説明

立体視用眼鏡、表示システム及び立体視用眼鏡の動作方法

【課題】映像の鑑賞時において、ユーザーが必要に応じて明るい視界を容易に得られるようにする。
【解決手段】立体視用眼鏡は、加速度センサを備えている。立体視用眼鏡は、映像との同期タイミングを示す同期信号を受信すると(S2:YES)、受信した同期信号に従って右眼用の第1シャッターと左眼用の第2シャッターとを交互に開閉させる(S3)。また、立体視用眼鏡は、同期信号の受信が一時的に途切れても(S2:NO)、それが自走期間以下であれば(S4:YES)、途切れる前の同期信号に基づいて開閉タイミングを予測し、第1シャッターと第2シャッターとを交互に開閉させる(S5)。一方、立体視用眼鏡は、ユーザが所定の動きをした場合には(S1:YES)、同期信号の有無によらず、第1シャッターと第2シャッターの双方を開状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる3D映像(立体視を可能にする映像)の表示時の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
3D映像の鑑賞においては、専用の眼鏡が用いられることがある。例えば、アクティブシャッター方式の眼鏡は、右眼用のシャッターと左眼用のシャッターを交互に開閉し、右眼には右眼用の画像を知覚させ、左眼には左眼用の画像を知覚させることによって立体視を実現する。また、眼鏡と表示装置との間では、同期信号によって同期が取られるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−268449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような開閉状態にある眼鏡を装着したユーザーは、実際に知覚できている光の明るさが非装着時の半分程度になる。すなわち、立体視用の眼鏡を装着して映像を視聴しているユーザーは、知覚できる明るさが制限されている。
しかし、ユーザーは、突然の事態(地震等の災害、意図せぬ来訪者など)が生じた際には、映像の鑑賞を中断せざるを得ない場合がある。このような場合には、突然の事態への対処(避難、来訪者の応対など)が求められるが、視界が暗い状態では適切な対処ができないおそれがある。とはいえ、突然の事態に際して、眼鏡を即座に外すということも困難な場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、映像の鑑賞時において、ユーザーが必要に応じて明るい視界を容易に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る立体視用眼鏡は、開状態又は閉状態になる右眼用の第1シャッターと、開状態又は閉状態になる左眼用の第2シャッターと、表示装置により表示される映像との同期タイミングを示す同期信号を受信する通信部と、ユーザーの動きと相関を有する物理量を測定するためのセンサーと、前記通信部により受信された同期信号に従って、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を一方が開状態のときに他方が閉状態になるように切り替えるとともに、測定された前記物理量により特定される前記ユーザーの動きが所定の条件を満たす場合に前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にする制御部とを備える構成を有する。
この立体視用眼鏡によれば、ユーザーが所定の動きをした場合に、第1シャッターと第2シャッターの双方が開状態になって明るい視界を得ることができる。
【0007】
好ましい態様において、前記制御部は、前記通信部により受信された同期信号に従って前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を切り替える第1モードと、前記同期信号の受信が途切れた場合に、途切れる前に受信した前記同期信号に基づいて切り替えタイミングを予測し、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を所定期間切り替える第2モードと、前記第1モード又は前記第2モードで動作している場合において、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たしたとき、前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にする第3モードとにより前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を制御する。
この態様によれば、第2モードで動作している場合に、所定期間が満了する前に第3モードに移行することができる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記センサーは、鉛直方向の加速度及び鉛直方向と異なる他の方向の加速度を測定し、前記制御部は、前記他の方向の加速度が第1の閾値よりも大きい場合に、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たすと判断するとともに、前記鉛直方向の加速度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値よりも大きい場合に、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たすと判断する。
