説明

立体視画像表示装置および光シャッターアレイ

【課題】自然な立体視画像として観察し得る程度に十分高速な繰り返し周波数で2眼以上のカラー視差画像を表示可能な立体視画像表示装置を簡易な構成かつ低コストで製造する。
【解決手段】一対の部分光透過ミラー22,23の間に、3色の光を透過する第1の電極24と、3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層26と、3色の光を透過する線状電極が画素部を分割した分割領域毎に配列された第2の電極25とを積層して光シャッターアレイ20を構成し、各線状電極へ電圧印加が順次切り替えられることによって、各線状電極を透過した3色の光が順次切り替えられて部分光透過ミラー23を透過するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる視点方向から観察される複数のカラー視差画像からなるカラー立体視画像を表示する立体視画像表示装置およびその立体画像表示装置に用いられる光シャッターアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同一の被写体を互いに異なる方向から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像を組み合わせて表示することによって立体視できる画像(以下、立体視画像という)を表示する立体視画像表示装置が種々提案されている。
【0003】
そして、上記のような立体視画像表示装置の1つとして、たとえば、特許文献1から特許文献4には、画像の表示面の前方に電子式シャッターアレイを設け、このシャッターによって右目用の画像と左目用の画像の表示を交互に切り替えることによって立体視画像を表示するものが提案されている。
【0004】
具体的には、たとえば、電子式シャッターアレイとして液晶を用い、入射光の偏光方向を制御する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−107086号公報
【特許文献2】特開平6−78342号公報
【特許文献3】特開平4−250439号公報
【特許文献4】特開平9−43540号公報
【特許文献5】特開昭63−194285号公報
【特許文献6】特開平1−102415号公報
【特許文献7】特開2002−62493号公報
【特許文献8】特開2005−77718号公報
【特許文献9】特開2007−272247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶を用いたシャッターアレイは比較的低コストで製造することができるが、その応答速度は最大でも10ms程度が限界であり、高速応答性を有していない。そのために液晶を用いたシャッターアレイでは高速のシャッター駆動を行うことができず、左右2眼の画像表示が限界であり、2眼を超える多数の視差画像を高速に切り替えて表示することが非常に困難である。
【0007】
なお、2眼の視差画像の表示のみだと所定の方向から視差画像を観察した場合にしか適切な立体視画像を観察することができず、たとえば、観察者が立体視画像表示装置に対して水平方向に移動してしまった場合には、滑らかに変動する立体視画像を観察することができない。したがって、立体視画像表示装置としては、上述したような2眼以上の多数の視差画像を切り替えて表示できるものが望ましい。
【0008】
また、液晶に代わる偏光制御透過型の電子シャッターアレイとして、PLZTなどの電気光学セラミックスや電気光学結晶などの固体複屈折性電気光学材料を用いたものが考えられる。
【0009】
これらの材料は高速応答性を有しているが、電気光学係数が小さいため、所望の位相変調量を得るためには、電気光学材料の層厚を厚くする必要があるか、または印加電圧を高電圧とする必要がある。
【0010】
しかしながら、光学的、電気光学的に良好で大面積かつ層厚の厚い固体複屈折性電気光学材料膜を製造するのは技術的に難易度が高く、さらにシャッターとして機能させるために前後の偏光板および波長板が必要となり、また高圧電圧を供給する駆動電源も必要となることから、非常に高コストなものとなってしまう。
【0011】
また、偏光制御透過型の電子式シャッターアレイは、全体として層厚が厚くなるため、微細なピッチのシャッターアレイを製造することが非常に困難である。
【0012】
一方、上述したような立体視画像表示装置ではないが、特許文献5から特許文献9には、互いに異なる色のカラー画像を切り替えて表示するカラー画像表示装置が提案されている。
【0013】
そして、特許文献5および特許文献6においては、ファブリーペロー可変干渉装置における2枚の対向する反射鏡の光路長を変化させることによって可変色フィルタとして機能させて、任意のカラー画像を表示させることが提案されている。
【0014】
しかしながら、ファブリーペロー可変干渉装置の2枚の対向する反射鏡間の光路長変化で可視光範囲をカバーするためには、相当量(50%以上)の光路長変化が必要である。これをPLZT等の固体電気光学材料の屈折率変化で行うことが提案されているが、これを実現することは困難である。
【0015】
具体的には、反射鏡間を空気層とし、その間隔を電歪効果および静電引力を利用して可変する方法が提案されているが、電歪効果および静電引力を利用する方式では、まず、空気層間隔を一様且つ安定に保持制御することが困難なためカラー制御性が悪い。
【0016】
また、機械的駆動であるため、全可視光をカバーする範囲を高速に応答させることが困難である。さらに、複雑な形状を微細加工技術を駆使して製造する必要があり、微細かつ大規模に2次元配列させた可変干渉装置を作ることが困難であり、また高コストとなる。
【0017】
また、特許文献7においては、可動反射膜を変形させる干渉性変調素子(IMOD)を用いた表示素子が提案されており、特許文献8および特許文献9においては、透明基板上に設けられた光学薄膜と、光学薄膜に対向して設けられ光学薄膜との距離が可変に配置された吸収体層とを有する反射型表示装置が開示されている。
【0018】
しかしながら、特許文献7から特許文献9において提案されているファブリーペロー可変干渉装置は、いずれも対向配置されたミラーの一方を機械的に移動することで所望の干渉変調効果及び表示機能を得ているが、機械的に移動させる必要があるため、特許文献5および特許文献6におけるファブリーペロー可変干渉装置と同様の問題がある。
【0019】
本発明は、上記の事情に鑑み、簡易な構成かつ低コストで製造することができるとともに、自然な立体視画像として観察し得る程度に十分高速な繰り返し周波数で2眼以上のカラー視差画像を表示可能な立体視画像表示装置およびその立体視画像表示装置において用いられる光シャッターアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の立体視画像表示装置は、RGBの3色の光を発する発光部を備えた画素部が2次元状に複数配列され、少なくとも1つの立体視画像を構成する2以上のカラー視差画像を時系列に表示する画像表示部と、画像表示部の前面に配置されるとともに、各画素部から発せられた3色の光を、各画素部に対応する範囲を分割した分割領域毎にカラー視差画像の表示切替えに同期させて順次切り替えて透過する光シャッターアレイと、光シャッターアレイの各分割領域を透過した3色の光を分割領域毎に互いに異なる視点方向に射出させる指向性付与素子とを備え、光シャッターアレイが、一対の部分光透過ミラーを備え、その一対の部分光透過ミラーの間に、3色の光を透過する第1の電極と、第1の電極を透過した3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層と、変調層を透過した3色の光を透過する線状電極が分割領域毎に配列された第2の電極とが積層されたものであり、画像表示部の各画素部から発せられた3色の光が、光シャッターアレイの分割領域毎に順次切り替えられて透過するように各線状電極に対して電圧を順次切り替えて印加する駆動部を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、上記本発明の立体視画像表示装置においては、光シャッターアレイとして、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型シャッターアレイであって、複数の透過ピーク波長を有するものを用い、光シャッターアレイの一対の部分光透過ミラー間の有効光路長を、各透過ピーク波長と画素部から発せられるR光、G光およびB光の発光スペクトル強度ピーク波長とがそれぞれ対応して略一致するように設定することができる。
【0022】
また、光シャッターアレイの一対の部分光透過ミラー間の有効光路長Leffを、下式(1)および(2)を満たすように設定することができる。
【0023】

