説明

立体賦形シート

【課題】液の透過性が良好であり、かつ強度の高い立体賦形シートを提供すること。
【解決手段】第1の繊維シート11と第2の繊維シート12を含み、両シート11,12が複数の接合部15において接合されてなる立体賦形シート10である。第2の繊維シート12は実質的に平坦である。第1の繊維シート11は接合部15を含む凹部14と中空の凸部13とを複数有する凹凸形状をなしている。接合部15は鋭角の角部15aを有する形状をしている。角部15aの近傍の位置において、凸部13はその側部13bに、繊維の寄り分けによって形成されかつ凸部13の内外を連通する孔部16を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料からなる立体賦形シート及びその製造方法に関する。本発明の立体賦形シートは、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の構成材料として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
立体賦形された不織布を吸収性物品の表面シートとして用いることが種々提案されている。例えば熱可塑性繊維を融着させた不織布で構成され、開口及び底面を有し下方向へ延出して配列する導液凹部と、該導液凹部の開口の周縁に連続する肌接触域とが形成された吸収性物品の表面シートが提案されている(特許文献1参照)。この表面シートにおいては、導液凹部の底面及び側面に複数の導液裂け目が設けられている。この導液裂け目は、体液が導液凹部に流入したときに、導液裂け目を通って吸収性物品の内部に吸収されるようにすることを目的として設けられている。
【0003】
特許文献1には、前記の導液裂け目は、次の方法で形成されると記載されている。メルトブロー装置から溶融ポリマーを吐き出し、高速高温空気流で極細繊維化して、導液凹部と同様な形状、大きさ、配列の成形要素群を有するコンベアの上面に堆積して不織布化する。これと同時に、コンベアの下面に配置したサクションによって、繊維が軟化状態にある不織布の所与域に圧力をかけ、この圧力をかけた域におけるコンベアの開口群に位置する不織布部分を下方向に吸引延伸する。この吸引延伸によって、不織布の当該延伸部分が開口及び底面を有する管状に垂下したものである導液凹部が形成される。そして、吸引延伸によって導液凹部の底面及び側面の繊維密度が肌接触域のそれよりも低くなり、これらの部位の生地が一部破裂して裂け目が形成される。
【0004】
以上の方法によれば、導液裂け目は、繊維の伸長及び破断によって形成されるので、繊維が破断される分だけ、得られる表面シートは強度が低下しやすくなる。また、以上の方法では、導液裂け目の形成位置を一定にすることは極めて困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平4−58951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る立体賦形シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の繊維シートとその下に積層された第2の繊維シートとを含み、両シートが複数の接合部において接合されてなり、
第2の繊維シートは実質的に平坦である一方、第1の繊維シートは前記接合部を含む凹部と、該凹部間に位置する中空の凸部とを複数有する凹凸形状をなしており、
前記接合部が鋭角の角部を有する形状をしており、
前記角部の近傍の位置において、前記凸部はその側部に、繊維の寄り分けによって形成されかつ該凸部の内外を連通する孔部を有している立体賦形シートを提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記の立体賦形シートの好適な製造方法として、
互いに噛み合い形状となっている第1及び第2の凹凸ロールを用い、少なくとも第1のロールを加熱した状態下に、両ロール間に、熱の賦与によって伸長する熱伸長性繊維を含む第1の繊維シートを押し込んで、該第1の繊維シートに該凹凸ロールの形状に対応する凹凸形状を賦与し、
第1の凹凸ロールの周面に、凹凸形状が賦与された第1の繊維シートを抱かせた状態で搬送しつつ、該第1の繊維シートを、別途搬送されてきた第2の繊維シートと合流させて積層し、第1の凹凸ロールとこれに対向配置された平滑ロールとを用いた挟圧によって、両繊維シートを第1の凹凸ロールの凸部に対応する位置で接合させて複数の接合部を形成する工程を含み、
第1の凹凸ロールとして、凸状部の頂面が鋭角の角部を有する形状をしているものを用い、
