説明

竜巻警報装置

【課題】移動体への竜巻の接近を適切に把握して竜巻を避けることができるようにした、竜巻警報装置を提供する。
【解決手段】移動体の位置する地点の気圧を検出する気圧検出手段21と、気圧検出手段21により検出された気圧の時間変化率を演算する気圧変化率演算手段13と、気圧変化率演算手段13により演算された気圧の時間変化率の大きさが予め設定された変化率閾値よりも大きいことを条件に、竜巻警報の出力を判定する警報出力判定手段11と、警報出力判定手段により竜巻警報の出力が判定されると、竜巻警報を出力する警報出力手段31,32とをそなえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の移動体に装備する竜巻警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな自然災害が報告される中で、自然災害に対する対策が各分野において要求されており、自動車等の移動体の分野においても例外ではない。自然災害の一つに竜巻があり、竜巻の発生がしばしば報告されている。地面等に固定されない自動車等の移動体は、この竜巻による被害を受けやすい。竜巻は局地的に生じる現象なので、竜巻の中心部付近に近づかなければ、その被害から免れることができ、移動体の場合、竜巻の接近がわかれば竜巻から逃れることが可能になる。
【0003】
特許文献1には、カーナビゲーション装置において、竜巻の通過する地域を避けた案内経路を設定できるようにする技術が提案されている。この技術では、移動電話モジュールにより気象情報センタから竜巻の発生地点,進路情報などを取得し、その発生地点および進路をアボイド地域として記憶すると共に、そのアボイド地域を表示装置の地図上に表示する。そして、既に設定された案内経路が存在する場合、その案内経路がアボイド地域に侵入するときには、そのアボイド地域を避けた経路に再設定する。新たに案内経路を設定する場合も同様に、アボイド地域を避けた経路に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−145473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術では、気象情報センタからの竜巻の発生情報や進路情報等に基づいて、竜巻の発生地点及び進路を避けた経路に車両の進路を案内するので、気象情報センタからの竜巻情報が正確でなかったり、また、情報のタイムラグが大きかったりすると、車両の進路を適切に案内することは困難となる。
この点、竜巻は極めて局地的に発生し、しかも急激に発達するうえ、移動速度も速いので、これをほぼリアルタイムに把握することは極めて難しい。
【0006】
したがって、気象情報センタから正確な竜巻情報を、迅速にタイムラグを抑えて提供することも容易ではなく、気象情報センタからの竜巻情報に基づいて自動車等の移動体の進路を適切に案内することは困難である。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、移動体への竜巻の接近を適切に把握し竜巻の接近情報を速やかに供給して竜巻を避けることができるようにした、竜巻警報装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の竜巻警報装置は、移動体の位置する地点の気圧を検出する気圧検出手段と、前記気圧検出手段により検出された前記気圧の時間変化率を演算する気圧変化率演算手段と、前記気圧変化率演算手段により演算された前記気圧の時間変化率の大きさが予め設定された変化率閾値よりも大きいことを条件に、竜巻警報の出力を判定する警報出力判定手段と、前記警報出力判定手段により前記竜巻警報の出力が判定されると、前記竜巻警報を出力する警報出力手段とをそなえていることを特徴としている。
【0008】
前記移動体の位置する地点の高度を検出する高度検出手段をさらにそなえると共に、前記警報出力判定手段は、前記気圧の時間変化率の大きさが前記変化率閾値よりも大きいことに加えて、前記気圧検出手段により検出された前記気圧と前記高度検出手段により検出された前記高度とが、高度に応じた通常の気圧よりも低圧領域に予め設定された警報領域にあることを条件に、前記竜巻警報の出力を判定することが好ましい。
【0009】
前記高度検出手段には、前記移動体に装備されたナビゲーションシステムの高度検出機能が用いられていることが好ましい。
前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、前記移動体の移動時の前後傾斜を検出する傾斜検出手段を備え、前記高度検出手段は、前記速度検出手段により検出された前記速度と、前記傾斜検出手段により検出された前記前後傾斜とから前記高度を演算する高度演算手段が用いられていることも好ましい。
【0010】