この態様によれば、着座した状態から起立するような動作に迅速に反応することができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記通信部は、前記同期信号と、前記表示装置により表示される映像を識別する識別信号とを受信し、前記制御部は、前記通信部により受信された識別信号に応じて前記所定の条件を変化させる。
この態様によれば、第1シャッターと第2シャッターの双方が開状態になる条件を映像に応じて変えることができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る表示システムは、上記のいずれかの態様の立体視用眼鏡と、前記立体視用眼鏡の動作に同期するように立体視用の映像を表示する表示装置とを備える。
この態様において、前記表示装置は、前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方が開状態になる場合に、前記映像の表示を一時停止し、又は当該映像と異なる他の映像を表示するようにしてもよい。
この態様によれば、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、開状態又は閉状態になる右眼用の第1シャッターと、開状態又は閉状態になる左眼用の第2シャッターとを備える立体視用眼鏡において、表示装置により表示される映像との同期タイミングを示す同期信号を受信するステップと、前記受信された同期信号に従い、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を一方が開状態のときに他方が閉状態になるように切り替えるステップと、前記第1シャッターと前記第2シャッターとが前記同期信号に基づいて動作している場合において、ユーザーの特定の部位が所定の条件を満たす動きをしたとき、前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にするステップとを実行する立体視用眼鏡の動作方法としても把握されるものである。
この動作方法によっても、ユーザーが所定の動きをした場合に、第1シャッターと第2シャッターの双方が開状態になって明るい視界を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】表示システムの全体構成を示す図。
【図2】表示システムのハードウェア構成を示すブロック図。
【図3】第1シャッター及び第2シャッターの外観上の構成を示す図。
【図4】眼鏡の状態遷移を示す図。
【図5】眼鏡の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の実施の一形態である表示システム10の全体構成を示す図である。図1(a)は、同図に示す3次元直交座標系を定義した場合のZ軸の負方向側から表示システム10の外観を示す図であり、図1(b)は、このZ軸の正方向側から表示システム10の外観を示す図である。表示システム10は、立体視用の表示システムであって、表示装置100と眼鏡200とを備える。表示装置100と眼鏡200とは、無線で通信可能に接続されている。ここでは、表示システム10は、AV(audio-visual)ルームのような室内において、特定の1名のユーザーが映像を鑑賞するために使用されるものとする。また、ユーザーは、椅子やソファーなどに着座した状態で映像を鑑賞するものとする。なお、表示システム10は、図2に示す構成のほかに、音声を再生する構成(スピーカー等)や、ユーザーが遠隔操作するためのリモートコントローラーなどを備えていてもよい。
【0014】
表示装置100は、映像を表示する装置である。ここでいう映像は、主として動画像のことを想定しているが、静止画像を含んでもよい。また、表示装置100は、ここではスクリーンSCに映像を投射することによって表示するプロジェクターであるとする。眼鏡200は、ユーザーが立体視用の映像を鑑賞するときに装着する眼鏡状の器具である。
【0015】
図2は、表示システム10のハードウェア構成を示すブロック図である。表示装置100は、図2に示すように、信号取得部110と、画像処理部120と、表示部130と、制御部140と、通信部150とを備える。信号取得部110は、外部から映像信号を取得する手段である。信号取得部110は、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤーなどの再生装置や送信所(無線局)から、立体視が可能な映像信号を有線又は無線で取得する。画像処理部120は、信号取得部110により取得された映像信号に対して画像処理を実行する手段である。画像処理部120が実行する画像処理は、例えば、映像の画質(明るさ、コントラストなど)を調整する処理や、映像信号が表す映像に重ねて、又は当該映像に代えて、他の映像を表示させる処理などである。
【0016】
表示部130は、映像を表示する手段である。表示部130は、液晶素子や有機EL(Electro-Luminescence)素子などの表示素子によって構成される画素をマトリクス状に配置した表示パネルとその駆動回路とを有し、画像処理部120から供給される映像信号に応じた映像を表示する。表示部130は、表示装置100がプロジェクターである場合、光を射出する光源、光源から射出された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子(透過型の液晶パネル等)、光変調素子によって変調された光をスクリーンSCなどの投射面に対して投射する投射光学系などを含んで構成される。