第1の繊維シートのうち前記角部によって押し込まれる部位を構成する繊維を、非切断下に該角部によって寄り分けるとともに熱伸長させて、該第1の繊維シートに前記孔部を形成する立体賦形シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液の透過性が良好であり、かつ強度の高い立体賦形シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の立体賦形シートの一実施形態の要部の縦断面図が示されている。図2は、図1に示す立体賦形シートの平面図であり、接合部の配置パターンを示したものである。図1及び図2に示す立体賦形シート10は、第1の繊維シート11と、その下に積層された第2の繊維シート12との接合体から構成されている。立体賦形シート10は、第1の繊維シート11の立体賦形によって、実質的に平坦な第2の繊維シート12上に、第1の繊維シート11で形成された多数の凸部13を有するとともに、凸部13間に凹部14を有している。第1の繊維シート11と第2の繊維シート12とは多数の接合部15において部分的に接合されている。接合部15は、上述した凹部14に含まれ、その一部をなしている。凸部13の内部は中空状、即ち空洞になっている。隣り合う凸部13の間は凹部14になっている。
【0011】
凸部13及び凹部14は、図2に示すX方向に沿って交互に配置されている。これとともに凸部13及び凹部14は、X方向と直交する方向であるY方向に沿っても交互に配置されている。X方向は、立体賦形シート10を製造するときの機械方向(MD)に一致している。Y方向は、幅方向(CD)に一致している。立体賦形シート10を第1の繊維シート11の側から平面視すると、凸部13及び凹部14は、千鳥格子状に配置されている。凹部14の前後及び左右は凸部13で取り囲まれている。つまり凹部14閉じたものとなっている。
【0012】
凸部13及び凹部14がこのように配置されていることで、立体賦形シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いると、該シート具備する吸収性物品においては液漏れが極めて効果的に防止される。詳細には、立体賦形シート10を例えば使い捨ておむつ、特に高粘度の排泄物である軟便を排泄する低月齢児用のおむつの表面シートとして用いた場合には次の効果が奏される。軟便は高粘度であることから、一般に表面シートを速やかに透過しづらく表面シート上に滞留して横流れを起こしやすい。これに対して、本実施形態の立体賦形シート10を用いれば、軟便は、凸部13によって取り囲まれて形成された閉じた凹部14内に捕捉されるので横流れが起こりづらくなる。また捕捉されることに起因して下方向(つまり吸収体方向)への移動が促進される。その結果、軟便の漏れが防止される。また、凸部13はその内部が空洞であることから、吸収体に吸収された軟便の色が、表面シート側から見て減殺されるという隠蔽効果もある。これらの効果は、軟便と同様に高粘度の排泄物である経血を吸収するための生理用ナプキンの表面シートとして、本実施形態の立体賦形シート10を用いた場合にも同様に奏される。
【0013】
図1に示すように、凸部13は天面13a及び該天面13aに連なる傾斜した側部13bから構成されている。なお、図1は、図2においてX方向に沿った立体賦形シート10の縦断面図を示しているが、図2においてY方向に沿った縦断面の状態も図1と同様になる。
【0014】
本実施形態の立体賦形シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、凸部13はその高さH(図1参照)が、0.3〜10mm、特に0.7〜5mmであることが好ましい。また、X方向に沿う凸部13の底部寸法Aは1.5〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。Y方向に沿う底部寸法は、X方向に沿う凸部13の底部寸法Aと同様とすることができる。更に、凸部13の底面積は2.25〜900mm2、特に4〜50mm2であることが好ましい。
【0015】
本実施形態の立体賦形シート10においては、凹部14の一部をなす接合部15の平面視での形状に特徴を有している。詳細には、接合部15は、図3(a)に示すように、鋭角の角部15aを有する形状をしている。具体的には、鋭角の頂角を有する複数の三角形の部位が放射状に配置された形状をしている。図3(a)及び先に説明した図2には、4つの三角形の部位15bを含む十文字状の形状をした十文字状の接合部15が示されている。このような形状の接合部15を、後述する製造方法に従い形成することで、角部15aの近傍の位置において、図1に示すように、凸部13には、その側部13bに、繊維の寄り分けによって形成されかつ該凸部13の内外を連通する孔部16が形成される。この孔部16も、本実施形態の立体賦形シート10の特徴の一つである。この孔部16は、凸部13の内外を連通するものなので、立体賦形シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用い、第1の繊維シート11を肌当接面側に配した場合、第1の繊維シート11側に排泄された液は、孔部16を通じて凸部13内へ素早く透過し、更に第2の繊維シート12を透過して、その下に位置する吸収体へ吸収される。その結果、肌当接面である第1の繊維シート11の表面には液残りが発生しづらくなり、立体賦形シート10を備えた吸収性物品はドライ感の高いものとなる。
