説明

端末キャップ

【課題】防水性に優れた端末処理を簡便に実施可能で、且つ、端末からの脱落防止を図り得る端末キャップを提供すること。
【解決手段】導体が露出している絶縁被覆電線の端末に前記導体を覆うように外嵌させて用いられ、前記端末が収容される有底筒形のキャップ本体が備えられている端末キャップであって、前記端末を収容させた際に前記導体と接触させ得るように液状接着剤が前記キャップ本体の内部に収容されており、該液状接着剤が金属との接触によって硬化する硬化型接着剤であることを特徴とする端末キャップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体が露出している絶縁被覆電線の端末に前記導体を覆うように外嵌させて用いられる端末キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルメーカーにて製造される電力ケーブルなどの絶縁被覆電線は、所定の長さに切り分けられてドラムに巻き取られるなどしてユーザーに出荷されている。
なお、絶縁被覆電線は、ケーブルメーカーでの出荷までの保管やユーザーでの使用までの保管に際して屋外保管される場合があることから導体を露出させた切断端面から雨水等が浸入することを防止すべく、該絶縁被覆電線の端末を収容可能な有底筒形の端末キャップを前記端末に外嵌させる端末処理が切り分け時において実施されたりしている。
【0003】
また、絶縁被覆電線の端末処理は、絶縁被覆電線の切り分け時のみならず、実際の使用時においても行われている。
例えば、屋内配線に用いられるような導体サイズの小さな2本の絶縁被覆電線を結線するのに際しては、それぞれの端末において絶縁被覆を剥ぎ取って導体を数mmから十数mmにわたって露出させ、これらを撚り合わせてハンダ付けする方法や、圧着スリーブの一方の開口からこれら2本の導体を挿入し、この状態で圧着スリーブを圧着工具でかしめる方法などが採用されており、この結線された部分への接触による感電や漏電を防止すべく、結線された端末に端末キャップを被せて絶縁性を付与する端末処理が行われている。
【0004】
これらの端末処理においては、端末キャップと絶縁被覆電線との隙間を通って外部から水が浸入したり、端末キャップが脱落して導体が被水したりするようなことがあるとその目的が損なわれてしまうことから端末に外嵌させた端末キャップの開口端近傍にビニールテープを巻き付けて絶縁被覆電線との隙間を塞ぐとともに端末キャップの脱落を防止する処理が施されたり、端末を防水パテで覆い、さらにその上からビニールテープを巻き付ける処理が施されたりしている。
しかし、このような端末処理方法を実施するには多大な手間を必要とし、煩雑な作業が必要になるおそれを有する。
また 複数の素線が撚り合わされてなる集合導体に絶縁被覆がなされた絶縁被覆電線などにおいては、素線間の空隙にまで防水パテを進入させて防水を行うことは実質上不可能であることから、僅かでも水を浸入させてしまうと、この水が素線間を通って絶縁被覆電線の奥深くにまで浸入してしまうおそれを有する。
【0005】
このことに対し、例えば、下記特許文献1においては弾性を有するゴム等の素材からなる有底円筒形のキャップ本体を有する端末キャップが記載されており、該キャップ本体の内周面に複数のリング状の突起部を形成させた端末キャップを使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−233134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような端末キャップにおいては、端末を収容させてリング状の突起部を前記端末によって拡張させた際に作用する復元力で防水性と端末からの脱落防止効果とが発揮されるため一本の絶縁被覆電線の端末処理であれば簡便に実施することが可能である。
しかし、複数本の絶縁被覆電線の導体を結線したような部分に端末処理を施すのに際しては、突起部の先端をこれら複数の絶縁被覆電線の表面に密着させることが難しいため、このような端末キャップで十分な防水性を付与することは実質上困難である。
【0008】
