の偏光軸340が鉛直方向に平行である場合)には、入射光のうち鉛直方向成分のみが入射側偏光板301を透過するから、図7から把握されるように、透過光では鉛直方向成分の強度Iyが最大値(1)となり水平方向成分の強度Ixが最小値(0)となる。角度θを0°から増加させていくと、入射光の鉛直方向の偏光成分のうち入射側偏光板301で遮光される割合が増加するとともに水平方向の偏光成分が透過する割合が増加し、角度θが45°である場合に強度Ixと強度Iyとの大小が逆転する。そして、角度θが90°である場合(入射側偏光板301の偏光軸340が水平方向に平行である場合)、透過光では水平方向成分の強度Ixが最大値(1)となり鉛直方向成分の強度Iy(0)が最小値となる。
【0030】
すなわち、入射側偏光板301の偏光軸340の角度θが0°または90°の場合に、透過光における強度Ixと強度Iyとの差異(すなわち入射光の偏光方向の相違が透過光に及ぼす影響)が最大となる。他方、角度θが対称軸に水平方向や鉛直方向に対して傾斜する場合(θ≠0°,θ≠90°)に強度Ixと強度Iyとの差異が抑制される。特に角度θが45°の場合には強度Ixと強度Iyとの差異が最小となる(Ix=Iy=0.5)。
【0031】
以上の傾向を考慮して、本実施形態における右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340は、図4に示すように、対称軸330(鉛直方向)に対して傾斜するように設定される。すなわち、対称軸330に対する偏光軸340の角度θは0°および90°以外の角度に設定される。具体的には、図7を参照して説明した通り、強度Ixと強度Iyとの差異が有効に抑制されるように角度θは45°±5°の範囲R内の角度に設定され、最も好適には、強度Ixと強度Iyとの差異が最小(0)となるように角度θは45°に設定される。また、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とは対称軸330に関して線対称の関係にある。他方、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の出射側偏光板308の偏光軸の方向は、入射側偏光板301の偏光軸340の方向と液晶の配向モードとに応じて選定される。
【0032】
以上に説明したように、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々における入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330(鉛直方向)に対して傾斜するから、各色光成分の振動方向の相違に起因した色相のズレが低減される。すなわち、水平方向(すなわち対称軸330に直交する方向)に振動する成分(緑色偏光)と鉛直方向(すなわち対称軸330と平行な方向)に振動する成分(赤色偏光および青色偏光)とを有する反射光Lrが立体視用メガネ300に入射しても、この偏光軸の相違に起因した色相のズレが低減される。
【0033】
図8は、入射側偏光板301の偏光軸340の角度θを変化させた場合の、右眼用シャッタ310または左眼用シャッタ320を透過した光の色相の変化についての実験結果を示す図であり、CIE(Commission International de l'Eclairage、国際照明委員会)のxy色度図上に、偏光軸340が対称軸330に対してなす角度がそれぞれθ=0°、θ=45°、θ=90°の場合において、白色の反射光Lrを右眼用シャッタ310または左眼用シャッタ320に入射させたときの透過光Ltの色相および対照となる昼白色(D65標準光)の色相をプロットしたものである。
【0034】
昼白色の色相は(x,y)=(0.3127、0.3290)である。θ=0°の場合、色相は(x,y)=(0.343,0.240)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0940であった。θ=90°の場合、色相は(x,y)=(0.313,0.375)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0460であった。θ=45°の場合、色相は(x,y)=(0.317,0.332)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0052であり、θ=0°およびθ=90°と比べて最も小さかった。
すなわち、実際に、偏光軸340と対称軸330とがなす角度がθ=0°およびθ=90°であるときに比べて、θ=45°のときの透過光Ltの色相の方が、入射した反射光Lrの色相である白色により近く、偏光成分の振動方向の相違が利用者が認識する色相に与える影響が低減されていると言える。
【0035】
<2.変形例>
以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り任意に併合され得る。
上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330に対して45°±5°の角度をなしているが、偏光軸340の角度は限定されない。すなわち、偏光軸340が対称軸330に対して傾斜していればよい。このようにしても、透過光Ltにおける、反射光Lrのうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光Lrのうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差が、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330に対して平行であるか直交する場合に比べて小さくなるため、偏光軸の相違が色相に及ぼす影響を低減することができる。
