説明

端子カバーの取付け構造

【課題】端子カバーを機器に取り付ける際の作業性低下を回避する。
【解決手段】スタッドボルト47(相手側端子)を有するスターター40(機器)に対し、スタッドボルト47に接続する端子金具20が収容される端子カバー10を取り付けるための取付け構造である。端子カバー10に設けられ、スターター40への取付け方向と交差する方向に対向するように配置され、端子カバー10をスターター40に取り付ける過程では互いに反対方向へ弾性変形し、弾性復帰してスターター40に係止することで端子カバー10を取付け状態にロックする一対の弾性ロック片34,35を備え、一対の弾性ロック片34,35は、弱弾性ロック片34(一方の弾性ロック片)が強弾性ロック片35(他方の弾性ロック片)よりも相対的に弾力が弱い形態とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子カバーの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機器に設けた相手側端子に接続される端子金具を収容して保護するための端子カバーが開示されている。この端子カバーには、端子カバーを機器に対して仮保持するための手段として、弾性ロック片が設けられている。弾性ロック片は、相手側端子を挟んで対向するように対をなして設けられている。機器に端子カバーを取り付ける際には、対をなす弾性ロック片が弾性変形し、端子カバーが機器に対して正規の取付け状態になると、弾性ロック片が弾性復帰して機器に係止し、この係止作用によって端子カバーと機器が取付け状態にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−230993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の端子カバーでは、対をなす弾性ロック片の弾力が同じであるため、端子カバーを機器に取り付ける過程では、対をなす弾性ロック片の両方が同時に弾性変形を開始する。弾性ロック片は弾性変形するのに伴って弾性復元力を生じるのであるが、この弾性復元力は、端子カバーの円滑な取付け動作を妨げる抵抗となる。そのため、対をなす弾性ロック片が同時に弾性変形すると、作業性が低下することが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子カバーを機器に取り付ける際の作業性低下を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手側端子を有する機器に対し、前記相手側端子に接続する端子金具が収容される端子カバーを取り付けるための取付け構造であって、前記端子カバーに設けられ、前記機器への取付け方向と交差する方向に対向するように配置され、前記端子カバーを前記機器に取り付ける過程では互いに反対方向へ弾性変形し、弾性復帰して前記機器に係止することで前記端子カバーを取付け状態にロックする一対の弾性ロック片を備え、前記一対の弾性ロック片は、一方の前記弾性ロック片が他方の前記弾性ロック片よりも相対的に弾力が弱い形態とされているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記一対の弾性ロック片の対向方向と略平行に前記端子カバー外へ導出され、その導出領域の一部が変位規制された電線を備え、前記端子カバーが、前記電線の前記導出領域における変位規制部を略支点として、姿勢を傾けながら前記機器への取付け経路に沿うように揺動変位し得るようになっており、前記一方の弾性ロック片が、前記他方の弾性ロック片よりも前記変位規制部に近い側に配置されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記相手側端子は、前記機器に対する前記端子カバーの取付け方向と略平行に軸線を向けたスタッドボルトを有し、前記端子金具における前記相手側端子との接続部分が、前記スタッドボルトを嵌合させる接続孔となっており、前記一対の弾性ロック片が、前記接続孔を挟んで対向するように配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
端子カバーを機器に取り付ける過程では、一対の弾性ロック片のうち弾力の弱い弾性ロック片のみが、弾性変形して機器に係止され、この後、弾力の強い弾性ロック片が弾性変形して機器に係止される。本発明では、一対の弾性ロック片の両方が同時に弾性変形することがないので、弾性ロック片の弾性変形に伴う弾性復元力の最大値が低く抑えられる。これにより、弾性ロック片の弾性復元力に起因する取付け作業性の低下を回避することができる。
