説明

立方晶窒化ホウ素を有する積層複合材料

基板上の積層複合材料であって、前記積層複合材料の少なくとも1つの単一層が立方晶窒化ホウ素を含有し、かつ堆積を通じて製造されている。課題は、改善された接着強さを有するそのような積層複合材料を提案することである。前記課題は、立方晶窒化ホウ素が堆積の間に添加される酸素を含有することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された基板上の積層複合材料に関する。その場合に、前記積層複合材料の少なくとも1つの層は立方晶窒化ホウ素を含有する。
【0002】
立方晶窒化ホウ素(BN)は、その抜群の材料特性に基づいて及び特に超硬材料−総じてダイヤモンドに次いで硬い材料−として、切削加工工具、例えばバイト(Meissel)、切断工具、旋削工具又は穴加工工具のため並びに塑性加工工具のための摩耗防止層として、使用時のそれらの可使時間及び/又は加工速度を高めるために特に適している。ダイヤモンドに比較した立方晶窒化ホウ素の大きな利点は、鉄原料に対する化学的安定性である。
【0003】
薄い、すなわち50nm〜300nmの層厚を有する、立方晶窒化ホウ素層の合成は、PVD法又はPECVD法を用いてのみ可能である、それというのも、超硬の立方晶相の形成のためには層成長の間にイオン衝撃(Ionenbeschuss)は不可避の必要条件だからである。しかしイオン衝撃により、否定的な付随効果として、層は特定の厚さ−条件に応じて典型的には50nm〜300nm−から役に立たなくなる、すなわち基板からはがれるような高い残留応力が生じる。故に、そのような層はそれらの高い潜在性にもかかわらず依然として適用へ移行されることができなかった。
【0004】
例示的には、厚い立方晶窒化ホウ素層の堆積については次の刊行物が参照される:
[1]には、プラズマトーチ(Plasmafackel)を通じて堆積される立方晶窒化ホウ素層が記載されている。しかしながらこの技術を用いて、数mm2の範囲内の小さな面積が被覆されることができるに過ぎない。また、この小さな被覆範囲内で、層厚分布並びに層構造は、方法に制約されて極度に不均質である。層厚は、枠領域(Rahnbereich)内で連続的にゼロまで低下し、かつ他方では窒化ホウ素がほぼ専ら立方晶で堆積されずに被覆される範囲が存在する。さらに、成長速度のかなりの変動幅の形で現れる限られた再現性が観察されうる。工具被覆及び構造部材被覆に関して、高品質において前記の理由から極度に費用がかかる複雑な工具ジオメトリー及び構造部材ジオメトリーに相応した、目的に合致した必要なプラズマトーチジェットの走査は事実上不可能である。
【0005】
[2]には、酸素不含の雰囲気中での炭化ホウ素ターゲットを用いる厚い立方晶窒化ホウ素層の製造が提案されている。しかしながら炭素を有しかつ酸素を有しない層は、17GPaまでの高い残留応力水準を有する。
【0006】
[3]には、典型的には1200℃の高温での厚い立方晶窒化ホウ素層の堆積が記載されている。その場合に、前記層中での残留応力はケイ素基板の流動が始まることにより削減される。残留応力の削減に関するこの機構並びに高い基板温度は工具の被覆を排除する。
【0007】
[4]において、立方晶窒化ホウ素層は酸素添加せずに製造され、その際にそれらの残留応力は300,000eVのエネルギーを有する高エネルギーアルゴンイオン注入により削減された。異なる2つの装置中で行われる交互の被覆及びイオン注入により、1.3μmの厚さを有する立方晶窒化ホウ素層が製造されることができた。イオン注入に暴露されることができる面積はその場合に典型的には1cm2であり、基板体積は1cm3に制限されており、かつイオンの射程は約180nmである。1cm2の面積を有する1.3μmの厚さの層の堆積のためには、被覆、イオン注入及び熱処理からなる7サイクル、半月が必要とされる。
【0008】
それゆえ、本発明の課題は、少なくとも1つの単一層の窒化ホウ素が立方晶変態で存在し、改善された接着強さを有し、かつしかし前記の制限及び欠点を、特に工具又は他の構成要素の被覆のために2μmを上回る層厚の場合又はより大きな横方向寸法の場合にも、有しない、積層複合材料を提案することである。
【0009】
前記課題は請求項1の特徴的な構成を有する積層複合材料により解決される。従属請求項は本発明の有利な態様を示す。
【0010】
本発明の本質的な特徴は、プロセスガス中への酸素の添加による立方晶窒化ホウ素層の堆積の際の酸素の目的に合致した添加に関するものである。より良好な計量供給制御のためには、前記添加は、例えばアルゴン(Ar)により及びAr:O2ガス混合物により行われることができ、その場合にArは他のプロセスガスにより、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)又は窒素(N2)により置換可能である。さらに、酸素は酸素含有ターゲットによってPVDプロセスを通じて気相へ変換され、かつそこから堆積されることもできる。
