説明

端子ボックス

【課題】製品の納品段階で、部品点数を少なく、且つ、蓋の安定状態を維持できるようにする。
【解決手段】ボックス本体1と、そのボックス本体1に一端部を枢支状態に着脱自在な蓋2とを設け、ボックス本体1に取り付けた蓋2の閉状態を維持する係合部8を、蓋2の一端部側と、他端部側とにそれぞれ設け、蓋2は、揺動経路において何れの係合部8も係合しないオープン状態と、一端部側の係合部8のみが係合している仮固定状態と、何れの係合部8も係合している本固定状態とに切替可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、太陽電池モジュール等に取り付けて使用できる端子ボックスに関し、更に詳しくは、内空部に端子を納めるように形成されたボックス本体と、そのボックス本体に取り付けてボックス開口を閉塞する蓋とを設けた端子ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の端子ボックスの第1例としては、ボックス本体と蓋とを別体の状態で用意し、取付対象部へのボックス本体の取り付けやボックス本体内の配線等の処理が終わった後、ボックス本体の開口を塞ぐ状態に蓋を被せて、接着固定するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
また、第2例の端子ボックスとしては、ボックス本体に対して、蓋の一端部を枢支連結したものがあり、蓋を閉めてボックス本体の開口を閉塞した状態で相互を本固定状態にする係合部が設けてあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−323737号公報(図3)
【特許文献2】特開2005−45256号公報(図4、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した第1例の端子ボックスによれば、ボックス本体と蓋とが別体で用意されているので、現場でそれらを一体化して固定する手間が生じ、設置作業効率が低い。また、端子ボックスとして最終的には一体品であるにも拘わらず、物品の納品時には、ボックス本体と蓋との2部品に別れており、嵩張って取扱性が悪いと共に、部品点数が多くなり、在庫管理に手間が掛かる問題点がある。
上述した第2例の端子ボックスによれば、ボックス本体に蓋は枢支連結してあるから、両者は一体品として取り扱うことができ、第1例の問題点は解消する。
第2例の端子ボックスにおけるボックス本体と蓋との本固定は、前記係合部によって行われるから、設置された状態で容易に係合が解除されないために、係合部の係合力は強力である必要がある。従って、納品前にボックス本体と蓋とを係合させておくと、現場で係合解除するのに手間取って、設置作業効率が低下したり、無理やり係合解除すると破損させる危険性があり、通常は、係合解除した状態で納品される。
その結果、蓋は枢支軸芯周りに自由に揺動することが懸念され、運搬や納品時に、不用意に揺動した蓋が他物にあたったり破損し易い問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、製品の納品段階で、部品点数を少なく、且つ、蓋の安定状態を維持できる端子ボックスを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ボックス本体と、そのボックス本体に一端部を枢支状態に着脱自在な蓋とを設け、前記ボックス本体に取り付けた前記蓋の閉状態を維持する係合部を、前記蓋の一端部側と、他端部側とにそれぞれ設け、前記蓋は、揺動経路において前記何れの係合部も係合しないオープン状態と、前記一端部側の係合部のみが係合している仮固定状態と、前記何れの係合部も係合している本固定状態とに切替可能に構成されているところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ボックス本体と、ボックス本体に一端部を枢支状態に着脱自在な蓋とを設けて構成してあるから、両者を枢支状態に一体化しておくことができ、保管時や運搬時や納品時の部品点数を、最小にすることができる。従って、嵩張らず、少ないスペースで保管や運搬や納品を行うことができる。