【0009】
<請求項2の発明>
端子カバーを電線の変位規制部を略支点として揺動させると、端子カバーは、一方の弾性ロック片が他方の弾性ロック片よりも機器に近づくように姿勢を傾けるので、端子カバーを機器に取り付ける際の作業性が良い。
【0010】
<請求項3の発明>
一方の弾性ロック片だけが機器に係止した状態では、スタッドボルトと接続孔とが嵌合するので、端子金具と端子カバーは、機器に対して、一対の弾性ロック片の対向方向に沿うように相対変位することはない。これにより、他方の弾性ロック片が機器に係止されるまでの間、一方の弾性ロック片が機器に係止した状態に保持されるので、作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態において端子カバーとスターター(機器)とを分離した状態をあらわす斜視図
【図2】端子カバーに端子金具と電線を取り付けた状態をあらわす平面図
【図3】端子カバーに端子金具と電線を取り付けて蓋部を開いた状態をあらわす平面図
【図4】端子カバーに端子金具と電線を取り付けた状態をあらわす底面図
【図5】端子カバーをスターター(機器)に取り付ける前の状態をあらわす断面図
【図6】端子カバーをスターター(機器)に取り付ける過程において、弱弾性ロック片(一方の弾性ロック片)のみが弾性変形した状態をあらわす断面図
【図7】端子カバーをスターター(機器)に取り付ける過程において、弱弾性ロック片(一方の弾性ロック片)が弾性復帰してスターター(機器)に係止した状態をあらわす断面図
【図8】端子カバーをスターター(機器)に取り付ける過程において、強弾性ロック片(他方の弾性ロック片)が弾性変形した状態をあらわす断面図
【図9】端子カバーをスターター(機器)に取り付ける過程において、強弾性ロック片(他方の弾性ロック片)が弾性復帰してスターター(機器)に係止した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図9を参照して説明する。本実施形態の取付け構造は、スタッドボルト47(本発明の構成要件である相手側端子)を有するスターター40(本発明の構成要件である機器)に対し、スタッドボルト47に接続する端子金具20が収容される端子カバー10を取り付けるための構造である。
【0013】
図1,5〜9に示すように、スターター40の上面の台座部41には、平面形状が略方形であって4辺の外縁部が台座部41から張り出した形態の取付部42が設けられている。この取付部42は、端子カバー10をスターター40に対して仮保持状態に取り付けるためのものである。取付部42の4辺の外縁部のうち左側の外縁部は、第1係止縁部43となっており、右側の外縁部は第2係止縁部44となっている。取付部42の上面の四隅には、上方へ突出する4つの位置決め突起45が形成されている。スタッドボルト47は、軸線を上下方向に向けた状態で、取付部42の上面中央部から上方へ突出している。取付部42の上面には、スタッドボルト47に外嵌されたリング状のワッシャ46が配置されている。第1係止縁部43と第2係止縁部44は、スタッドボルト47を左右から挟んで互いに対向するように配置されている。
【0014】
図1〜4に示すように、端子カバー10は、上面が開放された本体部11と、本体部11の上面の開口部を閉塞する第1蓋部12及び第2蓋部13とを、ヒンジ14で連結した単一部品である。図2に示すように、端子カバー10の平面形状は略L字形である。端子カバー10のうち第1蓋部12と対応する部分は、平面形状が略方形の第1収容部15となっている。図4,5に示すように、第1収容部15の下面は、そのほぼ全領域に亘って開放された取付孔16となっている。したがって、第1収容部15は概ね角筒状をなす。図3〜5に示すように、第1収容部15を構成する4つの壁部のうち左壁部17の外面上端部には、第1蓋部12の開閉の支点となるヒンジ14が繋がっている。
【0015】
図3に示すように、端子金具20は、所定形状に打ち抜いた金属板材(図示省略)を曲げ加工して成形されたものであり、平面形状は、端子カバー10と同様、略L字形をなしている。端子金具20は、第1収容部15内に収容される第1端子部21と、本体部11の第2収容部19内に収容される第2端子部22とを備えた単一部品である。第1端子部21は、水平な平板状をなす。図3〜5に示すように、第1端子部21には、板厚方向(上下方向)に貫通する円形の接続孔23が形成されている。図3に示すように、第2端子部22には、オープンバレル状の圧着部24が形成されている。