しかも、一本の絶縁被覆電線の端末処理を行うのに際してもこのような端末キャップにおいては防水性が前記突起部と電線表面との接触圧力(突起部の復元力)に依存されるとともに脱落防止効果が前記突起部と電線表面との間に作用する摩擦力に依存されるため、これらの効果を向上させようとすると自然状態における突起部の径を絶縁被覆電線に比べてより小さなものにするか、突起部をより高弾性なものにするかしなければならず、端末をキャップ本体に収容させるのに際して強い力で圧入する必要が生じることになる。
即ち、従来の端末キャップにおいては、防水性に優れた端末処理を簡便に実施することが困難で、しかも、防水効果を長期持続させることが困難であるという問題を有している。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、防水性に優れた端末処理を簡便に実施可能で、且つ、端末からの脱落防止を図り得る端末キャップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための端末キャップにかかる本発明は、導体が露出している絶縁被覆電線の端末に前記導体を覆うように外嵌させて用いられ、前記端末が収容される有底筒形のキャップ本体が備えられている端末キャップであって、前記端末を収容させた際に前記導体と接触させ得るように液状接着剤が前記キャップ本体の内部に収容されており、該液状接着剤が金属との接触によって硬化する硬化型接着剤であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の端末キャップは、絶縁被覆電線の端末が収容されるキャップ本体の内部に液状接着剤が収容されていることから前記端末を収容させた際に当該端末と前記端末キャップとの間に前記液状接着剤を充満させ得る。
しかも、前記液状接着剤が金属との接触によって硬化する性質を有していることから導体との接触によって硬化させることができ、該端末キャップを絶縁被覆電線の端末に外嵌させるだけで前記端末とキャップ本体の内面とを接着させ得るとともに水分の浸入を防止させうる。
即ち、本発明によれば端末キャップを絶縁被覆電線の端末に外嵌させて内部の液状接着剤を硬化させるという簡便な方法で絶縁被覆電線の端末に防水性を付与することができ、当該防水効果を長期持続させ得る。
また、例えば、集合導体を備えた絶縁被覆電線の端末処理に本発明の端末キャップを用いた場合には、前記集合導体の素線間にまで液状接着剤を侵入させて絶縁被覆電線の内部に水が浸入するおそれを抑制させる効果を発揮させうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態の端末キャップの概略平面図(a)及び概略正面図(b)。
【図2】図1の端末キャップの変形例を示す概略平面図(a)及び概略正面図(b)。
【図3】第一の実施形態の端末キャップを用いた端末処理方法を示す概略図。
【図4】第二の実施形態に係る端末キャップの概略正面図。
【図5】端末処理における第三の実施形態に係る端末キャップの内部の様子を示した概略正面図。
【図6】端末処理における第四の実施形態に係る端末キャップの内部の様子を示した概略正面図。
【図7】端末処理における第五の実施形態に係る端末キャップの内部の様子を示した概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
図1は、第一の実施形態に係る端末キャップの平面視における様子と正面視における様子とを示す概略図であり、これらの図に示すように本実施形態に係る端末キャップ1は、一端側を開口端とし、他端側を閉塞端とした有底円筒状のキャップ本体10と該キャップ本体10を内部で仕切り、閉塞端側に液状接着剤を密封状態で収容させるための封止材20とを有している。
なお、図1(a)は、このキャップ本体10を開口端10aが上端となるように端末キャップ1をたて置きにした際における概略平面図であり、図1(b)は概略正面図である。
【0014】
前記封止材20は、キャップ本体10の上下方向中間位置において水平に膜を張ったようにして設けられており、キャップ本体10を上下に仕切るように配されている。
即ち、前記キャップ本体10は、下端側が閉塞端10bとなっているために前記封止材20によってその底部に密閉空間10xが形成されており、本実施形態に係る端末キャップ1は、この密閉空間10xに液状接着剤が封止されて収容されている。