また、蓋は、揺動経路において前記何れの係合部も係合しないオープン状態と、前記一端部側の係合部のみが係合している仮固定状態と、前記何れの係合部も係合している本固定状態とに切替可能に構成されているから、例えば、上述の保管時や運搬時や納品時には、前記仮固定状態にしておくことで、蓋の一端部側の係合部が係合し、蓋が不用意に開かない安定状態を維持でき、取扱性が向上する。
因みに、蓋を前記オープン状態にしたり、取り外すことで、取付対象部へのボックス本体の取り付けやボックス本体内の配線や結線やポッティング等の作業を実施するのに、蓋が障害になるのを防止でき、作業効率の向上を図ることができる。
また、蓋を前記本固定状態にすることで、ボックス本体に対して蓋をより確実な状態に固定することができる。
即ち、ボックス本体に対する蓋の取り付き姿勢を、各状態に応じて好ましい姿勢にすることができ、保管・運搬・納品から始まって、設置に至るまで、取り扱い易くなる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記蓋と前記ボックス本体との枢支連結部は、前記蓋と前記ボックス本体のうち一方に設けた枢支軸部と、他方に設けた軸支持部とで構成してあり、前記軸支持部は、支持している前記枢支軸部を、その軸径方向に移動可能な状態で支持できる溝部で構成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、軸支持部は、支持している枢支軸部を、その軸径方向に移動可能な状態で支持できる溝部で構成してあるから、ボックス本体と蓋とを連結している状態で、溝部に沿って枢支軸部を移動させることができる。
枢支軸部の軸径方向への移動が可能となることで、例えば、図3(b)に示すように、蓋2を開いたオープン状態においては、大きな角度で開くことができる一方、図3(a)に示すように、蓋2の半固定状態や、図3(c)に示すように、蓋2の本固定状態では、ボックス本体1の開口部6内に枢支軸部7bが沈み込んだ状態に固定することができるようになる。
図3に示す例の場合、図3(a)の状態から蓋2を開方向に揺動させるに伴って、蓋2の一端部(上面)が、ボックス本体1の上縁部に当接し、その上縁部を支点としたテコの作用で、蓋2の枢支軸部7bが軸支持部7aの溝部9に沿って上にスライドする(図3 (b)参照)。
その結果、蓋2を大きな角度で開くことができ、取付対象部へのボックス本体の設置や内部の配線や結線やポッティング等の設置作業を行う際に、蓋の存在が障害になり難く、効率よく前記設置作業を実施できる。
一方、半固定状態や本固定状態において、枢支軸部がボックス本体の開口内に沈み込んでいることで、全体の高さをより小さくでき、省スペース化を図ることができる。
また、特に、本固定状態においては、ボックス本体の開口内に蓋全体が嵌入する状態に設置できるから、蓋の外縁部の全周を、ボックス本体の周壁によって覆うことができ、ボックス本体内の密閉度をより向上させて、例えば、漏電や漏水等の問題を防止し易い。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記蓋の一端部側の係合部は、枢支軸芯の近傍位置で、前記枢支軸芯に対して前記蓋の他端部側に配置してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、前記蓋の一端部側の係合部は、蓋の他端部側の係合部と共に、ボックス本体と蓋との本固定状態を維持する機能を備えていることに加えて、前記蓋の仮固定状態において、蓋が開方向に不用意に揺動するのを防止することができる。
即ち、蓋の一端部側の係合部の配置を、枢支軸芯の近傍位置で、前記枢支軸芯に対して前記蓋の他端部側に配置するだけで、別の機構を設けなくても、蓋の半固定状態における揺動阻止をも叶えられ、シンプルな構造で他機能を備えることができるようになる。また、余分な機構を設けなくてよいからコストアップを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】端子ボックスを示す分解斜視図
【図2】蓋の開閉状態を示す斜視図
【図3】蓋の開閉状態を示す断面図
【図4】係合部の要部を示す断面詳細図
【図5】枢支連結部を示す要部斜視図
【図6】枢支連結部を示す正面視断面図
