説明

立体視用眼鏡検査装置および立体視用眼鏡検査方法

【課題】立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応でき、ノイズ信号に対する耐久性や開閉動作の安定性などのシャッター眼鏡の品質を確認するための検証情報を効率良く収集ことができる立体視用眼鏡検査装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の立体視用眼鏡検査装置は、シャッター眼鏡200のシャッター210の開閉を制御するシャッター制御信号の出力し、シャッター眼鏡200の左右のレンズのそれぞれに向けて発光する送信部140と、送信部140が発光する光を検出する検出部150と、送信部140が出力するシャッター制御信号とその出力時刻および検出部150の検出結果に基づくシャッター210の開閉状態変化と開閉状態変化の時刻から成る検証情報を出力する入出力部160を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に表示された画像を視聴するために使用する立体視用眼鏡の検査技術に関するものである。特に、立体視用眼鏡のシャッターの開閉機能に係る検査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示システムにおける一分野として、立体表示装置と立体視用眼鏡(以下、「シャッター眼鏡」と略記)を使用した立体表示システムがある。この立体表示システムは、立体表示装置に交互に表示される左眼用画像および右眼用画像に同期して、シャッター眼鏡に配置された左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉を制御することで、立体画像を視聴可能にするものである。
【0003】
この立体表示システムでは、シャッター眼鏡の左右のシャッターを交互に表示される左眼用画像および右眼用画像と同期させて開閉する技術が重要であり、シャッター眼鏡のシャッター開閉機能の品質を所定レベルに維持する必要がある。
【0004】
そのため、従来の立体表示システムにおいて、シャッター眼鏡のシャッター開閉機能を確認するテスターが提案されている(例えば、特許文献1の段落0125参照)。この従来の技術は、送信機を備えたテスターから同期信号を含むテスト信号をシャッター眼鏡に送信し、テスト信号に応答してシャッターが開閉するか否かをユーザーが視認するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の立体表示システムには、シャッター開閉動作をユーザーが視認できることが開示されているに過ぎない。一方、複数の立体表示装置に対応可能なシャッター眼鏡を生産する場合には、立体表示装置からの開閉指示信号に基づいてシャッターが開閉するか否かの確認に加えて、立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応できること、ノイズ信号に対する耐久性、開閉動作の安定性などの品質確認が必要となる。また、シャッター眼鏡の品質確認を効率良く実施することも必要となる。そのため、シャッター眼鏡の生産工程に実用性の高い検査装置を導入することが求められている。
【0007】
本発明は、立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応でき、ノイズ信号に対する耐久性、開閉動作の安定性などのシャッター眼鏡の品質確認を効率良く実施するための検証情報を収集できる立体視用眼鏡検査装置および立体視用眼鏡検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体視用眼鏡検査装置は、立体視用眼鏡の左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉を制御する複数のシャッター制御信号を出力するシャッター制御信号出力手段と、立体視用眼鏡の左眼用レンズに向けて発光する第1発光手段と、第1発光手段が発光する光を検出する第1検出手段と、立体視用眼鏡の右眼用レンズに向けて発光する第2発光手段と、第2発光手段が発光する光を検出する第2検出手段と、第1検出手段および第2検出手段に基づいて左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉状態の変化を検出するシャッター開閉変化検出手段と、シャッター制御信号出力手段が出力する制御信号の種類と出力時刻からなるシャッター制御信号情報およびシャッター開閉変化検出手段の検出結果に基づく左眼用シャッターまたは右眼用シャッターの開閉状態と開閉状態の変化時刻からなるシャッター開閉情報を検証情報として出力する検証情報出力手段とを有する。
