説明

端子用金属線材及び端子の製造方法

【課題】端子の製造過程を簡素化できる、端子用金属線材、及び、端子の製造方法を提供する。
【解決手段】端子用金属線材30は、雄端子31の材料として切断して使用される。端子用金属線材30には、複数の第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)と、複数の第2線材領域31sとが形成されている。第1線材領域は、金(第1の材料)によってめっきされ、且つ、金が露出している。第2線材領域31sは、金とは異なる材料であるニッケル(第2の材料)によってめっきされ、且つ、ニッケルが露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の材料として切断して使用される金属線材、及び、これを用いて端子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のピン端子の例が特許文献1に記載されている。特許文献1のピン端子は、黄銅線を用いて製造されている。また、このピン端子は、まず、円形断面の線材に対して、銅の下地めっきと、錫の外層めっきとを行い、その後、圧延加工装置を用いて、断面が四角形になるように加工し、さらに、この黄銅線を適当な長さになるように切断することによって製造される。
【0003】
特許文献1のピン端子においては、外層めっきが、端子全体に対して行なわれている。しかし、従来、電気伝導率が高いめっき材料として、金などの高価な材料が用いられる場合には、製造コストを低減するため、その材料によるめっきは、端子の全体に対してではなく、端子の接点領域(電気的な接続のために、相手側の端子と接触する領域)のみに対して、部分的に行なわれている(特許文献2の段落0002参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−105071号公報
【特許文献2】特開2006−283127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、金属線材を用いて端子を製造し、且つ、部分的なめっきを行なう場合には、まず、金属線材の集合体から、端子の長さに合わせて金属線材を切り離し、その後、それぞれの端子の端部(接点領域)に対してめっきを行なうのが通例である。そして、この場合のめっき作業時には、端子の長さに合わせて切り離された複数の金属線材を、間隔を空けて設置台に並べ、これらの金属線材の端部に対して、めっきを行なう。
そのため、この場合には、複数の金属線材を設置台に配置するための装置、及び、設置台が必要になる。また、端子の製造過程において、金属線材の切断に加えて、めっき作業が必要になる。
【0006】
以上のように、従来の方法により、金属線材から端子を製造し、且つ、部分的なめっきを行なう場合には、めっき作業を行なうための、複雑な構造の装置が必要となるので、端子の製造コストが大きくなる。また、従来の方法では、金属線材の切断後にめっき作業が必要となるため、線材集合体の供給後における、端子の製造時間が長くなる。
そのため、端子の製造過程については、簡素化することが望まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、端子の製造過程を簡素化できる、端子用金属線材、及び、端子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の課題を解決するために、本発明に係る端子用金属線材は、端子の材料として切断して使用される端子用金属線材であって、第1の材料によってめっきされ、且つ、当該第1の材料が露出している第1線材領域と、前記第1の材料とは異なる第2の材料によってめっきされ、且つ、当該第2の材料が露出している第2線材領域と、が形成されている。
【0009】
この構成では、切断前の状態において、端子用金属線材の外表面がめっきされているので、端子用金属線材を切断した後における、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材を用いて端子を製造する場合において、端子の製造過程を簡素化できる。
【0010】
また、本構成では、端子用金属線材が、少なくとも二種類の材料によってめっきされている。そのため、例えば、接点と、それ以外の部分とを、別々の材料でめっきすることができる。
【0011】
なお、本発明に係る端子用金属線材は、連続した一本の線材である。また、「線材領域」は、線材の長さ方向に沿って、端子用金属線材の表面に形成された領域である。
【0012】
端子用金属線材は、四角線(断面が四角形)、丸線(断面が円形)などであってもよい。また、端子用金属線材の材料としては、無酸素銅線、黄銅線などを使用できる。
【0013】
めっきの方法としては、電気めっき、無電解めっき、溶融めっきなどの方法を使用できる。
【0014】
(2)本発明に係る端子用金属線材において、前記第1線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部のそれぞれに形成されており、前記第2線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成されており、前記第2の材料は、下地材料として、前記端子に相当する部分の全体にめっきされていてもよい。
【0015】
この構成では、製造された端子において、第1線材領域が接点となり、第2の材料が下地材料となる。そして、端子用金属線材の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材を切断した後は、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0016】
なお、第1の材料としては、金、銀、亜鉛、錫など、電気伝導率が高い材料を使用できる。
また、第2の材料(下地材料)としては、ニッケル、銅など、耐食性が高い材料を使用できる。
【0017】
(3)本発明に係る端子用金属線材には、前記第1の材料及び前記第2の材料とは異なる第3の材料によってめっきされ、且つ、当該第3の材料が露出している第3線材領域がさらに形成されており、本発明に係る端子用金属線材において、前記第1線材領域は、前記端子に相当する部分の、一方の端部に形成されており、前記第2線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成されており、前記第3線材領域は、前記端子に相当する部分の、他方の端部に形成されており、前記第2の材料は、下地材料として、前記端子に相当する部分の全体にめっきされていてもよい。
