説明

端子

【課題】表面取付型の端子を接着剤により対象物表面に取り付ける構成において、固化した接着剤と端子との相互接触面積を、接着剤の粘度や作業者の熟練度に関わらず、十分に大きく確保できるようにする。
【解決手段】端子10は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部30と、係留部30に隣接して配置される流出防止部32とを備える。流出防止部32は、基部12の第1面12a側に立設される第1の壁34を有する。壁34は、係留部30に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関し、特に、対象物の表面に取り付けられる端子に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面に取り付けられて同表面に形成した導体に接続される表面取付型(或いは表面実装型)の端子において、端子を接着剤により対象物表面に取り付けて、端子の電気接点と対象物表面の導体とを主として接着剤の接着作用の下で相互に接続する構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、表面に導体が形成された基板に端子を取り付けるための端子取り付け構造を開示する。特許文献1には、「端子3は、2つの固定部31と、2つの固定部の一方から他方に向けて略平行に延在する複数の弾性部32と、基板1に対して凸となるように弾性部32に設けられ、導体2に電気的に接続された基板接触部33とを備える。固定部31は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ4等の接合手段によって基板1に固着される。また端子3の基板接触部33は、弾性部32の弾性変位による反発力で導電体2に接触している状態で、接着剤5によって基板1に接着されている。」、「端子303は、固定部331と、固定部331から異なる方向(図示例では互いに反対方向)に延びる複数の弾性部332と、基板302に対して凸となるように弾性部332に設けられ、導体302に電気的に接続された基板接触部333とを備える。固定部331は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ304等の接合手段によって基板301に固着される。また固定部331は、端子303の基板接触部333が弾性部332の弾性変位による反発力で導電体302に接触している状態で、接着剤305によって基板301に接着されている。」と記載されている。
【0004】
また特許文献2は、表面に銀プリントが施されたガラスに対して端子が接着されてなる端子付きガラスを開示する。特許文献2には、「端子14は、2枚の厚さの異なる板により構成され、下面が接着層16に接着される基部17(例えば厚さ0.4mm)と、この基部17から立上げられ雌型端子部18から車内のテレビ等に接続される端子部19(例えば厚さ0.8mm)とからなる。」、「基部17は、両端に銀プリント12に向かって曲げられる弧状の曲げ部21、21を有する。また、接着層16は、端子14の長手方向に沿って図面左から第1の両面テープ22、接着剤23、第2の両面テープ24が配置されることにより構成される。26、26は、端子14の曲げ部21、21が銀プリント12の上面に接触される接点である。即ち、端子14は複数の接点26、26で銀プリント12の上面に接触されている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−105036号公報(段落0016、0030)
【特許文献2】国際公開第2010/100961号(段落0043、0045)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面取付型の端子の電気接点と対象物表面の導体とを主として接着剤の接着作用の下で相互に接続する構成では、電気接点と導体との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるようにするために、固化した接着剤と端子との相互接触面積を、接着剤の粘度や作業者の熟練度に関わらず、十分に大きく確保できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、互いに反対側の第1面と第2面とを有する基部と、基部から延長され、基部の第1面から突出した位置に電気接点を有するコンタクト部と、コンタクト部とは別に基部に設けられ、基部を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部とを具備し、接着剤支持部は、固化前の接着剤が流通可能な開口を有するとともに開口を通って固化した接着剤に係合して接着剤を係留できる係留部と、係留部に隣接して配置され、係留部に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して固化前の接着剤が接着剤支持部から流出することを防止できる流出防止部とを具備し、流出防止部は、基部の第1面の側に略L字構造に曲げられてコンタクト部と開口との間に配置される第1の壁を有する、端子である。
【0008】
本発明の他の態様は、互いに反対側の第1面と第2面とを有する基部と、基部から延長され、基部の第1面から突出した位置に電気接点を有するコンタクト部と、コンタクト部とは別に基部に設けられ、基部を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部とを具備し、接着剤支持部は、固化前の接着剤が流通可能であり基部と同一平面にある開口を有するとともに、開口を通って固化した接着剤に係合して接着剤を係留できる係留部と、係留部に隣接して配置され、係留部に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して固化前の接着剤が接着剤支持部から流出することを防止できる流出防止部とを具備し、流出防止部は、基部の第1面の側に立設されてコンタクト部と開口との間に配置される第1の壁を有する、端子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様及び他の態様に係る端子によれば、接着剤支持部に流出防止部を設けたことにより、接着剤支持部から外部への液状の接着剤の流出(すなわち損失)を低減することができる。流出防止部が有する第1の壁は、基部の第1面の側でコンタクト部と開口との間に配置されるから、端子を対象物の表面に取り付けるときに、固化前の接着剤が基部の第1面と対象物表面との間を流動してコンタクト部に向かって流出することを防止できる。したがって、必要最低限の供給量の接着剤により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤を形成することができる。このような接着剤供給作業は、固化した接着剤と端子との相互接触面積を十分に大きく確保できるものであって、固化前の接着剤の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態による端子の斜視図である。
【図2】図1の端子を対象物の表面に取り付ける手順の一例を、図1の線II−IIに沿った断面図で示す図で、(a)取付準備、(b)仮止め、(c)接着の各工程を示す。
【図3】図1の端子の変形例を示す斜視図である。
【図4】図1の端子の他の変形例を示す図で、(a)斜視図、(b)線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による端子の斜視図で、(a)上面側、(b)下面側を示す。
【図6】図5の端子を対象物の表面に取り付ける手順の一例を、図5の線VI−VIに沿った部分拡大断面図で示す図で、(a)仮止め、(b)接着の各工程を示す。
【図7】図5の端子の変形例を示す斜視図である。
【図8】図5の端子の他の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による端子の斜視図で、(a)上面側、(b)下面側を示す。
【図10】図9の端子を対象物の表面に取り付ける手順の一例を、図9の線X−Xに沿った部分拡大断面図で示す図で、(a)仮止め、(b)接着の各工程を示す。
【図11】本発明の第4の実施形態による端子の斜視図である。
【図12】本発明の第5の実施形態による端子の斜視図である。
【図13】本発明の第6の実施形態による端子を示す図で、(a)斜視図、(b)線XIII−XIIIに沿った断面図である。
【図14】本発明の第7の実施形態による端子を示す図で、(a)斜視図、(b)線XIV−XIVに沿った断面図である。
【図15】本発明の第8の実施形態による端子を示す図で、(a)斜視図、(b)線XV−XVに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1の実施形態による端子10を示す図、図2は、端子10を対象物の表面に取り付ける手順の一例を示す図である。
【0012】
端子10は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。基部12は、互いに反対側の第1面(図で下面)12aと第2面(図で上面)12bとを有する略矩形平板状要素である。基部12は、後述するように、主として接着剤により対象物の表面に固定されて、対象物表面に形成した導体に対し、コンタクト部16の電気接点14を適宜位置に位置決めする基礎部分として機能する。基部12は全体として、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
【0013】
図示の端子10では、一対のコンタクト部16が、基部12の長手方向両端にそれぞれ設けられる。各コンタクト部16は、基部12から延長される複数(図では3個)の腕部分20を含む。各腕部分20は、基端20aで基部12に連結されるとともに末端20bが自由端となる片持ち梁状要素である。腕部分20は、基端20aの近傍で曲折して基部12の第1面12aから突出する方向(図で下方)へ延びるとともに中間で反転して反対方向(図で上方)へ延びる略U字形状を有し、この反転領域の外側膨出面が、電気接点14として機能する。したがって各コンタクト部16は、基部12の第1面12aから突出した位置に、複数(図では3個)の電気接点14を有することになる。各腕部分20は、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