λ:G光の発光スペクトル強度ピーク波長
λm+l:R光の発光スペクトル強度ピーク波長
λm−l:B光の発光スペクトル強度ピーク波長
m:正の整数
l:mより小さい正の整数

また、駆動部による分割領域に対応する線状電極への電圧印加によって複数の透過ピーク波長がシフトして、画素部から発せられるR光、G光およびB光の透過と非透過とが切り替えられるように変調層の屈折率変化を設定することができる。
【0024】
また、光シャッターアレイの複数の透過ピークのスペクトル幅を、透過ピーク波長のシフト量よりも狭くすることができる。
【0025】
また、一対の部分光透過ミラーを構成する各部分光透過ミラーの反射率を、80%以上とすることができる。
【0026】
また、発光部を、光を発する発光素子と発光素子から発せられた光をR光、G光およびB光にそれぞれ狭帯域化するフィルタ部とを備えたものとし、R光のフィルタ部、G光のフィルタ部およびB光のフィルタ部の配列方向と線状電極の延伸方向とが一致するように設けることができる。
【0027】
また、フィルタ部によって狭帯域化されたR光、G光およびB光の半値帯域幅δλR,G,Bを、下式(3)を満たす値とすることができる。
【0028】

δn:変調層の屈折率変調
Lc:一対の部分光透過ミラー間の距離
m:正の整数
また、変調層を、セラミックスまたはポリマーから形成することができる。
【0029】
また、光シャッターアレイの厚さを1.5μm以下とすることができる。
【0030】
本発明の光シャッターアレイは、一対の部分光透過ミラーを備え、その一対の部分光透過ミラーの間に、2次元状に配列された複数の画素部の各画素部から発せられたRGBの3色の光を透過する第1の電極と、第1の電極を透過した3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層と、変調層を透過した3色の光を透過する線状電極が複数配列された第2の電極とが積層され、各線状電極へ電圧印加が順次切り替えられることによって、各画素部に対応する範囲を分割した分割領域が順次切り替えられて、各分割領域を3色の光が透過するように各線状電極を透過した3色の光が順次切り替えられて部分光透過ミラーを透過するよう構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の立体視画像表示装置によれば、光シャッターアレイを、一対の部分光透過ミラーの間に、2次元状に配列された複数の画素部の各画素部から発せられた3色の光を透過する第1の電極と、第1の電極を透過した3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層と、変調層を透過した3色の光を透過する線状電極が画素部を分割した分割領域毎に配列された第2の電極とが積層されたものとし、各線状電極へ電圧印加が順次切り替えられることによって、各画素部に対応する範囲を分割した分割領域が順次切り替えられて、各分割領域を3色の光が透過するように構成し、指向性付与素子によって光シャッターアレイの各分割領域を透過した3色の光を分割領域毎に互いに異なる視点方向に射出させるようにしたので、簡易な構成かつ低コストで製造することができるとともに、自然な立体視画像として観察し得る程度に十分高速な繰り返し周波数で2眼以上のカラー視差画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の立体視画像表示装置の一実施形態の全体の概略構成を示す図
【図2】アクティブマトリクス基板と光シャッターアレイ基板の一部断面図を示す図
【図3】各画素回路に設けられたRGBのカラーフィルタ層と第2の電極の線状電極との配置関係を示す上面図
【図4】スイッチングアレイ回路の一例を示す図
【図5】スイッチ回路部の一例を示す図
【図6】ファブリーぺロー共振器の概略構成を示す図
【図7】ファブリーぺロー共振器の透過特性の一例を示す図
【図8】DBRミラーの構成の一例を示す図
【図9】光シャッターの波長シフトとRGB光の半値帯域幅とを示す模式図
【図10】本発明の立体視画像表示装置の作用を説明するためのタイミングチャート
【図11】光シャッターアレイ基板の透過特性の変化を説明するための図
【図12】本発明の立体視画像表示装置のその他の実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の光シャッターアレイおよび立体視画像表示装置の一実施形態について説明する。本実施形態の立体視画像表示装置は、光シャッターアレイの構成に特徴を有するものであるが、まず、本実施形態の立体視画像表示装置の全体の概略構成について説明する。図1は、本実施形態の立体視画像表示装置の概略構成を示す図である。
【0034】
本実施形態の立体視画像表示装置は、図1に示すように、有機EL発光素子を有する画素回路11が2次元状に多数配列されたアクティブマトリクス基板10と、アクティブマトリクス基板10の前面に設置され、多数の光シャッターを備えた光シャッターアレイ基板20と、走査駆動回路12と、データ駆動回路13と、光シャッターアレイ基板20に設けられた後述する各線状電極を順次切り替えて電圧印加する光シャッター駆動回路14と、カラー視差画像データと所定のタイミング信号をデータ駆動回路13に出力するとともに、走査駆動回路12および光シャッター駆動回路14に所定のタイミング信号を出力する制御部18とを備えている。なお、アクティブマトリクス基板10と光シャッターアレイ基板20とは積層されるものであるので、図1においては同一の矩形によって示している。
【0035】
また、アクティブマトリクス基板10は、データ駆動回路13から出力されたプログラム電圧を各画素回路列に供給する多数のデータ線15と、走査駆動回路12から出力されたゲートスキャン信号を各画素回路行に供給する多数のゲート走査線16とを備えている。
【0036】
また、光シャッター駆動回路14と光シャッターアレイ基板20とは、光シャッター駆動回路14から出力された光シャッター駆動電圧を光シャッターアレイ基板20の各線状電極に供給する多数の駆動電圧線17によって接続されている。そして、駆動電圧線17は、光シャッターアレイ基板20の各線状電極にそれぞれ接続されるものであり、各線状電極に対してそれぞれ独立して光シャッター駆動電圧を供給するものである。
【0037】
アクティブマトリクス基板10の各画素回路11は、有機EL発光素子と、データ線15に供給されたプログラム電圧に応じた駆動電流を有機EL発光素子に流すための駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタのゲート端子とデータ線15との間に設けられ、ゲート走査線16に供給されたゲートスキャン信号に応じてON/OFFするゲート選択用トランジスタなどを備えている。
【0038】
駆動用トランジスタおよびゲート選択用トランジスタは、たとえば、TFT(Thin Film Transistor)やMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタなどから形成されるものである。
【0039】
走査駆動回路12は、制御部18から出力されたタイミング信号に基づいて、画素回路11のゲート選択用トランジスタをON/OFFするためのゲートスキャン信号を各ゲート走査線16に順次出力するものである。
【0040】
データ駆動回路13は、入力されたカラー視差画像データに基づいて各画素回路11に入力されるプログラム電圧を生成し、そのプログラム電圧を各データ線15に出力するものである。
【0041】
次に、アクティブマトリクス基板10と光シャッターアレイ基板20の一部断面図を図2に示す。なお、図2は、アクティブマトリクス基板10の1つの画素回路11と、その画素回路11に対応する光シャッターアレイ基板20の一部の範囲のみの断面図を示したものである。
【0042】
本実施形態の立体視画像表示装置は、図2に示すように、アクティブマトリクス基板10と光シャッターアレイ基板20とが積層された構成となっている。
【0043】
そして、アクティブマトリクス基板10の各画素回路11には、それぞれ有機EL発光素子11aが設けられている。有機EL発光素子11aは、有機化合物からなる発光体を陰極と陽極とで挟んだ構成のものであるが、その構成については既に公知であるので詳細な説明は省略する。また、図2には画素回路11の有機EL発光素子11aのみを示しており、駆動用トランジスタやゲート選択用トランジスタなどの構成は図示省略している。
【0044】
そして、各画素回路11の有機EL発光素子11aの前面には、図2に示すように、RGBのカラーフィルタ層11bが設けられている。カラーフィルタ層11bはR,G,Bの3色のバンドパスフィルタから構成され、有機EL発光素子11aから発せられた光が入射されR光,G光,B光として射出するものである。
【0045】
カラーフィルタ層11bとしては、たとえば、RGBの多層膜カラーフィルタからなるものを採用することができるが、カラーフィルタ層11bから射出されるR光、G光、B光としては、後述するように光シャッターアレイ基板20の透過特性に応じた狭帯域光であることが望ましい。したがって、このような狭帯域光を実現するものとしては、ファブリーペロー型のバンドパスフィルタ構造を採用することが望ましい。ファブリーペロー型のバンドパスフィルタの詳細な構成については既に公知であるのでその説明は省略する。
【0046】