【0017】
制御部140は、表示装置100の動作を制御する手段である。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリーを有し、プログラムに記述された手順で処理を実行することにより、画像処理部120や通信部150の動作を制御する。制御部140が実行する処理には、表示部130により表示される映像との同期タイミングを示す同期信号を映像信号に基づいて生成する処理が含まれる。
【0018】
通信部150は、同期信号を眼鏡200に送信する手段である。通信部150は、赤外線の発光素子を有し、制御部140により生成された同期信号を赤外線によって送信する。同期信号は、後述する第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉状態を決定するための信号であって、いずれかのシャッターを閉状態から開状態にし、又は開状態から閉状態にする命令を少なくとも含んでいる。
【0019】
眼鏡200は、図2に示すように、通信部210と、加速度センサー220と、記憶部230と、制御部240と、シャッター部250とを備える。通信部210は、赤外線の受光素子を有し、表示装置100から送信された同期信号を受信する手段である。また、通信部210は、受信した同期信号を制御部240に供給する。
【0020】
加速度センサー220は、ユーザーの特定の部位が移動したときの加速度を測定するセンサーである。加速度センサー220は、ここでは眼鏡200に内蔵されているもの(すなわち頭部の加速度を測定するもの)とするが、例えば、眼鏡200と有線又は無線で接続され、ユーザーの他の部位(腕、胴など)に装着できるようになっていてもよい。本実施形態において、加速度センサー220は、いわゆる3軸加速度センサーであり、重力方向(すなわち鉛直方向)の加速度と他の方向の加速度とを測定可能である。以下においては、鉛直方向をZ方向とし、これに直交する互いに異なる2方向をそれぞれX方向、Y方向とする。加速度センサー220は、その測定結果を示す加速度データを制御部240に供給する。
【0021】
記憶部230は、データを記憶する手段である。記憶部230は、例えばフラッシュメモリーなどによって構成され、制御部240が制御に用いるデータを記憶している。記憶部230が記憶するデータは、例えば、各種のパラメーターであり、ここには加速度や変位の比較に用いられる閾値が含まれる。
【0022】
制御部240は、眼鏡200の動作を制御する手段である。制御部240は、演算処理装置やメモリーを有し、プログラムに記述された手順で処理を実行することにより、シャッター部250の開閉状態を制御する。制御部240は、通信部210により受信される同期信号に加え、加速度センサー220から供給される加速度データを用いてシャッター部250の開閉状態を決定する。
【0023】
シャッター部250は、ユーザーの両眼に入射する光を制御する手段である。シャッター部250は、第1シャッター251と、第2シャッター252と、駆動部253とを有する。第1シャッター251及び第2シャッター252は、光を遮る状態(以下「閉状態」という。)と光を透過する状態(以下「開状態」という。)を切り替えることが可能である。第1シャッター251及び第2シャッター252は、例えば、液晶により開状態と閉状態を切り替える液晶シャッターであるが、開状態と閉状態を切り替えることが可能であれば、液晶によるものに限定されるわけではない。第1シャッター251は、右眼用のシャッターであって、第2シャッター252は、左眼用のシャッターである。
【0024】
駆動部253は、第1シャッター251及び第2シャッター252を駆動する手段である。駆動部253は、制御部240から供給される同期信号を解析し、第1シャッター251及び第2シャッター252のそれぞれを駆動する駆動信号を生成する。また、駆動部253は、このような同期信号に従った通常の動作に加え、後述する例外的な動作を実行する。
【0025】
図3は、第1シャッター251及び第2シャッター252の外観上の構成を示す図である。同図に示すように、第1シャッター251及び第2シャッター252は、通常の眼鏡のレンズに相当する部分に設けられ、ユーザーが装着したときに眼前に位置する。また、眼鏡200のその他の構成(記憶部230、制御部240など)は、フレームの部分やテンプルの部分に内蔵されている。
【0026】
表示システム10の構成は、以上のとおりである。ユーザーは、この構成の表示システム10を用いて、3D映像を鑑賞する。ユーザーは、眼鏡200が同期信号を受信できる位置において眼鏡200を装着し、3D映像を鑑賞する。3D映像を再生するとき、表示装置100は、右眼用の画像と左眼用の画像とを交互に表示する。眼鏡200は、表示装置100による表示に同期して、第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉状態を切り替える。
【0027】
