説明

竪型ローラミル

【課題】竪型ローラミルによる原料粉砕において、原料種類に関係なく高効率な微粉砕を行い、且つミルローラの使用寿命を延長する。
【解決手段】円周方向に回転する回転テーブル20と、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型粉砕ローラ10Aとの組合せからなる竪型ローラミルにおいて、ローラ破砕面11Aを、微粉砕を主として行う主破砕面11A′と主破砕面以外の破砕面である副破砕面11A″とに区分する。粉砕ローラ10Aの外周面に対向する回転テーブル破砕面21Aのうち、粉砕ローラ10Aの主破砕面11A′に対向する回転テーブル側の主破砕面21A′を平滑面とし、主破砕面以外の回転テーブル破砕面である副破砕面21A″には、テーブル回転方向に対して直角または45°超の角度で傾斜したスリット溝22A、又はテーブル回転方向に対して5度以上45度以下の角度で傾斜するスクリュー溝を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周方向に回転する回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型ローラとの組合せからなる竪型ローラミルに関し、より詳しくは、石炭や石油コークスの微粉砕、石灰石のような粉砕微粉が粉砕面に付着しやすい原料の粉砕などに適した万能の竪型ローラミルに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラーとしては、未だに石炭や石油コークスを燃料とするものが多用されている。それは燃料コストが安いこと、発電量の調節が容易なことなどが理由であり、発展途上国である中国等では勿論のこと、我が国でも発電量の相当部分を石炭、石油コークスに依存している。しかしながら、石炭、石油コークスには二酸化炭素の排出量が多いという大きな欠点がある。
【0003】
日本は世界に向かって1990年度の二酸化炭素の排出量の25%を2020年度までに削減すると公約した。この公約は、達成するのに国民、産業界が大きな責務を負担しなければならない極めて困難な数値であるが、公約したからにはその目標に向かって邁進しなくてはならない。そのためには発電用ボイラーで使用される石炭、石油コークスからの二酸化炭素の発生量を抑制することも大変重要な対策となる。
【0004】
すなわち、発電用燃料としての石炭や石油コークスの使用は二酸化炭素の排出量が非常に多いことから、二酸化炭素の排出に関しては諸悪の根源のような評価を受けている。しかしながら、化石燃料の中でも石炭に関して、この使用を直ちに停止することは資源の無い我が国にとって不可能である。少なくとも原子力発電やクリンーな代替エネルギーが準備されるまではその経済性や利便性、埋蔵量が豊富で枯渇し難いことから使用を中止することはできない。
【0005】
従って、これら化石燃料から排出される二酸化炭素量を如何に少なくコントロール出来るかが今後の技術的重要課題であり、この課題解決のために新たな技術開発が行われることが非常に重要なテーマとなる。そして、その一環として考慮に値するのが、ボイラーに供給する石炭、石油コークスの粉砕段階での微粉化、これによる二酸化炭素発生量の低減である。もとより、1台の粉砕ミルで果たす削減効果は微々たるものはあるが、全世界を見ると使用台数は数え切れない程多数あり、これを総合すると莫大な二酸化炭素排出量の削減に貢献することが可能である。先進国、とりわけ技術立国である我が国においては、粉砕ミルでの微粉化に率先して取り組むことが使命であり、責務であると考えられる。
【0006】
本発明者は、早くからこのことに着目して粉砕ミルにおける微粉化対策に取り組み、大きな成果も挙げている。代表的な技術は、特許文献1及び2に記載されたローラ破砕面形状の改良、とりわけスリットローラの開発である。スリットローラは、粉砕ローラの破砕面である外周面に中心線方向(ローラ周方向に直角な方向)のスリット溝を周方向に所定間隔で形成したものである。その使用により、竪型ローラミルの分野では既存ミルに比べ、粉砕物の噛み込み性を改善し、微粉化率の向上を達成した。
【0007】
すなわち、火力発電所の場合、石炭粉砕粒度は現状において200メッシュ通過、75%が平均的であるが、この粉砕粒度を更に小さくし、200メッシュ通過、75%オーバーの微粉が従来ミルに比べ多量に採取出来るようにすることにより、ボイラーでの燃焼効率を向上させ、結果として完全燃焼を可能とし、二酸化炭素の排出量の減少に貢献することに成功した。
【0008】
また、製鐵所の高炉で銑鉄が生産されるが、鉄鉱石を還元、溶解するために多量のコークス還元ガスが生成使用されるが、コークスは高価な粘結炭から生産されるので非常に高価であり、その使用量を低減するために高炉羽口より安価な微粉炭を吹き込んでコークス消費量を減少させ銑鉄生産コストを低減している。
【0009】
本発明者が開発したスリットローラは、高炉微粉炭吹き込み設備にも多数採用されており、コスト低減に大きく貢献している。某製鉄所においては、そのコスト低減効果は年間6〜7億円にも達していると言われている。200メッシュを含む200メッシュ以下の微粉の生産量が従来ミルに比べ約20%以上増加することにより高炉燃焼効率が上昇し、より一層のコークス消費量の低減に貢献する。コークス消費量の低減は、換言すればコークス生産時に発生する二酸化炭素を削減することにもつながり、その削減に対して多大な貢献を果たす。
【0010】
発電用ボイラーにおける石炭粉砕機としては、竪型ローラミルが多用されている。竪型ローラミルは、円周方向に回転する回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型ローラとの組合せからなり、回転テーブルの回転に伴って竪型ローラとの間に材料を噛み込み粉砕する。粉砕された材料は搬送気流により上方に気流搬送され分級機により分級され、必要とする粒度の石炭が捕捉されて後段へ搬送され、それより大きい粒度の石炭は再度ミル内部に返送される。
【0011】
石炭粉砕用竪型ローラミルは、粉砕ローラの形状が台錐形型(単に台形型という)で、回転テーブル上面の環状破砕部が水平面であるロッシェミルタイプと、粉砕ローラの外周面が回転方向に直角な面内で外周側に凸の方向に湾曲し、回転テーブルの上面にその粉砕ローラの外周面が嵌合する断面弧状の環状溝が形成されたタイヤ型タイプとに大別される。タイヤ型粉砕ローラは、更にその最大直径Dとタイヤ破砕面の回転方向に直角な面における曲率半径Rとの比率が4.3以上の凸型タイヤ、4.3未満の偏平型タイヤとに2分される。市販されているタイヤ型ローラのD/Rを本発明者が調査したところ、前者の凸型タイヤの平均的なD/Rは4.5〜5.0であり、後者の偏平型タイヤの平均的なD/Rは3.8〜4.1の範囲にあったことから、両者の分岐点としてD/R=4.3は妥当である。
【0012】
スリットローラとは別に、本発明者はスクリューローラの研究も続けている。スクリューローラとは、ローラ周方向に対して傾斜した複数のスクリュー溝(螺旋溝)をローラ外周面に並列的に設けたものである(特許文献3、4)。ローラ軸と平行な方向(ローラ周方向に直角な方向)のスリット溝は、原料の噛み込み性能には優れているが、外部に飛散させる能力が著しく高い。一方、ローラ軸と直角な方向(ローラ周方向)の円周溝では、粉砕原料の噛み込み性能が得られない。これらに対し、スリット溝をスクリュー状とし、粉砕原料をテーブル中心側に掻き戻す方向に形成するならば、ローラとテーブルとの間に形成される粉砕空間において粉砕原料の挿入量が増加して、同じローラクリアランスの場合にもローラとの接触摩擦力が増大し、火力発電所における低負荷操業時等におけるミル振動が効果的に防止されることを期待できる。
【0013】