【0014】
図示構成では、基部12とコンタクト部16とは、互いに同一の電気良導性材料から一体に作製される。例えば基部12とコンタクト部16とを、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により所定形状に打ち抜きかつ折曲して、一体に形成できる。なお、基部12とコンタクト部16とを互いに別体の部材から作製して後工程で互いに接合する構成とすることもできる。
【0015】
端子10はさらに、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備えることができる。電線接続部22は、基部12の中央領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される平板状要素である。電線接続部22の先端領域には、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続できる端末部分24が形成される。例えば、対象物表面に取り付けた端子10の電線接続部22に外部の電線を接続することにより、端子10を介して、外部の電線から対象物表面の導体に所望の電流を供給することができる。
【0016】
図示構成では、電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16とは別体の電気良導性材料から作製され、端末部分24の反対側の端部領域26で基部12の中央領域12cにかしめ等の接合手段により接合される。なお、電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16の前述した機能を妨げないことを前提に、図示の形状、寸法に限定されない多様な形状、寸法を有することができる。
【0017】
図示の端子10では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部30と、係留部30に隣接して配置され、係留部30に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部(或いは流動制限部)32とを備える。
【0018】
係留部30の開口28は、基部12の中央領域12cと一方のコンタクト部16との間の領域で、略矩形輪郭を有するように基部12に貫通形成される。開口28は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤が、粘度によらず自由に流通できる寸法を有する。係留部30は、開口28を取り囲む基部12の環状領域によって構成される。係留部30は、開口28を通って固化した接着剤に係合して、同接着剤を定位に係留できるように機能する。このように、係留部30は、平板状の基部12の所定の環状領域によって構成され、固化した接着剤の膨出頭部(後述する)に係合する係留部30の表面(図で上面)は、基部12の第2面12bと同一平面に配置される。したがって、係留部30に取り囲まれて画定される開口28は、実質的に、基部12と同一平面に存在する。なお、開口28及び係留部30は、基部12を対象物に接着するための接着剤が、固化前に開口28を自由に流通できるとともに固化後に係留部30によって確実に係留されることを前提に、図示の形状、寸法に限定されない多様な形状、寸法を有することができる。
【0019】
流出防止部32は、基部12の第1面12a側に立設される第1の壁34を有する。壁34は、コンタクト部16に近接する側の開口28の内縁に沿って、コンタクト部16と開口28との間に配置される。壁34は、基端34aで開口28の内縁に連結されるとともに、末端34bが自由端となる片持ち梁状要素である。壁34は、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長される平板状部分を有する。壁34を有する流出防止部32は、係留部30に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に壁34は、端子10を対象物の表面に取り付けるときに、固化前の接着剤が、基部12の第1面12aと対象物表面との間を流動して、当該接着剤支持部18に近い側のコンタクト部16に向かって流出することを、効果的に防止できる。したがって、コンタクト部16に到達した接着剤が電気接点14と対象物表面の導体との導通に影響を及ぼすことを、未然に防止できる。
【0020】
図示構成では、流出防止部32の壁34は、基部12と同一の電気良導性材料から基部12と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に壁34を打ち抜きかつ折曲して形成できる。なお、壁34を基部12とは別体の部材から作製して後工程で基部12に接合する構成とすることもできる。壁34を基部12と一体に作製することで、別体の部材を後工程で基部12に接合する手法に比べて、流出防止部32の作製工数を削減できる。図2に示すように、第1の壁34は、開口28を画定する係留部30(つまり基部12の一部分)を含む断面形状が、略L字の形状を有している。すなわち壁34は、基部12の第1面12aの側に略L字構造に曲げられて構成されている。
【0021】
図示の端子10では、基部12の中央領域12cに接合される電線接続部22の端部領域26の、開口28に隣接する側の縁部分が、基部12の第1面12a側に立設される流出防止部32の第2の壁36を構成する。壁36は、開口28を挟んで壁34の平板状部分に略平行に対向して配置され、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長される。第2の壁36は、第1の壁34と同様に、係留部30に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に壁36は、端子10を対象物の表面に取り付けるときに、固化前の接着剤が、基部12の第1面12aと対象物表面との間を流動して、基部12の中央領域12cに向かって流出することを、効果的に防止できる。
【0022】
図2を参照して、端子10を対象物38の表面38aに取り付ける手順の一例を説明する。対象物38の表面38aには、端子10を接続する導体40が適宜位置に形成されている(図2(a))。
【0023】
まず準備ステップとして、端子10の基部12の第1面12a側の、コンタクト部16及び接着剤支持部18を除く所望箇所(図では、電線接続部22の端部領域26の表面)に、両面接着テープ42を貼付する(図2(a))。或いは、対象物38の表面38aの、端子10の当該所望箇所を固定するに適した位置に、両面接着テープ42を貼付する。両面接着テープ42としては、例えば、住友スリーエム株式会社より入手可能なVHB(商標)アクリルフォーム構造用接合テープY4920のような、中間の柔軟な基材層44とその両側の粘着剤層46との3層構造を有するものを使用できる。この種の両面接着テープ42は、柔軟な基材層44の応力分散作用により、両面接着テープ42の面方向に加わるせん断力に抗し、かつ環境温度の変動による端子10の寸法変化を吸収して、端子10の基部12を対象物38の表面38aに強固に固定することができる。
【0024】
次に、端子10を、各コンタクト部16の複数(3個)の電気接点14が、対象物38の表面38aに形成した対応の導体40に対向する位置及び姿勢に配置して、両面接着テープ42により基部12を対象物表面38aに固定する(図2(b))。このとき、基部12に適当な押圧力Pを加えることにより、基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませて、個々の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体40に接触させる。この押圧力Pは、両面接着テープ42の粘着剤層46に所要の接着力を発揮させるに十分な大きさである。そして、接触圧力P′を確保できるように、基部12及びコンタクト部16(腕部分20)の形状や寸法、両面接着テープ42の厚み等が予め選択される。また、接着剤支持部18が有する流出防止部32の壁34の形状や寸法は、基部12及びコンタクト部16のこのような弾性変形を阻害しないように予め選択される。なお、両面接着テープ42は、端子10を対象物38に恒久的に固定するためのものではなく、後述する接着剤が固化するまでの間の仮止め機能を発揮できれば良い。
【0025】
次に、対象物38を端子10の重力方向下側に配置して、両面接着テープ42により対象物38の表面38aに仮止めされた端子10に対し、一対の接着剤支持部18の各々に、液状の接着剤48を供給する(図2(b))。液状の接着剤48は、主として各接着剤支持部18の係留部30の開口28に注入される。開口28を通った液状の接着剤48は、その粘度や対象物表面38aに対する濡れ性等の特性に依存して、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動しようとする。このとき、各接着剤支持部18の流出防止部32の第1及び第2の壁34、36が、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間の空間における接着剤48の流動を制限して、接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。その結果、液状の接着剤48は、対象物表面38aに接した状態で流出防止部32の一対の壁34、36の間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力の下で当該領域に貯留される。所定量の接着剤48が供給されると、接着剤48は基部12の第2面12b上に溢出し、摩擦力や表面張力により、開口28を取り囲む係留部30に一様に接触して基部12の第2面12bから盛り上がった茸状の形態を呈するに至る(図2(c))。なお、図示構成では、流出防止部32の壁36に隣接する両面接着テープ42の側縁も、液状の接着剤48に対する流出防止機能を発揮している。
【0026】
