説明

立体障害したアミンの電気化学的製造

本発明は、
一般式(I)[式中、Rは、C16アルキル又はC26アルケニルであり、これは場合により、フェニル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の置換基で置換されている、
1は、H;C16アルキル又はC(O)−C16アルキルである、及び
Aは、5−、6−又は7員環の炭化水素環であり、これは飽和しているか又は二重結合を有し、かつ、場合により少なくとも1つのCH2基が、−O−、−S−、−NH−、−N=又は−N(C16アルキル)−により置き換えられており、かつ、場合により、フェニル、C16アルキル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の更なる置換基で置換されている]
の相応するオキシム誘導体の陰極還元工程を含み、その際、オキシム誘導体が、置換基Rを有する環の炭素に関して、少なくとも10%のR−又はS形態の過剰量を有する、
アミンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、相応するオキシム誘導体の陰極還元によるアミンの製造方法に関する。
【0002】
複数のキラル中心を有する有機化合物は、前述のキラル中心中に導入するために又は前述のキラル中心でラセミ状でない立体中心を構成するために、他の有機化合物の合成においてしばしば重要な構成要素及び助剤である。この際、しばしば、比較的硬い基本骨格を有し、更にかさばった基を含有する化合物が助剤として選択され、これは、他の有機化合物の合成の際に指揮する作用を発揮することができる。
【0003】
この際、しばしば、いわゆる「キラルプール」に由来する環式化合物が興味を持たれている。この際特に環式テルペノイドを挙げることができる。
【0004】
このような一例は、8−フェニルメントールであり、これは、例えば非対称ディールスアルダー反応の際に助剤として使用される(E. Corey, Angew. Chem. 114 (2002), 1724-1741 ; K.C. Nicolaou, Angew. Chem. 114 (2002), 1742-1773)。
【0005】
この際、メントールのヒドロキシル基は官能基として、この助剤を分子中に導入するために使用され、これにより、引き続く反応ではプロキラル中心はキラル中心に、助剤の指揮する作用下で変換される。しかしながら、この際、例えばエステルのアルコール成分として使用されることができるメントールは、比較的不安定性であり、従って、全ての反応のための選択手段ではない。
【0006】
従って、メントールへのアミン類似体、その誘導体又は類似のキラルの助剤を提供するとの要求が存在する。
【0007】
メントール及び8−メチルメントールのアミン類似体は例えばM. C. Schopohl et al., Angew. Chem. 115 (2003), 2724-2727により、個々のカフェイン−ゲスト分子(Gastmolekuel)のエナンチオフェイシャル差別化(enantiofaciaIe Differenzierung)を試験するために使用される。
【0008】
メントールのアミン類似体を獲得するために、M. C. Schopohl et al., Synthesis 17 (2003), 2689-2694は、この相応するアミンを(+)−プレゴンから出発して製造することを提案する。第一工程として、この合成の際に、残基を8位に挿入するためにエチレン性二重結合をグリニャール試薬と反応させる。これにより、前述の8位での誘導体化が可能になる。この反応に基づいて、環炭素でのキラル中心が4位に発生し、その際グリニャール試薬は、R−及びS−形態を区別化するためには適していない。これにより、この反応の際にエピマー混合物が生じる。ケト官能基のオキシムへの移行の後に、(4S)−エピマーの獲得が達成される。以下のBeauvault-Blanc反応では、トルエン中のナトリウムを用いて、オキシム官能基がアミノ官能基に変換され、その際アミノ官能基はアルキル残基に関して4位にトランス立体配置で存在する。
【0009】
これは、このメントールの立体配置に相応した立体配置を得るために、この合成における決定的な工程である。
【0010】
ナトリウムを用いた上記した還元とは対照的に、遷移金属触媒に対する不均一還元では、反応が起こらないか、又は、相応するアミンが、エピマーのアミンの等モル量を伴うこともなく、これは困難を伴ってのみ分離される。
【0011】
前述した反応の欠点はしかしながら、ナトリウムの使用であり、これは、更に比較的大量で使用される。
【0012】
本発明の課題は、従って、相応するオキシム誘導体を使用して、オキシム官能基又はこの誘導体を有し、かつ、α位にある置換基を有する、環の炭素に関して、R−又はS形態の区別化を可能にする、アミンの代替的な製造方法を提供することである。
【0013】
