説明

端末装置、通信制御装置、無線通信システム及び通信制御方法

【課題】並行的な通信を動的に抑制し、FDDモードで伝送される信号の所望の品質を維持すること。
【解決手段】周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部と、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知する通知部と、を備える端末装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末装置、通信制御装置、無線通信システム及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムにおいて、FDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)とは、アップリンク信号とダウンリンク信号とを周波数によって分割する仕組みをいう。例えば、第3世代の移動体通信方式に続く新たな通信方式であるLTE(Long Term Evolution)方式では、例外的なTD(Time Division)−LTE方式を除き、FDDが使用される。表1は、下記非特許文献1に記載されている、3GPP(Third Generation Partnership Project)によって標準化されたLTE用の周波数チャネル(バンド)のリストを示している。
【0003】
【表1】

【0004】
表1を参照すると、例えばバンド7のアップリンク(UL)の周波数は2500MHz〜2570MHz、ダウンリンク(DL)の周波数は2620MHz〜2690MHzと規定されており、UL−DL間の周波数間隔は120MHzである。また、例えばバンド5のアップリンク(UL)の周波数は824MHz〜849MHz、ダウンリンク(DL)の周波数は869MHz〜894MHzと規定されており、UL−DL間の周波数間隔は45MHzである。
【0005】
FDDにおいて、アップリンク送信とダウンリンク送信とは、同時に行われ得る。これに対し、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)では、アップリンク送信とダウンリンク送信とは、互いに異なるタイムスロットにおいて行われる。例えば、IEEE802.11a/b/g/nなどの無線LAN(Local Area Network)方式では、主にTDDが採用されている。一例として、無線LANの周波数チャネルとしてISM(Industry-Science-Medical)バンドが利用される場合には、2400MHz〜2500MHzのISMバンドにおいてアップリンク信号及びダウンリンク信号が時分割方式で送信され得る。
【0006】
このような状況において、近年、セルラ通信システムと無線LANなどのその他の種類の無線通信システムとが互いに近接する場所で同時に使用される事例が増加している。例えば、いくつかの最新鋭のモバイルルータは、LTE方式でのインターネットアクセス機能をサポートし、無線LAN方式で接続される端末装置にLTE経由での高速なインターネットアクセスを提供する。また、多くの国で実用化されているフェムトセル基地局(マクロセルよりも小さいエリアをカバーするために導入される小型基地局)が無線LAN接続機能をサポートするケースもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−267678号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP(Third Generation Partnership Project),「3GPP TS 36.101 v10.0.0」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ある装置においてセルラ通信方式に従ってFDDモードで通信し、さらに同じ装置の筐体内で他の無線通信方式に従って並行的に通信を行おうとすると、セルラ通信方式に従って送信又は受信される信号の品質が大きく低下する現象が生じ得る。その原因は、帯域外雑音、通信回路間の信号の漏洩、又は相互変調に起因する妨害波の発生など、様々である。上記特許文献1は、複数の無線通信方式を同時に動作させる際に、適応的に周波数チャネルを選択することによって、無線通信方式間の干渉を回避することを提案している。しかし、実際には、周波数チャネルの選択は、技術面又は法制度若しくは仕様などの様々な面で制約される。そのため、適応的なチャネル選択による干渉の回避には限界がある。
【0010】
従って、上述したような信号品質の低下が生じる場合に、FDDモードでの通信と他の無線通信方式に従った通信との並行的な動作を抑制し、所望の品質を維持することのできる仕組みが提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によれば、周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部と、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知する通知部と、を備える端末装置が提供される。