【0016】
かかる端子金具20は、両蓋部12,13を開けた状態で本体部11内に落とし込むようにして端子カバー10内に収容された状態で組み付けられている。端子金具20を端子カバー10に組み付けた状態では、第2端子部22が、本体部11のうち第2収容部19を構成する部分の底壁部に載置され、図3,4に示すように、本体部11の内平面に形成した複数の抜止め突起25により浮き上がらないように押さえ付けられている。これにより、端子金具20の端子カバー10に対する上下方向への相対変位が規制されている。また、図3に示すように、第2端子部22の外縁部が、本体部11のうち第2収容部19を構成する部分の内壁面に当接し、これにより、端子金具20の端子カバー10に対する前後方向及び左右方向への相対変位が規制されている。
【0017】
第2端子部22を本体部11に位置決め保持した状態では、第1端子部21が第1収容部15内に収容される。ここで、端子金具20は、端子カバー10に対して上下方向、前後方向及び左右方向において相対変位を規制されているので、第1端子部21も、第1収容部15(端子カバー10)に対し上下方向、前後方向及び左右方向への相対変位が規制されている。そして、第1端子部21の下面のほぼ全領域と接続孔23の全体が、第1収容部15の下面の取付孔16に臨んでいる。ここで、図5〜9に示すように、接続孔23の中央を第1端子部21の板厚方向に通る仮想線を、第1収容部15の軸線15Aと定義する。
【0018】
図3に示すように、端子カバー10の第2収容部19内では、圧着部24に電線26が導通可能に固着されている。電線26は、芯線27を絶縁被覆28で包囲した周知形態のものであり、圧着部24に固着される部分は、絶縁被覆28が除去されて芯線27が露出されている。端子金具20を端子カバー10内に位置決めして収容した状態では、電線26が、端子カバー10内で左右方向に配索されている。
【0019】
図3に示すように、電線26の一方の端部は、第2収容部19の左端部に開口した左導出口29から、略水平面に沿うように斜め左後方へ導出されている。図2,4に示すように、この電線26における左方への導出領域30の先端部は変位規制部31となっており、この変位規制部31は、コネクタ32を介してオルタネータ(図示省略)に導通可能に固定されている。図3に示すように、電線26の他方の端部は、第2収容部19の右端部に開口した右導出口33から、略水平面に沿うように右方へ導出されている。この電線26の右端部は、端子カバー10を取付部42に取り付けた後に、バッテリー(図示省略)に接続されるようになっている。
【0020】
したがって、電線26の変位規制部31をオルタネータに固定し、且つ電線26の右端部をバッテリーに固着する前の状態では、端子カバー10が、変位規制部31(コネクタ32)を略支点として、取付部42に取り付けられる位置から、それよりも上方の位置(取付部42及びスタッドボルト47よりも高い位置)との間で揺動変位し得るようになっている。図9に示すように、端子カバー10が取付部42に取り付けられた状態では、第1収容部15の軸線15Aが、上下方向(鉛直方向)を向いてスタッドボルト47の軸線47Aとほぼ合致する。これに対し、図5に示すように、端子カバー10が取付部42よりも上方の位置へ揺動変位すると、端子カバー10の姿勢が傾き、第1収容部15の軸線15Aが、鉛直方向(スタッドボルト47の軸線47A)に対して左側(オルタネータ側)へ傾いた状態となる。
【0021】
端子カバー10には、端子カバー10を取付部42に仮保持する手段として、図4〜9に示すように、弱弾性ロック片34(本発明の構成要件である一方の弾性ロック片)と強弾性ロック片35(本発明の構成要件である他方の弾性ロック片)が、第1収容部15の軸線15Aを挟んで左右方向(取付部42に対する端子カバー10の取付け方向と交差する方向)に対向するように配置されて設けられている。この一対の弾性ロック片34,35の対向方向は、端子カバー10内における電線26の配索方向と略平行であり、導出領域30の導出方向と略平行である。以下、この一対の弾性ロック片34,35の詳細を説明する。
【0022】