【0011】
酸素は、立方晶窒化ホウ素−格子のNサイトを占有するか、中間格子サイトを挿入するか又はクリスタライト間の粒界中で豊富化する。原則的に、酸素は堆積速度論に肯定的な影響を及ぼすので、表面−及び体積拡散プロセスが最適化可能になり、かつそれにより残留応力はさらに層成長の間に強化されて削減される。
【0012】
前記添加により、こうして有利には、摩耗防止のために少なくとも2μmの重大な厚さを有する層が製造可能になるまで、堆積された被覆中の残留応力が減少されることができ、かつ接着強さが高められることができる。酸素の目的に合致した添加は、好ましくは全ての被覆過程の間行われる。
【0013】
酸素含有の立方晶窒化ホウ素層は原則的に、全てのPVD法及び全てのプラズマアシスト(Plasma unterstuetzten)CVD法を用いて製造されることができる。
【0014】
前記のこれらのPVD法及びプラズマアシストCVD法を用いて、特定の電流密度及び特定のエネルギーを有し、層を形成する粒子が、中性粒子としてか又はイオン化された粒子として、基板上もしくは成長する層上へ衝突し、かつその場合に層表面の格子中へ組み込まれる。しかし好ましくは、前記基板はその場合に前記の電場のための電極として強制的には利用されない。層を形成する粒子は次のものであってよい:
・ホウ素(B):中性、一回又は数回イオン化される、
・窒素(N):中性、一回又は数回イオン化される、
・酸素(O):中性、一回又は数回イオン化される、
・ホウ素原子、窒素原子及び酸素原子から構成された分子又はクラスター:中性、一回又は数回イオン化される、
・ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)又はキセノン(Xe)、すなわち周期表の0族の元素(希ガス、プラズマ雰囲気)、中性、一回又は数回イオン化される、
・ホウ素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンに加えて他の原子状成分も含有する、異種原子、イオン、分子又はクラスター、中性、一回又は数回イオン化される。
【0015】
さらに、特定のエネルギーEイオン及び特定の電流密度Φイオンを有するイオンは基板上もしくは成長する層上へ命中しなければならない。これらのイオンは次のものであってよい:
・ホウ素:一回又は数回イオン化される、
・窒素:一回又は数回イオン化される、
・酸素:一回又は数回イオン化される、
・ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノン、一回又は数回イオン化される、
・ホウ素、窒素、酸素又は希ガスに加えてその他の原子状成分も含有する、異種イオン、異種分子イオン又は異種クラスターイオン、一回又は数回イオン化される。
【0016】
その場合に、層を形成する粒子及びイオンの電流密度及びエネルギーは、前記層の元素組成に関して次の条件が満たされているように選択されなければならない:
・ホウ素対窒素[B]:[N]の比は0.85〜1.15でなければならない:0.85≦[B]:[N]≦1.15、
・酸素濃度[O]は3原子%〜15原子%でなければならない:3原子%≦[O]≦15原子%、
・ヘリウム[He]、ネオン[Ne]、アルゴン[Ar]、クリプトン[Kr]又はキセノン[Xe]の濃度の総和は、7原子%までであってよい:[He]+[Ne]+[Ar]+[Kr]+[Xe]≦7原子%
・ホウ素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノン以外の他の原子状粒子の濃度は5原子%までであってよいが、しかしながら前記粒子が立方晶相の形成を特定濃度から防止する場合には、より少なく保持されなければならず、かつこの濃度は5原子%未満であるべきである。
【0017】
さらに、特定の電流密度を有する基板もしくは成長する層上へ命中し、かつ前記層中へ組み込まれる全ての粒子は、層を形成する粒子の全フラックスΦ0を定義する。これらの粒子のエネルギーに関して平均することにより、平均エネルギーE0が定義される。特定の電流密度を有する基板の表面もしくは成長する層上へ命中する全てのイオンは、イオンのフラックスΦイオンを定義する。これらの粒子のエネルギーに関して平均することにより、平均イオンエネルギーEイオンが定義される。比Φイオン/Φ0及びエネルギーE0及びEイオンは、立方晶相が形成されるように選択されなければならない。
【0018】
