説明

立坑内壁調査装置

【課題】持ち運びしやすく、安価かつ簡単に立坑の内壁を調査することができる立坑内壁調査装置を提供する。
【解決手段】立坑内壁調査装置1は、立坑の内壁の状態を観測可能な複数のビデオカメラ20と、水平な状態のまま立坑内で昇降される平板状の観測台30とを備えている。複数のビデオカメラ20は、全体として水平面内の360°全周を観測できるように配置される。観測台30は、複数のビデオカメラ20を固定する複数の開口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑内壁調査装置に係り、特に集水井などの立坑の主として経年による変形状況や腐食状況等を調査するために用いる立坑内壁調査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地すべりが起こりやすい場所では、地下水を集めて川等に流すために、図1に示すような集水井500が設けられることがある。地すべりの起こりやすい斜面に、例えば直径が3〜4m、深さが20〜60mの立坑501が設けられる。この立坑501には集水のための複数本の集水管502が接続され、かつ、集めた水を川等に流すための1本の排水管503が接続される。図1の破線504はすべり面を示す。立坑501は、例えば図2に示すようなライナープレート510を周方向および鉛直方向に連結して構築される。
【0003】
このライナープレート製の立坑あるいはその他の金属部材で構築した立坑においては、構築後年月を経過したものについて変形状況や腐食状況を調査することが必要となる場合がある。また、セグメントなどの鉄筋コンクリート造りの立坑でも、変形状況などを調査することが必要となる場合がある。
【0004】
従来、この種の立坑の内部を調査する場合、実際に人間が立坑内に入って点検を行っていた。しかしながら、人間が深い立坑内に入って種々の調査を行うためには、立坑に換気設備などを設ける必要がありコストがかかる上に、安全上の観点からも簡単に調査を行うことができないという問題があった。
【0005】
このような理由から人間が立坑内に入らずに調査作業ができる技術が要望されており、そのような技術として、例えば、計測器を立坑内に吊り降ろし、所定の深さ位置で計測器の位置を固定した後、計測器を水平面内で回転させて立坑の内周面を調査する調査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−281145号公報
【特許文献2】特開平4−128493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、計測器を任意の深さ位置に固定し、かつ、計測器を水平面内で回転させる必要があり、任意の深さ位置に計測器を固定する機構と、計測器を水平面内で回転させる機構とが必要である。また、立坑内で吊り下げた計測器を水平面内で回転させると、計測器が搭載された架台が計測器の回転の反作用の影響を受けるため、回転の反作用を考慮して装置を設計する必要がある(例えば特許文献2参照)。
【0008】
このため、従来の技術では調査装置全体が大型化してしまい、調査装置を立坑内に吊り降ろすことが容易ではなかった。また、装置の大型化に伴い、装置の重量も増えるため、山間部などでは立坑の場所まで調査装置を搬入したり、その場所から搬出したりすることが困難であった。さらに、調査装置の吊り降ろしのために用いる昇降器具も大型のものを用いる必要があった。
【0009】
また、任意の深さ位置に計測器を固定する機構や測器を水平面内で回転させる機構を設けると、調査装置全体の構成が複雑になり、また調査装置のコストが上昇するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、立坑の内壁に必要な装置や備品の全体の軽量化を図るとともに、持ち運びしやすく、安価かつ簡単に立坑の内壁を調査することができる立坑内壁調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1の発明は、立坑の内壁の状態を観測可能な複数の観測機器であって、該複数の観測機器が全体として水平面内の360°全周を観測できるように配置された複数の観測機器と、水平な状態のまま前記立坑内で昇降される平板状の観測台であって、前記複数の観測機器を固定する複数の台座を有する観測台とを備えたことを特徴とする立坑内壁調査装置である。