【0012】
また、本開示によれば、周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1通信部を介する通信をスケジューリングするスケジューリング部と、前記第1の無線通信方式に従って行われる通信と前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って行われる通信とが同じタイミングで生じることに起因する受信品質の低下を検出する検出部と、を備え、前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記第1通信部による通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、通信制御装置が提供される。
【0013】
また、本開示によれば、周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って行われる通信をスケジューリングする通信制御装置と、前記第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部、前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部、及び、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記通信制御装置へ前記受信品質の低下を通知する通知部、を備える端末装置と、を含み、前記通信制御装置は、前記端末装置から前記受信品質の低下が通知された場合には、前記第1の無線通信方式に従って行われる通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、無線通信システムが提供される。
【0014】
また、本開示によれば、周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、を備える端末装置による通信制御方法であって、前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出することと、前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知することと、を含む通信制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る技術よれば、並行的な通信を動的に抑制し、FDDモードで伝送される信号の所望の品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示に係る技術が適用され得る無線通信システムについて説明するための説明図である。
【図2】周波数チャネルの配置の一例について説明するための説明図である。
【図3】信号品質の低下の原因の一例について説明するための第1の説明図である。
【図4】信号品質の低下の原因の一例について説明するための第2の説明図である。
【図5】第1の実施形態に係る端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】図5に示した第1通信部の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図5に示した検出部による品質低下検出処理の一例について説明するための説明図である。
【図8】第1の実施形態に係る通信制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】LTEのフレーム構造の一例について説明するための説明図である。
【図10】図8に示したスケジューリング部によるスケジューリング処理の一例について説明するための説明図である。
【図11】第1の実施形態に係る通信制御処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【図12】第2の実施形態に係る通信制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】図12に示した第2通信部の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図14】無線LANの送信タイミングの一例について説明するための説明図である。
【図15】第2の実施形態に係る通信制御処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下の順序で説明を行う。
1.本開示に係る技術の概要
1−1.システムの概略
1−2.問題点の説明
2.第1の実施形態
2−1.端末装置の構成例
2−2.通信制御装置の構成例
2−3.変形例
2−4.処理の流れの例
2−5.第1の実施形態のまとめ
3.第2の実施形態
3−1.通信制御装置の構成例
3−2.処理の流れの例
3−3.第2の実施形態のまとめ
4.総括
【0019】
<1.本開示に係る技術の概要>