【0009】
このような構成により、出力された検証情報を利用して、右眼用および左眼用シャッターの開閉状態と開閉タイミング、シャッター制御信号に対する応答速度など、シャッター眼鏡の品質確認に必要な情報を入手することができる。これにより、立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応でき、ノイズ信号に対する耐久性、開閉動作の安定性などの品質確認を効率良く実施することができる。
【0010】
また、本発明の立体視用眼鏡検査装置は、検証情報出力手段が出力する検証情報を記憶する記憶手段を有する。
【0011】
このような構成により、記憶手段に記憶された検証情報を利用して検査装置単独でシャッター眼鏡の品質を検証することができる。
【0012】
また、本発明の立体視用眼鏡検査装置は、検証情報出力手段が検証情報を外部の記憶手段に出力する。
【0013】
このような構成により、外部の記憶手段に記憶された検証情報を検査装置とは異なるパソコン等で利用することができ、シャッター眼鏡の品質の検証を検証情報の収集と独立して行うことができる。
【0014】
また、本発明の立体視用眼鏡検査装置は、シャッター制御信号として左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉と無関係な信号を含む。
【0015】
このような構成により、シャッター眼鏡のノイズ信号に対する耐久性などを確認するための検証情報を収集することができる。
【0016】
また、本発明の立体視用眼鏡検査装置は、シャッター制御信号の波長が700nmから1100nmの赤外光である。
【0017】
このような構成により、標準的な立体表示装置用のシャッター眼鏡の品質確認をするための検証情報を収集することができる。
【0018】
また、本発明の立体視用眼鏡検査装置は、第1発光手段および第2発光手段が発光する光の波長が立体表示装置の色特性に応じて設定される。
【0019】
このような構成により、色特性の異なる各種立体表示装置に対応した各種シャッター眼鏡の品質確認をするための検証情報を1つの検査装置で収集することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応でき、ノイズ信号に対する耐久性や開閉動作の安定性などのシャッター眼鏡の品質を確認するための検証情報を効率良く収集できる立体視用眼鏡検査装置および立体視用眼鏡検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】立体表示システムを構成する立体表示装置およびシャッター眼鏡の概観を示す斜視図
【図2】立体表示システムにおける立体表示装置およびシャッター眼鏡の動作を示すタイミングチャート
【図3】本発明の実施の形態1における立体視用眼鏡検査装置を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における載置台に立体視用眼鏡が載置された状態を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における載置台に立体視用眼鏡が載置された状態の異なる構成例を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における検査システムのシステム構成図
【図7】本発明の実施の形態1における検査システムの検査画面の遷移図
【図8】本発明の実施の形態1におけるシャッター制御信号とシャッターの開閉状態変化との関係を示すタイミングチャート
【図9】本発明の実施の形態1における検証情報のデータ構造の一例を示す図
【図10】本発明の実施の形態1における複数の検査を一度の操作で行う処理手順を示すフローチャート
【図11】本発明の実施の形態1における検証情報の取得手段を示すフローチャート
【図12】本発明の実施の形態1におけるセンサーカバーの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の立体視用眼鏡検査装置の実施の形態を図1〜図8を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態1)
まず、立体表示システムの動作について、図1、図2を用いて説明する。
【0024】
図1は、立体表示システムを構成する立体表示装置10およびシャッター眼鏡200の概観を示す斜視図である。
【0025】