光シャッターアレイ基板20は、図2に示すように、アクティブマトリクス基板10の各画素回路11から発せられたR光,G光およびB光を透過する基板21と、その基板21上に積層された光シャッター部とを備えている。
【0047】
光シャッター部は、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型の光シャッターで構成されており、具体的には、図2に示すように、一対の部分光透過ミラー22,23を備え、その一対の部分光透過ミラー22,23の間に、各画素回路11から発せられたR光,G光およびB光を透過する第1の電極24と、第1の電極24を透過した光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層26と、変調層26を透過した光を透過する線状電極が複数配列された第2の電極25とが積層されたものである。
【0048】
一対の部分光透過ミラー22,23はファブリーペロー共振器を構成するものであり、アクティブマトリクス基板10の各画素回路11から発せられた狭帯域のR光、G光、B光に対して選択的に透過特性を有するものである。
【0049】
そして、アクティブマトリクス基板側の部分光透過ミラー22は平板形状で形成され、もう一方の側の部分光透過ミラー23は、後述する第2の電極25の線状電極に対応させて多数の線状形状で形成されている。なお、部分光透過ミラー22,23の反射率および透過特性については後で詳述する。
【0050】
第1の電極24および第2の電極25は、各画素回路11から発せられた狭帯域のR光、G光、B光を透過する材料、たとえばITOなどから形成されており、第1の電極24は平板形状で形成され、第2の電極25は多数の線状電極として形成されている。なお、図2の紙面垂直方向が部分光透過ミラー23と第2の電極25の延伸方向である。
【0051】
また、図3に、光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極25と、各画素回路11に設けられたRGBのカラーフィルタ層11bとの配置関係と、光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極の接続関係とを示す上面図を示す。本実施形態においては、各画素回路11のカラーフィルタ層11bに対して、第2の電極25として線状電極25〜25の8本が設けられ、この線状電極に対応して部分光透過ミラー23も設けられるものとする。そして、図3に示すように、線状電極25〜25の延伸方向(図3の上下方向)とカラーフィルタ層11bのR,G,Bのカラーフィルタの配列方向とが同じ方向となるように設けられる。
【0052】
そして、1つの画素回路11に対応して設けられる各線状電極25〜25は、それぞれ所定の視差位置に対応して設けられており、図3に示すように、各視差位置に対応する線状電極同志が画素回路11の領域以外のところで接続されている。たとえば、第1の視差位置に対応する複数の線状電極25同志が互い接続されて第1の線状電極群が構成され、第2の視差位置に対応する複数の線状電極25同志が互いに接続されて第2の線状電極群が構成され、同様にして、第3〜第8の線状電極群が構成される。第1〜第8の線状電極群はそれぞれ絶縁膜を介して積層されており、線状電極群間は電気的に絶縁されるように構成されている。
【0053】
そして、第1〜第8の線状電極群は、それぞれ駆動電圧線17を介して光シャッター駆動回路14に接続されている。
【0054】
光シャッター駆動回路14は、図3に示すように、スイッチングアレイ回路27と駆動電源(VDD)28とを備えている。そして、スイッチングアレイ回路27は、図4に示すように、シフトレジスタ27aとFET(Field Effect Transistor)を備えた複数のスイッチ回路部27bとを備えている。
【0055】
シフトレジスタ27aは、各スイッチ回路部27のFETのゲート電極に対してゲート電圧信号を順次出力するものである。そして、各スイッチ回路部27には、それぞれ第1〜第8の線状電極群が接続されており、シフトレジスタ27aから順次出力されたゲート電圧信号に応じて各スイッチ回路部27bのFETがオンされ、これに応じて第1〜第8の線状電極群に対して光シャッター駆動電圧が順次出力される。
【0056】
スイッチ回路部27bは、具体的には、図5に示すように、Nチャンネル接合型FET31と、4つの抵抗素子R、R、R、Rとが設けられており、FET31のドレイン端子には駆動電源(VDD)28が接続されている。そして、シフトレジスタ27aから出力されたゲート電圧信号は、FET31のゲート電極に供給され、これに応じてFETのドレイン端子に接続された出力端子から光シャッターをオンするための光シャッター駆動電圧が出力される。なお、FET31のゲート電極にゲート電圧信号が供給されていない間は、光シャッターをオフするための光シャッター非駆動電圧が出力される。
【0057】
なお、本実施形態においては、Nチャンネル接合型FETを用いるようにしたが、これに限らず、Pチャンネル接合型FETを用いてスイッチ回路部を構成するようにしてもよい。また、ショットキー型FET、MOS型FET、バイポーラ・トランジスタなどを用いてスイッチ回路部を構成するようにしてもよい。
【0058】
そして、光シャッターアレイ基板20の変調層26は、たとえば、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)などの透明セラミックスや、EOポリマーなどの電気光学材料から形成されるものであり、第2の電極25の各線状電極25〜25への電圧印加によって、その各線状電極に対応する部分の複素屈折率が変化するものである。そして、この複素屈折率の変化によって透過中心波長がシフトし、これにより各線状電極に対応する部分光透過ミラー23からのR光,G光,B光の射出と非射出が制御されて光シャッターとして機能する。なお、変調層26に必要される屈折率については後で詳述する。
【0059】
また、図1においては図示省略したが、本立体視画像表示装置には、図2に示すように、画素回路11の有機EL発光素子11aから発せられた光を所定の視点方向に向けて射出する指向性付与素子19が、光シャッターアレイ基板20の前面に設置されている。指向性付与素子19としては、たとえば、レンチキュラレンズやパララックスバリアなどを用いることができる。
【0060】
そして、本立体視画像表示装置においては、上述したように各画素回路11の有機EL発光素子11aから発せられたR光、G光およびB光が、光シャッターアレイ基板20の各線状電極25〜25に対応する範囲から該範囲が順次切り替えられて射出されるが、各線状電極に対応する範囲から射出されたR光、G光およびB光からなるカラー視差画像は、指向性付与素子19によってそれぞれ互いに異なる視点方向に射出される。
【0061】
すなわち、本実施形態においては、各画素回路11に対応する範囲に8本の線状電極を設けるようにしたので、8つの視点方向にそれぞれカラー視差画像が射出されることになる。そして、この8つのカラー視差画像のうち、立体視画像表示装置に対する観察の位置に応じたいずれか2つのカラー視差画像が観察者の右目と左目とにそれぞれ入射され、立体視画像が観察される。上記のように8つのカラー視差画像を表示するようにしたので、立体視画像表示装置に対する観察者の位置が水平方向にずれたとしても適切な立体視画像を観察することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、8つのカラー視差画像を表示するようにしたが、これに限らず、各画素回路11に対応する光シャッター部の線状電極を8本より多く設け、さらに多くのカラー視差画像を表示するようにしてもよい。たとえば、各画素回路11に対して100本の線状電極を設けることによって、100のカラー視差画像を表示することができ、立体視画像表示装置に対して観察者がどの位置にいても適切な立体視画像が観察することができる。
【0063】
ここで、上述したようにファブリーペロー波長掃引フィルタ型の光シャッターで構成される光シャッターアレイ基板20の1つの実施例について詳細に説明する。
【0064】
まず、一般的に、ファブリーぺロー共振器の光透過特性は、たとえば、図6に示すように一対の反射ミラーとしてDBRミラー(高屈折率層Hと低屈折率層Lとがλ/4の厚さで交互に積層されたもの)を用いた場合、図7に示すように、反射ミラーのストップバンド(filter stop band)に複数の透過ピークが存在するような特性となる。なお、複数の透過ピークの位置と幅は、ファブリーペロー共振器のフリースペクトラルレンジ(FSR)とフィネス(FINESSE)で決定されるものである。そして、FSRは、隣接する透過ピーク間の波長間隔のことをいうが、これはファブリーペロー共振器の間隔Leffによって決まり、このLeffが大きくなるほど透過ピーク間の波長間隔は狭くなることになる。なお、図7は、Leff=2/λのときの透過特性とLeff=2λのときの透過特性の一例を表している。
【0065】
ここで、ファブリーペロー共振器の有効共振器長Leffは、図4に示す共振器長LOPL=niLcに、反射ミラーによる反射波の位相ずれから導かれる浸透長Lをそれぞれ加えた長さとなり、一対の反射ミラーとして同一のミラーを用いた場合には下式(1)で与えられる。なお、niは一対の反射ミラー間の屈折率であり、Lcは一対の反射ミラー間の距離である。
【0066】