茸状の形態で接着剤48が固化すると、係留部30がその略全体に渡って、固化後の接着剤50の膨出頭部50aに係合する(図2(c))。固化後の接着剤50は、膨出頭部50aが係留部30に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部32の第1及び第2の壁34、36の略全体に面接触するので、接着剤50と端子10との相互接触面積が十分に大きく確保される。接着剤50の膨出頭部50aが係留部30により接着剤支持部18上で定位に係留されることにより、接着剤50と対象物表面38aとの接着力(及び両面接着テープ42による補助的な接着力)に依存して、端子10が対象物表面38aに取り付けられるとともに、端子10の基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませた状態が維持され、以て、個々の電気接点14と対応の導体40との間の接触圧力P′が維持される。その結果、端子10の各電気接点14と対応の導体40との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【0027】
端子10によれば、接着剤支持部18に流出防止部32を設けたことにより、接着剤支持部18から外部への液状の接着剤48の流出(すなわち損失)を低減することができる。流出防止部32が有する第1の壁34は、基部12の第1面12aの側でコンタクト部16と開口28との間に配置されるから、端子10を対象物38の表面38aに取り付けるときに、固化前の接着剤48が基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動してコンタクト部16に向かって流出することを防止できる。また、開口28を挟んで第1の壁34に対向する第2の壁36を備えているから、接着剤48の供給量を削減しつつ、茸状の形態を呈するように接着剤48を供給できる。したがって、必要最低限の供給量の接着剤48により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50を形成することができる。このような接着剤供給作業は、上記したように、固化した接着剤50と端子10との相互接触面積を十分に大きく確保できるものであって、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0028】
液状の接着剤48は、硬化又は固化することで対象物38の表面38aに端子10を強固に固定した状態に保持する接着力を発揮できるものであって、化学的に架橋反応が起こり、緻密な3次元網目を形成する樹脂からなることができる。このような樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、光硬化型アクリル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド、シアノアクリレート、尿素樹脂等の、室温硬化型又は熱硬化型樹脂が挙げられる。接着剤48として、エポキシ系樹脂のような室温硬化型樹脂を使用した場合は、熱を加えずに常温で作業できるので、端子10や対象物38が熱による影響を受けない利点が有る。また、紫外線硬化樹脂や熱可塑性樹脂等の、他の樹脂を接着剤48に用いることもできる。なお本願では、狭義の硬化及び固化を「固化」と総称する。
【0029】
上記した端子取付手順では、両面接着テープ42を用いて基部12を対象物表面38aに固定することにより、端子10を対象物38に仮止めしている。この構成によれば、両面接着テープ42により基部12を対象物表面38aに固定すると同時に、個々の電気接点14と対応の導体40との間の接触圧力P′を確保でき、かつ接触圧力P′をある程度の時間に渡って維持できるので、例えば、接着剤48として室温硬化型樹脂のような固化までに時間を要する樹脂を使用した場合にも、接着剤48の固化を待機することなく所要の次工程に移行できる。なお、両面接着テープ42の代わりに、適当な接着剤や治具を用いて端子10を対象物38に仮止めすることもできる。
【0030】
基部12の第1面12aと対象物38の表面38aとの間に介在する両面接着テープ42等の仮止め部材として、電気絶縁性の部材を使用することができる。この構成によれば、対象物38の表面38aに導体40から電気的に独立した他の導体(図示せず)が存在する場合にも、当該他の導体の上に、電気絶縁性の仮止め部材を介して端子10の基部12を配置できるから、例えば、多数の導体が高密度に配置された対象物38の表面38aに、端子10をその取付位置の選択に煩うことなく取り付けることができる。電気絶縁性の両面接着テープ42としては、汎用の安価なものを利用できる。端子10と導体40以外の導体との絶縁を考慮する必要がない場合には、導電性の仮止め部材を使用することができる。この構成によれば、例えば、導電性の仮止め部材を介して、端子10を導体40の他の部分に接続することができるから、端子10と導体40との間の導通経路を増加させて接続信頼性を向上させることができる。
【0031】
上記した端子取付手順では、端子10の基部12に対象物表面38aに向かう押圧力Pを加えることにより、コンタクト部16の複数の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体40に接触させている。この構成によれば、腕部分20の外側膨出面からなる電気接点14の形状と相乗して、電気接点14と導体40との間に比較的高い接触圧力P′を生じさせることができる。したがって、導体40に対して電気接点14が接圧下で摺動することによるいわゆるワイピング作用を要すること無く、電気接点14や導体40の表面に形成される酸化膜を突き破って電気的接続を安定に確立することができる。
【0032】
図示の端子10は、基部12の長手方向両端に一対のコンタクト部16を有するとともに、各コンタクト部16に複数(図では3個)の電気接点14を備えている。この構成によれば、対象物38の表面38aが曲面を含む場合にも、電気接点14を有する個々の腕部分20が互いに独立して弾性変位できるので、各電気接点14を所要の接触圧力P′の下で対応の導体40に安定して接触させることができる。また、各コンタクト部16が櫛刃状の複数(図では3個)の腕部分20を含む図示構成では、個々の腕部分20を流れる電流を削減して発熱を抑制できるとともに、電気接点14の放熱効果を向上させることができる。なお、コンタクト部16の構成は、複数の腕部分20を含む図示構成に限定されず、略U字状に曲折した単一の腕部分を有する構成や、単一の腕部分に放熱用の多数の孔を形成した構成等を採用できる。
【0033】
図示の端子10は、基部12に設けた接着剤支持部18に液状の接着剤48を供給して、固化した接着剤50により基部12を対象物38に固定する構成を有している。この構成では、コンタクト部16を対象物表面38aの導体40に直接に接合する必要が無いので、例えば、環境温度の変動により端子10の寸法が変化したときに、コンタクト部16の電気接点14が導体40の表面に沿って適正な接触状態を維持しながら摺動できる。したがって、端子10にそのような寸法変化が生じたときにも、端子10や対象物38に不都合な応力が加わることを防止でき、端子10と導体40との導通接続を安定して維持できる。
【0034】
図示の端子10において、接着剤支持部18の流出防止部32は、液状の接着剤48が基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間で当該接着剤支持部18に近い側のコンタクト部16に向かって流出することを防止できる第1の壁34を有している。しかし、流出防止部32の壁34、36の配置や形状は、特に限定されない。流出防止部32は、液状の接着剤48の損失を低減しつつ、固化後の接着剤50が所要の係留力を発揮し得る十分な大きさの膨出頭部50aを有するように接着剤48を接着剤支持部18に供給できることを前提に、様々な形状の壁を多様な配置で備えることができる。
【0035】
図3は、上記した端子10の一変形例を示す。図示変形例による端子10′では、一対の接着剤支持部18の各々が、流出防止部32に、互いに協働して開口28を実質的に囲繞する複数の別個の壁34、36、52を有している。端子10′は、流出防止部32の第3の壁52の構成以外は、前述した端子10と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
端子10′の各接着剤支持部18の流出防止部32は、前述した第1及び第2の壁34、36に加えて、基部12の第1面12a(図2)側に立設される一対の第3の壁52を有する。それら一対の壁52は、開口28に近接する位置で基部12の長手方向へ延びる両側縁12dに沿って配置される。各壁52は、基端52aで基部12の側縁12dに連結されるとともに、末端52bが自由端となる片持ち梁状要素である。壁52は、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長されるとともに、第1及び第2の壁34、36に略直交する方向へ延長され、第1及び第2の壁34、36と協働して開口28を実質的に(つまり個々の壁34、36、52の間で部分的に開放された形態で)囲繞する。
【0037】
第1、第2及び第3の壁34、36、52を有する流出防止部32は、係留部30に与えられた固化前の接着剤48(図2)の流動を制限して、固化前の接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に端子10′では、複数の別個の壁34、36、52が、互いに協働して開口28を実質的に囲繞するように形成されているから、液状の接着剤48を接着剤支持部18に供給したときに、接着剤支持部18から外部への接着剤48の流出(すなわち損失)を一層効果的に低減することができる。したがって、接着剤48の供給量をさらに削減しつつ、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50(図2)を形成することができる。
【0038】