【0015】
本実施形態における前記キャップ本体10は、特に限定するものではないが、液状接着剤によって物性に影響を受けない材質のものが好ましく、且つ、水分やガスを実質的に透過させない材質で形成されていることが好ましい。
前記キャップ本体10の形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリ塩化ビニルなどの汎用樹脂材料やPBT、PPSなどの耐熱樹脂材料が挙げられる。
また、本実施形態の端末キャップが、自動車などの振動を生じる機器内で用いられる場合などにおいては、該端末キャップによって端末処理した絶縁被覆電線が振動し前記端末キャップが周囲の部材類に衝突して大きな打音を発生させるおそれを有する。
さらに、上記のような振動が生じた場合にはキャップ本体10の口元において絶縁被覆電線に局所的な応力が加わったり、絶縁被覆電線の絶縁被覆がキャップ本体10の口元と擦れあって磨耗したりするおそれも有する。
このようなことを防止する意味においては、上記例示の材料よりも軟質な材料でキャップ本体10を形成させても良い。
このようなキャップ本体10を形成させるための軟質材料としては、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(商品名「ハイパロン」)、熱可塑性エラストマー(商品名「ミラストマー」など)が挙げられる。
また、前記封止材20についても、特に限定されるものではなく、ゴムシート、樹脂シート、金属箔、金属箔と樹脂シートとが積層された金属ラミネート樹脂シートなどによって形成させることができる。
【0016】
なお、本実施形態においては、前記液状接着剤として金属との接触によって硬化可能な嫌気性接着剤30が前記密閉空間10x(以下「液状接着剤収容室10x」ともいう)に収容されているため、前記封止材20としては、ポリエチレンフィルム等の酸素透過性に優れた材質のものを採用することが好ましい。
そして、絶縁被覆電線の端末を収容させるのに際して該端末で前記嫌気性接着剤の封止状態を容易に解除させて該嫌気性接着剤を導体に接触させ得るように図1(a)に示すように前記封止材20には、ハーフカットなどによって薄肉にさせた線状の脆弱部20aを設け、当該脆弱部20aを他の部分よりも断裂容易にさせておくことが好ましい。
特に、前記脆弱部20aは、図1(a)に示すように平面視における封止材20の中央部から放射状に延びるように形成させることが好ましい。
また、ハーフカットに代えて封止材20を貫通するミシン目を設けて線状の脆弱部を形成させることも可能である。
【0017】
なお、前記嫌気性接着剤30としては、嫌気状態で金属との接触により触媒反応を起こして硬化反応を生じるごく一般的なものを採用することができる。
ここで、当該嫌気性接着剤30として粘度が高く十分にその流動性が抑制されているものを採用するのであれば、嫌気性接着剤が不用意に漏洩することを防止するために封止材20をキャップ本体内に設ける必要はなく、端末キャップを前記封止材20の無い態様とすることもできる。
即ち、本実施形態における液状接着剤としては、液状接着剤収容室10xに絶縁被覆電線の端末を導入させた際に流動性を示すものであればゲル状のものも採用可能である。
また、粘度の低い嫌気性接着剤を採用する場合でも、該嫌気性接着剤を含浸可能で、且つ、端末等で圧縮されることによって、一旦含浸させた嫌気性接着剤を再び外部に滲出可能なコットンボールや布帛といった繊維部材、又は、スポンジなどの多孔質材を併せてキャップ本体内に収容させ、これらの部材に嫌気性接着剤を含浸保持させてキャップ本体内に収容させることで端末キャップ1を封止材20を用いないシンプルな構造とすることができ、製造容易なものとすることができる。
【0018】
さらには、図2に示すように、キャップ本体10の一部を縮径させて括(くび)れ部10yを設けて該括れ部10yによって封止材20に代わる機能を発揮させることも可能である。
即ち、括れ部10yよりも奥側を液状接着剤収容室10xとし、絶縁被覆電線の端末処理において該端末キャップ1の開口端10aより絶縁被覆電線の端末を挿入して該端末の先端で押圧することにより括れ部10yを拡径して前記端末を液状接着剤収容室10xに到達させることができる。
