説明

端末装置、方法、プログラム、および、施設情報表示システム

【課題】サーバとの通信によって周辺施設の情報を取得する携帯端末装置において、特定の施設の情報を迅速にユーザに提供可能とする。
【解決手段】携帯端末装置は、現在位置を逐次測位する。そして、実行中の処理のバックグラウンドで、測位された現在位置の周囲に存在する特定の施設の情報を、無線通信によって所定のサーバから所定のタイミングで繰り返し取得する。情報を取得すると、携帯端末装置は、情報の取得された現在位置に対応付けて記憶部に記憶する。ユーザによる所定の操作を検出すると、携帯端末装置は、測位された現在位置に対応する施設の情報を記憶部から読み出して表示部に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の施設の情報を携帯端末装置によってユーザに提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所定のサーバから無線通信によって取得した地図データを画面上に表示することが可能な携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末装置が普及している。
【0003】
このような携帯端末装置では、サーバに対して所定の問い合わせを行うことで、現在位置の周囲に存在する種々の施設の検索を行うことが可能である。従来、周辺施設の問い合わせを行うには、例えば、周辺施設の検索を行うためのメニューの選択、検索対象の施設のジャンルの絞り込み、検索対象の施設の名称の入力などを行う必要があった。これは、トイレや病院、警察、ガソリンスタンドなど、緊急時に必要となる特定の施設の検索時にも同様であった。そのため、緊急時に、上記のような入力操作を行うことは、大変、煩わしい作業であった。
【0004】
このような問題に関連し、例えば、特許文献1には、予めジャンルを指定しておくことで、車両の現在位置の周囲に存在する施設を所定のタイミングで検索し、検索された施設の情報を地図と共に表示する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、所定のキー操作に応じて、自車の進行方向の特定距離以内に存在する特定の施設(ガソリンスタンドやトイレ)を検索し、地図と共に表示する技術が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、トイレや病気、車の故障時に、リモコンユニットに備えられたヘルプキーを押すことで、車両の現在位置周囲に存在する停車可能な場所を探索する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−201353号公報
【特許文献2】特開平6−307878号公報
【特許文献3】特開2002−340597号公報
【0008】
上述した従来の技術は、いずれも、地図データを内蔵した車両搭載型のナビゲーション装置に関するものである。そのため、現在位置が把握できれば、その装置内に内蔵されたデータを用いることで、どのような状況でも、周辺施設の検索を行うことが可能であった。
【0009】
これに対して、無線通信によって所定のサーバに周辺施設の問い合わせを行う携帯端末装置では、車両搭載型のナビゲーション装置のように、内蔵されたデータを用いることができない。そのため、トンネル内やビル群内などのように、サーバとの通信が不能な状況下では、緊急時に必要となる特定の施設の情報を問い合わせすることができない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、サーバとの通信によって周辺施設の情報を取得する携帯端末装置において、特定の施設の情報を迅速にユーザに提供可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]特定の施設の情報を表す特定施設情報を提示する携帯端末装置であって、
前記特定施設情報を、前記施設が存在する位置を示す位置情報とともに記憶したサーバと、無線によって通信を行う通信部と、
現在位置を逐次測位する測位部と、
実行中の処理のバックグラウンドで、前記測位された現在位置の周囲に存在する前記特定施設情報を、前記通信部を用いて前記サーバから、所定のタイミングで繰り返し取得する情報取得部と、
前記取得された特定施設情報を、該特定施設情報の取得された現在位置に対応付けて記憶する記憶部と、
所定の操作に応じて、前記測位された現在位置に対応する前記特定施設情報を前記記憶部から読み出して、表示部に表示する情報表示部とを備える携帯端末装置。
【0013】
上記態様の携帯端末装置によれば、実行中の処理のバックグラウンドで、サーバから、特定の施設の情報を取得することができる。そのため、ユーザは、特別な操作を行うことなく、特定の施設の情報を得ることが可能になる。また、バックグラウンドで取得した情報は、記憶部に記憶されるため、トンネル内やビル群の中など、サーバとの無線による通信が困難になる場所でも、現在位置の周囲に存在する特定の施設の情報を迅速にユーザに提示することが可能になる。なお、特定施設情報は、一定のタイミングで繰り返し取得しても良いし、毎回異なるタイミングで繰り返し取得しても良い。
【0014】
[適用例2] 適用例1に記載の携帯端末装置であって、
前記情報取得部は、逐次測位された前記現在位置に基づき、当該携帯端末装置が所定の移動単位だけ移動したことを検出する毎に、前記特定施設情報の取得を行う携帯端末装置。
【0015】
上記態様の携帯端末装置によれば、所定の移動単位の移動を検出する毎に、特定施設情報を取得することができる。なお、所定の移動単位の移動ではなく、所定の時間が経過する毎に、特定施設情報を取得しても良い。
【0016】
[適用例3] 適用例2に記載の携帯端末装置であって、
更に、当該携帯端末装置のユーザが利用する移動手段を判別する移動手段判別部を備え、
前記情報取得部は、前記判別された移動手段に応じて、前記移動単位を切り換える携帯端末装置。
【0017】
上記態様の携帯端末装置によれば、ユーザの利用する移動手段に応じて、特定施設情報を取得する頻度を変動させることができる。
【0018】
[適用例4] 適用例3に記載の携帯端末装置であって、
前記情報取得部は、前記判別された移動手段が鉄道である場合に、前記移動単位を、停車駅毎とする携帯端末装置。