【0036】
上述した実施形態では、立体視用メガネ300の右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とが立体視用メガネ300の上部で交差する関係にあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図9(A)のように、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とが立体視用メガネ300の下部で交差してもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330について線対称であるが、これらの偏光軸340が対称軸330について線対称でなくてもよい。例えば、図9(B)や図9(C)のように、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が同一の方向であってもよい。このようにした場合には、右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320の構成を同一にできるので、立体視用メガネ300の構成を簡略にすることができる。ただし、図4や図9(A)のように、入射側偏光板301の偏光軸340を対称軸330について線対称に構成する場合には、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301および左眼用シャッタ320の入射側偏光板301が持つ視角特性の差を平均化することができるという利点がある。
【0038】
また、上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と対称軸330とがなす角度θと、左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340と対称軸330とがなす角度θは同一であるが、これらの角度が互いに異なっていてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、投射型表示装置100からの投射光Lpのうち、赤色偏光および青色偏光が鉛直方向に振動し、緑色偏光が水平方向に振動するが、各色光成分の振動方向は任意であって、投射型表示装置100からの投射光Lpが、偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を含んでいればよい。この場合にも、上述した立体視用メガネ300を用いることで、投射光の偏光軸の相違が色相に及ぼす影響が低減される。
第1投射光および第2投射光の色相は、同一であっても相異なっていてもよい。また、第1投射光および第2投射光が有する偏光軸の方向は1つに限られず、相異なる2以上の方向の偏光軸であってもよい。この場合にも、上述した立体視用メガネ300を用いることで、投射光の偏光軸の相違が色相に及ぼす影響が低減される。
【0040】
上述した実施形態では、投射型表示装置100からの投射光Lpを反射するためのスクリーンとして散乱型スクリーン200を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回帰型スクリーン、反射型スクリーン等、異なる型のスクリーンについても適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100…投射型表示装置、200…散乱型スクリーン、300…立体視用メガネ、301…入射側偏光板、304…液晶、308…出射側偏光板、310…右眼用シャッタ、320…左眼用シャッタ、330…立体視用メガネの対称軸、340…入射側偏光板の偏光軸、Lp…投射光、Lr…反射光、Lt…透過光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を立体視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
左右視差を有する右眼用映像と左眼用映像とを時分割表示することにより、立体視映像を認識させるフレームシーケンシャル方式の立体視方法が、従来から提案されている。このフレームシーケンシャル方式においては、時分割表示される映像と同期して交互に開閉する右眼用シャッタおよび左眼用シャッタを有するメガネ(アクティブシャッタメガネ)を利用者が着用することにより、左右視差を反映した異なる映像が利用者の右眼および左眼にそれぞれ提示され、立体視映像として認識される(特許文献1)。
【0003】
フレームシーケンシャル方式は、直視型表示装置でも、赤色光・緑色光・青色光それぞれに液晶ライトバルブを設ける投射型表示装置(三板式ライトバルブ方式の液晶プロジェクタ等)でも採用可能である。
【0004】
一般に、三板式ライトバルブを有する液晶プロジェクタにおいては、各液晶ライトバルブの視角特性の差から生じる表示ムラを回避するために、液晶ライトバルブごとにその液晶の配向方向を異ならせている。そのため、そのような液晶プロジェクタから投射される投射光は、色ごと(すなわち波長域ごと)に異なる偏光軸を有する偏光となっている。
【0005】
図1に示す例では、投射型表示装置100から投射された投射光Lpは、鉛直方向に振動する赤色偏光および青色偏光、ならびに水平方向に振動する緑色偏光を含む。投射光Lpはマットスクリーン等の散乱型スクリーン200により乱反射されるが、その反射光Lrには色ごとに多少の偏光成分が残存している。反射光Lrは、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320のうち開放されている方を透過して、透過光Ltとなる。