【0019】
このような端末キャップ1は、絶縁被覆電線の端末を収容させる液状接着剤収容室10xに嫌気性接着剤30が収容されていることから前記端末を液状接着剤収容室10xに導入させた際に、その容積分の嫌気性接着剤30を液状接着剤収容室10xから溢れさせることができ、この溢れ出た嫌気性接着剤30を当該端末キャップと絶縁被覆電線との間に充満させ得る。
しかも、前記嫌気性接着剤30が導体などの金属との接触によって硬化反応を示すことから、本実施形態の端末キャップ1は、絶縁被覆電線の端末に外嵌させるだけで該端末に接着固定され、しかも、硬化した嫌気性接着剤30によって防水性が発揮されることになる。
また、摩擦力だけで絶縁被覆電線の端末に固定される従来の端末キャップに比べて脱落防止効果に優れていることから前記防水効果を長期持続させ得る。
【0020】
なお、例えば、低い粘度の嫌気性接着剤を採用する場合には、端末処理を行う絶縁被覆電線の導体に複数の素線を集合させてなる可とう導体が採用されているような場合でも、毛細管現象を利用して素線間に嫌気性接着剤を含浸させることができ、該嫌気性接着剤を硬化させた後に、仮に、端末キャップの内部に水が浸入するようなことがあっても、素線間を通って絶縁被覆電線内に水が浸透されることを抑制させ得る。
このような点においては、常温において100mPa・s以下程度の低粘度の嫌気性接着剤を採用することが好ましい。
【0021】
なお、このような嫌気性接着剤としてはアクリル系モノマーの重合反応によって硬化するタイプのものを好ましく採用することができ、アクリル系嫌気性接着剤としては、例えば、エーテル型のものやエステル型のものが採用可能である。
この内、エーテル型のアクリル系嫌気性接着剤としては、例えば、テトラエチレングリコールジメタクリレートに過酸化物を添加したもの等が挙げられ、エステル型のアクリル系嫌気性接着剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ブタンジオール1,4−ジメタクリレート、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールジメタクリレート、末端にメタクリレート基を含むポリエステルアクリレート、エポキシオリゴマーをベースにしてアクリレート基やメタクリレート基を末端に導入した構造のエポキシアクリート等の、多価アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに過酸化物を添加したもの等が挙げられる。
【0022】
このような嫌気性接着剤としては、東亞合成株式会社より「アロンタイト」の商品名で市販のもの、住友スリーエム株式会社より「スコッチ・ウェルド」の商品名で市販のものヘンケルジャパン株式会社より「ロックタイト」の商品名で市販のものを採用することができる。
【0023】
このような嫌気性接着剤は、一般に常温であっても短時間で硬化するので、作業時間を大幅に短縮することができる。
しかも、嫌気性接着剤は、その特性として、空気から遮断され、金属イオンと反応することにより硬化するため、端末キャップの状態で長期保管が可能である。
即ち、上記のような実施形態に示した端末キャップを用いることにより防水性に優れた端末処理を簡便に実施することができる。
【0024】
なお、本実施形態の端末キャップにおいては、キャップ本体の内径、深さ等といった端末を収容するための内部空間の広さや形状が特に限定されるものではなく、収容する絶縁被覆電線の導体露出部分を覆うことができるものであれば特にその大きさや形状に限定が加えられるものではない。
ただし、端末を収容させた際に嫌気性接着剤をある程度以上の嫌気状態にさせないと金属との接触による反応だけでは硬化に時間を要するおそれがあることから、キャップ本体の内径は、該キャップ本体の内面と端末との間に過度に広い隙間が形成されない程度に調整しておくことが好ましい。
【0025】
また、キャップ本体の内容積に占める嫌気性接着剤の割合や、液状接着剤収容室の内容積に占める嫌気性接着剤の割合等も、特に限定されるものではない。
ただし、液状接着剤収容室を嫌気性接着剤で充満させてしまうと酸素が欠乏して使用する前に嫌気性接着剤が硬化反応を開始してしまうおそれを有することから、液状接着剤収容室には、ある程度の空気とともに嫌気性接着剤を封止しておくことが好ましい。
