説明

端子付き電線およびその製造方法

【課題】接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】端子付き電線10は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線14を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線12を、絶縁被覆13で覆った電線11と、電線11の端末11Aにおいて絶縁被覆13の剥離により露出した露出芯線12が圧着により接続される接続部22を有する端子20と、を備える。接続部22は、端子20に、露出芯線12と端子20とを接合するろう材R、および露出芯線12の端末12Aを配置してなる端末配置部23を、加熱しつつ圧着することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の金属素線を撚り合わせた撚り線からなる芯線を絶縁被覆で被覆するとともに、端末において芯線が露出する電線と、この電線の端末に接続される端子と、を備える端子付き電線としては、例えば、特許文献1に記載のものなどが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の端子付き電線においては、電線の端末において露出する芯線に端子のワイヤバレルが圧着されて電気的に接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−72053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているようなタイプの端子付き電線においては、芯線とワイヤバレルの内面が接触することで、端子と電線とが電気的に接続される。
したがって、このようなタイプの端子付き電線において、端子と電線との接続抵抗を小さくするためには、芯線とワイヤバレルの内面との接触面積を増やす必要がある。
【0006】
しかしながら、端子に接続される電線が太い場合、芯線を構成する素線のうち端子と接触しない位置に配される素線を、端子との電気的な接続に寄与させることが困難であり、芯線を構成する素線と端子との電気的な接触が不十分となることがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものとして本発明は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が圧着により接続される接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線であって、前記接続部は、前記端子に、前記露出芯線と前記端子とを接合するろう材、および前記露出芯線の端末を配置してなる端末配置部を、加熱しつつ圧着することにより形成される端子付き電線である。
【0009】
また、本発明は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が圧着により接続される接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、前記端子に、前記露出芯線と前記端子とを接合するろう材、および前記露出芯線の端末とを配置して端末配置部を設ける工程を経た後に、前記端子の前記端末配置部を加熱しつつ圧着することにより前記接続部を形成する端子付き電線の製造方法である。
【0010】
本発明においては、端子にろう材と電線の端末において露出する露出芯線とを配置して端末配置部を設け、この端末配置部を加熱しつつ圧着することにより、端子と電線との接続部が形成される。
【0011】
本発明においては、端末配置部を加熱しつつ圧着することにより、ろう材が溶融して、露出芯線と端子とを接合するとともに、露出芯線を構成する複数本の素線間を接続し、かつ、露出芯線と端子とが接触するので、端子に接続される電線が太い場合であっても、芯線を構成するほとんどの素線を端子と電気的に接触することができる。その結果、本発明によれば、接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明は以下の構成とするのが好ましい。
前記ろう材がアルミニウムとシリコンとを含む構成とする。
このような構成とすると、ろう材を芯線を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金の融点よりも低い温度で溶融させることができるので、素線の溶融を回避することができ、電線の強度低下を防止することができ好ましい。
【0013】
端子付き電線において、前記端末配置部には、粉末状の前記ろう材を分散させてなる液状物を塗布した前記露出芯線が配置される構成とする。あるいは端子付き電線の製造方法において、前記端末配置部を設ける工程において、粉末状の前記ろう材を分散させてなる液状物が塗布された前記露出芯線を、前記端子に配置する構成とする。
このような構成とすると、ろう材が露出芯線に浸透しやすくなり、素線全体を端子との電気的な接続に寄与させることができ、好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の端子付き電線を模式的に示した断面図
【図2】露出芯線にロウ材を配置する前の様子を模式的に示した断面図
【図3】露出芯線にロウ材を配置した様子を模式的に示した断面図
【図4】電線を端子に配置した様子を模式的に示した断面図
【図5】端子の端末配置部を電線に圧着する様子を模式的に示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1の端子付き電線10を図1ないし図5によって説明する。実施形態1の端子付き電線10は、図1に示すように、電線11と電線11の端末11Aにおいて露出する芯線12(露出芯線12)が接続される端子20と、を備える。以下の説明において、上下方向については、図1を基準とし、前後方向については、図1の左方を前方、右方を後方として説明する。
【0017】
電線11は、芯線12の周囲が合成樹脂の絶縁被覆13で覆われている。電線11の端末11Aにおいては、図1に示すように、絶縁被覆13が剥ぎ取られ芯線12が露出している。
【0018】
芯線12は、多数(複数)の素線14が撚り合わされた撚り線である。素線14は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製である。
【0019】
端子20は、相手側の端子(図示せず)と接続される平板状の端子接続部21と、電線11が接続される電線接続部22(接続部の一例)と、を有する。
【0020】
端子20の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金などの導電性の板材があげられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。本実施形態において、端子20は、銅製または銅合金製である。
【0021】
なお、端子20を構成する金属材料の表面は、メッキ層が形成されていてもよい。メッキ層を構成する金属としては、例えば、スズ、ニッケル等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。
【0022】
本実施形態において、電線接続部22は、全体として筒状をなしており、その内部には電線11の端末11Aにおいて露出する露出芯線12が挿通されている。露出芯線12は図1に示すように、電線接続部22に圧着されている。
【0023】
さて、本実施形態では、電線接続部22において、溶融したろう材Rが露出芯線12と端子20とを接合するとともに、露出芯線12を構成する複数本の素線14間を接続し、かつ、電線接続部22(端子20)と電線11の露出芯線12とが接触している。これにより電線11と端子20とが電気的に接続可能となっている。
