説明

端末網制御装置およびデータ通信システム

【課題】通信機器を通信回線から切り離さずに、センタ装置からの識別信号を受信できるようにして、通信機器の使用を阻害することなく、センタ装置とのデータ通信を可能にする。
【解決手段】通信回線に接続された状態にある通信機器が呼出信号によってオフフックしたとき、応答信号を送信する。端末網制御装置は、通信機器が応答信号を送信する送信タイミング中の応答信号が送信されない無信号期間に合わせて、監視タイミングを設定する。端末網制御装置は、通信機器の無信号期間中にセンタ装置からの識別信号を検知する。自己宛の識別信号を検知したとき、端末網制御装置は、通信機器を通信回線から切り離した状態にして、センタ装置との間でデータ通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータ、水道メータ等の遠隔検針を行って、センタ装置にデータ通信する端末網制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気、ガス、水道などの自動検針を行うデータ通信システムでは、メータ等の端末機器が接続された端末網制御装置とセンタ装置とが例えば電話回線などの通信回線によって通信可能に接続される。そして、電話回線を通じて呼出信号が端末網制御装置に入力されると、端末網制御装置は、呼出信号によるリンギングをカウントする。その呼出回数が所定回数になると、端末網制御装置は、センタ装置からの検針の呼出であると判定し、端末発信してセンタ装置との間でデータ通信を行う。このとき、端末網制御装置は、メータの値を読み取り、センタ装置にそのデータを送信する。
【0003】
ここで、端末網制御装置には電話機やファクシミリ装置といった通信機器が接続されている。電話機やファクシミリ装置は、回線に対して端末網制御装置の後方(下流側)に位置する。センタ装置からの呼び出しに応じて端末網制御装置の下流側に接続されている電話機やファクシミリ装置がオフフックすると、電話回線が話中状態となって、センタ装置から端末網制御装置を呼び出せなくなるという欠点があった。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1には、呼出回数が所定の値になると、端末網制御装置の下流側を切り離すことが記載されている。特許文献2には、ベル呼出信号の検出回数が設定値と一致すると、ループし、ID信号を検出して一致するとオンフックし、第2のID信号により通信開始することが記載されている。また、ベル呼出信号の検出回数が設定値と一致しないとき、ハイインピーダンス状態で回線を監視し、ID信号を検出すれば、ループし、後方の通信機器を切離して通信する。特許文献3では、ベル呼出信号の呼出検出回数が設定値以上であったら、一定時間後にセンタ装置に端末側起動によりデータ伝送する。
【0005】
特許文献4では、呼出信号を検知し、通信機器がオフフックすると、自身もオフフックし、通信機器との間に設けられたフィルタ回路により通信機器から発信される信号を遮断して、センタ装置からのID信号の有無を検出する。
また、特許文献5では、呼出信号の呼出検出回数が設定値未満において、端末網制御装置の下流側に接続されている電話機がオフフックした場合、一定時間、回線を監視する。その間にセンタ装置からのID信号を受信すれば、端末側起動によりデータ伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−236141号公報
【特許文献2】特開平8−237385号公報
【特許文献3】特開平10−79799号公報
【特許文献4】特開2007−228071号公報
【特許文献5】特開2004−201157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、呼出信号の検出回数を検出する場合、呼出信号が所定値に達する前に、通信機器がオフフックすると、端末網制御装置は、通信回線に接続された状態にないため、センタ装置からのID信号を受信できない。したがって、端末網制御装置は、センタ装置との間でデータ通信を行えない。
【0008】
また、留守番電話機やファクシミリ装置が呼出信号によってオフフックすると、これらの通信機器は、音声合成によるトーキー音やFAX通信音を送信する。また、ファクシミリ装置は、呼出信号に応答してオフフックすると、確認信号あるいはトーン信号等の応答信号を送出する。このような通信機器から送信される応答信号がセンタ装置からのID信号と輻輳するおそれがある。端末網制御装置は、このID信号を識別することができず、センタ装置と通信ができなくなる。ここで、端末網制御装置にフィルタ回路が設けられていると、音声帯域信号を減衰してID信号のSN比をよくし、ID信号を識別しやすくすることができる。しかし、フィルタ回路を追加しなければならず、コストアップの要因となる。