そして、DBRミラーの場合のLを表す具体的な式は、たとえば、「Theory of quarter-wave-stack dielectric mirrors used in a thin Fabry-perot filter」APPLIED OPTICS Vol.42, No.27, pp5442-5449 (2003)に記載されており、一義的に決めることが出来る。
【0067】
そして、このとき、ファブリーペロー共振器のm次のモードの波長は、下式(2)で決定される。
【0068】

また、m次のモードからl次だけずれたモードの波長は、下式(3)で与えられる。
【0069】

そして、画素回路11のカラーフィルタ層11bの450nm近傍のBフィルタからの入射光、550nm近傍のGフィルタからの入射光、650nm近傍のRフィルタからの入射光を同時に透過するファブリーペロー共振器とするために、ファブリーペロー共振器の各パラメータを次のようにして決定することが出来る。
【0070】
まず、500nm≦λ≦600nmの条件を満たす550nm近傍の入射光λを選択する。
【0071】
次に、上式(3)のλm±lが、400nm≦λm+l≦500nm、600nm≦λm+l≦700nmを満たすように、mとlを選択する。そして、選択したλとmに対し、上式(2)よりLeffを決定する。
【0072】
本実施例においては、具体的には、λ=530nmとして各パラメータを計算した。さらに、l=1と設定して計算した結果、m=6のとき、λm+l=454nm、λm−l=636nmとなった。そして、このときLeff=1.59μmとなった。
【0073】
ここで、変調層26の屈折率変調によりファブリーペロー共振器の光路長変調が起こると、上式(2)より各次数のモードの波長がシフトする。そして、この波長シフトを利用してファブリーペロー共振器をシャッターとして機能させるため、ファブリーペロー共振器の各次数の共振ピークスペクトル幅を上記波長シフト量より十分狭くする必要がある。
【0074】
変調層26の屈折率変調δnによるファブリーペロー共振器のm次のモードの波長シフト量δλは、近似的に下式(4)で表せる。
【0075】

また、m次のモードの共振ピークスペクトル幅Δλは、下式(5)で表せる。
【0076】

これより、ファブリーペロー共振器の各次数の共振ピークスペクトル幅Δλを上記屈折率変調による波長シフト量δλより十分狭くするためには、下式(6)を満たすようにファブリーペロー共振器のフィネスを十分大きな値に設定する必要がある。
【0077】

ここで、ファブリーペロー共振器のフィネスは、一対の反射ミラーが反射率Rの同一ミラーとした場合、下式(7)で表される。
【0078】

これより、上式(6)を満たすためには、共振器ミラーを高反射率ミラーとする必要がある。
【0079】
本実施例においては、具体的には、ファブリーペロー共振器内の変調層26としてPLZTを用い、PLZTの屈折率n≒2.5で、0.1%程度の屈折率変調を行った場合を考える。これは比較的低電圧の印加で可能な変調量である。このとき、δn=2.5×0.001=0.0025とすると、上式(6)よりF≧11となる。したがって、上式(7)より、DBRミラーの反射率Rとしては概略80%以上の反射率とすればよい。
【0080】
そして、図8に示すように反射ミラーを波長λに対するDBRミラーとして構成した場合、ミラー反射率の最大値は下式(8)で与えられ、交互に積層される高屈折率層Hと低屈折率層Lの屈折率比で決定される。ここでpは、交互に積層された屈折率層のペアの数を表す。
【0081】