【0019】
上記態様の携帯端末装置によれば、停車駅毎に特定施設情報を取得するので、ユーザが乗降する駅の周囲に存在する特定の施設の情報を迅速に提供することができる。
【0020】
[適用例5] 適用例3に記載の携帯端末装置であって、
前記情報取得部は、前記判別された移動手段が、高速道路を移動中の車両である場合に、前記移動単位を、パーキングエリアあるいはサービスエリア毎とする携帯端末装置。
【0021】
上記態様の携帯端末装置によれば、パーキングエリアやサービスエリアにあるトイレやガソリンスタンドといった施設を提示することが可能になる。
【0022】
[適用例6] 適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の携帯端末装置であって、
前記記憶部は、前記情報取得部によって1回の取得で得られた前記特定施設情報に含まれる前記施設を全て包含する領域毎に、前記特定施設情報を記憶する携帯端末装置。
【0023】
上記態様の携帯端末装置によれば、記憶部に記憶されている特定施設情報を容易に管理することが可能になる。
【0024】
[適用例7] 適用例6に記載の携帯端末装置であって、
前記情報取得部は、前記サーバから前記特定施設情報を取得するのに先立ち、前記記憶部を参照して、前記測位された現在位置が含まれる前記領域を検索し、該検索によって、前記測位された現在位置が含まれる前記領域が検索された場合には、前記サーバからの前記特定施設情報の取得を行わない携帯端末装置。
【0025】
上記態様の携帯端末装置によれば、記憶部に既に記憶された特定施設情報を用いることができるので、サーバに対する通信量を削減することが可能になる。
【0026】
[適用例8] 適用例1ないし適用例7のいずれかに記載の携帯端末装置であって、
前記記憶部は、更に、逐次測位された前記現在位置の少なくとも一部を移動履歴データとして記憶し、
更に、前記記憶部に記憶された移動履歴データと、前記記憶部に記憶された特定施設情報との位置関係に基づいて、移動頻度の少ない現在位置に対応する前記特定施設情報を消去する消去部を備える携帯端末装置。
【0027】
上記態様の携帯端末装置によれば、ユーザの移動頻度の少ない地域の特定施設情報を記憶部から消去することができるので、記憶部の記憶容量を節減することができる。
【0028】
[適用例9] 適用例1に記載の携帯端末装置であって、
前記情報表示部は、前記特定施設情報に複数の前記施設の情報が含まれる場合に、所定の順位に従って、該施設の表示順序を並び替える携帯端末装置。
【0029】
上記態様の携帯端末装置によれば、必要とされる施設の緊急度に応じて、表示順序を並び替えることが可能になる。
【0030】
[適用例10] 適用例9に記載の携帯端末装置であって、
更に、当該携帯端末装置のユーザが利用する移動手段を判別する移動手段判別部を備え、
前記情報表示部は、前記判別された移動手段に応じて、前記順位を変動させる携帯端末装置。
【0031】
上記態様の携帯端末装置によれば、ユーザの移動手段に応じて、施設の表示順序を並び替えることができる。そのため、例えば、車両による移動時には、ガソリンスタンドや修理工場といった施設の表示の順位を繰り上げるといったことが可能になる。
【0032】
[適用例11] 適用例1ないし適用例10のいずれかに記載の携帯端末装置であって、
前記情報表示部は、前記所定の操作として、当該携帯端末装置に備えられた単一のボタンの1回の操作を検出した場合に、前記表示を行う携帯端末装置。
【0033】
上記態様の携帯端末装置によれば、簡便な操作によって特定施設情報を表示することが可能になる。
【0034】
[適用例12] 適用例1ないし適用例11のいずれかに記載の携帯端末装置であって、
更に、前記情報表示部に表示された前記特定施設情報の中から、いずれかの前記施設がユーザによる所定の操作によって選択された場合に、該施設までの経路を案内するナビゲーション部を備える携帯端末装置。
【0035】
上記態様の携帯端末装置によれば、表示された特定施設情報の中から、選択された施設までの経路を案内することができるため、ユーザの利便性を向上させることが可能になる。
【0036】
[適用例13] 適用例1ないし適用例12のいずれかに記載の携帯端末装置であって、
前記特定施設情報とは、ユーザの緊急時に利用される施設を表す情報である携帯端末装置。
【0037】
上記態様の携帯端末装置によれば、トイレや病院、薬局、警察、ガソリンスタンド、修理工場などの施設をユーザに提示することができる。
【0038】
[適用例14] 特定の施設の情報を表す特定施設情報をサーバから取得して携帯端末装置によって提示する特定施設情報提示システムであって、
前記サーバは、前記特定施設情報を、前記施設が存在する位置を示す位置情報とともに記憶しており、
前記携帯端末装置は、
前記サーバと無線によって通信を行う通信部と、
現在位置を逐次測位する測位部と、
実行中の処理のバックグラウンドで、前記測位された現在位置の周囲に存在する前記特定施設情報を、前記通信部を用いて前記サーバから、所定のタイミングで繰り返し取得する情報取得部と、
前記取得された特定施設情報を、該特定施設情報の取得された現在位置に対応付けて記憶する記憶部と、
所定の操作に応じて、前記測位された現在位置に対応する前記特定施設情報を前記記憶部から読み出して、表示部に表示する情報表示部とを備える特定施設情報提示システム。
【0039】
[適用例15] 特定の施設の情報を表す特定施設情報を該施設が存在する位置を示す位置情報とともに記憶したサーバから、前記特定施設情報を取得して携帯端末装置によって提示する特定施設情報提示方法であって、
前記携帯端末装置によって現在位置を逐次測位し、
前記携帯端末装置が実行している処理のバックグラウンドで、前記測位された現在位置の周囲に存在する前記特定施設情報を、無線通信によって前記サーバから、所定のタイミングで繰り返し取得し、
前記取得された特定施設情報を、該特定施設情報の取得された現在位置に対応付けて前記携帯端末装置の記憶部に記憶させ、
所定の操作に応じて、前記測位された現在位置に対応する前記特定施設情報を前記記憶部から読み出して、前記携帯端末装置の表示部に表示する特定施設情報提示方法。
【0040】
[適用例16] 特定の施設の情報を表す特定施設情報を提示するためのコンピュータプログラムであって、
