説明

立体駐車装置

【課題】簡単な構成でパレット昇降体の水平姿勢を安定して保持できる立体駐車装置を提供する。
【解決手段】立体駐車装置1では、バランスチェーン13、14が前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との中間位置でパレット昇降体5の下部に架け渡されている。これにより、各段のパレット6に作用する水平荷重の作用中心Fと、拘束部であるバランスチェーン13,14とがいずれも前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8よりも中央側に位置するので、水平荷重を前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8のそれぞれに分散できる。したがって、前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8周辺の必要強度を低減でき、簡単な構成を維持できる。また、バランスチェーン13,14が作用中心Fのほぼ真下に位置するので、単一のバランスチェーン13,14でもパレット昇降体5の水平姿勢を安定して保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパレットを前後一対のパレット支柱によって多段に連結してなるパレット昇降体を備えた立体駐車装置では、昇降の際にパレット昇降体の水平姿勢を保持するためのバランスチェーンを設けたものがある。例えば特許文献1に記載の立体駐車装置では、前側パレット支柱よりも前方(車両の進入側)の位置に前側吊りチェーンと一方のバランスチェーンとが架け渡され、後側パレット支柱よりも後方の位置に後側吊りチェーンと他方のバランスチェーンとが架け渡されている。
【0003】
また、立体駐車装置の設置スペースの制約上、バランスチェーンをパレット昇降体の前後に配置することが困難な場合がある。例えば特許文献2に記載の立体駐車装置では、パレットの前端と前側吊りチェーンとの間の位置にバランスチェーンが架け渡されており、後側パレット支柱よりも後方の位置には、後側吊りチェーンのみが架け渡されている。
【特許文献1】特開平9−177349号公報
【特許文献2】実開平6−78531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献2のような吊りチェーン及びバランスチェーンの配置では、各段のパレットに作用する水平荷重の作用中心が、拘束部であるバランスチェーン側から見て前側パレット支柱よりも後方に位置する。このため、前側パレット支柱にローリングによる曲げモーメントやヨーイングによる捻りモーメントが集中的に作用しやすく、前側パレット支柱を大幅に補強する構造を別途に設ける必要性があった。しかしながら、パレット支柱を補強する構造を設ける場合、部材の大型化や部品点数の増加などによって構成の複雑化を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、簡単な構成でパレット昇降体の水平姿勢を安定して保持できる立体駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る立体駐車装置は、車両が載置される複数のパレットを前後一対のパレット支柱によって多段に連結してなるパレット昇降体と、前側パレット支柱よりもパレットの前端側となる位置及び後側パレット支柱よりもパレットの後端側となる位置でパレット昇降体の下部にそれぞれ架け渡され、パレット昇降体を吊り上げる前後一対の吊りチェーンと、前側パレット支柱と後側パレット支柱との間の位置でパレット昇降体の下部に架け渡され、前記パレット昇降体が昇降する際の水平姿勢を保持するバランスチェーンとを備えたことを特徴としている。
【0007】
この立体駐車装置では、各段のパレットに作用する水平荷重の作用中心と、拘束部であるバランスチェーンとがいずれも前後のパレット支柱よりも中央側に位置するので、付加される水平荷重を前後のパレット支柱に分散させることができる。また、バランスチェーンが前側パレット支柱と後側パレット支柱との間の位置に設けられるので、バランスチェーンを複数の箇所に設けなくてもパレット昇降体の水平姿勢を安定して保持できる。
【0008】
また、バランスチェーンは、前側パレット支柱と後側パレット支柱との中間位置に配置されていることが好ましい。こうすると、パレット昇降体の水平姿勢をより一層安定して保持することができる。また、立体駐車装置の設置箇所等により、パレット昇降体に風圧荷重がかかる場合、その荷重はパレット昇降体の投影面積に比例し、荷重中心がパレット昇降体の後方寄りとなる傾向がある。したがって、この構成は、パレット昇降体にかかる風圧荷重が地震荷重より大きいと見積もられる場合に特に有意となる。
【0009】
また、バランスチェーンは、前側パレット支柱寄りの位置に配置されていることが好ましい。車両の入出庫時には、当該車両によってパレット昇降体の前方側により大きな荷重がかかる。また、車両自体の荷重は、後軸荷重に比べて前軸荷重の方が大きい傾向にある。したがって、バランスチェーンを前側パレット支柱寄りに偏在させておくことで、パレット昇降体の水平姿勢をより一層安定して保持することができる。この構成は、立体駐車装置の設置箇所等により、パレット昇降体にかかる地震荷重が風圧荷重より大きいと見積もられる場合に特に有意となる。
【0010】