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の立坑内壁調査装置において、前記立坑の地上部から吊り下げられた線条体に接続される第1の接続部と、前記第1の接続部に接続された少なくとも3本の線条体と、前記観測台に設けられ、前記少なくとも3本の線条体に接続される少なくとも3つの第2の接続部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1に記載の立坑内壁調査装置において、前記観測台の複数の台座は、円周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4は、請求項1から3のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置において、前記複数の観測機器の上方および下方の少なくとも一方に、前記立坑の内壁を照光する照明灯を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項5は、請求項4に記載の立坑内壁調査装置において、前記照明灯は可視光を照光するものであり、前記観測機器は可視光を撮像するものであることを特徴とする。
【0016】
請求項6は、請求項1から5のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置において、前記観測台の回転および揺れを防止する安定化手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項7は、請求項6に記載の立坑内壁調査装置において、前記安定化手段は、前記観測台に接続され、前記立坑の地上部に延びる線条体からなることを特徴とする。
【0018】
請求項8は、請求項6に記載の立坑内壁調査装置において、前記安定化手段は、前記観測台に形成された挿通孔に通され、前記立坑の地上部に延びる線条体と、前記複数の線条体の下端部に取り付けられた錘とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項9は、請求項1から8のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置において、前記観測台に取り付けられ、前記立坑内の水面を検出する水面検出手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項10は、請求項1から9のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置において、前記立坑は、複数のライナープレートを円周方向に連結することにより構成され、前記複数の観測機器は、前記円周方向に連結されたライナープレートの数と同じ数だけ設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、全体として水平面内の360°以上の範囲を観測できるように複数の観測機器を配置した平板状の観測台を水平な状態のまま立坑内で昇降させて調査するようにしたことにより、任意の深さ位置に観測台を固定する機構や観測台を水平面内で回転させる機構を必要としない。したがって、立坑内壁調査装置を安価かつ軽量なものにすることができる。また、観測台を立坑内で昇降させるだけで、観測機器に記録された映像から立坑の内壁の状態を検証することができるため、内壁の調査作業が極めて容易になる。また、例えば立坑の内壁の状態を表す展開写真を容易に作製することができる。このように、本発明によれば、立坑の内壁に必要な装置や備品の全体の軽量化を図るとともに、持ち運びしやすく、安価かつ簡単に立坑の内壁を調査することができる立坑内壁調査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】集水井の設置状況を説明するための図である。
【図2】立坑に用いられるライナープレートを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る立坑内壁調査装置を用いて立坑の内壁を調査している状態を示す模式的断面図である。
【図4】図3の立坑内壁調査装置を模式的に示す正面図である。
【図5】図3の立坑内壁調査装置を模式的に示す平面図である。
【図6】図6(a)は図4の立坑内壁調査装置の観測台を示す平面図、図6(b)は図6(a)のA−A線断面図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る立坑内壁調査装置を模式的に示す正面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施例に係る立坑内壁調査装置を模式的に示す正面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施例に係る立坑内壁調査装置を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る立坑内壁調査装置の実施例について、図1から図9を参照して説明する。なお、図1から図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0024】