前記特定施設情報を、前記施設が存在する位置を示す位置情報とともに記憶したサーバと、無線によって通信を行う機能と、
現在位置を逐次測位する機能と、
実行中の処理のバックグラウンドで、前記測位された現在位置の周囲に存在する前記特定施設情報を、前記通信部を用いて前記サーバから、所定のタイミングで繰り返し取得する機能と、
前記取得された特定施設情報を、該特定施設情報の取得された現在位置に対応付けて記憶部に記憶する機能と、
所定の操作に応じて、前記測位された現在位置に対応する前記特定施設情報を前記記憶部から読み出して、表示部に表示する機能とをコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【0041】
上記のようなシステムや方法、コンピュータプログラムによっても、上述した携帯端末装置と同様の作用効果を得ることができる。なお、上記コンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】緊急施設提示システム10の概略構成を示す説明図である。
【図2】コンテンツ情報109の一例を示す説明図である。
【図3】記憶装置105に記憶されている各データの対応関係を示す説明図である。
【図4】携帯電話200の内部構成を示すブロック図である。
【図5】緊急施設情報のデータ形式を示す説明図である。
【図6】主制御部210が並列的に実行するプロセスのフローチャートである。
【図7】表示パネル202上に緊急施設情報が表示された例を示す説明図である。
【図8】緊急施設を経由する経路が表示された例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.緊急施設提示システムの構成:
B.携帯電話の内部構成:
C.各種処理:
D.変形例:
【0044】
A.緊急施設提示システムの構成:
図1は、本発明の実施例としての緊急施設提示システム10の概略構成を示す説明図である。図示するように、本実施例の緊急施設提示システム10は、携帯端末装置としての携帯電話200と、緊急時に利用される施設や種々の施設の情報を記憶する周辺検索サーバ100と、携帯電話200に対して地図データの送信を行う地図サーバ150とから構成される。携帯電話200は、無線通信の基地局BSとインターネットINTとを介して、周辺検索サーバ100や地図サーバ150と通信を行う。図1には、携帯電話200を1台のみ示しているが、緊急施設提示システム10は、複数の携帯電話200を含んでいてもよい。
【0045】
地図サーバ150は、携帯電話200との通信を行う通信部152と、CPUやRAM、ROMからなる制御部154と、地図データ156を記憶する記憶装置155とを備えている。地図データ156には、携帯電話200が表示パネル202上に地図を表示するためのデータが記録されている。この地図データ156は、緯度、経度を座標とするベクトル形式で構成されている。地図データ156には、例えば、建物や道路、歩道、線路等の地物の形状を表すデータが含まれている。制御部154は、携帯電話200から地図データ156の取得要求があると、携帯電話200から指定された範囲のデータを地図データ156から抽出し、通信部152を介して携帯電話200に送信する。なお、本実施例では、地図データ156は、ベクトル形式で記録されているが、ラスタ形式で記録されていてもよい。
【0046】
周辺検索サーバ100は、携帯電話200との通信を行う通信部102と、CPUやRAM、ROMからなる制御部104と、種々のデータを記憶する記憶装置105とを備えている。記憶装置105には、トイレや病院、警察など、ユーザの緊急時に利用される特定の施設の情報(以下、「緊急施設情報」という)や、飲食店、レジャー施設などの種々の情報が、その施設の位置を示す位置情報と共に記憶されている。以下、これらの情報を、「コンテンツ情報109」という。制御部104は、携帯電話200からの要求を受けて、携帯電話200の現在位置の周囲に存在する施設を、コンテンツ情報109の中から検索する機能を備える。
【0047】
図2は、コンテンツ情報109の一例を示す説明図である。図示するように、周辺検索サーバ100の記憶装置105には、種々の施設について、そのジャンル、種別、名称、電話番号、住所、位置(緯度・経度)を表す情報が記憶されている。ジャンルには、例えば、「飲食店」「店舗」「病院」「宿泊」「レジャー」「車」「公共施設」などがあり、種別には、これらのジャンル毎に、例えば、飲食店について「イタリアン」、「病院」について「内科」、「公共施設」について「トイレ」や「警察」などの情報が対応付けられている。図2に示した施設のうち、緊急施設情報に該当するものは、例えば、主に人の緊急時に利用される「トイレ」や「病院」、「薬局」、「警察」、主に車両の緊急時に利用される「修理工場」、「ガソリンスタンド」などがある。
【0048】
周辺検索サーバ100の記憶装置105には、コンテンツ情報109以外にも、経路探索用のネットワークデータ103が記憶されている。ネットワークデータ103には、道路のつながり状態を表す道路ネットワークデータ106と、歩道のつながり状態を表す歩道ネットワークデータ107と、線路のつながり状態を表す線路ネットワークデータ108とが含まれている。各ネットワークデータには、駐車場や駅など、移動手段を変更可能な地点が共通して記録されている。周辺検索サーバ100は、各ネットワークデータに共通して記録されたこれらの地点を経由地とすることで、道路、歩道、線路を横断的に利用する経路を探索することができる。なお、ネットワークデータ103には、例えば、航空機の航路や、船舶の航路、自転車専用の道路などを表すネットワークデータが含まれていてもよい。
【0049】
各ネットワークデータは、ノードデータとリンクデータとにより構成されている。ノードデータは、ランドマークや交差点、分岐点、屈曲点などの地点を表すデータであり、リンクデータはこれらのノードを結ぶ線分によって道路や歩道、線路を表すデータである。ノードデータやリンクデータには、属性情報として特性情報や交通規制情報、特徴情報が対応付けられている。特性情報とは、道路や交差点の名称や、距離、車線数、幅、勾配等を示す情報である。交通規制情報とは、一方通行や右左折禁止などを示す情報である。特徴情報とは、屋根付きの歩道であることや、階段が多い歩道であることなどを示す情報である。