さらに、前記移動体は自動車であって、前記警報出力手段は、画像表示及び音声表示により前記竜巻警報を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の竜巻警報装置によれば、竜巻の接近時に、急激な気圧変化が始まることに着目して、移動体の位置する地点の気圧の時間変化率の大きさが予め設定された変化率閾値よりも大きいことを条件に、竜巻警報を出力するので、移動体の運転者に竜巻の接近を確実に知らせることができる。
さらに、竜巻の接近時には、気圧が高度に対応した値よりも大きく低下することに着目して、上記の気圧の時間変化率の条件に加えて、移動体の位置する地点の気圧が、その地点の高度に応じた通常の気圧よりも低圧領域に設定された警報領域にあることを条件に、竜巻警報を出力すれば、より正確に竜巻の接近を判定して移動体の運転者に竜巻の接近を知らせることができる。
【0012】
この場合の高度検出には、移動体に装備されたナビゲーションシステムの高度検出機能を用いることができ、装置のコスト増を抑えることができる。
また、かかる高度は、移動体の移動速度と移動体の移動時の前後傾斜とから求めることができ、移動速度の検出手段及び前後傾斜の検出手段をそなえた移動体であれば、装置のコスト増を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる竜巻警報装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる竜巻警報装置の判定に用いるマップを説明する図である。
【図3】竜巻の通過時の気圧変動特性を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる竜巻警報装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかる竜巻警報装置を説明する図であり、これらの図に基づいて説明する。
〔装置構成〕
本実施形態にかかる竜巻警報装置は、移動体としての自動車(以下、車両ともいう)に装備されたものであるが、本装置は、他の移動体に適用することもできる。
【0015】
図1に示すように、制御手段(気圧警報コントローラ)としてのECU(Electronic Control Unit)1と、車両の位置する地点の気圧を検出する気圧センサ(気圧検出手段)21と、車両の位置する地点の高度(標高)を検出する機能(高度検出手段)を有する自動車用ナビゲーションシステム22と、警報出力手段としての表示装置31及び発音装置32とをそなえている。
【0016】
ECU1は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。
気圧センサ21はいわゆる大気圧力を測定するセンサ(大気圧センサ)であり、車両のエンジンの燃料噴射量を大気圧に応じて制御する場合には車両に装備されており、これを流用することができる。
【0017】
ナビゲーションシステム22は、詳細は図示しないが、自車の位置を認識する位置認識部と、道路地図情報を記憶した記憶部(メモリ)と、記憶部に記憶された道路地図情報等を表示する表示部(ディスプレイ)と、音声で経路を案内する音声案内部と、目的地の入力等を行う入力部と、位置認識部により認識された自車位置と記憶部に記憶された道路地図情報と入力部に入力された目的地とに基づいて目的地までの経路を探索し、表示部による経路表示や音声案内部による音声案内を制御する制御部とを有する。
【0018】
位置認識部では、基本的にGPS(全地球測位システム)衛星からの位置情報(GPS情報)から自車位置を認識するが、GPSによる位置の誤差や、トンネル内などGPSからの情報が得られない場合を考慮して、加速度センサ,ジャイロ,車速センサ等からの情報による自律航法により自車位置を認識する自律航法ユニットも装備し、これらの情報を併用している。
【0019】
ナビゲーションシステム22の位置認識部において得られるGPS情報には、緯度経度のほか高度(標高)の情報も得られるので、位置認識部は高度検出手段としての機能を有している。また、ここでは、道路地図情報に道路等の各地点の高度情報も添付されており、位置認識部により認識された自車位置の情報から、道路地図上の自車位置に対応した地点の高度情報も得ることができ、これをGPS情報の高度情報と併用して高度検出手段として機能させている。
【0020】
ECU1には、気圧センサ21から得られた自車が位置する地点の気圧APと、ナビゲーションシステム22から得られた自車が位置する地点の高度Hとから、竜巻の接近状態を判定し、竜巻が接近している場合には竜巻警報を出力することを判定する警報出力判定部(警報出力判定手段)11をそなえている。
警報出力判定部11による竜巻が接近しているか否かの判定は竜巻の接近時の気圧に着目して以下のように行う。