まず、図1〜図4を用いて、本開示に係る技術の概要を説明する。
【0020】
[1−1.システムの概略]
図1は、本開示に係る技術が適用され得る無線通信システムについて説明するための説明図である。図1を参照すると、基地局BS1、通信制御装置BS2及びBS3、端末装置UE1、UE2及びUE3、並びにアクセスポイントAP1が示されている。
【0021】
基地局BS1は、基地局BS1の周囲のセル内に位置する端末装置に、セルラ通信方式に従ってFDDモードで無線通信サービスを提供する通信制御装置である。本明細書では、セルラ通信方式の一例としてLTE方式について主に説明する。しかしながら、本開示に係る技術は、かかる例に限定されず、例えばLTE−A(LTE-Advanced)、W−CDMA((Wideband-Code Division Multiple Access)又はCDMA2000などのその他の種類のセルラ通信方式にも適用され得る。基地局BS1がLTE方式をサポートする場合、基地局BS1は、LTE eNB(evolved Node-B)とも呼ばれる。基地局BS1は、セルラ通信システムのコアネットワークN1に接続される。
【0022】
通信制御装置BS2及びBS3は、基地局BS1のセルよりも小さい領域内に補完的に無線通信サービスを提供する通信制御装置である。通信制御装置BS2及びBS3は、それぞれ、例えばマクロセルよりも小さいエリアであるフェムトセルをカバーするフェムトセル基地局であってもよい。その代わりに、各装置は、基地局BS1と接続されるモバイルルータ又は無線中継局であってもよい。通信制御装置BS2及びBS3は、それぞれインターネットN2に接続され、インターネットN2を介してコアネットワークN1にアクセスし得る。
【0023】
端末装置UE1、UE2及びUE3は、無線通信端末である。端末装置UE1、UE2及びUE3は、例えばスマートフォン、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)又はPND(Portable Navigation Device)などの任意の種類の無線通信端末であってよい。
【0024】
アクセスポイントAP1は、アクセスポイントAP1の周囲のサービスエリア内に位置する端末装置に無線通信サービスを提供する装置である。ここでは、アクセスポイントAP1がサポートする無線通信方式がIEEE802.11a/b/g/nなどの無線LAN(WLAN)方式である例について主に説明する。しかしながら、アクセスポイントAP1がサポートする無線通信方式は、例えばIEEE 802.16e(WiMAX)方式など、その他の種類の無線通信方式であってもよい。
【0025】
端末装置UE1は、近傍に位置する通信制御装置BS2及びアクセスポイントAP1を同時に利用し得る。即ち、端末装置UE1は、通信制御装置BS2との間でLTE方式に従ってFDDモードで通信し、及びアクセスポイントAP1との間で無線LAN方式に従って通信する。端末装置UE1と通信制御装置BS2との間のアップリンク信号S1の送信及びダウンリンク信号S2の送信は、同時に行われ得る。さらに、端末装置UE1とアクセスポイントAP1との間の無線信号S3の送信もまた、アップリンク信号S1及びダウンリンク信号S2の送信と同時に行われ得る。
【0026】
通信制御装置BS3は、LTE方式に従った無線通信に加えて、無線LAN接続機能をサポートする。通信制御装置BS3は、近傍に位置する端末装置UE2及びUE3により同時に利用され得る。例えば、端末装置UE2は、通信制御装置BS3との間でLTE方式に従ってFDDモードで通信する。端末装置UE3は、通信制御装置BS3との間で無線LAN方式に従って通信する。端末装置UE2と通信制御装置BS3との間のアップリンク信号S4の送信及びダウンリンク信号S5の送信は、同時に行われ得る。さらに、端末装置UE3と通信制御装置BS3との間の無線信号S6の送信もまた、アップリンク信号S4及びダウンリンク信号S5の送信と同時に行われ得る。
【0027】
このように、セルラ通信とその他の種類の無線通信とが互いに近接する場所(例えば同じ装置の筐体内)で同時に行われるケースでは、特にセルラ通信がFDDモードを採用している場合に、3種類の信号が互いに影響を与え合う可能性がある。その結果として、次項で説明するような問題点が生ずる。
【0028】
[1−2.問題点の説明]
FDDモードのセルラ通信方式をサポートする装置は、アップリンク送信とダウンリンク送信とが同時に行われても支障が生じないような特性を有するフィルタ及び増幅器などの回路素子を、通信回路内に含む。また、当該セルラ通信方式の仕様により規定されるレベルの妨害波に対する耐性を有するような回路素子の設計もなされている。例えば、上記非特許文献1によれば、FDD−LTE方式をサポートする端末装置において[out−of−band blocking:−15dBm]、[Spurious Response:−44dBm]などの入力レベルの妨害波が受信されても所定のエラーレート要件が充足されるべきことが規定されている。基地局についても類似する要件が規定されている。各装置のメーカは、これら要件を満たすためのハードウェア設計を追求している。従って、セルラ通信方式が単独で利用される場合には、アップリンク送信とダウンリンク送信とが同時に行われても、そのことを原因として過度な受信品質の低下は生じない。
