説明

端子

【課題】導線に設置されて使用される端子において、導線の腐食を防止し、圧着部での電気抵抗値の上昇を防止し、圧着部での固着力の低下を防止する。
【解決手段】第1の金属材料で構成された地金部5と、第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第2の金属材料で構成され、地金部5の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた中間層7と、第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第3の金属材料で構成され、中間層7の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた表面層9とを有する端子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に係り、特に、ケーブルの端部に設置されて使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅もしくはこの合金で構成されている電線(ケーブル)の端部に、銅もしくはこの合金で構成された圧着端子を設け、この圧着端子を別の機器の端子に接続し、上記電線を上記別の機器に接続している。
【0003】
また、電線の軽量化等のために、電線を、銅もしくはこの合金に代えて、アルミニウムもしくはこの合金で構成している場合がある。上記従来の技術に関連する文献としてたとえば、特許文献1を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−276792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線(導線)をアルミニウムもしくはこの合金で構成し、圧着端子を銅もしくはこの合金で構成すると、水が圧着部(圧着端子と電線との係合部)に入ったときに、異金属の電位差によるガルバニック腐食が発生することがある。そして、上記電線の腐食や上記圧着部での電気抵抗値の上昇や固着力(圧着端子と電線との結合力)の低下が生ずるおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、導線に設置されて使用される端子において、導線の腐食を防止し、圧着部での電気抵抗値の上昇を防止し、圧着部での固着力の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、第1の金属材料で構成された地金部と、前記第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第2の金属材料で構成され、前記地金部の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた中間層と、前記第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第3の金属材料で構成され、前記中間層の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた表面層とを有する端子である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の端子において、前記端子は、導線の端部で前記導線に設置されて使用される圧着端子であり、前記中間層と前記表面層とは、前記導線に接触する部位に設けられている端子である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載に端子において、前記第1の金属材料は、銅もしくはこの合金であり、前記第2の金属材料は、鉄もしくはこの合金、または、鉛もしくはこの合金、または、錫もしくはこの合金、または、ニッケルもしくはこの合金、亜鉛もしくはこの合金であり、前記第3の金属材料は、アルミニウムもしくはこの合金である端子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導線に設置されて使用される端子において、導線の腐食を防止し、圧着部での電気抵抗値の上昇を防止し、圧着部での固着力の低下を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る圧着端子をケーブルに設置した状態を示す斜視図である。
【図2】圧着端子の導線圧着部とのこの近傍の部位を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る端子(たとえば、電線3の端部で電線3に一体的に設置されて使用される圧着端子)1は、地金部5と中間層7と表面層9とを備えて構成されている。中間層7と中間層9とは地金部5に2重のめっきすることで設けられている。
【0013】
地金部5は、第1の金属材料(たとえば、銅もしくはこの合金)で構成されている。中間層7は、第2の金属材料(地金部5に直接めっき可能な材料;たとえば、鉄もしくはこの合金)で構成されている。
【0014】
なお、第2の金属材料として、第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さいもの、たとえば、鉛もしくはこの合金、または、錫もしくはこの合金、または、ニッケルもしくはこの合金、または、亜鉛もしくはこの合金のいずれかを採用してもよい。
【0015】
中間層7は、地金部5の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられている。表面層9は、第3の金属材料(たとえば、アルミニウムもしくはこの合金)で構成されている。
【0016】