まず、本発明に係る立坑内壁調査装置により調査を行う立坑について説明する。図1は、立坑501を含む集水井500の設置状況を説明するための図である。図1に示すように、集水井500は、地すべりが起こりやすい場所で地下水を集めて川等に流して地すべりを抑制するために設けられる。この集水井500は、立坑501と、立坑501に接続された複数本の集水管502と、立坑501に接続された1本の排水管503とから構成される。
【0025】
立坑501は、図2に示すような円弧状のライナープレート510を周方向および鉛直方向に連結して構築した円筒状の構築物である。立坑501のサイズは特に限定されないが、例えばその直径が3〜4m、深さが20〜60mである。
【0026】
図2に示すように、ライナープレート510は、円弧状の波付け鋼板部510aの波付け方向の両端に鋼板を折り曲げて形成したフランジ510bを持ち、波付け方向と直交する方向の両端に、別部材の端面プレートを溶接固定したフランジ510cを持つ構造であり、表面には亜鉛メッキが施されている。
【0027】
複数のライナープレート510の円周方向(波付け方向と直交する方向)のフランジ510c同士をボルト接合してリングを形成するとともに、上下に隣接するライナープレート510のフランジ510b同士をボルト接合して、円筒状の立坑501を構築する。その施工は一般に、立坑の頂部(最初の1〜3リング分)を組み立てその周囲を裏込めしかつ固定した後、掘削、組立てを繰り返してライナープレートを下に継ぎ足していき、所望の深さの立坑501を構築する。したがって、通常、ライナープレートと地山との間に若干の隙間が発生する。なお、本実施例では、円周方向に7枚のライナープレート510を連結して円筒状の立坑501が形成される。
【0028】
このようなライナープレートにより構築された立坑501においては、構築後例えば20〜30年などと年月を経過しているものは、変形状況や腐食状況等を調査することが必要となる場合がある。そのような場合に、本発明に係る立坑内壁調査装置が好適に用いられる。
【0029】
図3は、本発明の第1の実施例に係る立坑内壁調査装置1を用いて立坑501の内壁501aを調査している状態を示す模式的断面図である。図3に示すように、立坑501の地上部Gには門形の支持架10が組み立てられ、この支持架10には電動ウィンチ12が取り付けられている。立坑内壁調査装置1は、電動ウィンチ12からワイヤロープ(線条体)14で立坑501内に吊り下げられている。立坑内壁調査装置1は、電動ウィンチ12によって立坑501内を水平な状態のまま昇降される。なお、立坑501の内壁501aに沿って梯子16が螺旋状に設けられている。
【0030】
図4は図3の立坑内壁調査装置1を模式的に示す正面図、図5で平面図である。なお、図4および図5はいずれも立坑内壁調査装置1を模式的に示しており、図4と図5は必ずしも正確に対応するものではない。図4および図5に示すように、立坑内壁調査装置1は、立坑501の内壁501aの状態を観測可能な観測機器としての複数のビデオカメラ20と、これらのビデオカメラ20が載置される円板状の観測台30と、電動ウィンチ12からのワイヤロープ14が接続される上部リング(第1の接続部)40と、観測台30の上面に設けられた複数のアイボルト(第2の接続部)41と、上部リング40とアイボルト41とを接続する複数のワイヤロープ(線条体)42とを備えている。なお、ビデオカメラ20としては可視光を撮像する汎用ビデオカメラを用いることができる。また、ビデオカメラ20の下部にはクイックシュー20aが取り付けられている。なお、図5においては、上部リング40およびワイヤロープ42の図示を省略している。
【0031】
図6(a)は図4の観測台30を示す平面図、図6(b)は図6(a)のA−A線断面図である。観測台30は、例えば厚さ15mm、直径480mmのアクリル製の円板により構成されるが、その材質や寸法は特に限定されない。ただし、立坑内壁調査装置1の軽量化のため、アクリルなどの軽い材料で観測台30を形成することが好ましい。
【0032】
図6(a)に示すように、観測台30には、円周方向に沿って等間隔に複数の開口32が形成されている。この開口32にはビデオカメラ20のクイックシュー20aが嵌まり込むようになっており、クイックシュー20aを開口32に嵌め込むことでビデオカメラ20が観測台30に固定される。ビデオカメラ20のクイックシュー20aを観測台30に固定するにあたって例えば接着剤を用いることもできる。このように、観測台30に形成された複数の開口32は、ビデオカメラ20を観測台30に固定するための台座としての役割を有する。
【0033】
なお、本実施例では、市販されているクイックシュー20aに対応した形状に開口32を形成しているため、異なる種類のビデオカメラ20であっても、特別な加工を施すことなくそのまま観測台30に固定することができる。