固化後の接着剤50は、膨出頭部50a(図2)が係留部30に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部32の壁34、36、52の略全体に面接触するので、接着剤50と端子10′との相互接触面積がさらに大きく確保される。その結果、端子10′の各電気接点14と対応の導体40(図2)との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38(図2)の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。端子10′の接着剤支持部18への接着剤供給作業は、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0039】
図4は、上記した端子10の他の変形例を示す。図示変形例による端子10″では、一対の接着剤支持部18の各々が、流出防止部32に、開口28を連続して囲繞する1つの囲壁54を有している(図4(a))。端子10″は、流出防止部32の囲壁54の構成以外は、前述した端子10と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
端子10″の各接着剤支持部18の流出防止部32は、前述した第1及び第2の壁34、36の代りに、基部12の第1面12a側に立設される1つの囲壁54を有する(図4(b))。囲壁54は、開口28の内縁の全体に沿って連続して配置される。囲壁54は、基端54aで開口28の内縁に連結される角筒状要素である。囲壁54は、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長される4つの平板状部分を有し、その1つが第1の壁34に相当する。つまり囲壁54は、第1の壁34を一体に含んでいる。
【0041】
囲壁54を有する流出防止部32は、係留部30に与えられた固化前の接着剤48(図2)の流動を制限して、固化前の接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に端子10″では、1つの囲壁54が開口28を連続して囲繞するように形成されているから、液状の接着剤48を接着剤支持部18に供給したときに、接着剤支持部18から外部への接着剤48の流出(すなわち損失)を一層効果的に低減することができる。したがって、接着剤48の供給量をさらに削減しつつ、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50(図2)を形成することができる。
【0042】
固化後の接着剤50は、膨出頭部50a(図2)が係留部30に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部32の囲壁54の略全体に面接触するので、接着剤50と端子10″との相互接触面積がさらに大きく確保される。その結果、端子10″の各電気接点14と対応の導体40(図2)との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38(図2)の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。端子10″の接着剤支持部18への接着剤供給作業は、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0043】
図5は、本発明の第2の実施形態による端子60を示す図、図6は、端子60を対象物の表面に取り付ける手順の一例を示す図である。端子60は、接着剤支持部18の係留部62及び流出防止部64の構成以外は、第1実施形態による端子10と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
端子60は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子60では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部(或いは流動制限部)64とを備える。
【0045】
係留部62の開口28は、基部12の中央領域12cと一方のコンタクト部16との間の領域で、略矩形輪郭を有するように基部12に貫通形成される。係留部62は、開口28を取り囲む基部12の環状領域によって構成される。基部12の中央領域12cに隣接する側の開口28の内縁には、中央領域12cから水平に張り出す延長部分66が、係留部62の一部として形成されている。係留部62は、開口28を通って固化した接着剤に係合して、同接着剤を定位に係留できるように機能する。係留部62(延長部分66を含む)に取り囲まれて画定される開口28は、実質的に、基部12と同一平面に存在する。
【0046】
流出防止部64は、基部12の第1面12a側に立設される第1の壁34を有する。第1の壁34は、基部12の第1面12aの側に略L字構造に曲げられて構成されている。また、基部12の中央領域12cに接合される電線接続部22の端部領域26の、開口28に隣接する側の縁部分が、基部12の第1面12a側に立設される流出防止部64の第2の壁36を構成する。
【0047】
流出防止部64はさらに、基部12の第1面12a側に立設される一対の第3の壁68を有する(図5(b))。それら一対の壁68は、基部12の長手方向へ延びる両側縁12dから第1面12a側に延長され、第1及び第2の壁34、36と協働して開口28を実質的に(つまり個々の壁34、36、68の間で部分的に開放された形態で)囲繞するように形成される。各壁68は、基部12の側縁12dに連結される基端部分68aと、基端部分68aから基部側縁12dに沿って開口28に近接する領域に延長される側壁部分68bと、基端部分68aから壁34とコンタクト部16の電気接点14との間の領域に延長される端壁部分68cとを、一体に有している。壁68は、全体として、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長されるとともに、基端部分68a及び側壁部分68bが、壁34、36に略直交する方向へ延長され、端壁部分68cが、壁34、36に略平行する方向へ延長される。壁68の、基部第1面12aから最も離れた端縁68dは、図示のように、コンタクト部16の電気接点14よりも第1面12aに近くかつ壁34の末端34bよりも第1面12aから遠い位置(つまり高さ)に配置できる。
【0048】
第1、第2及び第3の壁34、36、68を有する流出防止部64は、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に、第1の壁34とコンタクト部16の電気接点14との間に位置する第3の壁68の端壁部分68cは、端子10を対象物の表面に取り付けるときに、固化前の接着剤が、基部12の第1面12aと対象物表面との間を流動して、当該接着剤支持部18に近い側のコンタクト部16の電気接点14に向かって流出することを、一層効果的に(つまり第1の壁34による流出防止作用を補助するように)防止できる。
【0049】
図示構成では、流出防止部64の第3の壁68は、基部12と同一の電気良導性材料から基部12と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に壁68を打ち抜きかつ折曲して形成できる。なお、壁68を基部12とは別体の部材から作製して後工程で基部12に接合する構成とすることもできる。また、壁68の基端部分68aと側壁部分68bと端壁部分68cとを、互いに別体の部材から作製して後工程で一体的に接合する構成とすることもできる。
【0050】
流出防止部64はさらに、基部12の第2面12b側に立設される一対の壁70を有する(図5(a))。それら一対の壁70は、第1の壁34を形成した開口28の内縁と、その反対側で延長部分66を形成した開口28の内縁との、それぞれに近接して配置され、互いに略平行に、かつ第1面12a側の第1及び第2の壁34、36に対し略平行に延設される。各壁70は、基部12の第2面12bから突出して直線状に延びるリブ状要素である。壁70は、基部12の第2面12bに略直交する方向へ、第2面12bから適当な高さまで突出する。壁70を有する流出防止部64は、係留部62に与えられた固化前の接着剤の、特に基部第2面12b上での流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。
【0051】
図示構成では、流出防止部64の壁70は、基部12と同一の電気良導性材料から基部12と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に壁70を半抜きにより形成できる。なお、壁70を基部12とは別体の部材から作製して後工程で基部12に接合する構成とすることもできる。
【0052】
図6を参照して、端子60を対象物38の表面38aに取り付ける手順の一例を説明する。対象物38の表面38aには、端子60を接続する導体40(図2)が適宜位置に形成されているが、図6においては図示省略する。
【0053】
図2を参照して説明した端子10の取付手順と同様に、まず準備ステップとして、端子60の基部12の第1面12a側の、コンタクト部16及び接着剤支持部18を除く所望箇所(図では、電線接続部22の端部領域26の表面)に、両面接着テープ42を貼付する。或いは、対象物38の表面38aの、端子60の当該所望箇所を固定するに適した位置に、両面接着テープ42を貼付する。
【0054】
次に、端子60を、各コンタクト部16の複数(3個)の電気接点14が、対象物38の表面38aに形成した対応の導体40(図2)に対向する位置及び姿勢に配置して、両面接着テープ42により基部12を対象物表面38aに固定する(図6(a))。このとき、基部12に適当な押圧力Pを加えることにより、基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませて、個々の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体40に接触させる。この押圧力Pは、両面接着テープ42の粘着剤層46に所要の接着力を発揮させるに十分な大きさである。そして、接触圧力P′を確保できるように、基部12及びコンタクト部16(腕部分20)の形状や寸法、両面接着テープ42の厚み等が予め選択される。また、接着剤支持部18が有する流出防止部64の壁34、68、70の形状や寸法は、基部12及びコンタクト部16のこのような弾性変形を阻害しないように予め選択される。
【0055】