【0009】
特に、スーパーG3規格のファクシミリ装置の呼出信号に対して応答する通信機器が端末網制御装置の下流側に接続されている場合、送信側のファクシミリ装置と受信側のファクシミリ装置とが通信速度を決定するためのネゴシエーションを行う。ファクシミリ装置が呼出信号によってオフフックしたとき、端末網制御装置が回線を一定時間監視するために、ハイインピーダンスループ状態になって、通信回線に接続された状態になる。このとき、ファクシミリ装置のネゴシエーション期間と監視の期間とが一致すると、端末網制御装置のハイインピーダンスループの影響により、ネゴシエーションが正しく行えず、ファクシミリ装置が適正な速度や品質で送受信できなくなったり、通信できなかったりする。
【0010】
本発明は、上記に鑑み、通信機器の使用を阻害することなく、センタ装置からの識別信号を確実に受信できるようにして、センタ装置とのデータ通信を可能にする端末網制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、端末機器および通信機器が接続され、通信回線を介してセンタ装置とデータ通信を行う端末網制御装置であって、センタ装置との通信を制御する制御部を備え、通信機器が呼出信号によってオフフックしたとき、制御部は、通信機器から送信される応答信号に応じて設定された監視タイミングでセンタ装置からの識別信号を監視するものである。
【0012】
通信機器は、呼出信号によってオフフックしたとき、応答信号を送信する。監視タイミングは、この応答信号に影響を受けないように、応答信号の送信タイミングに応じて設定される。すなわち、制御部は、通信機器が応答信号を送信するときの送信タイミングを検出し、送信タイミングに基づいて監視タイミングを設定する。端末網制御装置の制御部は、応答信号に邪魔されずに、センタ装置からの識別信号の有無を検出できる。
【0013】
具体的には、通信機器の応答信号には、無信号期間が含まれる。制御部は、無信号期間に合わせて監視タイミングの開始時間を設定する。無信号期間が開始するタイミングに合わせて、監視タイミングの開始時間が設定され、無信号期間が終了するタイミングに合わせて、監視タイミングの終了時間が設定される。なお、センタ装置から送信される識別信号は、通信機器の応答信号の送信時間よりも長い時間に設定される。
【0014】
通信機器は、無信号期間中、応答信号を送信しない。無信号期間中であれば、端末網制御装置は、応答信号に邪魔されずに識別信号の有無を検出することができる。通信機器は、通信回線に接続された状態に維持されるので、通信機器の使用が妨げられることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、通信機器を通信回線に接続した状態のまま、センタ装置からの識別信号の有無を監視することができる。センタ装置からの呼び出しでない場合、通信機器は呼び出しに対して応答することができるので、通信機器の使用が妨げられることはない。また、識別信号の監視タイミングを応答信号に応じて設定することができるので、応答信号の影響を受けなくてすみ、効率よくかつ確実に識別信号を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のデータ通信システムの全体構成図
【図2】端末網制御装置の概略構成を示すブロック図
【図3】監視タイミングを設定するときの動作フローを示す図
【図4】データ通信システムにおけるセンタ装置からの識別信号の監視動作フローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態のデータ通信システムを図1に示す。データ通信システムは、センタ側と端末側との間での自動検針等のデータ通信を行う。センタ側において、コンピュータからなるセンタ装置が接続されたセンタ網制御装置1は、通信回線としての公衆電話回線2を通じて端末側の端末網制御装置3に接続される。
【0018】
端末網制御装置3は、電話回線用モジュラージャック4、電話機用モジュラージャック5、メータインタフェース6を備えている。電話回線用モジュラージャック4に、電話回線2が物理的に接続され、端末網制御装置3は、電話回線2を介してセンタ装置と通信可能とされる。
【0019】