【0029】
しかし、さらに同じ装置の筐体内でその他の種類の無線通信が同時に行われる場合には、例えば、過度な受信品質の低下の原因となり得る次の3種類の現象が生じ得る。
(1)受信帯域雑音の発生
(2)増幅器の線形性の低下
(3)スプリアス・レスポンスの影響
【0030】
(1)受信帯域雑音の発生
一方の通信回路のアンテナからある周波数チャネル上で発せられる送信信号の電力は、他の周波数チャネル上の帯域外雑音を発生させる。この帯域外雑音が他方の通信回路の受信帯域において発生する場合には、当該他方の通信回路における受信品質が低下する。例えば、図2を参照すると、LTEのバンド7(B7)とISMバンドとは非常に近接している。従って、一方のバンド内の周波数チャネル上で発せられる送信信号の電力に起因して、他方のバンド内に高いレベルの帯域外雑音が生じる可能性がある。
【0031】
(2)増幅器の線形性の劣化
一方の通信回路のアンテナから発せられる送信信号そのものが、他方の通信回路の受信増幅器の線形性を劣化させる場合がある。特に通信回路間の距離が近いケースでは、一方の通信回路のアンテナからの送信信号が過大なレベル(例えば0dBm程度)で他方の通信回路に入力される場合があり、それにより受信増幅器の線形性が過度に劣化して受信品質が低下する。例えば、再び図2を参照すると、LTEのバンド7(B7)とISMバンドとは非常に近接しており、いずれか一方の帯域の信号を良好に通過させ他方の帯域の信号を減衰させるようなバンドパスフィルタの設計は困難である。よって、一方のバンド内の周波数チャネル上で発せられる送信信号が他方のバンド内の周波数チャネルを受信帯域とする通信回路の受信増幅器の線形性を劣化させることを防止することは難しい。
【0032】
(3)スプリアス・レスポンスの影響
一方の通信回路の送信周波数が他方の通信回路の受信スプリアス・レスポンス周波数に相当する場合には、一方の通信回路からの送信信号が周波数変換されて他方の通信回路の受信帯域上の雑音となり得る。受信増幅器の非線形性などに起因して2つの通信回路からの送信信号の相互変調積に相当する周波数を有する妨害波が受信帯域に入り、特にFDDモードにおいて同時に受信される信号の品質が低下し得る。
【0033】
例えば、図3に示したような周波数チャネルの配置において、LTEの送信周波数チャネル(LTE−Tx,2540MHz)と受信周波数チャネル(LTE−Rx,2660MHz)との間の間隔は120MHzである。また、無線LANの周波数チャネル(WLAN,2420MHz)とLTEの送信周波数チャネルとの間の間隔も120MHzである。この場合、無線LANの周波数チャネルから120MHz×2=240MHzだけ高い帯域に3次相互変調の妨害波が発生し、当該妨害波の帯域がLTEの受信周波数チャネルに重なることになる。
【0034】
また、例えば、図4に示したような周波数チャネルの配置において、無線LANの周波数チャネル(WLAN,2.4GHz)の帯域幅は40MHzである。この場合、LTEの送信周波数チャネル(LTE−Tx)の前後40MHzの帯域に3次相互変調の妨害波が発生する。すると、LTEの受信周波数チャネル(LTE−Rx)が当該妨害波の帯域に重なることになる。
【0035】
これらのような現象を原因とする受信品質の低下をハードウェア設計のみによって防止することは、フィルタ数の増加及びアンテナ間隔の拡大などに伴うハードウェアの大型化とコストの増大とをもたらすため、現実的ではない。また、FDDモードで動作する一般的な端末装置において、送信帯域と受信帯域とを分離するデュプレクサはアンテナスイッチの出力側に配置されるため、半導体スイッチで実装されるアンテナスイッチの線形性が問題となる場合には、フィルタの付加によって特性を改善し得る余地は少ない。さらに、様々な面で周波数チャネルの選択に制約が存在する状況下では、上記特許文献1により提案されている適応的なチャネル選択によって受信品質の低下を回避することは困難である。
【0036】
そこで、次節より説明する2つの実施形態では、セルラ通信とその他の種類の無線通信とが同時に行われ得る状況下で、所望の品質を維持するために、信号の受信品質の低下が検出された場合に並行的な通信を抑制するための仕組みが導入される。
【0037】
<2.第1の実施形態>
第1の実施形態において、上述した仕組みは、図5に例示する構成を有する端末装置100と図8に例示する構成を有する通信制御装置200とによって実現される。端末装置100は、図1に例示した端末装置UE1に相当し得る。通信制御装置200は、図1に例示した基地局BS2に相当し得る。
【0038】
[2−1.端末装置の構成例]
図1は、第1の実施形態に係る端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1を参照すると、端末装置100は、第1通信部110、第2通信部130、検出部150、制御部160、記憶部170、音声処理部180、マイクロフォン182、スピーカ184、入力部186及び表示部188を備える。
