説明

端子圧着装置

【課題】左右非対称な圧着不良モードを検出することのできる端子圧着装置を提供する。
【解決手段】底板11Aと該底板の左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片11L、11Rとからなる断面U字状の導体圧着部11を有する端子の導体圧着部の底板を載せるアンビル102Aと、その上方にアンビルとの間に導体圧着部の圧着片を押圧できるように配置され、アンビルとの対向部に、圧着片を内側に曲げるための2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部111L、111Rが形成されたクリンパ101Aとを備える端子圧着装置において、クリンパとそれを支持する支持部材105の左右幅方向Xに対称な2箇所に位置し且つ左右幅方向Xに互いに対向する対向密着面150間に面圧センサ200をそれぞれ配置し、両面圧センサの検出データの違いにより、左右幅方向の荷重のアンバランスを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板と該底板の左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片(ワイヤバレル)とからなる断面U字状の導体圧着部を有する端子を電線の導体に圧着する端子圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3(a)、(b)は圧着端子の一般的な構成例を示している。この端子10の後部には、その前側に位置する導体圧着部11と後側に位置する被覆加締部12とが設けられている。導体圧着部11は、端子10の全長を通して共通な基板である底板11Aと、該底板11Aの左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片11L、11Rとを有した断面U字状をなしている。同様に被覆加締部12は、底板12Aと、該底板12Aの左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の加締片12L、12Rとを有した断面U字状をなしている。
【0003】
この端子10と電線Wに接続する場合には、まず、電線Wの端末部の絶縁被覆Wbを剥いで露出させた導体Waを、導体圧着部11の底板11Aの上に載せ、それに隣接する絶縁被覆Wbの付いた部分を、被覆加締部12の底板12Aの上に載せる。次にその状態で、図3(c)に示すように、端子圧着装置のクリンパ(上型)101Aとアンビル(下型)102Aの押圧駆動により、導体圧着部11の左右一対の圧着片11L、11Rを、クリンパ101A側のアンビル102Aとの対向部に設けられた2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部111L、111Rにより内側に丸めて加締めることで、電線Wの導体Waに端子10の導体圧着部11を圧着し、同時に、被覆加締部12の左右一対の加締片12L、12Rを内側に曲げることで、電線Wの絶縁被覆Wbの付いた部分に端子10の被覆加締部12を加締め固定する。これにより、端子10と電線Wの接続を行っている。
【0004】
このように圧着により端子10と電線Wを接続した場合、特に導体Waと導体圧着部11の圧着品質により、電気接続性能や機械的接続性能に差が出やすいことが知られている。そこで、端子の圧着処理時の異常を検出して、圧着品質の良否を判定する機能を備えた端子圧着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4に示すように、この端子圧着装置100は、導体圧着部11を圧着させるためのアンビル(下型)102Aとクリンパ(上型)101Aの組と、被覆加締部12を加締めるためのアンビル102Bとクリンパ101Bの組とを有しており、クリンパ101A、101Bを下動させることにより、アンビル102A、102Aとクリンパ101A、101Bとの間に挿入した端子10と電線Wとを圧着接続するようになっている。そして、アンビル102A、102Aを支持するベース部110に圧力センサ120が内装されており、この圧力センサ120によって検出したアンビル102A、102Aに作用する荷重の時間変化の波形データにより、適正に圧着処理が行われたか否かを判定するようになっている。
【0006】
