説明

端末装置、分析サーバ、プローブ情報分析システムおよび方法。

【課題】分析可能な事項が大きく制限されてしまうことを抑制しつつ、プローブ情報の送受信に伴う通信量を低減する。
【解決手段】端末装置は、プローブ情報の分析を行う分析サーバと無線によって通信を行うことができる。この端末装置は、現在位置を検出する位置検出部と、地理情報が記録された地理データを参照する地理データ参照部と、現在位置と地理データとを用いた所定の処理を実行する処理部と、この処理が実行された場合に、分析サーバに対して、位置検出部によって検出した現在位置を含むプローブ情報を送信する送信部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を検出可能な端末装置と分析サーバとの間でプローブ情報を送受信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの車両にカーナビゲーションシステムが搭載されている。カーナビゲーションシステムは、GPS(Global Positioning System)を用いて検出した現在位置を利用して、経路の案内や自車位置の表示を行っている。
【0003】
近年では、カーナビゲーションシステムによって取得した現在位置を、所定の情報収集センタに送信することで、車両の交通状況を分析する技術が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−207083号公報
【0005】
特許文献1には、多数の車両から、同じような内容の情報が情報収集センタに送信されることを抑制する技術が開示されている。具体的には、車両に搭載されたFCD(フローティング・カー・データ)車載器が、情報収集センタから送信された情報と自身が保持している情報とを比較し、この比較結果に所定の条件が成立している場合に限って、プローブ情報を情報収集センタに送信している。
【0006】
しかし、多数の車両が滞留している場所の分析など、同じような内容の情報が多数の車両から送信されることによって初めて分析可能な事項も存在する。そのため、上記のような条件が成立している場合にだけ、プローブ情報を情報収集センタに送信することとすると、分析可能な事項が大きく制限される可能性があった。
【0007】
ところで、GPS受信機は、その小型化が進んでおり、車両だけではなく、携帯電話や携帯ゲーム機、PND(Personal Navigation Device)、PDA(Personal Digital Assistant)など、様々な端末装置に搭載されつつある。そこで、近年、これらの端末装置で検出された現在位置を用いることで、車両の交通状況に限らず、多様な分析を行うことが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、分析可能な事項が大きく制限されてしまうことを抑制しつつ、プローブ情報の送受信に伴う通信量を低減することや、カーナビゲーションシステムに限らず、種々の端末装置が検出した現在位置を、様々な角度から分析可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の態様である端末装置を次のように構成した。
【0010】
すなわち、位置情報を含むプローブ情報の分析を行う分析サーバに対して、前記プローブ情報を無線によって送信する端末装置であって、
現在位置を検出する位置検出部と、
地理情報が記録された地理データを参照する地理データ参照部と、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行する処理部と、
前記処理部によって前記処理が実行された場合に、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する送信部とを備える端末装置である。
【0011】
上記態様の端末装置は、現在位置と地理データとを用いた所定の処理を実行した場合に、分析サーバに対して、現在位置を含むプローブ情報を送信する。つまり、地理情報を必要とする処理が実行された場合に限ってプローブ情報を送信するので、地理情報とは無関係の処理の実行時に、プローブ情報が送信されることがない。この結果、プローブ情報の送受信に伴う通信量を低減することが可能になる。なお、本願において、プローブ情報とは、端末装置が位置検出部によって検出した現在位置や、端末装置がユーザあるいは他の機器から入力した情報、端末装置が解析した情報など、端末装置から分析サーバに対して発信され得る情報の総称をいう。
【0012】
上記態様の端末装置において、前記処理部は、前記処理として、前記地理データによって表される所定の経路上に前記検出した現在位置を表示する経路案内処理を実行してもよい。このような態様によれば、経路案内処理が実行された端末装置からプローブ情報が分析サーバに送信されるので、分析サーバは、経路案内に基づいて移動している端末装置の位置を分析することができる。
【0013】
上記態様の端末装置は、更に、当該端末装置を利用する利用者の移動手段を判別する移動手段判別部を備え、前記送信部は、前記検出された現在位置と、前記判別された移動手段を示す情報とを含むプローブ情報を、前記分析サーバに送信してもよい。このような態様によれば、分析サーバは、端末装置の位置分布をユーザの移動手段に応じて分析することができる。
【0014】
上記態様の端末装置において、前記地理データによって表される経路は、予め利用する移動手段が複数指定されており、該経路には、前記指定された複数の移動手段が、該各移動手段を利用する区分毎に対応付けられ、前記移動手段判別部は、前記検出された現在位置と、前記経路中の前記各区分の位置関係に基づいて、前記利用者が利用している移動手段を判別してもよい。このような態様によれば、経路中に移動手段が変更される区間があったとしても、精度良く、移動手段に応じた分析を行うことが可能になる。
【0015】
上記態様の端末装置は、更に、前記地理データを、前記分析サーバから受信する受信部を備えていてもよい。このような態様によれば、端末装置が備える記憶装置の記憶容量を削減することができる。
【0016】
上記態様の端末装置は、更に、前記地理データの受信に先立って、前記分析サーバに対して、前記経路の出発地と目的地とを指定して、該経路の探索を要求する経路探索部を備えていてもよい。このような態様によれば、経路探索を分析サーバに行わせることができるので、端末装置の処理負担を軽減することができる。
【0017】
上記態様の端末装置において、前記受信部は、前記分析サーバから、前記経路を複数種類含む地理データを受信し、当該端末装置は、更に、前記複数種類の経路の中から、一の経路の選択を受け付ける手段を備えていてもよい。このような態様によれば、ユーザは、複数提示された経路の中から、好ましい経路を選択することができる。
【0018】
本発明は、第2の態様として、次のような分析サーバとして適用することも可能である。
【0019】
すなわち、複数の端末装置から無線によって送信されたプローブ情報の分析を行う分析サーバであって、
前記端末装置によって地理データと該端末装置の現在位置とを用いた所定の処理が実行された場合に送信される情報であり、該端末装置の現在位置が含まれるプローブ情報を受信する受信部と、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う分析部とを備える分析サーバである。
【0020】
このような態様の分析サーバでは、端末装置によって、現在位置と地理データとを用いた所定の処理が実行された場合に限って、現在位置を含むプローブ情報を受信する。そのため、端末装置から、常時、プローブ情報を受信することがない。この結果、プローブ情報の送受信に伴う通信量を削減することが可能になる。