【0039】
(1)第1通信部
第1通信部110は、FDDを使用する第1の無線通信方式に従って通信する通信インタフェースである。第1通信部110による通信は、スケジューリング機能を有する装置によってスケジューリングされる。そして、第1通信部110は、そのスケジューリング結果に従ってアップリンク信号を送信し、及びダウンリンク信号を受信する。第1の無線通信方式は複信方式としてFDDを使用することから、アップリンク信号の送信とダウンリンク信号の受信とは同時に行われる可能性がある。本実施形態において、第1の無線通信方式は、LTE方式である。第1通信部110による通信のスケジューリングは、LTEのスケジューリング機能を有する後述する通信制御装置200により行われる。
【0040】
本実施形態において、第1通信部110は、後述する検出部150による品質低下検出処理の際に使用される品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2を生成する。品質検出信号SIG1は、受信信号の品質を表す信号である。送信タイミング信号SIG2は、第1通信部110による信号の送信タイミングを表す信号である。
【0041】
図6は、図5に示した第1通信部110の詳細な構成の一例を示すブロック図である。図6を参照すると、第1通信部110は、アンテナセクション112、デュプレクサ114、受信セクション116、ベースバンド処理部120、送信セクション124及びバイアス制御部128を有する。アンテナセクション112は、送受信アンテナ(ANT)、外部アンテナ用の接続端子(CNT)及びアンテナスイッチ(SW)を含む。デュプレクサ114は、受信セクション116の受信帯域と送信セクション124の送信帯域とを分離する。受信セクション116は、受信増幅器(AMP)、バンドパスフィルタ(BPF)及び直交復調器118を含む。直交復調器118は、水晶発振器(OSC)により生成され周波数シンセサイザ(SYN)により調整される受信周波数で受信信号を復調する。ベースバンド処理部120は、受信セクション116において復調された受信信号の復号及び誤り訂正などを行う。また、ベースバンド処理部120は、測定部122を含む。測定部122は、復調された受信信号の品質を測定し、測定した品質を表す品質検出信号SIG1を生成する。そして、測定部122は、生成した品質検出信号SIG1を検出部150へ出力する。送信セクション124は、直交変調器126、可変利得増幅器(VGA)、バンドパスフィルタ(BPF)、送信増幅器(AMP)及びアイソレータ(ISO)を含む。直交変調器126は、水晶発振器(OSC)により生成され周波数シンセサイザ(SYN)により調整される送信周波数で、ベースバンド処理部120により符号化される送信信号を変調する。バイアス制御部128は、受信セクション116及び送信セクション124に供給されるバイアス成分を制御する。また、バイアス制御部128は、送信セクション124に供給されるバイアス成分の値に基づいて送信タイミング信号SIG2を生成する。そして、バイアス制御部128は、生成した送信タイミング信号SIG2を検出部150へ出力する。
【0042】
(2)第2通信部
第2通信部130は、第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する通信インタフェースである。本実施形態において、第2の無線通信方式は、無線LAN方式である。第2通信部130による通信においては、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式によって信号の衝突が回避される。第2通信部130による信号の送信又は受信は、第1通信部110によるアップリンク信号の送信及びダウンリンク信号の受信と同時に行われる可能性がある。
【0043】
第2通信部130は、一般的な無線LANインタフェースと同様に構成されてよい。本実施形態において、第2通信部130は、品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2を生成しない。
【0044】
(3)検出部
検出部150は、第1通信部110による通信と第2通信部130による通信とが同じタイミングで生じることに起因する第1通信部110の受信品質の低下を検出する。本実施形態において、検出部150は、第1通信部110の受信品質を表す品質検出信号SIG1と第1通信部110により信号が送信されるタイミングを表す送信タイミング信号SIG2との相関に基づいて、上記受信品質の低下を検出する。
【0045】
図7は、検出部150による品質低下検出処理の一例について説明するための説明図である。図7の最上段には、時系列で受信されるLTEの受信フレームF1〜F5が示されている。斜線で網掛けされた受信フレームF2、F4及びF5は、第1通信部110によるダウンリンク信号の受信がスケジューリングされたリソースを含む受信フレームである。