次に、対象物38を端子60の重力方向下側に配置して、両面接着テープ42により対象物38の表面38aに仮止めされた端子60に対し、一対の接着剤支持部18の各々に、液状の接着剤48を供給する。液状の接着剤48は、主として各接着剤支持部18の係留部62の開口28に注入される。開口28を通った液状の接着剤48は、その粘度や対象物表面38aに対する濡れ性等の特性に依存して、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動しようとする。このとき、各接着剤支持部18の流出防止部64の第1、第2及び第3の壁34、36、68が、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間の空間における接着剤48の流動を制限して、接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。その結果、液状の接着剤48は、対象物表面38aに接した状態で流出防止部64の第1及び第2の壁34、36と第3の壁68の側壁部分68bとの間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力の下で当該領域に貯留される。ここで、第3の壁68の端壁部分68cは、接着剤48の粘度が低かったり供給量が多かったりすることで接着剤48が第1の壁34を越えてコンタクト部16に向かって流出した場合に、そのような接着剤48のコンタクト部16に向かう流出を補助的に防止する。所定量の接着剤48が供給されると、接着剤48は基部12の第2面12b上に溢出する。このとき、各接着剤支持部18の流出防止部64の壁70が、基部12の第2面12b上での接着剤48の流動を制限して、接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。その結果、基部第2面12b上に溢出した液状の接着剤48は、流出防止部64の一対の壁70の間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力により、開口28を取り囲む係留部62(延長部分66を含む)に一様に接触して基部12の第2面12bから盛り上がった茸状の形態を呈するに至る(図6(b))。なお、図示構成では、流出防止部64の壁36に隣接する両面接着テープ42の側縁も、液状の接着剤48に対する流出防止機能を発揮している。
【0056】
茸状の形態で接着剤48が固化すると、係留部62がその略全体に渡って、固化後の接着剤50の膨出頭部50aに係合する(図6(b))。固化後の接着剤50は、膨出頭部50aが係留部62に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部64の壁34、36、68、70に面接触するので、接着剤50と端子60との相互接触面積が十分に大きく確保される。接着剤50の膨出頭部50aが係留部62により接着剤支持部18上で定位に係留されることにより、接着剤50と対象物表面38aとの接着力(及び両面接着テープ42による補助的な接着力)に依存して、端子60が対象物表面38aに取り付けられるとともに、端子60の基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませた状態が維持され、以て、個々の電気接点14と対応の導体40との間の接触圧力P′が維持される。その結果、端子60の各電気接点14と対応の導体40との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【0057】
端子60によれば、接着剤支持部18に流出防止部64を設けたことにより、接着剤支持部18から外部への液状の接着剤48の流出(すなわち損失)を低減することができる。流出防止部64が有する第1の壁34は、基部12の第1面12aの側でコンタクト部16と開口28との間に配置されるから、端子10を対象物38の表面38aに取り付けるときに、固化前の接着剤48が基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動してコンタクト部16に向かって流出することを防止できる。また、開口28を挟んで第1の壁34に対向する第2の壁36を備えているから、接着剤48の供給量を削減しつつ、茸状の形態を呈するように接着剤48を供給できる。したがって、必要最低限の供給量の接着剤48により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50を形成することができる。このような接着剤供給作業は、上記したように、固化した接着剤50と端子60との相互接触面積を十分に大きく確保できるものであって、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。なお、両面粘着テープ42及び接着剤48の素材や特性等は、第1実施形態による端子10に関連して説明したものと同様とすることができる。
【0058】
端子60においては、流出防止部64の第3の壁68が、第1及び第2の壁34、36と協働して開口28を実質的に囲繞するように形成されているから、液状の接着剤48を接着剤支持部18に供給したときに、接着剤支持部18から外部への接着剤48の流出(すなわち損失)を一層効果的に低減することができる。特に、第3の壁68の端壁部分68cは、第1の壁34による流出防止作用を補助するように作用する。さらに、基部12の第2面12bにも壁70を設けたから、茸状に固化した接着剤50の膨出頭部50aを確実に形成できる。端子60のこのような接着剤支持部18の構成は、特に、液状の接着剤48の粘度が比較的低い場合に有効である。
【0059】
端子60においても、流出防止部64は、液状の接着剤48の損失を低減しつつ、固化後の接着剤50が所要の係留力を発揮し得る十分な大きさの膨出頭部50aを有するように接着剤48を接着剤支持部18に供給できることを前提に、様々な形状の壁を多様な配置で備えることができる。
【0060】
図7は、上記した端子60の一変形例を示す。図示変形例による端子60′では、一対の接着剤支持部18の各々が、流出防止部64に、基部12の第1面12a(図6)側に立設される一対の第3の壁72、74と、基部12の第2面12b側に立設される一対の壁76、78とを有している。端子60′は、流出防止部64の壁72、74、76、78の構成以外は、前述した端子60と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
端子60′の各接着剤支持部18の流出防止部64は、前述した一対の第3の壁68の代りに、基部12の第1面12a側に立設される一対の第3の壁72、74を有する。それら一対の壁72、74は、基部12の長手方向へ延びる両側縁12dから第1面12a側に延長され、第1及び第2の壁34、36と協働して開口28を実質的に(つまり個々の壁34、36、72、74の間で部分的に開放された形態で)囲繞するように形成される。一方の壁72は、基部12の一方の側縁12dに連結される基端部分72aと、基端部分72aから基部側縁12dに沿って開口28に近接する領域に延長される側壁部分72bとを、一体に有している。他方の壁74は、基部12の他方の側縁12dに連結される基端部分74aと、基端部分74aから基部側縁12dに沿って開口28に近接する領域に延長される側壁部分74bと、基端部分74aから壁34とコンタクト部16の電気接点14との間の領域に延長される端壁部分74cとを、一体に有している。壁72、74は、全体として、基部12の第1面12aに略直交する方向へ延長されるとともに、基端部分72a、74a及び側壁部分72b、74bが、壁34、36に略直交する方向へ延長され、端壁部分74cが、壁34、36に略平行する方向へ延長される。壁72、74の、基部第1面12aから最も離れた端縁72d、74dは、コンタクト部16の電気接点14よりも第1面12aに近くかつ壁34の末端34b(図6)よりも第1面12aから遠い位置(つまり高さ)に配置できる。
【0062】
端子60′の各接着剤支持部18の流出防止部64は、前述した壁70の代りに、基部12の第2面12b側に立設される一対の壁76、78を有する。それら一対の壁76、78は、第1の壁34を形成した開口28の内縁と、その反対側で延長部分66を形成した開口28の内縁との、それぞれに近接して配置され、互いに略平行に、かつ第1面12a側の第1及び第2の壁34、36に対し略平行に延設される。一方の壁76は、基部12の第2面12bから突出する片持ち梁状要素である。他方の壁78は、基部12の一側縁12dに連結される基端部分78aと、基端部分78aから開口28とコンタクト部16との間の領域に延長される端壁部分78bとを、一体に有している。壁76、78は、基部12の第2面12bに略直交する方向へ、第2面12bから適当な高さ(前述した壁70よりも高い位置)まで突出する。
【0063】
壁34、36、72、74、76、78を有する流出防止部64は、係留部62に与えられた固化前の接着剤48(図6)の流動を制限して、固化前の接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に端子60′では、基部12の第1面12a側に設けた第3の壁72、74が、前述した第3の壁68と同様の接着剤流出防止効果を発揮するとともに、基部12の第2面12b側に設けた壁76、78が、前述した壁70よりも一層効果的に接着剤48の流出を防止できるから、茸状に固化した接着剤50の膨出頭部50aを一層確実に形成できる。端子60′のこのような接着剤支持部18の構成は、特に、液状の接着剤48の粘度が比較的低い場合に有効である。
【0064】
固化後の接着剤50は、膨出頭部50a(図6)が係留部62に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部64の壁34、36、72、74、76、78に面接触するので、接着剤50と端子60′との相互接触面積がさらに大きく確保される。その結果、端子60′の各電気接点14と対応の導体40(図2)との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38(図6)の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。端子60′の接着剤支持部18への接着剤供給作業は、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0065】
