説明

立坑用螺旋階段の設置方法及び設置用足場装置

【課題】立坑の内周面に螺旋階段が容易かつ安全に設置できる立坑用螺旋階段の設置用足場装置を提供する。
【解決手段】地上に設置された走行自在な足場架台1と、螺旋階段の螺旋ピッチとほぼ同一の螺旋ピッチとなるよう複数段の踏板3cが主柱3aに螺旋状に設けられた足場本体3と、足場架台に設けられ、かつ足場本体を立坑2内に昇降自在に吊り下げる第1吊り下げ手段12と、足場架台に設けられた環状のガイドレール10に走行自在に吊り下げられ、かつ立坑内に前記螺旋階段20を吊り下げて搬入する第1吊り上げ手段13とから構成したもので、大深度の地下施設5と地上とを連結する立坑の場合でも、立坑内に長大なパイプ足場を組み立てることなく立坑の内周面に螺旋階段の設置が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共同溝のような地下施設と地上とを連結する立坑の内周面に、螺旋階段を設置する立坑用螺旋階段の設置方法及び設置用足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気や電話、水道、ガス等のライフラインをまとめて道路などの地下埋設するための施設として、共同溝が建設されている。
共同溝は、いままで電柱等により地上に敷設されていた電気や電話等のケーブルをまとめて地下に敷設することができるため、地上の美観を向上させる上で有効な手段である。
また水道やガス等の配管をまとめて共同溝へ収容することにより、道路を掘り返すことなく配管の敷設やメンテナンスが行えるため、特に市街地のような交通量の激しい道路の地下に共同溝を設置することにより、工事による交通渋滞を解消できる利点を有している。
一方市街地の主力道路の地下には、地下鉄等の施設がすでに多く建設されているため、新たに共同溝を建設する場合、地下鉄等の施設を避けて建設するか、地下鉄等の施設のさらに下側に建設する必要があり、近年建設されている共同溝の多くは、大深度の地下施設となっている。
【0003】
また共同溝のような地下施設と地上とは、垂直方向に掘削された立坑により連結されていて、地下施設にライフラインを敷設したり、ライフラインをメンテナンスする場合、立坑より工事やメンテナンスに必要な資材を搬入出したり、作業者が出入りしている。
このため立坑の内周面には、予め作業用の螺旋階段が設置されている(たとえば特許文献1等)。
前記特許文献1には、発明の詳細な説明の段落(0006)に、「地上施設と地下施設との間を連絡する立坑内に配置された螺旋階段が知られている。この従来の螺旋階段は、立坑の内周面沿いに、地上施設から地下施設まで設けられた2条の螺旋階段からなり、螺旋階段を下り用に、そして、螺旋階段を上り用に、それぞれ専用に用いるようになっている」とあり、立坑内に設置された螺旋階段が記載されている。
【0004】
前記特許文献1には、螺旋階段を立坑の内周面に設置する方法については具体的に記載されていないが、地下施設に通じる立坑を建設後、立坑の内底部より地上までパイプ足場を組み立て、地上より吊り下げた螺旋階段の単位部材をパイプ足場に乗った作業者が受け取り、立坑内周面の所定位置に取り付ける作業を繰り返して、立坑の全長に亘って螺旋階段を設置する方法が一般に採用されている。
しかしこの方法では、大深度の地下施設と地上とを連結する立坑の場合、立坑内に組み立てるパイプ足場も長大となるため、パイプ足場の組み立てや解体に多くの工数を必要として不経済な上、工期も長くかかると共に、高所作業となるため、転落等の危険が伴う問題がある。
【0005】
かかる問題を解消するため例えば引用文献2に、立坑の底部より地上までパイプ足場を組み立てることなく高所作業を可能にした深礎工事用足場が記載されている。
前記引用文献2に記載の深礎工事用足場は、予め立坑の内周面に支持腕を取り付け、この支持腕に立坑の上方より吊り下げた円盤足場を取り付けるようにしたもので、立坑の底部より地上までパイプ足場を組み立てる必要がないため経済的な上、作業者が転落する心配がないため、安全性も高い等の効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−313319号公報