また、パレット昇降体の両側に前後一対に設けられた支柱によって構成される枠体を更に備え、枠体は、バランスチェーンの位置に対応する補強用支柱を有していることが好ましい。バランスチェーンの設置位置は、他の位置に比べて負荷が高くなる。したがって、この位置に補強用支柱を設けることにより、パレット昇降体を枠体でしっかりと支持できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成でパレット昇降体の水平姿勢を安定して保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る立体駐車装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る立体駐車装置の一実施形態を示す正面図である。また、図2は、その側面図である。図1及び図2に示すように、立体駐車装置1は、車両Kが走行する地上面から所定の深さを掘削して形成されたピットP内に設けられている。以下、車両Kの入出庫側を前側として説明する。
【0014】
ピットP内において、立体駐車装置1は、枠体2を有している。枠体2は、ピットPの前側及び後側において左右一対に立設された前側支柱3及び後側支柱4によって構成されている。枠体2に囲まれた空間には、パレット昇降体5が配置されている。
【0015】
パレット昇降体5は、車両Kが載置される複数(本実施形態では3枚)のパレット6と、パレット6の両側に配置された前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8とによって構成されている。すなわち、パレット昇降体5は、上段パレット6a、中段パレット6b、下段パレット6cを有しており、各パレット6a,6b,6cが前後一対の前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8によって3段に連結されている。
【0016】
また、パレット昇降体5の前側及び後側の下部には、下段パレット6cに設けられた吊りチェーン用スプロケット21,22を介して、前側吊りチェーン11及び後側吊りチェーン12の2つの吊りチェーンがそれぞれ架け渡されている。前側吊りチェーン11及び後側吊りチェーン12により、パレット昇降体5は、ピットPの底面から所定の高さに吊り上げられた状態となっている。さらに、パレット昇降体5の中央の下部には、下段パレット6cに設けられたバランスチェーン用スプロケット23を介して左右一対のバランスチェーン13,14が架け渡されている。
【0017】
図2に示すように、前側吊りチェーン11は、前側パレット支柱よりもパレット6の前端6e側となる位置に配置されており、後側吊りチェーン12は、後側パレット支柱8よりもパレット6の後端6d側となる位置に配置されている。バランスチェーン13,14は、パレット6の略中央において、前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との中間位置に配置されている。また、枠体2において、バランスチェーン13,14の位置に対応して、前側支柱3及び後側支柱4の中間位置に左右一対の補強用支柱9が設けられている。
【0018】
続いて、上述したパレット昇降体5の昇降機構について説明する。パレット昇降体5の昇降機構は、上述した前側吊りチェーン11、後側吊りチェーン12、及びバランスチェーン13,14のほか、図2に示すように、駆動モータ31と、連動軸32とによって構成されている。
【0019】
駆動モータ31は、駆動スプロケット33を有しており、駆動モータ31の本体部分は、枠体2における片側の後側支柱4にブラケットを介して固定されている。また、連動軸32は、前側支柱3の上部と後側支柱の上部との間に回転可能に軸支されている。連動軸32の後端部分には、連動スプロケット34が固定され、連動スプロケット34と駆動スプロケット33との間にエンドレスチェーン35が架け渡されている。
【0020】
さらに、連動軸32の前側及び後側には、前側吊りチェーン用スプロケット21及び後側吊りチェーン用スプロケット22の位置に対応させて、前側吊上用スプロケット36及び後側吊上用スプロケット37がそれぞれ固定されている。各吊上用スプロケット36,37には、それぞれ前側吊りチェーン11及び後側吊りチェーン12の一端側が巻き掛けられている。
【0021】
前側吊りチェーン11及び後側吊りチェーン12は、前側吊りチェーン用スプロケット21及び後側吊りチェーン用スプロケット22を介して下段パレット6cの下部で幅方向に架け渡され、各吊りチェーン11,12の他端側は、ピットPの図1における右側の天頂部P1に固定されている(図1参照)。
【0022】
これに対し、バランスチェーン13の一端は、ピットPの天頂部P1に固定され、他端は、ピットPの底面に固定されている。バランスチェーン13は、左側のバランスチェーン用スプロケット23の上側の略半周面に巻き掛けられ、下段パレット6cの下部で幅方向に架け渡された後、右側のバランスチェーン用スプロケット23の下側の略半周面に巻き掛けられている。また、バランスチェーン13と対をなすバランスチェーン14は、バランスチェーン13と左右対称の関係をもって配設されている(図1参照)。
【0023】
かかる構成によれば、駆動モータ31によって駆動スプロケット33が回転すると、その回転力がエンドレスチェーン35を介して連動軸32に伝達し、連動軸32が駆動スプロケット33の回転方向と同方向に回転する。そして、この連動軸32の回転に伴う前側吊りチェーン11及び後側吊りチェーン12の繰り出し及び巻き取りによって、パレット昇降体5が昇降する。パレット昇降体5の昇降によって所望するパレット6を入出庫位置(すなわち、地上面の位置)に移動させることで、パレット6への車両の入出庫が可能となる。
【0024】
昇降の際、パレット昇降体5にかかる左右の荷重が不均衡であったとしても、左右のバランスチェーン13,14によってその偏差が吸収されるため、パレット昇降体5の水平状態が常に保持される。これにより、パレット昇降体5が昇降する際の安全性が担保される。
【0025】