例えば、図5に示すように、圧着過程をいくつかの段階T1〜T3に分け、各段階T1〜T3において、測定荷重の特性波形が、正常時の基準波形Aに基づいて設定した許容範囲S内に収まっているかどうかを見極めることで、圧着が適正に行われたか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−109517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、実際の圧着工程においては、圧着時の種々の条件により、図6(a)に示す適正品のように、左右の圧着片11L、11Rがバランスよく導体Waに圧着する場合の他に、図6(b)の不適正品のように、左右の圧着片11L、11Rがアンバランスな形で導体Waに圧着する場合が生じることがある。例えば、端子が傾いた状態で圧着が行われたような場合、また、端子の送りズレが発生した状態で圧着が行われたような場合、あるいは、クリンパの左右の加締め部111L、111Rの摩擦係数が左右非対称な状態で圧着が行われたような場合には、左右に歪みが生じやすくなるため、左側と右側の荷重のズレにより、左右の圧着片11L、11Rがずれた形で圧着が進行し、圧着形状が左右でアンバランスになりやすい。
【0009】
このような左右のアンバランスな圧着形状は圧着不良モードの1種であるが、従来の圧着品質の良否判定機能を備えた端子圧着装置では、アンビル側の1箇所に配置した圧力センサ120で荷重をモニタするだけであったため、検出することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮し、左右非対称な圧着不良モードを検出することのできる端子圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、底板と該底板の左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片とからなる断面U字状の導体圧着部を有する端子の前記導体圧着部の底板を載せる下型と、該下型の上方に該下型との間で前記導体圧着部の圧着片を押圧できるように配置され、前記下型との対向部に、前記一対の圧着片を内側に曲げるための2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部が形成された上型とを備え、前記下型の上に前記端子の導体圧着部の底板を載せ、その底板の上に電線の導体の先端部を載せ、その状態で前記上型を下型に対して相対的に押圧させることで、前記左右一対の圧着片を内側に丸めて前記電線の導体に圧着させる端子圧着装置において、前記上型を下型に対して相対的に押圧させて前記左右一対の圧着片を前記電線の導体に圧着させる圧着過程における前記上下型の左右幅方向の荷重のアンバランスを検出する検出手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の端子圧着装置であって、前記上型の左右幅方向に対称な2箇所の圧力を検出できるように前記検出手段としての圧力センサがそれぞれ配置され、各圧力センサの検出データの違いにより、前記左右幅方向の荷重のアンバランスを検出することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の端子圧着装置であって、前記上型とそれを支持する支持部材の左右幅方向に対称な2箇所に位置し且つ左右幅方向に互いに対向する対向密着面間に、前記圧力センサとしての面圧センサがそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、圧着過程における上下型の左右幅方向の荷重のアンバランスを検出する検出手段を備えているので、荷重のアンバランスによる左右非対称の圧着不良モードを容易に検出することができる。また、圧着時の荷重による検査であるため、圧着品を非破壊で全数検査することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、上型の左右幅方向に対称な2箇所の圧力を圧力センサにより検出し、各圧力センサの検出データの違いにより、左右幅方向の荷重のアンバランスを検出するので、左右の荷重差を相対的に比較することができ、個体差が生じても、判定基準の閾値がシビアにならないですむ。
【0016】
請求項3の発明によれば、上型とそれを支持する支持部材の左右幅方向に対称な2箇所に位置し且つ左右幅方向に互いに対向する対向密着面間に、圧力センサとしての面圧センサをそれぞれ配置しているので、面圧センサには、上型と下型を締め込むときのプレス荷重はほとんど作用せず、プレス荷重の作用する方向(上下方向)と直交する横方向(水平方向)の荷重だけが主として作用することになる。そのため、高荷重に耐えられる容量の大きな圧力センサは必要ではなく、容量の小さな低荷重用の面圧センサを使用するだけでよくなり、小規模な部品変更で実現可能となる。また、上型と支持部材の対向密着面間に面圧センサを配置する関係から薄い面圧センサを使用することができるため、ピンポイントの荷重ではなく、上型の傾き加減も考慮に入れた広い面積の荷重検出が可能となる。また、従来例のように大きな荷重を検出するセンサを使用してデータを分析する場合は、荷重変動の小さな圧着不良モードを検出することは困難であったが、小さな荷重用の面圧センサを使用することにより、左右非対称の圧着不良モードのように、荷重変動の小さな圧着不良モードを確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)および(b)は荷重検出用の面圧センサ200を組み込んだ本発明の実施形態の端子圧着装置の要部の構成を示す図で、(a)は正常な圧着が行われたときの状態を示す図、(b)は左右の荷重にずれがあることで異常な圧着が行われたときの状態を誇張して示す図、(c)は面圧センサが検出する左右の荷重波形の違いを示す特性図である。