電話機用モジュラージャック5に、電話機やファクシミリ装置などの通信機器7が物理的に接続されている。通信機器7は、電話回線2に対して、端末網制御装置3の後方(下流側)に接続されている。なお、通信機器7としては、電話機が一般的であるが、電話機能付きファクシミリ装置や留守番電話機やスーパーG3ファクシミリ装置などがある。端末網制御装置3に、複数の通信機器7を接続してもよい。
【0020】
メータインタフェース6に、メータ、センサ、接点機器等の端末機器8が接続される。端末網制御装置3は、端末機器8からデータを取得する。例えばメータと交信を行い、必要な検針データを取得する。そして、端末網制御装置3は、センタ装置からの検針要求に応じて、あるいは端末発呼によって取得したデータをセンタ装置に送信する。
【0021】
端末網制御装置3は、図2に示すように、ループ&ハイインピーダンスループ回路11、通信回路12、制御部13、呼出信号検知回路14、後方接続切替回路15、オフフック検知回路16、メータインターフェース回路17を有している。
【0022】
電話回線用モジュラージャック4を介してループ&ハイインピーダンスループ回路11と通信回路12が電話回線2に接続される。各回路11、12は、CPU、ROM、RAMからなる制御部13に接続される。
【0023】
通信回路12は、データ信号と電話回線2に流れる可聴周波数信号との間を相互に変調/復調するモデム機能を有している。メータインターフェース回路17には、メータインターフェース6を介してメータ18が接続される。メータインターフェース回路17は、メータ18と制御部13との間のインターフェースを受け持ち、データの受け渡しを行う。
【0024】
オフフック検知回路16は、通信機器であるファクシミリ装置19と電話回線2との間に接続され、ファクシミリ装置19の回線使用状態、すなわちオフフックかオンフックかを検出して、検出信号を制御部13に出力する。
【0025】
後方接続切替回路15は、リレーによって構成され、オンフック検知回路16とファクシミリ装置19との間に介装される。後方接続切替回路15は、制御部13によって制御され、ファクシミリ装置19を電話回線2に対して接続した接続状態とファクシミリ装置19を電話回線2から切り離した切離状態とに切り換える。なお、ファクシミリ装置19が切離状態にあるとき、ファクシミリ装置19は、後方接続切替回路15を通じて制御部13に接続される。これにより、制御部13は、ファクシミリ装置19のオフフックを直接検出することができる。
【0026】
呼出信号検知回路14は、電話回線2より送出される16Hzの呼出信号を検出する。ループ&ハイインピーダンスループ回路11は、電話回線2を閉結して、ループ状態あるいはハイインピーダンスループ状態(半ループ状態)にする接続回路である。端末網制御装置3が、電話回線2に対して、ループ状態あるいはハイインピーダンスループ状態になると、端末網制御装置3は、電話回線2に接続された状態となり、センタ装置と通信可能となる。
【0027】
なお、ループ状態は、端末網制御装置3を低インピーダンス、例えば50Ω〜300Ωで電話回線2に接続した状態である。ハイインピーダンスループ状態は、それより高いインピーダンス、例えば数kΩで電話回線2に接続した状態をいう。ハイインピーダンスループ状態では、ループ状態に比べ監視中の消費電力が少なくて済む。また、オフフックした電話機等の通信機器の通話を阻害しにくいという利点ある。
【0028】
制御部13は、上記の各回路を制御して、センタ装置とのデータ通信を行うとともに、ファクシミリ装置19による電話回線2を通じた通信を可能とする。なお、これらの制御は、公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0029】
そして、端末網制御装置3は、センタ装置からの発呼によるメータ18の自動検針を確実に行えるように、ファクシミリ装置19の挙動に応じて動作する。そのため、制御部13は、電話回線2からの呼出信号を受信したとき、呼出信号による呼出回数をカウントする機能と、呼出回数が所定回数未満において、ファクシミリ装置19がオフフックしたか検知する機能と、ファクシミリ装置19のオフフックを検知したとき、自装置を電話回線2に接続した状態にする機能と、ファクシミリ装置19を電話回線2に接続したまま、電話回線2を監視する機能とを有する。また、制御部13は、ファクシミリ装置19がオフフックせず、呼出信号の呼出回数が所定回数以上になったとき、オフフックして電話回線2と接続した状態にし、電話回線2を監視する機能を有する。制御部13は、所定の監視時間だけセンタ装置から送信される識別信号を監視する。