前記課題は、
一般式(I)
【化1】

[式中、
Rは、C16アルキル又はC26アルケニルであり、これは場合により、フェニル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の置換基で置換されている、
1は、H;C16アルキル又はC(O)−C16アルキルである、及び
Aは、5−、6−又は7員環の炭化水素環であり、これは飽和しているか又は二重結合を有し、かつ、場合により少なくとも1つのCH2基が、−O−、−S−、−NH−、−N=又は−N(C16アルキル)−により置き換えられており、かつ、場合により、フェニル、C16アルキル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の更なる置換基で置換されている]
の相応するオキシム誘導体の陰極還元工程を含み、その際、オキシム誘導体が、置換基Rを有する環の炭素に関して、少なくとも10%のR−又はS形態の過剰量を有する、
アミンの製造方法により解決される。
【0014】
即ち、意外にも、相応するオキシム誘導体の陰極還元が、所望される、上記した区別化を可能にし、かつ、このようにして、残基Rがα位にある相応するアミンの電気化学的製造を可能にし、これはトランス位にあるアミン官能基を生じ、この際、例えば元素状ナトリウムを使用する必要がないことが見出された。
【0015】
一般式(I)のオキシム誘導体では、α位で後のアミン官能基を生じる残基Rは、C16−アルキル残基又はC26アルケニル残基を示し、これは、非置換であるか又は1個以上の置換基を有している。上述の置換基の1つ又は複数のための可能性として、フェニル、O−C16−アルキル、NH−C16−アルキル、N(C16−アルキル)2、OH及びNH2が考慮される。複数の置換基が存在する限りは、これらは相互に独立して、前述した基から選択されることができる。
【0016】
有利には、残基RはC16−アルキル又はC26−アルケニルであり、これは非置換であるか又は最高で1個の置換基を有する。
【0017】
本発明の範囲内で、概念「C16−アルキル」は、1〜6個のC原子を有し、かつ、分枝していないか又は分枝しているアルキル残基を理解することができる。このような置換基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−1−ブチル、n−2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−1−ペンチル、n−2−ペンチル、n−3−ペンチル、n−ヘキシルである。
【0018】
更に、本発明の範囲内で、概念「C26−アルケニル」は、2〜6個のC原子を有し、かつ、分枝していないか又は分枝しているアルケニル残基を理解することができる。このための例は、ビニル、アリル、n−1−プロペニル、n−2−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルである。
【0019】
有利には、残基Rは、置換されていないC16アルキルであるか、置換されていないC26アルケニルであるか又はフェニル置換されたC16アルキルである。
【0020】
特にとりわけ有利には、Rはイソプロピル、tert−ブチル又は1−フェニル−1−メチルエチルである。
【0021】
一般式(I)のオキシム誘導体とは、オキシム自体であることができる。更に、オキシム基の水素は、C16−アルキル−又はC(O)−C16アルキル残基により置き換えられていることができる。有利には、オキシム誘導体は、(R1=H)又はR1はメチル又はアセチルであるオキシムである。特にとりわけ有利には、オキシム誘導体は、オキシムである。
【0022】
更に、一般式(I)のオキシム誘導体は、環Aを有する。これは、オキシム又はオキシムの類似体を有する炭素並びにこの炭素に直接的に隣接した炭素を包含する。全体としてこの環Aは、5、6又は7個の環原子を有する。環Aは、飽和しているか又は二重結合を有する炭化水素環である。この際、環Aは、シクロペンタン−、シクロペンテン−、シクロヘキサン−、シクロヘキセン−、シクロヘプタン−又はシクロヘプテン環であることができる。
【0023】
更に、環AのCH2基は、−O−、−S−、−NH−又は−N(C16アルキル)−により置き換えられていることができる。同様に、複数のCH2基を、前述のヘテロ原子の1つにより置き換えることが可能である。複数のヘテロ原子が環A中の環原子として存在している場合には、これらは相互に独立して選択されていることができる。環A中に二重結合が存在する限りは、少なくとも1つのCH2基がヘテロ原子により交換されており、かつ、この少なくとも1つのヘテロ原子が窒素である場合には、これは、イミノ窒素として生じることができる。複数のこの窒素が存在することもできる。
【0024】