【0021】
図3はある地点を竜巻が通過した際の気圧の変化を示すもので、横軸に時間を、縦軸に気圧をとって示している。図3に示すように、竜巻が接近すると気圧が急激に低下し、竜巻の中心が通過した時点で気圧が最も低くなり、その後竜巻が離れるのにしたがって気圧が急激に上昇回復する。このような極めて短時間内での気圧の急激な変動は、台風や低気圧の接近でも生じえず、竜巻の接近時に特有なものと言え、気圧の変動に着目すれば、竜巻の接近を判定することができる。
【0022】
また、図3に示すように、竜巻が通過する際には、気圧の値自体も通常時よりも大幅に低下する。図3に示す例では、最大で100〔mbar(ミリバール)=hPa(ヘクトパスカル)〕程度も低下している。したがって、気圧の値自体に着目しても、竜巻の接近を判定することができる。ただし、気圧の値そのものは標高に応じて上下するので、標高に応じた標準気圧よりも一定以上低い気圧の状態の場合に、竜巻が近くにあるものと判定することが必要になる。
【0023】
そこで、本装置のECU1には、図2に示すような判定マップを用意し、気圧センサ21から得られた気圧APとナビゲーションシステム22から得られた高度Hとの組み合わせが、竜巻が接近している(竜巻警報が必要)と判定すべき警報領域にあるか否か及び竜巻警報を解除すべき警報解除領域にあるか否かを判定する気圧高度判定部(気圧高度判定手段)12と、気圧センサ21から得られた気圧APの時間変化率ΔAPを演算する気圧変化率演算部(気圧変化率演算手段)13と、気圧変化率演算部13で演算された気圧APの時間変化率ΔAPを予め設定された変化率閾値ΔAP0と比較して竜巻が接近している(竜巻警報が必要)と判定すべき警報領域にあるか否かを判定する気圧変化率判定部(気圧変化率判定手段)14と、を有している。
【0024】
図2に示すように、判定マップは、通常の天候の代表的な特性線(高度Hに対する標準的な気圧APを示す標準ライン)L1に対して一定以上気圧が低い警報閾値ラインL2と、標準ラインL1に対して一定以上気圧が低いが警報閾値ラインL2よりも気圧が高い警報解除閾値ラインL3とが設定されており、警報閾値ラインL2よりも気圧が低い領域が警報領域A1に、警報解除閾値ラインL3よりも気圧が高い領域が警報解除領域A2に、それぞれ設定されている。
【0025】
高度及び気圧の値(H,AP)が警報領域A1に下がれば竜巻接近の可能性が高い。また、竜巻警報を出力しているときに、高度及び気圧の値が警報解除領域A2に入れば竜巻は離隔しており竜巻警報は不要となる。そこで、気圧高度判定部12では、高度及び気圧の値が警報領域A1にあれば竜巻が接近している(竜巻警報が必要)と判定し、竜巻警報を実施しているときに、高度及び気圧の値が警報解除領域A2に入れば竜巻警報を解除すべきであると判定する。
【0026】
気圧変化率演算部13では、気圧センサ21から得られた気圧APを逐次記憶して、現在の気圧APと所定時間前の気圧APn−1との差ΔAP(=AP−APn−1)を気圧APの時間変化率ΔAPとして演算する。
気圧変化率判定部14では、気圧変化率演算部13で演算された気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ(=|ΔAP|)が変化率閾値ΔAP0(>0)以上の場合、竜巻が接近している(竜巻警報が必要)と判定する。なお、竜巻が接近する場合には、気圧APの時間変化率ΔAPは負の値となり、時間変化率ΔAPは時間減少率(=−ΔAP)とも言える。
【0027】
警報出力判定部11では、気圧高度判定部12が高度及び気圧の値(H,AP)が警報領域A1にある(竜巻警報が必要)と判定し、且つ、気圧変化率判定部14が気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ|ΔAP|が変化率閾値ΔAP0以上である(竜巻警報が必要)と判定すると、竜巻が接近しているとして表示装置31と、発音装置32とを利用して竜巻警報を出力する。また、この竜巻警報の出力は予め設定された所定時間だけは継続して行う。そして、竜巻警報の出力を所定時間継続させた後、高度及び気圧の値が警報解除領域A2に入り気圧高度判定部12が竜巻警報を解除すべきであると判定すると、警報出力判定部11では、竜巻警報の出力を終了する。
【0028】
表示装置31は、警報出力判定部11で竜巻警報の出力が判定されると、これを受けて竜巻接近警告表示を行う。この表示装置31は、専用の気圧表示メータに竜巻接近警告表示(警告ランプでもよい)を併せたものでもよいが、ナビゲーションシステム22にも利用される汎用ディスプレイを利用して竜巻接近警告表示を行うようにしてもよい。