【0016】
なお、鋭角の角部15aを有する接合部15の形状として図3(a)には、十文字状の形状を示したが、接合部15の形状はこれに限られず、例えば図3(b)に示す星形正五角形や図3(c)に示す星形正六角形などの星形多角形の形状を採用することもできる。更に、図3(d)に示す形状を採用することもできる。これらの形状の接合部15においては、少なくとも1つの角部15aが鋭角であれば足り、すべての角部15aが鋭角であることを要しない。角部15aは、その角度が好ましくは10〜50度、更に好ましくは20〜40度であると、繊維の破断が実質的に観察されない孔部16が一層首尾良く形成され、更に孔部16の形成後に引っ掛け等によって毛羽が生じたり、孔部16が閉塞されたりすることを防止できる。立体賦形シート10の製造の精度上、微視的には角部15aの最先端が丸みを帯びている場合があるが、繊維の寄り分けを行うことができ、かつ巨視的に角部と呼べる程度である限り、そのような丸みを帯びた角部も、本発明にいう角部に包含される。
【0017】
接合部15の形状が、図3(a)ないし(d)のいずれの場合であっても、該接合部15の大きさは、第1の繊維シート11と第2の繊維シート12との接合強度や、孔部16の形成性に影響を及ぼす。この観点から、個々の接合部15の大きさは、面積で表して1〜50mm2程度、特に4〜25mm2程度であることが好ましい。また、立体賦形シート10の平面視における面積に対する接合部15の面積の総和の割合(この値を「面積率」という。)は、5〜50%、特に10〜20%であることが好ましい。
【0018】
孔部16は、凸部13を構成する繊維シートである第1の繊維シート11の構成繊維の寄り分けによって形成されたものである。孔部16は、繊維が全く存在していない完全な孔であるか、又は繊維が存在しているものの、その数がまばらであり、孔と呼べる程度の形状を有しているものの双方を包含する。孔部16の大きさや形状は本発明において臨界的でなく、立体賦形シート10の具体的な用途や、凸部13の大きさ等にもよるが、例えば立体賦形シート10を吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、0.7〜2mm2程度、特に1〜2mm2程度に設定すれば、十分に満足すべき結果が得られる。
【0019】
図1に模式的に示されるように、孔部16は、凸部13の高さHに対して、その1/2よりも下側の位置に形成されている。また立体賦形シート10を平面視した場合、孔部16は、接合部15における角部15aの近傍の位置において、該角部15aを含むように、該角部15aに一対一で対応して形成されている。先に述べたとおり、本実施形態においては、角部15aを4つ有する十文字状の形状をしているので、凸部13においては、これを平面視した場合、90度おきに4つの孔部16が位置することになる。参考までに、図2に、孔部16の形成位置を模式的に示す。
【0020】
孔部16の周囲に存在する繊維(この繊維は、第1の繊維シート11の構成繊維である)には、切断による端部が実質的に存在しないことが好ましい。これによって、孔部16を有するにもかかわらず、立体賦形シート10の強度を十分に高いものとすることができる。孔部16の周囲に存在する繊維に、切断による多数の端部が観察される場合には、凸部13に外力が加わった場合に孔部16や凸部13の形状が変形しやすい傾向にある。また立体賦形シート10の強度が低下しやすい傾向にある。繊維に切断が生じているか否かは、孔部16及びその周囲を顕微鏡観察することで判断できる。繊維の端部が多数観察される場合には、繊維が切断していると判断できる。逆に、繊維の端部が全く観察されないか、又は僅かに数本程度の少量の端部しか観察されない場合には、繊維は実質的に切断していないと判断できる。繊維に実質的に切断を生じさせずに孔部16を形成するには、第1の繊維シート11の原料繊維として、熱の付与によって長さが伸びる熱伸長性繊維を用い、かつ後述する製造方法を採用すればよい。したがって、後述する製造方法から明らかなように、本実施形態の立体賦形シート10においては、第1の繊維シート11の構成繊維として、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維が含まれている。
【0021】