なお、第3の金属材料として、アルミニウムもしくはこの合金代えて、第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい材料(地金部5に直接めっきすることはできないが中間層7には直接めっき可能な材料)で構成されていてもよい。表面層9は、中間層7の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられている。
【0017】
圧着端子1を電線(導線)3に設置すると、表面層9が第4の金属材料(たとえば、アルミニウムもしくはこの合金)で構成された電線3に接触するようになっている。第3の金属材料の標準電極電位の値と第4の金属材料の標準電極電位の値とはお互いが等しいか、もしくは、ガルバニック腐食が起こらない程度の僅かな差になっている。
【0018】
また、圧着端子1では、中間層7と表面層9とが、たとえば、電線3に接触する部位(導線圧着部)19、もしくは、導線圧着部19とこの近傍に設けられている。
【0019】
さらに詳しく説明すると、圧着端子1は、ケーブル11に設置されて使用されるようになっている。ケーブル11は、電線(たとえば、アルミニムもしくはこの合金で構成された電線)3とこの電線3を被覆している被覆体(絶縁性を備えた合成樹脂等の材料で構成された被覆体)13とを備えて構成されており、圧着端子1が設置されるケーブル11の端部では所定の長さにわたって被覆体13が除去されて電線3が露出している。
【0020】
圧着端子1は、電極接続部15とケーブル圧着部17とを備えて構成されている。電極接続部15は、別の機器の端子(図示せず)に接続される部位である。ケーブル圧着部17は、ケーブル11に係合する部位である。ケーブル圧着部17は、導線圧着部(電線圧着部;端子圧着部)19と被覆体圧着部21とを備えて構成されている。導線圧着部19は、圧着端子1をケーブル11に設置したときに、ケーブル11の端部で露出している電線3に係合する部位であり、被覆体圧着部21は、圧着端子1をケーブル11に設置したときに、露出している電線3の近傍でケーブル11の被覆体13に係合する部位である。
【0021】
圧着端子1の地金部5は、平板状の素材を所定形状に加工(たとえば打ち抜き加工)したの後、電極接続部15とケーブル圧着部17との境界のところでたとえば90°曲げることで生成されている。
【0022】
平板状の素材を所定形状に加工し終えた状態では、一端部が半円状になっている所定の幅の部位(第1の部位)23と、第1の部位23の他端部側で第1の部位23につながっている第2の部位25と、第2の部位25の他端部側(第1の部位23と反対側)で第2の部位25につながっている第3の部位27と、第3の部位27の他端部側(第2の部位25と反対側)で第3の部位27につながっている第4の部位29とを備えた形状になっている。第1の部位23の幅と第3の部位27の幅の幅とはたとえばお互いに等しくなっている。第2の部位25の幅は、第1の部位23の幅よりも広くなっている。第4の部位29の幅は、第2の部位25の幅と等しいかもしくは第2の部位25の幅よりも広くなっている。
【0023】
圧着端子1の地金部5の90°の曲げは、第2の部位25の近傍における第1の部位23の箇所でなされている。したがって、第1の部位23のうちで、90°の曲げ線を境にして、第2の部位25とは反対側に位置している一部分が電極接続部15を構成している。また、第2の部位25が、導線圧着部19を構成し、第4の部位29が、ケーブル圧着部17を構成している。
【0024】
電極接続部15には、圧着端子1が別の機器の端子に接続されるときに使用される貫通孔31が設けられている。
【0025】
導線圧着部19には、導線圧着部19が電線3に係合したときに電線3のずれを防止するために凹部33が形成されている。
【0026】
地金部5が形成され後、めっきによって中間層7が設けられる。中間層7は、たとえば、矩形状の第2の部位25(凹部33を含む)にのみに、もしくは、第2の部位と第2の部位25の近傍における第1の部位23の一部と第3の部位27の一部にのみ設けられている。さらには、中間層7は、第2の部位25等の厚さ方向の一方の面(電極接続部15が曲がって延出している側の面とは反対側の面;図2に現れている面)にのみ設けられている。
【0027】
なお、凹部33は、細長い直方体状に形成されている。これにより、凹部33の開口部では、導線圧着部19の肉部の角度が90°になっているが、凹部33の開口部で導線圧着部19の肉部の角度を鈍角にしてもよい。すなわち、凹部33の形状を四角錐台の形状にしてもよい。凹部33の形状を四角錐台の形状にした場合、凹部33の矩形状の開口部が、凹部33の矩形状の底部よりも大きくなっているものとする。
【0028】
中間層7が設けられた後、中間層7の表面にのみに、めっきによって表面層9が設けられている。
【0029】
このようにして生成された圧着端子1をケーブル11に設置する場合には、ケーブル11の端部で露出している電線3を導線圧着部19のところに配置し(表面層9と電線3とがお互いに接触するように配置し)、露出している導線3の近傍に位置している被覆体13を被覆体圧着部21のところに配置する。そして、一対の導線圧着部19を一対の筒状にかしめ、一対の被覆体圧着部21を一対の筒状にかしめることで、圧着端子1がケーブル11に一体的に設置される。これにより、ケーブル11は、電極接続部15とは反対側に延出している。
【0030】
なお、圧着端子1がケーブル11に設置された状態では、電線3は圧着端子1の表面層9のみに接触しており、電線3が地金部5に直接接触していることは無い。
【0031】