また、絶縁被覆電線の端末を収容させた際に、嫌気性接着剤がキャップ本体の開口端から溢れ出してしまうようでは端末処理の作業性に問題を生じさせるおそれを有することから、端末キャップに収容させる嫌気性接着剤の量は、端末の先端がキャップ本体の底(閉塞端)に到達した時点においてもキャップ本体の開口端から溢れ出すことがないように調整しておくことが好ましい。
【0026】
このような端末キャップ1を用いた端末処理方法の一例を、図3を参照しつつ説明する。
この図3は、図1に示した端末キャップ1を用いての端末処理方法を示す概略正面図であり、符号40、及び、符号50が本実施形態における端末キャップ1を用いて端末処理する絶縁被覆電線を表している。
【0027】
この図にも示されているように、本実施形態における端末処理方法は、以下の(イ)〜(ヘ)の各工程を順に行って実施することができる。

(イ)2本の絶縁被覆電線40,50の各端末における絶縁被覆40a,50aをワイヤーストリッパー等で除去して導体40b,50bの口出しを行う口出し工程;
(ロ)前記口出し工程で口出しされた導体40b,50bを揃えて圧着スリーブ60の一方の開口から挿入して他方の開口からその先端部が突出するように前記導体40b,50bを圧着スリーブ60に挿通させるスリーブ取付工程;
(ハ)絶縁被覆電線40,50の各端末において導体40b,50bを挿通させた圧着スリーブ60を圧着工具でかしめ、該圧着工具でかしめられた圧着スリーブ60’で絶縁被覆電線40,50の導体40b,50bを電気的に接続した状態で固定(結線)する圧着工程;
(ニ)前記端末キャップ1を前記開口端10aが上方となるように支持し、前記圧着スリーブ60’によって一体化された2本の絶縁被覆電線40,50の端末を前記端末キャップ1の上方から挿入して前記端末キャップ1を該端末に外嵌する外嵌工程;
(ホ)前記端末による押圧によって前記封止材20の脆弱部20aに断裂を生じさせるとともに該端末を端末キャップ1のさらに奥深く侵入させることにより嫌気性接着剤30の液面30aを上昇させて嫌気性接着剤30を絶縁被覆40a,50aがなされている部分にまで到達させる圧入工程;
(へ)この状態を一定時間保持させて導体や圧着スリーブとの接触によって嫌気性接着剤30に硬化反応を生じさせ、必要に応じて端末キャップの外側から加熱するなどして嫌気性接着剤を硬化させる硬化工程。

このような端末処理方法を実施することで、硬化させた嫌気性接着剤でキャップ本体10の内面と絶縁被覆電線40,50の外表面との間に水分が侵入することを防止し、防水性を付与するとともに端末キャップ1を前記絶縁被覆電線40,50の端末に接着固定させ当該防水効果を長期維持可能なものとすることができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、液状接着剤として嫌気性接着剤30を端末キャップ1の内部に収容させているために、該嫌気性接着剤30の硬化を促進させるべく、予め、絶縁被覆電線40,50の端末に金属粉末などを付着させた上で前記外嵌工程(ニ)以降の工程を実施させるようにしてもよい。
【0029】
(第二実施形態)
また、絶縁被覆電線40,50に予め金属粉末を付着させておく方法に代えて、例えば、図4(a)に示すような第二の実施形態に係る端末キャップ1を用いて前記外嵌工程(ニ)以降の工程を実施させるようにしてもよい。
この第二実施形態にかかる端末キャップ1は、前記嫌気性接着剤30が収容された空間とは別に、金属粉末や金属繊維といった少なくとも表面の一部が金属で形成された部材70(以下「金属部材70」ともいう)を収容する金属部材収容室11xを備えており、該金属部材収容室11xが前記封止材20を介して液状接着剤収容室10xの手前(上方)側に設けられている。
従って、前記圧入工程において金属部材70をともなって端末を液状接着剤収容室10xに突入させることができ、嫌気性接着剤30に金属部材70を混合させることによってすばやく硬化反応を完了させることができる。
【0030】
即ち、この第二実施形態における端末キャップを用いることでより簡便な端末処理方法を実施することができる。