立体表示装置(例えば、プラズマディスプレイ)10は、LED11および表示部12を備えている。立体表示装置10は、表示部12に左眼用画像(以下、「L画像」と略記)と右眼用画像(以下、「R画像」と略記)を交互に表示し、LED11からはL画像およびR画像の表示開始タイミングを示すV同期信号に基づいて生成されるシャッター眼鏡200のシャッター切り替えタイミングを示す同期信号(以下、「シャッター制御信号」と略記)をシャッター眼鏡200に対して送信する。
【0026】
シャッター眼鏡200は、左眼用シャッター(以下、「左シャッター」と略記)210a、右眼用シャッター(以下、「右シャッター」と略記)210bおよび赤外線受光素子221を備えている。シャッター眼鏡200は、立体表示装置10のLED11から送信されるシャッター制御信号を赤外線受光素子221で受信し、立体表示装置10に表示されるL画像およびR画像と同期するように、左シャッター210aおよび右シャッター210b(以下、左シャッター210aと右シャッター210bの2つのシャッターを総称して「シャッター210」と略記)の開閉を制御する。
【0027】
図2は、図1に示す立体表示システムにおける立体表示装置10とシャッター眼鏡200の動作を示すタイミングチャートである。
【0028】
図2に示すように、立体表示装置10は、表示部12にL画像とR画像を交互に表示しているとき、各画像の表示開始タイミングであるV同期信号に基づくシャッター制御信号を生成し、LED11から出力する。これにより、シャッター眼鏡200の左シャッター210aおよび右シャッター210bの開閉制御を行う。
【0029】
例えば、L画像が表示されると、立体表示装置10は、シャッター眼鏡200の左シャッター210aを開いて右シャッター210bを閉じることを指示するシャッター制御信号を出力する。シャッター眼鏡200は受信したシャッター制御信号に基づいて左シャッター210aを開き(透過状態)、右シャッター210bを閉じる(遮蔽状態)。この結果、立体表示装置10にL画像が表示されるときには、利用者はL画像を左眼だけで見ることになる。
【0030】
同様に、R画像が表示されると、立体表示装置10は、シャッター眼鏡200の右シャッター210bを開いて左シャッター210aを閉じることを指示するシャッター制御信号を出力する。シャッター眼鏡200は受信したシャッター制御信号に基づいて右シャッター210bを開き(透過状態)、左シャッター210aを閉じる(遮蔽状態)。この結果、立体表示装置10にR画像が表示されるときには、利用者はR画像を右眼だけで見ることになる。
【0031】
以後、同様の手順で、L画像とR画像の表示の切り替えのタイミングと同期させてシャッター眼鏡200の左シャッター210aと右シャッター210bの切り替えが行われる。これにより、利用者は、シャッター眼鏡200を通して立体表示装置10に表示される画像を立体的に視認することができる。
【0032】
次に、本実施の形態1における立体視用眼鏡検査装置100を使用した検査システムについて、図3〜図8を用いて説明する。
【0033】
図3は、立体視用眼鏡検査装置100を示す斜視図であり、図4はシャッター眼鏡載置台(以下、「載置台」と略記)300にシャッター眼鏡200が載置された状態を示す図である。
【0034】
図3に示すように、立体視用眼鏡検査装置100は、送信部140、検出部150、接続部170、操作部180および表示部190を備えており、図4に示すように、送信部140と検出部150は載置台300に配置されている。
【0035】
図6は、図3で示した立体視用眼鏡検査装置100と図4に示したシャッター眼鏡200が載置される載置台300とから成る検査システムのシステム構成図である。
【0036】
以下に、図6を用いて検査システムの各構成要素について説明する。
【0037】
制御信号生成部111は、シャッター眼鏡200のシャッター210の開閉を制御するためのシャッター制御信号の生成し、送信制御部130に出力する。
【0038】
検証情報処理部112は、検出部150からの検出結果を検出時刻と関連付けた検証情報を作成する。
【0039】
記憶部120は、シャッター眼鏡210の検査に必要なプログラムやデータなどを記憶する。
【0040】
送信制御部130は、信号処理部110の制御信号生成部111が生成したシャッター制御信号を送信部140に出力する。
【0041】
送信部140は、送信制御部130からのシャッター制御信号をLED141から出力する。また、シャッター210の開閉状態を検出するための光をLED142、143から発光する。
【0042】