【0050】
図3は、記憶装置105に記憶されている各データの対応関係を示す説明図である。図示するように、歩道ネットワークデータ107と道路ネットワークデータ106と線路ネットワークデータ108とは、共通の座標系(緯度・経度)によって表されている。また、コンテンツ情報109についても、各施設の位置が、ネットワークデータ103と同一の座標系によって表されている。つまり、各データは、レイヤ状に重畳しているかのように、周辺検索サーバ100によって管理されていることになる。
【0051】
周辺検索サーバ100の制御部104は、インターネットINTを介して携帯電話200から経路探索の要求があると、ネットワークデータ103を用いて、携帯電話200から指定された出発地と目的地とを結ぶ経路を探索する。なお、携帯電話200から経由地が指定されていれば、指定された経由地を経由する出発地から目的地までの経路を探索する。経路探索のアルゴリズムとしては、周知のダイクストラ法を利用することができる。制御部104は、経路の探索が終了すると、探索された経路を表すデータを、経路データとして携帯電話200に送信する。
【0052】
携帯電話200は、音声通話やメールの送受信の機能を備えるほか、地図サーバ150から地図データを受信して、表示パネル202に表示する機能を備えている。更に、本実施例の携帯電話200は、所定のタイミングで、周辺検索サーバ100から自己の現在位置の周囲に存在する緊急施設情報を繰り返し取得する機能を備えている。携帯電話200は、周辺検索サーバ100から取得した緊急施設情報を、その施設の位置を特定する位置情報とともに内部のメモリに記憶しておく。そして、ユーザによって、携帯電話200に備えられた緊急ボタン206cが押された場合に、メモリから緊急施設情報を読み出して表示パネル202に表示する。
【0053】
なお、本実施例では上述したように、ネットワークデータ103と地図データ156とが、別々のサーバに記憶されていることとした。しかし、これらのデータは、同一のサーバに記憶されていることとしてもよい。また、本実施例では、ネットワークデータ103と、コンテンツ情報109とが同一のサーバに記憶されているものとしたが、これらは、別々のサーバに記憶されていることとしてもよい。
【0054】
B.携帯電話の内部構成:
図4は、携帯電話200の内部構成を示すブロック図である。本実施例の携帯電話200は、GPS受信機201と、表示パネル202と、無線通信回路205と、操作部206と、主制御部210と、通話制御部220と、フラッシュメモリ230とを備えている。
【0055】
GPS受信機201は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成する人工衛星から送信された電波を受信して、現在位置を測位する装置である。GPS受信機201は、例えば、3秒に1回、現在位置の測位を行う。この測位タイミングは、後述する移動手段判別部に判別されたユーザの移動手段あるいはユーザの設定により変更することが可能である。
【0056】
表示パネル202は、液晶ディスプレイとこれを駆動する駆動回路とを備えている。液晶ディスプレイは、たとえば、480画素×640画素(VGA)の解像度を有する。主制御部210は、表示パネル202を制御することで、地図や経路、現在位置などを表示する。表示パネル202には、液晶ディスプレイに限らず、有機ELディスプレイなど、種々の表示装置を採用することが可能である。
【0057】
無線通信回路205は、基地局BSとの間で無線通信を行う回路である。基地局BSには、インターネットINTを介して周辺検索サーバ100や地図サーバ150が接続されている。無線通信回路205は、基地局BSを介して、周辺検索サーバ100や地図サーバ150にアクセスすることができる。
【0058】
通話制御部220は、音声通話のための着信や呼出、音声信号と電気信号の変換などを行う回路である。通話制御部220には、スピーカ221とマイク222とが接続されており、これらにより、音声の入力や出力を行う。
【0059】
操作部206は、テンキー206aやカーソルキー206b、緊急ボタン206cなどのボタン群から構成される。ユーザは、テンキー206aやカーソルキー206bを用いることで、実行する機能の選択や、推奨経路を探索するための探索条件の入力を行う。ユーザは、緊急ボタン206cを押すことで、表示パネル202に緊急施設情報を表示させることができる。
【0060】
フラッシュメモリ230は、周辺検索サーバ100から取得した緊急施設情報や、後述する移動履歴データを記憶するための不揮発性記憶装置である。
【0061】
主制御部210は、上述した各部を制御するためのコントローラである。主制御部210は、CPU211と、RAM213と、ROM212とを備えている。CPU211は、複数のプロセスを同時並列的に実行することが可能なプロセッサである。CPU211は、ROM212に記憶された制御プログラムをRAM213にロードして実行することで、図示する各機能部(移動手段判別部216、緊急施設情報取得部215、移動履歴管理部217、データ消去部218)として動作する。
【0062】
移動手段判別部216は、操作部206を用いたユーザからの所定の設定操作を受けて、携帯電話200を利用しているユーザの移動手段を判別する。移動手段としては、例えば、徒歩、車両、鉄道などの設定を受けることができる。なお、移動手段判別部216は、GPS受信機201によって測位した現在位置から平均移動速度を求め、これにより、ユーザの移動手段を推定してもよい。例えば、平均移動速度が5km/h未満であれば、徒歩、10km/h以上であれば車両、30km/h以上であれば電車などと推定することができる。また、周辺検索サーバ100に対して、経路探索の要求を行った結果、周辺検索サーバ100から、異なる移動手段を利用する複数の経路が提示された場合に、そのうちの一の経路を選択する操作を、移動手段の設定操作として扱うこととしてもよい。例えば、徒歩による経路と、車両を利用する経路と、鉄道を利用する経路とが提示された場合には、これらのうちの一の経路を選択する操作が、移動手段として、徒歩、車両、鉄道のいずれかを選択する操作とみなすことができる。
【0063】