【0018】
この構成では、製造された端子において、第1線材領域及び第3線材領域が接点となり、第2の材料が下地材料となる。そして、端子用金属線材の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材を切断した後は、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0019】
なお、第1の材料及び第3の材料としては、金、銀、亜鉛、錫など、電気伝導率が高い材料を使用できる。
また、第2の材料(下地材料)としては、ニッケル、銅など、耐食性が高い材料を使用できる。
【0020】
(4)上記の上記の課題を解決するために、本発明に係る端子の製造方法は、端子の材料として切断して使用される金属線材にめっきすることにより、第1の材料によってめっきされ且つ当該第1の材料が露出している第1線材領域と、前記第1の材料とは異なる第2の材料によってめっきされ且つ当該第2の材料が露出している第2線材領域と、を前記金属線材に形成するめっき工程と、前記めっき工程の後の前記金属線材を、前記端子の長さに合わせて切断する切断工程と、を備える。
【0021】
この方法では、切断前の状態において、端子用金属線材(めっき工程後の金属線材)の外表面がめっきされているので、端子用金属線材を切断した後における、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材を用いて端子を製造する場合において、端子の製造過程を簡素化できる。
【0022】
また、本方法では、金属線材を、少なくとも二種類の材料によってめっきする。そのため、例えば、接点と、それ以外の部分とを、別々の材料でめっきすることができる。
【0023】
(5)本発明に係る端子の製造方法では、前記めっき工程においては、前記第1線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部のそれぞれに形成し、前記第2線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成し、前記第2の材料を、下地材料として、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の全体にめっきしてもよい。
【0024】
この方法では、製造された端子において、第1線材領域が接点となり、第2の材料が下地材料となる。そして、端子用金属線材の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材を切断した後は、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0025】
(6)本発明に係る端子の製造方法では、前記めっき工程においては、前記第1の材料及び前記第2の材料とは異なる第3の材料によってめっきされ、且つ、当該第3の材料が露出している第3線材領域を、前記金属線材にさらに形成し、前記めっき工程においては、前記第1線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、一方の端部に形成し、前記第2線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成し、前記第3線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、他方の端部に形成し、前記第2の材料を、下地材料として、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の全体にめっきしてもよい。
【0026】
この方法では、製造された端子において、第1線材領域及び第3線材領域が接点となり、第2の材料が下地材料となる。そして、端子用金属線材の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材を切断した後は、金属線材に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。図2は、本実施形態に係る線材集合体の斜視図である。図3は、金属線材の部分拡大図である。図4は、切断工程後の金属線材(第1線状雄端子)を示す図である。図5は、第2線状雄端子を示す図である。図6は、雄端子を示す側面図である。図7は、コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。
【0028】
(全体構成)
まず、図1を用いて、電気的接続装置の全体構成について説明する。本実施形態に係る電気的接続装置は、コネクタ1と、相手側コネクタ5とを有する。コネクタ1は、ECU(Electronic Control Unit)として機能し、コネクタ1を有する電気的接続装置は、自動車などにおいて利用される。相手側コネクタ5は、図示しない電源に対して電気的に接続されており、コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了すると、コネクタ1内部の基板4上の電子部品(図示せず)へ、電源からの電力が供給されるようになっている。
【0029】
相手側コネクタ5は、合成樹脂製の相手側ハウジング6と、複数の雌端子7とを有する。コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了した状態では、コネクタ1のコネクタハウジング2に対して、相手側ハウジング6が連結される。その結果、コネクタ1の複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、相手側コネクタ5の複数の雌端子7とが電気的に接続され、コネクタ1と相手側コネクタ5とが電気的に接続される。また、複数の雌端子7及び複数の雄端子は、図1に示す矢印E方向に沿って接続される。以下、矢印E方向を接続方向とし、この接続方向Eに関して、E1側を前方側、E2側を後方側とする。なお、接続方向に関して前方側とは、複数の雄端子に対する複数の雌端子7の進行方向における前方側を意味しており、後方側とは、複数の雌端子7の進行方向における後方側を意味している。
【0030】
(コネクタ)
コネクタ1は、複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、コネクタハウジング2とを有する(図1参照)。それぞれの雄端子(端子)は、金属線材を用いて製造されている。また、コネクタ1の内部には、基板4が設置されている。そして、コネクタ1は、外部の相手側コネクタ5、及び、内部の基板4の両方に対して、電気的に接続される。また、複数の雌端子7及び複数の雄端子の接続方向Eは、基板4の表面に沿った方向となっている。