しかしながら、竪型粉砕ローラの破砕面全面に噛み込み性を向上させるスリット溝を形成した粉砕ローラにも、粉砕原料の移送性に優れたスクリュー溝を形成した粉砕ローラにも共通する課題の存在することが、本発明者による長年の経験、実験研究などから判明している。すなわち、スリット溝付きローラの場合もスクリュー溝付きローラの場合も、高硬度を持つ粉砕原料に関しては、極度の磨耗発生により、それが持つ優れた付加価値の有効利用を100%発揮できない状況が生じるのである。
【0014】
そして、石灰石のような付着性物質を粉砕する場合にも、スリットローラ、スクリューローラの如き溝付きローラが持つ優れた付加価値の有効利用を100%発揮できない状況が生じることを本発明者は確認している。石灰石のような付着性物質を効率的に粉砕するために、回転テーブル表面の破砕面に回転方向と交差するスリット溝を設けることは既に提案しているが、粉砕ローラは表面が平滑なフラットローラである(特許文献5)。
【0015】
このような状況下で、本発明者は溝付きローラの有効性を最大限発揮させる方法を模索し続けていた。これが実現すればスリット溝付き粉砕ローラ、スクリュー溝付き粉砕ローラは如何なる粉砕材料、即ち発火性材料を除き、高硬度材料、高水分含有材料、付着、凝着性材料の総ての材料に対しても、その粉砕性の真価を如何無く発揮できる性能を持った竪型ミルローラの完成形を達成できるものである。
【0016】
そこで、本発明者は基本に立ち返り、既存の粉砕ローラが果している真の機能、作用を解明し、根本的に新たな破砕面の開発を行うことにした。そのために、本発明者は先ずスリット溝付きローラ及びスクリュー溝付きローラに共通する問題点を究明した。その結果、ローラ周方向及びローラ軸方向に関する次の2つの問題点が浮かび上がった。
【0017】
第1の問題点は、粉砕ローラ破砕面のローラ周方向(回転方向)における磨耗形態に関する問題である。詳細は以下のとりおである。硬い材料を粉砕する場合にスリット溝が早期磨耗を生じ易い大きな欠点が生じた。すなわち、従来はローラ破砕面の全体にスリット溝を形成していた。このような粉砕ローラにおいて、柔らかい原料を粉砕した場合には、スリット溝を形成する軟質リブの磨耗が徐々に進行し、スリット溝が形成され始め、軟質リブ間に介在する耐摩耗硬化金属が歯車状に現出する。しかし、粉砕原料が柔らかいので、現出した硬化金属のエッジは磨耗を受けずにほぼ直角を保持し、その結果、優れた噛み込み性と耐摩耗性とを示して長期間に亘り、それらの効果や寿命を維持し満足した使用結果を与える。このように柔らかい原料を粉砕する場合には、スリット溝やスクリュー溝をローラ破砕面の全面に形成しても、その効果を如何なく発揮すること事が出来た。
【0018】
例えば、HGIが45以下である石炭粉砕の場合や高炉スラグのスラグ粉砕においては、生産性の向上と長寿命化とに著しい効果を如何なく発揮することが出来た。
【0019】
それに反し、非常に硬い粉砕原料を粉砕する場合、スリット溝を形成する柔らかいリブは早期に磨耗を生じて、短い期間で耐磨耗金属が歯車状に現れ、その耐摩耗性金属のコーナー部は硬い原料を効率的に粉砕して粉砕効率を向上させる反面、硬い原料により極端な磨耗を受けて鋭角な歯車形状が早期に山形形状に変化して行き、次第に粉砕効率が失われると同時に、極端な磨耗を発生して短期間で交換を強いる現象が発生した。その磨耗速度は、既存の円周巻き付け肉盛りローラに比べ極端に短い。
【0020】
例えばセメント工場で使用されるセメント原料粉砕ローラの場合には、単位時間当たりの生産量は約20%以上向上したが、寿命は既存の肉盛りローラの寿命に比べ半分以下となった。また非常に高硬度の珪石やセラミックス、風化していない高炉スラグ、アッシュを多量に含有している低品位炭などを粉砕する場合にも磨耗速度が極端に増大した。
【0021】
これらの現象から、本発明者はスリット溝付きローラやスクリュー溝付きローラの使用寿命は、採用した耐摩耗性金属の耐摩耗性にのみ依存するのではなく、粉砕する破砕面の形状にも大きく依存していると判断した。ある一例として数値解析を行った結果、同じ耐摩耗性を持つ硬化金属に関して、タイヤ型ローラで円周巻き付け肉盛りされた平滑破砕面の場合に比べ、スリット溝付きローラにおける歯車形状のエッジ部が受ける面圧は約3倍に上昇する事が判明した。
【0022】
一般に、磨耗はその磨耗面が受ける面圧のべき乗に比例すると言われているので、エッジが受ける磨耗は平滑面に比べ面圧の2〜4倍以上の磨耗を受けることが推測される。従って、硬い粉砕原料を粉砕する場合においても、スリット溝の高効率粉砕が発揮され、しかも同一耐摩耗性金属を使用した場合でも平滑破砕面と同程度の寿命が確保できる新しい破砕面を開発する必要性が急務とされる。
【0023】
第2の問題点は、粉砕ローラ破砕面のローラ軸方向における磨耗形態に関する問題である。すなわち、粉砕ローラの磨耗形状を詳細に観察すると、粉砕効率が低下して交換される段階における台形型ローラ破砕面に関しては、太径側に深い磨耗溝が発生し、小径側はさして磨耗が発生していない形状を示した。タイヤ型ローラで曲率が小さい凸型ローラ(D/R=5)では、台形型ローラと同じく、主に太径側に最大磨耗が発生する傾向を示し、タイヤ型ローラで曲率が大きい偏平型ローラ(D/R=4)に関しては、小径側でより最大磨耗を発生する傾向を示した。
【0024】
最大磨耗を発生する破砕部は、全ローラ破砕面の内で最も粉砕に寄与している部分であり、粉砕仕事量が最大の領域であり、この領域で微粉砕が主として行われていると判断できる。それ以外の破砕面は、当然微粉の粉砕も行っているが、磨耗が少ないことからむしろ微粉砕を行うのではなく、回転テーブルの中央に供給された粉砕原料を遠心力とともに主破砕面へ送り込む役割を果たす移送面であると想定された。この移送破砕面は、最初に原料を噛み込む部分であり、大きな粒度を持つ原料を砕く働きが大きな目的でもあるが、この移送破砕面における原料移送性を何らかの手段で促進すれば、微粉の粉砕性は格段に向上させることができると推測された。スリット溝を開発した段階では主として噛み込み性ばかりに重点を置いていたが、石灰石のよう付着性物質の粉砕において、ローラに付着を発生させないで有効粉砕する方法に効果があるスクリュー溝を開発して以後、破砕面における原料移送性の重大性に気が付いた。
【0025】
理論的にローラ破砕面は、主として微粉砕を行う領域の主破砕面と、原料を主破砕面に送り込む領域の移送面との2つの破砕面から構成されていると考えられた。個々の破砕面毎に役割分担をより明確化することにより、如何なる種類の原料であろうとも確実に主破砕面に原料を安定確実に移送できる。このことは、粉砕に要する無駄なエネルギーの浪費を減少させ、粉砕操業をより効率的に行える破砕面の設計を可能にし、主破砕面の磨耗対策にもなることを、過去から現在に至る永年の経験と試行錯誤に基づき認識することが出来た。
【0026】
このように、破砕面の重要な役割の一つは原料の移送性である。現状の平滑面ローラにおいては、実際のところ、その役割を果たしていないことが判明した。硬い粉砕原料や水分の多い粉砕原料を粉砕する場合、破砕面が平滑面であることから、噛み込み性と移送性とに劣り、ローラがスリップを発生して粉砕機自体に大きな振動を発生させて操業を困難にし、その結果として、微粉の生産量が低下する。ローラのスリップや振動を抑制する為、ローラに対して過大な面圧を付加すると、ミルの軸電流が増加して大きな電力ロスを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特許第1618574号公報
【特許文献2】特許第2863768号公報
【特許文献3】実開昭63−111939号明細書
【特許文献4】国際公開WO2009/157335号明細書
【特許文献5】特開2009−142809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、粉砕ローラ破砕面の周方向及び軸方向における問題を共に解決し、優れた粉砕能力を長期間維持し得る高性能で経済性に優れた竪型ローラミルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