図8は、上記した端子60の他の変形例を示す。図示変形例による端子60″では、一対の接着剤支持部18の各々が、流出防止部64に、基部12の第2面12b側に立設される一対の壁80を有している。端子60″は、流出防止部64の壁80の構成以外は、前述した端子60と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
端子60″の各接着剤支持部18の流出防止部64は、基部12の第1面12a側に、前述した壁68を有さず、第1及び第2の壁34、36のみを有している。また、前述した壁70の代りに、基部12の第2面12b側に立設される一対の壁80を有する。それら一対の壁80は、基部12の長手方向へ延びる両側縁12dに沿って配置される。各壁80は、基部12の第2面12bから突出する片持ち梁状要素である。壁80は、基部12の第2面12bに略直交する方向へ、第2面12bから適当な高さ(前述した壁70よりも高い位置)まで突出する。
【0067】
壁34、36、80を有する流出防止部64は、係留部62に与えられた固化前の接着剤48(図6)の流動を制限して、固化前の接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に端子60″では、基部12の第2面12b側に設けた壁80が、前述した壁70よりも一層効果的に接着剤48の流出を防止できるから、茸状に固化した接着剤50の膨出頭部50aを一層確実に形成できる。
【0068】
固化後の接着剤50は、膨出頭部50a(図6)が係留部62に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部64の壁34、36、80に面接触するので、接着剤50と端子60″との相互接触面積がさらに大きく確保される。その結果、端子60″の各電気接点14と対応の導体40(図2)との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38(図6)の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。端子60″の接着剤支持部18への接着剤供給作業は、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0069】
図9は、本発明の第3の実施形態による端子90を示す図、図10は、端子90を対象物の表面に取り付ける手順の一例を示す図である。端子90は、接着剤支持部18の流出防止部92の構成以外は、第2実施形態による端子60と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
端子90は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子90では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部(或いは流動制限部)92とを備える。
【0071】
流出防止部92は、基部12の第1面12a側に立設される第1の壁34と一対の第3の壁68とを有する(図9(b))。第1の壁34は、基部12の第1面12aの側に略L字構造に曲げられて構成されている。また、基部12の中央領域12cに接合される電線接続部22の端部領域26の、開口28に隣接する側の縁部分が、基部12の第1面12a側に立設される流出防止部92の第2の壁36を構成する。
【0072】
流出防止部92はさらに、第2実施形態による端子60が有する壁70の代りに、基部12の第2面12b側に凹設される一対の溝94を有する(図9(a))。それら一対の溝94は、第1の壁34を形成した開口28の内縁と、その反対側で延長部分66を形成した開口28の内縁との、それぞれに近接して配置され、互いに略平行に、かつ第1面12a側の第1及び第2の壁34、36に対し略平行に延設される。各溝94は、基部12の第2面12bと第1面12aとの間を貫通して直線状に延びるスリット状要素である。
【0073】
壁34、36、68及び溝94を有する流出防止部92は、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。特に、溝94は、係留部62に与えられた固化前の接着剤の、特に基部第2面12b上での流動を制限して、固化前の接着剤が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。
【0074】
図示構成では、流出防止部92の溝94は、基部12の材料を局所的に除去することにより形成される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に溝94を打ち抜きにより形成できる。なお、基部12を貫通する溝94の代りに、例えば半抜きにより、基部12を貫通しない有底の溝94を形成することもできる。
【0075】
図10を参照して、端子90を対象物38の表面38aに取り付ける手順の一例を説明する。対象物38の表面38aには、端子90を接続する導体40(図2)が適宜位置に形成されているが、図10においては図示省略する。
【0076】
図6を参照して説明した端子60の取付手順と同様に、まず準備ステップとして、端子90の基部12の第1面12a側の、コンタクト部16及び接着剤支持部18を除く所望箇所(図では、電線接続部22の端部領域26の表面)に、両面接着テープ42を貼付する。或いは、対象物38の表面38aの、端子90の当該所望箇所を固定するに適した位置に、両面接着テープ42を貼付する。
【0077】
次に、端子90を、各コンタクト部16の複数(3個)の電気接点14が、対象物38の表面38aに形成した対応の導体40(図2)に対向する位置及び姿勢に配置して、両面接着テープ42により基部12を対象物表面38aに固定する(図10(a))。このとき、基部12に適当な押圧力Pを加えることにより、基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませて、個々の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体40に接触させる。この押圧力Pは、両面接着テープ42の粘着剤層46に所要の接着力を発揮させるに十分な大きさである。
【0078】
次に、対象物38を端子90の重力方向下側に配置して、両面接着テープ42により対象物38の表面38aに仮止めされた端子90に対し、一対の接着剤支持部18の各々に、液状の接着剤48を供給する。液状の接着剤48は、主として各接着剤支持部18の係留部62の開口28に注入される。開口28を通った液状の接着剤48は、その粘度や対象物表面38aに対する濡れ性等の特性に依存して、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動しようとする。このとき、各接着剤支持部18の流出防止部92の第1、第2及び第3の壁34、36、68が、基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間の空間における接着剤48の流動を制限して、接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。その結果、液状の接着剤48は、対象物表面38aに接した状態で流出防止部64の第1及び第2の壁34、36と第3の壁68の側壁部分68bとの間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力の下で当該領域に貯留される。ここで、第3の壁68の端壁部分68cは、接着剤48の粘度が低かったり供給量が多かったりすることで接着剤48が第1の壁34を越えてコンタクト部16に向かって流出した場合に、そのような接着剤48のコンタクト部16に向かう流出を補助的に防止する。所定量の接着剤48が供給されると、接着剤48は基部12の第2面12b上に溢出する。このとき、各接着剤支持部18の流出防止部92の溝94が、接着剤48を受容することにより、基部12の第2面12b上での接着剤48の流動を制限して、接着剤48が接着剤支持部18から外部に流出することを防止する。その結果、基部第2面12b上に溢出した液状の接着剤48は、流出防止部92の一対の溝94の間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力により、開口28を取り囲む係留部62(延長部分66を含む)に一様に接触して基部12の第2面12bから盛り上がった茸状の形態を呈するに至る(図10(b))。
【0079】
茸状の形態で接着剤48が固化すると、係留部62がその略全体に渡って、固化後の接着剤50の膨出頭部50aに係合する(図10(b))。固化後の接着剤50は、膨出頭部50aが係留部62に接触して定位に係留されると同時に、流出防止部92の壁34、36、68及び溝94に面接触するので、接着剤50と端子90との相互接触面積が十分に大きく確保される。接着剤50の膨出頭部50aが係留部62により接着剤支持部18上で定位に係留されることにより、接着剤50と対象物表面38aとの接着力(及び両面接着テープ42による補助的な接着力)に依存して、端子90が対象物表面38aに取り付けられるとともに、端子90の基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませた状態が維持され、以て、個々の電気接点14と対応の導体40との間の接触圧力P′が維持される。その結果、端子90の各電気接点14と対応の導体40との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物38の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【0080】