【0031】
コネクタ1において、それぞれの雄端子は、基板4に対して、SMT(Surface MountTechnology;表面実装技術)により取り付けられており、それぞれの雄端子は、基板4の表面側ではんだ付けされている。なお、それぞれの雄端子は、基板に対して、ピン挿入型により取り付けられていてもよい。具体的には、雄端子は、リード部(基板接続部)を基板に貫通させた上で、基板の裏面側ではんだ付けされていてもよい。
【0032】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング2は、合成樹脂材料から形成されており、本体部21と、壁部22とを有する(図1参照)。また、コネクタハウジング2においては、本体部21と壁部22とが別物品となっている。しかし、これらは一体的に形成されていてもよい。
【0033】
(壁部)
壁部22は、複数の雄端子を支持する板状の部材である。壁部22は、本体部21の内部に配置されており、また、基板4に取り付けられている(図1参照)。また、壁部22には、複数の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)が形成されている(図7(a)参照)。複数の貫通孔は、三列に並べて配置されており、一列目(最上列)には複数の貫通孔23が配置されており、二列目には複数の貫通孔24が、三列目には複数の貫通孔25が配置されている。
【0034】
そして、壁部22におけるそれぞれの貫通孔には、雄端子が挿入される。具体的には、貫通孔23には雄端子31が挿入され、貫通孔24には雄端子32が挿入され、貫通孔25には雄端子33が挿入される(図1、図7(b)参照)。
【0035】
貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25は、接続方向Eに対して、傾いた方向に沿って形成されている(図7(a)参照)。また、それぞれの貫通孔の形状は、全長に亘って四角形となっている。
【0036】
(基板)
基板4は、プリント基板(プリント配線板)である。本実施形態においては、基板4はリジッド基板(硬質な絶縁体基材を用いたもの;ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板など)となっている。なお、基板は、リジッド基板の他、フレキシブル基板(薄く柔軟性のある絶縁体基材を用いたもの;ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなど)や、リジッドフレキシブル基板(硬質な材料と柔軟性のある材料とを複合したもの)であってもよい。
【0037】
基板4には、複数の基板貫通孔(図示せず)が形成されている。また、基板4の表面において、それぞれの基板貫通孔の開口の周囲には、金属膜が形成されている。さらに、それぞれの基板貫通孔の内壁面にも、金属膜が形成されている。また、基板4上には、コンデンサなどの電子部品(図示せず)が配置される。上記のように、基板4には壁部22が取り付けられる。
【0038】
(雄端子)
コネクタ1は複数の雄端子(端子)を有しており、それぞれの雄端子は金属線材を用いて製造されている。「複数の雄端子」には、複数の雄端子31、複数の雄端子32、及び、複数の雄端子33の、三種類の雄端子が含まれる。そして、雄端子31は、貫通孔23に挿入され、雄端子32は、貫通孔24に挿入され、雄端子33は、貫通孔25に挿入される。それぞれの雄端子は、相手側コネクタ5の雌端子7に対して電気的に接続され、さらに、基板4に対して電気的に接続される。
【0039】
また、雄端子31と、雄端子32と、雄端子33とでは、長さが異なっており、雄端子31が最も長く、雄端子33が最も短い(図1、図7(b)等参照)。
【0040】
次に、雄端子の各部について説明する。雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33の、各部の機能及び形状は同様であるため、以下、主に雄端子31について説明し、雄端子32及び雄端子33についての説明を省略する。
【0041】
雄端子31には、端子接続部31cと、傾斜部31nと、中間部31mと、基板孔挿入部31dとが形成されている(図6参照)。
【0042】
基板孔挿入部31dは、基板4に形成された基板貫通孔に挿入される部分である。また、基板孔挿入部31dは、基板4の表面に沿った方向に対して、垂直に伸びるように形成されている。基板孔挿入部31dは、基板貫通孔の内壁面の金属膜に対して、はんだ接続される。
【0043】
中間部31mは、基板孔挿入部31dから連続し、基板4の表面に沿って伸びる部分である。また、中間部31mは、基板4の表面の金属膜に対してはんだ接続される。
【0044】
傾斜部31nは、中間部31mから連続し、接続方向Eに対して傾いた方向に沿って伸びる部分である。傾斜部31nは、中間部31mから離れるに連れて、基板4からの距離が長くなるように形成されている。また、傾斜部31nは、貫通孔23に挿入される挿入部31bを有している(図7(b)参照)。
【0045】
端子接続部31cは、壁部22から突出し、雌端子7に接続される部分である。端子接続部31cは、傾斜部31nから連続して形成されている。また、端子接続部31cは、コネクタ1において、その軸方向が接続方向Eに沿うように配置される。
【0046】
また、雄端子31には、二つの第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)と、一つの第2線材領域31sとが形成されている(図6参照)。端子接続部31cが、第1線材領域31fに相当する。傾斜部31nが、第2線材領域31sに相当する。また、中間部31m及び基板孔挿入部31dが、第1線材領域31gに相当する。
【0047】
なお、図6は、壁部22に挿入された状態の雄端子31を、壁部22を省略して示している。
【0048】
(線材集合体について)
図2に示す線材集合体3は、端子用金属線材30からなる集合体である。線材集合体3は、連続した一本の端子用金属線材30を、円筒形になるように巻いて形成されたものである。線材集合体3を構成する端子用金属線材30は、雄端子31の材料として、切断して使用される。また、端子用金属線材30は、黄銅線(JIS H 3260に定められたC2600W)である。また、端子用金属線材30は、四角線であり、断面が正方形(一辺が0.64mm)となっている。なお、金属線材の断面は、長方形であってもよいし、円形であってもよい。また、線材集合体は、リールに巻かれた状態のものであってもよい。