理論的に考察して、微粉の生産性に最も重要な役割を果たす破砕面は主破砕面である。微粉の粉砕作用をより効果的にするためには主破砕面にスリット溝やスクリュー溝等の余分な溝が存在しない方が、有効破砕面積を増加させることにより微粉の粉砕効率が向上することは自明である。主破砕面を平滑面に変えることが出来れば、当然、歯車形状の硬化金属エッジに過酷な摩耗を受ける特異現象が消失して、平滑面と同じように長寿命化が成就され、微粉生産量の増加を加味すれば一挙両得になる。これこそが完全な解決方法を提供する第一歩である。
【0030】
しかし、主破砕面を平滑面に変化させただけでは微粉の粉砕量の向上効果を得ることが出来ない。主破砕面に対して連続して粉砕原料が安定供給されなければ、微粉の生産性を向上することが困難になる。従って、主破砕面以外の破砕面の補完作用が必要となり、その作用として如何なる種類の原料であろうとも確実に主破砕面へ送り込む移送性がその補完作用として求められるのである。
【0031】
破砕面に多量の原料が送り込まれると、当然ローラとテーブル間に形成される破砕室において原料層厚が厚くなり、原料同士の摩砕作用が顕著になり、微粉の生産性は向上する。ローラに対する負荷面圧が一定の場合、噛み込み量が増加すれば層厚が増加し、その結果、仕事量が増加するためにミルの軸電流は増加するが、微粉の粉砕量も増加するので、得ようとしたい粒度の微粉採取量で使用電力量を除して得られる電力原単位で比較すれば分母が大きくなればなる程、電力原単位が低下して省エネルギーに貢献するようになる。ローラ破砕面積と電力消費量との相関性について言えば、ローラの表面積が増加すると、摩擦抵抗が増加することになり、電力量も増加する傾向があるので、主破砕面は100%の平滑面が必要であるので接触面積の減少は出来ないが、移送面は粉砕を主として行わないので溝を形成して接触面積を減少させる事が可能である。
【0032】
竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラは一つの破砕面で微粉を主として粉砕する主破砕面と、粉砕原料を主破砕面に移送する破砕面との2つの役割に分担して考えると、ローラの粉砕機能を非常に理解し易くなる。一例として、台形型ローラに関して考察する。微粉の粉砕を主として行う主破砕面は太径側に位置しており、小径側はあくまで原料を太径側に移送する破砕面として明白に粉砕域を2つに分けて説明できる。本来、粉砕作用はこのように明白に分けて行われているのでは無い。竪型ローラミルに関して、粉砕原料はミル中央から供給され、テーブル回転による遠心力でテーブル外方に追いやられ、その間において粗粒の原料がローラとテーブル間との間隙に噛み込まれテーブル外方に移行して行くに連れて、粗粒が細粒へと粉砕が段階的に進行するものである。当然、小径側においても微粉砕は行われているが、その頻度が太径側において非常に高く、小径側では粗粒の噛み込みが主として行われ、徐々に細粒に粉砕されつつ太径側に移送され、主粉砕域において微粉の粉砕が主として行われているのである。その証拠として、最も粉砕作用が激しい太径側の破砕面が極端な磨耗域を現出しており、小径側はさして磨耗の進行が見られないのが現実である。
【0033】
これらの事実、検証から、本発明者は一つのローラ破砕面の中に微粉の粉砕を主として行う主破砕面と、原料を主破砕面に確実、安定的に送り込む原料移送面とがお互いに共存し、どちらが欠けても有効な粉砕効果が得られないことを理論的に、また経験的に導き出した。
【0034】
また、付着性の少ない原料粉砕においては、噛み込み性を向上させるローラ軸と平行か45度までの角度を持つスリット溝が有効であり、付着性が顕著な原料粉砕においては、ローラへの付着を減少させ、移送性を向上させる45度以上85度までの角度を持つスクリュー溝が有効であり、2種類の溝を含めることにより、総ての粉砕原料に対する粉砕性の向上が確立されることを粉砕実験により実証した。
【0035】
このような検証結果を基礎として、本発明者は先に粉砕ローラの表面を主破砕面とそれ以外の面とに分けて考え、主破砕面を平滑面とする一方、主破砕面以外の破砕面にはローラ周方向に対して直角または45°超の角度で傾斜したスリット溝、若しくはローラ周方向に対して45°以下の角度で傾斜したスクリュー溝を形成したハイブリッド破砕面構造の竪型ローラミル用粉砕ローラをPCT/JP2010/62546号により提案したが、回転テーブルの破砕面についても、同様に主破砕面を平滑面とする一方、主破砕面以外の破砕面にはテーブル回転方向に対して直角または45°超の角度で傾斜したスリット溝、又はテーブル回転方向に対して5度以上45度以下の角度で傾斜したスクリュー溝を形成したハイブリッド破砕面構造が有効なことを知見した。
【0036】
本発明の竪型ローラミルはかかる知見を基礎として開発されたものであり、円周方向に回転する回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型粉砕ローラとの組合せからなる竪型ローラミルにおいて、ローラ破砕面が微粉砕を主として行う主破砕面と主破砕面以外の破砕面とからなり、粉砕ローラの表面に対向する回転テーブル破砕面のうち、粉砕ローラの主破砕面に対向する回転テーブル側の主破砕面が平滑面とされ、主破砕面以外の回転テーブル破砕面にはテーブル回転方向に対して直角または45°超の角度で傾斜したスリット溝、又はテーブル回転方向に対して5度以上45度以下の角度で傾斜したスクリュー溝が形成されたハイブリッド破砕面構造を回転テーブル側に有している。
【0037】
本発明の竪型ローラミルにおいては、粉砕ローラの表面に対向する回転テーブル破砕面のうち、粉砕ローラの主破砕面に対向する回転テーブル側の主破砕面が平滑面とされ、主破砕面以外の回転テーブル破砕面にはスリット溝やスクリュー溝が形成されたハイブリッド破砕面構造が回転テーブルに付与されているので、スリット溝やスクリュー溝による移送性を残しつつ主破砕面における有効破砕面積率を100%に高めることができ、その結果として回転テーブルの破砕面にスリット溝やスクリュー溝を設けたことによる粉砕性向上効果を一層高めることができる。
【0038】
主破砕面以外の回転テーブル破砕面に設ける溝の種類としては、噛み込み性にしろ原料移送性にしろ、粉砕ローラの破砕面に設ける溝の種類の違いによるほどの影響度はない。このため、粉砕原料の種類による溝の種類は厳密である必要はない。石灰石の粉砕にスリット溝を使用してもよいし、スクリュー溝を使用してもよい。また石炭の粉砕にスリット溝を使用してもよいし、スクリュー溝を使用してもよい。石炭もレキセイ炭のように水分が多く付着性が大きいものもあるので、両者の区別は一層緩やかとなる。
【0039】
一方、粉砕ローラの方に関しては、破砕面に成形される溝の種類は基本的に限定せず、破砕面全体を平滑面としてもよいが、粉砕性を高めるためには、粉砕原料の種類に応じた溝の種類の選択は重要となる。すなわち、粉砕原料に付着性が少ない場合、その破砕面に噛み込み性を向上させるローラ周方向に対して大角度のスリット溝か、若しくは移送性を向上させるローラ周方向に近い角度のスクリュー溝を形成するのがよい。粉砕原料が付着性物質である場合には、ローラ軸に対して45度以上85度以下(ローラ周方向に対して5度以上45度以下)の角度で傾斜するスクリュー溝を限定的に形成するのがよい。その理由は、溝角度がローラ軸と平行か若しくは45度未満の角度では、噛み込み性が発揮され、ローラ表面に付着や転着を発生させ粉砕操業を困難にするので、噛み込み性が少なく移送性を発揮する溝角度が望ましく、具体的には45度と85度の間、特にその平均角度である60〜70度がスクリュー溝角度として望ましい。
【0040】
また、粉砕ローラに3種類存在することは先に述べた。粉砕ローラの種類によって主破砕面の位置は異なる。台形型ローラでは、大径部の破砕面が主破砕面となる。タイヤ型ローラでは、タイヤRが大きい扁平型ローラの主破砕面は、操業では両側の小径部の何れかに存在するが、反転使用を行うために磨耗上は両側の小径部に存在する。タイヤRが小さい凸型ローラでは、操業上はタイヤ中央部(大径部)に主破砕面が存在するので、反転使用が可能であるものの、磨耗上もタイヤ中央部(大径部)に主破砕面が存在する。これらに伴って、回転テーブル破砕面における主破砕面の位置も、組み合わされる粉砕ローラの種類によって異なるものとなる。ちなみに、各粉砕ローラにおける主破砕面とは、ローラ外周面のうち、最大磨耗量の2/3以上の磨耗を示す領域である。