環Aは、残基R及びオキシム基又はその類似体を介して、置換基を有しないか、1個又は数個有することができる。置換基の1個又は数個は、フェニル、−C16アルキル−、O−C16アルキル、NH−C16−アルキル、N(C16−アルキル)2、OH及びNH2からなる群から選択されることができる。複数の置換基が存在する限りは、これらは独立して、前述した基から選択されていることができる。有利には、置換基はC16アルキル基である。特に有利にはメチルである。
【0025】
環Aは有利には正確に1個の更なる置換基を有する。
【0026】
無論、一般式(I)のオキシム誘導体の環Aはそれぞれの場合に、残基R並びにオキシム又はオキシム類似体を置換基として有する。
【0027】
環Aが炭素原子のみから形成されていない限りは、環は例えばテトラヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、ジヒドロフラン、ジヒドロピロール、オキサン、チアン、ピペリジン、ジヒドロピラン又はテトラヒドロピリジンであることができる。有利には環Aはしかしながらヘテロ原子を有しない。特にとりわけ有利には、環Aはシクロヘキサン又はシクロヘキセン、特にシクロヘキサンである。
【0028】
特にとりわけ有利には一般式(I)のオキシム誘導体は、
【化2】

からなる群から選択されたメチル置換したオキシム誘導体である。
【0029】
特にとりわけ有利には、還元後にメンチルアミン、8−メチルメンチルアミン又は8−フェニルメンチルアミンを提供する一般式(I)のオキシム誘導体である。
【0030】
この際、残基R、R1は上記した意味合いを有する。
【0031】
本発明による方法のためのオキシム誘導体は、技術水準において公知の製造方法を介して入手可能である。この際典型的には前駆体は相応するケトンである。
【0032】
製造のための手段は、還元及びジアステレオマー分離後に所望されるオキシム誘導体を構成するために、所望される置換基を有する相応する芳香族系から出発することにある。環A中に二重結合が存在する限りは、これらは、段階式な還元により又は還元−/脱離反応を介して得ることができるものである。分離は例えばH. Feltkamp et al., Liebigs Ann. Chem. 707 (1967), 78-86により記載されている。
【0033】
有利には、オキシムへの合成はいわゆる「キラルプール」を使用して行われる。このような戦略は例えばM. C. Schopohl et al., Synthesis 17 (2003), 2689-2694により記載されている。有利な出発材料はプレゴン又はメントンである。
【0034】
本発明の目的は、オキシム誘導体の相応するアミンへの陰極還元のための方法を提供することであり、この際、このオキシム官能基又はオキシム類似体はα位に残基Rを有し、その際還元の後に残基Rに対してトランス位にあるアミノ官能基を主として生じる。これはしかしながら、残基Rを有するキラルの環−C原子が、ラセミの形態に存在しないことを前提条件とする。
【0035】
従って、本発明の範囲内においては、一般式(I)のオキシム誘導体中に少なくとも10%の過剰量のR−又はS形態が存在し、これは有利には少なくとも50%、更に有利には少なくとも75%、更に一層有利には少なくとも90%、更に一層有利には少なくとも95%、更により有利には少なくとも98%、更により一層有利には少なくとも99%、とりわけ少なくとも99.9%である。特にとりわけ有利には、置換基Rを有する環の炭素は、R−又はS形態にのみ存在する。
【0036】
更にオキシム誘導体中に更なる立体中心が存在する場合には、このためにこの類似体が当てはまる。
【0037】
このR−又はS形態の過剰量は、式
【数1】

(その際Eは、%で過剰量を指し、かつ、nはそれぞれR−又はS形態の物質量を、置換基Rを有する環の炭素に関して意味する)
から生じる。
【0038】
置換基Rを有する環の炭素が、一般式(I)のオキシム誘導体中のこの唯一の立体中心である限りは、これはこのオキシム誘導体のエナンチオマー過剰である。
【0039】
更に少なくとも1つの更なる立体中心が存在する限りは、この過剰量は、置換基Rを有する環の炭素に関するエピマー過剰量である。
【0040】
過剰量の算出のための前述の程度の決定のためには、技術水準において公知の方法を用いることが可能である。エナンチオマー過剰である限りには、相応する評価が、慣用の方法、例えば円二色性を介して行われることができる。算出のための更なる方法は、一般式(I)のオキシム誘導体の誘導体化により与えられるものであり、この結果、この得られる生成物はジアステレオマーとして存在し、かつ、この慣用の方法はジアステレオマーのために使用される。慣用の方法の1つは核共鳴分光法である。
【0041】
オキシムのアミンへの還元後に、更なるキラルの炭素原子が存在し、その際、この電気化学的還元のために、R−及びS−形態の間での区別化が行われ、この結果、この炭素原子に関する過剰量が達成され、これは0%よりも大きい。有利には、この過剰量は少なくとも10%、より有利には少なくとも50%、特に少なくとも60%である。
