説明

立坑構築方法

【課題】立坑構築の際に、日々の作業の終了後にチュービング装置を撤去することを不要とし、工期の短縮を図る。
【解決手段】地中にチュービング装置10の外形および高さよりも大きな容積の作業用立坑20を構築し、構築した作業用立坑20内にチュービング装置10を設置し、該チュービング装置10で立坑ケーシング1を圧入していき、立坑ケーシング1内部の土砂は地上に設置した立坑掘削機30の油圧バケット33で掘削および排出し、一日の作業が終了したらチュービング装置10を作業用立坑20内に残したまま作業用立坑20の上部に覆工板26を設置する。これにより、工事の進捗状況に関係なく道路の開放が短時間でかつ容易にできるため、その日の工事終了予定時刻ぎりぎりまで工事を行うことができ、施工効率が向上し、工期も短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建設工事で、円形ケーシングを使用して立坑を構築する工法において、現場復旧が容易に行える立坑構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑を構築する工法としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この工法は、円形立坑掘削機で立坑を円形ケーシングの揺動圧入又は旋回圧入で掘削する円形立坑掘削工法において、大径の円形ケーシングの上部を円形立坑掘削機の締め付けバンドで締付けて掘削すべき立坑の途中まで圧入掘削し、次いで、大径の円形ケーシング内に小径の円形ケーシングを挿入するとともに、締付けバンドの中にスペーサを入れて、小径の円形ケーシングの上部を締付けて圧入掘削し、掘削すべき立坑の深さに達した時点で小径の円形ケーシングの底部に水中コンクリートを打設して立坑底盤を形成する、円形立坑の掘削方法である。
【0003】
ところで、円形ケーシングを使用して立坑を構築する場合、特に下水道工事では、配管の多くは道路の下に埋設されているので、道路上で施工することが大部分である。
【0004】
一般的には、道路で施工する場合、夜間や深夜に交通規制を行って工事が行われるが、一日で工事が完了するケースを除いて、ほとんどの場合は、その日の工事終了後、円形立坑掘削機その他の機械を撤去し、掘削した立坑には覆工板を設置して道路を開放しなければならない。
【0005】
従来は、ケーシング1本分は必ず覆工板が設置できる深さまで圧入掘削を行い、その後に覆工板を設置して道路の開放を行っていた。
【0006】
しかしながら、従来の工法では、地山が硬い場合や、その他のトラブルが発生したときは、覆工板が設置できる深さまで円形ケーシングを圧入掘削することができずに、円形ケーシングを途中で切断し対応する必要があった。
【0007】
また、一日に2本圧入掘削ができそうでも、時間的にぎりぎりの場合は安全を考えて、一本で止めておくこともあり、施工効率が低下し、工期も長期化する要因となっていた。
【0008】
この問題を解決するため、本願出願人は、特許文献2において、必要とする立坑径より大きな径のガイドケーシングを、圧入掘削機(チュービング装置)を用いて揺動圧入または旋回圧入し、ガイドケーシングの上端部が地上部に出ない位置まで圧入掘削する工程と、前工程で圧入掘削したガイドケーシング内に、当該ガイドケーシングの上部に覆工板の設置スペースを確保して埋設ケーシングを挿入する工程と、埋設ケーシング上部に、接合ボルトにより仮設ケーシングを接続し、圧入掘削機を用いて埋設ケーシングを圧入掘削する工程と、日々の作業終了時には仮設ケーシングの接合ボルトを外して当該仮設ケーシングを撤去し、圧入掘削機を撤去し、覆工板を設置する工程とを含む立坑構築方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−229741号公報
【特許文献2】特開2007−138577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前掲の特許文献2において提案した立坑構築方法では、日々の作業の終了後に圧入掘削機(チュービング装置)を撤去し、施工途中の立坑に覆工板を設置し、道路を開放する必要があった。この作業のために一日あたりの実際の圧入・掘削の作業時間が短くなり、その分工期が長くなっていた。
そこで本発明は、日々の作業の終了後にチュービング装置を撤去することを不要とし、工期の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため、本発明の立坑構築方法は、地中にチュービング装置の外形および高さよりも大きな容積の作業用立坑を構築し、構築した作業用立坑内にチュービング装置を設置し、該チュービング装置で鋼製ケーシングまたはコンクリート製ケーシングを圧入していき、前記ケーシング内部の土砂を掘削手段により掘削するとともに排出手段により排出し、一日の作業が終了したら前記チュービング装置を前記作業用立坑内に残したまま前記作業用立坑の上部に覆工板を設置することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、地中に作業用立坑を、例えば土留め材等で構築し、その中にチュービング装置を設置する。この作業用立坑はチュービング装置を設置しても、覆工板が設置できる広さおよび深さとする。チュービング装置で鋼製ケーシングまたはコンクリート製ケーシングを圧入していき、ケーシング内部の土砂は例えば地上に設置した立坑掘削機のバケット等の掘削手段、排出手段で排出し、一日の作業が終了したら、チュービング装置は作業用立坑に残したまま、作業用立坑上部に覆工板を設置し道路開放を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地中にチュービング装置の外形および高さよりも大きな容積の作業用立坑を構築し、構築した作業用立坑内にチュービング装置を設置し、該チュービング装置で鋼製ケーシングまたはコンクリート製ケーシングを圧入していき、ケーシング内部の土砂を掘削手段により掘削するとともに排出手段により排出し、一日の作業が終了したらチュービング装置を作業用立坑内に残したまま作業用立坑の上部に覆工板を設置することにより、一日の作業終了後にチュービング装置を撤去する必要が無いために、一日の実際の圧入・掘削作業の時間を長くすることができ、工期の短縮ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る立坑構築方法における作業用立坑の内部を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る立坑構築方法における作業用立坑の内部を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る立坑構築方法における作業用立坑の内部を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る立坑構築方法による作業状況の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る立坑構築方法による作業状況の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図3に示すように、立坑を構築する箇所の地面の上部に、チュービング装置10を設置するための作業用立坑20を構築する。例えば、作業用立坑20を構築する箇所の周囲の地中に土留め材21を地上から打ち込み、周壁を形成してから、内部の土砂を掘削、排出する。作業用立坑20の深さは、チュービング装置10の高さよりもある程度深くする。