【0006】
ここで、図2(A)に示すように、液晶シャッタの入射側偏光板が鉛直方向の透過軸を有する場合、鉛直方向に振動する赤色偏光・青色偏光は入射側偏光板を透過するが、水平方向に振動する緑色偏光は入射側偏光板を透過しないため、透過光Ltは投射光Lpと比べて赤色および青色(すなわち紫色)を帯びた光となってしまう。また、図2(B)に示すように、入射側偏光板が水平方向の透過軸を有する場合、逆に、緑色偏光は透過するが赤色偏光・青色偏光は透過しないため、透過光Ltは投射光Lpと比べて緑色を帯びた光となってしまう。つまり、以上のような場合、目的の色相を忠実に表示できないという問題がある。
【0007】
この問題に対応する方法として、特定の波長の光の偏光軸を選択的に回転させる偏光モジュレータを使用して、各色の投射光の偏光軸を揃える方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−152897号公報
【特許文献2】特開2008− 20921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の偏光モジュレータを使用して偏光軸を回転させる方法を採用すると、投射型表示装置の構成が複雑になってしまい、製造が困難になるとともに製造コストが増大するという問題があった。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、複数の投射光の偏光軸が異なる構成であっても、その偏光軸の相違が、目的の色相に及ぼす影響を低減することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明にかかる立体視用メガネは、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタが対称軸について線対称に配置された立体視用メガネであって、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、入射側偏光板および出射側偏光板、ならびに前記入射側偏光板と前記出射側偏光板との間に位置する液晶を含み、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、前記液晶の印加電圧に応じて開閉し、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の偏光軸が、前記対称軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0012】
この発明で「対称軸」とは、立体視用メガネの中心線であり、右眼用シャッタと左眼用シャッタが並ぶ方向に垂直な直線である。そして、「偏光軸が対称軸に対して傾斜している」とは、偏光軸が対称軸と平行でなく、かつ、偏光軸が対称軸と直交していないことをいう。
【0013】
この発明によれば、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタの各々の入射側偏光板の偏光軸が対称軸に対して傾斜しているので、鉛直方向(すなわち対称軸と平行な方向)に振動する偏光と水平方向(すなわち対称軸と直交する方向)に振動する偏光とを有する光が立体視用メガネに入射した場合でも、透過光における、反射光のうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光のうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差が、右眼用シャッタおよび左眼用シャッタの各々の入射側偏光板の偏光軸が対称軸に対して平行または直交する場合に比べて低減される。したがって、投射光の偏光軸の相違が目的の色相に及ぼす影響を低減することができる。
【0014】
ここで、前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の前記偏光軸が、前記対称軸に対して45度±5度の範囲にあると好ましい。
この場合には、透過光における、反射光のうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光のうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差がより小さくなるため、投射光の偏光軸の相違が目的の色相に及ぼす影響をより低減することができる。
【0015】
また、前記右眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸と、前記左眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸とが、前記対称軸について線対称であると好ましい。
この場合には、各入射側偏光板が持つ視角特性の差を平均化することができる。
【0016】
次に、本発明にかかる立体視用電子機器は、偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を投射して、右眼用画像および左眼用画像を時分割表示する投射型表示装置と、上述した立体視用メガネとを備えることを特徴とする。
また、前記第1投射光および前記第2投射光は、相異なる色相を有し、前記第1投射光および前記第2投射光の各々は、2以上の相異なる方向の偏光軸を有すると好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】立体視用電子機器の概略図である。
【図2】従来技術における反射光、入射側偏光板の透過軸方向および透過光の関係を示す図である。