【0021】
上記態様の分析サーバにおいて、前記端末装置から送信されるプローブ情報には、更に、前記端末装置を利用する利用者の移動手段を示す情報が含まれており、前記分析部は、前記受信した現在位置に基づいて、前記端末装置の移動状態を解析するとともに、該移動状態と前記移動手段との関係から、前記端末装置の利用者が存在する地域の交通の状態を分析してもよい。このような態様であれば、端末装置のユーザの移動手段に応じて、各地の交通の状況を分析することができる。
【0022】
上記態様の分析サーバにおいて、前記分析部は、前記移動手段が徒歩である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、歩行者が滞留する傾向がある地域であると分析してもよい。このような態様であれば、プローブ情報が発信される各地域におけるユーザの滞留の度合いを分析することが可能になる。
【0023】
上記態様の分析サーバにおいて、前記分析部は、前記移動手段が鉄道である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、鉄道の遅延が発生している地域であると分析してもよい。このような態様であれば、プローブ情報が発信される各地の鉄道の遅延状況を分析することが可能になる。
【0024】
上記態様の分析サーバにおいて、前記分析部は、前記移動手段が車である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、渋滞が発生している地域であると分析してもよい。このような態様であれば、プローブ情報が発信される各地の渋滞の状況を分析することが可能になる。
【0025】
上記態様の分析サーバは、更に、前記分析の結果を前記端末装置に送信する送信部を備えていてもよい。このような態様であれば、端末装置を用いて、分析サーバによって分析された様々な情報を確認することができる。
【0026】
本発明は、第3の態様として、次のようなプローブ情報分析システムとして適用することも可能である。
【0027】
すなわち、無線によって相互に通信を行う、複数の端末装置と分析サーバとを備えるプローブ情報分析システムであって、
前記端末装置は、
現在位置を検出する位置検出部と、
地理情報が記録された地理データを参照する地理データ参照部と、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行する処理部と、
前記処理部によって前記処理が実行された場合に、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する送信部とを備え
前記分析サーバは、
前記プローブ情報を受信する受信部と、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う分析部とを備えるプローブ情報分析システムである。
【0028】
このような態様によっても、上述した第1の態様や第2の態様と同様に、プローブ情報の送受信に伴う通信量を削減することが可能になる。
【0029】
なお、本発明は、上述した端末装置や分析サーバ、プローブ情報分析システムとしての構成のほか、プローブ情報送信方法やプローブ情報分析方法、プローブ情報を送信するためのコンピュータプログラムやプローブ情報を分析するためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。これらのコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.プローブ情報分析システムの構成:
B.機能選択処理:
C.ナビゲーション処理:
D.プローブ情報分析処理:
E.変形例:
【0031】
A.プローブ情報分析システムの構成:
図1は、本発明の実施例としてのプローブ情報分析システム10の概略構成を示す説明図である。図示するように、本実施例のプローブ情報分析システム10は、主に、端末装置としての携帯電話200と、分析サーバ100と、地図サーバ150とから構成される。図1には、携帯電話200を1台のみ示しているが、プローブ情報分析システム10には、複数の携帯電話200が含まれる。
【0032】
携帯電話200は、地図表示機能やナビゲーション機能を備え、更に、分析サーバ100に対して、位置情報を含むプローブ情報を送信する機能を備えている。分析サーバ100は、携帯電話200からの要求に応じて、推奨経路の探索を行う機能や、携帯電話200から受信したプローブ情報の分析を行う機能を有している。地図サーバ150は、携帯電話200からの要求に応じて、携帯電話200が画面上に表示する地図画像を送信する機能を備えている。
【0033】
本実施例の携帯電話200は、GPS受信機201と、表示パネル202と、音声出力部203と、無線通信回路205と、操作部206と、主制御部210と、通話制御部220とを備えている。
【0034】
主制御部210は、携帯電話200の各部を制御するためのコントローラである。主制御部210は、CPU211と、RAM212と、ROM213とを備えている。CPU211は、ROM213に記憶された制御プログラムをRAM212にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【0035】
GPS受信機201は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成する人工衛星から送信された電波を受信して、現在位置を検出する装置である。
【0036】
表示パネル202は、液晶ディスプレイとこれを駆動する駆動回路とを備えている。液晶ディスプレイは、たとえば、480画素×640画素(VGA)の解像度を有する。主制御部210は、表示パネル202を制御することで、地図画像や推奨経路、現在位置などを描画する。表示パネル202には、液晶ディスプレイに限らず、有機ELディスプレイなど、種々の表示装置を採用することが可能である。
【0037】
音声出力部203は、経路案内時に音声を出力するためのスピーカや、これを駆動する回路などから構成される。
【0038】
無線通信回路205は、基地局BSとの間でデータ通信もしくは音声通信を無線によって行う回路である。基地局BSには、インターネットINTを介して分析サーバ100や地図サーバ150が接続されている。無線通信回路205は、基地局BSを介して、分析サーバ100や地図サーバ150にアクセスすることができる。
【0039】
通話制御部220は、音声通話のための着信や呼出、音声信号と電気信号の変換などを行う回路である。
【0040】
操作部206は、テンキー206aやカーソルキー206bなどのボタン群から構成される。ユーザは、これらのボタンを用いることで、実行する機能の選択や、推奨経路を探索するための探索条件の入力を行う。
【0041】
地図サーバ150は、インターネットINTを介して携帯電話200との通信を行う通信部152と、CPUやRAM、ROMからなる制御部154と、地図データ156を記憶する記憶装置155とを備えている。地図データ156には、携帯電話200が表示パネル202上に地図を描画するためのデータが記録されている。この地図データ156は、緯度、経度を座標とするベクトル形式で構成されている。地図データ156には、例えば、建物や道路、歩道、線路等の地物の形状を表すデータが含まれている。制御部154は、携帯電話200から地図データ156の取得要求があると、携帯電話200から指定された範囲のデータを地図データ156から抽出し、通信部152を介して携帯電話200に送信する。なお、本実施例では、地図データ156は、ベクトル形式で記録されていることとするが、ラスタ形式で記録されていてもよい。