【0030】
そして、制御部13は、センタ装置から自己宛の識別信号を受信すると、ファクシミリ装置19を切離状態にして、センタ装置とデータ通信する機能と、自己宛の識別信号を受信しないとき、電話回線2との接続を解除して、電話回線2の監視を停止し、スタンバイ状態にする機能とを有する。端末網制御装置3がスタンバイ状態にあっても、ファクシミリ装置19は接続状態に維持される。
【0031】
センタ装置がセンタ網制御装置1を通じて端末網制御装置3を呼び出したとき、端末網制御装置3のオフフックを検知すると、センタ装置は、一定時間だけセンタ網制御装置1を通じて識別信号を端末網制御装置3に送信する。
【0032】
次に、上記の端末網制御装置3に対して呼び出しがあったときのデータ通信システムにおける動作を説明する。電話回線2を通じて呼出信号が端末網制御装置3に入力されると、呼出信号検知回路14が呼出信号を検出する。まず、制御部13は、呼出信号によるリンギング回数(呼出回数)が所定回数N以上か否か判定する。N未満であれば、制御部13は、オフフック検知回路16からの出力に基づいてファクシミリ装置19がオフフックしたか否か判定する。
【0033】
ファクシミリ装置19がオフフックしていれば、制御部13は、ループ&ハイインピーダンスループ回路11を駆動して、電話回線2に対しハイインピーダンスループ状態にして、電話回線2を監視する。すなわち、制御部13は、ループ&ハイインピーダンスループ回路11および通信回路12を通じて、電話回線2に流れる信号の有無を検出する。
【0034】
また、ファクシミリ装置19がオフフックせず、リンギング回数がN以上になれば、制御部13は、センタ装置からの呼び出しであると判断し、端末網制御装置3はオフフックする。そして、制御部13は、自装置を電話回線2に対してループ状態にして、電話回線2を監視し、送信されてくる信号を検出する。なお、制御部13は、識別信号を監視するときはハイインピーダンスループ状態、データ通信を行うときはループ状態になるように、ループ&ハイインピーダンスループ回路11を制御する。
【0035】
制御部13は、電話回線2からの信号を受信して、センタ装置からの識別信号か否かを監視する。制御部13は、識別信号が自己宛のID信号であると識別すると、後方接続切替回路15を動作させる。ファクシミリ装置19が電話回線2から切り離される。制御部13は、センタ装置との通信を開始する。センタ装置との通信が終了すると、端末網制御装置3は、オンフックして、ファクシミリ装置19を電話回線2に対して接続した状態にする。
【0036】
監視時間が経過しても、端末網制御装置3が自己宛のID信号を受信できなかったとき、監視はタイムアウトとなり、制御部13は、センタ装置からの呼び出しではないと判断する。すなわち、他の端末網制御装置3に対する呼び出し、あるいはファクシミリ装置19に対する呼び出しである。制御部13は、ハイインピーダンスループ状態を解除して処理を終了する。なお、ファクシミリ装置19に対する呼び出しである場合、以降ファクシミリ装置19が応答して、通信を行う。
【0037】
識別信号の監視において、制御部13は、受信したID信号に含まれるIDが自己のIDと一致しているかを判断する。なお、ID信号としては、例えばセンタ装置からのプッシュボタン信号(PB信号)やデータ通信用信号を用いることができる。
【0038】
そして、ID信号としてPB信号を用いる場合、電話機のプッシュボタンに存在しないA、B、C、Dの少なくとも1つを用いるようにしてもよい。このA、B、C、D信号は電話機の操作部上において、4行4列のマトリクスの4列目、すなわち座標にして(1、4)、(2、4)、(3、4)、(4、4)にそれぞれ対応するが、これらの座標点にはプッシュボタンは存在しない。そのため、電話機の操作部から入力されることはなく、確実にセンタ装置からのID信号であることを確認できる。
【0039】
ID信号に代わる識別信号としては、PB信号、データ通信用信号以外に、音声信号、すなわち「ただいまより検針を行います」といった内容の音声信号であってもよい。また、これらPB信号、データ通信用信号、音声信号の組み合せであってもよい。なお、音声信号を送る場合、その音声信号の前後にPB信号またはデータ通信用信号を送信すると、音声信号のみの場合に比し端末網制御装置3でのIDの認識を確実に行うことができる。
【0040】