【0041】
好ましい粉砕ローラを列挙すると以下のとおりである。石灰石の粉砕には、石灰石が非常に柔らかく、ローラ磨耗が非常に少ないために、台形型ローラ、タイヤ凸型ローラ及びタイヤ扁平型ローラのいずれも有効性が高く、石炭の粉砕には、石炭は石灰石より硬く、ローラ磨耗が激しいので、コストメリットの観点から破砕面の反転使用が可能なタイヤ凸型ローラ及びタイヤ扁平型ローラが特に有効である。
【0042】
〔1〕台形型ローラであり、大径側の主破砕面を含む破砕面全体が、ローラ周方向に直角なスリット溝を形成された原料噛み込み面である噛み込み式台形型ローラ。
〔2〕台形型ローラであり、大径側の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を内側から外側へ強制搬送する排出方向のスリット溝を形成された原料移送面である移送式台形型ローラ。
〔3〕タイヤ凸型ローラであり、中央大径部の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を内側から外側へ強制搬送する排出方向のスリット溝を形成された原料移送面である移送式タイヤ凸型ローラ。
〔4〕粉砕ローラがタイヤ凸型ローラであり、中央大径部の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を外側から内側へ逆送する掻き戻し方向のスクリュー溝を形成された原料移送面である逆送式タイヤ凸型ローラ。
〔5〕タイヤ扁平型ローラであり、反転使用に伴って両側小径部に位置した両側の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を外側から内側へ逆送する掻き戻し方向のスクリュー溝が形成された原料移送面である逆送式タイヤ扁平型ローラ。
【発明の効果】
【0043】
本発明の竪型ローラミルは、世界的に見ても新規な粉砕理論に基づき、最も磨耗を受ける主破砕面を平滑面にすることにより、スリット溝特有の極端な磨耗発生を回避でき、少なくとも平滑面が受ける磨耗と同一水準に改善出来ることと、更に有効破砕面積を100%に出来ることから、微粉の生産量の向上に貢献できる。
【0044】
粉砕機の電力消費量に関しては、破砕面の機能分担により、原料移送面の表面積を減少させて平滑面ローラに比べ接触面積を減少させることにより無駄に消費していた電力を減少することが可能である。
【0045】
破砕面形状に関し、長年、研究を継続してきた本発明者にとって、スリット溝とスクリュー溝の2形態を含めた包括的な破砕面技術の完成形を確立することは一つの最終目標であり、なかでも特にスクリュー溝の作用効果をより一層高めることにより、実用界では見られないほどのさらなる優れた作用効果をもたらす破砕面形状の完成形を開発することに成功した。その結果が上記の画期的な破砕面形態である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の竪型ローラミルの基本構造を、台形型ローラ使用のロッシェミルについて示すミル主要部の正面図である。
【図2】本発明の竪型ローラミルに使用される粉砕ローラの正面図で、(a)は石灰石粉砕用台形型ローラ、(b)は石灰石粉砕用タイヤ型扁平ローラ、(c)は石灰石粉砕用タイヤ凸型ローラをそれぞれ示す。
【図3】本発明の竪型ローラミルに使用される回転テーブルの平面図で、(a)は石灰石粉砕用台形型ローラと組み合わされる回転テーブル、(b)は石灰石粉砕用タイヤ扁平型ローラと組み合わされる回転テーブル、(c)は石灰石粉砕用タイヤ凸型ローラと組み合わされる回転テーブルをそれぞれ示している。
【図4】本発明の竪型ローラミルに使用される別の粉砕ローラの正面図で、(a)は石炭粉砕用タイヤ扁平型ローラ、(b)は石炭粉砕用タイヤ凸型ローラをそれぞれ示す。
【図5】本発明の竪型ローラミルに使用される別の回転テーブルの平面図で、(a)は石炭粉砕用タイヤ扁平型ローラと組み合わされる回転テーブル、(b)は石炭粉砕用タイヤ凸型ローラと組み合わされる回転テーブルをそれぞれ示している。
【図6】テーブル溝形状を示す縦断側面図である。
【図7】実験用小型粉砕機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0048】
図1に示した竪型ミルローラは粉砕ローラとして台形型ローラ10Aを使用するロッシェミルである。この台形型ローラ10Aは、周方向に駆動される水平な回転テーブル20A上に、周方向に等間隔で配置されている。回転テーブル20Aの中心部上に供給された粉砕原料が回転テーブル20Aの回転に伴って粉砕ローラとの間に噛み込まれ粉砕されて外周側へ排出されること、外周側へ排出された材料は搬送気流により上方に気流搬送され分級機により分級され、必要とする粒度の材料が捕捉されて後段へ搬送され、それより大きい粒度の材料は再度ミル内部に返送されることなどは周知のとおりである。
【0049】
台形型ローラ10Aの外周面が破砕面11Aである。破砕面11Aは、大径側の主破砕面11A′と、それ以外の副破砕面11A″とに大別されており、主破砕面11A′を含めた破砕面全体に、複数条のスクリュー溝12Aがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝12Aの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を外周側へ積極的に移送する原料排出方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して67.5°、ローラ周方向に対する傾斜角度では22.5°とされている。台形型ローラ10Aの回転軸は、その外周面が、下方の回転テーブル20Aの表面と平行となるように傾斜している。
【0050】
台形型ローラ10Aと組み合わされる回転テーブル20Aは、台形型ローラ10Aが対向する環状の外周部が破砕面21Aである。破砕面21Aのうち、台形型ローラ10の主破砕面11A′に対向する最外周部が主破砕面21A′であり、副破砕面11A″に対向する外周面(主破砕面21A以外の破砕面)が副外周面21A″である。そして、副外周面21A″には、テーブル回転方向に直角、若しくはその直角線に対して若干傾斜したスリット溝22Aが設けられており、主破砕面21A′はスリット溝22Aもスクリュー溝も存在しない平滑面である。
【0051】
回転テーブル20における主破砕面21A′を平滑面とすることにより、スリット溝222Aによる原料移送性を残しつつ、主破砕面21A′における有効破砕面積率を100%とすることにより、粉砕効率が劇的に向上することは前述したとおりである。
【0052】
次に、本発明の竪型ローラミルに使用される粉砕ローラの種類について説明する。
【0053】
図2(a)〜(c)は石灰石の粉砕に適した粉砕ローラである。図2(a)の粉砕ローラは図1に示した台形型ローラ10Aであり、主破砕面11A′を含む破砕面11Aの全体に、複数条のスクリュー溝12Aがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝12Aの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を外周側へ積極的に移送して主破砕面11A′に送り込む原料排出方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して67.5°、ローラ周方向に対する傾斜角度では22.5°とされている。
【0054】