【0042】
分析サーバ100は、インターネットINTを介して携帯電話200との通信を行う通信部102と、CPUやRAM、ROMからなる制御部104と、経路探索用のネットワークデータ103を記憶する記憶装置105とを備えている。ネットワークデータ103には、道路のつながり状態を表す道路ネットワークデータ106と、歩道のつながり状態を表す歩道ネットワークデータ107と、線路のつながり状態を表す線路ネットワークデータ108とが含まれている。各ネットワークデータには、駐車場や駅など、移動手段を変更可能な地点が共通して記録されている。分析サーバ100は、各ネットワークデータに共通して記録されたこれらの地点を経由地とすることで、道路、歩道、線路を横断的に利用する経路を探索することができる。なお、ネットワークデータ103には、例えば、航空機の航路や、船舶の航路、自転車専用の道路などを表すネットワークデータが含まれていてもよい。
【0043】
各ネットワークデータは、ノードデータとリンクデータとにより構成されている。ノードデータは、ランドマークや交差点、分岐点、屈曲点などの地点を表すデータであり、リンクデータはこれらのノードを結ぶ線分によって道路や歩道、線路を表すデータである。ノードデータやリンクデータには、道路や交差点の名称や、距離、車線数、幅、勾配等を示す特性情報、一方通行や右左折禁止などを示す交通規制情報、屋根付きの歩道や階段が多い歩道であることなどを示す特徴情報が属性情報として対応付けられている。なお、本実施例では、線路ネットワークデータ108には、各駅の発着時刻を表す時刻表データが対応付けられている。分析サーバ100は、この時刻表データを用いることで、発着時刻を指定した鉄道経路の探索を行うことができる。
【0044】
分析サーバ100の制御部104は、インターネットINTを介して携帯電話200から経路探索の要求があると、ネットワークデータ103を用いて、携帯電話200から指定された出発地と目的地とを結ぶ経路を探索する。なお、携帯電話200から経由地が指定されていれば、指定された経由地を経由する出発地から目的地までの経路を探索する。このとき、制御部104は、利用する移動手段の異なる経路を複数種類探索する。経路探索のアルゴリズムとしては、周知のダイクストラ法を利用することができる。制御部104は、経路の探索が終了すると、探索された経路を表すデータを、経路データとして通信部102を用いて携帯電話200に送信する。
【0045】
制御部104は、更に、携帯電話200から受信したプローブ情報の分析を行う。プローブ情報には、携帯電話200がGPS受信機201を用いて検出した現在位置が含まれる。図1には、携帯電話200を一台のみ示しているが、実際には、数百〜数千万台の携帯電話200がプローブ情報分析システム10には含まれる。そのため、制御部104は、このような数の携帯電話200から受信したプローブ情報を分析することで、車の渋滞や鉄道の遅延、歩行者が寄り道する頻度などを分析することができる。
【0046】
本実施例では上述したように、ネットワークデータと地図データとが、別々のサーバに記憶されていることとした。しかし、これらのデータは、同一のサーバに記憶されていることとしてもよい。なお、ネットワークデータや、このネットワークデータを用いて探索された経路データ、地図データは、すべてを含め、広義の「地理データ」と捉えることができる。
【0047】
B.機能選択処理:
図2は、携帯電話200において実行される機能選択処理のフローチャートである。この処理は、携帯電話200が備える種々の機能の中から、ユーザが、利用する機能を選択するための処理である。
【0048】
この機能選択処理が実行されると、携帯電話200のCPU211は、表示パネル202上に、利用可能な機能の一覧を表示する。そして、操作部206を介して、ユーザから実行する機能の選択を受け付ける(ステップS10)。
【0049】
図3は、携帯電話200の表示パネル202上に表示される機能選択画面の一例を示す説明図である。図示するように、本実施例では、「ナビゲーション」、「分析情報表示」、「周辺検索」、「現在位置表示」の4つの機能が利用可能であることとした。ユーザは、このように表示された機能の中から所望の機能を、操作部206を用いて選択する。
【0050】
利用する機能の選択を受け付けると、CPU211は、選択された機能が「ナビゲーション」であるかを判断する(ステップS20)。「ナビゲーション」が選択された場合には(ステップS20:Yes)、CPU211は、ナビゲーション処理を実行する(ステップS30)。このナビゲーション処理の詳細については後述する。
【0051】
ステップS20において、ユーザから選択された機能が「ナビゲーション」機能でない場合には(ステップS20:No)、選択された機能が「分析情報表示」機能であるかを判断する(ステップS40)。選択された機能が、「分析情報表示」機能であれば(ステップS40:Yes)、CPU211は、分析サーバ100にアクセスして、分析サーバ100が分析した情報の表示を行う分析情報表示処理を実行する(ステップS50)。この分析情報表示処理の具体例については後述する。
【0052】
ステップS40において、ユーザから選択された機能が、「分析情報表示」機能でないと判断した場合には(ステップS40:No)、CPU211は、ナビゲーション機能と分析情報表示機能以外の、ユーザによって選択された機能に応じた処理を実行する(ステップS60)。
【0053】
例えば、「周辺検索」機能が選択されれば、CPU211は、GPS受信機201で検出した現在位置周辺の店舗や駅等の地物を検索する処理を実行する。この処理では、例えば、ユーザは、所定のユーザインタフェースによって、所望のジャンルを指定する。そして、CPU211が、分析サーバ100に対して、検索範囲(例えば、現在位置の周囲1Km)とユーザから指定されたジャンルを示すデータを送信する。すると、分析サーバ100は、受信したデータに基づいて、現在位置周辺の指定されたジャンルの店舗を検索し、その一覧を、携帯電話200に返信する。ユーザは、検索された店舗の一覧の中から所望の店舗を選択することにより、その店舗の位置、住所、電話番号など、詳細な情報を閲覧することができる。また、ユーザは、こうして選択された店舗を、ナビゲーション機能における目的地に設定することができる。この周辺検索機能が実行されると、分析サーバ100の記憶装置105には、検索中心地点、検索範囲、ジャンルなどの条件、検索された結果、選択された店舗が、プローブ情報として蓄積される。
【0054】
また、「現在位置表示」機能が選択されれば、CPU211は、GPS受信機201によって検出した現在位置周囲の地図データの送信を、地図サーバ150に要求する。そして、地図サーバ150から受信した地図データに基づいて、地図画像を表示パネル202に描画する。地図画像の中央には、現在位置を示す所定のシンボルを重畳表示する。ユーザが移動して、現在位置が変移すれば、それに応じて、画面をスクロールさせる。このような処理を行うことで、ユーザは、現在地点周囲の地理状況を把握することができる。この現在位置表示機能が実行されると、分析サーバ100の記憶装置105には、現在位置表示で表示された地図の中心点や、移動した方向、移動量などがプローブ情報として蓄積される。
【0055】
以上で説明した機能選択処理によれば、携帯電話200は、ユーザが選択した機能に応じた処理を実行することができる。