【0034】
ここで、本実施例における立坑内壁調査装置1は7台のビデオカメラ20を備えており、これに対応して、観測台30には7つの開口32が形成されている。これら7台のビデオカメラ20を開口32に固定すれば、7台のビデオカメラ20が全体として立坑501の内壁501aの水平面内の全周(360°)を撮像できるようになっている。なお、それぞれのビデオカメラ20は、より広い範囲を観測できるように広角レンズを備えていることが好ましい。
【0035】
本実施例では、円周方向に連結されたライナープレート510の数と同じ数だけビデオカメラ20および開口32が設けられている。すなわち、1台のビデオカメラ20で1枚のライナープレート510を撮像するようになっている。なお、上下方向に隣接するライナープレート510は円周方向に半分ずれて配置されるが、その場合には1台のビデオカメラ20で円周方向に隣り合う2枚のライナープレート510の半分ずつを撮像することになる。
【0036】
このビデオカメラ20(観測機器)と開口32(台座)の個数は、立坑501の形状および寸法とビデオカメラ20の配置によって決まるものである。すなわち、複数台の観測機器が全体として水平面内の360°以上の範囲を観測できるように配置されるのであれば、観測機器およびこれに対応する台座の個数や位置は特に限定されない。
【0037】
図6(a)に示すように、観測台30には複数の貫通孔34が形成されている。これらの貫通孔34にアイボルト41が螺合され固定される。図4に示すように、これらのアイボルト41の頭部のリングには上部リング40に接続されたワイヤロープ42が接続されている。このような構成によって、立坑501内で観測台30を水平な状態に維持したまま観測台30を昇降することができる。観測台30を安定して水平な状態に維持するために、上記貫通孔34、アイボルト41、およびアイボルト41はそれぞれ3つ以上設けることが好ましい。本実施例では、上記貫通孔34、アイボルト41、およびアイボルト41をそれぞれ4つ設けた例を図示している。
【0038】
このような構成の立坑内壁調査装置1を用いて立坑501の内壁501aの状態を調査する際には、電動ウィンチ12で立坑内壁調査装置1を立坑501内に吊り下げていき、立坑内壁調査装置1を吊り下げていく過程で観測台30に載置された複数のビデオカメラ20によって立坑501の内壁501aを撮像する。所望の深さまでの撮像が終了した後、立坑内壁調査装置1を引き上げ、ビデオカメラ20に記録された映像から立坑501の内壁501aの状態を検証することができる。また、ビデオカメラ20に記録された映像を画像処理することにより、例えば立坑501の内壁501aの状態を表す展開写真を容易に作製することができる。
【0039】
上述したように、本実施例による立坑内壁調査装置1は、任意の深さ位置に観測台30を固定する機構や観測台30を水平面内で回転させる機構を必要としない。また、観測台30を立坑501内で昇降させるだけで、ビデオカメラ20に記録された映像から立坑501の内壁501aの状態を検証することができるため、内壁501aの調査作業が極めて容易になる。このように、本実施例によれば、立坑501の内壁501aに必要な装置や備品の全体を軽量化することができ、例えば山間部などにある立坑まで持ち運ぶことが容易な立坑内壁調査装置とすることができる。したがって、立坑501の内壁501aを安価かつ簡単に調査することが可能となる。
【実施例2】
【0040】
図7は、本発明の第2の実施例に係る立坑内壁調査装置101を模式的に示す正面図である。図7に示すように、本実施例における立坑内壁調査装置101は、アイボルト41に接続され、立坑501の地上部G(図3参照)に延びるワイヤロープ(線条体)102を備えている。立坑501内で立坑内壁調査装置101を昇降させるときに、ワイヤロープ102にテンションがかかるように地上部Gから引っ張ってやれば、昇降時の観測台30の回転および揺れを防止することができる。このように、本実施例におけるワイヤロープ102は、観測台30の回転および揺れを防止する安定化手段としての役割を有する。なお、ワイヤロープ(線条体)102は、観測台30の回転および揺れを効果的に防止するために2本以上設けることが好ましい。
【実施例3】
【0041】
