説明

端子金具

【課題】過電流保護機能を有した端子金具において低コスト化と小型化を実現する。
【解決手段】本発明は、エレメント41が設けられた端子本体TBと、エレメント41に接する消弧砂44と、ガラス繊維からなり、消弧砂44を内部に収容するガラススリーブ45と、ガラススリーブ45を弾性的に覆うことで消弧砂44とエレメント41を接触させるようにガラススリーブ45を加圧する熱収縮チューブ46とを備えた構成としたから、熱収縮チューブ46によって消弧砂44とエレメント41が接触状態に保持されるから、消弧砂44の粒径や形状を最適化したり、消弧砂44の充填率を高めるべく振動を加える必要がなく、低コスト化が可能になる。また、耐熱性のガラス繊維からなるガラススリーブ45によって消弧砂44をガラススリーブ45の内部に収容しているため、ガラスやセラミックなどを用いて消弧砂44を収容するよりも端子金具10を小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流保護機能を有した端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の端子金具として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この端子金具は、エレメントが内部に収容されたヒューズ筒を有し、このヒューズ筒の内部に、消弧砂が充填されている。エレメントに許容電流を超える電流が流れると、エレメントが発熱して溶断することによって電源回路が遮断される。この遮断の際には、残存するエレメント間にアーク放電がするものの、気化したエレメントの金属蒸気を消弧砂の表面に凝結させることによってアークを冷却するとともに、アーク放電を遮断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−294103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにエレメントの金属蒸気を消弧砂に凝結させるためには、エレメントと消弧砂が接触している必要がある。しかしながら、エレメントが溶断して気化すると、エレメントが気化して消滅したところに隙間が形成されるため、この隙間にアーク放電が発生することになる。したがって、隙間が発生すると同時にこの発生した隙間に消弧砂を流し込んで消弧砂を充填する必要がある。このためには、消弧砂の粒径や形状を最適化するとともに、消弧砂の充填率を高めべく振動を加えるといった方法が行われており、ヒューズの低コスト化を妨げている。また、アーク熱による破損を防ぐためには、ヒューズ筒の材料として耐熱性に優れたガラスまたはセラミックが用いられることが多く、端子金具を大型化させる一因となっている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、過電流保護機能を有した端子金具において低コスト化と小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、過電流保護機能を有した端子金具であって、溶断部が設けられた端子本体と、溶断部に接する消弧砂と、耐熱性の繊維からなり、消弧砂を内部に収容する収容部材と、収容部材を弾性的に覆うことで消弧砂と溶断部を接触させるように収容部材を加圧する加圧部材とを備えた構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、加圧部材によって消弧砂と溶断部が接触状態に保持されるから、消弧砂の粒径や形状を最適化したり、消弧砂の充填率を高めるべく振動を加える必要がなく、低コスト化が可能になる。また、耐熱性のガラス繊維からなる収容部材によって消弧砂を収容部材の内部に収容しているため、ガラスやセラミックなどを用いて収容部材を構成するよりも端子金具を小型化できる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
端子本体は一対の導電板を有し、これらの導電板同士を導通可能に接続する態様で溶断部が各導電板と一体に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、例えば、端子本体を構成する金属平板をプレス加工などによって所定の形状に打ち抜き加工することによって一対の導電板および溶断部を形成することができる。すなわち、各導電板と溶断部を予め一体に形成することができ、溶断部を各導電板に溶接する作業が不要になる。
【0009】
収容部材は、ガラス繊維からなるガラス布を筒状に形成したものであり、ガラス繊維間の隙間は、消弧砂の粒径よりも小さいものとされており、隙間を広げることで消弧砂を収容部材の内部に充填する構成としてもよい。
このような構成によると、消弧砂を充填する作業が容易になる。
【0010】
加圧部材は熱収縮チューブであって、消弧砂の粒径よりも小さい孔径を有する孔を備えた構成としてもよい。