図4は、眼鏡200の状態遷移を示す図である。眼鏡200は、同図に示す「同期モード」、「自走モード」、「スタンバイモード」の3種類の動作モードで動作し、第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉状態を制御することが可能である。同期モード、自走モード、スタンバイモードは、それぞれ、本発明の第1モード、第2モード、第3モードに相当する動作モードである。
【0028】
同期モードは、眼鏡200が同期信号に従って動作する場合の動作モードである。眼鏡200は、表示装置100から送信されている同期信号を受信できているときは、同期モードで動作する。同期モードにおいて、眼鏡200は、同期信号が示すタイミングで第1シャッター251及び第2シャッター252を交互に開閉する。すなわち、第1シャッター251及び第2シャッター252は、同期モードにおいては、一方が開状態になれば他方が閉状態になる、という動作を繰り返す。
【0029】
なお、同期モードにおいて、第1シャッター251及び第2シャッター252は、一方が開状態であるときに他方が必ず閉状態であるとは限らず、双方が閉状態(又は開状態)である期間が開閉状態の切り替え時に存在する場合がある。第1シャッター251及び第2シャッター252の切り替えタイミングは、表示部130の表示素子の応答性などによって異なり得る。
【0030】
自走モードは、同期モードで動作している場合において、何らかの理由によって同期信号の受信が途切れたときに、途切れる前に受信した同期信号に基づいて動作する場合の動作モードである。同期信号は、規則性を有しているため、ある程度の予測が可能である。自走モードにおいて、眼鏡200は、途切れる前に受信した同期信号の規則性に基づいて第1シャッター251及び第2シャッター252の切り替えタイミングを予測し、同期モードの場合と同じタイミングで動作する。自走モードがあることで、ユーザーは、同期信号が一時的に(ごく短期間だけ)欠落した場合に、その欠落によってその後の映像の視聴が妨げられないようにすることができる。
【0031】
なお、自走モードは、同期信号が途切れた後の所定期間に限って機能する動作モードである。自走モードで動作する期間のことを、以下においては「自走期間」という。同期信号が自走期間を超えて(すなわち長期間)受信できない場合というのは、同期信号が眼鏡200に到達しないくらいユーザーが表示装置100から離れた場合や、表示装置100において映像の再生が停止した場合などのように、第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉を継続する必要がない場合であることが多いためである。眼鏡200は、自走期間中に同期信号を再び受信できるようになると、自走モードから同期モードに移行する。
【0032】
スタンバイモードは、眼鏡200が同期信号によらないで動作する場合の動作モードであり、この点(同期信号に依存しない点)において、同期信号に基づいて動作する同期モード及び自走モードと異なる。スタンバイモードにおいて、眼鏡200は、第1シャッター251及び第2シャッター252の双方を開状態のままにし、ユーザーの視界の明るさを確保する。
【0033】
眼鏡200がスタンバイモードで動作するのは、同期モード又は自走モードにおいて、加速度データが所定の条件を満たした場合と、自走モードにおいて、同期信号が自走期間を超えて受信できなかった場合のいずれかである。また、眼鏡200は、電源の投入直後においても、スタンバイモードで動作する。眼鏡200は、その後、表示装置100から送信されている同期信号の受信に成功すると、スタンバイモードから同期モードに移行する。
【0034】
図5は、眼鏡200の動作例を示すフローチャートである。眼鏡200において、制御部240は、まず、加速度センサー220により測定された加速度データにより特定されるユーザーの動き(本実施形態においては、ユーザーの頭部の動き)が所定の条件を満たすか否かを判断する(ステップS1)。ここでいう条件は、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれの加速度の大きさ(絶対値)や、加速度に基づいて算出される各方向の変位の大きさによって定まるものであり、より具体的には、各方向の加速度(又は変位)が閾値よりも大きいか否かによって判断される。つまり、制御部240は、急速な動きや大幅な移動をした場合に、ユーザーが所定の条件を満たす動きをしたと判断する。
【0035】
なお、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれに適用される閾値は、同一の値である必要はなく、方向ごとに異なっていてもよい。例えば、Z方向の閾値(第2の閾値)は、他の方向の閾値(第1の閾値)よりも小さく設定されていてもよい。なぜならば、Z方向の変位、すなわち(頭部の)上下動は、着座した状態から起立する場合などに特有の動きであって、映像の鑑賞時には一般的な動きではないからである。
【0036】
制御部240は、ユーザーが所定の条件を満たす動きをしたと判断した場合には、同期信号の有無を問わず、第1シャッター251及び第2シャッター252の双方を開状態にする(ステップS6)。つまり、このときの動作モードは、スタンバイモードである。スタンバイモードになった場合、制御部240は、加速度データが所定の条件を満たさなくなり、かつ、同期信号が受信されるようになると、同期モードに移行する。
【0037】