検出部150は、送信部140のLED141から出力されるシャッター制御信号を受信するためにシャッター眼鏡200に配置された光検出器(以下、「PD」と略記)221と、送信部140のLED142、143からの光を受光するために載置台300に配置されたPD152、153とを備える。
【0043】
尚、LED141の波長は、700nmから1100nmの範囲にある赤外線であるとする。その理由は、LED141の波長は、PD221の検出波長に対応したものである必要があり、PD221の検出中心波長は、一般的に、700nmから1100nmの範囲にある。
【0044】
接続部170は、立体視用眼鏡検査装置100の側面部に外部記憶装置(例えば、USBメモリ)接続用およびネットワーク接続用の接続端子を備える。これにより、立体視用眼鏡検査装置100にUSBメモリ410やネットワークシステム420を接続して検証情報を出力することができ、場所を限定することなくシャッター眼鏡200の品質確認を行うことができる。なお、接続部170は、シャッター眼鏡200の電池寿命を確認するために、シャッター210の開閉を直接操作する開閉信号をシャッター眼鏡200に出力する図3に示したスイッチ制御線101をさらに備えても良い。
【0045】
操作部180は、立体視用眼鏡検査装置100の上面にスイッチ1〜3(SW1〜3)を、側面部にロータリースイッチ(RSW)を備える。SW1はテストパターンの切り替え用スイッチであり、左右のシャッターの開閉順序を定義されたパターンを切り替えるものである。SW2およびSW3はそれぞれ決定ボタンおよび戻りボタンであり、テスト条件の決定および取消(1つ前の状態に戻す)を行うためのものである。RSWはテスト時間の切り替え用スイッチであり、テスト時間を16段階で切り替えるものである。なお、電源のON/OFFなど他の操作を行うためのボタンやスイッチについての説明および図示は省略する。
【0046】
表示部190は、立体視用眼鏡検査装置100の上面に配置された液晶パネル191と3つの動作確認用LED192〜194を有する。
【0047】
載置台300は、図4に示すように、基板310にシャッター眼鏡固定部材320a〜320cを配置することで、シャッター眼鏡200を所定の位置に載置するものである。また、基板310には、シャッター眼鏡200を載置したときにシャッター210の前側(表側)にシャッター210に向かって光を発光するためのLED142、143が配置され、シャッター210の後側(裏側)にはLED142、143の発光する光を検出するためのPD152、153が配置される。さらに、シャッター眼鏡200のPD221に対してシャッター制御信号を出力するLED141がシャッター眼鏡200の前側に所定距離だけ離して配置される。
【0048】
ところで、図5は、図4に示される載置台300の、異なる構成例を示している。図4と同じ構成要素には、同一の番号を付与している。図5に示す載置台300においては、LED141、142、143、また、PD152、153にセンサカーバーを装着したものである。このように、LED、PDの一方、または両方にセンサーカバーを装着することで、外光がセンサーに入り込み、検査結果がばらついたり不正確になることを防ぐことが可能になる。特に、シャッター眼鏡200にシャッター制御信号を送信するLED141は、シャッターの開閉状態を検出するPD152,153と略対向する位置に配置されるため、制御信号がPD152、153に混入しやすいという課題があり、このセンサーカバーは、この課題を防止するのに有効である。このセンサーカバーは、例えば図12に示すようなものである。図12は、砲弾型のLEDあるいはPDに、直接装着しうる樹脂製の円筒形状のもので、光の放射方向や受光範囲を限定するのに効果がある。尚、このセンサーカバーの例は一例であり、LEDやPDの形状によって適切に変更されるものであり、また、センサーとセンサーの間に「ついたて」を立てるようなものであっても、同様の効果を期待できる。
【0049】
次に、立体視用眼鏡検査装置100によるシャッター眼鏡200の検査の詳細を、図7〜図8を用いて説明する。
【0050】
図7は、本実施の形態1の検査システムにおける検査画面の遷移図である。
【0051】
図7に示すように、立体視用眼鏡検査装置100が起動されると、表示部190に画面Aが表示される。
【0052】
操作者はSW1を操作して複数のテストパターンの中から、例えば、「3D−MODE 120Hz」を選択してSW2で決定すると、画面Aが画面Bに変わる。テストパターンの選択を間違えた場合には、画面Bが表示されているときにSW3で取り消すと画面Aに戻ることができる。
【0053】
次に、RSWを操作してテスト時間として、例えば、「1」(1分)を選択してSW2で決定すると、画面Bが画面Cに変わる。