ところで、ファクシミリ装置19がオフフックすると、ファクシミリ装置19は応答信号を発信する。ファクシミリ装置19は、応答信号として被呼局識別信号を送出する。この応答信号は、2.6秒から4秒間発信され、その後に75msec間、FAX通信としては無音となる無信号期間が必ず存在する。
【0041】
そこで、端末網制御装置3が確実にセンタ装置からの識別信号を検出できるようにするために、監視タイミングおよび識別信号の送信時間が設定される。センタ装置が識別信号を送信する時間は、応答信号の送信時間よりも長い時間に設定される。すなわち、識別信号の送信時間は、4秒以上に設定される。監視タイミングは、応答信号の無信号期間に合わせて設定される。監視時間は、2.6〜4秒間の応答信号後の無信号期間(75msec)に対応するように設定され、75msec以下とされる。そして、監視タイミングの開始時間および終了時間は、応答信号の送信タイミングに応じて設定される。応答信号の送信が停止したとき(無信号期間が開始するとき)が監視タイミングの開始時間とされ、無信号期間が終了したとき(次の応答信号の送信が開始するとき)が監視タイミングの終了時間とされる。監視が終了することにより、端末網制御装置3は、電話回線2に接続された状態を解除する。
【0042】
例えば、センタ装置からの送信時間が5秒であるとき、識別信号の認識に要する時間を50msecとすれば、応答信号の送信時間は2.6秒から4秒であるので、制御部13は、75msecの無信号期間に少なくとも50msec認識することができる。これにより、監視時間内において識別信号を必ず検出することができる。したがって、ファクシミリ装置19が電話回線2に接続された状態であっても、制御部13は、ファクシミリ装置19の応答信号に邪魔されることなく、識別信号を確実に受信できる。その結果、端末網制御装置3は、センタ装置の呼び出しに応じてセンタ装置とデータ通信を行える。
【0043】
ところで、特開2007−104269号公報における端末網制御装置では、予め定めた呼出回数未満において、通信機器がオフフックした場合、主制御装置は、通信機器を電話回線から一時的に切り離し、ループ又は半ループ状態にて一定時間電話回線を監視する。この一定時間の間にセンタ装置からのID信号を受信すれば、通信機器を切り離したままセンタ装置との間でデータ通信を開始する。ここでは、ID信号を受信できるように、通信機器を電話回線から切り離した状態にしている。
【0044】
しかしながら、上記のように、センタ装置からの識別信号の送信時間、端末網制御装置3の監視時間、識別信号を認識する時間を通信機器7の応答時間に基づいて設定すれば、通信機器7を一時的に切り離さなくても、識別信号を確実に受信することができる。これにより、制御部13は、センタ装置と通信中以外は、通信機器7を常に電話回線2に接続した状態に維持する。したがって、呼出信号を受信したときに応答信号を送信する通信機器7の動作が阻害されることを防止できる。センタ装置からの呼び出しでないときに、ユーザは通信機器7を使用することができる。
【0045】
通信機器7がファクシミリ装置19の場合、スーパーG3FAXとG3FAXとがある。両者では、通信手順が異なる。しかし、本端末網制御装置3は、いずれの規格のファクシミリ装置19であっても、ファクシミリ装置19の通信を阻害することなく、識別信号の監視を行える。
【0046】
監視タイミングの設定に関して、端末網制御装置3の制御部13は、接続されているファクシミリ装置19の応答信号の送信タイミングを予め認識している。すなわち、最初の応答信号の送信時間がわかれば、無信号期間の開始のタイミングがわかる。ファクシミリ装置19の機種に応じて、送信タイミングは決まっている。そこで、端末網制御装置3は、ファクシミリ装置19の特性に合わせて監視タイミングを任意に設定できる。
【0047】
端末網制御装置3にファクシミリ装置19が接続されたとき、この装置19の送信タイミングが制御部13に入力される。制御部13は、入力された送信タイミングをEEPROM等のメモリ20に記憶する。送信タイミングの入力は、ユーザの入力操作あるいはファクシミリ装置19から送信タイミングの情報を取得することにより行われる。制御部13は、入力された送信タイミングに基づいて、開始時間、終了時間といった監視タイミングを設定する。
【0048】
また、端末網制御装置3は、接続されているファクシミリ装置19が応答信号を送信するときの送信タイミングを検出してもよい。制御部13は、応答信号の送信タイミングを検出するための応答信号測定モードを実行する。端末網制御装置3にモードスイッチ21が設けられ、モードスイッチ21がオンされると、制御部13は、応答信号測定モードを開始する。
【0049】