図8は、本発明の第3の実施例に係る立坑内壁調査装置201を模式的に示す正面図である。図8に示すように、本実施例における立坑内壁調査装置201の観測台230には挿通孔231が形成されており、この挿通孔231には立坑501の地上部G(図3参照)から延びるワイヤロープ(線条体)202が挿通されている。ワイヤロープ202の下端には錘203が取り付けられており、この錘203は例えば立坑501の底Bまで沈められる。上記第2の実施例と同様に、立坑501内で立坑内壁調査装置201を昇降させるときに、ワイヤロープ202にテンションがかかるように地上部G(図3参照)から引っ張ってやれば、昇降時の観測台230の回転および揺れを防止することができる。特に錘203によりワイヤロープ202の位置が一定になりやすいので、効果的に観測台230の回転および揺れを防止することができる。このように、本実施例におけるワイヤロープ202および錘203は、観測台230の回転および揺れを防止する安定化手段としての役割を有する。なお、ワイヤロープ(線条体)202および錘203は、観測台230の回転および揺れを効果的に防止するためにそれぞれ2つ以上設けることが好ましい。
【実施例4】
【0042】
図9は、本発明の第4の実施例に係る立坑内壁調査装置301を模式的に示す正面図である。図9に示すように、本実施例における立坑内壁調査装置301の観測台30の下面には、アイボルト41に対応して複数のアイナット341が設けられている。また、観測台30の下方には下部リング340が配置されており、アイナット341と下部リング340とがワイヤロープ(線条体)342で接続されている。
【0043】
ところで、図2に示すように、ライナープレート510の鋼板部510aは波付けされているため、ビデオカメラ20の映像に鋼板部510aの波の影が映ってしまうことが考えられる。したがって、本実施例では、図9に示すように、上部リング40には上部照明灯351が吊り下げられており、また下部リング340には下部照明灯352が吊り下げられている。このように、本実施例においては、上部照明灯351および下部照明灯352によって立坑501の内壁501aを照光することで、ビデオカメラ20の映像に鋼板部510aの波の影が生じないようにしている。
【0044】
本実施例では、立坑501の内壁501aの状態を観測する観測機器として可視光を撮像するビデオカメラ20を用いているため、これら上部照明灯351および下部照明灯352としては、可視光を照光するものを用いる。例えば、上部照明灯351および下部照明灯352としてLEDライトなどを用いることができる。このように、使用する観測機器に応じて適切な上部照明灯351および下部照明灯352が選択される。
【0045】
なお、本実施例では、ビデオカメラ20の上方および下方の双方に照明灯351,352を設置した例について説明したが、ビデオカメラ20の上方または下方のどちらか一方にのみ照明灯を設置することとしてもよい。ただし、上記波の影の発生を防止するためには、ビデオカメラ20の上方および下方の双方に照明灯351,352を設置することが好ましい。
【0046】
また、ビデオカメラ20の上方または下方ではなく、ビデオカメラ20と同じくらいの高さに照明灯を設置することもできる。ただし、立坑501の内壁501aは濡れているため、ビデオカメラ20と同じくらいの高さに照明灯を設置すると、照明灯からの光が立坑501の内壁501aで反射し、その反射光がビデオカメラ20に映ってしまうことが考えられる。この点を考慮すると、ビデオカメラ20の上方および/または下方に照明灯を設置することが好ましい。
【0047】
また、図9に示すように、本実施例では、立坑内壁調査装置301のアイナット341のうちの1つには、立坑501内の水面を検出する水面検出手段として水位計360が設けられている。この水位計360は、本体部360aと、本体部360aに接続されたコード360bと、コード360bの下端に取り付けられた水位センサ360cとを備えており、水位センサ360cが水に浸かったときに本体部360aから警報音が鳴るように構成されている。なお、水位計360に代えて、立坑内壁調査装置301の下方を撮像するカメラを水面検出手段として観測台30に取り付け、このカメラからの画像により立坑501内の水面を検出してもよい。
【実施例5】
【0048】
上述した実施例においては、断面が円形の立坑501の内壁501aを調査する場合について説明したが、立坑の断面形状は円形に限られるものではない。例えば、矩形断面の立坑にも本発明を適用することができる。円形以外の断面形状の立坑に本発明を適用する場合には、観測台30の形状を立坑の形状に合わせて変更するとともに、全体として水平面内の360°以上の範囲を観測できるように複数の観測機器を配置すればよい。
【0049】
また、本発明は、ライナープレートで構築された立坑の調査をする調査装置に限定されるものではなく、例えばライナープレート以外の金属部材で構築された立坑やセグメントなどの鉄筋コンクリート造りの立坑の内壁を調査する調査装置にも適用できるものである。
【0050】
また、上述した実施例においては、観測機器としてビデオカメラ20を用いた例について説明したが、観測機器はビデオカメラに限られるものではなく、立坑の内壁の状態を観測できるものであればどのようなものであってもよい。例えば、立坑の内壁の静止画像を撮るスチルカメラを観測機器として用いることもできる。