【図3】本願実施形態の投射型表示装置の構成例を示す図である。
【図4】本願実施形態の立体視用メガネの構成例を示す図である。
【図5】本願実施形態の立体視用メガネの液晶シャッタの断面図である。
【図6】入射光の水平方向成分および鉛直方向成分と偏光板の偏光軸の関係を示す図である。
【図7】偏光板の偏光軸の角度に対する入射光の水平方向成分および鉛直方向成分の強度の変化を示す図である。
【図8】本願実施形態にかかる入射側偏光板の偏光軸の角度を変化させた場合の、右眼用シャッタまたは左眼用シャッタを透過した光の色相の変化についての実験結果を示す図である。
【図9】本願の変形例にかかる立体視用メガネの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.実施形態>
図1は、本発明のひとつの実施形態に係る立体視用電子機器Dの概略図である。立体視用電子機器Dは、相互に視差を有するカラーの画像を立体視可能に表示する表示装置であり、投射型表示装置100と立体視用メガネ300とを含んで構成される。投射型表示装置100は、画像を表示するための投射光Lpを散乱型スクリーン200に投射する。観察者は立体視用メガネ300を装着する。投射光Lpを散乱型スクリーン200の表面で反射させた反射光Lrが立体視用メガネ300を透過して観察者に知覚される。
【0019】
図3は、投射型表示装置の概略図である。本実施形態の投射型表示装置100は、透過型の液晶パネルをライトバルブ110(110R,110G,110B)として利用した液晶プロジェクタである。投射型表示装置100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット102が設けられている。このランプユニット102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー106および2枚のダイクロイックミラー108によって赤色光、緑色光、および青色光に分離されて、各色光に対応するライトバルブ110R、110Gおよび110Bにそれぞれ導かれる。これらの各色光は、各ライトバルブによって変調され偏光となる。各色の偏光のうち、赤色偏光および青色偏光は鉛直方向の偏光軸を、緑色偏光は水平方向の偏光軸を有する。各色の偏光はダイクロイックプリズム112に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム112において、赤色偏光及び青色偏光は90度に屈折する一方、緑色偏光は直進する。これにより、赤色偏光、緑色偏光および青色偏光が混合された投射光Lpが、投射レンズ114を介して散乱型スクリーン200に投射される。
【0020】
投射型表示装置100は、さらに、画像の表示に同期して立体視用メガネ300を制御する制御部150を備える。
【0021】
図4は、立体視用メガネ300を前面側(散乱型スクリーン200から到来する反射光Lrの入射側)からみた構成図である。図4に示すように、立体視用メガネ300は、対称軸330に関して線対称に配置された右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320とを具備するアクティブシャッタメガネである。対称軸330は、立体視用メガネ300の中心線であり、右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320とが並ぶ方向に対して垂直な直線である。したがって、立体視用メガネ300を装着した観察者が上半身を正立させた姿勢で散乱型スクリーン200を視認する状態では、立体視用メガネ300の対称軸330は鉛直方向に平行な方向を向く。
右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320は液晶シャッタで構成されており、入射光を透過したり遮断したりするシャッタ動作を行う。
【0022】
図5は、本実施形態に用いられる立体視用メガネ300の右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の断面図である。右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々は、相対向する基板302と基板307との間隙内に液晶304を封止した構成の液晶シャッタである。基板302は反射光Lrの入射側に位置し、基板307は反射光Lrの出射側(観察者側)に位置する。基板302における液晶304との対向面の全域には電極303が形成され、基板307における液晶304との対向面の全域には電極306が形成される。電極303が形成された基板302と電極306が形成された基板307とは接着剤305により接着される。基板302のうち液晶304とは反対側の表面には入射側偏光板301が貼付され、基板307のうち液晶304とは反対側の表面には出射側偏光板308が貼付される。
【0023】
以上の構成において、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々は、電極303と電極306との間の電圧(液晶に対する印加電圧)に応じて開放されまたは閉鎖される。「開放される」とは、入射側偏光板301から入射した反射光Lrが液晶を透過して出射側偏光板308から観察者側に出射する状態になることであり、「閉鎖される」とは、入射側偏光板301から入射した反射光Lrが遮断されて観察者側に出射しない状態になることである。
【0024】