【0042】
カソードに対するオキシムの電気化学的還元は、WO-A 2006/005531から公知である。
【0043】
この還元は例えば分割されたか又は分割されていないフローセル(Durchfluss)中で行われることができる。有利には分割されたフローセルが適用される。
【0044】
場合により、この陰極液は、反応の経過において形成されるアミン及びオキシム誘導体の他に溶媒を含有する。この際、これは、有機化学中で一般的な慣用の不活性な溶媒、例えばジメチルカルボナート、プロピレンカルボナート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリル又はジメチルホルムアミドである。有利には溶媒としてC1〜C4−アルキルアルコールが使用される。前述の溶媒との組み合わせにおいて、C5〜C7−炭化水素、例えばヘキサンが溶媒として適している。同様に、環式の又は非環式のエーテルが使用可能である。同様に水が使用可能である。更に、前述の溶媒の混合物が使用されることができる。
【0045】
有利には、アルコール、水、エーテル又はこの混合物である。この際、一相又は多相の系が形成されることができる。
【0046】
特にとりわけ有利には、場合により相互に及び/又は水と混合して存在するアルコール、及び、C14アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ジオール、例えばグリコール、チオール、例えばグリセリン、ポリオール、ポリエーテル又はアルコキシアルカノール、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル又はジメトキシエタンである。特にとりわけ有利にはジメトキシエタンである。
【0047】
伝導性の製造のためには、陰極液は、一般的に、鉱酸、有利には硫酸又はアルキル(C14)−アルキルアルコラート、有利にはナトリウムメタノラートを含有する。
【0048】
一般的に、陽極液及び場合により陰極液にも(前述した、伝導性を製造する剤の他に)、支持塩を添加する。この際一般的に、これは、アルカリ、テトラ(C16アルキル)アンモニウム−、有利にはトリ(C16アルキル)メチルアンモニウム塩である。対イオンとして、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、アルキルリン酸イオン、アルキル炭酸イオン、硝酸イオン、アルコラートイオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン又は過塩素酸イオンが考慮される。
【0049】
有利には、メチルトリブチルアンモニウムメチルスルファート(MTBS)、メチルトリエチルアンモニウムメチルスルファート又はメチル−トリ−プロピルメチルアンモニウムメチルスルファートである。
【0050】
この陽極液は、有利には同様に溶媒を含有し、これは水、アルコール又は複数のアルコール又はこの2種以上の溶媒の混合物を含有する。原則的に、この陽極液のためには、陰極液のためのものと同一のアルコールが考慮され、これはしかしながら、陰極液とは異なっていることもできる。
【0051】
この本発明による方法は有利には、出発材料、例えば生成物がカソードプロセスにより化学的な副反応が起こることを排除することができるように本発明による方法の範囲内で全ての通常の分割された電解セルタイプ中で実施されることができる。有利には、連続的に、分割されたフローセルを用いて実施される。
【0052】
平行平面形の電極配置を有する分割されたセルが有利には使用される。分離媒体としてイオン交換膜、微孔質膜、ダイアフラム、フィルター織布が使用されることができ、これは電子伝導性の材料、ガラスフリット並びに多孔性セラミックからなる。有利にはイオン交換膜、特にカチオン交換膜が使用される。この伝導性の膜は、市販されていて、例えば、商品名Nafion(R) (ET. DuPont de Nemours and Company社)及びGore Select(R)(W. L. Gore & Associates, Inc.社)から入手可能である。
【0053】
カソードとして有利には、カソード表面が高い水素過電圧を有する材料、例えば鉛、亜鉛、スズ、ニッケル、水銀、カドミウム、銅又はこれらの金属の合金又はガラス状炭素、グラファイト又はダイヤモンドから構成されているカソードが使用される。
【0054】
特に有利には、例えばEP-A-1036863中に記載されているダイアモンド電極である。
【0055】
陽極としては根本的に全ての慣用の材料が考慮され、有利にはこの材料は陰極材料としても挙げられる。酸性の陽極液として有利には、白金−、ダイアモンド−、ガラス状炭素−又はグラファイトアノード又は当業者に公知の寸法安定性のアノード(DSA)が使用される。陽極液が塩基性である場合には、有利には特殊鋼が使用される。