【0054】
この二つの選択操作により、「3D−MODE 120Hz」のテストパターンで1分間検査するように設定できる。なお、テスト時間の選択を間違えた場合にも、画面Cが表示されているときにSW3で取り消すと画面Bに戻ることができる。
【0055】
画面Cで表示されたテストパターン、検査時間で問題がなければ、SW2で決定してテストを開始することができる。
【0056】
テストの進行に伴って画面表示は画面D〜画面Eと変化し、テストが終了すると画面Fが表示される。
【0057】
図8は、本実施の形態1の検査システムにおけるシャッター制御信号とシャッターの開閉状態変化との関係を示すタイミングチャートである。
【0058】
図8に示すように、左シャッター210aは、時刻T1におけるコマンドA(左シャッターオープン)の出力および時刻T2におけるコマンドB(左シャッタークローズ)の出力に対して、時刻t1に実際の開状態および時刻t2に実際の閉状態となっている。同様に、右シャッター210bは、時刻T3におけるコマンドC(右シャッターオープン)および時刻T4におけるコマンドD(右シャッタークローズ)に対して、時刻t3に実際の開状態および時刻t4に実際の閉状態となっている。この場合、例えば、時刻T1に対する時刻t1の遅れ(t1−T1)が、シャッター制御信号に対するシャッター眼鏡200のシャッター開閉の応答時間の規格値に適合しなければ、検査対象のシャッター眼鏡200はNGと判定される。
【0059】
なお、図8では、「コマンドA→コマンドB→コマンドC→コマンドD」というテストパターンを用いたが、本立体視用眼鏡検査装置で実施するテストパターンは、コマンドの数やその順序によって限定されるものではない。コマンドの順序を変えたり、他に規定されているコマンドを追加したりなど、検査の目的に応じて任意のテストパターンを利用することができる。
【0060】
また、図8における左眼用および右眼用のシャッターの開閉状態は、矩形的に変化するものとして示しているが、シャッターの開閉状態は通常滑らかに変化するものであるため、シャッターの開閉状態をPD152、153の出力をコンパレータ等の電気的な処理(図示せず)によって二値化した結果を信号処理部110に取り込んでも良い。また、PD152、153の出力波形をADコンバータ経由で信号処理部110に取り込み、信号処理部110内部で、開閉状態を意味する二値化を行うようにしても良い。
【0061】
図9は、検査結果である検証情報のデータ構造の一例である。
【0062】
図9に示すように、検証情報は、ID(例えば、正の整数)と、コマンド(例えば、コマンドA(左シャッターオープン))またはシャッター開閉状態変化(例えば、状態L1(左シャッターが閉状態から開状態に変化))と、コマンドを出力した時刻またはシャッター開閉状態変化の時刻の3つの値を組としたデータで表わされる。なお、この検証情報はCSV形式のテキストファイル等として、USBメモリ410などの外部記憶装置に保存されたり、ネットワーク経由でサーバーに送信される。
【0063】
図10、図11は、検証情報の取得手順を示すフローチャートである。
【0064】
なお、図10、図11に示す例では、図8のタイミングチャートを得たテストパターン「3D−MODE 120Hz」を使用するものとする。
【0065】
まず、図10を用いて、複数の検査を一度の操作で行う処理の流れについて説明する。
【0066】
立体視用眼鏡検査装置100が起動して検査が開始されると、シャッター210に向けてLED142、143が常時発光する(ステップ11、S11)。
【0067】
ステップ12(S12)で、シャッター眼鏡200の電源がON状態であることを確認する。これは例えば、LCD画面191に、確認要求を表示しても良いし、スイッチ制御線101によって、立体視用眼鏡検査装置100が、シャッター眼鏡200の電源状態を制御してもよい。
【0068】
続けて、予定された検査を全て実行したかどうかを判断し、まだ実行すべき検査が残っている場合、所定の時間、制御コマンドの発光を停止し、シャッター眼鏡の動作がいったん停止していることを確認する処理を行うステップ13(S13)に移る。これは、シャッター眼鏡200が、制御コマンド受信が途切れても、途切れる以前のシャッター開閉動作を継続する機能(以下、自走動作と略記)を備えている場合、異なる制御コマンドを連続送信して検査を行うと、メガネの動作が不安定になったり、図11で説明するコマンド送信とシャッター開閉の検出が混乱するなどして、正しく検査が行えないことを防ぐためのものである。このときの、制御コマンドの発光の停止時間は、検査を行うシャッター眼鏡200の自走動作継続時間よりも長く、設定する必要があり、各機器の時間計測の誤差を考慮して、自走動作継続時間の2倍程度に設定される(設定方法は、記載せず)ことが望ましい。その後、選択・設定された検査を実施するステップ14(S14)に移る。