本発明の範囲内には、酸素を、複合材料(コンポジット及びナノコンポジット)の場合に残留応力の減少のために、完全にか又は部分的に立方晶窒化ホウ素(c−BN)からなる、多レイヤー(Mehrlagen)−、四レイヤー−及びナノ積層された四レイヤー層並びにこれらの層構想の任意の組合せを使用することが存在する。さらに、双方の第一のレイヤーは、厚いc−BN:O−層の堆積のために必要な必要条件ではない。
【0019】
立方晶窒化ホウ素での工具の被覆を用いて、特に鉄含有合金の機械加工分野においてこれまで入手可能な全ての被覆に比較して最高の加工速度及び最大の可使時間増大が見込まれる。
【0020】
実施例
本発明は、例示的な試験系列に基づき次の図を用いてより詳細に説明される。
【0021】
CVD/PVDハイブリッド被覆装置を用いて、酸素含有の立方晶窒化ホウ素層を、平面のケイ素基板上に成功して、しかも500nm、1.8μm及び2.5μmの層厚を有して製造した。被覆源として、マグネトロン噴霧ユニット、ECR−イオン銃及びECR−プラズマ源を用意した。回転可能な基板保持具に、直流電圧−又は高周波−基板バイアス電圧をかけ、850℃まで加熱した。
【0022】
全ての層を、ホウ素に富むイオンエネルギー傾斜した接着促進剤層(Haftvermittlerschicht)(六方晶窒化ホウ素−酸素−層、h−BN:O−層)、組成傾斜した窒化ホウ素−酸素−核生成層並びに立方晶窒化ホウ素−酸素−保護層(Deckschicht)(c−BN:O−保護層)からなる3レイヤー系として前記の順序でケイ素基板上に製造した。それゆえ、当該の場合に、3つの単一レイヤー(単一層)中の3つの単一層タイプを有する層系が存在する。四層系の範囲内で単一層タイプの少なくとも2つを周期的な順序で別の単一レイヤーとして設けることは十分に可能である。
【0023】
選択されたプロセス管理によって、第一の単一レイヤーの堆積により接着強さが上昇し、第二の単一レイヤーの堆積により立方晶相の核生成が制御され、かつ第三の単一レイヤーの堆積によりc−BN:Oの本来の成長が最適化された。
【0024】
3レイヤー系の実験的に算出された単一層厚及び堆積時間は以下に第1表に示されている。個々の層厚の実現は、個々のレイヤーについての被覆時間の変更により単独で行われた。
【0025】
【表1】

第1表:酸素含有の立方晶窒化ホウ素層の単一層厚及び全層厚並びに堆積時間。
【0026】
第1表に記載された単一層の製造パラメーター及びプロセスパラメーターは次のものであり、その場合に層厚は走査電子顕微鏡による切片像並びに表面寸法測定を用いて決定する。
【0027】
ホウ素に富む、イオンエネルギー−傾斜したh−BN:O−層のプロセスパラメーター:
マグネトロン噴霧ユニットの化学量論的な六方晶窒化ホウ素−ターゲットに、高周波(H.F.-)ターゲット出力500Wをかけ、Ar−O2−混合物中に噴霧する。前記ガス混合物は、Ar 45sccm、N2 0sccm、80%対20%のAr対O2の混合比を有するAr−O2−ガス混合物3sccmからなる。作業ガス圧は0.26Paであり、かつ基板温度は350℃である。負の基板バイアス電圧の値は、等距離の時間間隔で0Vから30Vのステップで330Vまで及びその後350Vに高めた。
【0028】
組成の傾斜したBN:O−核生成層のプロセスパラメーター:
マグネトロン噴霧ユニットの化学量論的な六方晶窒化ホウ素−ターゲットに、高周波ターゲット出力500Wをかけ、Ar−N2−O2−混合物中に噴霧する。基板温度は350℃であり、かつ負の基板バイアス電圧の値は350Vである。前記ガス混合物は、Ar 45sccm及び80%対20%のAr対O2の混合比を有するAr−O2−ガス混合物3sccmからなる。窒素ガスを、等距離の時間間隔で0sccmから0.5sccmのステップで5sccmに及びその後1sccmのステップで10sccmに高める。作業ガス圧は初めに0.26Paであり、かつ最後に0.29Paである。
【0029】
c−BN:O−保護層のプロセスパラメーター:
マグネトロン噴霧ユニットの化学量論的な六方晶窒化ホウ素−ターゲットに、高周波ターゲット出力500Wをかけ、Ar−N2−O2−混合物中に噴霧する。基板温度は350℃であり、かつ負の基板バイアス電圧の値は350Vである。前記ガス混合物は、Ar 45sccm、80%対20%のAr対O2の混合比を有するAr−O2−ガス混合物3sccm及びN2 10sccmからなる。作業ガス圧は0.29Paである。
【0030】
考えられる堆積パラメーターの算出のためには、原則的に次の手順が適用されることができる。層がΦイオン/Φ0、E0及びEイオンの選択された組合せの場合に立方晶相を含有しない場合には、比Φイオン/Φ0及び/又はエネルギーE0及びEイオンは、立方晶相が形成されるまでより大きく、しかしながら表面上の噴霧効果により全く層がもはや成長しないほどに大きくなく選択されなければならない(図1参照)。
【0031】