【特許文献2】実開平6−87557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし前記特許文献1に記載の深礎工事用足場では、立坑の内周面に取り付けた複数段の支持腕にそれぞれ円盤足場を取り付け、また作業終了後円盤足場と支持腕を撤去する必要があるため、円盤足場と支持腕の組み立て及び撤去作業に多くの工数必要とし、不経済な上、工期も長くかかる従来の問題は依然解消されていない。
また立坑の内周面に螺旋階段を設置するための足場として使用した場合、螺旋階段の設置後は円盤足場が螺旋階段と干渉することから、円盤足場を立坑内に吊り下げることができなくなり、メンテナンス等のために足場を利用することが困難となる等の問題ある。
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、立坑の内周面に螺旋階段が容易かつ安全に設置できる立坑用螺旋階段の設置方法及び設置用足場装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立坑用螺旋階段の設置方法は、共同溝のような地下施設と地上とを連結する立坑の内周面に、複数に分割された螺旋階段を設置する立坑用螺旋階段の設置方法であって、螺旋階段の螺旋ピッチとほぼ同一の螺旋ピッチとなるよう複数段の踏板が主柱に螺旋状に設けられた足場本体を、地上に設置された足場架台に設けられた第1吊り下げ手段に吊り下げる工程と、踏板に作業者が乗込んだ状態で、第1吊り下げ手段により立坑内の所定位置へ足場本体を吊り下げる工程と、足場架台に設けられた第2吊り下げ手段により立坑内に螺旋階段を吊り下げて搬入する工程と、踏板に乗った作業者が搬入された螺旋階段を受け取って立坑の内周面に位置決めし、固定手段により内周面の所定位置に螺旋階段を固定する工程と、足場本体を旋回させながら、次に設置する螺旋階段の設置位置まで足場本体を上昇または下降させる工程と、立坑内に螺旋階段を吊り下げて搬入する工程から、次に設置する螺旋階段の設置位置まで足場本体を上昇または下降させるまでの工程を繰り返すことにより、立坑の内周面全体に螺旋階段を順次設置するようにしたものである。
【0009】
前記方法により、大深度の地下施設と地上とを連結する立坑の場合でも、立坑内に長大なパイプ足場を組み立てる必要がないため、パイプ足場の組み立てや解体に必要な工数の削減と工期の大幅な短縮が図れる上、パイプ足場が不要となるため経費の削減も図れる。
またパイプ足場使用時のような高所作業が不要となるため、螺旋階段の設置作業が安全に行えると共に、立坑内に螺旋階段の設置後も、足場本体を旋回させることにより、立坑内の螺旋階段に足場本体を干渉させることなく足場本体を立坑内に吊り下げることができるため、地下施設での作業やメンテナンス等のために足場装置を利用することができる。
【0010】
本発明の立坑用螺旋階段の設置方法は、第2吊り下げ手段により螺旋階段と踊り場を交互に吊り下げ搬入することにより、各螺旋階段の間に踊り場を設置したものである。
【0011】
前記方法により、各螺旋階段の間に踊り場を容易に設置することが可能になる。
【0012】
本発明の立坑用螺旋階段の設置用足場装置は、共同溝のような地下施設と地上とを連結する立坑の内周面に、複数に分割された螺旋階段を順次設置する立坑用螺旋階段の設置用足場装置であって、地上に設置された走行自在な足場架台と、螺旋階段の螺旋ピッチとほぼ同一の螺旋ピッチとなるよう複数段の踏板が主柱に螺旋状に設けられた足場本体と、足場架台に設けられ、かつ足場本体を立坑内に昇降自在に吊り下げる第1吊り下げ手段と、足場架台に設けられた環状のガイドレールに走行自在に吊り下げられ、かつ立坑内に前記螺旋階段を吊り下げて搬入する第2吊り上げ手段とから構成したものである。
【0013】
前記構成により、大深度の地下施設と地上とを連結する立坑の場合でも、立坑内に長大なパイプ足場を組み立てる必要がないため、パイプ足場の組み立てや解体に必要な工数の削減と工期の大幅な短縮が図れる上、パイプ足場が不要となるため経費の削減も図れる。
またパイプ足場使用時のような高所作業が不要となるため、螺旋階段の設置作業が安全に行えると共に、立坑内に螺旋階段の設置後も、足場本体を旋回させることにより、立坑内の螺旋階段に足場本体を干渉させることなく足場本体を立坑内に吊り下げることができるため、地下施設での作業やメンテナンス等のために足場装置を利用することができる。
【0014】
本発明の立坑用螺旋階段の設置用足場装置は、主柱の周囲に、ほぼ扇状に形成された複数の踏板を段差が生じるよう螺旋状に設けると共に、少なくとも最下段の踏板に安全柵を立設したものである。