図2(b)に示した粉砕ローラは、タイヤ型ローラで曲率が大きい扁平型ローラ10B(D/R=4)である。タイヤ扁平型ローラ10Bでは、そのローラ10Bの反転使用により、外周面の両小径側、すなわち両側部が主破砕面11B′,11B′となり、中央部が副破砕面11B″となるが、ここにおける操業では、テーブル中心側の主破砕面11B′が機能上の主破砕面となる。両側の主破砕面11B′,11B′及び中央部の副破砕面11B″を含めた破砕面11Bの全体に、複数条のスクリュー溝12Bがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝12Bの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を外周側へ積極的に移送する原料排出方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して67.5°、ローラ周方向に対する傾斜角度では22.5°とされている。
【0055】
図2(c)に示した粉砕ローラは、タイヤ型ローラで曲率が小さい凸型ローラ10C(D/R=5)である。タイヤ凸型ローラ10Cでは、外周面の大径側、すなわち中央部が主破砕面11C′となり、両側の小径側端部が副破砕面11C″,11C″となる。中央の主破砕面11C′及び両側の副破砕面11C″,11C″を含めた破砕面11Cの全体に、複数条のスクリュー溝12Cがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝12Cの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を外周側へ積極的に移送する原料排出方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して85°、ローラ周方向に対する傾斜角度では15°とされている。
【0056】
主破砕面11A′,11B′,11C′は、ローラ外周面の最大磨耗量の2/3以上の磨耗を生じる領域であり、主破砕面11A′,11B′,11C′のローラの軸方向長さ、すなわち主破砕面11A,11B′,11C′の横幅は、通常はローラ全幅の約30〜40%となり、ここでは1/3とされている。
【0057】
これらの粉砕ローラに組み合わされる回転テーブルについて、図3(a)〜(c)を参照して以下に説明する。
【0058】
図3(a)に示した回転テーブル20Aは、図2(a)に示した台形型ローラ10Aと組み合わされるものであり、図1に示した回転テーブル20Aに対応している。回転テーブル20Aの表面のうち、台形型ローラ10Aが対向する環状の外周部が破砕面21Aである。破砕面21Aのうち、台形型ローラ10の主破砕面11A′に対向する最外周部が主破砕面21A′であり、副破砕面11A″に対向する外周面(主破砕面21A以外のは周面)が副破砕面21A″である。そして、副破砕面21A″には、テーブル回転方向に直角なスリット溝22Aが設けられており、主破砕面21A′はスリット溝22Aもスクリュー溝も存在しない平滑面である。
【0059】
主破砕面21A′の横幅(テーブル半径方向長さ)は、台形型ローラ10Aにおける破砕面21Aの横幅に対応して、破砕面21Aの横幅の30〜40%が適当であり、ここでは1/3とされている。
【0060】
スリット溝22Aの断面形状は、特開2009−142809号公報により提示した石灰石粉砕に適するテーブル破砕面形状の一つであり、図6に示すように、テーブル表面に直角な凹溝形状ではなく、回転テーブル20の回転方向下流側に位置するスリットエッジの角度(エッジ角度θ′)が鋭角、好ましくは90°未満45°以上となるように、テーブル表面に対して傾斜した鋭角エッジの傾斜溝形状であり、ここではエッジ角度θ′が60°の60°鋭角エッジの傾斜溝形状である。
【0061】
図3(b)に示した回転テーブル20Bは、図2(b)に示したタイヤ扁平型ローラ10Bと組み合わされるものである。回転テーブル20Bの表面のうち、タイヤ扁平型ローラ10Bが対向する環状の外周部が破砕面21Bである。破砕面21Bのうち、タイヤ扁平型ローラ10Bの当該操業での機能上の主破砕面11B′に対向する内周側部分が主破砕面21B′であり、副破砕面11B″に対向する中央部分及び外周部分の外周面(主破砕面21B′以外の破砕面)が副破砕面21B″である。そして、副破砕面21B″には、テーブル回転方向に直角なスリット溝22Bが設けられており、主破砕面21B′はスリット溝22Bもスクリュー溝も存在しない平滑面である。
【0062】
主破砕面21B′の横幅(テーブル半径方向長さ)は、タイヤ扁平型ローラ10Bにおける破砕面21Bの横幅に対応して、破砕面21Bの横幅の30〜40%が適当であり、ここでは1/3とされている。また、スリット溝22Aの断面形状は、テーブル表面に直角な凹溝形状である。
【0063】
図3(c)に示した回転テーブル20Cは、図2(c)に示したタイヤ凸型ローラ10Cと組み合わされるものである。回転テーブル20Cの表面のうち、タイヤ凸型ローラ10Cが対向する環状の外周部が破砕面21Cである。破砕面21Cのうち、タイヤ凸型ローラ10Cの主破砕面11C′に対向する中央部分が主破砕面21C′であり、副破砕面11C″,11C″に対向する外周部分及び内周部分の外周面(主破砕面21C′以外の破砕面)が副外周面21C″,21C″である。そして、副破砕面21C″,21C″には、テーブル回転方向に直角なスリット溝22C,22Cがそれぞれ設けられており、主破砕面21C′はスリット溝22Cもスクリュー溝も存在しない平滑面である。
【0064】
主破砕面21C′の横幅(テーブル半径方向長さ)は、タイヤ凸型ローラ10Cにおける破砕面21Cの横幅に対応して、破砕面21Cの横幅の30〜40%が適当であり、ここでは1/3とされている。スリット溝22Cの断面形状は、テーブル表面に直角な凹溝形状である。
【0065】
図4(a)(b)は石炭の粉砕に適した粉砕ローラである。
【0066】
図4(a)に示した粉砕ローラは、タイヤ型ローラで曲率が大きい扁平型ローラ10B(D/R=4)である。タイヤ扁平型ローラ10Bでは、そのローラ10Bの反転使用により、外周面の両小径側、すなわち両側部が主破砕面11B′,11B′となり、中央部が副破砕面11B″となるが、ここにおける操業では、テーブル中心側の主破砕面11B′が機能上の主破砕面となる。両側の主破砕面11B′,11B′及び中央部の副破砕面11B″を含めた破砕面11Bの全体に、複数条のスクリュー溝12Bがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝13Bの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を外周側へ排出する原料排出方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して45°、ローラ周方向に対する傾斜角度でも45°とされている。
【0067】
図4(b)に示した粉砕ローラは、タイヤ型ローラで曲率が小さい凸型ローラ10C(D/R=5)である。タイヤ凸型ローラ10Cでは、外周面の大径側、すなわち中央部が主破砕面11C′となり、両側の小径側端部が副破砕面11C″,11C″となる。中央の主破砕面11C′及び両側の副破砕面11C″,11C″を含めた破砕面11Cの全体に、複数条のスクリュー溝13Cがローラ軸方向に等間隔で形成されている。スクリュー溝12Cの傾斜方向は、回転に伴って粉砕原料を内周側へ返送する原料掻き戻し方向であり、その傾斜角度は、ここではローラ軸に対する傾斜角度θで表して45°、ローラ周方向に対する傾斜角度でも45°とされている。
【0068】
主破砕面11B′,11C′は、ローラ外周面の最大磨耗量の2/3以上の磨耗を生じる領域であり、主破砕面11B′,11C′のローラの軸方向長さ、すなわち主破砕面11B′,11C′の横幅は、通常はローラ全幅の約30〜40%となり、ここでは1/3とされている。
【0069】
これらの粉砕ローラに組み合わされる回転テーブルについて、図5(a)(b)を参照して以下に説明する。