図1は、平均イオンエネルギーEイオンに依存した、層を形成する粒子のフラックスΦBN(層を形成する粒子の前記の一般的に保持されたフラックスΦ0に相当する)に比較して、イオンフラックスΦイオン間での実施例の範囲内での実験的に算出された関係を図表において示す。前記図表は、3つのパラメーター範囲1〜3を示す。立方晶窒化ホウ素−酸素−層(c−BN:O)は、特定のフラックス比Φイオン/ΦBN又は平均イオンエネルギーEイオンが特定の水準を達成する範囲1において分離される。この水準が達成されない場合には(範囲2)、エネルギー又は/及びフラックス比のいずれかは、堆積の間に立方晶BN:Oの方向への変換にもはや十分でなく;それゆえ六方晶変態が堆積される(h−BN:O)。それに反して範囲3内で、エネルギー及び/又は比Φイオン/ΦBNのいずれかは大きすぎる、すなわち層を形成する粒子は再び噴霧されるので、BN:Oは層はもはや構成されない。
【0032】
基板温度TSは、被覆プロセスの間に次の条件を満たさなければならない:
・核生成プロセスの間に、これは少なくとも120℃でなければならない:TS≧120℃、
・基板の溶融温度TM,Sの90%よりも低くなければならない:TS≦TM,S
・酸素含有の立方晶窒化ホウ素層の溶融温度TM,c-BN:Oの90%よりも低くなければならない:TS≦TM,c-BN:O
前記の個々の層の組成は、AES(オージェ−電子−分光学)を用いて決定した。図2aは例示的に、表面清浄化のための20nmの除去(Abtrag)後の全厚500nmを有する第1表に記載された積層複合材料の300nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層の全体スペクトル(c/s=運動エネルギー[eV]に関する毎秒の信号)を示す。スペクトル中で、元素ホウ素、窒素及び酸素に割り当てられることができる3つの信号が確認可能である。原子濃度は、これから、ホウ素については48.6原子%、窒素については46.6原子%及び酸素については4.9原子%となる。
【0033】
図2bは、例示的に、全厚500nmを有する第1表に記載された積層複合材料のAES−深部濃度プロフィールを示す。これから、300nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素−保護層中の元素濃度の均質な分布並びに接着促進剤及び核生成層中の元素分布が確認されることができる。
【0034】
増大する層厚と共に、この分析法の場合に電荷も増大する。これによりAESスペクトルの測定及び正確な評価は、しかも分析表面の電荷がイオン衝撃により電子の提供との組合せで少なくとも部分的に補償される場合も、困難になる。故に、全厚2.55μmを有する積層複合材料の場合にBN:O−層は局所的にイオンジェットによりケイ素基板上へ噴霧されなければならず、その場合にガウス分布に類似の断面を有するクレーター(クレータープロフィール)が生じる。数学的に記載可能なこのクレータープロフィールの掃引により、正確な深部寸法測定が行われることができ、その場合に表面流による電荷は、ケイ素に対するクレータープロフィールを通じて明らかにより容易に削減可能である。
【0035】
図3は、前記の全体スペクトルにおいてクレータープロフィールについて、すなわち第1表に記載された2.55μmの厚さのBN:O−層の2μmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素−保護層の原子組成を示す。この場合に、ホウ素濃度が49原子%、窒素濃度が46.3%及び酸素濃度が4.6原子%となる。これは、測定精度内で、500nmの厚さのBN:O−層の酸素含有の立方晶窒化ホウ素−保護層の原子組成と極めて良好に一致しており、かつ保護層の堆積の際のプロセス管理に基づく予想に相応する。
【0036】
sp3−ハイブリッド化結合状態の検出は、赤外分光学(FTIR、図4)を用いて、及び立方晶の結晶構造の検出はX線回折(XRD、図5)により行われる。図4は、400cm-1〜8400cm-1の波数範囲内の透過−赤外スペクトルを示す。1080cm-1で1405nmの厚さのc−BN:O−保護層の際立った残留線バンドが識別されうる。さらに、B−N−B変角振動は約780cm-1で及びB−N−伸縮振動は1380cm-1で観察され、これらは主に接着促進剤層及び核生成層により引き起こされる。
【0037】
前記振動は、層厚干渉により引き起こされる。明らかに、7850cm-1、6400cm-1、5080cm-1、3690cm-1並びに2295cm-1での5つの極大値及びその間の4つの極小値が識別されうる。これらから、全系の層厚が1.8μmと見積もられることができる:
【数1】

【0038】