このモードが実行されると、ファクシミリ装置19は、呼出信号に対してオフフックし、応答信号を送信する。このとき、制御部13は、ファクシミリ装置19の応答信号の送信タイミングを検出し、検出した送信タイミングをメモリ20に記憶する。そして、制御部13は、送信タイミングに基づいて監視タイミングを設定し、設定した監視タイミングをメモリ20に記憶する。
【0050】
これにより、制御部13は、接続されているファクシミリ装置19の応答信号の送信タイミングに応じて設定された監視タイミングにしたがって、センタ装置から送信されてくる識別信号を監視する。応答信号測定モードを実行することにより、自動的に監視タイミングを設定することができ、設定に対するユーザの手間を省ける。
【0051】
応答信号測定モードの具体的な動作を図3に示す。ユーザが端末網制御装置3のモードスイッチ21をオンすると、制御部13は、応答信号測定モードを実行する。任意の電話回線2から端末網制御装置3にダイヤル発信する(S1)。例えばユーザの携帯電話を使用して、端末網制御装置3にダイヤルする。端末網制御装置3の呼出信号検出回路14が電話回線からの呼出信号を検出すると、制御部13は、オフフック検知回路16によりファクシミリ装置19のオフフックを監視する。呼出信号によりファクシミリ装置19がオフフックする(T1)と、ファクシミリ装置19は、CED信号等の応答信号を送信し(S2)、所定の時間が経過すると、応答信号の送信を停止する。
【0052】
制御部13は、ファクシミリ装置19のオフフックを検出したタイミング(T2)でファクシミリ装置19からの応答信号の監視を開始する(S3)。制御部13は、オフフック検知回路16を通じて応答信号の有無を検出する。制御部13は、応答信号を検出したタイミング(T2)をメモリ20に記憶する。
【0053】
ファクシミリ装置19は、無信号期間では応答信号を送信しない。制御部13は、応答信号無しを検出したタイミング(T3)をメモリ20に記憶する。ファクシミリ装置19は、無信号期間終了後、DIS信号等の応答信号を送信する(S4)。制御部13は、応答信号有を検出し、検出したタイミング(T4)をメモリ20に記憶する。この後、制御部13は、応答信号測定モードを終了する。
【0054】
このように、端末網制御装置3に接続されているファクシミリ装置19の送信タイミングが検出された後、制御部13は、応答信号の有無を検出したタイミング(T2、T3、T4)に基づいて、監視タイミングの開始時間および終了時間を設定し、設定した監視タイミング(T5)をメモリ20に記憶する。これにより、接続されているファクシミリ装置19における送信タイミングの無信号期間に応じた監視タイミングを適切に設定することができる。特に、オフフック後、すぐに応答信号を送信しない特性を有するファクシミリ装置19の場合、無信号期間のタイミングを正確に検出することができるので、監視タイミングが応答信号を送信しているタイミングと重なることを防止できる。したがって、ファクシミリ装置19の機種に応じて送信タイミングが異なっても、監視タイミングの設定を容易に変更、対応できる。
【0055】
次に、本データ通信システムにおけるセンタ装置からの識別信号の監視動作を図4に示す。センタ装置が端末網制御装置3に対しダイヤル発信する(S10)と、ファクシミリ装置19は、電話回線2からの呼出信号に応じてオフフックし(T1)、応答信号の送信を開始する(S11)。制御部13は、ファクシミリ装置19がオフフックしたことを検出すると、記憶されている監視タイミングを読み出し、時間を計測する。
【0056】
センタ装置は、端末網制御装置3に対して識別信号を送信する(S12)。ファクシミリ装置19は、応答信号の送信を停止する。端末網制御装置3の制御部13は、設定された監視タイミングの開始時間になると、センタ装置からの識別信号の監視を開始する(S13)。この監視タイミングは、識別信号の送信時間内にある。識別信号は、通信回路12を通じて制御部13に入力され、制御部13は、識別信号が自己宛のID信号かをチェックする。識別信号が自己宛のID信号であるとき、制御部13は、ファクシミリ装置19を電話回線2から切り離し、センタ装置との通信を開始する。識別信号が自己宛のID信号でない場合、あるいは監視中に識別信号が検出されなかった場合、制御部13は、監視タイミングの終了時間になると、ファクシミリ装置から応答信号が送信されるタイミングで、ハイインピーダンス状態を解除して、監視を終了する。ファクシミリ装置19は、応答信号を送信する(S14)。
【0057】