また、移動手段判別部216は、GPS受信機201によって測位した現在位置と、現在進行中の経路上の位置との関係からユーザの移動手段を判別することが可能である。例えば、経路探索の結果得られた経路において、現在移動中の区間が、徒歩用の区間(例えば、歩道)であれば、ユーザの移動手段は徒歩であると判別することができる。また、現在移動中の区間が、車両用の区間(例えば、車道)であれば、ユーザの移動手段は車両であると判別することができる。このように、GPS受信機201によって測位した現在位置と、現在進行中の経路との関係からユーザの移動手段を判別することとすれば、例えば、周辺検索サーバ100によって複数の移動手段を利用する経路が探索されて、これを選択した場合に、自動的に、ユーザの移動手段を判別することが可能になる。
【0064】
緊急施設情報取得部215は、GPS受信機201によって測位された現在位置の周囲に存在する緊急施設情報を周辺検索サーバ100から取得し、その取得日時と共にフラッシュメモリ230に記録する。緊急施設情報を取得する範囲は、移動手段判別部216によって判別された移動手段に応じて変更する。例えば、移動手段が徒歩であれば現在位置から半径100mの範囲、車両であれば半径5kmの範囲、鉄道であれば半径200mの範囲などとすることができる。
【0065】
図5は、フラッシュメモリ230に記憶された緊急施設情報のデータ形式を示す説明図である。図示するように、フラッシュメモリ230には、1回の緊急施設情報の取得によって得られた緊急施設をすべて含む最小矩形領域(図中のA1やA2)ごとに、取得された緊急施設情報を記憶する。こうすることで、現在位置とその周囲に存在する緊急施設の対応関係を容易に比較することが可能になる。また、このように、矩形領域毎に緊急施設情報を管理することとすれば、緊急施設情報の消去を行う場合に、その消去単位を容易に設定することができる。なお、緊急施設情報取得部215は、図5に示した矩形領域に限らず、三角形や五角形などの多角形状や、楕円状や円状などの他の形状の領域毎に緊急施設情報を記憶してもよい。また、メッシュ状の領域毎に緊急施設情報を記憶してもよい。その他にも、1つ1つの緊急施設情報を個別に記憶することとしてもよい。
【0066】
緊急施設情報取得部215は、主制御部210がメインに実行しているプロセスのバックグラウンドで、所定のタイミングで緊急施設情報の取得を行う。メインのプロセスとしては、例えば、ナビゲーションを行うためのプロセスや、携帯電話200の基本機能である待ち受け状態時のプロセス、音声通話を行うためのプロセス、メールの作成・送受信を行うためのプロセスなどがある。
【0067】
緊急施設情報取得部215は、移動手段判別部216によって判別された移動手段に応じて、緊急施設情報を取得するタイミングを変更する。例えば、移動手段が徒歩であれば、100m移動する毎に緊急取得情報を取得し、車両であれば、5km移動する毎に取得する。また、鉄道であれば停車駅する毎に緊急施設情報を取得する。所定の距離を移動したかは、GPS受信機201によって取得した現在位置の履歴から距離を計算することで、判断することができる。また、鉄道利用時に、駅に停車したかどうかは、例えば、移動手段として鉄道の利用が設定された場合において、所定時間(例えば、20秒間)、現在位置が変動しないことを検出した場合に、駅に停車したと判断することができる。なお、緊急施設情報は、一定の距離間隔ではなく、5分おきや10分おきなど、定期的な時間タイミングで取得することとしてもよい。
【0068】
緊急施設情報を取得するタイミングは、上述した以外にも、例えば、高速道路移動時において、パーキングエリアやサービスエリア、インターチェンジに到達するタイミング、あるいは、地図をメッシュ状に区切った場合に、他のメッシュに移動するタイミング、地図データが取得されるタイミングと同期したタイミング、など、種々のタイミングを適用することが可能である。なお、本実施例では、上記のように、ユーザの移動手段に応じて緊急施設情報を取得するタイミングを変更することとしたが、無論、ユーザの移動手段の異同に関わらず、同一のタイミングで、緊急施設情報を取得することとしてもよい。
【0069】
移動履歴管理部217は、GPS受信機201によって測位された現在位置の履歴を、移動履歴データとして、フラッシュメモリ230に記録する。移動履歴管理部217は、GPS受信機201によって測位された現在位置の全てを記録する必要はなく、ある程度間引いて(例えば、測位した現在位置の10分の1)、記録することとしてもよい。また、古い移動履歴データについては、順次、消去を行い、常に、所定の数以内の移動履歴だけ、フラッシュメモリ230に記録することとしてもよい。
【0070】
データ消去部218は、フラッシュメモリ230の記憶可能な容量が、所定の容量を下回った場合に、移動の頻度が少ない地点(地域)に存在する緊急施設情報の消去を行う。具体的には、データ消去部218は、フラッシュメモリ230に記憶された移動履歴データと、図5に示した矩形領域とを対比して、進入の頻度が少ない矩形領域に含まれる緊急施設情報を、その領域単位で消去する。移動の頻度が少ないかどうかは、例えば、所定期間(例えば、1ヶ月)内に、所定回数以下(例えば、10回)の進入(測位)しかされていない場合に、移動の頻度が少ないと判断することができる。なお、本実施例では、フラッシュメモリ230の記憶可能な容量が、所定の容量を下回った場合に緊急施設情報を消去することとするが、フラッシュメモリ230の残容量に関わらず、移動の頻度が少ない領域については、積極的に消去を行うこととしてもよい。
【0071】
C.各種処理:
図6は、携帯電話200の主制御部210が並列的に実行するプロセスのフローチャートである。本実施例では、メインプロセスの一例として、経路案内を行うためのナビゲーションプロセスが実行されていることとする。図6には、このナビゲーションプロセスと、緊急取得情報を取得するための緊急情報取得プロセスと、緊急ボタン206cが押された場合に実行される緊急処理プロセスのそれぞれのフローチャートを示している。
【0072】
(C1)ナビゲーションプロセス:
ナビゲーションプロセスでは、まず、主制御部210は、GPS受信機201を用いて現在位置を測位する(ステップS100)。測位された現在位置は、他のプロセスによって参照可能とするため、RAM213内の所定の共有領域に記録する。共有領域とは、すべてのプロセスが相互に参照可能な記憶領域である。