【0049】
ここでは、雄端子31の材料である端子用金属線材30について説明し、雄端子32及び雄端子33の製造に用いられる端子用金属線材については、説明を省略する。
【0050】
端子用金属線材30には、複数の第1線状雄端子31zが連続して形成されている(図3参照)。それぞれの第1線状雄端子31zは、一つの雄端子31に相当する部分である。また、端子用金属線材30には、複数の第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)と、複数の第2線材領域31sとが形成されている(図3参照)。
【0051】
第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)は、金(第1の材料)によってめっきされた部分であり、第1線材領域においては、金が露出している。また、第1線材領域においては、金属線材の側面全体が、金によってめっきされている。第1線材領域31f及び第1線材領域31gは、端子用金属線材30において、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部に形成されている(図3、図4参照)。金めっきの厚さは、0.4μm程度となっている。なお、図3乃至図6においては、第1線材領域を、ハッチング領域として示している。
【0052】
第2線材領域31sは、ニッケル(第2の材料)によってめっきされた部分であり、第2線材領域31sにおいては、ニッケルが露出している。また、第2線材領域においては、金属線材の側面全体が、ニッケルによってめっきされている。第2線材領域31sは、端子用金属線材30において、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部を除く中央部分に形成されている(図3、図4参照)。ニッケルめっきの厚さは、1.5μm程度となっている。
【0053】
図3乃至図5において、第1線材領域31fの長さはL2であり、第1線材領域31gの長さはL3である。図3乃至図5において、第2線材領域31sの長さはL5である。また、二つの第1線材領域(第1線材領域31f及び第1線材領域31g)、及び、第2線材領域31sの長さの合計(L2、L3、及びL5の和)は、L1となっている(図3乃至図5参照)。すなわち、L1は、第1線状雄端子31zの長さである。また、L2及びL3の長さの合計は、L4となっている。
【0054】
なお、ニッケルは下地材料であり、端子用金属線材30において、第2線材領域31sだけではなく、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の全体にめっきされている。そして、第1線材領域31fにおいては、このニッケルの上にさらに重ねて、金がめっきされている。
【0055】
(線材集合体3の製造方法)
次に、線材集合体3の製造方法、及び、端子用金属線材30の製造方法について説明する。まず、一本の金属線材に対して、めっきを行なう(めっき工程)。このめっき工程においては、金属線材にめっきすることにより、複数の第1線材領域と、複数の第2線材領域31sと、を形成する。
【0056】
めっき工程についてさらに詳細に説明する。めっき工程には、下地めっき工程と、金めっき工程とが含まれる。まず、下地材料として、ニッケル(第2の材料)を、金属線材全体にめっきする(下地めっき工程)。下地めっき工程の後、第1線材領域(第1線材領域31f及び第1線材領域31g)を、金属線材において、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部に形成する(金めっき工程)。具体的には、下地めっき工程後の金属線材に対して、長さL4にわたって金めっきを行なう。そして、長さL5の間隔を空けて、再び、長さL4にわたって、金めっきを行なう。金めっき工程では、このように、金属線材に対して、長さL5の間隔を空けて、長さL4にわたる金めっきを繰り返し行なう。
【0057】
このようなめっき工程を経て、端子用金属線材30が製造される。端子用金属線材30においては、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)が連続して形成される。そして、端子用金属線材30においては、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部を除く中央部分に、第2線材領域31sが形成される。
【0058】
めっき工程の後、端子用金属線材30を、リールなどの芯部材(図示せず)に巻いていき、円筒状の線材集合体3を形成する(線材巻き工程)。線材集合体3は、以上のようにして製造される。
【0059】
(組み立て方法)
次に、コネクタ1の組み立て方法について説明する。まず、射出成形により、コネクタハウジング2を形成する(コネクタハウジング形成工程)。本工程では、接続方向Eに傾いた方向に沿って、複数の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)を、壁部22に形成する。
【0060】
次に、雄端子31の材料となる金属線材(第2線状雄端子31p)を準備する。ここでは、上記のようにして形成された線材集合体3を用いる。そして、線材集合体3の端子用金属線材30を、雄端子31の長さに合わせて切断して、第1線状雄端子31zを切り離す(切断工程;図4参照)。そして、切断工程により得られた第1線状雄端子31zの、両端の先端部を、プレス加工により尖頭処理する(プレス工程;図5参照)。このようにして、第1線状雄端子31zは、切断工程及びプレス工程を経て、第2線状雄端子31pとなる(図5参照)。なお、上記のプレス工程はなくてもよい。
【0061】
第2線状雄端子31pと同様に、雄端子32、及び、雄端子33に関しても、第2線状雄端子32p及び第2線状雄端子33pを形成する。なお、線材集合体3に含まれる端子用金属線材30は、雄端子31の製造に使用されるものであり、雄端子32及び雄端子33を製造するためには、線材集合体3とは異なる線材集合体が必要となる。
【0062】
次に、線状雄端子(第2線状雄端子31p、第2線状雄端子32p、及び、第2線状雄端子33p)を、壁部22の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、及び、貫通孔25)へ挿入する(挿入工程;図7(a)参照)。このとき、第2線状雄端子31p、第2線状雄端子32p、及び、第2線状雄端子33pのそれぞれは、貫通孔へ圧入される(強い圧力で押し込まれる)。