【0015】
前記構成により、踏板全体が立坑を塞ぐ状態となる上、最下段の踏板には安全柵が立設されているため、作業者が誤って踏板を踏み外しても立坑内へ転落する心配がない。
【0016】
本発明の立坑用螺旋階段の設置用足場装置は、第1吊り上げ手段より垂下された索条の先端と主柱の上端部間に旋回手段を設けたものである。
【0017】
前記構成により、立坑内で足場本体を旋回させた際、足場本体の旋回を容易にすると同時に、索条が捩じれるのを防止することができる。
【0018】
本発明の立坑用螺旋階段の設置用足場装置は、踏板の外周部に、足場本体を立坑内で昇降する際立坑の内周面と当接するガイド手段を設けたものである。
【0019】
前記構成により、足場本体に作業者が乗り込む際や、足場本体に作業者が乗った状態で足場本体を昇降させ、または足場本体に作業者が乗った状態で作業する際に足場本体に偏荷重が作用しても、ガイド手段が立坑の内周面に当接して偏荷重を支持するため、足場本体が傾いたり、不安定に揺動することがなく、これによって作業時の安全性が高いと共に、ガイド手段にゴムローラよりなるキャスタ等を使用することにより、踏板の外周部により立坑内周面を損傷することもない。
【0020】
本発明の立坑用螺旋階段の設置用足場装置は、足場本体の操作しやすい位置に、足場本体を昇降させるべく第1吊り下げ手段を無線または有線で操作する足場昇降操作手段と、螺旋階段を搬入する第2吊り下げ手段を無線で操作する遠隔操作手段を設けたものである。
【0021】
前記構成により、第1吊り下げ手段に比べて操作頻度が高い第2吊り下げ手段の操作性を向上させることができる上、立坑内に複数のケーブルが垂れ下がることがないので、誤ってケーブルを切断する等の事故を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の立坑用螺旋階段の設置方法によれば、大深度の地下施設と地上とを連結する立坑の場合でも、立坑内に長大なパイプ足場を組み立てる必要がないため、パイプ足場の組み立てや解体に必要な工数の削減と工期の大幅な短縮が図れる上、パイプ足場が不要となるため経費の削減も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置用足場装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置用足場装置を示す平面図である。
【図3】図1のA方向からの矢視図である。
【図4】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置用足場装置を構成する足場本体の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置用足場装置を構成する足場本体の拡大正面図である。
【図6】図5のB方向からの矢視図である。
【図7】図1のC円内の拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置方法を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態になる立坑用螺旋階段の設置方法により設置されら螺旋階段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は地上に設置された足場架台1より立坑2内に足場本体3を吊り下げた状態を示しており、すでに最上部まで螺旋階段20が設置された状態を示す。
図1に示す立坑2は、例えば内径がφ3,500またはφ3,900となっており、地上面4から地下に設置された共同溝のような地下施設5(図9参照)に達するまでほぼ垂直に堀削されており、立坑2の内周は、コンクリート壁2aにより覆工されている。
【0025】
地上に設置された足場架台1は、図1及び図2に示すように、四隅にほぼ垂直に配置された支柱1aと、各支柱1aの上端間を連結する上部横杆1bと、各上部横杆1bのほぼ中間部に外側端部が固着された十字状の支持杆1cと、各支柱1aの下端間を連結する下部横杆1dと、各支柱1aと上下部横杆1b、1dが形成する四辺形を補強すべく斜め方向に設けられた側面ブレース1eと、上部横杆1bが形成する四辺形の対角線上設けられた上面ブレース1fとにより全体がほぼ立方体状の枠組構造に形成されている。