【0073】
続いて、主制御部210は、測位された現在位置に対応する地図データを地図サーバ150から取得する(ステップS110)。このとき、主制御部210は、必要な地図データがRAM213にキャッシュされている場合には、新たに地図データを取得しないこととしてもよい。
【0074】
地図データを取得すると、主制御部210は、取得した地図データが表す地図を表示パネル202に表示する(ステップS120)。その後、主制御部210は、周辺検索サーバ100から予め取得しておいた経路データに基づき、経路案内を行う処理を実行する(ステップS130)。この経路案内処理では、例えば、右折や左折の指示、進路変更を行う交差点の名称の表示、進路変更地点や目的地までの距離の表示、音声による案内などが出発地から目的地に至るまで行われる。
【0075】
ナビゲーションプロセスでは、上述した処理を繰り返し実行することで、ユーザに対して、出発地から目的地までの経路を案内することができる。
【0076】
(C2)緊急施設情報取得プロセス:
緊急施設情報取得プロセスでは、主制御部210は、現時点が、緊急施設情報を取得するタイミングであるかを判断する(ステップS200)。緊急施設情報を取得するタイミングは、上述のように、移動手段判別部216によって判別された移動手段が、徒歩であれば100m移動する毎、車両であれば5km移動する毎、鉄道であれば駅に停車する毎である。
【0077】
現時点が、緊急施設情報を取得するタイミングであると判断すれば(ステップS200:Yes)、主制御部210は、緊急施設情報取得部215を用いて、緊急施設情報を周辺検索サーバ100から取得する(ステップS210)。具体的には、主制御部210は、ナビゲーションプロセスのステップS100によって測位された現在位置の情報を、RAM213内の共有領域から読み出す。そして、その現在位置を中心として、移動手段判別部216によって判別されたユーザの移動手段に応じた範囲内に存在し、ジャンルもしくは種別が「トイレ」、「病院」、「薬局」、「警察」、「ガソリンスタンド」、「修理工場」、である施設情報を周辺検索サーバ100に要求する。周辺検索サーバ100は、かかる要求を受信すると、コンテンツ情報109の中から、該当する施設の情報を検索し、検索された施設の情報を、緊急施設情報として、携帯電話200に返信する。このように、本実施例では、携帯電話200が緊急施設の検索範囲と緊急施設に該当するジャンルや種別を指定することで、周辺検索サーバ100から緊急施設情報を取得することができる。
【0078】
なお、ステップS210において、緊急施設情報を取得する際に、主制御部210は、フラッシュメモリ230に、既に、その現在位置に対応する緊急施設情報が保存されているかを検索する。そして、既に、緊急施設情報が保存されていれば、周辺検索サーバ100からの情報の取得を行わず、フラッシュメモリ230から緊急施設情報の取得を行う。こうすることで、携帯電話200と周辺検索サーバ100との間の通信量を削減することができる。なお、フラッシュメモリ230に記憶された緊急施設情報が、その取得日時から所定の期間を経過している場合には、フラッシュメモリ230から情報を取得せず、周辺検索サーバ100から取得することとしても良い。このとき、新たに取得した緊急施設情報によって、古い緊急施設情報を上書きする。こうすることで、フラッシュメモリ230に記憶されている情報を新たな情報にリフレッシュすることができる。
【0079】
主制御部210は、周辺検索サーバ100もしくはフラッシュメモリ230から、緊急施設情報を取得すると、その取得時間と共に図5に示した矩形領域単位でフラッシュメモリ230に保存する(ステップS220)。このとき、主制御部210は、取得した緊急施設情報の種別に応じて、各施設に対してレベル付けを行った上で、フラッシュメモリ230への保存を行う。具体的には、「トイレ」、「病院」、「薬局」、「警察」、「ガソリンスタンド」、「修理工場」の順に、レベルが低くなることとする(図5参照)。なお、レベルの順位は、ユーザの移動手段に応じて変動させることとしてもよい。例えば、移動手段が車両の場合には、ガソリンスタンドのレベルが、病院や警察よりも高くなるようにレベル付けを行うことが可能である。
【0080】
上記ステップS200において、現時点が、緊急施設情報の取得タイミングでないと判断された場合には、主制御部210は、上述したステップS210およびステップS220の処理をスキップする。
【0081】
続いて、主制御部210は、データ消去部218を用いて、フラッシュメモリ230に保存した緊急施設情報を消去するかを判断する(ステップS230)。具体的には、上述のように、フラッシュメモリ230の記憶可能な容量が、所定の容量を下回った場合に、保存した緊急施設情報を消去すると判断し(ステップS230:Yes)、図5に示した矩形領域単位で緊急施設情報の消去を行う(ステップS240)。一方、フラッシュメモリ230の記憶可能容量が所定の容量以上ある場合には、緊急施設情報の消去は行わずに、ステップS240の処理をスキップする(ステップS230:No)。なお、本実施例では、図5に示した矩形領域単位で緊急施設情報の消去を行うこととしたが、各緊急施設情報を個別に消去することとしてもよい。
【0082】
緊急施設情報取得プロセスでは、上述した処理を繰り返し実行することで、周辺検索サーバ100からバックグラウンドで定期的に緊急施設情報を取得して、フラッシュメモリ230に保存することができる。なお、上記ステップS230では、表示パネル202に所定のメッセージを表示することで、ユーザに、緊急施設情報を消去しても良いかを問い合わせることとしてもよい。また、フラッシュメモリ230の記憶可能な容量が、所定の容量を下回った場合に、表示パネル202にアラートを表示して、ユーザに消去を促すこととしてもよい。つまり、緊急施設情報の消去は、ユーザの指示があった場合に行うこととしてもよい。
【0083】
(C3)緊急処理プロセス:
緊急処理プロセスでは、主制御部210は、携帯電話200の緊急ボタン206cが押されたかを常時監視する(ステップS300)。主制御部210は、緊急ボタン206cが押されたことを検出すると(ステップS300:Yes)、メインプロセスのステップS100で測位された現在位置を、RAM213内の共有領域から読み出す。そして、その現在位置を含む矩形領域内の緊急施設情報をフラッシュメモリ230から読み出す(ステップS310)。ステップS300において、緊急ボタン206cの押し下げが検出されなかった場合には(ステップS300:No)、主制御部210は、以下で説明するすべての処理をスキップする。