【図2】(a)はより具体的な面圧センサの配置箇所を示すクリンパ側の構成を示す正面図、(b)は(a)のクリンパ部分を下から見て示す図である。
【図3】一般的な圧着端子の構成図で、(a)は端子と電線を圧着する前の状態を示す側面図、(b)は圧着した後の状態を示す側面図、(c)はクリンパとアンビルにより端子と電線を圧着している状態を示す断面図である。
【図4】従来の端子圧着装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】同従来の端子圧着装置の圧着状態の良否判定に使用する特性図である。
【図6】(a)は正常な圧着が行われた場合の圧着部に断面図、左右非対称な圧着が行われた場合の圧着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)および(b)は荷重検出用の面圧センサを組み込んだ本発明の実施形態の端子圧着装置の要部の構成を示す図で、図1(a)は正常な圧着が行われたときの状態を示す図、図1(b)は左右の荷重にずれがあることで異常な圧着が行われたときの状態を誇張して示す図、図1(c)は面圧センサが検出する左右の荷重波形の違いを示す特性図である。
【0020】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の実施形態の端子圧着装置による圧着対象の端子は、図3(a)、(b)に示したものと同様に、底板11Aと該底板11Aの左右幅方向Xの両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片11L、11Rとからなる断面U字状の導体圧着部11を有するものであり、端子圧着装置は、導体圧着部11の底板11Aを載せるアンビル(下型)102Aと、アンビル102Aの上方に位置するクリンパ(上型)101Aとを有している。
【0021】
クリンパ101Aは、図示しない駆動機構により昇降動作し、下動することにより、アンビル102Aとの間で導体圧着部11の一対の圧着片11L、11Rを押圧して加締める。その際、アンビル102Aの上に端子の導体圧着部11の底板11Aを載せ、その底板11Aの上に電線の導体Waの先端部を載せ、その状態でクリンパ101Aをアンビル102Aに対して相対的に押圧させることで、アンビル102Aとの対向部に設けられたクリンパ101A側の2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部111L、111Rが、一対の圧着片11L、11Rを内側に徐々に丸めていき、最終的に一対の圧着片11L、11Rを導体Waに加締める。
【0022】
本実施形態の端子圧着装置では、図1(a)、(b)に示すように、上型101Aとそれを支持する支持部材105の左右幅方向Xに対称な2箇所に位置し且つ左右幅方向Xに互いに対向する対向密着面150間に、圧力センサとしての面圧センサ200がそれぞれ配置されており、図1(c)に示すように、各面圧センサ200の検出データの違いにより、左右幅方向Xの荷重のアンバランスを検出する。
【0023】
例えば、クリンパ101Aの左右の荷重がほぼ等しいときには、図1(a)に示すように、クリンパ101Aが適正なバランスのとれた姿勢となっていることにより、図1(c)中の実線で示すように、左右の面圧センサ200の検出波形がほぼ同じ形状となるので、正常な圧着が行われたと判断することができる。
【0024】
一方、クリンパ101Aの左右の荷重が異なるときには、図1(b)に示すように、クリンパ101Aの姿勢が微視的にはアンバランスとなていることにより、図1(c)中の二点鎖線で示すように、左右の面圧センサ200の検出波形が違う形状となるので、左右の波形の非対称性により異常な圧着が行われたと判断することができる。
【0025】
このように、本実施形態の端子圧着装置では、クリンパ101Aとそれを支持する支持部材105の左右幅方向の対向密着面150間に、圧力センサとしての面圧センサ200をそれぞれ配置し、これらの面接センサ200により、圧着過程におけるクリンパ101Aとアンビル102Aの左右幅方向の荷重のアンバランスを検出するので、荷重のアンバランスによる左右非対称の圧着不良モードを容易に検出することができる。また、圧着時の荷重による検査であるため、圧着品を非破壊で全数検査することができる。更に、左右の荷重差を相対的に比較するので、個体差が生じても、判定基準の閾値がシビアにならないですむ。
【0026】