【0056】
C.ナビゲーション処理:
図4は、上述した機能選択処理のステップS30で実行されるナビゲーション処理のフローチャートである。図4には、携帯電話200側で実行される処理と、分析サーバ100側で実行される処理とを併記している。
【0057】
このナビゲーション処理が実行されると、まず、携帯電話200のCPU211(以下、単に、「携帯電話200」と記載する)は、所定の入力画面を表示パネル202に表示して、ユーザから、出発地と目的地などの探索条件の入力を受け付ける(ステップS100)。
【0058】
図5は、上記ステップS100において、探索条件の入力画面が表示パネル202に表示された例を示す説明図である。図5には、表示パネル202に、出発地入力ボタンと、目的地入力ボタンと、発着日時指定ボタンと、詳細条件設定ボタンとが表示されている例を示した。ユーザは、操作部206を用いて、出発地入力ボタンを押すことで、出発地を入力するためのユーザインタフェースを表示させることができる。また、目的地入力ボタンを押すことで、目的地を入力するためのユーザインタフェースを表示させることができる。出発地および目的地としては、例えば、GPS受信機201が検出した現在位置を指定することができる。また、出発地および目的地は、表示パネル202に表示される地図上から指定することができる。更に、出発地および目的地は、電話番号や郵便番号、住所を用いて指定することも可能である。なお、図5には、出発地と目的地とを入力するボタンを示したが、経由地を指定するためのボタンを加えてもよい。
【0059】
ユーザが、操作部206を用いて、発着日時指定ボタンを押すと、出発日時や到着日時を指定するインタフェースが表示される。また、ユーザが、操作部206を用いて、詳細条件設定ボタンを押すと、詳細な探索条件を指定するインタフェースが表示される。このインタフェースでは、鉄道利用時における特急の利用の有無の指定や、歩行時において、屋根の多い歩道や階段の少ない歩道を優先して探索する指定などを行うことができる。
【0060】
ここで、図4を再び参照する。図5に示した画面によって、ユーザから探索条件の入力を受け付けると、携帯電話200は、入力された探索条件を表す探索条件データを、分析サーバ100に送信することで、経路探索の要求を行う(ステップS110)。
【0061】
分析サーバ100の制御部104(以下、単に、「分析サーバ100」と記載する)は、携帯電話200から探索条件データを受信すると(ステップS120)、受信した探索条件データによって指定された出発地と目的地とを結ぶ経路(経由地が指定されていれば、その経由地を経由する経路)を探索する経路探索処理を実行する(ステップS130)。上述したように、分析サーバ100は、この経路探索処理において、ネットワークデータ103を用いて、利用する移動手段の異なる経路を複数種類探索する。この経路探索処理では、ユーザから指定された発着時刻や、特急の利用の有無、屋根の多い歩道や階段の少ない歩道の優先度を考慮し、これらの条件を満足する経路が探索される。
【0062】
分析サーバ100は、経路探索処理の実行を完了すると、探索された複数の経路を表す経路データを携帯電話200に返信する(ステップS140)。
【0063】
図6は、上記ステップS140において、携帯電話200に返信される経路データの構造を模式的に示す説明図である。図6には、経路1から経路4までの4種類の経路を示している。経路1〜経路4は、いずれも、同一の出発地と目的地とを結ぶ経路であり、それぞれ利用する移動手段が異なっている。経路1,2は、徒歩と鉄道を利用する経路であり、経路3,4は、車を利用する経路である。経路1と経路2とでは、利用する路線が異なっており、経路3と経路4とでは、有料道路の利用の有無が異なっている。経路データは、経路毎に、緯度経度からなる地点データと、各地点を結ぶ区間で利用される移動手段を示すデータとを含んでおり、更に、各区間を通過する推定時間や、路線の種別、料金、地名、駅名、インターチェンジ名を示す詳細情報を含んでいる。
【0064】
図4において、携帯電話200は、分析サーバ100から経路データを受信すると(ステップS150)。受信した経路データによって表される複数種類の経路を表示パネル202上に表示し、ユーザから一の経路の選択を受け付ける(ステップS160)。
【0065】
図7は、上記ステップS160において、複数種類の経路が表示パネル202に表示された例を示す説明図である。図7に示した例では、画面左側に、「1」から「4」までの経路が表示されている。各経路には、その経路を移動するために要する料金や、全体の移動時間、その経路を移動するのに使用される移動手段が表示される。これらの経路の中から、ユーザが操作部206を用いて一の経路を選択すると、その経路の詳細な接続情報が画面右側に表示される。図7には、千葉県千葉市から東京まで、徒歩と鉄道とを利用して移動する経路の詳細を示している。この接続情報には、移動手段が変更される区間や路線を乗り換える区間毎に、その距離と、移動推定時刻とが表示される。なお、図7には、各経路が、リスト状に表示される例を示したが、各経路を図形的に表して地図上に重畳表示させてもよい。
【0066】
ここで、図4を再び参照する。上記ステップS160において、ユーザから利用する経路の選択を受け付けると、携帯電話200は、分析サーバ100に対して、選択された経路を通知する(ステップS170)。分析サーバ100は、この通知を受信して、ステップS130において探索した複数の経路の中から、ユーザによって選択された経路を特定する(ステップS180)。
【0067】
携帯電話200は、分析サーバ100への経路の通知が完了すると、GPS受信機201を用いて、携帯電話200の現在位置を検出する(ステップS190)。現在位置を検出すると、携帯電話200は、検出された現在位置を、ステップS170で選択された経路上の位置に補正するマッチング処理を行う(ステップS200)。このマッチング処理では、GPS受信機201によって検出された現在位置から経路に対して引いた垂線と、この経路との交点に現在位置が補正される。
【0068】
なお、本実施例では、上述のように、携帯電話200側でマッチング処理を行うこととした。しかし、マッチング処理は、図4のステップS245に破線で示すように、分析サーバ100側で行うことも可能である。分析サーバ100側では、上記ステップS180において、携帯電話200側で選択された経路が特定されているので、分析サーバ100は、この特定された経路と、後述するステップS220で携帯電話200から受信するプローブ情報に含まれた現在位置とを用いることで、携帯電話200側と同様にマッチング処理を行うことができる。なお、分析サーバ100側でマッチング処理を行う場合には、後述するステップS220では、マッチング後の現在位置ではなく、ステップS190で検出されたマッチング前の現在位置が携帯電話200から分析サーバ100に送信されることとする。
【0069】
マッチング処理の後、携帯電話200は、経路案内処理を行う(ステップS210)。この経路案内処理では、現在位置の周囲の地図データを、地図サーバ150から取得し、この地図データを用いて表示した地図画像に対して、経路を表す図形と、現在位置を示す所定のシンボルとを重畳して表示する処理が行われる。また、この経路案内処理では、現在位置が交差点やカーブにさしかかった場合に、進行すべき方向を画面上に示す処理も行われる。もちろん、この経路案内処理において、目的地や次の乗り換え地点までの距離、推定到着時刻等を表示することとしてもよい。
【0070】