このように、センタ装置から発呼があったとき、ファクシミリ装置19がオフフックして応答信号を送信しても、その無信号期間においてセンタ装置からの識別信号を監視することにより、識別信号を確実に検出することができる。しかも、ファクシミリ装置19を電話回線2に接続した状態のまま、識別信号の有無を監視できるので、センタ装置からの呼び出しでない場合、ファクシミリ装置19は呼び出しに応答でき、ファクシミリ装置19の使用が妨げられることはない。
【0058】
ここで、監視タイミングをセンタ装置の識別信号の送信時間に対応させて、この送信時間以上の監視時間を設定した場合、制御部13は、送信タイミングの無信号期間を除いて、無関係な信号を検出し続けなければならない。この間、制御部13は無駄な処理を実行することになり、電力を無用に消費する。端末網制御装置3の電源が電池である場合、電池の消耗が増し、不経済である。そこで、監視タイミングをファクシミリ装置19からの応答信号の送信タイミング中の無信号期間に対応させることにより、監視タイミングを極力短時間に設定することができ、無駄な処理がなくなり、無用な電力の消費も防げる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。端末網制御装置に複数の通信機器が接続されている場合、各通信機器の応答信号の送信タイミングを検出して、それぞれの無信号期間が重なる時間帯を監視タイミングに設定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 センタ網制御装置
2 電話回線
3 端末網制御装置
7 通信機器
8 端末機器
11 ループ&ハイインピーダンスループ回路
12 通信回路
13 制御部
14 呼出信号検知回路
15 後方接続切替回路
16 オフフック検知回路
17 メータインターフェース回路
18 メータ
19 ファクシミリ装置
20 メモリ
21 モードスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末機器および通信機器が接続され、通信回線を介してセンタ装置とデータ通信を行う端末網制御装置であって、センタ装置との通信を制御する制御部を備え、通信機器が呼出信号によってオフフックしたとき、制御部は、通信機器から送信される応答信号に応じて設定された監視タイミングでセンタ装置からの識別信号を監視することを特徴とする端末網制御装置。
【請求項2】
制御部は、通信機器が応答信号を送信するときの送信タイミングを検出し、送信タイミングに基づいて監視タイミングを設定することを特徴とする請求項1記載の端末網制御装置。
【請求項3】
通信機器の応答信号には、無信号期間が含まれ、制御部は、無信号期間に合わせて監視タイミングの開始時間を設定することを特徴とする請求項1または2記載の端末網制御装置。
【請求項4】
制御部は、無信号期間が終了するタイミングに合わせて監視タイミングの終了時間を設定することを特徴とする請求項3記載の端末網制御装置。
【請求項5】
端末機器および通信機器が接続された端末網制御装置と、通信回線を通じて端末網制御装置に通信可能に接続されたセンタ装置とを備え、端末網制御装置とセンタ装置との間でデータ通信を行うデータ通信システムであって、端末網制御装置は、通信機器が呼出信号によってオフフックしたとき、通信機器から送信される応答信号に応じて設定された監視タイミングでセンタ装置からの識別信号を監視することを特徴とするデータ通信システム。
【請求項6】
端末網制御装置は、通信機器が応答信号を送信するときの送信タイミングを検出し、送信タイミングに基づいて監視タイミングを設定することを特徴とする請求項5記載のデータ通信システム。
【請求項7】
通信機器の応答信号には、無信号期間が含まれ、端末網制御装置は、無信号期間のタイミングに合わせて監視タイミングを設定することを特徴とする請求項5または6記載のデータ通信システム。
【請求項8】
センタ装置から送信される識別信号は、通信機器の応答信号の送信時間よりも長い時間に設定されたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のデータ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−12950(P2013−12950A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144835(P2011−144835)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】