なお、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の液晶304の配向モードは特に限定されない。VA(Vertical Alignment)、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensated Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)等の様々な動作モードが採用されうる。
【0025】
投射型表示装置100が散乱型スクリーン200に右眼用画像と左眼用画像を投射光Lpとして時分割で交互に投射する。投射光Lpは散乱型スクリーン200で反射され反射光Lrとなり立体視用メガネ300に入射する。投射型表示装置100の制御部150は、右眼用画像を投射しているときは右眼用シャッタ310を開放するとともに左眼用シャッタ320を閉鎖し、左眼用画像を投射しているときは右眼用シャッタ310を閉鎖するとともに左眼用シャッタ320を開放する。その結果、反射光Lrは右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320のうち開放されている方を透過して透過光Ltとなって、利用者の右眼のみに右眼用画像が提示され、左眼のみに左眼用画像が提示されることにより、利用者に立体視画像が認識される。
【0026】
前述のように、立体視画像を表示するための投射光Lpおよび反射光Lrは、鉛直方向に振動する赤色成分および青色成分と水平方向に振動する緑色成分とを含む。したがって、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340の方向を鉛直方向または水平方向に設定した場合、図2を参照して説明したように、目的の色相を忠実に観察者に知覚させることが阻害される。以上のように各色光成分の振動方向の相違に起因した色相のズレが低減されるように、本実施形態では、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が、対称軸330に対して傾斜した方向に設定される。
【0027】
ここで、偏光軸(透過軸)340が対称軸330に対して角度θをなす入射側偏光板301に水平方向の偏光と鉛直方向の偏光とを入射した場合の透過光の強度について検討する。図6に示すように、入射光のうち、水平方向に振動する成分の振幅をPx、鉛直方向に振動する成分の振幅をPyとした場合に、入射光が鉛直方向から角度θ[°]だけ傾いた偏光軸を有する偏光板を透過した場合の、透過光の水平成分の強度Ixおよび透過光の鉛直成分の強度Iyは、
Ix=Px2cos2(90°−θ)
Iy=Py2cos2θ
と表せる。そして、透過光全体の強度は各成分の和、すなわちIx+Iyと表せる。
【0028】
図7は、鉛直方向に対する入射側偏光板301の偏光軸340の角度θと、透過光の水平成分の強度Ixおよび透過光の鉛直成分の強度Iyの関係を示すグラフである。強度Ixおよび強度Iyは、最小値が0となり最大値が1となるように正規化された相対強度である。
【0029】
角度θが0°である場合(入射側偏光板301の偏光軸340が鉛直方向に平行である場合)には、入射光のうち鉛直方向成分のみが入射側偏光板301を透過するから、図7から把握されるように、透過光では鉛直方向成分の強度Iyが最大値(1)となり水平方向成分の強度Ixが最小値(0)となる。角度θを0°から増加させていくと、入射光の鉛直方向の偏光成分のうち入射側偏光板301で遮光される割合が増加するとともに水平方向の偏光成分が透過する割合が増加し、角度θが45°である場合に強度Ixと強度Iyとの大小が逆転する。そして、角度θが90°である場合(入射側偏光板301の偏光軸340が水平方向に平行である場合)、透過光では水平方向成分の強度Ixが最大値(1)となり鉛直方向成分の強度Iy(0)が最小値となる。
【0030】
すなわち、入射側偏光板301の偏光軸340の角度θが0°または90°の場合に、透過光における強度Ixと強度Iyとの差異(すなわち入射光の偏光方向の相違が透過光に及ぼす影響)が最大となる。他方、角度θが対称軸に水平方向や鉛直方向に対して傾斜する場合(θ≠0°,θ≠90°)に強度Ixと強度Iyとの差異が抑制される。特に角度θが45°の場合には強度Ixと強度Iyとの差異が最小となる(Ix=Iy=0.5)。
【0031】
以上の傾向を考慮して、本実施形態における右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340は、図4に示すように、対称軸330(鉛直方向)に対して傾斜するように設定される。すなわち、対称軸330に対する偏光軸340の角度θは0°および90°以外の角度に設定される。具体的には、図7を参照して説明した通り、強度Ixと強度Iyとの差異が有効に抑制されるように角度θは45°±5°の範囲R内の角度に設定され、最も好適には、強度Ixと強度Iyとの差異が最小(0)となるように角度θは45°に設定される。また、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とは対称軸330に関して線対称の関係にある。他方、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の出射側偏光板308の偏光軸の方向は、入射側偏光板301の偏光軸340の方向と液晶の配向モードとに応じて選定される。
【0032】
以上に説明したように、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々における入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330(鉛直方向)に対して傾斜するから、各色光成分の振動方向の相違に起因した色相のズレが低減される。すなわち、水平方向(すなわち対称軸330に直交する方向)に振動する成分(緑色偏光)と鉛直方向(すなわち対称軸330と平行な方向)に振動する成分(赤色偏光および青色偏光)とを有する反射光Lrが立体視用メガネ300に入射しても、この偏光軸の相違に起因した色相のズレが低減される。