足場架台1の下部には、各支柱1aの下端部に位置するよう車輪7が設けられていて、立坑2の地上側開口部2bを挟むように地上面4に敷設されたレール8上に、これら車輪7を介して足場架台1が載置されており、車輪7によって足場架台1全体がレール8上を移動できるようになっている。
なお車輪7を電動機のような駆動手段で駆動することにより、足場本体1が自走できるようにしてもよい。
【0026】
また各支柱1aの下部には、足場架台1の走行方向と直行する方向に複数、例えば4個のアウトリガ9が突設されている。
アウトリガ9は足場架台1を地上面4に固定するもので、各支柱1aの外側面より突設されたほぼL字形の脚部9aと、脚部9aの先端側より下方向へ突出されたねじ軸9bと、ねじ軸9bの下部に設けられた接地板9cとからなり、ねじ軸9bの上端側は脚部9aの先端部にほぼ垂直に螺挿されている。
【0027】
一方足場架台1の支持杆1c下面には、環状部10aと環状部10aの接線方向に延設された直線状の搬入部10bとからなるガイドレール10が水平に固着されていて、環状部10aの中心に位置する支持杆1cの中央部下面には、電動チェーンホイスト等からなる第1吊り下げ手段12が取り付けられている。
ガイドレール10の環状部10aは、直径が立坑2の内径よりやや小さくなるように形成されており、環状部10aより接線方向に延設された搬入部10bの先端側は、後述する段取り場方向へ突出されていて、先端部が上部横杆1bより水平方向へ張り出された支持枠1hにより支持されている。
そしてガイドレール10には、自走式電動チェーンホイスト等からなる第2吊り下げ手段13が吊持されている。
第2吊り下げ手段13には、ガイドレール10上を転動する走行ローラ13aが設けられていて、走行ローラ13aによりガイドレール10に沿って自走自在となっており、第2吊り下げ手段13から垂下されたチェーンからなる索条13bの先端に設けられたフック13cに、複数分割された螺旋階段20の1ユニットを吊り下げることにより、螺旋階段20を1ユニット毎に搬入できるようになっている。
【0028】
支持杆1cの中央部に取り付けられた第1吊り下げ手段12は、支持杆1cの中央部下面に突設された支持板1gに吊り下げられていて、第1吊り下げ手段12より垂下されたチェーンからなる索条12aの先端にフック12bが設けられている。
そしてこのフック12bに足場本体3の上端に設けられた旋回手段15の吊り板15aが吊持されている。
足場本体3は、例えば鋼管よりなる主柱3aが垂直方向に設けられており、主柱3aの上端部に旋回手段15が設けられている。
旋回手段15は、第1吊り下げ手段12より垂下された索条12aを介して立坑2内に吊り下げられた足場本体3を、人力により立坑2内で旋回させた際に空転することにより、索条12aが捩じられるのを防止すると同時に、足場本体3の旋回を容易にするもので、図5に示すように主柱3aの上端に固着された係止板3bの下側に、リング状の回転板15bが設けられている。
【0029】
回転板15bは主柱3aの外周部に回転自在に嵌合されており、回転板15bの上面と係止板3bの下面間には、テフロン(登録商標)のような滑性を有する低摩擦板16が1枚ないし複数枚介在されていて、足場本体3が旋回する際の摩擦抵抗を低減させるようになっている。
回転板15bの上面には、主柱3aの上端に固着された係止板3bを避けるように吊り板15aが突設されていて、吊り板15aに穿設された吊り孔15cに、第1吊り下げ手段12より垂下された索条12aの先端に設けられたフック12bが係脱自在に係合されている。
【0030】
また足場本体3の主柱3aには、複数段の踏板3cが上下方向に間隔を存して主柱3aをほぼ1周するように設けられている。
各踏板3cは図3に示すように、主柱3aを中心(要)とする扇形に形成されていて、各踏板3cの中心側端部が図5に示すように主柱3aの外周面に螺旋を描くように固着されている。
各踏板3cは、上下方向に一定の間隔で段差が生じるようほぼ水平に設けられていて、足場本体3を立坑2内に吊り下げた際、各踏板3cの外周縁と立坑2の内周面との間に、例えば100mm程度の隙間が生じるよう各踏板3cの半径が設定される。
これによって足場本体3の踏板3cに作業者が乗って作業しても、立坑2内周面と踏板3c外周面との隙間から作業者が落下する心配がないと共に、最上段の踏板3cと最下段の踏板3cには安全棚3dが立設されていて、作業者が作業中に踏板3cを踏み外しても、踏板3cの最下段からさらに立坑2の下方へ落下しないようになっている。