また、面圧センサ200には、クリンパ101Aとアンビル102Aを締め込むときのプレス荷重はほとんど作用せず、プレス荷重の作用する方向(上下方向)と直交する横方向(水平方向)の荷重だけが主として作用することになるため、高荷重に耐えられる容量の大きな圧力センサは必要ではなく、容量の小さな低荷重用の面圧センサ200を使用するだけでよくなり、小規模な部品変更で実現可能となる。
【0027】
また、クリンパ101Aと支持部材105の対向密着面150間に面圧センサ200を配置する関係から薄い面圧センサ200を使用することができるため、ピンポイントの荷重ではなく、クリンパ101Aの傾き加減も考慮に入れた広い面積の荷重検出が可能となる。
【0028】
また、従来例のように大きな荷重を検出するセンサを使用してデータを分析する場合は、荷重変動の小さな圧着不良モードを検出することは困難であったが、小さな荷重用の面圧センサ200を使用することにより、左右非対称の圧着不良モードのように、荷重変動の小さな圧着不良モードを確実に検出することができるようになる。
【0029】
なお、実際の面圧センサ200の配置箇所は、例えば、図2(a)に示すように、支持部材であるラム105には係合溝が設けられ、その係合溝に切断パンチ101C等と共にクリンパ101Aの一部が収容されており、係合溝の内側面とクリンパ101Aの外側面とが、左右幅方向に互いに対向する対向密着面150となっているので、その対向密着面150間に設定すればよい。その場合、図2(b)に示すように、面圧センサ200は、導体圧着部11の加締め用のクリンパ101Aに対応する箇所だけに配置するようにし、その他の部分である被覆加締部の加締め用のクリンパ101Aや切断パンチ101Cに対応する部分にはかからないようにする。
【0030】
また、上記実施形態では、面圧センサ200を、クリンパ101Aとそれを支持する支持部材105の左右幅方向の対向密着面150間に配置した場合を示したが、クリンパ101Aの左右幅方向Xに対称な2箇所の圧力を検出できるように圧力センサをそれぞれ配置することでも、荷重のアンバランスを検出することは可能である。
【0031】
さらに、上記実施形態において、端子圧着装置の支持部材105等に、圧着時の導体圧着部11の伸びを検出する変位センサやレーザ変位計等の検出手段を組み込んでおけば、圧着時の端子10の伸びの挙動を上記検出手段で測定することで、導体圧着部11を圧着しながら圧着品の品質の良否判定を全数簡単に検査することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 端子
11 導体圧着部
11A 底板
11L,11R 圧着片
101A クリンパ(上型)
102A アンビル(下型)
105 支持部材
111L,111R 加締め部
150 対向密着面
200 面圧センサ
W 電線
Wa 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と該底板の左右幅方向の両側縁から立ち上がる左右一対の圧着片とからなる断面U字状の導体圧着部を有する端子の前記導体圧着部の底板を載せる下型と、該下型の上方に該下型との間で前記導体圧着部の圧着片を押圧できるように配置され、前記下型との対向部に、前記一対の圧着片を内側に曲げるための2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部が形成された上型とを備え、前記下型の上に前記端子の導体圧着部の底板を載せ、その底板の上に電線の導体の先端部を載せ、その状態で前記上型を下型に対して相対的に押圧させることで、前記左右一対の圧着片を内側に丸めて前記電線の導体に圧着させる端子圧着装置において、
前記上型を下型に対して相対的に押圧させて前記左右一対の圧着片を前記電線の導体に圧着させる圧着過程における前記上下型の左右幅方向の荷重のアンバランスを検出する検出手段が設けられていることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端子圧着装置であって、
前記上型の左右幅方向に対称な2箇所の圧力を検出できるように前記検出手段としての圧力センサがそれぞれ配置され、各圧力センサの検出データの違いにより、前記左右幅方向の荷重のアンバランスを検出することを特徴とする端子圧着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の端子圧着装置であって、
前記上型とそれを支持する支持部材の左右幅方向に対称な2箇所に位置し且つ左右幅方向に互いに対向する対向密着面間に、前記圧力センサとしての面圧センサがそれぞれ配置されていることを特徴とする端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−18606(P2011−18606A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163573(P2009−163573)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】