【0063】
次に、第2線状雄端子31p、第2線状雄端子32p、及び、第2線状雄端子33pに対して、曲げ加工を行なう(曲げ工程;図7(b)参照)。第2線状雄端子31pを用いて説明すると、第2線状雄端子31pに対して、図7(b)に示すD1、D2、及びD3の三箇所において、曲げ加工を実施する。図7(b)は、複数の雄端子が、壁部22に取り付けられた状態を示している。この状態の壁部を、「雄端子付き壁部」とする。
【0064】
次に、雄端子付き壁部を、基板4に対して取り付ける(基板取り付け工程)。この工程を経た状態の基板を、「壁部付き基板」とする。本工程においては、まず、基板4の表面(金属膜の表面)に、はんだペーストを印刷塗布する。そして、はんだペーストの上に、複数の雄端子を、自動実装機(マウンタ又はインサータ)を用いて、基板4の表面に配置する(それぞれの基板孔挿入部を、基板貫通孔に挿入する)。そして、壁部及び雄端子が載った基板4を、リフロー炉に通して、摂氏250度程度まで加熱することにより、はんだを溶かして、雄端子を基板4の表面にはんだ付けする。その後、冷却を行なう。
【0065】
次に、壁部付き基板に対して、本体部21を取り付ける(ハウジング組み立て工程)。ハウジング組み立て工程を経たものがコネクタ1となる。以上のようにして、コネクタ1の組み立てが完了する。
【0066】
なお、上記の工程のうち、めっき工程、切断工程、プレス工程、挿入工程、及び曲げ工程は、雄端子31の製造方法に含まれる工程である。
【0067】
また、コネクタ1の組み立てにおける上記の工程(コネクタハウジング形成工程、切断工程、プレス工程、挿入工程、曲げ工程、基板取り付け工程、ハウジング組み立て工程)の一部又は全部を、作業者が手作業で実施してもよいし、自動機を使って自動的に実施してもよい。
【0068】
また、これらの工程は、複数段階に分けて行なってもよい。例えば、上記の順で、コネクタハウジング形成工程から曲げ工程までを実施した後、雄端子付き壁部の状態で出荷し、他の組み立て業者において、残りの組み立て工程(基板取り付け工程、及び、ハウジング組み立て工程)を実施してもよい。
【0069】
また、(i) 線材集合体を製造する業者、(ii) 「雄端子付き壁部」を製造する業者(コネクタハウジング形成工程、切断工程、プレス工程、挿入工程、及び、曲げ工程を行なう業者)、及び、(iii) 組み立て業者(基板取り付け工程、及び、ハウジング組み立て工程を行なう業者)は、全て同一の業者であってもよいし、全てが別の業者であってもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態では、線材集合体3を製造した時点で、金属線材に対するめっきが既に完了している。すなわち、線材集合体3の製造過程において、端子の製造過程の一部(めっき工程)が実施されている。そのため、線材集合体3(端子用金属線材30)の供給を受けた後、雄端子31の製造過程として、めっき工程を実施する必要はない。そのため、本実施形態の方法では、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、線材集合体3(端子用金属線材30)が供給された後において、雄端子31を製造するための工程が少ない。このことは、上記(i) の線材集合体を製造する業者と、(ii) の「雄端子付き壁部」を製造する業者とが異なる場合に特に有効となり、その場合には、(ii) の業者において、雄端子の製造が容易になる。
【0071】
また、本実施形態においては、雄端子は、D1、D2、D3の三箇所で曲げられているが、雄端子は、このように曲げられたものには限られず、第2線状雄端子31pの状態で、雄端子として使用されてもよい。そのため、上記の曲げ工程はなくてもよい。
【0072】
(効果)
次に、本実施形態に係る端子用金属線材30、及び、雄端子31の製造方法により得られる効果について説明する。端子用金属線材30は、雄端子31の材料として切断して使用されるものであって、金(第1の材料)によってめっきされ、且つ、金が露出している複数の第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)と、金とは異なる材料であるニッケル(第2の材料)によってめっきされ、且つ、ニッケルが露出している複数の第2線材領域31sと、が形成されている。
【0073】
この構成では、切断前の状態において、端子用金属線材30の外表面がめっきされているので、端子用金属線材30を切断した後における、金属線材(第1線状雄端子31z及び第2線状雄端子31p)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材を用いて端子を製造する場合において、端子の製造過程を簡素化できる。
【0074】
また、本構成では、端子用金属線材30が、二種類の材料(金及びニッケル)によってめっきされている。そのため、接点と、それ以外の部分とを、別々の材料でめっきすることができる。
【0075】
端子用金属線材30において、二つの第1線材領域(第1線材領域31f及び第1線材領域31g)は、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部に形成されており、第2線材領域31sは、第1線状雄端子31zの、両端部を除く中央部分に形成されており、ニッケルは、下地材料として、第1線状雄端子31zの全体にめっきされている。
【0076】
この構成では、製造された雄端子31において、二つの第1線材領域が接点(端子接続部31c、基板孔挿入部31d)となり、第2の材料であるニッケルが下地材料となる。そして、端子用金属線材30の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材30を切断した後は、金属線材(第1線状雄端子31z及び第2線状雄端子31p)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材30が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0077】
また、端子用金属線材30においては、金(第1の材料)によるめっきは、第1線状雄端子31zの全体に対してではなく、両端部に対して行なわれている。そして、金は、電気伝導率が高いが高価な材料である。
そのため、本実施形態のように、雄端子31の接点領域(端子接続部31c、中間部31m、基板孔挿入部31d)のみに対して、部分的に金めっきを行なうことによって、コネクタに求められる程度の電気的な接続性能を確保した上で、雄端子31の製造コストを低減できる。