【0084】
続いて、主制御部210は、緊急施設情報に付されたレベルに応じてその順位を並べ替えて(ステップS320)、表示パネル202上に、緊急施設情報を表示する(ステップS330)。このとき、ナビゲーション画面やメール等の画面が表示されている場合には、その画面を消して、あるいは、その画面に重畳させて、緊急施設情報の表示を行う。
【0085】
図7は、表示パネル202上に、緊急施設情報が表示された例を示す説明図である。図示するように、本実施例では、表示パネル202上に、レベル順に、緊急施設の名称が表示される。ユーザが、カーソルキー206bを用いて、緊急施設を選択すると、電話番号や住所などの詳細情報が、画面最下部に表示される。ユーザは、いずれかの緊急施設を選択した後に、カーソルキー206b中央の決定ボタン206dを押すことで、その選択を確定することができる。
【0086】
ステップS330において、表示パネル202に緊急施設情報を表示した後、主制御部210は、ユーザによる決定ボタン206dの押し下げによって、所望の緊急施設の選択が確定されかを判断する(ステップS340)。選択が確定されたと判断すると(ステップS340:Yes)、主制御部210は、選択された緊急施設の位置情報を緊急施設情報から読み出し、読み出した位置を経由地とする新たな経路を周辺検索サーバ100に探索させる。そして、探索された経路を、ナビゲーションプロセスで案内を行う経路に再設定する(ステップS350)。こうすることで、ユーザが選択した緊急施設まで、ユーザを迅速に案内することができる。図8には、ユーザによって選択された緊急施設(トイレ)を経由する経路が、表示パネル202上に表示された例を示した。この図において、破線は、緊急施設が選択されるまでの元の経路を示している。
【0087】
上記ステップS340で、所定の操作によって、ユーザによって緊急施設の選択がキャンセルされた場合には、主制御部210は、経路の再設定を行うことなく、表示パネル202上に表示された緊急施設情報を消去する(ステップS360)。
【0088】
以上で説明した緊急処理プロセスによれば、ユーザによって緊急ボタン206cが押された場合に、現在位置の周囲に存在する緊急施設の一覧やその施設までの経路をユーザに迅速に提示することが可能になる。
【0089】
以上で説明した本実施例の緊急施設提示システム10によれば、ナビゲーション処理などのメインのプロセスのバックグラウンドで、現在位置の周囲に存在する緊急施設の情報を取得することができる。そのため、ユーザは、特別な操作を行うことなく、緊急時に必要となる情報を迅速に得ることが可能になる。また、バックグラウンドで取得した情報は、フラッシュメモリ230に保存することとしたので、トンネル内やビル群の中など、周辺検索サーバ100と通信ができない場所でも、ユーザに緊急施設情報を提示することが可能になる。
【0090】
D.変形例:
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、上記実施例では、携帯端末装置として携帯電話を適用したが、PDA(Personal Digital Assistant)やPND(Personal Navigation Device)、緊急施設情報を表示するための専用の端末などの種々の装置を適用することができる。
【0091】
上記実施例の図6に示したフローチャートでは、ナビゲーションプロセスでのみ、現在位置の測位を行い、測位された現在位置を、緊急施設情報取得プロセスや緊急処理プロセスに引き渡すこととした。しかし、ナビゲーションプロセスだけではなく、緊急施設情報取得プロセスや、緊急処理プロセスにおいても、それぞれ独立して現在位置を測位することとしてもよい。また、例えば、メインプロセスとして、携帯電話200の基本機能である待ち受け機能や、音声通話、メール機能が実行されている場合には、これらのメインプロセスにおいて現在位置を測位するのではなく、緊急施設情報取得プロセスや緊急処理プロセスにおいて、現在位置を測位することとしてもよい。
【0092】
上記実施例では、周辺検索サーバ100から取得した緊急施設のレベル付けをフラッシュメモリ230に保存する際に行うこととした(緊急施設情報取得プロセスのステップS220)。しかし、このレベル付けは、緊急施設情報を表示パネル202上に表示する際に行うこととしてもよい(緊急処理プロセスのステップS330)。また、緊急施設のレベルは、予め、周辺検索サーバ100に登録されていてもよい。
【0093】
上記実施例では、ユーザによって緊急施設が選択および確定されたときに、その緊急施設までの経路を探索することとしたが、緊急施設情報取得プロセスにおいて、緊急施設の情報を取得すると同時に、その施設までの経路をも取得することとしてもよい。また、上記実施例では、緊急施設が選択および確定された場合に、その施設を経由地とした経路を再探索することとしたが、現在位置を出発地、緊急施設を目的地とする新たな経路を、元の経路とは別に探索することとしてもよい。
【0094】
上記実施例では、ナビゲーションプロセス以外のプロセス(音声通話やメール機能)の実行中にも、緊急施設情報を取得することとしたが、ナビゲーションプロセスの実行中にのみ緊急施設情報を取得することとしてもよい。
【0095】
上記実施例では、図6に示した各プロセスが、同時並列的に実行されるとした。しかし、図6に示した各プロセスの処理は、直列的に逐次実行されることとしてもよい。このような処理方法であっても、緊急ボタン206cが押される前には、表示パネル202上にはナビゲーションの画面のみが表示されるため、携帯電話200は、緊急施設情報をバックグラウンドで取得しているといえる。
【0096】