第1の繊維シート11に、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維が含まれている場合、該繊維シート11は、第2の繊維シートに近い側に位置する下層と、該下層の上に位置する上層とを有する多層構造のものであることが好ましい。多層構造の繊維シート11においては、上層に、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維が含まれていることが好ましい。一方、下層には、熱融着性繊維が含まれていることが好ましい。下層には、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維は含まれていてもよく、あるいは含まれていなくてもよい。好ましくは下層には、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維は含まれていない。多層構造の繊維シート11を用い、かつ上層及び下層に含まれる繊維として上述した繊維を採用することによって、接合部15における第1の繊維シート11と第2の繊維シート12との接合強度を十分に高くすることが可能となる。これとともに、繊維の破断を生じさせることなく孔部16を首尾良く形成することが可能となる。
【0022】
第1の繊維シート11及び第2の繊維シート12はいずれも繊維を原料とするシートからなる。これらの繊維シート11,12は、不織布、織布、編み物地、ウエブ等から構成されている。繊維シート11,12が不織布から構成される場合、該不織布としては、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また繊維シート11,12がウエブから構成される場合、該ウエブとしては、構成繊維がゆるやかに交絡してそれ自身ではシート状の形態を保てない程度の低交絡度のものや、エンボスによる接合等の繊維結合点をある程度有し、不織布とは呼べないまでも、ある程度の保形性を有しているものが包含される。後述する立体賦形シート10の好適な製造方法に鑑みると、第1の繊維シート11はウエブ又は不織布からなることが好ましく、第2の繊維シート12は不織布からなることが好ましい。
【0023】
第1の繊維シート11及び第2の繊維シート12の坪量は、立体賦形シート10の製造のしやすさや、立体賦形シート10の具体的な用途に応じ適切に設定することができる。立体賦形シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、第1の繊維シート11の坪量を15〜30g/m2に設定することが好ましく、第2の繊維シート12の坪量を10〜30g/m2に設定することが好ましい。
【0024】
先に述べたとおり、第1の繊維シート11は、好ましくは熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維を含んでいる。また第1の繊維シート11は、好ましくは熱融着性繊維を含んでいる。第1の繊維シート11がこれらの繊維を含んでいる場合、該繊維シート11は、これらの繊維が均一混合された単層のシートでもよく、あるいは各繊維を別個に含む多層構造のシートでもよい。後者の場合には、先に述べたとおり、多層構造における上層に、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維が含まれ、下層に熱融着性繊維が含まれていることが好ましい。
【0025】
一方、第2の繊維シート12の構成繊維に特に制限はない。該シート12と第1の繊維シート11との接合強度を考慮すると、第2の繊維シート12には熱融着性繊維が含まれていることが好ましい。
【0026】
第1の繊維シート11の原料である、熱の付与によって長さが伸びる熱伸長性繊維においては、加熱によってランダムに折り畳まれていた樹脂の結晶化が進行することによって伸びる場合、繊維自体の伸長と捲縮加工が施された繊維の捲縮の解除によって見かけの長さが伸びる。特に熱伸長性繊維として、熱融着性成分、例えばポリエチレン樹脂で繊維外面が形成され、繊維内部にそれよりも融点の高い樹脂(例えばポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂)であって繊維外面樹脂の軟化点から融点までの範囲で熱によって結晶化が進むように結晶化が制御された低結晶性の樹脂からなる芯鞘構造繊維又はサイド・バイ・サイド構造繊維を用いることが好ましい。このような繊維を用いることで、結晶化の進行による伸長を抑制することが起こり難く、繊維自体の破断も起こり難い。伸長性をより高めて孔部16の形状を保つ観点からは、新たな捲縮が形成されない芯鞘構造の繊維が好ましい。
【0027】