【0070】
図5(a)に示した回転テーブル20Bは、図4(a)に示したタイヤ扁平型ローラ10Bと組み合わされるものである。回転テーブル20Bの表面のうち、タイヤ扁平型ローラ10Bが対向する環状の外周部が破砕面21Bである。破砕面21Bのうち、タイヤ扁平型ローラ10Bの当該操業での機能上の主破砕面11B′(内周側の主破砕面110B′)に対向する内周側部分が主破砕面21B′であり、副破砕面11B″に対向する中央部分及び外周部分の外周面(主破砕面21B′以外の破砕面)が副外周面21B″である。そして、副外周面21B″には、テーブル半径方向に対して67.5度の角度Θで原料掻き戻し方向に傾斜したスクリュー溝23Bが設けられており、主破砕面21B′はスリット溝もスクリュー溝23Bも存在しない平滑面である。
【0071】
主破砕面21B′の横幅(テーブル半径方向長さ)は、タイヤ扁平型ローラ10Bにおける主破砕面11B′,11B′の各横幅に対応して、破砕面21Bの横幅の30〜40%が適当であり、ここでは1/3とされている。また、スクリュー溝23Bの断面形状は、テーブル表面に直角な凹溝形状である。
【0072】
図5(b)に示した回転テーブル20Cは、図4(b)に示したタイヤ凸型ローラ10Cと組み合わされるものである。回転テーブル20Cの表面のうち、タイヤ凸型ローラ10Cが対向する環状の外周部が破砕面21Cである。破砕面21Cのうち、タイヤ凸型ローラ10Cの主破砕面11C′に対向する中央部分が主破砕面21C′であり、副破砕面11C″,11C″に対向する外周部分及び内周部分の外周面(主破砕面21C′以外の破砕面)が副外周面21C″,21C″である。そして、副外周面21C″,21C″には、テーブル半径方向に対して67.5度の角度Θで原料掻き戻し方向に傾斜したスクリュー溝23C,23Cがそれぞれ設けられており、主破砕面21C′はスリット溝もスクリュー溝23Cも存在しない平滑面である。
【0073】
主破砕面21C′の横幅(テーブル半径方向長さ)は、タイヤ凸型ローラ10Cにおける破砕面21Cの横幅に対応して、破砕面21Cの横幅の30〜40%が適当であり、ここでは1/3とされている。スクリュー溝23Cの断面形状は、テーブル表面に直角な凹溝形状である。
【実施例】
【0074】
〔実験装置〕
本発明の有効性を調査するために、実験用の小型粉砕機を作製した。この粉砕機は、図7に示すように、ベース部材である水平回転テーブル1の外周部表面に粉砕ローラ2が対向する構造とした。粉砕ローラ2は、ここでは台形型ローラであり、太径側を外周側に小径側を中心側に向け、テーブル1との対抗面が水平となるように傾斜配置されているが、タイヤ扁平型ローラ、タイヤ凸型ローラとの交換も可能である。ローラ個数は実験機であるために1個とした。
【0075】
回転テーブル1においては、粉砕ローラ2と対向する外周部が環状の破砕部3となり、環状の破砕部3は、試験機であるために、テーブル本体4に対して脱着可能にした。環状の破砕部3としては、表面が平滑なもの、表面にスリット溝、スクリュー溝を設けたものなど、脱着可能な各種互換テーブルを用意し、1台の試験機によりすべてのローラ、テーブルの試験が可能なように設計した。試験機の更なる詳細は後で説明する。
【0076】
ちなみに、図7では環状の粉砕部3として、台形型ローラの主破砕面に対向する外周部が平滑面、それ以外の面にスリット溝6を設けた粉砕部3が示されている。
【0077】
破砕部3とのクリアランスを任意に調節できるように、粉砕ローラ2はその支持機構5に対して回転自在かつ昇降自在に取り付けられている。粉砕原料に所定の加圧力を付加するために、粉砕ローラ2はスプリングにより、破砕部3へ押し付けられる方向へ付勢されている。
【0078】
回転テーブル1の回転により、回転テーブル1と粉砕ローラ2は、相対的な旋回運動を行う。本実験ではローラ自体が持つ粉砕性能を確認にするために、粉砕された原料のエアーによる分級装置を設置していない。従って、粉砕された原料はローラが持つ排出能力とテーブル回転の遠心力とにより回転テーブル内部から外部へ排出されるので、回転テーブルの外側に排出原料を完全に捕集出来る捕集用容器8を設備した。
【0079】
〔粉砕原料〕
粉砕ローラの破砕面を主破砕面と原料移送面の2つに分けて考えた粉砕ローラを実際に使用した場合、微粉の粉砕量が、従来のスリット溝やスクリュー溝を破砕面全体に形成した場合に比べ増加するか否かに関し、小型粉砕試験機を使用して解明した。その確認実験に使用する粉砕原料としては
1)付着性、凝着性が大きい石灰石
2)付着性、凝着性が石灰石に比べ少ない石炭
の2種類を選択した。
【0080】
〔石灰石の粉砕実験〕
石灰石を粉砕する場合には、石灰石がローラ表面に付着、転着するのを防止するためにスクリュー溝を形成することにした。スクリュー溝はローラ軸に対して45度以上85度以下の角度範囲の中からその中間の67.5度と、最も角度が大きい85度とを選択した。45度までのスリット溝を石灰石の粉砕に使用すると、スリット溝は原料を掻き上げる能力に優れ、その結果ローラ表面に石灰石の付着、転着を発生して粉砕操業を困難にすることが既に判明しているので、45度以上の角度を持つスクリュー溝を形成することにした。特に45度以上のスクリュー溝は原料を掻き上げる性能が減少して、原料を送り込む移送性に優れ、その角度が大きくなるにつれて移送性がより向上し、石灰石のローラ表面への転着、付着を減少させる性質がある。特に、斜め勾配の大きな67.5度が最も優れた傾斜角度と想定された。
【0081】
実験に採用した粉砕ローラは、図2(a)に示した台形型ローラ、図2(b)に示したタイヤ扁平型ローラ(D/R=4)、図2(c)に示したタイヤ凸型ローラ(D/R=5)の3種類とした。
【0082】
これらに組み合わせる環状の粉砕部は、図3(a)(b)(c)に示す回転テーブルを想定したものとした。具体的には、図2(a)に示した台形型ローラに対しては、図3(a)に示した主破砕面(外周部)が平滑面、副破砕面(中央部及び内周部)が60度鋭角エッジ直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。比較のために、破砕面の全体が60度鋭角エッジ直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。また台形型ローラ、粉砕部ともに表面が平滑な場合の組合せも実験した。各組合せについて、200メッシュアンダーの微粉粉砕量と本粉砕試験機の消費電力量の差異を測定し、電力原単位の比較を行うことにより、回転テーブルの主破砕面を平滑にすることの有効性を、台形型ローラ使用の場合について比較した。
【0083】
同様に、図2(b)に示したタイヤ扁平型ローラ(D/R=4)に対しては、図3(b)に示した主破砕面(内周部)が平滑面、副破砕面(中央部及び外周部)が凹溝直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。比較のために、破砕面の全体が凹溝直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。またタイヤ扁平型ローラ、粉砕部ともに表面が平滑な場合の組合せも実験した。各組合せについて、200メッシュアンダーの微粉粉砕量と本粉砕試験機の消費電力量の差異を測定し、電力原単位の比較を行うことにより、回転テーブルの主破砕面を平滑にすることの有効性を、タイヤ扁平型ローラ使用の場合について比較した。
【0084】
また、図2(c)に示したタイヤ凸型ローラ(D/R=5)に対しては、図3(c)に示した主破砕面(中央部)が平滑面、副破砕面(外周部及び内周部)が凹溝直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。比較のために、破砕面の全体が凹溝直角スリット付きである粉砕部を組み合わせた。またタイヤ扁平型ローラ、粉砕部ともに表面が平滑な場合の組合せも実験した。各組合せについて、200メッシュアンダーの微粉粉砕量と本粉砕試験機の消費電力量の差異を測定し、電力原単位の比較を行うことにより、回転テーブルの主破砕面を平滑にすることの有効性を、タイヤ凸型ローラ使用の場合について比較した。