【0078】
本実施形態に係る雄端子31の製造方法は、雄端子31の材料として切断して使用される金属線材にめっきすることにより、金(第1の材料)によってめっきされ且つ金が露出している複数の第1線材領域(第1線材領域31f、及び、第1線材領域31g)と、金とは異なる材料であるニッケル(第2の材料)によってめっきされ且つニッケルが露出している複数の第2線材領域31sと、を金属線材に形成するめっき工程と、めっき工程の後の金属線材(端子用金属線材30)を、雄端子31の長さに合わせて切断する切断工程と、を備える。
【0079】
この方法では、切断前の状態において、端子用金属線材30(めっき工程後の金属線材)の外表面がめっきされているので、端子用金属線材30を切断した後における、金属線材(第1線状雄端子31z及び第2線状雄端子31p)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材を用いて端子を製造する場合において、端子の製造過程を簡素化できる。
【0080】
また、本方法では、金属線材を、二種類の材料によってめっきする。そのため、接点と、それ以外の部分とを、別々の材料でめっきすることができる。
【0081】
本実施形態に係る雄端子31の製造方法では、めっき工程においては、二つの第1線材領域(第1線材領域31f及び第1線材領域31g)を、金属線材において、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)の、両端部に形成し、第2線材領域31sを、金属線材において、第1線状雄端子31zの、両端部を除く中央部分に形成し、ニッケルを、下地材料として、金属線材において、第1線状雄端子31zの全体にめっきする。
【0082】
この方法では、製造された雄端子31において、二つの第1線材領域が接点(端子接続部31c、基板孔挿入部31d)となり、ニッケルが下地材料となる。そして、端子用金属線材30の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材30を切断した後は、金属線材(第1線状雄端子31z及び第2線状雄端子31p)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材30が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る金属線材の部分拡大図である。
【0084】
本実施形態においては、端子用金属線材130の構成が、上記の端子用金属線材30とは異なる。端子用金属線材130には、雄端子31に相当する部分(第1線状雄端子31z)が繰り返し形成されており、第1線状雄端子31zと第1線状雄端子31zとの間には、連結部131sが挟まれている。すなわち、端子用金属線材130においては、複数の第1線状雄端子31zが、連結部131sを介して連結されている。
【0085】
連結部131sは、第2線材領域であり、連結部131sは、第2線材領域31sと同様に、ニッケル(第2の材料)によってめっきされている。また、連結部131sにおいては、ニッケルが露出している。以上のように、端子用金属線材130には、第1線材領域として、第1線材領域31f及び第1線材領域31gが形成されており、第2線材領域として、第2線材領域31s及び連結部131sが形成されている。連結部131sについては、不要部分なので、切断工程において取り除いてもよいし、第1線材領域31g又は第1線材領域31fに連続した状態で残してもよい。
【0086】
図8において、連結部131sの長さはL6である。また、二つの第1線材領域(第1線材領域31f及び第1線材領域31g)、及び、連結部131sの長さの合計(L2、L3、及びL6の和)は、L7である。また、本実施形態においても、線材集合体は、一本の端子用金属線材130を巻くことにより形成される。
【0087】
なお、連結部131sもまた、第1線材領域であってもよい。その場合には、金めっき工程において、下地めっき工程後の金属線材に対して、長さL5の間隔を空けて、長さL7にわたる金めっきを繰り返し行なう。
【0088】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図9は、第3実施形態に係る金属線材の部分拡大図である。
【0089】
端子用金属線材230は、複数の第3線材領域231tを含む。第3線材領域231tは、錫(第3の材料)によってめっきされており、第3線材領域231tにおいては、錫が露出している。
【0090】
端子用金属線材230において、雄端子に相当する部分(第1線状雄端子231z)の、一方の端部には、第1線材領域31fが形成されており、他方の端部には、第3線材領域231tが形成されている。端子用金属線材230において、雄端子に相当する部分(第1線状雄端子231z)の、両端部を除く中央部分には、第2線材領域31sが形成されている。なお、図9においては、第1線材領域31f及び第3線材領域231tを、ハッチング領域として示している。
【0091】
また、端子用金属線材30と同様に、下地材料として、端子用金属線材230の全体に、ニッケルがめっきされている。また、本実施形態においても、線材集合体は、一本の端子用金属線材230を巻くことにより形成される。
【0092】
また、図示は省略するが、端子用金属線材230を用いて製造される雄端子においては、雄端子31とは異なり、中間部31m及び基板孔挿入部31dが、第3線材領域231tに相当する。また、この雄端子においては、雄端子31と同様に、端子接続部31cが、第1線材領域31fに相当し、傾斜部31nが、第2線材領域31sに相当する。端子用金属線材230は、このように構成されていてもよい。
【0093】
(効果について)
端子用金属線材230は、雄端子の材料として切断して使用されるものであって、金(第1の材料)によってめっきされ、且つ、金が露出している複数の第1線材領域31fと、金とは異なる材料であるニッケル(第2の材料)によってめっきされ、且つ、ニッケルが露出している複数の第2線材領域31sと、が形成されている。
また、端子用金属線材230には、金及びニッケルとは異なる材料である錫(第3の材料)によってめっきされ、且つ、錫が露出している、複数の第3線材領域231tがさらに形成されており、端子用金属線材230において、第1線材領域31fは、雄端子に相当する部分(第1線状雄端子231z)の、一方の端部に形成されており、第2線材領域31sは、第1線状雄端子231zの、両端部を除く中央部分に形成されており、第3線材領域231tは、第1線状雄端子231zの、他方の端部に形成されており、ニッケルは、下地材料として、第1線状雄端子231zの全体にめっきされている。