【0031】
踏板3cの外周部には、円周方向に間隔を存して複数のガイド手段17が各踏板3c毎に設けられている。
ガイド手段17は図7に示すように、例えばゴムローラ17aを備えたキャスタが使用されていて、立坑2内で足場本体3を昇降させる際立坑2の内周面にガイド手段17のゴムローラ17aが当接し、足場本体3の昇降をガイドすると同時に、立坑2の内周面に踏板3cが直接接触するのを防止することにより、足場本体3が立坑2の内周面を破損するのを未然に防止できるようになっている。
【0032】
一方第1吊り下げ手段12からは、立坑2内に吊り下げられた足場本体3より足場本体3を昇降操作できるようにケーブル18が垂下されている。
ケーブル18は、足場本体3を立坑2の最下部まで降下させても長さが不足しない長さになっていて、ケーブル18の先端側は、主柱3aの上面開口部より主柱3a内に導入されている。
主柱3aの外周面には、踏板3cに乗った作業者が操作しやすい位置に、オン、オフスイッチからなる足場昇降操作手段19が設けられていて、足場昇降操作手段19の近傍に穿設された通孔3eより主柱3aの外側へ導出されたケーブル18の先端部が、足場昇降操作手段19に接続されている。
足場昇降操作手段19には、上昇釦19aと下降釦19bが設けられていて、上昇釦19aを押圧すると、第1吊り下げ手段12が足場本体3を上昇させ、下降釦19bを押圧すると、第1吊り下げ手段12が足場本体3を下降させるようになっており、上昇釦19aまたは下降釦19bの押圧を解除すると、その位置に足場本体3が停止されるようになっている。
【0033】
足場本体3の主柱3a内より下方へ垂下されたケーブル18の中間部は、図5に示すように途中で上方へUターンされており、主柱3aの上部に設けられた旋回手段15の吊り板15aには、ケーブル18が主柱3aの内周面と接触しないようにガイドするケーブルガイド21が設けられて。
ケーブルガイド21は、吊り板15aの側面より突設されたほぼU字形のブラケット21aに、溝車21bが回転自在に支承されていて、溝車21bとブラケット20aのU字部の間にケーブル18が挿通されており、立坑2内を足場本体3が昇降する際、ケーブル18が主柱3aの内周面と摺接することにより生じるケーブル18の摩耗を防止するようになっている
足場本体3を吊り上げている第1吊り下げ手段12を迂回した索条12aの他端側も、第1吊り下げ手段12より垂下されている。
【0034】
索条12aもケーブル18と同様に、足場本体3を立坑2の最下部まで降下させても不足しない長さになっていて、索条12aの先端側は、旋回手段15の吊り板15aに設けられた索条ガイド22を通って足場本体3の主柱3a内へ導入されている。
索条ガイド22はケーブルガイド21と同様に、ほぼU字形のブラケット22aに溝車22bが回転自在に支承されており、溝車22bとブラケット22aのU字部を通って索条が主柱3a内に導入されており、足場本体3が昇降する際、索条が主柱3aの内周面に接触しないよう索条ガイド22がガイドしており、これによって索条12aが主柱3aの内周面に摺接することにより生じる両者の摩耗や、騒音が発生するのを防止している。
足場本体3の主柱3a内より下方へ垂下された索条12aの中間部は、図5に示すように途中で上方へUターンされた後、先端部は主柱3aの下部に結着されている。
【0035】
一方第2吊り下げ手段13より垂下されたチェーンよりなる索条13bの一端側にはフック13cが取り付けられていて、螺旋階段20に取り付けた玉掛けロープ24をフック13cに掛合することにより、第2吊り下げ手段13により立坑2内に螺旋階段20が吊り下げられるようになっている。
第2吊り下げ手段13の索条13aは、第1吊り下げ手段12より垂下された索条12aと同様に、螺旋階段20を立坑2の最下部まで吊り下げても不足しない長さとなっていて、第2吊り下げ手段13より垂下された索条13aの他端側は、立坑2の内周面を足場本体3の踏板3c間に生じた隙間を通って立坑2の下方へ垂下されている。
【0036】
また第2吊り下げ手段13は、第1吊り下げ手段12に比べて操作頻度が高いことから、無線の遠隔操作により全ての動作が制御できるリモートコントローラのような遠隔操作手段25により操作できるようになっている。