【0085】
台形型ローラ、タイヤ扁平型ローラ及びタイヤ凸型ローラの寸法、回転テーブルを想定した環状の粉砕部の寸法、並びに他の粉砕条件を以下に集約した。
【0086】
粉砕ローラ寸法:
台形型ローラ 太径:200mm、小径:170mm、 幅57mm
タイヤ扁平型ローラ(D/R=4)
太径:200mm、タイヤR:50mm、幅74mm
タイヤ凸型ローラ(D/R=5)
太径:200mm、タイヤR:40mm、幅:66mm
【0087】
回転テーブル寸法(粉砕部寸法):
台形型ローラ用 外径:410mm、内径:280mm、
タイヤ扁平型ローラ用 外径:420mm、内径:220mm、溝R:50mm
タイヤ凸型ローラ用 外径:410mm、内径:230mm、溝R:50mm
【0088】
周速度: 30RPM(左方向回転)
ローラ加圧: 23.5kg
ローラとテーブルとのクリアランス: 0mm
試験時間: 30分間
石灰石供給量: +/−1500g/30分間
石灰石供給方法: 連続供給スクリューフィーダー方式
温度、湿度: 12〜18℃、60〜89%
【0089】
試験に使用した石灰石
粒径: 1〜3mm
粒度分布(30分間乾燥後の測定値)
10メッシュ以上 46.0g
16メッシュ以上 44.0g
30メッシュ以上 9.0g
60メッシュ以上 Tr
P 0.5g
【0090】
3種類の竪型ローラミルを想定した粉砕実験において、テーブル外周への石灰石排出量、テーブル内石灰石残量、及び200メュシュ通過、―235メッシュアンダーの粒子が全粉砕量に占める重量割合を調査した。本実験では便宜上、粉砕ローラ1個でしか粉砕しておらず、実機では2〜4個のローラが使用され、微粉を捕集する為の分級装置が設置されているので、実機で得られる微粉粉砕量とは異なる数値を示すが、同一試験機を使用するので、得られる傾向は信憑性の高いものとなる。
【0091】
粒度測定では、30分間の粉砕試験終了後、テーブルから捕集器8に排出された全量の石灰石を正確にかき集め、またテーブル内に残存した石灰石も同様に正確に捕集した。それぞれ捕集した石灰石の重量を測定した後、捕集した石灰石の任意の箇所から粒度測定用として3試料を採取した。粒度測定結果は正確性を確保するために3資料の平均値を採用した。
【0092】
小型粉砕試験機の消費電力測定に使用した電力測定器は日置電機株式会社製の「クランプオンパワーハイテスタ3168」である。消費電力量は1秒単位で測定された数値の平均値であり、本実験では30分間の平均値が測定された。本小型実験用粉砕機は3相220Vで消費電力は750W/Hである。消費電力量を測定した理由は次のとおりである。石灰石のミルへの供給をスクリューフィーダーで行っているが、しばしば閉塞を発生して定量切り出しに変量を発生した。供給量に差異があると、200メッシュアンダーの微粉粉砕量の単なる比較では正確を期することが出来ないので、各試験粉砕における消費電力量を測定し、そのとき得られた200メッシュアンダーの微粉粉砕量で除した電力原単位で比較することにより、正確性を保持した。
【0093】
粉砕試験時間の30分間内で200メッシュアンダー分の全粉砕量を測定すると共に、その粉砕に要した消費電力量(Wh)を測定し、測定された消費電力量を200メッシュアンダーの全粉砕量で除した数値を電力原単位として、ローラとテーブルの破砕面の様々な組合せについて求め、比較した。
【0094】
〔比較試験結果〕
粉砕ローラが台形型ローラの場合、すなわち図2(a)と図3(a)の組合せの場合の結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
回転テーブルにおける主破砕面を平滑面とし、他の破砕面、すなわち副破砕面に直角スリット溝を設けた試験(3)においては、200メッシュアンダー量が、回転テーブルの破砕面全体に直角スリット溝を設けた試験(2)と比べて約12.5%向上し、試験(1)の平滑面同士の組合せと比べた場合は約14.3%向上した。電力原単位は全粉砕量で比較したものであるが、試験(1)では0.075Wh/g、試験(2)では0.078Wh/g、試験(3)では0.071Wh/gであり、試験(3)は試験(1)に対しては約5.3%の低減、試験(2)に対しては約9%の低減効果を示した。
【0097】
粉砕ローラがタイヤ扁平型ローラの場合、すなわち図2(b)と図3(b)の組合せの場合の結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
回転テーブルにおける主破砕面を平滑面とし、他の破砕面、すなわち副破砕面に直角スリット溝を設けた試験(3)においては、200メッシュアンダー量が、回転テーブルの破砕面全体に直角スリット溝を設けた試験(2)と比べて約48%向上し、試験(1)の平滑面同士の組合せと比べた場合は約42.4%向上した。電力原単位は全粉砕量で比較したものであるが、試験(1)では0.073Wh/g、試験(2)では0.068Wh/g、試験(3)では0.063Wh/gであり、試験(3)は試験(1)に対しては約13.7%の低減、試験(2)に対しては約7.4%の低減効果を示した。
【0100】
粉砕ローラがタイヤ凸型ローラの場合、すなわち図2(c)と図3(c)の組合せの場合の結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
回転テーブルにおける主破砕面を平滑面とし、他の破砕面、すなわち副破砕面に直角スリット溝を設けた試験(3)においては、200メッシュアンダー量が、回転テーブルの破砕面全体に直角スリット溝を設けた試験(2)と比べて約46.5%向上し、試験(1)の平滑面同士の組合せと比べた場合は約36%向上した。電力原単位は全粉砕量で比較したものであるが、試験(1)では0.061Wh/g、試験(2)では0.062Wh/g、試験(3)では0.064Wh/gであり、試験(3)は試験(1)に対しては約4.7%の増加、試験(2)に対しては約3.1%の増加となった。
【0103】
台形型ローラを用いた竪型ローラミルによる試験(1)及びタイヤ扁平型ローラを用いた竪型ローラミルによる試験(2)では、平滑面同士の電力原単位が最も高く、回転テーブル破砕面のうち主破砕面のみを平滑面としたローラとテーブルの組合せの場合が電力原単位が最も小さく、大差を生じていた。これに対し、タイヤ凸型ローラを用いた竪型ローラミルによる試験(3)では、僅かではあるが逆の傾向を示した。これは、前者の粉砕はどちらかと言えば面粉砕であるのに対し、後者の粉砕は、粉砕ローラの曲率半径が小さく破砕面の凸傾向が強いので線粉砕に近くなり、破砕面形状の影響を受け難かったためと想定される。しかし、その後者の場合も200メッシュアンダーの生産量が多くなるにつれて単純に電力原単位が増加したと考えられるので、悪い評価ではない。
【0104】
〔石炭の粉砕実験〕
実験に採用した粉砕ローラは、図4(a)に示したタイヤ扁平型ローラ(D/R=4)、図4(b)に示したタイヤ凸型ローラ(D/R=5)の2種類とした。
【0105】
これらに組み合わせる環状の粉砕部は、図5(a)(b)に示す回転テーブルを想定したものとした。具体的には、図4(a)に示したタイヤ扁平型ローラ(D/R=4)に対しては、図5(a)に示した主破砕面(内周部)が平滑面、副破砕面(中央部及び外周部)が45度掻き戻しスクリュー凹溝付きである粉砕部を組み合わせた。比較のために、破砕面の全体が45度掻き戻しスクリュー凹溝付きである粉砕部を組み合わせた。またタイヤ扁平型ローラ、粉砕部ともに表面が平滑な場合の組合せも実験した。各組合せについて、200メッシュアンダーの微粉粉砕量と本粉砕試験機の消費電力量の差異を測定し、電力原単位の比較を行うことにより、回転テーブルの主破砕面を平滑にすることの有効性を、タイヤ扁平型ローラ使用の場合について比較した。
【0106】