本実施例においては、DBRミラーを80%以上の高反射率ミラーとするため、n=2.5(PLZT)、n=1.5の場合で考えると、低屈折率層Lの屈折率nと高屈折率層の屈折率nとの比をn/n≧1.27とすればよい。たとえば、n=1.5の場合、n≧1.9を満たせばよい。なお、ここではp=5とした。
【0082】
また、DBRミラーの規格化したストップバンド幅は、下式(9)で与えられる。
【0083】

そして、ストップバンド幅は、450nm近傍に設定するB光の発光スペクトルと650nm近傍に設定するR光の発光スペクトルを、その線幅を考慮して十分カバーするものである必要がある。
【0084】
そこで、本実施例においては、454nm〜636nmの波長範囲をカバーするため、n=1.47とした場合、n≧2.54とする必要がある。この条件は、上記フィネスの条件から導いたものより厳しい条件であるため、本実施例においては、DBRミラーの屈折率としてこの条件を満たすように設定した。
【0085】
以上の条件から、反射ミラーの構成を決定することが出来る。これからさらに、反射ミラーの浸透長Lを決定することが出来る。反射ミラーをDBRミラーとした場合、浸透長Lは、下式(10)で導くことが出来る。
【0086】

ここで、1つの実施例としてn=2.5(PLZT)、n=1.47とし、n=1.47(SiO)、n=2.6(TiO)をスパッタ成膜した。このとき上式(10)より、DBRミラーの浸透長L=178.3nmとなった。さらに上式(1)より、共振器長LOPL=1233.3nmとなった。
【0087】
なお、以上の計算において、共振器長LOPLには上下に成膜された第1の電極24および第2の電極25の膜厚が含まれるものとする。第1の電極24および第2の電極25の屈折率=2.1(ITO)とし、その膜厚を各100nmとすると、変調層26(PLZT)の膜厚=325.3nmとなった。変調層26の屈折率変調による所望の共振ピーク波長シフト量は、変調層26に印加する光シャッター駆動電圧を制御することで調整することが出来た。
【0088】
なお、アクティブマトリクス基板10の各画素回路11のカラーフィルタ層11bとしてファブリーペロー型のバンドパスフィルタ構造を採用し、R光、G光およびB光を狭帯域光とする場合においても、上述したファブリーペロー共振器と同様にして設計することができる。R光、G光およびB光の3色の波長と透過ピーク波長とが一致するようなファブリーペロー共振器とすればよい。
【0089】
なお、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型の光シャッターで構成される光シャッターアレイ基板20が、十分な性能の光シャッターとして機能するためには、狭帯域化したR光、G光およびB光の帯域幅が、変調層26の屈折率変調δnによるファブリーペロー共振器のm次のモードの波長シフト量δλより十分狭くなることが望ましい。波長シフト量δλは上式(4)により表わされる。
【0090】
したがって、狭帯域化したR光、G光およびB光の各半値帯域幅をδλR,G,Bとしたとき、下式を満たすように設定すればよい。なお、図9は、波長シフト量δλと半値帯域幅δλR,G,Bとを模式的に示したものである。
【0091】