このような構成によると、消弧砂の流出を防ぐとともに、溶断部を溶断する際の内圧上昇を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過電流保護機能を有した端子金具において低コスト化と小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】端子金具の平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】図1におけるB−B線断面図
【図4】熱収縮チューブを装着する前の端子金具の平面図
【図5】端子本体の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図5の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子金具10は、過電流保護機能付きジョイントコネクタに収容されており、過電流保護機能を有した端子金具である。この端子金具10は、図1に示すように、長孔21を有する端子接続部20と、電線(図示せず)の芯線に圧着接続されるバレル31を有する電線接続部30と、端子接続部20から電線接続部30に亘って配された電流遮断部40とを備えて構成されている。端子接続部20は、例えば、バッテリ(図示せず)に立設されたバッテリポストに長孔21を通してナットで締め付けることによって接続される。一方、電線接続部30は、電線の端末において絶縁被覆を皮剥きすることで露出された芯線にバレル31をかしめ付けることによって接続される。
【0014】
端子接続部20は、図5に示す第1導電板42を備えて構成されており、同じく電線接続部30は、図5に示す第2導電板43を備えて構成されている。第1導電板42と第2導電板43は、これらよりも幅狭に形成されたエレメント41によって互いに連結されている。エレメント41、第1導電板42、および第2導電板43によって端子本体TBが構成されている。端子本体TBは、母材となる金属平板を所定の形状に打ち抜いた後、第2導電板43に曲げ加工などを施すことによって形成したものである。
【0015】
エレメント41は、クランク状をなしており、端子接続部20に連なる第1接続片41Aと、電線接続部30に連なる第2接続片41Bと、この第2接続片41Bの先端から直角に折り曲げられて第1接続片41Aの先端に連結された第3接続片41Cとからなる。第1接続片41Aと第3接続片41Cの連結部分は、円形とされている。第3接続片41Cは、第1接続片41Aおよび第2接続片41Bよりも幅狭に形成されており、エレメント41の中で最も断面積が小さく、抵抗値が最も高くなっている。したがって、エレメント41に許容電流を超える電流が流れると、第3接続片41Cが発熱して溶断することによって電源回路が遮断されるようになっている。なお、エレメント41に応力がかかると、このエレメント41が弾性変形することによって応力が緩和されるようになっている。
【0016】
電流遮断部40は、図3に示すように、エレメント41、このエレメント41の周囲に配された消弧砂44、この消弧砂44を覆うガラススリーブ45、このガラススリーブ45を弾性的に覆う熱収縮チューブ46などを備えて構成されている。ガラススリーブ45は、ガラス繊維からなるガラス布を筒状に形成したものであり、ガラス繊維間の隙間は、消弧砂44の粒径よりも小さめとされている。これにより、消弧砂44は、ガラススリーブ45から流出することなくその内部に充填されている。また、熱収縮チューブ46は、消弧砂44とエレメント41を接触させるようにガラススリーブ45を加圧している。このため、消弧砂44とエレメント41は常に接した状態に保持される。なお、熱収縮チューブ46は、消弧砂44の粒径よりも小さい孔径を有する孔(図示せず)を備えている。
【0017】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、端子金具10の製造方法について簡単に説明する。エレメント41にガラススリーブ45を外嵌しておき、シリンジなどを用いてガラス繊維間の隙間を広げながらガラススリーブ45に突き刺し、シリンジの先端から消弧砂44をガラススリーブ45の内部に注入する。次に、ガラススリーブ45に熱収縮チューブ46を外嵌した後、この熱収縮チューブ46を加熱することによって収縮させる。すると、熱収縮チューブ46の押圧力を受けてガラススリーブ45が消弧砂44を凝縮させ、消弧砂44がガラススリーブ45の内部に充填されるとともに、消弧砂44がエレメント41に接した状態に保持される。こうして、過電流保護機能を有した端子金具10が製造される。
【0018】