図5に示すように、弱弾性ロック片34は、第1収容部15を構成する前後左右の4つの壁部のうち左壁部17に形成されている。弱弾性ロック片34は、左壁部17の一部を構成する平板状の弱弾性板部36と、左ロック突起37とを一体に形成して構成されている。弱弾性板部36は、下方(端子カバー10の取付部42への取付け時における移動方向と概ね同じ方向)に向かって片持ち状に延出した形態である。左ロック突起37は、弱弾性ロック片34の下端部(延出端部)に形成され、第1収容部15の内面側(右方であって、後述する強弾性ロック片35に接近する方向)へ突出した形態である。左ロック突起37は、取付孔16の4辺の孔縁のうち左孔縁部に沿うように位置している。この弱弾性ロック片34は、弱弾性板部36の上端部(基端部)を略支点として左ロック突起37を左方(第1収容部15の軸線15A及び強弾性ロック片35から遠ざかる方向)へ変位させるように弾性変形し得るようになっている。
【0023】
図5に示すように、強弾性ロック片35は、第1収容部15を構成する前後左右の4つの壁部のうち右壁部18に形成されている。強弾性ロック片35は、右壁部18の一部を構成する平板状の強弾性板部38と、右ロック突起39とを一体に形成して構成されている。強弾性板部38は、下方(端子カバー10の取付部42への取付け時における移動方向と概ね同じ方向)に向かって片持ち状に延出した形態である。右ロック突起39は、強弾性ロック片35の下端部(延出端部)に形成され、第1収容部15の内面側(左方であって、上記弱弾性ロック片34に接近する方向)へ突出した形態である。右ロック突起39は、取付孔16の4辺の孔縁のうち右孔縁部に沿うように位置している。この強弾性ロック片35は、強弾性板部38の上端部(基端部)を略支点として右ロック突起39を右方(第1収容部15の軸線15A及び弱弾性ロック片34から遠ざかる方向)へ変位させるように弾性変形し得るようになっている。
【0024】
この一対の弾性ロック片34,35は、弾力に強弱が設けられている。即ち、図4に示すように、弱弾性ロック片34の弱弾性板部36の板幅寸法(端子カバー10における前後方向の寸法であって、図4においては上下方向の寸法)は、強弾性ロック片35の強弾性板部38の板幅寸法よりも小さい寸法とされている。本実施形態では、板幅寸法の違いのみによって、弱弾性ロック片34の弾力が強弾性ロック片35の弾力よりも小さく設定されている。したがって、他の寸法は同じである。
【0025】
つまり、弱弾性板部36の延出方向(上下方向)の寸法は、強弾性板部38の延出方向の寸法と同じ寸法である。また、弱弾性板部36の板厚寸法は、強弾性板部38の板厚寸法と同じ寸法である。左ロック突起37の弱弾性板部36からの突出寸法は、右ロック突起39の強弾性板部38からの突出寸法と同じ寸法である。弱弾性板部36の上端(弱弾性ロック片34の弾性変形の支点)から左ロック突起37までの上下寸法は、強弾性板部38の上端(強弾性ロック片35の弾性変形の支点)から右ロック突起39までの上下寸法と同じ寸法である。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。端子カバー10をスターター40の取付部42に取り付ける際には、端子カバー10を、電線26の変位規制部31を略支点として上方へ揺動変位させ、図5に示すように、一対の弾性ロック片34,35の対向方向において左側(弱弾性ロック片34側)へ傾いた状態で取付部42及びスタッドボルト47の上方で待機させる。このとき、弱弾性ロック片34の左ロック突起37が、強弾性ロック片35の右ロック突起39よりも低い位置(取付部42に近い位置)で待機することになる。
【0027】
この待機状態から、端子カバー10を下方へ揺動変位させると、第1収容部15がスタッドボルト47に覆い被さり、スタッドボルト47が接続孔23に嵌合される。このとき、第1収容部15の軸線15Aはスタッドボルト47の軸線47Aに対して斜め方向となる。そして、図6に示すように、左ロック突起37が第1係止縁部43と干渉するので、弱弾性ロック片34は左方へ弾性変形する。このとき、弱弾性ロック片34が弾性変形せずに、第1収容部15の軸線15Aがスタッドボルト47の軸線47Aと合致するように端子カバー10の姿勢が変位し、強弾性ロック片35の右ロック突起39が第2係止縁部44に干渉する状態となる可能性もある。
【0028】
しかし、強弾性ロック片35の弾力は弱弾性ロック片34の弾力よりも強いので、弱弾性ロック片34と強弾性ロック片35が同時に取付部42に干渉した状態で、第1収容部15に下方への押圧力を付与しても、強弾性ロック片35は弾性変形せず、右ロック突起39が第2係止縁部44に対して上から当接した状態のままである。したがって、この状態から端子カバー10を下方へ変位させると、端子カバー10が、右ロック突起39(強弾性ロック片35の下端)と第2係止縁部44との干渉位置(当接位置)を支点として左方へ傾きながら、弱弾性ロック片34が第1係止縁部43を通過していく。