なお、カラーフィルタ層11bとしてファブリーペロー型のバンドパスフィルタ構造を採用した場合に限らず、RGBの多層膜カラーフィルタを用いる場合においても、上式を満たすようなものを用いることが望ましい。
【0092】
次に、本実施形態の立体視画像表示装置の作用について説明する。図10は、走査駆動回路12から出力されるゲートスキャン信号と、光シャッター駆動回路14から出力される光シャッター駆動電圧と、データ駆動回路13に入力されるカラー視差画像データのタイミングチャートを示すものである。
【0093】
本実施形態の立体視画像表示装置は、1フレーム(たとえば、1/60s)の間に8つの視点方向についてのカラー視差画像を光シャッターアレイ基板20によって順次切り替えて表示するものである。
【0094】
具体的には、まず、データ駆動回路13に第1の視点方向についての第1のカラー視差画像データが入力されてデータ駆動回路13から各データ線15に第1のカラー視差画像データに応じたプログラム電圧が出力されるとともに、光シャッター駆動回路14から駆動電圧線17を介して光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極25からなる第1の線状電極群のみに光シャッター駆動電圧V1が印加され、さらに走査駆動回路12から第1のゲート走査線16に対してゲート用選択トランジスタをONするためのゲートスキャン信号G1が出力される。なお、このとき光シャッターアレイ基板20の第2〜第8の線状電極群に対しては光シャッター非駆動電圧が出力されている。
【0095】
そして、上記のような第1のゲート走査線16へのゲートスキャン信号G1の出力によって第1行の画素回路11のゲート用選択トランジスタがONされ、第1行の画素回路11の駆動用トランジスタに対し第1のカラー視差画像データの第1行に応じたプログラム電圧が印加され、そのプログラム電圧に応じた駆動電流が第1行の画素回路11の有機EL発光素子11aに流されて有機EL発光素子11aが発光し、カラーフィルタ層11bを介してR光、G光およびB光が各画素回路11から発せられる。
【0096】
そして、このとき光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極群への光シャッター駆動電圧V1の印加によって第1の線状電極群に対応する範囲の変調層26の屈折率が変化し、これにより第1の線状電極群に対応する範囲の光の透過特性が、図11に示すように変化する。すなわち透過する中心波長が矢印方向にシフトして画素回路11から発せられるR光、G光およびB光の中心波長と略一致するようになる。なお、各画素回路11のカラーフィルタ層11bを透過するR光、G光およびB光の帯域幅と、光シャッターアレイ基板20の共振ピークスペクトル幅とは略一致するようにすることが望ましい。
【0097】
そして、上記のような作用によって光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極群に対応する範囲からのみ画素回路11から発せられたR光、G光およびB光が射出される。なお、光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極群以外の第2〜第8の線状電極群に対応する範囲については、光シャッターアレイ基板20の透過中心波長と画素回路11のR光、G光およびB光の中心波長が一致していないのでR光、G光およびB光は発せられない。
【0098】
そして、図10に示すように、光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極群に光シャッター駆動電圧V1が印加されている間に、各画素回路行のゲート選択用トランジスタをONするゲートスキャン信号G2〜Gnが順次切り替えられて走査駆動回路12から出力され、これにより第2〜n行の画素回路11のゲート用選択トランジスタが順次ONされるとともに、第2〜n行の画素回路11の駆動用トランジスタに対し第1のカラー視差画像データのその行に応じたプログラム電圧が印加され、第2〜n行の画素回路11からR光、G光およびB光が順次発せられる。このようにして光シャッターアレイ基板20の第1の線状電極群の範囲に応じた1枚の第1のカラー視差画像が光シャッターアレイ基板20から射出される。
【0099】
そして、光シャッターアレイ基板20から射出された第1のカラー視差画像は指向性付与素子19に入射され、指向性付与素子19によって指向性が付与され、第1の視点方向に向けて射出される。
【0100】
そして、次に、データ駆動回路13に第2の視点方向についての第2のカラー視差画像データが入力されてデータ駆動回路13から各データ線15に第2のカラー視差画像データに応じたプログラム電圧が出力されるとともに、光シャッター駆動回路14か駆動電圧線17を介して光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極25からなる第2の線状電極群のみに光シャッター駆動電圧V2が印加され、さらに走査駆動回路12から第1のゲート走査線16に対してゲート用選択トランジスタをONするためのゲートスキャン信号G1が出力される。
【0101】
そして、上記のような第1のゲート走査線16へのゲートスキャン信号G1の出力によって第1行の画素回路11のゲート用選択トランジスタがONされ、第1行の画素回路11の駆動用トランジスタに対し第2のカラー視差画像データの第1行に応じたプログラム電圧が印加され、そのプログラム電圧に応じた駆動電流が第1行の画素回路11の有機EL発光素子11aに流されて有機EL発光素子11aが発光し、カラーフィルタ層11bを介してR光、G光およびB光が各画素回路11から発せられる。
【0102】
そして、このとき光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極群への光シャッター駆動電圧V2の印加によって第2の線状電極群に対応する範囲の変調層26の屈折率が変化し、これにより第2の線状電極群に対応する範囲の光の透過特性が、図11に示すように変化する。
【0103】
そして、これにより光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極群に対応する範囲からのみ画素回路11から発せられたR光、G光およびB光が射出される。なお、光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極群以外の第1,第3〜第8の線状電極群に対応する範囲については、光シャッターアレイ基板20の透過中心波長と画素回路11のR光、G光およびB光の中心波長が一致していないのでR光、G光およびB光は発せられない。