【0056】
この陽極の反応は自由に選択されることができ、有利には溶媒、例えばC1〜C4−アルコールが酸化される。メタノールの使用の場合には、メチルホルミアート、ホルムアルデヒド−ジメチルアセタール又はジメチルカルボナートが形成される。このために、例えばC1〜C4−アルコールで希釈された硫酸溶液が使用される。
【0057】
本方法を実施する際の電流密度は、一般的に1〜1000mA/cm2、有利には10〜100mA/cm2である。一般的には常圧で作業される。より高い圧力は、出発化合物の又は溶媒の沸騰を回避するために、より高い温度で実施されることが望ましい場合に有利に適用される。
【0058】
反応の終了後に、電解溶液を一般的な分離方法により後処理する。このためには一般的には陰極液がまず蒸留され、かつ、この個々の化合物は異なる画分の形態で分離して獲得される。更なる精製は例えば、結晶化、蒸留又はクロマトグラフィにより行われることができる。
【0059】
実施例
実施例1
(−)メントンオキシムの電気化学的還元
【化3】

【0060】
分割された電解セル中で、陽極液及び陰極液を、以下に挙げる変法に応じて電流密度67mA/cm2で電気化学的に反応させ、その際8F/molが供給される(2当量に相当)。この電解は室温で実施され、この分割されたセルは2つのフランジセルから構成され、その際陽極及び陰極の半室は、Nafion−324膜により分離されている。陽極材料は、白金であり、陰極として鉛が使用される。
【0061】
後処理のために反応混合物を水(50mL)で希釈し、濃硫酸でpH1に調整し、かつシクロヘキサンで洗浄する(4×30ml)。この水相を引き続き50%の苛性カリ液を用いてpH12にし、かつ、新たにTMBEで抽出した(4×50ml)。この一緒にされた有機性の塩基性の抽出物を、10%の苛性ソーダ液(2×100ml)で及び酸化カルシウムを介して乾燥し、かつ、回転蒸発器で溶媒を取り除いた。更なる後精製は例えば、カラムクロマトグラフィ又は蒸留により行われることができる。
【0062】
変法A:2のために選択的
陽極液:20ml 1M H2SO4
20ml メタノール
陰極液:2.05g (−)−メントンオキシム(1)(12.1mmol)
20ml 1M H2SO4
20ml DME
陰極材料:水銀
電流密度:23.3mA/cm2
温度:−14〜−18℃
Q/n:6.6F/mol、1(1.65当量に相当)
収率:56%(1.06g、6.8mmol);2:3=4:1(定量的にアセトアミドへと反応した生成物のクロマトグラフィによる検査から決定したエピマー比)(エピマー過剰 de=60%)。
【0063】
変法B:3のために選択的
陽極液:50ml 1M H2SO4
50ml メタノール
陰極液:2.26g (−)−メントンオキシム(1)(13mmol)
25ml 1M H2SO4
75ml エチレングリコールモノメチルエーテル
陰極材料:鉛
電流密度:50mA/cm2
Q/n:6F/mol、1(1.5当量に相当)
収率13%(0.93g、6mmol);2:3=1:0.57(アセトアミドへと反応した生成物のクロマトグラフィによる検査から決定したエピマー比)
変法C:エピマー混合物
陽極液:40ml 1M H2SO4
陰極液:3.26g (−)−メントンオキシム(1)(21.7mmol)
20ml 1M H2SO4
20ml 1,4−ジオキサン
陰極材料:鉛
収率50%(1.69g:10.9mmol):2:3=5:4(NMRにより決定したエピマー比)(de=11%)。
【0064】
実施例2
(−)−(E)−(1R,4S)−8−フェニルメンチルオキシムの電気化学的還元
助剤としての支持塩の使用
陽極液:50ml 0.162M H2SO4、メタノール中(2質量%に相当)
陰極液:0.51g (−)−(E)−(1R,4S)−8−フェニルメンチルオキシム(0.002mol)
50ml 0.162M H2SO4
0.017M トリエチルメチルアンモニウムメチルスルファート、メタノール中(2質量%、0.5質量%に相当)
陰極材料:鉛
電流密度:12.5mA/cm2
Q/n:10F/mol (−)−(E)−(1R,4S)−8−フェニルメンチルオキシム(2.5当量に相当)
温度:20〜22℃
収率94%(0.45g、0.002mol);ジアステレオマー比(−)−(1R,3R,4S)−8−フェニルメンチルアミン:(+)−(1R,3R,4R)−8−フェニルメンチルアミン6.5:1(1H−NMR分光法検査から決定)、de=73%
電解装置:分割された電解セル
分離媒体:Nation(R)
【0065】
実施:
(−)−(E)−(1R,4S)−8−フェニルメンチルオキシムを陰極液中に溶解し、かつ、陰極半室セル中に移行する。この陽極半室セルを、陽極液で充填する。この電解を定流式に電流密度12.5mA/cm2で及び温度20〜22℃で行う。陽極として白金を、陰極として鉛を用いる。1966C(10F/mol(−)−(E)−(1R,4S)−8−フェニルメンチルオキシム、2.5当量)の電荷量の移行後に、電解が終了される。