端子90によれば、接着剤支持部18に流出防止部92を設けたことにより、接着剤支持部18から外部への液状の接着剤48の流出(すなわち損失)を低減することができる。流出防止部92が有する第1の壁34は、基部12の第1面12aの側でコンタクト部16と開口28との間に配置されるから、端子10を対象物38の表面38aに取り付けるときに、固化前の接着剤48が基部12の第1面12aと対象物表面38aとの間を流動してコンタクト部16に向かって流出することを防止できる。また、開口28を挟んで第1の壁34に対向する第2の壁36を備えているから、接着剤48の供給量を削減しつつ、茸状の形態を呈するように接着剤48を供給できる。したがって、必要最低限の供給量の接着剤48により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50を形成することができる。このような接着剤供給作業は、上記したように、固化した接着剤50と端子90との相互接触面積を十分に大きく確保できるものであって、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。なお、両面粘着テープ42及び接着剤48の素材や特性等は、第1実施形態による端子10に関連して説明したものと同様とすることができる。
【0081】
端子90においては、流出防止部92の第3の壁68が、第1及び第2の壁34、36と協働して開口28を実質的に囲繞するように形成されているから、液状の接着剤48を接着剤支持部18に供給したときに、接着剤支持部18から外部への接着剤48の流出(すなわち損失)を一層効果的に低減することができる。特に、第3の壁68の端壁部分68cは、第1の壁34による流出防止作用を補助するように作用する。さらに、基部12の第2面12bに溝94を設けたから、茸状に固化した接着剤50の膨出頭部50aを確実に形成できる。端子90のこのような接着剤支持部18の構成は、特に、液状の接着剤48の粘度が比較的低い場合に有効である。
【0082】
端子90においても、流出防止部92は、液状の接着剤48の損失を低減しつつ、固化後の接着剤50が所要の係留力を発揮し得る十分な大きさの膨出頭部50aを有するように接着剤48を接着剤支持部18に供給できることを前提に、様々な形状の壁や溝を多様な配置で備えることができる。また、第2実施形態による端子60が有する壁70(76、78、80)と、第3実施形態による端子90が有する溝94との双方を、基部12の第2面12bの適当な位置に適当な個数設けることもできる。
【0083】
上記した各実施形態による端子10、60、90においては、電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16とは別体の電気良導性材料から作製され、端部領域26で基部12の中央領域12cにかしめ等の接合手段により接合されている。一般に、外部の電線に接続される端末部分24を有する電線接続部22は、所要の耐熱性や機械的強度を確保するべくある程度の厚みを有することが要求されるが、基部12及びコンタクト部16は、接触圧力P′を確保するための弾性的な撓みを比較的容易に生じ得る程度に肉薄であることが要求される。基部12及びコンタクト部16と電線接続部22とを別々に作製して相互に接合する上記構成は、このような異なる厚みの要求に応じることを容易にするものである。
【0084】
これに対し、図11及び図12はそれぞれ、上記した厚みの要求に応じつつ、基部12と電線接続部22とを同一の電気良導性材料から一体に作製できるようにした、本発明の第4及び第5の実施形態による端子100、110を示す。端子100、110は、基部12と電線接続部22とを一体化した構成以外は、第2実施形態による端子60(図5〜図8)と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0085】
図11に示す端子100は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子100では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部64とを備える。なお、係留部62及び流出防止部64は、図7に示す変形例による端子60′の係留部62及び流出防止部64の構成を有している。
【0086】
端子100は、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、基部12の中央領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される平板状要素であって、基端22aで基部12に連結されるとともに末端22bが自由端となる片持ち梁状要素である。電線接続部22の先端領域には、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続できる端末部分24が形成される。例えば、対象物表面に取り付けた端子100の電線接続部22に外部の電線を接続することにより、端子100を介して、外部の電線から対象物表面の導体に所望の電流を供給することができる。
【0087】
電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16と同一の電気良導性材料から作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に電線接続部22を打ち抜きかつ折曲して形成できる。このとき、電線接続部22においては板金材料を二重に重ね合わせることで、電線接続部22が基部12及びコンタクト部16よりも大きな厚み(つまり2倍の厚み)を有するように構成できる。
【0088】
図12に示す端子110は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子110では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部64とを備える。
【0089】
係留部62は、図7に示す端子60′の係留部62の延長部分66とは形状及び配置が異なる一対の延長部分112を有している。それら延長部分112は、開口28の対向する一対の内縁に沿って配置され、基部12の第2面12bから適当な高さに突出する片持ち梁状要素である。各延長部分112は、固化後の接着剤50の膨出頭部50a(図10)に食い込むように係合して、膨出頭部50aを定位に強固に係留する。また、流出防止部64は、図7に示す端子60′の流出防止部64の壁34、72、74、76、78とは形状及び配置が異なる一対の壁114を有している。それら壁114は、前述した一対の壁72、74と同等の接着剤流出防止機能を発揮する。流出防止部64に前述した第1の壁34を有さない端子110においては、前述した壁72の端壁部分74cに対応する壁114の端壁部分114aが、コンタクト部16と開口28との間に配置される第1の壁として機能する。
【0090】
端子110は、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、基部12の中央領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される平板状要素であって、基端22aで基部12に連結されるとともに末端22bが自由端となる片持ち梁状要素である。電線接続部22の先端領域には、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続できる端末部分24が形成される。例えば、対象物表面に取り付けた端子110の電線接続部22に外部の電線を接続することにより、端子110を介して、外部の電線から対象物表面の導体に所望の電流を供給することができる。
【0091】
電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16と同一の電気良導性材料から作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に電線接続部22を打ち抜きかつ折曲して形成できる。このとき、基部12の中央領域12cを除く部分(接着剤支持部18を含む)及びコンタクト部16においては、板金材料を圧縮して厚みを削減することで、基部12の一部分とコンタクト部16とが電線接続部22よりも小さな厚みを有するように構成できる。
【0092】
上記した各種実施形態による端子10、60、90、100、110においては、一対のコンタクト部16が、基部12の長手方向両端にそれぞれ設けられるとともに、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられている。この構成は、端子10、60、90、100、110の電気接点14と対象物表面38aの導体40との間の適正な接続状態を、バランス良く安定して維持できるものである。特に、端子10、60、90、100、110を取り付ける対象物表面38aの取付領域が凹状に湾曲している場合に、前述したように基部12の中央領域12cを対象物表面38aに固定することで、接触圧力P′を容易に確保できる。
【0093】
これに対し、図13、図14及び図15はそれぞれ、1つのコンタクト部16及び1つの接着剤支持部18を有する本発明の第6、第7及び第8の実施形態による端子120、130及び140を示す。端子120、130及び140は、コンタクト部16及び接着剤支持部18を単一化した構成以外は、それぞれ、第2実施形態による端子60(図5〜図8)、及び第4実施形態による端子100(図11)及び第5実施形態による端子110(図12)と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0094】
図13に示す端子120は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子120では、単一のコンタクト部16が、基部12の長手方向一端に設けられるとともに、単一の接着剤支持部18が、基部12の長手方向他端領域12cとコンタクト部16との間に設けられる(図13(a))。接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部64とを備える。
【0095】
係留部62は、図5に示す端子60の係留部62の延長部分66とは形状が異なる延長部分122を有している。延長部分122は、基部12の長手方向他端領域12cに隣接する開口28の内縁に沿って配置され、基部12の第2面12bから適当な高さに突出する片持ち梁状要素である(図13(b))。延長部分122は、固化後の接着剤50の膨出頭部50a(図6)に食い込むように係合して、膨出頭部50aを定位に強固に係留する。なお、流出防止部64の構成は、図5に示す端子60の流出防止部64と同一である。