【0046】
図7の例において、品質検出信号SIG1は、ダウンリンク信号が受信された際に当該ダウンリンク信号の品質が所定の閾値よりも低い場合にはLow(0)を示し、それ以外の場合にはHigh(1)を示す信号である。なお、一般的なLTE端末は、標準仕様に従って、チャネル品質を周期的に測定して測定結果を基地局へレポートする。ここでレポートされる測定結果は、チャネル品質指標(CQI:Channel Quality Indicator)と呼ばれる。通信のスケジューリングは、このCQIに基づいて行われる。CQIは、例えば信号対雑音及び干渉電力比(SINR:Signal to Interference and Noise power Ratio)を含む。第1通信部110の測定部122は、このSINRの値を所定の閾値と比較し、SINR値が当該閾値よりも低い場合にのみLowを示す品質検出信号SIG1を生成してもよい。複数のリソースにおいて信号が受信された場合には、閾値と比較されるSINR値は、それら複数のリソースの中の最小値であってもよく、又は平均値若しくは中央値などであってもよい。送信タイミング信号SIG2は、第1通信部110によりアップリンク信号が送信されるタイミングにおいてOn(0)を示し、それ以外のタイミングではOff(1)を示す信号である。
【0047】
検出部150は、例えば、図7に例示した品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2の論理和を計算し、その計算結果を相関検出信号SIG3とする。相関検出信号SIG3は、品質検出信号SIG1がLow(0)であり且つ送信タイミング信号SIG2がOn(0)である場合にLow(0)を示し、それ以外の場合にはHigh(1)を示す信号である。さらに、検出部150は、一定の期間(例えば1つ又は複数のサブフレーム期間など)ごとに、アップリンク信号の1回の送信あたりの相関検出信号SIG3の信号レベルの平均値SIG3´を計算する。かかる平均値SIG3´は、LTEのアップリンク信号の送信とダウンリンク信号の受信品質の低下との間の相関が強いほど低い値をとる。そこで、検出部150は、平均値SIG3´が所定の閾値Th1を下回る場合に、第1通信部110による送信と第2通信部130による送信とが同じタイミングで生じることに起因する第1通信部110の受信品質の低下が生じていると判定し得る。図7の例では、受信フレームF2及びF4において、相関検出信号SIG3の平均値SIG3´が閾値Th1を下回っている。
【0048】
なお、第2通信部130による信号の送信が行われず、第1通信部110によるアップリンク信号の送信及びダウンリンク信号の受信のみが同時に行われる場合には、上述したように、各装置の適切な設計によって過度な受信品質の低下は生じない。即ち、この場合には、相関検出信号SIG3の平均値SIG3´は閾値Th1を下回らない。一方、第2通信部130による信号の送信がさらに同時に行われると、例えば図3及び図4を用いて説明したような相互変調の妨害波が発生し、過度な受信品質の低下が生じ得る。この場合には、相関検出信号SIG3の平均値SIG3´は閾値Th1を下回る。そのため、上述したように第1通信部110の受信品質に加えて第1通信部110の送信タイミングのみをモニタリングすることで、第2通信部130の送信タイミングをモニタリングしなくても、第1通信部110の受信品質の低下が第1通信部110及び第2通信部130の並行的な通信を原因として生じていると推定することができる。なお、かかる例に限定されず、第1通信部110の送信タイミングの代わりに第2通信部130の送信タイミングがモニタリングされてもよい。
【0049】
ところで、実際に受信品質が低下してから測定部122による受信品質の測定結果が得られるまでには、遅延が発生し得る。図7には、その遅延の長さD1が示されている。このような検出遅延が相関検出の精度を低下させることを回避するために、検出部150は、送信タイミング信号SIG2に遅延を付加した上で品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2の論理和を計算してもよい。
【0050】
検出部150は、このように並行的な通信に起因する第1通信部110の受信品質の低下を検出し、検出結果を制御部160へ出力する。
【0051】
(4)制御部
制御部160は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサを用いて、端末装置100の動作全般を制御する。例えば、制御部160は、LTEの基地局又は無線LANのアクセスポイントを介して他の端末装置へ送信されるデータパケットを生成し、及び他の端末装置から受信されるデータパケットを処理する。
【0052】