【図7】枢支連結部を示す上面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の端子ボックスの一実施形態品を示すもので、この端子ボックスBは、太陽電池モジュール用のものとして形成されている。
【0015】
端子ボックスBは、合成樹脂によって形成してあり、ボックス本体1と、そのボックス本体1に一端部を枢支状態に着脱自在な蓋2とを設けて構成してある。内部には、クランパー(不図示)によって挟持されたケーブル3の端部や、クランパーとケーブル3とをボックス本体1の底部分に固定するスペーサ(不図示)や、ダイオード4やコンタクト5等が納められ、所定の結線の後、残った内空部に樹脂充填(ポッティング)が施される。
尚、図には示さないが、端子ボックスBの太陽電池モジュールへの取り付けは、下面を太陽電池モジュールの裏面に接着や機械式固定等の手段によって行われる。
【0016】
前記ボックス本体1は、上方が開口部6となった矩形ボックスとして形成してある。
左周壁部1Aと右周壁部1Bは、それぞれ一端部から他端部にかけて高さ寸法が減少する状態に形成してあり、一端周壁部1Cと他端周壁部1Dとは、前記左右両周壁部1A,1Bの他端部と同じ高さ寸法に形成してある。
【0017】
前記左周壁部1Aと右周壁部1Bの一端部には、前記蓋2との枢支連結部7を構成する軸支持部7aがそれぞれ設けられており、図2に示すように、ボックス本体1に対して取り付けた蓋2を揺動できるように構成されている。
また、前記一端周壁部1Cと他端周壁部1Dの上端部には、前記蓋2との係合部8を構成する係合凸部8aがそれぞれ設けられており、図2(a),図3(a)に示す蓋の仮固定状態や、図2(c),図3(c)に示す蓋の本固定状態において一部又は全部の係合部8が係合するように構成されている。
また、一端周壁部1Cの両端部は、蓋2の枢支軸部7bの外形に合わせた膨出形状に形成してある(図1、図5参照)。
【0018】
前記蓋2は、ボックス本体1の前記開口部6に内嵌する矩形形状に形成してある。
前記蓋2の一端側の一端辺部2Cと、他端側の他端辺部2Dとには、前記ボックス本体1との係合部8を構成する係合凹部8bが、前記各係合部凸部8aに対応した位置に設けてある。尚、一端辺部2Cの両端部には、前記枢支軸部7bの半球状の端部が突出する状態に形成してある(図1参照)。
また、蓋2の左辺部2Aと右辺部2Bには、図2(a),図3(a)に示すように小さな一つの突起2aがそれぞれ設けてある。この突起2aには、図2(a),図3(a)に示すように、蓋2の仮固定状態において前記左周壁部1A,右周壁部1Bの上縁部に当接して蓋2が不用意に本固定状態にならないようにする機能がある。尚、蓋2に所定量以上の大きい閉方向の力が作用すると、前記突起2aは、左周壁部1A,右周壁部1Bに当接しながら蓋2と共に下方に潜り込み、本固定状態に至る(図3(c)参照)。
【0019】
前記枢支連結部7は、ボックス本体1に対して蓋2が揺動できるように構成されている。
具体的には、前記左周壁部1Aと右周壁部1Bの一端部に形成された軸支持部7aと、前記蓋2に形成された枢支軸部7bとで構成してある。
前記枢支軸部7aは、左周壁部1Aと右周壁部1Bとの内側面に形成された縦溝部9で構成してあり、図5〜7に示すように、ボックス本体1に形成した縦丸穴1aの内周面に連続して形成してあり、上端側が、下方に比べて小径に構成してある。また、縦溝部9のこの小径部9aの中間部には、左周壁部1Aと右周壁部1Bとを貫通する横丸穴9bが形成してある。
小径部9aの下方側は前記縦丸穴1aと同径の普通径部9cとして仕上げてあり、縦溝部9の上端側から溝内に前記枢支軸部7bを嵌入させると、軸芯が前記横丸穴9bに一致した状態と、普通径部9cまで進入した状態との設定深度で枢支軸部7bが支持され、それぞれの状態で蓋2は枢支軸芯X周りに揺動することができる。
尚、前記枢支軸部7bの外端部は、図7に示すように、半球状の中央部にスリットSが形成してあり、スリット巾に相当する撓みを許容出来るように構成されている。従って、前記縦溝部9内に枢支軸部7bを嵌入させる際には、図6(a),図7(a)に示すように、軸支軸部7bの端部が弾性的に撓むからスムースに嵌入させることができる。
因みに、枢支軸部7bが前記横丸穴9bの深度にある時は(図6(b)参照)、蓋2を全開させたオープン状態にすることができる。一方、枢支軸部7bが前記普通径部9cの深度にある時は(図6(c)参照)、前記仮固定状態や本固定状態にすることができる。