すなわち足場本体3の踏板3cに乗った作業者が遠隔操作手段25を手で持って操作することにより、第2吊り下げ手段13を所望の位置までガイドレール10上を走行させたり、フック13cに吊り下げられた螺旋階段20の昇降操作が行えるようになっている。
なお足場本体3の主柱3aには、作業者が装着した安全帯26を引掛けるための係止環27が複数個所突設されていて、これら係止環27に安全帯26をフック26aを引掛けることにより、作業者の転落事故を防止できるようになっている。
【0037】
次に前記構成された立坑用螺旋階段の設置用足場を使用して立坑2内に、複数に分割された螺旋階段20を順次設置する方法を図8及び図9を参照して説明する。
螺旋階段20を設置するに当たって、まず立坑2の地上開口部2bより離れた位置に設置された段取り場所(図示せず)まで足場架台1を移動させ、段取り場所において第1吊り下げ手段12より垂下された索条12aの先端に設けられたフック12bを介して足場本体3を吊り下げる。
第1吊り下げ手段12に足場本体3をセットしたら、足場架台1を立坑2方向へ移動させ、立坑2の中心と足場架台1の中心が合致する位置で足場架台1を停止させる。
これによって立坑2の中心に足場本体3が吊り下げられた状態となるので、この位置でアウトリガ9のねじ軸9bを回転させて、ねじ軸9bの下端に設けられた接地板9cを地上面4に接地させる。
その後さらにねじ軸9bを回転させて、車輪7がレール8より浮き上がる状態まで足場架台1全体を持ち上げることにより、アウトリガ9により足場架台1を地上面4に固定する。
【0038】
次にこの状態で第1吊り下げ手段12により足場本体3を立坑2内へ降下させ、最上段の踏板3cが地上面4とほぼ同じ高さになったら足場本体3を停止させ、螺旋階段20の設置に必要な人数の作業者が足場本体3の踏板3c上へ乗り込む。
作業者が乗り込む際足場本体3に偏荷重が作用しても、立坑2内に降下された足場本体3の各踏板3c外周部に設けられたガイド手段17のゴムローラ17aが立坑2の内周面に当接されるため、足場本体3が傾くことがなく、また踏板3c全体が立坑2を塞ぐ状態となっていると共に、最下段の踏板3cには安全柵3dが立設されているため、作業者が誤って踏板3cを踏み外しても立坑2内へ転落する心配がない。
足場本体3に作業者が乗り込んだら、各作業者が着用している安全帯26のフック26aを主柱3aより突設された係止環27に引掛けた後、主柱3aの外周面に設けられた足場昇降操作手段19の下降釦19bを操作して、第1吊り下げ手段12により足場本体3を立坑2内へ降下させる。
【0039】
そして足場本体3が立坑2の最下部付近に達したら足場本体3を停止させ、最下部に設置する螺旋階段20の取付け位置を確認する。
その後トランシーバのような無線通信手段(図示せず)を使用して地上の作業者と連絡を取り、螺旋階段20の搬入を依頼する。
地上にいる作業者は、足場本体3が立坑2内に降下されている間に、第2吊り下げ手段13をガイドレール10の搬入部10b側に移動させて、段取り場所で第2吊り下げ手段13の索条13aの先端に設けられたフック13bに、最下段に設置する螺旋階段20を玉掛けロープ24を使用して吊り下げる。
そして足場本体3に乗った作業者から搬入の連絡を無線で受けたら、第2吊り下げ手段13を立坑2方向へ移動させて、立坑2の地上開口部2bから最下段の螺旋階段20−1を立坑2内に搬入する。
地上の作業者から搬入完了の連絡を受けたら、足場本体3に乗った作業者は第2吊り下げ手段13の動作を制御する遠隔操作手段25を操作して、第2吊り下げ手段13の索条13aに吊り下げられた螺旋階段20を立坑2内に降下させる。
【0040】
螺旋階段20は全体が複数分割されていて、立坑2の内周面に沿って螺旋状に曲げ加工された左右一対の側板20aと、これら側板20a間に横架されたほぼ扇状のステップ板20bとから1ユニットが構成されており、立坑2の内周面と接する外側の側板20aには、長手方向に間隔を存して複数の取り付け孔(図示せず)が予め穿設されている。
第2吊り下げ手段13により最下段に設置する螺旋階段20−1が降下され、立坑2の最下部に達したら、踏板3c上に乗った複数の作業者が螺旋階段20−1の上部と下部を支持した状態で第2吊り下げ手段13により上下動を微調整し、螺旋階段20−1が所定位置になったら下降を停止する。
【0041】