図8は、経路案内処理において表示パネル202に表示される画面の例を示す説明図である。図8に示した例では、表示パネル202上に、地図画像として、道路と線路と主要な建物とが表示されている。また、現在位置は、進行方向を示す矢印状のシンボルによって表示されており、経路は、道路よりも太い線によって描画されている。図8には、経路として、道路から駅を経由して線路上を進行する経路が表示されている例を示した。
【0071】
上記ステップS210によって経路案内処理を行うと、携帯電話200は、分析サーバ100に対してプローブ情報を送信する(ステップS220)。このプローブ情報には、ステップS200において経路上の位置にマッチングさせた現在位置と、現在ユーザが利用している移動手段を示す情報とが含まれる。本実施例では、携帯電話200は、プローブ情報を、所定の時間間隔(例えば、60秒に1回)で分析サーバ100に送信する。なお、所定の時間間隔ではなく、プローブ情報が所定の情報量(例えば、50地点分)蓄積される毎に、分析サーバ100に送信することとしてもよい。
【0072】
図9は、分析サーバ100に送信されるプローブ情報の詳細を示す説明図である。図9(a)には、徒歩の区間と鉄道の区間とによって構成された経路の例を示している。図9(a)に示すように、GPS受信機201によって検出された現在位置が、P1からP15まで変移したとすると、この現在位置は、上記ステップS200のマッチング処理によって、経路上の位置に補正される。そして、図9(b)に示すように、マッチング後の現在位置が、携帯電話200に個別に割り当てられた端末IDとプローブ情報の識別IDと共に、時系列的に分析サーバ100に送信される。また、携帯電話200は、マッチング後の現在位置と、経路上の各移動手段の区間の位置関係を対比し、マッチング後の現在位置が含まれる区間を特定することで、ユーザが現在利用している移動手段を判別する。そして、判別した移動手段を示す情報についてもプローブ情報として分析サーバ100に送信する。なお、本実施例では、端末IDは、携帯電話200に割り当てられた電話番号であるものとするが、ユーザのメールアドレスや、分析サーバを利用するユーザに個別に割り当てられたユーザIDなどとしてもよい。
【0073】
なお、本実施例では、上述のように、携帯電話200側で、ユーザが現在利用している移動手段を判別し、その移動手段を示す情報をプローブ情報として分析サーバ100に送信することとした。しかし、ユーザが現在利用している移動手段は、分析サーバ100側で判別することも可能である。具体的には、分析サーバ100は、上記ステップS180によって特定した経路上の各移動手段の区間と、携帯電話200から送信されたプローブ情報に含まれる現在位置とを対比し、その現在位置が含まれる区間を特定することで、ユーザが現在利用している移動手段を判別することができる。また、分析サーバ100は、携帯電話200から受信したプローブ情報に含まれる現在位置と、そのプローブ情報を受信した時刻とに基づいて、平均移動速度を計算し、その速度に応じて、ユーザの移動手段が、徒歩であるのか、車両であるのか、鉄道であるのかを簡易的に判別することも可能である。ユーザの移動手段を分析サーバ100側で判断することとすれば、携帯電話200は、プローブ情報に対して移動手段を示す情報を付加することが不要となるので、分析サーバ100に送信するプローブ情報のデータ容量を削減することが可能になる。
【0074】
携帯電話200は、図4に示したステップS220において、プローブ情報を分析サーバ100に送信すると、経路案内が終了したかを判断する(ステップS230)。この処理では、ステップS190で検出した現在位置が、目的地周辺に検出された場合に、経路案内が終了したと判断することができる。携帯電話200は、経路案内が終了したと判断すれば(ステップS220:Yes)、当該ナビゲーション処理を終了する。一方、経路案内が終了していないと判断すれば(ステップS220:No)、処理をステップS190に戻して、ユーザに対する経路案内を続行する。
【0075】
分析サーバ100は、上記ステップS220において携帯電話200から送信されたプローブ情報を受信すると(ステップS240)、受信したプローブ情報を、図9に示した端末IDと情報IDとに基づいて時系列的に組み立てる(ステップS250)。
【0076】
図10は、ステップS250の処理により組み立てられたプローブ情報の一例を示す説明図である。上述したように、本実施例のプローブ情報分析システム10には、多数の携帯電話200が含まれる。そのため、分析サーバ100は、プローブ情報を各携帯電話200毎に分析するため、端末ID毎に、受信したプローブの組み立てを行う。この時、分析サーバ100は、個々のプローブ情報を受信した時刻に基づいて、ユーザがプローブ情報に記録された現在位置を通過した時刻を算出し、この時刻をプローブ情報に付加する。このように、本実施例では、ユーザの通過時刻を分析サーバ100が算出することとするが、携帯電話200が、プローブ情報に時刻情報を含めることとしてもよい。また、プローブ情報には、例えば、連休やイベント開催日等を示すカレンダー情報が含まれてもよい。
【0077】
プローブ情報の組み立てを行うと、分析サーバ100は、組み立てたプローブ情報を記憶装置105に蓄積し(ステップS260)、当該ナビゲーション処理を終了する。その後、分析サーバ100は、後述するプローブ情報分析処理を実行することで、記憶装置105に蓄積したプローブ情報の分析を行う。
【0078】
D.プローブ情報分析処理:
図11は、分析サーバ100が実行するプローブ情報分析処理のフローチャートである。この処理は、分析サーバ100の稼働中、繰り返し実行される。
【0079】
このプローブ情報分析処理が開始されると、分析サーバ100は、上述したナビゲーション処理によって記憶装置105に蓄積されたプローブ情報を、移動手段が変更される区間毎に読み込む(ステップS300)、そして、読み込んだ区間の移動手段の種別をプローブ情報に基づいて判別する(ステップS310)。
【0080】
ステップS310において判別された移動手段が車である場合には(ステップS310:「車」)、分析サーバ100は、図10に示したプローブ情報内の通過時刻と、経路データ中の予想通過時刻(図6参照)とを比較して、ユーザが、時間内に、その区間を通過できなかったかを判断する(ステップS320)。なお、図6には、複数の経路を示しているが、このうちどの経路が携帯電話200で利用されているかは、図4に示したナビゲーション処理のステップS180において特定されている。
【0081】
ステップS320において、時間内に通過できなかったと判断した場合には(ステップS320:Yes)、更に、分析サーバ100は、これまでのプローブ情報の分析結果の統計に基づいて、その区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高いかを判断する(ステップS330)。例えば、その区間を同じ時間帯、同じ曜日に通過したことが記録されているプローブ情報のうち、7割程度のプローブ情報で、時間内に通過できていなことが分析されれば、その区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高いと判断することができる。その区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高ければ(ステップS330:Yes)、分析サーバ100は、現在分析中の区間が、渋滞している区間であると分析する(ステップS340)。時間内にユーザがその区間を通過した場合や(ステップS320:No)、時間内に通過できなかったユーザの頻度が低い場合には(ステップS330:No)、分析サーバ100は、ステップS340の処理をスキップする。なお、時間内に区間を通過したか否かを判断する際には、判断基準となる「時間」に、ある程度の幅を持たせてもよい。例えば、想定される時間の1.2倍の時間内に通過すれば、その時間内に通過したとみなしてもよい。