【0020】
前記係合部8は、前記ボックス本体1に形成した前記係合凸部8aと、蓋2に形成した係合凹部8bとで構成してある。
前記蓋2のオープン状態においては、図2(b),図3(b)に示すように、何れの係合部も係合していない。
前記蓋2の仮固定状態においては、図2(a),図3(a)に示すように、前記一端部側の係合部8のみが係合している。
前記蓋2の本固定状態においては、図2(c),図3(c)に示すように、すべての係合部8が係合している。
尚、前記蓋2の一端部側の係合部8は、図4(a)に示すように、枢支軸芯Xの近傍位置で、前記枢支軸芯Xに対して前記蓋2の他端部側に配置してある。この配置による係合凸部8aと係合凹部8bとの係合作用で、前記蓋2が仮固定状態から不用意に開かないようになっている。従って、当該端子ボックスBの保管・運搬・納品時に蓋2が意に反して開いてしまうのを防止できる。
【0021】
本実施形態の端子ボックスBによれば、ボックス本体1と蓋2とを枢支連結部7によって一体にできるから、保管・運搬・納品時の部品点数を、最小にでき、嵩張らず、少ないスペースで保管や運搬や納品を行うことができる。その際、上述のとおり蓋2が不用意に開くのを防止できる。
また、蓋2は、オープン状態と、仮固定状態と、本固定状態とに切替できるから、ボックス本体1に対する蓋2の取り付き姿勢を、各状態に応じて好ましい姿勢にすることができ、保管・運搬・納品から始まって、設置に至るまで、取り扱い易くなる。
【0022】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0023】
〈1〉 前記端子ボックスBは、先の実施形態で説明したものに限るものではなく、例えば、内空部に納められる各部品等の構成は、適宜変更することができるものである。
形状に関しても、適宜変更することが可能である。
取付対象は、先の実施形態で説明した太陽電池モジュールに限るものではなく、他のパネルや基板等であってもよい。
〈2〉 前記枢支連結部7は、先の実施形態で説明したように、ボックス本体1に軸支持部7aを設け、蓋2に枢支軸部7bを設けることに限るものではなく、例えば、その逆に、ボックス本体1に枢支軸部7bを設け、蓋2に軸支持部7aを設ける形態を採用することも可能である。それらを含めて枢支連結部7と総称する。
〈3〉 前記係合部8は、先の実施形態で説明した配置や形状等に限るものではなく、適宜変更することができる。
【0024】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボックス本体
2 蓋
7 枢支連結部
7a 軸支持部
7b 枢支軸部
8 係合部
9 縦溝部
X 枢支軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体と、
そのボックス本体に一端部を枢支状態に着脱自在な蓋とを設け、
前記ボックス本体に取り付けた前記蓋の閉状態を維持する係合部を、前記蓋の一端部側と、他端部側とにそれぞれ設け、
前記蓋は、揺動経路において前記何れの係合部も係合しないオープン状態と、前記一端部側の係合部のみが係合している仮固定状態と、前記何れの係合部も係合している本固定状態とに切替可能に構成されている端子ボックス。
【請求項2】
前記蓋と前記ボックス本体との枢支連結部は、前記蓋と前記ボックス本体のうち一方に設けた枢支軸部と、他方に設けた軸支持部とで構成してあり、
前記軸支持部は、支持している前記枢支軸部を、その軸径方向に移動可能な状態で支持できる溝部で構成してある請求項1に記載の端子ボックス。
【請求項3】
前記蓋の一端部側の係合部は、枢支軸芯の近傍位置で、前記枢支軸芯に対して前記蓋の他端部側に配置してある請求項1又は2に記載の端子ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77332(P2011−77332A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227879(P2009−227879)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】