【0033】
図8は、入射側偏光板301の偏光軸340の角度θを変化させた場合の、右眼用シャッタ310または左眼用シャッタ320を透過した光の色相の変化についての実験結果を示す図であり、CIE(Commission International de l'Eclairage、国際照明委員会)のxy色度図上に、偏光軸340が対称軸330に対してなす角度がそれぞれθ=0°、θ=45°、θ=90°の場合において、白色の反射光Lrを右眼用シャッタ310または左眼用シャッタ320に入射させたときの透過光Ltの色相および対照となる昼白色(D65標準光)の色相をプロットしたものである。
【0034】
昼白色の色相は(x,y)=(0.3127、0.3290)である。θ=0°の場合、色相は(x,y)=(0.343,0.240)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0940であった。θ=90°の場合、色相は(x,y)=(0.313,0.375)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0460であった。θ=45°の場合、色相は(x,y)=(0.317,0.332)であり、昼白色との色度図上の距離は0.0052であり、θ=0°およびθ=90°と比べて最も小さかった。
すなわち、実際に、偏光軸340と対称軸330とがなす角度がθ=0°およびθ=90°であるときに比べて、θ=45°のときの透過光Ltの色相の方が、入射した反射光Lrの色相である白色により近く、偏光成分の振動方向の相違が利用者が認識する色相に与える影響が低減されていると言える。
【0035】
<2.変形例>
以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り任意に併合され得る。
上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330に対して45°±5°の角度をなしているが、偏光軸340の角度は限定されない。すなわち、偏光軸340が対称軸330に対して傾斜していればよい。このようにしても、透過光Ltにおける、反射光Lrのうち水平方向に振動する成分に由来する強度と、反射光Lrのうち鉛直方向に振動する成分に由来する強度との差が、右眼用シャッタ310および左眼用シャッタ320の各々の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330に対して平行であるか直交する場合に比べて小さくなるため、偏光軸の相違が色相に及ぼす影響を低減することができる。
【0036】
上述した実施形態では、立体視用メガネ300の右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とが立体視用メガネ300の上部で交差する関係にあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図9(A)のように、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340とが立体視用メガネ300の下部で交差してもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が対称軸330について線対称であるが、これらの偏光軸340が対称軸330について線対称でなくてもよい。例えば、図9(B)や図9(C)のように、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340が同一の方向であってもよい。このようにした場合には、右眼用シャッタ310と左眼用シャッタ320の構成を同一にできるので、立体視用メガネ300の構成を簡略にすることができる。ただし、図4や図9(A)のように、入射側偏光板301の偏光軸340を対称軸330について線対称に構成する場合には、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301および左眼用シャッタ320の入射側偏光板301が持つ視角特性の差を平均化することができるという利点がある。
【0038】
また、上述した実施形態では、右眼用シャッタ310の入射側偏光板301の偏光軸340と対称軸330とがなす角度θと、左眼用シャッタ320の入射側偏光板301の偏光軸340と対称軸330とがなす角度θは同一であるが、これらの角度が互いに異なっていてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、投射型表示装置100からの投射光Lpのうち、赤色偏光および青色偏光が鉛直方向に振動し、緑色偏光が水平方向に振動するが、各色光成分の振動方向は任意であって、投射型表示装置100からの投射光Lpが、偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を含んでいればよい。この場合にも、上述した立体視用メガネ300を用いることで、投射光の偏光軸の相違が色相に及ぼす影響が低減される。
第1投射光および第2投射光の色相は、同一であっても相異なっていてもよい。また、第1投射光および第2投射光が有する偏光軸の方向は1つに限られず、相異なる2以上の方向の偏光軸であってもよい。この場合にも、上述した立体視用メガネ300を用いることで、投射光の偏光軸の相違が色相に及ぼす影響が低減される。