【0094】
この構成では、製造された雄端子において、第1線材領域31f及び第3線材領域231tが接点となり、ニッケルが下地材料となる。そして、端子用金属線材230の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材230を切断した後は、金属線材(第1線状雄端子231z及び第2線状雄端子)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材230が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0095】
本実施形態に係る雄端子の製造方法は、雄端子の材料として切断して使用される金属線材にめっきすることにより、金(第1の材料)によってめっきされ且つ金が露出している複数の第1線材領域31fと、金とは異なる材料であるニッケル(第2の材料)によってめっきされ且つニッケルが露出している複数の第2線材領域31sと、を金属線材に形成するめっき工程と、めっき工程の後の金属線材(端子用金属線材230)を、雄端子の長さに合わせて切断する切断工程と、を備える。
また、本実施形態に係る雄端子の製造方法では、めっき工程においては、金及びニッケルとは異なる材料である錫(第3の材料)によってめっきされ、且つ、錫が露出している複数の第3線材領域231tを、金属線材にさらに形成し、めっき工程においては、第1線材領域31fを、金属線材において、雄端子に相当する部分(第1線状雄端子231z)の、一方の端部に形成し、第2線材領域31sを、金属線材において、第1線状雄端子231zの、両端部を除く中央部分に形成し、第3線材領域231tを、金属線材において、第1線状雄端子231zの、他方の端部に形成し、ニッケルを、下地材料として、金属線材において、第1線状雄端子231zの全体にめっきする。
【0096】
この方法では、製造された雄端子において、第1線材領域31f及び第3線材領域231tが接点となり、ニッケルが下地材料となる。そして、端子用金属線材230の状態でめっきが完了しているので、端子用金属線材230を切断した後は、金属線材(第1線状雄端子231z及び第2線状雄端子)に対してのめっき作業を省略できる。そのため、金属線材の切断後にめっきを行なう従来の方法に比べて、めっき作業用の装置が不要となり、また、端子用金属線材230が供給された後における、端子の製造時間が短くなる。
【0097】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図10は、第4実施形態に係る線材集合体の斜視図である。
【0098】
第1実施形態の端子用金属線材30においては、一つの雄端子31の長さL1に関連して、第1線材領域及び第2線材領域が形成されているが、線材集合体は、このようなものには限られない。本実施形態に係る線材集合体303は、一本の端子用金属線材330からなる、円筒形の集合体である。そして、線材集合体303の、図10における上部分が第2線材領域331sであり、下部分(ハッチング領域)が第1線材領域331fとなっている。すなわち、線材集合体303を構成する一本の端子用金属線材330のうち、連続した一部分は第1線材領域331fであり、残りの連続した部分が第2線材領域331sとなっている。
【0099】
線材集合体303の、図10における上部分を、雄端子の長さに合わせて切断することにより、第2線材領域331sを有する、複数の第1線状雄端子を製造できる。なお、この第1線状雄端子の両端部に、第2の材料とは別の材料のめっきをしてもよい。
【0100】
線材集合体303の、図10における下部分を、雄端子の長さに合わせて切断することにより、第1線材領域331fを有する、複数の第1線状雄端子を製造できる。なお、この第1線状雄端子の両端部に、第1の材料とは別の材料のめっきをしてもよい。
【0101】
この構成では、端子用金属線材330の状態で、端子用金属線材330の外表面がめっきされているので、端子用金属線材330を切断した後における、金属線材(第1線状雄端子、又は、第2線状雄端子)に対してのめっき作業を、省略、又は、簡略化できる。そのため、金属線材を用いて端子を製造する場合において、端子の製造過程を簡素化できる。
【0102】
また、例えば、二種類の第1線状雄端子(第1線材領域331fを有する第1線状雄端子、及び、第2線材領域331sを有する第1線状雄端子)をロット生産する場合には、端子用金属線材330において、第1線材領域331f及び第2線材領域331sの長さを、それぞれの第1線状雄端子の生産数に合わせて決定しておけばよい。
【0103】
また、線材集合体303においては、第1線材領域331f及び第2線材領域331sが形成されているが、これらに加えて、他の材料によってめっきされた線材領域がさらに形成されていてもよい。例えば、線材集合体を構成する金属線材のうち、1/3が第1線材領域であり、他の1/3が第2線材領域であり、残りの1/3が第3線材領域であってもよい。
【0104】
本発明の実施の形態は、上記の実施形態には限られない。例えば、本発明に係るコネクタを、自動車のECU接続コネクタとして利用してもよい。また、本発明のコネクタの用途はECU接続用には限られず、その他の電源接続用、又は、中継用のコネクタとしても利用できる。また、本発明に係るコネクタを、EFI(Electronic Fuel Injection;燃料噴射制御)用のECUに対する接続コネクタとして利用してもよい。また、本発明は、防水型コネクタ、非防水型コネクタの両方に適用できる。
【0105】
また、上記の実施形態では、壁部が複数の雄端子を支持できるように構成されているが、壁部は一本の雄端子のみを支持するものであってもよい。また、壁部には、複数の貫通孔が三列に並べて配置されているが、壁部には、複数の貫通孔が、一列に並べられていてもよい。
【0106】
また、複数の雄端子は、電源接続用、信号伝送用のどちらに用いられてもよいし、両方に用いられてもよい。
【0107】
また、上記の第1実施形態において、端子用金属線材30は、雄端子31を製造するために使用されるが、他の雄端子(雄端子32及び雄端子33)についても、端子用金属線材を用いて同様に製造される。雄端子32又は雄端子33を製造するために用いられる端子用金属線材においては、各線材領域の長さが、端子用金属線材30における各線材領域の長さ(L1、L2、L3、L4、L5)とは異なる。
【0108】