熱伸長性複合繊維としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2005−350836号公報や特開2007−130800号公報に記載のものを特に制限なく用いることができる。これらの文献に記載されている熱伸長性複合繊維は、多成分系の複合繊維(芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維等)であり、熱融着性繊維でもある。熱伸長性複合繊維は、それを構成する多成分系の樹脂のうち、最も融点の低い樹脂における当該融点から10℃高い温度で測定された熱伸長率が8%〜40%、特に10%〜30%であることが、嵩高感の高い不織布を容易に得られ、また適度な剛性を不織布に付与できる点から好ましい。熱伸長率は、特開2005−350836号公報に記載の方法に従い測定することができる。
【0028】
一方、熱融着性繊維としては、当該技術分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。そのような繊維としては、低融点成分及び高融点成分からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型複合繊維等が典型的なものとして挙げられる。
【0029】
第1の繊維シート11及び第2の繊維シート12の構成繊維の太さについては、立体賦形シート10の具体的な用途に応じて適切な範囲が選択される。立体賦形シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、第1の繊維シート11の構成繊維の太さを0.5〜6.6dtex、さらに好ましくは1.0〜4.4dtex とし、第2の繊維シート12の構成繊維の太さは、0.5〜6.6dtex、さらには1.0〜3.3dtexとすることが好ましい。この太さは、繊維が熱伸長性繊維である場合には、伸長後の太さのことである。
【0030】
次に、本実施形態の立体賦形シート10の好ましい製造方法を、図4を参照しながら説明する。図4に示すように、先ず、第1の繊維シート11を供給する。この状態の繊維シート11は、まだ立体賦形されていない。第1の繊維シート11には、伸長する前の状態の熱伸長性繊維が少なくとも含まれている。第1の繊維シート11とは別に、第2の繊維シート12供給する。供給された第1の繊維シート11を、周面に凸状部及び凹状部を有し凹凸形状となっている第1のロール21と第1のロール21の凹凸形状と噛み合い形状となっており、かつ凸状部及び凹状部からなる凹凸形状を周面に有する第2のロール22との噛み合わせ部に噛み込ませて上層繊維シート2を凹凸賦形する。第1のロール21は、図4に示すように一方向へ回転している。第2のロール22は、第1のロール21と反対方向へほぼ同速で回転している。このような構造のロール21,22の詳細については、本出願人の先の出願に係る特開2004−174234号公報及び特開2005−111908号公報等に記載されている。
【0031】
第1のロール21及び第2のロール22の周面を平面に引き延ばした状態での凸状部の配置パターンは、図2に示す立体賦形シート10における接合部15の配置パターンと一致している。また、第1のロール21及び第2のロール22のうち、少なくとも第1のロール21における凸状部は、その先端部における頂面の形状が、先に説明した図3(a)に示す十文字状の形状になっている。
【0032】
第1及び第2のロール21,22のうち、少なくとも第1のロール21は、第1の繊維シート11に含まれている熱伸長性繊維の伸長開始温度以上に加熱されている。本明細書において伸長開始温度とは、繊維の伸長は開始されるが、すべての構成繊維が、構成される樹脂の融点を超えず繊維形状を残せる程度の温度のことをいう。本実施形態で用いられる熱伸長性繊維では、外面成分の軟化点よりも高く融点よりも低い温度であるか、又は外面成分の融点よりも高いが内側成分の融点よりも20度以上低い温度(融着適温度ともいう)をいう。
(ハトリメモ:上記の色つき文字の箇所が、技術的に意味のとおった文章になっているか御検討ください。)
【0033】
第1の繊維シート11がウエブである場合には、両ロール21,22間に該繊維シート11を供給するのに先立ち、ウエブを仮接合してもよい。仮接合には、例えばエンボス部間の距離を広くしたエンボス加工を行う方法等を採用することができる。この仮接合は、ウエブを不織布化することを目的とするものではなく、ウエブにある程度の張力を加えることを可能とすること、及び図4に示すように第1の繊維シート11をロール21,22によって凹凸賦形するときに、該繊維シート11が第1のロール21における凸状部に引っ掛かるのを低減することを目的とするものである。
【0034】
第1の繊維シート11は、その長手方向に張力が加わった状態で搬送されて、第1及び第2のロール21,22の噛み合い部に挿入され、噛み合い状態の両ロール21,22間に押し込まれる。押し込みに際しては、第1のロール21を、その周面から中心部に向けて吸引することで、押し込みを補助することが好ましい。第1のロール21にそのような吸引手段を設ける詳細については、先に述べた特開2004−174234号公報及び特開2005−111908号公報等に記載されている。