【0029】
そして、図7に示すように、左ロック突起37が第1係止縁部43を通過し終わると、弱弾性ロック片34が弾性復帰し、左ロック突起37が第1係止縁部43に対して下から係止する。この係止作用により、第1収容部15の左壁部17は、取付部42に対して上方(外れる方向)へ相対変位することを規制される。また、第1端子部21がワッシャ46の上面に載置され、第1係止縁部43が第1端子部21と左ロック突起37との間で上下に挟まれた状態となる。
【0030】
この状態から、端子カバー10に対し、下方への押圧力をさらに付与すると、図8に示すように、強弾性ロック片35が弾性変形を開始する。そして、右ロック突起39が第2係止縁部44を通過し終わると、図9に示すように、強弾性ロック片35が弾性復帰し、右ロック突起39が第2係止縁部44に対して下から係止する。この係止作用により、第1収容部15の右壁部18は、取付部42に対して上方(外れる方向)へ相対変位することを規制される。
【0031】
強弾性ロック片35が弾性変形を開始してから弾性復帰するまでの間、スタッドボルト47と接続孔23とが嵌合しているので、第1端子部21と第1収容部15は、スタッドボルト47に対して左右方向へ相対変位することはない。したがって、弱弾性ロック片34と第1係止縁部43との係止状態が維持される。以上のようにして、端子カバー10がスターター40に対し仮保持状態に取り付けられるとともに、端子金具20がスタッドボルト47に対し仮保持される。この後は、第1蓋部12を開けて、スタッドボルト47にナット(図示省略)をねじ込んで締め付ければ、スタッドボルト47と端子金具20とが導通可能状態に固着される。
【0032】
本実施形態の取付け構造は、端子カバー10に設けられ、スターター40への取付け方向と交差する左右方向に対向するように配置され、端子カバー10をスターター40に取り付ける過程では互いに反対方向へ弾性変形し、弾性復帰してスターター40に係止することで端子カバー10を取付け状態にロックする一対の弾性ロック片34,35を備えている。そして、この一対の弾性ロック片34,35は、一方の弱弾性ロック片34が他方の強弾性ロック片35よりも相対的に弾力が弱い形態とされている。
【0033】
この構成によれば、端子カバー10をスターター40に取り付ける過程で、一対の弾性ロック片34,35のうち弾力の弱い弱弾性ロック片34のみが、弾性変形してスターター40に係止され、この後、弾力の強い強弾性ロック片35が弾性変形してスターター40に係止される。本実施形態では、一対の弾性ロック片34,35の両方が同時に弾性変形することがないので、弾性ロック片34,35の弾性変形に伴う弾性復元力の最大値が低く抑えられる。これにより、弾性ロック片34,35の弾性復元力に起因する取付け作業性の低下を回避することができる。
【0034】
また、一対の弾性ロック片34,35の対向方向と略平行に端子カバー10から外へ導出され、その導出領域30の一部が変位規制された電線26を備え、端子カバー10が、電線26の導出領域30における変位規制部31を略支点として、姿勢を傾けながらスターター40への取付け経路に沿うように上下方向へ揺動変位し得るようになっており、弱弾性ロック片34が、強弾性ロック片35よりも変位規制部31に近い側に配置されている。この構成によれば、端子カバー10を電線26の変位規制部31を略支点として揺動させると、端子カバー10は、弱弾性ロック片34が強弾性ロック片35よりもスターター40に近づくように姿勢を傾けるので、端子カバー10をスターター40に取り付ける際の作業性が良い。
【0035】
また、スタッドボルト47は、スターター40に対する端子カバー10の取付け方向と略平行に軸線47Aを向けたスタッドボルト47を有し、端子金具20におけるスタッドボルト47との接続部分が、スタッドボルト47を嵌合させる接続孔23となっており、一対の弾性ロック片34,35が、接続孔23を挟んで対向するように配置されている。この構成によれば、弱弾性ロック片34だけがスターター40に係止した状態では、スタッドボルト47と接続孔23とが嵌合するので、端子金具20と端子カバー10は、スターター40に対して、一対の弾性ロック片34,35の対向方向に沿った作用方向に相対変位することはない。これにより、強弾性ロック片35がスターター40に係止されるまでの間、弱弾性ロック片34がスターター40に係止した状態に保持されるので、作業性が良い。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、一方の弾性ロック片が他方の弾性ロック片よりも相対的に弾力が弱くなる形態として、双方の弾性ロック片の幅方向(弾性ロック片の延出方向と弾性変形方向の両方向と交差する方向)の寸法を異ならせたが、これに限らず、双方の弾性ロック片の延出方向の長さ寸法(弾性ロック片の変形の支点から、機器のとの干渉位置までの寸法)を異ならせてもよい。