【0040】
上述した実施形態では、投射型表示装置100からの投射光Lpを反射するためのスクリーンとして散乱型スクリーン200を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回帰型スクリーン、反射型スクリーン等、異なる型のスクリーンについても適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100…投射型表示装置、200…散乱型スクリーン、300…立体視用メガネ、301…入射側偏光板、304…液晶、308…出射側偏光板、310…右眼用シャッタ、320…左眼用シャッタ、330…立体視用メガネの対称軸、340…入射側偏光板の偏光軸、Lp…投射光、Lr…反射光、Lt…透過光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用シャッタおよび左眼用シャッタが対称軸について線対称に配置された立体視用メガネであって、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、入射側偏光板および出射側偏光板、ならびに前記入射側偏光板と前記出射側偏光板との間に位置する液晶を含み、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、前記液晶の印加電圧に応じて開閉し、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の偏光軸が、前記対称軸に対して傾斜している
ことを特徴とする立体視用メガネ。
【請求項2】
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の前記偏光軸が、前記対称軸に対して45度±5度の範囲にある
ことを特徴とする請求項1に記載の立体視用メガネ。
【請求項3】
前記右眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸と、前記左眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸とが、前記対称軸について線対称である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体視用メガネ。
【請求項4】
偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を投射して、右眼用画像および左眼用画像を時分割表示する投射型表示装置と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された立体視用メガネとを備える
ことを特徴とする立体視用電子機器。
【請求項5】
前記第1投射光および前記第2投射光は、相異なる色相を有し、
前記第1投射光および前記第2投射光の各々は、2以上の相異なる方向の偏光軸を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の立体視用電子機器。
【請求項1】
右眼用シャッタおよび左眼用シャッタが対称軸について線対称に配置された立体視用メガネであって、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、入射側偏光板および出射側偏光板、ならびに前記入射側偏光板と前記出射側偏光板との間に位置する液晶を含み、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々が、前記液晶の印加電圧に応じて開閉し、
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の偏光軸が、前記対称軸に対して傾斜している
ことを特徴とする立体視用メガネ。
【請求項2】
前記右眼用シャッタおよび前記左眼用シャッタの各々の前記入射側偏光板の前記偏光軸が、前記対称軸に対して45度±5度の範囲にある
ことを特徴とする請求項1に記載の立体視用メガネ。
【請求項3】
前記右眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸と、前記左眼用シャッタの前記入射側偏光板の前記偏光軸とが、前記対称軸について線対称である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体視用メガネ。
【請求項4】
偏光軸の方向が相異なる第1投射光および第2投射光を投射して、右眼用画像および左眼用画像を時分割表示する投射型表示装置と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された立体視用メガネとを備える
ことを特徴とする立体視用電子機器。
【請求項5】
前記第1投射光および前記第2投射光は、相異なる色相を有し、
前記第1投射光および前記第2投射光の各々は、2以上の相異なる方向の偏光軸を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の立体視用電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−37746(P2012−37746A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178386(P2010−178386)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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