【0104】
そして、図10に示すように、光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極群に光シャッター駆動電圧V2が印加されている間に、各画素回路行のゲート選択用トランジスタをONするゲートスキャン信号G2〜Gnが順次切り替えられて走査駆動回路12から出力され、これにより第2〜n行の画素回路11のゲート用選択トランジスタが順次ONされるとともに、第2〜n行の画素回路11の駆動用トランジスタに対し第1のカラー視差画像データのその行に応じたプログラム電圧が印加され、第2〜n行の画素回路11からR光、G光およびB光が順次発せられる。このようにして光シャッターアレイ基板20の第2の線状電極群の範囲に応じた1枚の第2のカラー視差画像が光シャッターアレイ基板20から射出される。
【0105】
そして、光シャッターアレイ基板20から射出された第2のカラー視差画像は指向性付与素子19に入射され、指向性付与素子19によって指向性が付与され、第2の視点方向に向けて射出される。
【0106】
そして、上述したような第1のカラー視差画像と第2のカラー視差画像の表示の作用と同様にして、図10に示すようにカラー視差画像データ、ゲートスキャン信号および光シャッター駆動電圧が順次切り替えられ、指向性付与素子19によって指向性が付与された第3〜8のカラー視差画像が、それぞれ第3〜8の視点方向に向けて射出される。
【0107】
上記のようにして本実施形態の立体視画像表示装置においては、1フレーム(たとえば、1/60s)の間に8つの視点方向についてのカラー視差画像が順次切り替えられて表示される。
【0108】
また、上記実施形態の立体視画像表示装置においては、各画素回路11の有機EL発光素子11aにカラーフィルタ層11bをそれぞれ設けるようにしたが、これに限らず、たとえば、図12に示すように、アクティブマトリクス基板10とは別個にカラーフィルタ層30を形成し、アクティブマトリクス基板10とカラーフィルタ層30と光シャッターアレイ基板20とをこの順に積層するようにしてもよい。カラーフィルタ層30の詳細な構成は上記実施形態のカラーフィルタ層11bと同様である。このように構成することによって、たとえば、汎用のアクティブマトリクス基板10に対してカラーフィルタ層30と光シャッターアレイ基板20とを貼付するだけで、上記実施形態の立体視画像表示装置と同等の機能のものを簡易に製造することができる。
【0109】
上記実施形態の立体視画像表示装置によれば、簡易な構成かつ低コストで製造することができるとともに、自然な立体視画像として観察し得る程度に十分高速な繰り返し周波数で2眼以上のカラー視差画像を表示することができる。
【0110】
また、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型シャッターアレイは、機械的可動部がなく、単純な積層構成とすることができ、さらに変調層である固体電気光学媒体を薄膜とすることが出来るため、MEMS等の機械的可動部を有するファブリーペロー可変干渉装置と比較して微細化が可能となる。従って、微細な画素回路に対しても多数のカラー視差画像に対応したシャッターアレイを作成することができる。
【0111】
また、高速変調可能であり、かつ変調層として薄膜の固体電気光学媒体(PLZT等の透明セラミックス、EOポリマーなど)を用いることができるため、液晶、MEMSなどの機械的可動部のあるものと比較して高速な繰り返し周波数で表示駆動することができる。
【0112】
また、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型シャッターアレイとすることで、シャッターアレイを単一の積層膜構成部材とすることができ、また偏光制御によるシャッターアレイと比較して偏光素子、波長板を省略することができ、さらに変調層である固体電気光学媒体を薄膜とすることができるので、大幅な低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0113】
10 アクティブマトリクス基板
11 画素回路
11a 発光素子
11b カラーフィルタ層
12 走査駆動回路
13 データ駆動回路
14 光シャッター駆動回路
15 データ線
16 ゲート走査線
17 駆動電圧線
18 制御部
19 指向性付与素子
20 光シャッターアレイ基板
21 基板
22,23 部分光透過ミラー
24 第1の電極
25 第2の電極
26 変調層
27 スイッチングアレイ回路
27a シフトレジスタ
27b スイッチ回路部
30 カラーフィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGBの3色の光を発する発光部を備えた画素部が2次元状に複数配列され、少なくとも1つの立体視画像を構成する2以上のカラー視差画像を時系列に表示する画像表示部と、
該画像表示部の前面に配置されるとともに、前記各画素部から発せられた3色の光を、該各画素部に対応する範囲を分割した分割領域毎に前記カラー視差画像の表示切替えに同期させて順次切り替えて透過する光シャッターアレイと、
該光シャッターアレイの各分割領域を透過した前記3色の光を前記分割領域毎に互いに異なる視点方向に射出させる指向性付与素子とを備え、
前記光シャッターアレイが、一対の部分光透過ミラーを備え、該一対の部分光透過ミラーの間に、前記3色の光を透過する第1の電極と、該第1の電極を透過した3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層と、該変調層を透過した3色の光を透過する線状電極が前記分割領域毎に配列された第2の電極とが積層されたものあり、
前記画像表示部の各画素部から発せられた3色の光が、前記光シャッターアレイの分割領域毎に順次切り替えられて透過するように前記各線状電極に対して電圧を順次切り替えて印加する駆動部を備えたことを特徴とする立体視画像表示装置。
【請求項2】
前記光シャッターアレイが、ファブリーペロー波長掃引フィルタ型シャッターアレイであって、複数の透過ピーク波長を有するものであり、
前記光シャッターアレイの一対の部分光透過ミラー間の有効光路長が、前記各透過ピーク波長と前記画素部から発せられるR光、G光およびB光の発光スペクトル強度ピーク波長とがそれぞれ対応して略一致するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の立体視画像表示装置。
【請求項3】
前記光シャッターアレイの一対の部分光透過ミラー間の有効光路長Leffが、下式(1)および(2)を満たすように設定されていることを特徴とする請求項2記載の立体視画像表示装置。