また、発音装置32は、警報出力判定部11で竜巻警報の出力が判定されると、これを受けて竜巻接近警告のための警報音又は警報メッセージを発する。この発音装置32は、専用の警告ブザーでもよいが、ナビゲーションシステム22にも利用されるスピーカシステムを利用して音声メッセージやアラーム音等を発生させて警報の出力を行うようにしてもよい。
【0029】
〔作用、効果〕
本発明の一実施形態にかかる竜巻警報装置は、上述のように構成されているので、例えば、図4のフローチャートに示すように竜巻警報の制御が行われる。なお、図4のフローチャートは、車両のキースイッチ等のメインスイッチがオン状態にされると、メインスイッチがオフ状態にされるまで、予め設定された制御周期で、繰り返し実施される。
【0030】
図4に示すように、まず、ナビゲーションシステム22から高度を、気圧センサ21から気圧を取得する(ステップS10)。
次に、フラグFが0であるか否かを判定する(ステップS20)。このフラグFは、竜巻警報を出力しているときに1とされ、竜巻警報を出力していないときに0とされる。
したがって、竜巻警報を出力していないときにはフラグFは0であり、ステップS30に進み、気圧,高度の値が警報領域A1(図2参照)にあるか否かを判定する。気圧,高度の値が警報領域A1になければ、今回の処理を終え、気圧,高度の値が警報領域A1にあれば、ステップS40に進み、気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ|ΔAP|が変化率閾値AP0以上であるか否かを判定する。
【0031】
ここで、気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ|ΔAP|が変化率閾値ΔAP0以上でなければ、今回の処理を終える。したがって、気圧,高度の値が警報領域A1にあっても、気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ|ΔAP|が変化率閾値ΔAP0以上にならなければ、竜巻警報は出力しない。
例えば、低気圧の接近などに起因して気圧,高度の値が警報領域A1になることもあるが、この場合、気圧APの時間変化率ΔAPの大きさ|ΔAP|が変化率閾値ΔAP0以上に大きくなることはないため、除外される。
【0032】
一方、気圧の時間変化率が閾値以上であれば、ステップS50に進み、フラグFを1にセットし、タイマカウントをスタートする(ステップS60)と共に、竜巻警報を出力する(ステップS70)。つまり、表示装置31により竜巻接近警告表示を行い、発音装置32により、竜巻接近警告のための警報音又は警報メッセージを発する。
これにより、車両の運転者は竜巻の接近を認識し、例えば、竜巻から離れる方向や大きな建物の影に車両を移動させるなどして車両と共に避難することが可能になる。
【0033】
こうして、竜巻警報が出力されると、次の制御周期では、フラグFは1となっており、ステップS80に進み、ステップS60でカウントを開始したタイマ値が予め設定された基準値T1以上になったか否かを判定する。タイマ値が基準値T1以上にならなければ、竜巻警報の出力を継続する(ステップS70)。したがって、竜巻警報が出力されると、少なくとも基準値T1で規定される時間は竜巻警報の出力が継続される。
【0034】
そして、タイマ値が基準値T1以上になったら、ステップS90に進み、気圧,高度の値が警報領域A1(図2参照)にあるか否かを判定する。気圧,高度の値が警報解除領域A2にあるか否かを判定する。ここで、気圧,高度の値が警報解除領域A2にならなければ、竜巻警報の出力を継続する(ステップS70)。したがって、竜巻が離れて行ったことが明確に判断されるまでは竜巻警報の出力が継続される。
【0035】
そして、気圧,高度の値が警報解除領域A2になったら、ステップS100に進み、フラグFを0にリセットし、竜巻警報を解除し(ステップS110)、タイマカウントを停止し、タイマ値を0にリセットして(ステップS120)、今回の処理を終了する。
このように、本竜巻警報装置によれば、竜巻の接近時に、気圧が高度に対応した値よりも大きく低下すると共に、急激な気圧変化が始まることに着目して、車両の位置する地点の気圧,高度の値が警報領域A1にあり、且つ、気圧の時間変化率の大きさが予め設定された変化率閾値よりも大きいことを条件に、竜巻警報を出力するので、車両の運転者に竜巻の接近を確実に知らせることができる。
【0036】
また、警報領域A1と警報解除領域A2とは離隔して設定されており、ヒステリシスが与えられているので、警報の実施と解除との間でチャタリングが発生することが防止されて制御が安定する効果もある。
また、上記高度の検出には、車両に装備されたナビゲーションシステムの高度検出機能を用いるので、装置のコスト増を抑えることができる。
【0037】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でかかる実施形態を適宜変更して或いは適宜利用して実施することができる。