【0069】
ステップ14(S14)で実施される検査終了後、再び、予定された検査を実行したかどうかの判定を行い、まだ実行すべき検査が残っていれば、再び、ステップ13(S13)に移り、予定された検査が全て終了していれば、ステップ19(S19)にうつり、LED142と143を消灯し、検査を終了する。
【0070】
尚、図10で説明した、「予定された検査」とは、1回の操作で、複数個の検査を行うものであり、例えば、制御コマンドの間隔や種類、組み合わせなど、条件を様々に変えた検査を効率的に行うものである。
【0071】
次に、図11を用いて、連続的に行われる検査の中の、一つ一つの検査の処理の流れについて説明する。
【0072】
ステップ21(S21)で、シャッター眼鏡200の左シャッター210aを開くことを指示するコマンドAを送信部140のLED141から出力し、ID「1」とコマンドAとコマンドAを出力した時刻T1を組にしたデータを記録してステップ22(S22)に移る。
【0073】
ステップ22(S22)で、検出部150のPD152がLED142からの光を検出することで状態L1(左シャッター210aが閉状態から開状態に変化)になったと判定し、ID「2」と状態L1と状態L1になった時刻t1を組にしたデータを記録して、ステップ23(S23)に移る。
【0074】
ステップ23(S23)で、シャッター眼鏡200の左シャッター210aを閉じることを指示するコマンドBを送信部140のLED141から出力し、ID「3」とコマンドBとコマンドBを出力した時刻T2を組にしたデータを記録してステップ24(S24)に移る。
【0075】
ステップ24(S24)で、検出部150のPD152がLED142からの光を検出しなくなることで状態L2(左シャッター210aが開状態から閉状態に変化)になったと判定し、ID「4」と状態L2と状態L2になった時刻t2を組にしたデータを記録して、ステップ25(S25)に移る。
【0076】
ステップ25(S25)で、シャッター眼鏡200の右シャッター210bを開くことを指示するコマンドCを送信部140のLED141から出力し、ID「5」とコマンドCとコマンドCを出力した時刻T3を組にしたデータを記録してステップ26(S26)に移る。
【0077】
ステップ26(S26)で、検出部150のPD153がLED143からの光を検出することで状態R1(右シャッターが閉状態から開状態に変化)になったと判定し、ID「6」と状態R1と状態R1になった時刻t3を組にしたデータを記録して、ステップ27(S27)に移る。
【0078】
ステップ27(S27)で、シャッター眼鏡200の右シャッター210bを閉じることを指示するコマンドDを送信部140のLED141から出力し、ID「7」とコマンドDとコマンドDを出力した時刻T4を組にしたデータを記録してステップ28(S28)に移る。
【0079】
ステップ28(S28)で、検出部150のPD153がLED143からの光を検出しなくなることで状態R2(右シャッター210bが開状態から閉状態に変化)になったと判定し、ID「8」と状態R2と状態R2になった時刻t4を組にしたデータを記録し、検査の経過時間が所定時間経過してなければステップ21(S21)に戻って検証情報の取得を継続し、所定時間経過していればステップ29(S29)に移って検証情報の取得を終了する。
【0080】
このように取得した検証情報を用いたシャッター眼鏡200の良否の検証は、各シャッター制御コマンドに対して、左右のシャッター210a、210bが仕様どおりに開閉動作しているか、さらに、各シャッター制御コマンドに対するシャッター眼鏡200の応答時間の遅れである(t1−T1)、(t2−T2)、(t3−T3)、(t4−T4)を計算し、これらの値が規格の範囲内であるかどうかを判定することで行われる。
【0081】
尚、図11に示したフローチャートでは、検査時間が所定の時間経過したことを終了条件にしているが、所定の回数、制御コマンドを送信したことを、終了条件にしてもよく、また、可否判定の結果が、所定の回数、「不適合」の判定になってことをもって、終了条件にすることもできる。
【0082】