【0051】
また、上述した実施例においては、観測台30に開口32を形成してビデオカメラ20を固定する台座を構成した例について説明したが、台座は観測機器を観測台に固定できるものであればどのようなものであってもよい。
【0052】
また、上述した実施例においては、第1の接続部としてリング40を用い、第2の接続部としてアイボルト41を用いた例について説明したが、第1の接続部および第2の接続部はこれらに限られるものではない。また、上述した実施例においては、線条体としてワイヤロープを用いた例について説明したが、線条体は十分な強度を持つものであればどのようなものであってもよい。
【0053】
これまで本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は上述の実施例に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
G 地上部
B (立坑の)底
1 立坑内壁調査装置
10 支持架
12 電動ウィンチ
14 ワイヤロープ(線条体)
16 梯子
20 ビデオカメラ
20a クイックシュー
30 観測台
32 開口(台座)
34 貫通孔
40 上部リング(第1の接続部)
41 アイボルト(第2の接続部)
42 ワイヤロープ(線条体)
101 立坑内壁調査装置
102 ワイヤロープ(線条体)
201 立坑内壁調査装置
202 ワイヤロープ(線条体)
203 錘
230 観測台
231 挿通孔
301 立坑内壁調査装置
340 下部リング
341 アイナット
342 ワイヤロープ(線条体)
351 上部照明灯
352 下部照明灯
360 水位計(水面検出手段)
360a 本体部
360b コード
360c 水位センサ
500 集水井
501 立坑
501a (立坑の)内壁
510 ライナープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑の内壁の状態を観測可能な複数の観測機器であって、該複数の観測機器が全体として水平面内の360°全周を観測できるように配置された複数の観測機器と、
水平な状態のまま前記立坑内で昇降される平板状の観測台であって、前記複数の観測機器を固定する複数の台座を有する観測台と、
を備えたことを特徴とする立坑内壁調査装置。
【請求項2】
前記立坑の地上部から吊り下げられた線条体に接続される第1の接続部と、
前記第1の接続部に接続された少なくとも3本の線条体と、
前記観測台に設けられ、前記少なくとも3本の線条体に接続される少なくとも3つの第2の接続部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項3】
前記観測台の複数の台座は、円周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項4】
前記複数の観測機器の上方および下方の少なくとも一方に、前記立坑の内壁を照光する照明灯を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項5】
前記照明灯は可視光を照光するものであり、
前記観測機器は可視光を撮像するものであることを特徴とする請求項4に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項6】
前記観測台の回転および揺れを防止する安定化手段を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項7】
前記安定化手段は、前記観測台に接続され、前記立坑の地上部に延びる線条体からなることを特徴とする請求項6に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項8】
前記安定化手段は、
前記観測台に形成された挿通孔に通され、前記立坑の地上部に延びる線条体と、
前記線条体の下端部に取り付けられた錘と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項9】
前記観測台に取り付けられ、前記立坑内の水面を検出する水面検出手段を設けたことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置。
【請求項10】
前記立坑は、複数のライナープレートを円周方向に連結することにより構成され、
前記複数の観測機器は、前記円周方向に連結されたライナープレートの数と同じ数だけ設けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の立坑内壁調査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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