なお、上記のような効果を得るためには、金属部材収容室11xを、必ずしも液状接着剤収容室10xと隣接させる必要はなく、図4(b)に示すように金属部材収容室11xと液状接着剤収容室10xとの間に別空間を設けてもよい。
さらに、上記のような効果を得るためには、金属部材収容室11xを、液状接着剤収容室10xの手前側に設ける必要もなく、図4(c)に示すように液状接着剤収容室10xよりも端末の挿入方向奥側に金属部材収容室11xを設け、端末を収容させるのに際して該端末の先端を前記金属部材収容室11xに到達させるようにして端末処理方法を実施すれば、図4(a)、(b)に示した端末キャップを用いるのと同様に、よりすばやく嫌気性接着剤の硬化反応を完了させることができる。
【0031】
(第三実施形態)
さらには、図5に示すような第三の実施形態に係る端末キャップ1を用いて端末処理を実施させることもできる。
この図5に示す実施形態の端末キャップは、キャップ本体10の内径よりも僅かに小さな外径を有する円筒状の圧着スリーブ60がその外周面をキャップ本体10の内面に当接させるようにしてキャップ本体10の内部に収容されている。
また、この第三実施形態における端末キャップ1においては、嫌気性接着剤30がバルーン状の封止材21によって密封された状態でキャップ本体10の内部に収容されており、より具体的には、キャップ本体10の閉塞端10bに近い位置に収容させた前記圧着スリーブ60の内側に嫌気性接着剤30を内包したバルーン状の封止材21を収容させている。
【0032】
この第三実施形態の端末キャップ1を用いて端末処理を実施させるのに際しては、前記口出し工程において導体を露出させた絶縁被覆電線40,50をそのままの状態で端末キャップ1に挿入し、これらの導体40b,50bの先端部で嫌気性接着剤30を内包した封止材21を破裂させて該導体40b,50bをキャップ本体内に収容させた圧着スリーブ60に挿通させ、その後、圧着工具を用いてキャップ本体10の上から圧着スリーブ60を圧縮変形させて導体40b,50bの固定を行わせるようにすればよい。
このようにして本実施形態の端末キャップでもこれまでの実施形態と同様に絶縁被覆電線の端末に簡便に防水性を付与することができる。
【0033】
(第四実施形態)
なお、これまでの実施形態においては、端末キャップに収容させる硬化性の液状接着剤として嫌気性接着剤を用い、端末処理において導体や圧着スリーブなどの金属との接触による硬化反応を専ら利用する事例を挙げているが、液状接着剤の硬化に光反応を利用するようにしてもよい。
例えば、光硬化型嫌気性接着剤をキャップ本体10に収容させる液状接着剤として採用することができ、このような光硬化型嫌気性接着剤を用いることで外光を利用して嫌気性接着剤の硬化をより迅速に完了させることができる。
このような光硬化型嫌気性接着剤を用いて端末処理を実施させるのに際しては、図6に示すような第四の実施形態に係る端末キャップを利用することが好ましい。
【0034】
この第四実施形態の端末キャップ1は、封止材20が設けられている箇所を境にして開口端10aの側と、閉塞端10bの側とでキャップ本体10の形成材料を異ならせており、閉塞端側が光非透過性の有色材料で形成され、開口端側が光透過性の透明材料で形成されている。
また、前記封止材20も光非透過性の有色材料で形成されており、この第四実施形態の端末キャップ1には、その内部に前記光硬化型嫌気性接着剤31が外光から遮断された密封状態で収容されている。
【0035】
この第四実施形態の端末キャップ1を用いて端末処理を行うのに際しては、先に示した第一実施形態の端末キャップを用いる事例(工程(イ)〜(へ))と同様に実施することができる。
即ち、圧入工程(ホ)において封止材20に断裂を生じさせることにより光硬化型嫌気性接着剤31の密封状態を解除して該光硬化型嫌気性接着剤31を外光に曝露させ、この状態を一定時間保持させる硬化工程(へ)において金属との接触による硬化反応とともに光硬化反応を進行させて、硬化させた光硬化型嫌気性接着剤でキャップ本体の内面と絶縁被覆電線の外表面との間に水分が侵入することを防止するとともに端末キャップを絶縁被覆電線の端末に接着固定させることができる。