尚、図9、図11で説明した、時刻t1、t2、t3、t4、T1,T2,T3,T4は、通常の絶対時刻であってもよいし、あるいは、立体視用眼鏡検査装置100内部で起動・計測する相対的な時刻であってもよく、比較する時刻間の間隔が必要精度で正確に算出できるものであれば、本発明は、時刻定義の内容に限定されない。 なお、実施の形態1では、立体視用眼鏡検査装置100を操作するために、操作部180にSW1〜SW3およびRSWの4つのスイッチを搭載する場合について説明をしたが、立体視用眼鏡検査装置100を操作できる手段であればこれに限られるものではない。例えば、リモコンなどのように立体視用眼鏡検査装置100を遠隔操作できるような構成にしても良い。
【0083】
また、実施の形態1では、立体視用眼鏡検査装置100が、選択されたテストパターンの情報などを表示するための液晶パネル191と立体視用眼鏡検査装置100の動作確認用のLED192〜194から構成される表示部190を有する場合について説明したが、検査に必要な情報表示ができる手段であればこれに限るものではない。例えば、立体視用眼鏡検査装置100にこれとは別体の表示装置が接続されるような構成にしても良い。
【0084】
また、検証情報をUSBなどの外部記憶手段に記憶して、立体視用眼鏡検査装置とは異なるPC等で検証情報を用いた検証を行っても良いし、立体視用眼鏡検査装置に検証情報の記録手段と検証用プログラムを持たせて、立体視用眼鏡検査装置単体で検証を行えるようにしても良い。
【0085】
なお、シャッターの開閉を制御する信号が途切れてもシャッターの開閉状態が一定時間保持されることを確認するために、シャッターの開閉を制御する信号が途切れたことを意味する停止信号をシャッター制御信号に含めて検査をしても良い。
【0086】
また、本実施の形態1では、LED141からは、制御コマンドが送信されるものとして説明したが、制御コマンドだけではなく、制御コマンドとは異なる信号波形を「ノイズ」として送信し、「ノイズ」を受信したときのシャッター眼鏡200のシャッター開閉動作の安定性を検査することもできる。この場合、LED141は、ひとつである必要はなく、様々な中心波長をもつ複数のLEDを併設し、より実使用状態に近い「ノイズ」を、照射してもよい。
【0087】
また、本実施の形態1では、一連の検査において、シャッター眼鏡200の電源制御状態の確認は、一度であるという説明をおこなったが(図10のステップ12(S12))、本発明は、この制限によらないものとする。例えば、電池寿命を検査する場合、連続動作する場合の動作だけでなく、動作状態と電源オフ状態を交互に行うことで、電池寿命を検査することもあり、その場合、ツールが、シャッターの動作停止を検出するまで、複数回電源操作を行うことになる。また、本実施の形態1では、図3のスイッチ制御線101によって電源の入り切りを行う説明を行ったが、本発明は、この制限に限定されるものではなく、なんらかの機構的な仕組みによって、シャッター眼鏡200の電源状態を制御するものであっても良い。
【0088】
この様な処理により、様々なテストパターンにおいて、シャッター眼鏡200の動作を検査することができる。
【0089】
また、検証情報の改ざんを防ぐために、検証情報の改ざんを検出できる情報(例えば、検証情報のチェックサムなど)を付加したり、検証情報自体を暗号化するようにしても良い。
【0090】
この様な処理により、検査結果の改変を検出・防止することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の立体視用眼鏡検査装置および立体視用眼鏡検査方法は、立体表示装置の機種や特性のバラツキ等に対応でき、ノイズ信号に対する耐久性や開閉動作の安定性などのシャッター眼鏡の品質を確認するための検証情報を効率良く収集するためのシャッター眼鏡の検査装置および検査方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 検査システム
10 立体表示装置
11,141,142,143 LED(発光素子)
12 表示部
100 立体視用眼鏡検査装置
101 スイッチ制御線
110 信号処理部
120 記憶部
130 送信制御部
140 送信部
150 検出部
152,153,221 PD(光検出器)
160 入出力部
170 接続部
180 操作部
190 表示部
200 シャッター眼鏡
210 シャッター
210a 左シャッター
210b 右シャッター
220 受信部
230 開閉制御部
300 載置台
310 基板
320a,320b,320c シャッター眼鏡固定部材
330 センサーカバー
410 USBメモリ
420 ネットワークシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体視用眼鏡の左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉を独立に制御する複数のシャッター制御信号を出力するシャッター制御信号出力手段と、