【0082】
上記ステップS310において判別された移動手段が鉄道である場合には(ステップS310:「鉄道」)、分析サーバ100は、図10に示したプローブ情報内の通過時刻と、時刻表や予想通過時刻(図6参照)とを比較して、ユーザが、時間内に、その区間を通過できなかったかを判断する(ステップS350)。
【0083】
ステップS350において、時間内に通過できなかったと判断した場合には(ステップS350:Yes)、更に、分析サーバ100は、これまでのプローブ情報の分析結果の統計に基づいて、その区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高いかを判断する(ステップS360)。この頻度が高ければ、分析サーバ100は、現在分析中の区間の鉄道が遅延していると分析する(ステップS370)。時間内にユーザがその区間を通過した場合や(ステップS350:No)、時間内に通過できなかったユーザの頻度が低い場合には(ステップS350:No)、分析サーバ100は、ステップS370の処理をスキップする。なお、分析サーバ100は、ユーザの移動が停止している場合において、その停止地点の最寄りの駅を検索し、予め設定された範囲内に駅があれば、駅で停車していると判断することができる。また、その範囲内に駅がなければ、線路上に停車していると判断することができる。
【0084】
ユーザの移動手段が鉄道であると判断された場合において、分析サーバ100は、鉄道の遅延の分析精度を高めるため、以下の処理を行うことができる。すなわち、分析サーバ100は、同時刻に同じ鉄道を利用し、かつ、携帯電話200の経路案内機能(鉄道ナビゲーション)を利用しているプローブ情報を記憶装置105から検索し、検索されたプローブ情報に基づいて、統計的に遅延の有無を判断する。このような処理を行うことで、分析サーバ100は、精度良く、鉄道の遅延の有無を判断することが可能になる。
【0085】
上記ステップS310において判別された移動手段が徒歩である場合には(ステップS310:「徒歩」)、分析サーバ100は、図10に示したプローブ情報内の通過時刻と、経路データ中の予想通過時刻(図6参照)とを比較して、ユーザが、時間内に、その区間を通過できなかったかを判断する(ステップS380)。
【0086】
ステップS380において、時間内に通過できなかったと判断した場合には(ステップS380:Yes)、更に、分析サーバ100は、これまでのプローブ情報の分析結果の統計に基づいて、その区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高いかを判断する(ステップS390)。この頻度が高ければ、分析サーバ100は、現在処理中の区間で寄り道をするユーザが多いと分析する(ステップS400)。時間内にユーザがその区間を通過した場合や(ステップS380:No)、時間内に通過できなかったユーザの頻度が低い場合には(ステップS380:No)、分析サーバ100は、ステップS400の処理をスキップする。なお、本実施例では、処理中の区間を時間内に通過できなかったユーザの頻度が高い場合に、その区間で寄り道をするユーザが多いと分析することとしたが、その他にも、行列しているユーザが多いと分析することや、イベントの開催している区間であると分析することも可能である。また、分析サーバ100は、その区間のユーザの平均速度や同一地点に現在位置が測位されたかどうかに基づき、その区間が、ユーザの移動量が少ない区間であるかを分析することができる。
【0087】
以上のようにして、1つの区間について移動手段に応じた分析処理が終了すると、分析サーバ100は、分析した結果を、記憶装置105に蓄積する(ステップS410)。そして、上述した一連の処理を、他の区間および他の携帯電話200から受信したプローブ情報について実行する。このようにして、多量のプローブ情報を分析して得られた分析結果は、図2に示した機能選択処理のステップS50において、携帯電話200の表示パネル202に表示させることができる。
【0088】
図12は、渋滞区間を示す分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。携帯電話200は、分析サーバ100にアクセスして、渋滞に関する分析結果を受信することで、渋滞している道路の区間を、他の道路に対して強調して表示させることができる。このとき、画面上に、「渋滞中」という吹き出しを表示させれば、その区間が渋滞中であることを、容易にユーザに理解させることができる。ユーザは、このような渋滞情報を確認することで、渋滞している区間を避けて移動を行うことができる。なお、分析サーバ100は、経路探索処理において、こうした渋滞に関する分析結果を利用することで、渋滞を避けた経路を探索することが可能になる。具体的には、渋滞している区間のリンクコストを増大させたり、その区間のリンクデータの使用を制限することで、渋滞を避けた経路を探索することができる。
【0089】
図13は、鉄道の遅延区間を示す分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。携帯電話200は、分析サーバ100にアクセスして、鉄道の遅延区間に関する分析結果を受信することで、遅延している区間を、他の区間に対して強調して表示させることができる。このとき、画面上に「遅延区間」という吹き出しを表示させれば、その区間において鉄道が遅延していることを容易にユーザに理解させることができる。ユーザは、このような遅延情報を確認することで、遅延が発生している路線を避けて移動を行うことができる。なお、分析サーバ100は、経路探索処理において、こうした遅延に関する分析結果を利用することで、遅延の発生している路線を避けた経路を探索することが可能になる。遅延の発生している路線を避ける具体的な探索手法は、渋滞を避けた経路の探索手法と同様である。
【0090】
図14は、歩行者の寄り道が多い地域の分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。図示するように、本実施例では、地図をメッシュ状に区分し、寄り道の多い区間が多く含まれるメッシュを、他のメッシュに対して強調して表示することとした。このとき、メッシュに含まれる寄り道が多い区間の数に応じて、強調表示の程度を調整することが可能である。ユーザは、こうして表示された情報を参照することで、寄り道を誘発させるような魅力のある地域を探索することができる。なお、分析サーバは、経路探索処理において、こうした寄り道に関する分析結果を用いることで、寄り道の多い、あるいは、少ない地域を優先した経路探索を行うことが可能になる。なお、歩行者の寄り道が多い地域の分析結果についても、渋滞や鉄道の遅延区間の表示時と同じように、その区間を地図上に強調表示することとしてもよい。もちろん、渋滞や鉄道の遅延区間を、図14に示すようにメッシュ状に分析してもよい。
【0091】
本実施例では、図12〜図14に示したように、分析サーバ100で分析された情報を、携帯電話200によって表示する例を示したが、これらの情報は、パーソナルコンピュータやカーナビゲーションシステムなど、携帯電話200以外の装置に表示させることとしてもよい。
【0092】