一方、制御部240は、ステップS1の判断において、ユーザーの動きが所定の条件を満たさないと判断した場合には、同期信号の有無を判断する(ステップS2)。すなわち、制御部240は、同期信号が受信されているか否かを判断する。このとき、同期信号が受信されていれば、制御部240は、同期モードで動作し、同期信号に従って第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉状態を制御する(ステップS3)。
【0038】
また、制御部240は、同期信号が受信されていない場合には、同期信号が受信されていない期間が自走期間以下であるか否かを判断する(ステップS4)。同期信号が受信されていない期間が自走期間以下である場合、制御部240は、自走モードで動作する。すなわち、このとき制御部240は、直前に受信した同期信号に基づいて切り替えタイミングを予測し、同期モードの場合と同様の要領で第1シャッター251及び第2シャッター252の開閉状態を制御する(ステップS5)。
【0039】
また、制御部240は、ステップS5の処理によって自走モードで動作した場合において、同期信号が受信されていない期間が自走期間を超えたときには、自走モードからスタンバイモードに移行し、第1シャッター251及び第2シャッター252の双方を開状態にする(ステップS6)。
【0040】
なお、眼鏡200の動作は、図5に示した手順に限らず、例えば、加速度データが所定の条件を満たしたときに割り込み処理が実行され、この割り込み処理によって、動作モードが同期モードや自走モードからスタンバイモードに移行するようになっていてもよい。要するに、制御部240は、加速度データが所定の条件を満たしたときに動作モードをスタンバイモードにすることができればよい。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザーが所定の動き、すなわち、比較的大きな動作をした場合に、眼鏡200の動作モードをスタンバイモードにし、第1シャッター251及び第2シャッター252の双方を開状態にすることが可能である。したがって、眼鏡200を装着したユーザーは、比較的大きな動作をした場合には、それまでよりも明るい視界を得ることができる。
【0042】
ユーザーが上記のような動作をする場合というのは、何らかの異変を察知したり、不意の事態に驚いたりした場合であることが多い。あるいは、3D映像の鑑賞時に起立したりするのは、映像の鑑賞以外の目的による場合が多い。表示システム10によれば、3D映像の鑑賞時にユーザーが映像の鑑賞以外のことをしようとする場合に、映像の鑑賞時よりも視界を明るくすることができるため、映像の鑑賞以外の行為をしやすくすることが可能である。特に、本実施形態のようにプロジェクターを用いる場合には、映像の鑑賞時には室内の照明を暗くすることも多いため、本実施形態の動作はこのような環境下において特に適しているといえる。
【0043】
また、眼鏡200は、加速度データに基づいて動作することにより、加速度センサー220を備えない場合に比べ、スタンバイモードへの移行を早期に行うことが可能である。本実施形態によれば、同期信号を受信できている状態や、自走期間が満了していない状態であっても、同期モードや自走モードからスタンバイモードに移行することが可能である。
【0044】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限らず、以下に例示するさまざまな態様でも実施可能である。また、本発明は、必要に応じて、以下に示す変形例を複数組み合わせた態様でも実施することができる。
【0045】
(1)本発明のセンサーは、加速度センサー以外のセンサーであってもよい。本発明のセンサーは、ユーザーの特定の部位が回転する角度やその角速度を測定するためのセンサーであってもよい。つまり、本発明のセンサーは、ユーザーに取り付けられ、ユーザの動きと相関を有する物理量を測定するためのものであれば、測定する部位や測定される具体的な物理量は特に限定されない。
【0046】
また、本発明における物理量は、センサーによって測定される物理量そのものと、センサーによって測定される物理量(例えば加速度)に演算を施すことによって算出される他の物理量(例えば変位)とを含む。換言すれば、本発明における測定とは、センサーによって測定される物理量そのものを求めることと、当該物理量に基づいて他の物理量を求めることの双方を含むものである。
【0047】
(2)本発明において、動作モードは、同期モード(第1モード)、自走モード(第2モード)、スタンバイモード(第3モード)の3種類である必要はなく、例えば、自走モードを含まなくてもよい。また、本発明の動作モードには、第1モード〜第3モードのいずれとも異なる他の動作モードが含まれてもよい。
【0048】
(3)通信部150及び通信部210は、同期信号に加え、他の信号を送受信するように構成されていてもよい。ここでいう他の信号は、例えば、表示装置100により送信されている映像を識別する識別信号である。識別信号は、表示される映像が映画などである場合であれば、そのジャンルを示すものであってもよい。また、識別信号は、表示される映像において特定の事象が発生する場合に、その事象が発生するタイミングを示すものであってもよい。ここでいう事象とは、例えば、映像のコントラストの変化や、突然かつ大音量の音声などである。
【0049】