【0035】
前記の押し込みによって、第1の繊維シート11には、第1のロール21の形状に対応する凹凸形状が付与される。上述のとおり、第1の繊維シート11は張力が加わった状態で押し込まれるので、該繊維シート11の押し込みは、該繊維シート11の引き延ばしを伴いながら起こる。第1の繊維シート11の引き延ばしは、両ロール21,22における凸状部21a,22aの先端部が該繊維シート11を押し込むことによって行われるところ、先に述べたとおり、両ロール21,22のうち、第1のロール21における凸状部21aの頂面が鋭角の角部を有する形状をしているので、該角部によって第1の繊維シート11の構成繊維が寄り分けられながら押し込みが進行する。この押し込みによって孔部16が形成される。
【0036】
ところで一般に、上述した角部による寄り分けが起こりながら第1の繊維シート11の押し込みが進行する場合、該繊維シート11に引き伸ばし力が作用するので繊維が伸長する。その伸長が破断限界を超えると繊維の切断が生じてしまう。しかし、本製造方法においては、第1のロール21が上述のとおり、第1の繊維シート11に含まれている熱伸長性繊維の伸長開始温度以上に加熱されているので、第1の繊維シート11の押し込みは、それに含まれている熱伸長性繊維の伸長を伴いながら起こる。したがって、該繊維シート11の押し込みを進行させても、その構成繊維に引き伸ばし力が作用しづらく、切断が生じにくい。要するに、本製造方法においては、第1の繊維シート11のうち前記の角部によって押し込まれる部位を構成する繊維を、非切断下に該角部によって寄り分けるとともに熱伸長させている。これらの作用によって、凹凸賦形後の第1の繊維シート11においては、構成繊維の非切断下に凸部13に孔部が形成される。その結果、形成された孔部16の周囲に存在する繊維には切断が実質的に生じていない。
【0037】
図5には、このようにして形成された凸部13及び孔部16が模式的に示されている。同図は、図1に示す立体賦形シート10を紙面の右方向又は左方向から見た図に相当する。図5に示すように、凸部13は第1の繊維シート11から構成されている。この繊維シート11においては、孔部16の開孔端及びその近傍に位置する繊維Fが、ロール21,22における凸状部21a,22aの先端部による押し込みによって寄り分けされているとともに、加熱によって伸長した状態になっている。伸長した繊維は、第1の繊維シート11における上面側よりも下面側(すなわち第2の繊維シート12との対向面側)に相対的に多く存在している。この理由は、前記の凸状部21a,22aの先端部による下方へ向けての押し込みが行われながら熱伸長性繊維の伸長が起こるからである。
【0038】
以上のプロセスによって、凹凸の立体賦形が行われるとともに、凸部13の側部に孔部16が形成された第1の繊維シート11が得られる。凹凸形状が賦与された第1の繊維シート11は、第1のロール21の周面に抱かれた状態で搬送される。このような搬送によって、第1の繊維シート11の立体賦形状態が首尾良く維持される。この目的のために、第1のロール21を、その周面から中心部に向けて吸引することが有利である。なお、第1のロール21の周面に抱かれた状態の第1の繊維シート11には、該ロール21からの熱の付与が継続しているが、この時点では熱伸長性繊維の伸長が既に完了しているので、この時点での熱伸長性繊維の伸長は実質的に生じていない。
【0039】
第1の繊維シート11を第1のロール21の周面に引き続き密着させた状態下に、図4に示すように、該繊維シート11を、別途搬送されてきた第2の繊維シート12と合流させて積層する。そして第1の繊維シート11と第2の繊維シート12とを積層したものを、第1のロール12とこれに対向配置された平滑ロール23との間で加熱挟圧する。これによって、第1のロール12における凸状部21a上に位置する第1の繊維シート11が第2の繊維シート12と熱融着によって接合される。加熱挟圧においては、第1のロール21のみを所定温度に加熱しておいてもよく、あるいは必要に応じ第1のロール21とアンビルロール23の両方を加熱してもよい。なお、第1の繊維シート11と第2の繊維シート12とを熱融着によって接合することに代えて、接着剤による接着や超音波接合によってこれらのシート11,12を接合してもよい。
【0040】
このようにして製造された立体賦形シート10は、吸収性物品の表面シートとして好適に使用される。吸収性物品は一般に液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成されている。この場合、立体賦形シート10は、立体賦形された側の面である第1の繊維シート11側の面が着用者の肌に対向するように吸収性物品に組み込まれる。また得られたシート10は、吸収性物品の表面シート以外の用途、例えば吸収性物品の裏面シート、表面シートと吸収体の間に配置される中間シート、ファスニングテープを備えた使い捨ておむつにおける該ファスニングテープの基材シートや該ファスニングテープが係合するランディングテープ用シート、ウイングを備えた生理用ナプキンにおける該ウイングの基材シート、メカニカルファスナのループ部材用パネル材、清掃用シート、清拭シート等としても用いることができる。