【0096】
端子120は、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、基部12の長手方向他端領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される平板状要素である。電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16とは別体の電気良導性材料から作製され、端末部分24の反対側の端部領域26で基部12の長手方向他端領域12cにかしめ等の接合手段により接合される。
【0097】
図14に示す端子130は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子130では、単一のコンタクト部16が、基部12の長手方向一端に設けられるとともに、単一の接着剤支持部18が、基部12の長手方向他端領域12cとコンタクト部16との間に設けられる(図14(a))。接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部64とを備える。係留部62及び流出防止部64の構成は、図11に示す端子100の係留部62及び流出防止部64と同一である(図14(b))。
【0098】
端子130は、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、基部12の長手方向他端領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される片持ち梁状の平板状要素である。電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16と同一の電気良導性材料から作製される。図示構成では、板金材料を二重に重ね合わせることで、電線接続部22が基部12及びコンタクト部16よりも大きな厚み(つまり2倍の厚み)を有するように構成されている。
【0099】
図15に示す端子140は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子140では、単一のコンタクト部16が、基部12の長手方向一端に設けられるとともに、単一の接着剤支持部18が、基部12の長手方向他端領域12cとコンタクト部16との間に設けられる(図15(a))。接着剤支持部18は、固化前の接着剤が流通可能な開口28を有する係留部62と、係留部62に隣接して配置され、係留部62に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部64とを備える。
【0100】
係留部62は、図12に示す端子110の係留部62の一方の延長部分112に対応する1つの延長部分112を、基部12の長手方向他端領域12cに隣接する開口28の内縁に沿って有している。また、流出防止部64は、図12に示す端子110の流出防止部64の壁114に加えて、図5に示す端子60の流出防止部64の第1の壁34に対応する第1の壁34を有している。さらに流出防止部64は、図9に示す端子90の流出防止部92の一方の溝94に対応する溝94を、基部12の長手方向他端領域12cに隣接する位置に有している(図15(b))。
【0101】
端子140は、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、基部12の長手方向他端領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される片持ち梁状の平板状要素である。電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16と同一の電気良導性材料から作製される。図示構成では、基部12の長手方向他端領域12cを除く部分(接着剤支持部18を含む)及びコンタクト部16において、板金材料を圧縮して厚みを削減することで、基部12の一部分とコンタクト部16とが電線接続部22よりも小さな厚みを有するように構成されている。
【0102】
図13、図14及び図15に示す端子120、130、140はいずれも、単一の接着剤支持部18に流出防止部64を設けたことにより、接着剤支持部18から外部への液状の接着剤48(図6)の流出(すなわち損失)を低減することができるので、必要最低限の供給量の接着剤48により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で茸状に固化した接着剤50(図6)を形成することができる。このような接着剤供給作業は、固化した接着剤50と端子120、130、140との相互接触面積を十分に大きく確保できるものであって、固化前の接着剤48の粘度や作業者の熟練度に関わらず、再現性良く実行できるものである。
【0103】
上記した各種実施形態による端子10、60、90、100、110、120、130、140は、例えば、自動車のリアウインドウに曇り止め用に付設される電熱線の端子として使用できる。リアウインドウの電熱線は一般に、ガラス板に導電性ペーストを所定パターンで印刷することにより形成され、この電熱線の末端に、電源ケーブルを接続するための端子が設置される。端子10、60、90、100、110、120、130、140を使用することで、半田を用いることなく、接着剤によって端子10、60、90、100、110、120、130、140を電熱線に長時間に渡り安定して接続することができる。
【0104】
上記した各種実施形態による端子10、60、90、100、110、120、130、140は、例えば、プリント配線板等の基板に表面実装して使用することもできる。また、アルミニウムや導電性セラミックスのような、半田による接合が困難な導体に対しても、端子10、60、90、100、110、120、130、140を容易かつ確実に接続することができる。
【符号の説明】
【0105】
10、60、90、100、110、120、130、140 端子
12 基部
14 電気接点
16 コンタクト部
18 接着剤支持部
20 腕部分
22 電線接続部
28 開口
30、62 係留部
32、64、92 流出防止部
34、36、52、68、72、74、114 壁(第1面)
48 接着剤(固化前)
50 接着剤(固化後)
54 囲壁
66、112、122 延長部分
70、76、78、80 壁(第2面)
94 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側の第1面と第2面とを有する基部と、
前記基部から延長され、前記基部の前記第1面から突出した位置に電気接点を有するコンタクト部と、
前記コンタクト部とは別に前記基部に設けられ、前記基部を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部とを具備し、
前記接着剤支持部は、
固化前の接着剤が流通可能な開口を有するとともに該開口を通って固化した該接着剤に係合して該接着剤を係留できる係留部と、
前記係留部に隣接して配置され、前記係留部に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して該固化前の接着剤が前記接着剤支持部から流出することを防止できる流出防止部とを具備し、
前記流出防止部は、前記基部の前記第1面の側に略L字構造に曲げられて前記コンタクト部と前記開口との間に配置される第1の壁を有する、
端子。
【請求項2】
互いに反対側の第1面と第2面とを有する基部と、
前記基部から延長され、前記基部の前記第1面から突出した位置に電気接点を有するコンタクト部と、
前記コンタクト部とは別に前記基部に設けられ、前記基部を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部とを具備し、
前記接着剤支持部は、
固化前の接着剤が流通可能であり前記基部と同一平面にある開口を有するとともに、該開口を通って固化した該接着剤に係合して該接着剤を係留できる係留部と、
前記係留部に隣接して配置され、前記係留部に与えられた固化前の接着剤の流動を制限して該固化前の接着剤が前記接着剤支持部から流出することを防止できる流出防止部とを具備し、
前記流出防止部は、前記基部の前記第1面の側に立設されて前記コンタクト部と前記開口との間に配置される第1の壁を有する、
端子。
【請求項3】
前記流出防止部は、前記開口を挟んで前記第1の壁に対向して配置される第2の壁を有する、請求項1又は2に記載の端子。
【請求項4】
前記流出防止部は、前記第1の壁及び前記第2の壁と協働して前記開口を実質的に囲繞する第3の壁を有する、請求項3に記載の端子。
【請求項5】
前記流出防止部は、前記第1の壁を一体に含んで前記開口を連続して囲繞する1つの囲壁を有する、請求項1又は2に記載の端子。
【請求項6】
前記流出防止部は、前記基部の前記第2面の側に立設される壁を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の端子。
【請求項7】
前記流出防止部は、前記基部の前記第2面に凹設される溝を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子。
【請求項8】
前記基部に一体に設けられる電線接続部をさらに具備する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の端子。
【請求項9】
前記基部と前記コンタクト部と前記電線接続部とが同一の板金材料から作製され、前記電線接続部は、該板金材料が重ね合わされて、前記基部よりも大きな厚みを有する、請求項8に記載の端子。
【請求項10】
前記基部と前記コンタクト部と前記電線接続部とが同一の板金材料から作製され、前記基部の一部分と前記コンタクト部とは、該板金材料が圧縮されて、前記電線接続部よりも小さな厚みを有する、請求項8に記載の端子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−248419(P2012−248419A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119447(P2011−119447)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】