通信部150が識別信号を送信し、通信部210が識別信号を受信する場合において、眼鏡200は、通信部210により受信された識別信号に応じてスタンバイモードに移行するための条件(閾値等)を変化させてもよい。例えば、眼鏡200の制御部240は、特定の事象が発生するタイミングにおいては、それ以外のタイミングにおいて適用する閾値よりも大きい閾値を適用したり、適用する閾値を映像のジャンルによって変えたりすることが可能である。
【0050】
ユーザーは、映像の明るさが急に変化したり、急に大きな音が聞こえたりした場合には、驚いて身体を不意に動かしてしまうことがある。また、3D映像を視聴する場合のユーザーは、その映像の臨場感のために、自身に向かってくる(ように見える)物体を咄嗟によけるような動きをすることもある。識別信号によれば、ユーザーがこのような動きをすることが予想される映像やそのタイミングを特定することが可能である。そのため、眼鏡200は、識別信号を参照することで、ユーザーが不意の動きをしやすい場合には閾値等の条件を緩和し、映像の鑑賞に起因する不意の動きによってスタンバイモードに移行してしまうことを防ぐようにすることができる。
【0051】
(4)通信部150及び通信部210は、一方向の通信手段ではなく、双方向の通信手段であってもよい。つまり、通信部150及び通信部210は、いずれも、信号を送信及び受信する手段であってもよい。この場合において、表示装置100の通信部150は、ユーザーの動きが所定の条件を満たすことを示す信号(すなわち眼鏡200の動作モードがスタンバイモードになったことを示す信号)を受信してもよい。
【0052】
表示装置100は、かかる信号によってユーザーの動きが所定の条件を満たしたことを検知できる場合に、これに応じた動作を行うことも可能である。例えば、表示装置100は、眼鏡200の動作モードがスタンバイモードになり、第1シャッター251及び第2シャッター252が開状態になる場合に、それまで表示していた3D映像と異なる他の映像を表示することが可能である。ここにおいて、他の映像とは、いわゆる全白(すべての表示素子が最大の明るさを表示する状態)の画像であってもよい。このようにすれば、表示装置100が照明の代わりとして機能するため、室内を明るくすることが可能である。このような他の画像の表示は、室内の照明を暗くしている場合には特に有効である。
【0053】
また、他の画像には、ユーザーに伝達するためのメッセージが含まれていてもよい。かかるメッセージは、例えば、「あなたが大きく動いたことを検知したため、映像を自動的に停止しました。」といったような、映像が停止したことやその理由をユーザーに知らせるためのものであってもよいし、映像の再生を再開させるための手順をユーザーに知らせるためのものであってもよい。
【0054】
あるいは、表示装置100は、DVDプレーヤーなどの再生装置を内蔵するなどして、映像の再生や停止を制御できる場合にあっては、ユーザーの動きが所定の条件を満たしたときに、映像の表示を一時停止してもよい。この場合、表示装置100は、一時停止した映像に重なるようにして上記のメッセージを表示してもよい。また、表示装置100は、一時停止後にユーザーから所定の操作を受け付けた場合には、映像の再生を再開するようにしてもよい。このようにすれば、スタンバイモード中に映像の再生が進んでしまわないようにすることが可能である。
【0055】
(5)本発明の閾値は、ユーザーが変更可能であってもよい。ユーザーが閾値を変更するための構成は、例えば、ユーザーが操作するための設定手段(ボタンやツマミなど)を眼鏡200に設けることによって実現可能である。このようにすれば、スタンバイモードに移行するための条件をユーザー自身で設定できるようになるため、ユーザーが望まない条件(動き)によってスタンバイモードに移行することを防ぐことが可能である。
【0056】
また、このような設定手段は、閾値だけでなく、ユーザーの動きに応じてスタンバイモードに移行するか否かをユーザー自身に設定させる手段であってもよい。このようにすれば、ユーザーの動きが検出されても、勝手に(すなわちユーザーの意志に反して)スタンバイモードに移行しないようにすることができる。
【0057】
(6)本発明の表示装置は、スクリーンに画像を投射するプロジェクターに限定されず、パーソナルコンピューターなどのモニター装置やテレビ受像機であってもよい。この場合の表示パネルとしては、液晶表示パネルのほか、PDP(Plasma Display Panel)、OLED(Organic Light-Emitting-Diode)、OEL(Organic Electro-Luminescence)等と呼ばれる有機EL表示パネルなどを用いることができる。また、本発明の表示装置は、AVルームに設置するような据え置き型のものではなく、携帯型の表示装置であってもよい。
【0058】
また、本発明の表示装置をプロジェクターによって構成する場合、その表示方式は、上述した実施形態のようにスクリーンの正面側(ユーザから見える側)に光を投射することによって表示するものに限らない。例えば、本発明のプロジェクターの表示方式は、スクリーンの背面側(ユーザーからは見えない側)から光を投射し、スクリーンがその光を透過することによってユーザーが映像を視認できるものであってもよい。
【0059】