そしてこの状態で外側の側板20aを立坑2内周面に当接して、側板20aに穿設された取り付け孔の位置を立坑2の内周面にマーキングするが、第2吊り下げ手段13により吊り下げられた最下段の螺旋階段20−1の位置が立坑2の周方向にずれている場合は、遠隔操作手段25により第2吊り下げ手段13をガイドレール10に沿って自走させ、周方向の位置ずれを修正する。
その後マーキングされた立坑2の内周面に電動ドリル等の電動工具を使用して固定孔(図示せず)穿孔したら、再び螺旋階段20の外側の側板20aを立坑2の内周面に当接して、側板20aの取り付け孔と立坑2内周面の固定孔を位置決めした状態で、取り付け孔よりケミカルアンカー(登録商標)等の固定手段(図示せず)を挿入して、螺旋階段20の外側の側板20aを立坑2の内周面に固定する。
【0042】
最下段の螺旋階段20−1の設置が完了したら、次の螺旋階段20−2を設置すべく足場本体3を上昇させるが、このとき立坑2の内周面にすでに設置された螺旋階段20−1の中間位置に足場本体3が停止しているので、そのまま足場本体3を上昇させると、足場本体3と設置された螺旋階段20−1が干渉して、足場本体3の上昇を妨げることになる。
しかし螺旋階段20の螺旋ピッチと、足場本体3の踏板3cの螺旋ピッチが予めほぼ同一となるように足場本体3が製作されているため、第1吊り下げ手段12により足場本体3を徐々に上昇させながら、足場本体3の踏板3cが螺旋階段20と干渉しないように、踏板3cに乗った作業者が立坑2の内周面を押しながら人力で足場本体3を旋回させる。
【0043】
すなわち立坑2の内周面に設置された螺旋階段20が、例えばナットに形成された雌ねじで、足場本体3の主柱3aがボルトとすると、踏板3cは雌ねじに螺合されたボルトの雄ねじに例えることができ、そのボルトを回転させてボルトを抜くように足場本体3を回転させることにより、立坑2の内周面に設置された螺旋階段20−1と踏板3cが干渉することなく、足場本体3を上昇させることができるようになる。
足場本体3がすでに設置された螺旋階段20−1の上端付近に達したら足場本体3を停止させ、2段目の螺旋階段20−2を設置すべく、まず最下段の螺旋階段20−1と2段目の螺旋階段20−2の間に設置する踊り場20cを搬入するよう地上の作業者に無線連絡し、第2吊り下げ手段13により踊り場20cが所定位置まで降下されたら、最下段の螺旋階段20−1の上部に踊り場20cを水平に設置する。
踊り場20cの設置が完了したら、最下段の螺旋階段20−1を設置したときと同じ要領で立坑2の内周面に2段目の螺旋階段20−2を設置する。
【0044】
以下同様の動作を繰り返して、図9に示すように最上段の螺旋階段20−nまで螺旋階段20と踊り場20cを順次設置するもので、第1吊り下げ手段12による足場本体3の昇降と、第2吊り下げ手段13による螺旋階段20及び踊り場20cの搬入動作を交互に繰返すことにより、パイプ足場を設置せずに大深度の地下施設に通じる立坑2の内周面に螺旋階段20を設置することができるようになる。
また螺旋階段20の設置作業中に足場本体3の一方向に作業者が集まったり、1人の作業者が螺旋階段20を支えたために、足場本体3の一方向に偏荷重が集中して加わった場合でも、各踏板3cの外周面に設けられたガイド手段17が立坑2の内周面に当接して偏荷重を担持するため、立坑2内で足場本体3が傾いたり、不安定に揺動することがないので、作業者は不安を感じることなく安全に作業を続けることができる。
【0045】
以上は立坑2の最下部、すなわち地下施設5に最も近い位置から螺旋階段20を設置する場合の設置方法について説明したが、立坑2の最上部、すなわち地上面4に開口する開口部2b側から立坑2の最下部側へ順次螺旋階段20を設置するようにしてもよい。
この場合、全ての螺旋階段20を設置し終わると、足場本体3は最下部の螺旋階段20の位置になるが、足場本体3を上昇させながら足場本体3を人力により旋回させることにより、立坑2の内周面に設置された螺旋階段20と足場本体3を干渉させることなく足場本体3を上昇させて、立坑2内より足場本体3を回収することができる。
【0046】
また螺旋階段20が設置された螺旋階段20をメンテナンスする等の理由で立坑2内に足場本体3を昇降させる場合も、足場本体3に乗込んだ作業者が足場本体3を人力で旋回させることにより、立坑2の内周面に設置された螺旋階段20と足場本体3を干渉させることなく、立坑2内に足場本体3を昇降させることができ、螺旋階段20を設置するときのみならず、螺旋階段20のメンテナンスや、地下施設のメンテナンス時にも足場本体3を利用することができる。