【0066】
後処理:
この反応混合物を陰極半室からフラスコ中に移行し、かつ、このセルを全体で50mlのメタノール及び50mlの水ですすいだ。この全体の陰極搬出物を、濃硫酸でpH=1に調整し、かつ、減圧下でメタノールを取り除いた。この搬出物をシクロヘキサンで洗浄(4×30ml)し、かつ、この水相のpH値を、以下において、50%の苛性ソーダ液でpH=12に調整した。TBME(4×50ml)で抽出し、この一緒にした有機相を、酸化カルシウムを介して乾燥させ、回転蒸発器で溶媒を取り除いた。(1R,3R)−8−フェニルメンチルアミンを、薄い黄色の液体として得る。
【0067】
観察:
このクランプ電圧は電解の間に高い(20.6Vまで)。いくらかの時間の後に、陰極にはコーティングが形成される。開始時に対して少ないガス発生のみが陰極に観察されることができ、これは、増加するコーティング形成と共により一層増加する。
【0068】
分析データ:
【化4】

【表1】

A:装置:GC2010、Shimadzu社、日本
カラム:石英キャピラリーカラム、HP-5、Aglient社、USA(長さ:30m;内径:0.25mm;この共有的に結合した静止相のフィルム厚:0.25μm;キャリアガス:水素;注入温度:250℃;検出器温度:300℃;カラム前圧力;106kPa)
プログラム:50°(10°〜80)(2°〜100)(15°〜270)5′。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
Rは、C16アルキル又はC26アルケニルであり、これは場合により、フェニル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の置換基で置換されている、
1は、H;C16アルキル又はC(O)−C16アルキルである、及び
Aは、5−、6−又は7員環の炭化水素環であり、これは飽和しているか又は二重結合1つを有し、かつ、場合により少なくとも1つのCH2−基が、−O−、−S−、−NH−、−N=又は−N(C16アルキル)−により置き換えられており、かつ、場合により、フェニル、C16アルキル、O−C16アルキル、NH−C16アルキル、N(C16アルキル)2、OH及びNH2からなる群から独立して選択された1個以上の更なる置換基で置換されている]
の相応するオキシム誘導体の陰極還元工程を含み、その際、オキシム誘導体が、置換基Rを有する環の炭素に関して、少なくとも10%のR−又はS形態の過剰量を有する、
アミンの製造方法。
【請求項2】
Rが、イソプロピル、tert−ブチル又は2−フェニル−2−プロピルであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1が水素であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
Aが、場合により1個以上のメチル基で置換されているシクロヘキサン又はシクロヘキセンであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
置換基Rを有する環の炭素に関して、オキシム誘導体が、少なくとも98%のエピマー過剰量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
オキシム誘導体が、
【化2】

からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
得られる生成物が、メンチルアミン、8−メチルメンチルアミン又は8−フェニルメンチルアミンであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
この還元が分割されたフローセル中で行われることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
陰極液が、水、少なくとも1種のアルコール又はエーテル又はこの混合物を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
陽極液が、水、少なくとも1種のアルコール又はこの混合物を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−541595(P2009−541595A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517180(P2009−517180)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056390
【国際公開番号】WO2008/003620
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】