立体視用眼鏡の左眼用レンズに向けて発光する第1発光手段と、
前記第1発光手段が発光する光を検出する第1検出手段と、
立体視用眼鏡の右眼用レンズに向けて発光する第2発光手段と、
前記第2発光手段が発光する光を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段に基づいて前記左眼用シャッターおよび前記右眼用シャッターの開閉状態の変化を検出するシャッター開閉変化検出手段と、
前記シャッター制御信号出力手段が出力する制御信号の種類と出力時刻からなるシャッター制御信号情報および前記シャッター開閉変化検出手段の検出結果に基づく前記左眼用シャッターまたは前記右眼用シャッターの開閉状態と開閉状態の変化時刻からなるシャッター開閉情報を検証情報として出力する検証情報出力手段と
を有する立体視用眼鏡検査装置。
【請求項2】
前記検証情報出力手段が出力する検証情報を記憶する記憶手段を有する請求項1記載の立体視用眼鏡検査装置。
【請求項3】
前記検証情報出力手段が外部の記憶手段に前記検証情報を出力する請求項1記載の立体視用眼鏡検査装置。
【請求項4】
前記シャッター制御信号として前記左眼用シャッターおよび前記右眼用シャッターの開閉と無関係な信号を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査装置。
【請求項5】
前記シャッター制御信号出力手段が出力するシャッター制御信号の700nmから1100nmの範囲の赤外光である請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査装置。
【請求項6】
前記第1発光手段および前記第2発光手段が発光する光の波長は、立体表示を行う表示手段が表示する色特性に応じて設定される請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査装置。
【請求項7】
立体視用眼鏡の左眼用シャッターおよび右眼用シャッターの開閉を独立に制御する複数のシャッター制御信号を出力するシャッター制御信号出力ステップと、
立体視用眼鏡の左眼用レンズに向けて発光する第1発光ステップと、
前記第1発光ステップで発光する光を検出する第1検出ステップと、
立体視用眼鏡の右眼用レンズに向けて発光する第2発光ステップと、
前記第2発光ステップで発光する光を検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップおよび前記第2検出ステップの検出結果に基づいて前記左眼用シャッターおよび前記右眼用シャッターの開閉状態の変化を検出するシャッター開閉変化検出ステップと、
前記シャッター制御信号出力ステップで出力する制御信号の種類と出力時刻からなるシャッター制御信号情報および前記シャッター開閉変化検出ステップの検出結果に基づく前記左眼用シャッターまたは前記右眼用シャッターの開閉状態と開閉状態の変化時刻からなるシャッター開閉情報を検証情報として出力する検証情報出力ステップと
からなる立体視用眼鏡検査方法。
【請求項8】
前記検証情報出力ステップで出力する検証情報を記憶する記憶ステップを有する請求項7記載の立体視用眼鏡検査方法。
【請求項9】
前記検証情報出力ステップで外部の記憶手段に前記検証情報を出力する請求項7記載の立体視用眼鏡検査方法。
【請求項10】
前記シャッター制御信号として前記左眼用シャッターおよび前記右眼用シャッターの開閉と無関係な信号を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査方法。
【請求項11】
前記シャッター制御信号出力ステップで出力するシャッター制御信号の波長が700nmから1100nmの範囲の赤外光である請求項7〜10のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査方法。
【請求項12】
前記第1発光ステップおよび前記第2発光ステップで発光する光の波長は、立体表示を行う表示手段が表示する色特性に応じて設定される請求項7〜11のいずれか1項に記載の立体視用眼鏡検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−119814(P2012−119814A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266155(P2010−266155)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】