斜入射が採用されたX線回折図は、c−BN:Oに割り当てられることができる3つの信号を示す。これらは、43.3゜でc−BNの(111)、74.1゜でc−BNの(220)及び89.8゜でc−BNの(311)の信号と対応する。それゆえ、FTIR及びXRDを用いて、立方晶の酸素含有の窒化ホウ素相が証明された。
【0039】
Hysitron社のナノインデンターを用いて、約2μm厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層上で硬さを測定した。層の硬さは、2mNの最大負荷の場合に59.2GPa±2.3GPa、5mNの場合に59.6GPa±1.9GPa及び10mNの場合に60.5GPa±1.6GPaとなり、このことは、理論的に見込まれた値に相当する。
【0040】
文献
[1]S. Matsumoto, W. Zhang: Jpn. J. Appl. Phys. 39 (2000) L442
[2]K. Yamamoto, M. Keunecke, K. Bewilogua: Thin Solid Films, 377/378 (2000) 331
[3]D. Litvinov, C.A. Taylor, R. Clarke: Diamond Relat. Mater. 7 (1998) 360
[4]H.-G. Boyen, P. Widmayer, D. Schwertberger, N. Deyneka, P. Ziemann: Appl- Phys. Lett. 76, (2000) 709
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】酸素含有の立方晶窒化ホウ素層の堆積についての実験的に算出されたパラメーターフィールド。
【図2a】500nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層のAES−全体スペクトル。
【図2b】500nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層のAES−全体スペクトル。
【図3】2550nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層のAES−全体スペクトル。
【図4】1800nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層のFTIRスペクトル。
【図5】1800nmの厚さの酸素含有の立方晶窒化ホウ素層のX線回折図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の積層複合材料であって、前記積層複合材料の少なくとも1つの単一層が立方晶窒化ホウ素を含有し、かつ堆積を通じて製造されている積層複合材料において、立方晶窒化ホウ素が、堆積の間に添加された酸素を含有していることを特徴とする、積層複合材料。
【請求項2】
積層複合材料が単一層からなる、請求項1記載の積層複合材料。
【請求項3】
堆積を、PVD法又はプラズマアシストCVD法を用いて行う、請求項1又は2記載の積層複合材料。
【請求項4】
基板が完全にか又は部分的に、切削加工工具又は塑性加工工具の表面によって形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の積層複合材料。
【請求項5】
積層複合材料が、ホウ素に富むイオンエネルギー−傾斜した接着促進剤層(Haftvermittlerschicht)、組成傾斜した窒化ホウ素−酸素−核生成層並びに立方晶窒化ホウ素−酸素−保護層を前記の順序で基板上に含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の積層複合材料。
【請求項6】
少なくとも2つの単一層タイプの周期的な順序を含み、かつ単一層タイプの少なくとも1つが酸素含有の立方晶窒化ホウ素を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の積層複合材料。
【請求項7】
少なくとも1つの単一層が、成分が酸素含有の立方晶窒化ホウ素を含有するナノコンポジットである、請求項1から6までのいずれか1項記載の積層複合材料。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−511751(P2008−511751A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528683(P2007−528683)
【出願日】平成17年8月13日(2005.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008830
【国際公開番号】WO2006/024386
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【Fターム(参考)】