【0024】
露出芯線12と端子20とを接合するろう材Rとしては、シリコンとアルミニウムとを含むろう材(例えばシリコンを10%含むもの)や、アルミハンダ(Snを約80%、Znを約20%の割合で含むはんだ)等があげられる。これらのろう材Rのうちシリコンを含むアルミニウム接合用ろう材は、芯線12を構成する素線14の材料であるアルミニウムやアルミニウム合金の融点(アルミニウムの融点は660℃)よりも低い温度で溶融させることができるので、素線14の溶融を回避することができ、電線11の強度低下を防止することができ好ましい。
【0025】
また、ろう材Rとしては、クリーム状、ペースト状、顆粒状、粉末状、シート状等種々の形態のものを用いることができるが、粉末状のろう材をフラックス等の溶剤に分散させてなるろう材ペースト(粉末状のろう材を分散させてなる液状物)として用いると、ろう材が露出芯線12に浸透しやすくなり、素線14全体を端子20との電気的な接続に寄与させることができ、好ましい。
【0026】
次に、本実施形態の端子付き電線10の製造方法の一例について説明する。
図2に示すような端子20を用意し、電線11の端末11Aの絶縁被覆13を剥離除去して芯線12を露出させておく。次に、電線11の端末11Aにおいて露出している露出芯線12に、10%のシリコンとアルミニウムとを含む粉末状のろう材をノコロック・フラックス塗料に分散させてペースト状としたもの(ろう材ペーストR)を塗布する(図3を参照)。
【0027】
次に、図4に示すように、ろう材ペーストRを塗布した露出芯線12の端末12Aを、端子20の前端の筒状をなす部分23Aに挿入して(配置して)端末配置部23を設ける(端末配置部23を設ける工程)。
【0028】
次に、図5に示すように、電線11の露出芯線12を挿入した端子20の端末配置部23を、圧縮金型30を用いて加熱・圧縮する。加熱圧縮の際には、端子20の端末配置部23を、下側に配置される圧縮金型32と上側に配置される圧縮金型31との間に挟んだ状態とする。図5の状態としてから圧縮金型30の通電部33に電流を流して端末配置部23を通電加熱しつつ圧縮する。
【0029】
電線11の露出芯線12を挿入した端子20の端末配置部23を通電加熱しながら圧縮することにより、ろう材ペーストが溶融して露出芯線12を構成する素線14に浸透するとともに、端子20の端末配置部23の一部が圧縮されて電線接続部22が形成され、図1に示す端子付き電線10が得られる。
【0030】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態においては、端末配置部23を加熱しつつ圧着することにより、ろう材ペーストRが溶融して、露出芯線12と端子20とを接合するとともに、露出芯線12を構成する複数本の素線14間を接続し、かつ、露出芯線12と端子20とが接触するので、端子20に接続される電線11が太い場合であっても、芯線12を構成するほとんどの素線14を端子20と電気的に接触することができる。その結果、本実施形態によれば、接続抵抗を小さくした端子付き電線10およびその製造方法を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態の製造方法においては、ろう材Rがアルミニウムとシリコンとを含む構成としたので、ろう材Rを芯線12を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金の融点よりも低い温度で溶融させることができる。その結果、本実施形態によれば、素線14の溶融を回避することができ、電線11の強度低下を防止することができる。
【0032】
さらに本実施形態の製造方法においては、端末配置部23を設ける工程において、ろう材ペーストR(粉末状のろう材を分散させてなる液状物)が塗布された露出芯線12を、端子20に配置する構成としたので、ろう材Rが露出芯線12に浸透しやすくなり、素線14全体を端子20との電気的な接続に寄与させることができる。
【0033】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、銅製または銅合金製の端子20を示したが、端子20はアルミニウム製またはアルミニウム合金製などであってもよい。端子20がアルミニウム性の場合、芯線12を構成する素線14と同じ金属から構成されるので、端子20と芯線12との接触部分(電線接続部22)における異種金属間に発生する腐食が生じにくくなる。
(2)上記実施形態の製造方法では、ろう材としてアルミニウムとシリコンとを含むものを用いたが、ろう材としてアルミハンダを用いてもよい。
(3)上記実施形態の製造方法では、粉末状のろう材を分散させてなる液状物を用いたが、クリーム状、顆粒状、粉末状、シート状のろう材を用いてもよい。
(4)上記実施形態の製造方法では、ろう材ペーストRを塗布した露出芯線12を端子20に配置することにより端末配置部23を設ける方法を示したが、端子の露出芯線が配置される部分に、ろう材を塗布あるいは載置する等により配置しておき、端子のろう材が配置された部分に露出芯線を配置して端末配置部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…端子付き電線
11…電線
11A…電線の端末
12…露出芯線
12A…露出芯線の端末
13…絶縁被覆
14…素線
20…端子
21…端子接続部
22…電線接続部(接続部)
23…端末配置部
30…圧縮金型
R…ろう材(ろう材ペースト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、
前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が圧着により接続される接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線であって、
前記接続部は、前記端子に、前記露出芯線と前記端子とを接合するろう材、および前記露出芯線の端末を配置してなる端末配置部を、加熱しつつ圧着することにより形成される端子付き電線。
【請求項2】
前記ろう材がアルミニウムとシリコンとを含む請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記端末配置部には、粉末状の前記ろう材を分散させてなる液状物を塗布した前記露出芯線が配置される請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が圧着により接続される接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、
前記端子に、前記露出芯線と前記端子とを接合するろう材および前記露出芯線の端末を配置して端末配置部を設ける工程を経た後に、前記端子の前記端末配置部を加熱しつつ圧着することにより前記接続部を形成する端子付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記ろう材としてアルミニウムとシリコンとを含むものを用いる請求項4に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
前記端末配置部を設ける工程において、粉末状の前記ろう材を分散させてなる液状物が塗布された前記露出芯線を、前記端子に配置する請求項4または請求項5に記載の端子付き電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−114957(P2013−114957A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261381(P2011−261381)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】