λ:前記G光の発光スペクトル強度ピーク波長
λm+l:前記R光の発光スペクトル強度ピーク波長
λm−l:前記B光の発光スペクトル強度ピーク波長
m:正の整数
l:mより小さい正の整数

【請求項4】
前記駆動部による前記分割領域に対応する線状電極への電圧印加によって前記複数の透過ピーク波長がシフトして、前記画素部から発せられるR光、G光およびB光の透過と非透過とが切り替えられるように前記変調層の屈折率変化が設定されていることを特徴とする請求項2または3記載の立体視画像表示装置。
【請求項5】
前記光シャッターアレイの複数の透過ピークのスペクトル幅が、前記透過ピーク波長のシフト量よりも狭いことを特徴とする請求項4記載の立体視画像表示装置。
【請求項6】
前記一対の部分光透過ミラーを構成する各部分光透過ミラーの反射率が、80%以上であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項7】
前記発光部が、光を発する発光素子と該発光素子から発せられた光をR光、G光およびB光にそれぞれ狭帯域化するフィルタ部とを備え、
前記R光のフィルタ部、前記G光のフィルタ部および前記B光のフィルタ部の配列方向と前記線状電極の延伸方向とが一致するように設けられていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項8】
前記フィルタ部が、狭帯域のR光、G光およびB光に波長変換するものであることを特徴とする請求項7記載の立体視画像表示装置。
【請求項9】
前記狭帯域のR光、G光およびB光の半値帯域幅δλR,G,Bが、下式(3)を満たす値であることを特徴とする請求項8記載の立体視画像表示装置。

δn:前記変調層の屈折率変調
Lc:前記一対の部分光透過ミラー間の距離
m:正の整数
【請求項10】
前記変調層が、セラミックスまたはポリマーから形成されるものであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項11】
前記光シャッターアレイの厚さが1.5μm以下であることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項12】
一対の部分光透過ミラーを備え、
該一対の部分光透過ミラーの間に、
2次元状に配列された複数の画素部の各画素部から発せられたRGBの3色の光を透過する第1の電極と、
該第1の電極を透過した3色の光を透過するとともに、電圧印加によって屈折率が変化する材料によって形成された変調層と、
該変調層を透過した3色の光を透過する線状電極が複数配列された第2の電極とが積層され、
前記各線状電極へ電圧印加が順次切り替えられることによって、前記各画素部に対応する範囲を分割した分割領域が順次切り替えられて、該各分割領域を前記3色の光が透過するように構成されたことを特徴とする光シャッターアレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−18318(P2012−18318A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156022(P2010−156022)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】