以上で説明した本実施例のプローブ情報分析システム10では、携帯電話200が経路案内を実行した場合に、携帯電話200の現在位置がプローブ情報として分析サーバ100に送信される。そのため、地図を用いた処理とは無関係の処理を行っているときにプローブ情報が分析サーバ100に送信されることがないので、プローブ情報の送受信に伴う分析サーバ100との通信量を低減することができる。
【0093】
また、本実施例では、分析サーバ100は、プローブ情報に含まれる移動手段に応じてユーザの現在位置を解析することで、渋滞の発生や、鉄道の遅延、寄り道発生の頻度など、種々な現象を分析可能となる。そのため、ユーザは、携帯電話200を用いてこれらの分析結果を参照することで、渋滞中の道路の回避や、遅延の発生している路線の回避を行うことができる。また、寄り道の多い地域に積極的に移動したり、その地域を避けて移動したりすることも可能となる。更に、こうした分析結果を参照すれば、渋滞の発生しやすい区間や、遅延の発生しやすい鉄道路線を容易に把握することができる。そのため、道路を敷設する事業者や、鉄道事業者は、今後の工事計画に、これらの情報を活かすことができる。また、寄り道の発生しやすい地域が把握できれば、種々の店舗の出店計画の立案に活かすことが可能になる。
【0094】
E.変形例:
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0095】
(変形例1):
上記実施例では、分析サーバ100から受信した経路データに基づいて、携帯電話200が、ユーザの移動手段を判別することとした。これに対して、携帯電話200は、予めユーザから利用する移動手段の設定を受けることとしてもよい。このような態様であれば、分析サーバ100から送信される経路データに移動手段が付加されていなくても、携帯電話200は、ユーザの移動手段をプローブ情報として分析サーバ100に通知することができる。
【0096】
(変形例2):
上記実施例では、携帯電話200のナビゲーション機能が実行された場合に、プローブ情報が分析サーバ100に送信されることとした。しかし、例えば、図3に示した周辺検索機能や、現在位置表示機能が実行された場合にも、プローブ情報が分析サーバ100に送信されることとしてもよい。なお、これらの場合には、プローブ情報には、移動手段を示す情報は含まれないこととしてもよい。
【0097】
周辺検索機能が実行された場合にプローブ情報が分析サーバ100に送信されることとすれば、分析サーバ100は、周辺検索を行うユーザが集まる地域を分析することができる。例えば、その地域が、周辺検索を行うユーザが多く集まる地域であれば、その地域は、人気の店舗や話題のスポットの多い地域であると分析することができる。また、検索範囲を広くして周辺検索を行うユーザが多ければ、その地点の近辺は、店舗があまり存在しない地域であると分析することができる。
【0098】
現在位置表示機能が実行された場合にプローブ情報が分析サーバ100に送信されることとすれば、分析サーバ100は、地図を閲覧するユーザが集まる地域を分析することができる。例えば、その地域が、地図を閲覧するユーザが多く集まる地域であれば、その地域は、町並みの構造が複雑な地域であると分析することができる。また、地図を閲覧するユーザが多く集まる地域であれば、その地域の出身ではない旅行者や住民、労働者が多い地域であると分析することも可能である。
【0099】
(変形例3):
上記実施例では、経路探索で用いられるデータや地図描画に用いられるデータを、ネットワーク上の分析サーバ100や地図サーバ150が記憶していることとした。これに対して、携帯電話200が、自己の備える記憶装置にこれらのデータを記憶していてもよい。記憶装置としては、例えば、各種メモリカードやハードディスク装置、フラッシュメモリを利用することができる。このような構成であれば、携帯電話200は、自己の記憶装置に記憶されたデータを用いることで、経路探索処理や地図の表示を行うことができる。
【0100】
(変形例4):
上記実施例では、端末装置として携帯電話200を適用した例を示したが、端末装置の態様はこれに限られない。例えば、無線通信機能およびGPS受信機能を備えたポータブル型のナビゲーション装置や、持ち運び可能なパーソナルコンピュータ、ゲーム機、各種携帯情報端末(PDA)を端末装置として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施例としてのプローブ情報分析システム10の概略構成を示す説明図である。
【図2】携帯電話200において実行される機能選択処理のフローチャートである。
【図3】携帯電話200の表示パネル202上に表示される機能選択画面の一例を示す説明図である。
【図4】ナビゲーション処理のフローチャートである。
【図5】探索条件の入力画面が表示パネル202に表示された例を示す説明図である。
【図6】携帯電話200に返信される経路データの構造を模式的に示す説明図である。
【図7】複数種類の経路が表示パネル202に表示された例を示す説明図である。
【図8】経路案内処理において表示パネル202に表示される画面の例を示す説明図である。
【図9】分析サーバ100に送信されるプローブ情報の詳細を示す説明図である。
【図10】プローブ情報の一例を示す説明図である。
【図11】プローブ情報分析処理のフローチャートである。
【図12】渋滞区間を示す分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。
【図13】鉄道の遅延区間を示す分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。
【図14】歩行者の寄り道が多い地域の分析結果を携帯電話200に表示させた例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
10…プローブ情報分析システム
100…分析サーバ
102…通信部
103…ネットワークデータ
104…制御部
105…記憶装置
106…道路ネットワークデータ
107…歩道ネットワークデータ
108…線路ネットワークデータ
150…地図サーバ
152…通信部
154…制御部
155…記憶装置
156…地図データ
200…携帯電話
201…GPS受信機
202…表示パネル
203…音声出力部
205…無線通信回路
206…操作部
210…主制御部
211…CPU
212…RAM
213…ROM
220…通話制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を含むプローブ情報の分析を行う分析サーバに対して、前記プローブ情報を無線によって送信する端末装置であって、
現在位置を検出する位置検出部と、
地理情報が記録された地理データを参照する地理データ参照部と、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行する処理部と、
前記処理部によって前記処理が実行された場合に、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する送信部と
を備える端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端末装置であって、
前記処理部は、前記処理として、前記地理データによって表される所定の経路上に前記検出した現在位置を表示する経路案内処理を実行する
端末装置。
【請求項3】
請求項2に記載の端末装置であって、
更に、当該端末装置を利用する利用者の移動手段を判別する移動手段判別部を備え、