(2)上記実施形態では、弾性ロック片のロック突起を内向き(互いに対向する方向)へ突出するようにしたが、弾性ロック片のロック突起は外向き(相手側とは反対の方向)へ突出するようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、一対の弾性ロック片を、角筒状をなす第1収容部を構成する壁部の中央部に配置したが、一対の弾性ロック片は、角筒状をなす第1収容部の角縁部に対角配置してもよい。
(4)上記実施形態では、一対の弾性ロック片が配置される第1収容部を角筒状としたが、第1収容部は、角筒以外の形状であってもよい。
(5)上記実施形態では、一対の弾性ロック片の対向方向と、端子カバー内における電線の配索方向とが略平行であるが、一対の弾性ロック片の対向方向と、端子カバー内における電線の配索方向とが交差する向きでもよい。
(6)上記実施形態では、電線が端子カバーを貫通し、電線の両端側部分が端子カバーの外部へ導出されるようにしたが、端子カバー内において電線の一方の端部が端子金具に接続され、電線の他方の端部側が端子カバーの外部へ導出されるようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、電線の変位規制部を電線の導出領域の端部に設定し、コネクタを介してオルタネータに固定したが、変位規制部は、電線の導出領域のうち端部よりも端子カバーに近い位置に設定してもよい。このような変位規制部の設定例としては、変位規制部にブラケットを取り付け、そのブラケットを車体に固定することで、変位規制部の変位を規制する形態が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…端子カバー
20…端子金具
23…接続孔
26…電線
30…電線の導出領域
31…変位規制部
34…弱弾性ロック片(一方の弾性ロック片)
35…強弾性ロック片(他方の弾性ロック片)
40…スターター(機器)
47…スタッドボルト(相手側端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子を有する機器に対し、前記相手側端子に接続する端子金具が収容される端子カバーを取り付けるための取付け構造であって、
前記端子カバーに設けられ、前記機器への取付け方向と交差する方向に対向するように配置され、前記端子カバーを前記機器に取り付ける過程では互いに反対方向へ弾性変形し、弾性復帰して前記機器に係止することで前記端子カバーを取付け状態にロックする一対の弾性ロック片を備え、
前記一対の弾性ロック片は、一方の前記弾性ロック片が他方の前記弾性ロック片よりも相対的に弾力が弱い形態とされていることを特徴とする端子カバーの取付け構造。
【請求項2】
前記一対の弾性ロック片の対向方向と略平行に前記端子カバー外へ導出され、その導出領域の一部が変位規制された電線を備え、
前記端子カバーが、前記電線の前記導出領域における変位規制部を略支点として、姿勢を傾けながら前記機器への取付け経路に沿うように揺動変位し得るようになっており、
前記一方の弾性ロック片が、前記他方の弾性ロック片よりも前記変位規制部に近い側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の端子カバーの取付け構造。
【請求項3】
前記相手側端子は、前記機器に対する前記端子カバーの取付け方向と略平行に軸線を向けたスタッドボルトを有し、
前記端子金具における前記相手側端子との接続部分が、前記スタッドボルトを嵌合させる接続孔となっており、
前記一対の弾性ロック片が、前記接続孔を挟んで対向するように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子カバーの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101891(P2013−101891A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245985(P2011−245985)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】