圧着端子1によれば、ケーブル11に設置されたときに、アルミニムもしくはこの合金で構成された電線3と銅もしくはこの合金で構成された圧着端子1の地金部5とが直接接触することがなく、中間層7と表面層9とを介して、圧着端子1がケーブル11の電線3に係合する(電気的に接続される)ようになっているので、電線3の腐食を防止し、導線圧着部19での電気抵抗値の上昇を防止し、導線圧着部19での固着力の低下を防止することができる。
【0032】
すなわち、圧着端子1がケーブル11に設置されたとき、圧着端子1の導線圧着部19に設けられている表面層9がケーブル11の電線3に接触するのであるが、圧着端子1の導線圧着部19の表面層9がアルミニウムもしくはこの合金で構成されており、電線3もアルミニウムもしくはこの合金で構成されているので、圧着端子1の導線圧着部19とケーブル11の表面層9との間の電位差がほぼ無くなっている。したがって、圧着端子1がケーブル11に設置された後、圧着端子1の導線圧着部19等の箇所に水が入り込んでも、カルバニック腐食が発生せず、電線3の腐食を防止し、導線圧着部19での電気抵抗値の上昇を防止し、導線圧着部19での固着力の低下を防止することができる。
【0033】
また、圧着端子1の地金部5に、めっきによってアルミニウムもしくはこの合金を直接設けることは、アルミニウムもしくはこの合金の標準電極電位と銅もしくはこの合金の標準電極電位との差がありすぎることにより、不可能である。しかし、中間層7として鉄もしくはこの合金を用いたことで、圧着端子1の地金部5にアルミニウムもしくはこの合金で構成された表面層9を設けることが可能になっている。
【0034】
また、ケーブル11の電線3をアルミニムもしくはこの合金で構成した場合、ガルバニック腐食を防止するために、圧着端子1の全体をアルミニウムもしくはこの合金で構成することも考えられる。しかし、圧着端子1の全体をアルミニウム等で構成すると、圧着端子1の靭性や弾性係数が低下し、圧着端子1でケーブル11の端部を保持することが困難になる。すなわち、圧着端子1の導線圧着部19や被覆体圧着部21でのバネ接点部で十分な接触荷重(ケーブル11の十分な保持力)を確保することができない場合がある。
【0035】
しかし、圧着端子1の地金部5を銅もしくはこの合金で構成することで、靭性や弾性係数が高まり、圧着端子1でケーブル11を確実に保持することができるようになる。
【0036】
ところで、圧着端子1では、すでに理解されるように、地金部5を構成している第1の金属材料の標準電極電位の値は、水素電極の電位の値(0V)に対してたとえばプラスの値になっている。
【0037】
中間層7を構成している第2の金属材料の標準電極電位の値は、水素電極の電位の値に対してたとえばマイナスの値になっている。第2の金属材料の標準電極電位の絶対値は、第1の金属材料の標準電極電位の絶対値に対して、30%〜250%程度の値になっている。
【0038】
また、表面層9を構成している第3の金属材料の標準電極電位の値は、第2の金属材料の標準電極電位の値よりもさらに小さくなっている。さらに、第3の金属材料の標準電極電位の絶対値は、第1の金属材料の標準電極電位の絶対値に対して、400%〜700%程度の値になっている。
【0039】
なお、上記説明では、圧着端子1に中間層7と表面層9とを設けてあるが、圧着端子1に中間層7と表面層9とを設けることに代えてもしくは加えて、ケーブル11の電線3に中間層7と表面層9とを設けてあってもよい。そして、圧着端子1をケーブル11に設置したときに、ケーブル11の電線3の部位であって中間層7と表面層9とが設けられている部位が、圧着端子1の導線圧着部19に接触する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 圧着端子(端子)
3 電線(導線)
5 地金部
7 中間層
9 表面層
19 導線圧着部(導線に接触する部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料で構成された地金部と、
前記第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第2の金属材料で構成され、前記地金部の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた中間層と、
前記第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第3の金属材料で構成され、前記中間層の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた表面層と、
を有することを特徴とする端子。
【請求項2】
請求項1に記載の端子において、
前記端子は、導線の端部で前記導線に設置されて使用される圧着端子であり、
前記中間層と前記表面層とは、前記導線に接触する部位に設けられていることを特徴とする端子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載に端子において、
前記第1の金属材料は、銅もしくはこの合金であり、
前記第2の金属材料は、鉄もしくはこの合金、または、鉛もしくはこの合金、または、錫もしくはこの合金、または、ニッケルもしくはこの合金、亜鉛もしくはこの合金であり、
前記第3の金属材料は、アルミニウムもしくはこの合金であることを特徴とする端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−33656(P2013−33656A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169460(P2011−169460)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】