前記送信部は、前記検出された現在位置と、前記判別された移動手段を示す情報とを含むプローブ情報を、前記分析サーバに送信する
端末装置。
【請求項4】
請求項3に記載の端末装置であって、
前記地理データによって表される経路は、予め利用する移動手段が複数指定されており、該経路には、前記指定された複数の移動手段が、該各移動手段を利用する区分毎に対応付けられ、
前記移動手段判別部は、前記検出された現在位置と、前記経路中の前記各区分の位置関係に基づいて、前記利用者が利用している移動手段を判別する
端末装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の端末装置であって、更に、
前記地理データを、前記分析サーバから受信する受信部
を備える端末装置。
【請求項6】
請求項5に記載の端末装置であって
更に、前記地理データの受信に先立って、前記分析サーバに対して、前記経路の出発地と目的地とを指定して、該経路の探索を要求する経路探索部
を備える端末装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の端末装置であって、
前記受信部は、前記分析サーバから、前記経路を複数種類含む地理データを受信し、
当該端末装置は、更に、前記複数種類の経路の中から、一の経路の選択を受け付ける手段
を備える端末装置。
【請求項8】
複数の端末装置から無線によって送信されたプローブ情報の分析を行う分析サーバであって、
前記端末装置によって地理データと該端末装置の現在位置とを用いた所定の処理が実行された場合に送信される情報であり、該端末装置の現在位置が含まれるプローブ情報を受信する受信部と、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う分析部と
を備える分析サーバ。
【請求項9】
請求項8に記載の分析サーバであって、
前記端末装置から送信されるプローブ情報には、更に、前記端末装置を利用する利用者の移動手段を示す情報が含まれており、
前記分析部は、前記受信した現在位置に基づいて、前記端末装置の移動状態を解析するとともに、該移動状態と前記移動手段との関係から、前記端末装置の利用者が存在する地域の交通の状態を分析する
分析サーバ。
【請求項10】
請求項9に記載の分析サーバであって、
前記分析部は、前記移動手段が徒歩である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、歩行者が滞留する傾向がある地域であると分析する
分析サーバ。
【請求項11】
請求項9に記載の分析サーバであって、
前記分析部は、前記移動手段が鉄道である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、鉄道の遅延が発生している地域であると分析する
分析サーバ。
【請求項12】
請求項9に記載の分析サーバであって、
前記分析部は、前記移動手段が車である場合に、移動速度が遅い前記端末装置が多い地域を、渋滞が発生している地域であると分析する
分析サーバ。
【請求項13】
請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の分析サーバであって、
更に、前記分析の結果を前記端末装置に送信する送信部
を備える分析サーバ。
【請求項14】
無線によって相互に通信を行う、複数の端末装置と分析サーバとを備えるプローブ情報分析システムであって、
前記端末装置は、
現在位置を検出する位置検出部と、
地理情報が記録された地理データを参照する地理データ参照部と、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行する処理部と、
前記処理部によって前記処理が実行された場合に、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する送信部とを備え
前記分析サーバは、
前記プローブ情報を受信する受信部と、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う分析部とを備える
プローブ情報分析システム。
【請求項15】
端末装置が、位置情報を含むプローブ情報の分析を行う分析サーバに対して、前記プローブ情報を無線によって送信するためのプローブ情報送信方法であって、
現在位置を検出し、
地理情報が記録された地理データを参照し、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行し、
前記処理を実行した場合に、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する
プローブ情報送信方法。
【請求項16】
分析サーバが、複数の端末装置から無線によって送信されたプローブ情報の分析を行うためのプローブ情報分析方法であって、
前記端末装置によって地理データと該端末装置の現在位置とを用いた所定の処理が実行された場合に送信される情報であり、該端末装置の現在位置が含まれるプローブ情報を受信し、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う
プローブ情報分析方法。
【請求項17】
無線によって相互に通信を行う、複数の端末装置と分析サーバとを備えるプローブ情報分析システムにおけるプローブ情報分析方法であって、
前記端末装置によって現在位置を検出し、
前記端末装置によって、地理情報が記録された地理データと、前記現在位置とを用いた所定の処理を実行し、
前記処理が実行された場合に、前記端末装置から前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信し、
前記分析サーバによって前記プローブ情報を受信し、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、前記分析サーバが所定の分析を行う
プローブ情報分析方法。
【請求項18】
位置情報を含むプローブ情報の分析を行う分析サーバに対して、前記プローブ情報を無線によって送信するためのコンピュータプログラムであって、
GPS受信機を用いて現在位置を検出する機能と、
地理情報が記録された地理データを参照する機能と、
前記現在位置と前記地理データとを用いた所定の処理を実行する機能と、
前記処理が実行された場合に、無線送信機を用いて、前記分析サーバに対して、前記検出された現在位置を含むプローブ情報を送信する機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【請求項19】
複数の端末装置から無線によって送信されたプローブ情報の分析を行うためのコンピュータプログラムであって、
前記端末装置によって地理データと該端末装置の現在位置とを用いた所定の処理が実行された場合に送信される情報であり、該端末装置の現在位置が含まれるプローブ情報を、無線受信機を用いて受信する機能と、
前記プローブ情報に含まれる前記現在位置に基づいて、所定の分析を行う機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項18または請求項19に記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−110234(P2009−110234A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281399(P2007−281399)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】