【0041】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、凸部13及び凹部14が千鳥格子状に配置され、凹部14の前後及び左右が凸部13で取り囲まれて閉じた凹部となっていたが、この凹部は閉じておらず、その一部が他の凹部とつながっていてもよい。
【0042】
また、前記実施形態においては、立体賦形シート10における凸部13及び凹部14の列(図1におけるX方向の列)は、隣り合う列と半ピッチずつずれて、千鳥格子状に配置されていたが、半ピッチ以外のずれで配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の立体賦形シートの一実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示す立体賦形シートの平面図であり、接合部の配置パターンを示したものである。
【図3】図3(a)ないし(c)は、接合部の形状を示す図である。
【図4】図4は、図1及び図2に示す立体賦形シートを製造するための好適な方法を示す模式図である。
【図5】図5は、図4に示す方法によって形成された立体賦形シートにおける凸部及び孔部を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 立体賦形シート
11 第1の繊維シート
12 第2の繊維シート
13 凸部
14 凹部
15 接合部
16 孔部
21 第1のロール
22 第2のロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の繊維シートとその下に積層された第2の繊維シートとを含み、両シートが複数の接合部において接合されてなり、
第2の繊維シートは実質的に平坦である一方、第1の繊維シートは前記接合部を含む凹部と、該凹部間に位置する中空の凸部とを複数有する凹凸形状をなしており、
前記接合部が鋭角の角部を有する形状をしており、
前記角部の近傍の位置において、前記凸部はその側部に、繊維の寄り分けによって形成されかつ該凸部の内外を連通する孔部を有している立体賦形シート。
【請求項2】
前記孔部の周囲に存在する繊維に端部が実質的に存在していない請求項1記載の立体賦形シート。
【請求項3】
第1の繊維シートが、熱の付与によって長さが伸びた状態の熱伸長性繊維を含んでいる請求項1又は2記載の立体賦形シート。
【請求項4】
第1の繊維シートが、第2の繊維シートに近い側に位置する下層と、該下層の上に位置する上層とを有する多層構造のものであり、
上層に、長さが伸びた状態の前記熱伸長性繊維を含み、下層に、熱融着性繊維を含む請求項3記載の立体賦形シート。
【請求項5】
前記接合部は、鋭角の頂角を有する複数の三角形の部位が放射状に配置された形状をしている請求項1ないし4のいずれかに記載の立体賦形シート。
【請求項6】
前記接合部が、4つの三角形の部位を含む十文字状の形状をしている請求項5記載の立体賦形シート。
【請求項7】
請求項1記載の立体賦形シートの製造方法であって、
互いに噛み合い形状となっている第1及び第2の凹凸ロールを用い、少なくとも第1のロールを加熱した状態下に、両ロール間に、熱の賦与によって伸長する熱伸長性繊維を含む第1の繊維シートを押し込んで、該第1の繊維シートに該凹凸ロールの形状に対応する凹凸形状を賦与し、
第1の凹凸ロールの周面に、凹凸形状が賦与された第1の繊維シートを抱かせた状態で搬送しつつ、該第1の繊維シートを、別途搬送されてきた第2の繊維シートと合流させて積層し、第1の凹凸ロールとこれに対向配置された平滑ロールとを用いた挟圧によって、両繊維シートを第1の凹凸ロールの凸部に対応する位置で接合させて複数の接合部を形成する工程を含み、
第1の凹凸ロールとして、凸状部の頂面が鋭角の角部を有する形状をしているものを用い、
第1の繊維シートのうち前記角部によって押し込まれる部位を構成する繊維を、非切断下に該角部によって寄り分けるとともに熱伸長させて、該第1の繊維シートに前記孔部を形成する立体賦形シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−133071(P2010−133071A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312703(P2008−312703)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】