また、上記の第1実施形態において、端子用金属線材30は、雄端子31を製造するために使用されるが、一つの線材集合体を用いて、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33の三種類の雄端子を製造できるようにしてもよい。例えば、線材集合体に含まれる一本の端子用金属線材のうち、1/3が、雄端子31の長さに合わせてめっきされた端子用金属線材30であり、他の1/3が、雄端子32の長さに合わせてめっきされた金属線材であり、残りの1/3が、雄端子33の長さに合わせてめっきされた金属線材であってもよい。
【0109】
また、上記の第1実施形態において、第1の材料である金と、第2の材料であるニッケルとが、第1線材領域において重ねてめっきされているが、これらの材料は重なっていなくてもよい。
【0110】
また、上記の第1実施形態においては、第1線状雄端子31zと、第2線状雄端子31pとで、第1線材領域31fの長さ(L2)、第1線材領域31gの長さ(L3)、及び、全長(L1)が変化していないが、これらは、プレス加工に伴って変化してもよい。
【0111】
また、上記の第1実施形態では、線材集合体3(端子用金属線材30)の供給を受けた後に、端子用金属線材30に対してめっきを行なわないが、線材集合体3の供給を受けた後に、端子用金属線材30に対して、さらにめっきを行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。
【図2】本実施形態に係る線材集合体の斜視図である。
【図3】金属線材の部分拡大図である。
【図4】切断工程後の金属線材(第1線状雄端子)を示す図である。
【図5】第2線状雄端子を示す図である。
【図6】雄端子を示す側面図である。
【図7】コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。
【図8】第2実施形態に係る金属線材の部分拡大図である。
【図9】第3実施形態に係る金属線材の部分拡大図である。
【図10】第4実施形態に係る線材集合体の斜視図である。
【符号の説明】
【0113】
1 コネクタ
2 コネクタハウジング
21 本体部
22 壁部
23、24、25 貫通孔
3 線材集合体
30 端子用金属線材
31、32、33 雄端子(端子)
31b、32b、33b 挿入部
31c、32c、33c 端子接続部
31d、32d、33d 基板孔挿入部
31m 中間部
31n 傾斜部
31z 第1線状雄端子
31p、32p、33p 第2線状雄端子
31f、31g、331f 第1線材領域
31s、131s、331s 第2線材領域
231t 第3線材領域
4 基板
5 相手側コネクタ
6 相手側ハウジング
7 雌端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子の材料として切断して使用される端子用金属線材であって、
第1の材料によってめっきされ、且つ、当該第1の材料が露出している第1線材領域と、
前記第1の材料とは異なる第2の材料によってめっきされ、且つ、当該第2の材料が露出している第2線材領域と、が形成されていることを特徴とする端子用金属線材。
【請求項2】
前記第1線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部のそれぞれに形成されており、
前記第2線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成されており、
前記第2の材料は、下地材料として、前記端子に相当する部分の全体にめっきされていることを特徴とする、請求項1に記載の端子用金属線材。
【請求項3】
前記第1の材料及び前記第2の材料とは異なる第3の材料によってめっきされ、且つ、当該第3の材料が露出している第3線材領域がさらに形成されており、
前記第1線材領域は、前記端子に相当する部分の、一方の端部に形成されており、
前記第2線材領域は、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成されており、
前記第3線材領域は、前記端子に相当する部分の、他方の端部に形成されており、
前記第2の材料は、下地材料として、前記端子に相当する部分の全体にめっきされていることを特徴とする、請求項1に記載の端子用金属線材。
【請求項4】
端子の材料として切断して使用される金属線材にめっきすることにより、第1の材料によってめっきされ且つ当該第1の材料が露出している第1線材領域と、前記第1の材料とは異なる第2の材料によってめっきされ且つ当該第2の材料が露出している第2線材領域と、を前記金属線材に形成するめっき工程と、
前記めっき工程の後の前記金属線材を、前記端子の長さに合わせて切断する切断工程と、を備えることを特徴とする、端子の製造方法。
【請求項5】
前記めっき工程においては、前記第1線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部のそれぞれに形成し、前記第2線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成し、前記第2の材料を、下地材料として、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の全体にめっきすることを特徴とする、請求項4に記載の端子の製造方法。
【請求項6】
前記めっき工程においては、前記第1の材料及び前記第2の材料とは異なる第3の材料によってめっきされ、且つ、当該第3の材料が露出している第3線材領域を、前記金属線材にさらに形成し、
前記めっき工程においては、前記第1線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、一方の端部に形成し、前記第2線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、両端部を除く中央部分に形成し、前記第3線材領域を、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の、他方の端部に形成し、前記第2の材料を、下地材料として、前記金属線材において、前記端子に相当する部分の全体にめっきすることを特徴とする、請求項4に記載の端子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−135193(P2010−135193A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310422(P2008−310422)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】