【0016】
土留め材21の内壁によって囲まれた作業用立坑20の上部には、対向する面の土留め材21の間隔を保持する腹起し22が設けられ、その上部の周囲にI形鋼受け23が設けられている。このI形鋼受け23の対向する2辺に、桁受24が載置される。一日の工事が終わった段階では、桁受24の上に複数の受桁25が掛け渡され、その上に覆工板26が被せられる。
【0017】
一方、チュービング装置10は、それぞれ中央に立坑ケーシング1(後述の図4参照)の外径よりも大きな内径の穴を設けたベースフレーム11および昇降フレーム12と、昇降フレーム12をベースフレーム11に対して昇降駆動する昇降シリンダ13と、昇降フレーム12に設けられて立坑ケーシング1の周囲を把持する把持リング14と、把持リング14で把持された立坑ケーシング1を揺動または旋回させる旋回油圧モータ15とを備えている。なお、図中16は、チュービング装置10を移動させるために後述の立坑掘削機30と連結する連結装置、17はチュービング装置10を作業用立坑20の地盤上に安定設置するためのベースプレート、18はチュービング装置10の位置を作業用立坑20内で支持するための固定バーである。
【0018】
立坑を構築する際には、図4および図5に示すように、作業用立坑20内に設置したチュービング装置10と、地上に設置した立坑掘削機30を用いる。立坑掘削機30は、先端に油圧バケット33を設けたブーム32を操作するベースマシン31を有している。
【0019】
立坑ケーシング1は、鋼製ケーシングまたはコンクリート製ケーシングであり、長手方向にボルト締めあるいは溶接により接続可能な構成とする。
【0020】
作業用立坑20を構築し、その内部にチュービング装置10を設置した後の立坑構築方法の例を以下に示す。
【0021】
図4,図5に示す立坑掘削機30または図示しないクレーン装置を用いて、立坑ケーシング1を吊して作業用立坑20内のチュービング装置10の把持リング14内に移動させる。立坑ケーシング1の先頭のものの下部には掘削刃が設けられている。昇降シリンダ13で上昇させた昇降フレーム12に設けられた把持リング14で立坑ケーシング1を把持し、旋回油圧モータ15で立坑ケーシング1を揺動または旋回させながら昇降シリンダ13を下降させ、地盤の掘削と立坑ケーシング1の圧入を行う。掘削された立坑ケーシング1内の土砂は、立坑掘削機30のブーム32の先端に吊り下げた油圧バケット33ですくい取り、地上のダンプトラックの荷台に積載する。
【0022】
先頭の立坑ケーシング1が所定位置まで降下したら、次の立坑ケーシング1をボルト締めまたは溶接により接続し、同様にして立坑ケーシング1の圧入と地盤の掘削、土砂の排出を行う。
【0023】
日々の作業終了時には、図1〜図3に示すように桁受24の上に複数の受桁25を掛け渡し、その上に覆工板26を被せることで作業用立坑20が覆われるため、道路としての使用が可能となる。
【0024】
このようにして、工事の進捗状況に関係なく道路の開放が短時間でかつ容易にできるため、その日の工事終了予定時刻ぎりぎりまで工事を行うことができ、施工効率が向上し、工期も短縮することができる。
【0025】
なお、立坑ケーシングの圧入掘削工程としては、前記の工程に限るものではなく、たとえば特許文献2に開示されたように、立坑ケーシングの設置に先立って立坑ケーシングよりも一回り大径のガイドケーシングを用いた工法を適用することも可能である。
【0026】
上述した実施の形態においては、掘削手段および排出手段として、地上に設置した立坑掘削機30の油圧バケット33を用いる例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、掘削手段として、クラムシェルやベノト工法のハンマーグラブを用いることができ、また排出手段として、作業用立坑20内に設置したスラリーポンプを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、施工効率が向上し、工期も短縮することができる立坑構築方法として、下水道工事等の土木建築工事に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 立坑ケーシング
10 チュービング装置
11 ベースフレーム
12 昇降フレーム
13 昇降シリンダ
14 把持リング
15 旋回油圧モータ
16 連結装置
17 ベースプレート
18 固定バー
19 アウトリガー
20 作業用立坑
21 土留め材
22 腹起し
23 I形鋼受け
24 桁受
25 受桁
26 覆工板
30 立坑掘削機
31 ベースマシン
32 ブーム
33 油圧バケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中にチュービング装置の外形および高さよりも大きな容積の作業用立坑を構築し、構築した作業用立坑内にチュービング装置を設置し、該チュービング装置で鋼製ケーシングまたはコンクリート製ケーシングを圧入していき、前記ケーシング内部の土砂を掘削手段により掘削するとともに排出手段により排出し、一日の作業が終了したら前記チュービング装置を前記作業用立坑内に残したまま前記作業用立坑の上部に覆工板を設置することを特徴とする立坑構築方法。
【請求項2】
前記掘削手段および排出手段は、地上に設置されたものである請求項1記載の立坑構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−112097(P2012−112097A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259284(P2010−259284)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000141956)株式会社コプロス (18)
【Fターム(参考)】