上記実施例では、図7に示したように、緊急施設情報がリスト状に表示パネル202に表示されることとした。しかし、緊急施設情報の表示態様はこれに限られない。例えば、図8に示したような地図画像上の対応する位置に、緊急施設の名称(あるいはその種別を表すシンボル)を表示することとしてもよい。このとき、例えば、緊急施設のレベルに応じて、色分け表示を行ってもよいし、名称自体の大きさを可変させてもよい。また、地図上に緊急施設情報を表示する場合には、その施設までの経路を併せて表示することとしてもよい。なお、地図画像上に、緊急施設の名称やシンボルを表示する場合には、緊急施設情報取得部215は、周辺検索サーバ100から取得した緊急施設情報を、地図の座標系と同じ座標系を有するレイヤに記録することとしてもよい。このような態様であれば、緊急施設情報の記録されたレイヤを地図に重畳させて表示させるだけで、容易に、緊急施設情報の表示を行うことが可能になる。
【0097】
上記実施例では、緊急ボタン206cとして機械的なボタンが、携帯電話200の操作部206に設けられていることとした。これに対して、緊急ボタン206cは、表示パネル202上に、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)として表示されていることとしてもよい。この場合、緊急ボタン206cは、メインプロセスの実行中においても、画面上に表示されているものとする。
【0098】
上記実施例では、データ消去部218は、フラッシュメモリ230に記憶された移動履歴データと、図5に示した矩形領域とを対比することで、進入の頻度が少ない矩形領域に含まれる緊急施設情報を消去することとした。これに対して、例えば、図5に示した緊急施設情報のヘッダに、その矩形領域に進入した日時を記録しておき、その記録の頻度が少ない場合に、当該緊急施設情報を消去することとしてもよい。
【0099】
上記実施例では、携帯電話200が、所定のタイミングで緊急施設情報を周辺検索サーバ100から取得することとした。これに対して、周辺検索サーバ100側から、携帯電話200に対して、所定のタイミングで緊急施設情報を送信することとしてもよい。具体的には、携帯電話200は、定期的に現在位置の情報を周辺検索サーバ100に送信する。そして、周辺検索サーバ100は、携帯電話200から受信した現在位置に基づいて、現時点が緊急施設情報を送信するタイミングであるかどうかを判断する。所定のタイミングとは、上記実施例のように、移動手段が徒歩であれば100m移動する毎、車両であれば5km移動する毎などのタイミングである。そして、緊急施設情報を送信するタイミングであれば、周辺検索サーバ100は、携帯電話200に対して、緊急施設情報を送信する。携帯電話200は、周辺検索サーバ100から送信された緊急施設情報を、メインプロセスのバックグラウンドで受信する。このような態様によっても、携帯電話200は、緊急施設情報を周辺検索サーバ100から適切に取得することができる。なお、携帯電話200が現在位置を周辺検索サーバ100に送信する際には、ユーザの移動手段を示す情報を合わせて送信してもよい。こうすることで、周辺検索サーバ100側で、緊急施設情報の検索範囲を容易に判断することができる。
【0100】
上記実施例では、携帯電話200が、ジャンルや種別(例えば、「トイレ」、「病院」、「薬局」、「警察」、「ガソリンスタンド」、「修理工場」)の条件を指定することで、周辺検索サーバ100から緊急施設情報を取得することとした。つまり、携帯電話200が、緊急施設情報とはどのような施設であるかを判断していることになる。これに対して、周辺検索サーバ100側で、どの施設が緊急施設情報かを判別することとしてもよい。つまり、携帯電話200は、具体的なジャンルや種別を指定することなく、単に、「緊急施設情報」の取得を周辺検索サーバ100に要求する。周辺検索サーバ100は、この要求を受けると、緊急施設情報に該当するジャンルや種別の施設(例えば、「トイレ」、「病院」、「薬局」、「警察」、「ガソリンスタンド」、「修理工場」)を判別する。そして、判別された施設をコンテンツ情報109から検索して、緊急施設情報として携帯電話200に返信する。このような態様によっても、携帯電話200は、適切に緊急施設情報を取得することができる。また、周辺検索サーバ100が有するコンテンツ情報109に、予め、「緊急施設」という属性を付加しておいてもよい。こうすることで、ジャンルや種別を特に指定することなく、緊急施設の検索を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0101】
10…緊急施設提示システム
100…周辺検索サーバ
103…ネットワークデータ
106…道路ネットワークデータ
107…歩道ネットワークデータ
108…線路ネットワークデータ
109…コンテンツ情報
150…地図サーバ
156…地図データ
200…携帯電話
201…GPS受信機
202…表示パネル
205…無線通信回路
206…操作部
210…主制御部
211…CPU
212…ROM
213…RAM
215…緊急施設情報取得部
216…移動手段判別部
217…移動履歴管理部
218…データ消去部
220…通話制御部
230…フラッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の施設の情報を表す特定施設情報を提示する携帯端末装置であって、
前記特定施設情報を、前記施設が存在する位置を示す位置情報とともに記憶したサーバと、無線によって通信を行う通信部と、
現在位置を逐次測位する測位部と、
実行中の処理のバックグラウンドで、前記測位された現在位置の周囲に存在する前記特定施設情報を、前記通信部を用いて前記サーバから、所定のタイミングで繰り返し取得する情報取得部と、
前記取得された特定施設情報を、該特定施設情報の取得された現在位置に対応付けて記憶する記憶部と、
所定の操作に応じて、前記測位された現在位置に対応する前記特定施設情報を前記記憶部から読み出して、表示部に表示する情報表示部と
を備える携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−130024(P2012−130024A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10597(P2012−10597)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2008−16317(P2008−16317)の分割
【原出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】