以上説明したように、立体駐車装置1では、バランスチェーン13、14が前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との間の位置でパレット昇降体5の下部に架け渡されている。これにより、図3に示すように、各段のパレット6に作用する水平荷重の作用中心Fと、拘束部であるバランスチェーン13,14とがいずれも前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8よりも中央側に位置するので、付加される水平荷重を前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8のそれぞれに分散させることができる。したがって、前側パレット支柱7、後側パレット支柱8、及びその周辺構造の必要強度を低減でき、これらを補強する構造を特別に設ける必要がなくなるので、簡単な構成を維持できる。
【0026】
また、立体駐車装置1では、バランスチェーン13,14が前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との中間位置に設けられている。このため、各段のパレット6に作用する水平荷重の作用中心Fのほぼ真下にバランスチェーン13、14が位置し(図3参照)、バランスチェーン13,14を複数の箇所に設けなくてもパレット昇降体5の水平姿勢を安定して保持できる。また、パレット昇降体5に風圧荷重がかかる場合、その荷重はパレット昇降体5の投影面積に比例し、荷重中心がパレット昇降体5の後方寄りとなる傾向がある。したがって、この構成は、立体駐車装置の設置箇所等により、パレット昇降体5にかかる風圧荷重が地震荷重より大きいと見積もられる場合に特に有意となる。
【0027】
さらに、立体駐車装置1では、枠体2において、バランスチェーン13,14の位置に対応して、前側支柱3及び後側支柱4の中間位置に左右一対の補強用支柱9が設けられている。バランスチェーン13,14の設置位置は、他の位置に比べて負荷が高くなる。したがって、この位置に補強用支柱9を設けることにより、パレット昇降体5を枠体2でしっかりと支持できる。
【0028】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、バランスチェーン13、14を前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との中間位置に設置しているが、図4に示す立体駐車装置61のように、バランスチェーン13,14を、前側パレット支柱7と後側パレット支柱8との間の位置で前側パレット支柱7寄りに配置してもよい。図4に示した例では、バランスチェーン13,14よりも前側となるパレット6の長さと、後側となるパレット6の長さとが4:6となっている。
【0029】
車両Kの入出庫時には、当該車両Kによってパレット昇降体5の前方側により大きな荷重がかかる。また、車両自体の荷重(質量)は、一般的に、前軸荷重と後軸荷重との比が6:4程度となる傾向にある。したがって、バランスチェーン13,14を前側パレット支柱7寄りに偏在させておくことで、パレット昇降体5の水平姿勢をより一層安定して保持することができる。この構成は、立体駐車装置の設置箇所等により、パレット昇降体5にかかる地震荷重が風圧荷重より大きいと見積もられる場合に特に有意となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る立体駐車装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示した立体駐車装置の側面図である。
【図3】立体駐車装置の作用効果を説明する図である。
【図4】本発明に係る立体駐車装置の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1,61…立体駐車装置、3…前側支柱、4…後側支柱、5…パレット昇降体、6…パレット、6d…後端、6e…前端、7…前側パレット支柱、8…後側パレット支柱、9…補強用支柱、11…前側吊りチェーン、12…後側吊りチェーン、13,14…バランスチェーン、K…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が載置される複数のパレットを前後一対のパレット支柱によって多段に連結してなるパレット昇降体と、
前側パレット支柱よりも前記パレットの前端側となる位置及び後側パレット支柱よりも前記パレットの後端側となる位置で前記パレット昇降体の下部にそれぞれ架け渡され、前記パレット昇降体を吊り上げる前後一対の吊りチェーンと、
前記前側パレット支柱と前記後側パレット支柱との間の位置で前記パレット昇降体の下部に架け渡され、前記前記パレット昇降体が昇降する際の水平姿勢を保持するバランスチェーンとを備えたことを特徴とする立体駐車装置。
【請求項2】
前記バランスチェーンは、前記前側パレット支柱と前記後側パレット支柱との中間位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置。
【請求項3】
前記バランスチェーンは、前記前側パレット支柱寄りの位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置。
【請求項4】
前記パレット昇降体の両側に前後一対に設けられた支柱によって構成される枠体を更に備え、
前記枠体は、前記バランスチェーンの位置に対応する補強用支柱を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の立体駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−133199(P2010−133199A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312409(P2008−312409)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)