次に、端子金具10の端子接続部20をバッテリポストなどに接続し、電線接続部30のバレル31を電線の芯線に圧着接続することで、電源回路を構成する。電源回路が通電状態にあって端子金具10に許容電流を超える電流が流れた場合、最も抵抗値が高い第3接続部41Cが発熱して溶断することになる。このとき、熱収縮チューブ46の内圧が上昇しようとするものの、熱収縮チューブ46の孔を通って内部空気が外部に逃げるため、内圧の上昇を防ぐことができる。また、第3接続部41Cが消滅したところに隙間が形成されることになるものの、隙間が形成されると同時に熱収縮チューブ46の押圧力を受けて消弧砂44が隙間に流れ込み、この隙間を消弧砂44で充填することができる。したがって、アーク放電を遮断することができる。
【0019】
以上のように本実施形態では、エレメント41が設けられた端子本体TBと、エレメント41に接する消弧砂44と、ガラス繊維からなり、消弧砂44を内部に収容するガラススリーブ45と、ガラススリーブ45を弾性的に覆うことで消弧砂44とエレメント41を接触させるようにガラススリーブ45を加圧する熱収縮チューブ46とを備えた構成としたから、熱収縮チューブ46によって消弧砂44とエレメント41が接触状態に保持され、消弧砂44の粒径や形状を最適化したり、消弧砂44の充填率を高めるべく振動を加える必要がなく、低コスト化が可能になる。また、耐熱性のガラス繊維からなるガラススリーブ45によって消弧砂44をガラススリーブ45の内部に収容しているため、ガラスやセラミックなどを用いて消弧砂44を収容するよりも端子金具10を小型化しやすい。
【0020】
また、端子本体TBは一対の導電板42,43を有し、これらの導電板同士42,43を導通可能に接続する態様でエレメント41が各導電板42,43と一体に形成されている構成としたから、例えば、端子本体TBを構成する金属平板をプレス加工などによって所定の形状に打ち抜き加工することによって一対の導電板42,43およびエレメント41を形成することができる。すなわち、各導電板42,43とエレメント41を予め一体に形成することができ、エレメント41を各導電板42,43に溶接する作業が不要になる。
【0021】
また、ガラススリーブ45のガラス繊維間の隙間は、消弧砂44の粒径よりも小さいものとされており、隙間を広げることで消弧砂44をガラススリーブ45の内部に充填する構成としたから、消弧砂44を充填する作業が容易になる。また、熱収縮チューブ46は、消弧砂44の粒径よりも小さい孔径を有する孔を備えた構成としたから、消弧砂44の流出を防ぐとともに、エレメント41を溶断する際の内圧上昇を防ぐことができる。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では収容部材としてガラススリーブ45を用いているものの、本発明によると、耐熱性の繊維からなる収容部材であればよく、その材質は問わない。
【0023】
(2)上記実施形態では加圧部材として熱収縮チューブ46を用いているものの、本発明によると、テープ巻きによって加圧してもよい。
【0024】
(3)上記実施形態ではクランク状をなすエレメント41を例示しているものの、本発明によると、ストレート形状をなすエレメントとしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10…端子金具
41…エレメント(溶断部)
42…第1導電板
43…第2導電板
44…消弧砂
45…ガラススリーブ(収容部材)
46…熱収縮チューブ(加圧部材)
TB…端子本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流保護機能を有した端子金具であって、
溶断部が設けられた端子本体と、
前記溶断部に接する消弧砂と、
耐熱性の繊維からなり、前記消弧砂を内部に収容する収容部材と、
前記収容部材を弾性的に覆うことで前記消弧砂と前記溶断部を接触させるように前記収容部材を加圧する加圧部材とを備えた端子金具。
【請求項2】
前記端子本体は一対の導電板を有し、これらの導電板同士を導通可能に接続する態様で前記溶断部が各導電板と一体に形成されている請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記収容部材は、ガラス繊維からなるガラス布を筒状に形成したものであり、前記ガラス繊維間の隙間は、前記消弧砂の粒径よりも小さいものとされており、前記隙間を広げることで前記消弧砂を前記収容部材の内部に充填する請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記加圧部材は熱収縮チューブであって、前記消弧砂の粒径よりも小さい孔径を有する孔を備えた請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−101801(P2013−101801A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244204(P2011−244204)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】