このとき、封止材20よりも開口端側が光透過性の透明材料で形成されていることにより端末の侵入によってこの透明側に移動した光硬化型嫌気性接着剤31により多くの外光を照射させることができ、硬化工程の作業時間を短縮させ得る。
【0036】
なお、要すれば、UVランプ等を用いて外側からキャップ本体の透明部分を通じて光硬化型嫌気性接着剤31に紫外線を照射して、さらに硬化促進を図るようにしてもよく、ヒーター等による加熱をさらに実施してより硬化促進させるようにしてもよい。
【0037】
(第五実施形態)
また、上記のような端末キャップに代えて、図7に示すように、光非透過性のバルーン状の封止材22に光硬化型嫌気性接着剤32を封入したものを光透過性の素材で有底筒形に形成されたキャップ本体10’に収容させた端末キャップを用い、端末の先端でこの封止材22を破裂させる圧入工程(ホ”)を実施させることもできる。
このとき、封止材22が破裂して外光に曝された光硬化型嫌気性接着剤32は、導体との接触による硬化反応とともに光エネルギーによる硬化反応が生じ硬化工程(ヘ)を速やかに完了させることができる。
【0038】
なお、これまでの実施形態においては、2本の絶縁被覆電線を結線した端末に防水性を付与する端末処理方法を例示しつつ本発明を説明したが、例えば、3本以上の絶縁被覆電線を結線した端末を処理する場合や、単なる1本の絶縁被覆電線端末を端末処理する場合に用いられる端末キャップも本発明が意図する範囲のものである。
また、ここでは詳述しないが、端末キャップや硬化性の液状接着剤に関して従来公知の技術事項を参照するなどして上記例示以外に種々の変更を加え得ることは当然の事柄である。
【符号の説明】
【0039】
1:端末キャップ、10:キャップ本体、20:封止材、30:嫌気性接着剤(液状接着剤)、40,50:絶縁被覆電線、40b,50b:導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体が露出している絶縁被覆電線の端末に前記導体を覆うように外嵌させて用いられ、前記端末が収容される有底筒形のキャップ本体が備えられている端末キャップであって、
前記端末を収容させた際に前記導体と接触させ得るように液状接着剤が前記キャップ本体の内部に収容されており、該液状接着剤が金属との接触によって硬化する硬化型接着剤であることを特徴とする端末キャップ。
【請求項2】
前記硬化型接着剤が、嫌気性接着剤である請求項1記載の端末キャップ。
【請求項3】
前記嫌気性接着剤が、光によっても硬化可能な光硬化型嫌気性接着剤であり、該光硬化型嫌気性接着剤が外光から遮断された密封状態で前記キャップ本体に収容されており、且つ、前記端末を収容させるのに際して該端末で前記密封状態が解除されて外光に曝露させ得るように前記光硬化型嫌気性接着剤が収容されている請求項2記載の端末キャップ。
【請求項4】
前記嫌気性接着剤が、アクリル系モノマーを含有し、該アクリル系モノマーの重合反応によって硬化する嫌気性接着剤である請求項2又は3に記載の端末キャップ。
【請求項5】
前記硬化型接着剤が、前記端末の収容に際して破壊可能な封止材で封止されて前記キャップ本体に収容されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の端末キャップ。
【請求項6】
前記硬化型接着剤を含浸可能で、且つ、前記端末で圧縮された際に含浸させている前記硬化型接着剤を滲出可能な繊維部材又は多孔質材がキャップ本体にさらに収容されており、前記繊維部材又は前記多孔質材に前記硬化型接着剤が含浸されて収容されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の端末キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81340(P2013−81340A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221203(P2011−221203)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(504411041)福島日東シンコー株式会社 (7)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】