図4(b)に示したタイヤ凸型ローラ(D/R=5)に対しては、図5(b)に示した主破砕面(中央部)が平滑面、副破砕面(外周部及び内周部)が45度排出方向スクリュー凹溝付きである粉砕部を組み合わせた。比較のために、破砕面の全体が45度排出方向スクリュー凹溝付きである粉砕部を組み合わせた。またタイヤ扁平型ローラ、粉砕部ともに表面が平滑な場合の組合せも実験した。各組合せについて、200メッシュアンダーの微粉粉砕量と本粉砕試験機の消費電力量の差異を測定し、電力原単位の比較を行うことにより、回転テーブルの主破砕面を平滑にすることの有効性を、タイヤ凸型ローラ使用の場合について比較した。
【0107】
タイヤ扁平型ローラ及びタイヤ凸型ローラの寸法、回転テーブルを想定した環状の粉砕部の寸法は前述したとおりである。他の粉砕条件を以下に集約した。
【0108】
使用した石炭: 製鉄所原料炭
粒度範囲―G−: 7mmx7mm≧G≧0.5mmx0.5mm
初期粒度分布:
20メッシュ以上 40g
60メッシュ以上 34g
120メッシュ以上 3g
200メッシュ以上 13g
235メッシュ以上 2g
P 9g
水分量 5%
ローラクリアランス: 0mm
ローラ面圧: 23.5Kg
テーブル回転速度: 60RPM
石炭供給量: 2,530〜2,850g/30分間
石炭供給方法: スクリューフィーダー連続供給方式
試験温度及び湿度: 18〜34℃、62〜78%
【0109】
〔比較試験結果〕
粉砕ローラがタイヤ扁平型ローラの場合、すなわち図4(a)と図5(a)の組合せの場合の結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
回転テーブルにおける主破砕面を平滑面とし、他の破砕面、すなわち副破砕面に45度掻き戻し方向スクリュー溝を設けた試験(3)においては、200メッシュアンダー量が、回転テーブルの破砕面全体にスクリュー溝を設けた試験(2)と比べて約41%向上し、試験(1)の平滑面同士の組合せと比べた場合は約18.4%向上した。試験(1)に比べ試験(2)の微粉砕量が少なくなった原因はローラの主破砕面がローラ小径側に存在し、その結果、有効破砕面積が元々少なく、更に掻き戻し方向の45度スクリュー溝が主破砕面にまで形成されているため、実際に粉砕を行っている主破砕面は石炭の粉砕に必要な有効破砕面が非常に少なくなると同時に、石炭がテーブル中央側へ掻き戻され、より粉砕仕事量が減少したことにある。それに比べ、平滑面ローラは、試験(2)に比べ有効破砕面積が広くなり、微粉の粉砕量がより多くなった。
【0112】
全粉砕量に対する電力原単位は、試験(3)は試験(1)に比べ約12%減少しているが、試験(2)と比較すると約1.7%増加した。しかし、試験(3)での微粉砕量は試験(2)での微粉砕量と比べて41%も増加しており、その仕事量から考えると、試験(3)の電力原単位は非常に優れた数値である。試験(2)は元々粉砕仕事量が少ないので、それに比例して電力消費量も少なくなるのは当然である。
【0113】
粉砕ローラがタイヤ凸型ローラの場合、すなわち図4(b)と図5(b)の組合せの場合の結果を表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
回転テーブルにおける主破砕面を平滑面とし、他の破砕面、すなわち副破砕面に排出方向の45度スクリュー溝を設けた試験(3)においては、200メッシュアンダー量が、回転テーブルの破砕面全体に排出方向の45度スクリュー溝を設けた試験(2)と比べて約7.7%向上し、試験(1)の平滑面同士の組合せと比べた場合は約20.4%向上した。全粉砕量に対する電力原単位は、試験(3)は試験(1)に比べて約6.3%減少する一方で、試験(2)比べると約3.4%増加したが、これは試験(3)における粉砕仕事量が試験(2)に比べて約7.7%増加したことによるものであり、その増加量を考慮すると、試験(3)は試験(2)比して電力原単位についても優位である。
【0116】
このように、回転テーブル破砕面を主破砕面とそれ以外の副破砕面とに区分し、副破砕面にのみスリット溝やスクリュー溝を設け、主破砕面を平滑面とすると、主破砕面は100%の有効破砕面積をもち、他の粉砕に大きく貢献しない副破砕面は粉砕原料の移送作用面として働き、結果的に粉砕効率を高めることになる。
【符号の説明】
【0117】
10A 台形型ローラ
11A 破砕面
11A′主破砕面
11A″副破砕面
12A スリット溝
10B タイヤ扁平型ローラ
11B 破砕面
11B′主破砕面
11B″副破砕面
12B スリット溝
10C タイヤ凸型ローラ
11C 破砕面
11C′主破砕面
11C″副破砕面
12C スリット溝
20A,20B,20C 回転テーブル
21A,21B,21C 破砕面
21A′,21B′,21C′ 主破砕面
21A″,21B″,21C″ 副破砕面
22A,22B,22C スリット溝
22B,22C スクリュー溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に回転する回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型粉砕ローラとの組合せからなる竪型ローラミルにおいて、ローラ破砕面が微粉砕を主として行う主破砕面と主破砕面以外の破砕面とからなり、粉砕ローラの外周面に対向する回転テーブル破砕面のうち、粉砕ローラの主破砕面に対向する回転テーブル側の主破砕面が平滑面とされ、主破砕面以外の回転テーブル破砕面にはテーブル回転方向に対して直角または45°超の角度で傾斜したスリット溝、又はテーブル回転方向に対して5度以上45度以下の角度で傾斜するスクリュー溝が形成されたハイブリッド破砕面構造を回転テーブル側に有する竪型ローラミル。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラにおける主破砕面は、ローラ外周面のうち、最大磨耗量の2/3以上の磨耗を示す領域である竪型ローラミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラが台形型ローラであり、大径側の主破砕面を含む破砕面全体が、ローラ周方向に直角なスリット溝を形成された原料噛み込み面である竪型ローラミル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の竪型ミルローラにおいて、粉砕ローラが台形型ローラであり、大径側の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を内側から外側へ強制搬送する排出方向のスリット溝を形成された原料移送面である竪型ローラミル。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラがタイヤ凸型ローラであり、中央大径部の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を内側から外側へ強制搬送する排出方向のスリット溝を形成された原料移送面である竪型ローラミル。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラがタイヤ凸型ローラであり、中央大径部の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を外側から内側へ逆送する掻き戻し方向のスクリュー溝を形成された原料移送面である竪型ローラミル。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の竪型ミルローラにおいて、粉砕ローラがタイヤ扁平型ローラであり、反転使用に伴って両側小径部に位置した両側の主破砕面を含む破砕面全体が、粉砕原料を外側から内側へ逆送する掻き戻し方向のスクリュー溝が形成された原料移送面である竪型ローラミル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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