上記の実施形態では、気圧及び高度の条件と、気圧の時間変化率の大きさの条件との両方から、竜巻の接近、即ち、竜巻警報の出力を判定しているが、気圧の急変は竜巻に固有のものであるので、気圧の時間変化率の大きさのみに着目して竜巻の接近を判定してもよい。
【0038】
また、インターネット情報等から気象情報を入手し、気象情報から車両の位置する地点の気圧情報を取得して、気圧情報の気圧APDと標準気圧APS(1atm=1013mbar)との差dAP(=APS−APD)により、気圧センサ21から得られた気圧APを補正して、この補正した気圧APc(=AP+dAP)警報領域及び警報解除領域の判定(図2)をすれば、低気圧や台風等による気圧の変動影響をなくして、警報及び警報解除の判定を行うことができる。この場合、気圧の時間変化率を用いずに、気圧及び高度の条件のみから判定することもできる。
【0039】
また、車両(移動体)の高度Hは、車両の移動速度(車速)Vと車両の移動時の前後傾斜α(上り勾配の傾斜を正とする)とから、下式のように、車速Vと前後傾斜αの積算値の時間積分により求めることができる。
H=∫V・sinαdt
したがって、車両の前後傾斜αを取得する勾配センサ等を設ければ、車両に装備されたナビゲーションシステムの高度検出機能を用いるのに加えて、或いは、これに替えて、車速Vと車両の前後傾斜αとから高度Hを求めて、竜巻警報及び竜巻警報解除の判定に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、自動車に適用しうるだけでなく、自動車以外の車両や船舶等の他の移動体(交通手段)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 制御手段(気圧警報コントローラ)としてのECU
11 警報出力判定部(警報出力判定手段)
12 気圧高度判定部(気圧高度判定手段)
13 気圧変化率演算部(気圧変化率演算手段)
14 気圧変化率判定部(気圧変化率判定手段)
21 気圧センサ(気圧検出手段)
22 自動車用ナビゲーションシステム(高度検出手段)
31 表示装置(警報出力手段)
32 発音装置(警報出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置する地点の気圧を検出する気圧検出手段と、
前記気圧検出手段により検出された前記気圧の時間変化率を演算する気圧変化率演算手段と、
前記気圧変化率演算手段により演算された前記気圧の時間変化率の大きさが予め設定された変化率閾値よりも大きいことを条件に、竜巻警報の出力を判定する警報出力判定手段と、
前記警報出力判定手段により前記竜巻警報の出力が判定されると、前記竜巻警報を出力する警報出力手段とをそなえている
ことを特徴とする、竜巻警報装置。
【請求項2】
前記移動体の位置する地点の高度を検出する高度検出手段をさらにそなえると共に、
前記警報出力判定手段は、前記気圧の時間変化率の大きさが前記変化率閾値よりも大きいことに加えて、前記気圧検出手段により検出された前記気圧と前記高度検出手段により検出された前記高度とが、高度に応じた通常の気圧よりも低圧領域に予め設定された警報領域にあることを条件に、前記竜巻警報の出力を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の竜巻警報装置。
【請求項3】
前記高度検出手段には、前記移動体に装備されたナビゲーションシステムの高度検出機能が用いられている
ことを特徴とする、請求項2記載の竜巻警報装置。
【請求項4】
前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記移動体の移動時の前後傾斜を検出する傾斜検出手段を備え、
前記高度検出手段は、前記速度検出手段により検出された前記速度と、前記傾斜検出手段により検出された前記前後傾斜とから前記高度を演算する高度演算手段が用いられている
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の竜巻警報装置。
【請求項5】
前記移動体は自動車であって、
前記警報出力手段は、画像表示及び音声表示により前記竜巻警報を出力する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の竜巻警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25395(P2013−25395A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156992(P2011−156992)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】