さらに、本発明の表示装置をプロジェクターによって構成する場合、その光変調素子は、透過型の液晶パネル以外のものであってもよい。例えば、光変調素子は、透過型ではなく反射型の光変調素子(反射型の液晶パネルなど)とすることも可能である。また、光変調素子は、DMD(Digital Micromirror Device)であってもよい。DMDとは、画素として機能する微小なミラーをマトリクス状に配列し、入射した光の射出方向を映像信号に応じて変化させる素子のことである。
【符号の説明】
【0060】
10…表示システム、100…表示装置、110…信号取得部、120…画像処理部、130…表示部、140…制御部、150…通信部、200…眼鏡(立体視用眼鏡)、210…通信部、220…加速度センサー、230…記憶部、240…制御部、250…シャッター部、251…第1シャッター、252…第2シャッター、253…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開状態又は閉状態になる右眼用の第1シャッターと、
開状態又は閉状態になる左眼用の第2シャッターと、
表示装置により表示される映像との同期タイミングを示す同期信号を受信する通信部と、
ユーザーの動きと相関を有する物理量を測定するためのセンサーと、
前記通信部により受信された同期信号に従って、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を一方が開状態のときに他方が閉状態になるように切り替えるとともに、測定された前記物理量により特定される前記ユーザーの動きが所定の条件を満たす場合に前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にする制御部と
を備える立体視用眼鏡。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通信部により受信された同期信号に従って前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を切り替える第1モードと、
前記同期信号の受信が途切れた場合に、途切れる前に受信した前記同期信号に基づいて切り替えタイミングを予測し、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を所定期間切り替える第2モードと、
前記第1モード又は前記第2モードで動作している場合において、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たしたとき、前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にする第3モードと
により前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の立体視用眼鏡。
【請求項3】
前記センサーは、
鉛直方向の加速度及び鉛直方向と異なる他の方向の加速度を測定し、
前記制御部は、
前記他の方向の加速度が第1の閾値よりも大きい場合に、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たすと判断するとともに、前記鉛直方向の加速度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値よりも大きい場合に、前記ユーザーの動きが前記所定の条件を満たすと判断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の立体視用眼鏡。
【請求項4】
前記通信部は、
前記同期信号と、前記表示装置により表示される映像を識別する識別信号とを受信し、
前記制御部は、
前記通信部により受信された識別信号に応じて前記所定の条件を変化させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡と、
前記立体視用眼鏡の動作に同期するように立体視用の映像を表示する表示装置と
を備える表示システム。
【請求項6】
前記表示装置は、
前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方が開状態になる場合に、前記映像の表示を一時停止し、又は当該映像と異なる他の映像を表示する
ことを特徴とする請求項5に記載の表示システム。
【請求項7】
開状態又は閉状態になる右眼用の第1シャッターと、開状態又は閉状態になる左眼用の第2シャッターとを備える立体視用眼鏡において、
表示装置により表示される映像との同期タイミングを示す同期信号を受信するステップと、
前記受信された同期信号に従い、前記第1シャッターと前記第2シャッターの開閉状態を一方が開状態のときに他方が閉状態になるように切り替えるステップと、
前記第1シャッターと前記第2シャッターとが前記同期信号に基づいて動作している場合において、ユーザーが所定の条件を満たす動きをしたとき、前記第1シャッターと前記第2シャッターの双方を開状態にするステップと
を実行することを特徴とする立体視用眼鏡の動作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−62570(P2013−62570A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197985(P2011−197985)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】