【0047】
なお前記実施の形態では、第1、第2吊り下げ手段12,13に電動チェーンホイストを使用した場合について説明したが、その理由は大深度の立坑2の全長に対応できる長尺なワイヤロープを巻き取れる電動ホイストが市販のものにないため、長さが自由に延長できる電動チェーンホイストを使用したものであり、地下施設5の深度が比較的浅い場合は、ワイヤロープを使用した電動ホイストを第1、第2吊り下げ手段12,13に使用しても勿論よい。
【符号の説明】
【0048】
1 足場架台
2 立坑
3 足場本体
3a 主柱
3c 踏板
5 地下施設
10 ガイドレール
12 第1吊り下げ手段
12a 索条
13 第2吊り下げ手段
15 旋回手段
17 ガイド手段
19 足場昇降操作手段
25 遠隔操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共同溝のような地下施設と地上とを連結する立坑の内周面に、複数に分割された螺旋階段を設置する立坑用螺旋階段の設置方法であって、前記螺旋階段の螺旋ピッチとほぼ同一の螺旋ピッチとなるよう複数段の踏板が主柱に螺旋状に設けられた足場本体を、地上に設置された足場架台に設けられた第1吊り下げ手段に吊り下げる工程と、前記踏板に作業者が乗込んだ状態で、前記第1吊り下げ手段により立坑内の所定位置へ足場本体を吊り下げる工程と、前記足場架台に設けられた第2吊り下げ手段により前記立坑内に前記螺旋階段を吊り下げて搬入する工程と、前記踏板に乗った作業者が搬入された前記螺旋階段を受け取って前記立坑の内周面に位置決めし、固定手段により前記内周面の所定位置に前記螺旋階段を固定する工程と、前記足場本体を旋回させながら、次に設置する螺旋階段の設置位置まで前記足場本体を上昇または下降させる工程と、前記立坑内に前記螺旋階段を吊り下げて搬入する工程から、次に設置する螺旋階段の設置位置まで前記足場本体を上昇または下降させるまでの工程を繰り返すことにより、前記立坑の内周面全体に前記螺旋階段を順次設置することを特徴とする立坑用螺旋階段の設置方法。
【請求項2】
前記第2吊り下げ手段により前記螺旋階段と踊り場を交互に吊り下げ搬入することにより、前記各螺旋階段の間に踊り場を設置してなる請求項1に記載の立坑用螺旋階段の設置方法。
【請求項3】
共同溝のような地下施設と地上とを連結する立坑の内周面に、複数に分割された螺旋階段を順次設置する立坑用螺旋階段の設置用足場装置であって、地上に設置された走行自在な足場架台と、前記螺旋階段の螺旋ピッチとほぼ同一の螺旋ピッチとなるよう複数段の踏板が主柱に螺旋状に設けられた足場本体と、前記足場架台に設けられ、かつ前記足場本体を前記立坑内に昇降自在に吊り下げる第1吊り下げ手段と、前記足場架台に設けられた環状のガイドレールに走行自在に吊り下げられ、かつ前記立坑内に前記螺旋階段を吊り下げて搬入する第2吊り上げ手段とを具備したことを特徴とする立坑用螺旋階段の設置用足場装置。
【請求項4】
前記主柱の周囲に、ほぼ扇状に形成された複数の踏板を段差が生じるよう螺旋状に設けると共に、少なくとも最下段の踏板に安全柵を立設してなる請求項3に記載の立坑用螺旋階段の設置用足場装置。
【請求項5】
前記第1吊り上げ手段より垂下された索条の先端と前記主柱の上端部間に旋回手段を設けてなる請求項3または4に記載の立坑用螺旋階段の設置用足場装置。
【請求項6】
前記踏板の外周部に、前記足場本体を前記立坑内で昇降する際前記立坑の内周面と当接するガイド手段を設けてなる請求項3ないし5の何れかに記載の立坑用螺旋階段の設置用足場装置。
【請求項7】
前記足場本体の操作しやすい位置に、前記足場本体を昇降させるべく前記第1吊り下げ手段を無線または有線で操作する足場昇降操作手段と、前記螺旋階段を搬入する前記第2吊り下げ手段を無線で操作する遠隔操作手段を設けてなる請求項3ないし6の何れかに記載の立坑用螺旋階段の設置用足場装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−1739(P2011−1739A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145258(P2009−145258)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509173122)有限会社フジイメタル (1)
【Fターム(参考)】