本実施形態において、制御部160は、図5に例示した通知部162を含む。通知部162は、検出部150により上述した受信品質の低下が検出された場合に、後述する通信制御装置200へ受信品質の低下を通知する。通知部162は、例えば、受信品質の低下を通知する品質通知メッセージを、第1通信部110を介して通信制御装置200へ送信してもよい。その代わりに、通知部162は、当該品質通知メッセージを、第2通信部130を介して通信制御装置200へ送信してもよい。第2通信部130を介して送信される品質通知メッセージは、図1に例示したインターネットN2(又は有線LANなどのその他の種類のネットワーク)を経由して通信制御装置200へ伝達され得る。品質通知メッセージには、当該メッセージが品質通知メッセージであることを示すメッセージタイプと、端末装置100を識別するための端末IDとが含められる。通信制御装置200は、かかる品質通知メッセージを端末装置100から受信すると、後に説明するように、端末装置100によるアップリンク信号の送信が行われないタイミングに優先的に、端末装置100によるダウンリンク信号の受信をスケジューリングする。
【0053】
(5)その他の構成要素
記憶部170は、ハードディスク又は半導体メモリなどの記憶媒体を用いて、端末装置100の動作のためのプログラム及びデータを記憶する。音声処理部180は、マイクロフォン182を介して入力される音声信号を符号化することによりデジタル形式の音声データを生成し、生成した音声データを制御部160へ出力する。また、音声処理部180は、制御部160から入力される音声データからアナログ形式の音声信号を生成し、生成した音声信号をスピーカ184へ出力する。入力部186は、ユーザが端末装置100を操作し又は端末装置100へ情報を入力するための入力インタフェースを提供する。表示部188は、端末装置100のユーザに向けて画像を表示するためのディスプレイであってよい。なお、図5に示した端末装置100のこれら構成要素は、一例に過ぎない。即ち、端末装置100は、図示されていない構成要素を追加的に備えてもよく、一部の構成要素が端末装置100の構成から省略されてもよい。
【0054】
[2−2.通信制御装置の構成例]
通信制御装置200は、LTE方式に従った端末装置100による通信をスケジューリングする装置である。本実施形態では、通信制御装置200が図1に例示した基地局BS2(例えばフェムトセル基地局など)に相当する例について主に説明する。しかしながら、かかる例に限定されず、通信制御装置200は、スケジューリング機能を有するその他の制御ノードであってもよい。
【0055】
図8は、第1の実施形態に係る通信制御装置200の構成の一例を示すブロック図である。図8を参照すると、通信制御装置200は、端末通信部210、ネットワーク通信部230、制御部260及び記憶部270を備える。
【0056】
(1)端末通信部
端末通信部210は、FDDを使用する第1の無線通信方式に従って通信する通信インタフェースである。本実施形態において、第1の無線通信方式は、LTE方式である。端末通信部210は、通信制御装置200の周囲のセル内に位置する(端末装置100を含む)1つ以上の端末装置に、FDDモードで無線通信サービスを提供する。端末通信部210による通信のスケジューリングは、後述する制御部260のスケジューリング部264により行われる。
【0057】
(2)ネットワーク通信部
ネットワーク通信部230は、図1に例示したインターネットN2などのネットワークと接続される通信インタフェースである。ネットワーク通信部230は、端末通信部210により受信される端末装置からのアップリンク信号に含まれる通信パケットを、コアネットワークN1へ中継する。また、ネットワーク通信部230は、端末通信部210によりダウンリンク信号を用いて端末装置へ中継されるべき通信パケットをコアネットワークN1から受信する。
【0058】
(3)制御部
制御部260は、CPU又はDSPなどのプロセッサを用いて、通信制御装置200の動作全般を制御する。本実施形態において、制御部260は、検出部262及びスケジューリング部264を含む。
【0059】
検出部262は、LTE方式に従って行われる通信と他の無線通信方式に従って行われる通信とが同じタイミングで生じることに起因する受信品質の低下を検出する。本実施形態において、他の無線通信方式とは無線LAN方式である。検出部262は、端末通信部210又はネットワーク通信部230により受信される様々なメッセージのうち、端末装置100から受信される上述した品質通知メッセージを検出する。端末装置100は、LTE方式及び無線LAN方式の双方に従って通信可能な装置である。上記品質通知メッセージは、端末装置100において、LTE方式に従って受信されるダウンリンク信号の受信品質が、アップリンク信号及び無線LAN信号の並行的な送信に起因して低下したことを通知するメッセージである。
【0060】
スケジューリング部264は、端末通信部210を介する1つ以上の端末装置によるLTE方式に従った通信をスケジューリングする。スケジューリング部264は、検出部262により端末装置100における受信品質の低下が検出された場合には、端末装置100へのダウンリンク信号の送信を、端末装置100からアップリンク信号が送信されないタイミングに優先的にスケジューリングする。このようなスケジューリングは、受信品質の低下が検出された後、所定の期間が経過するまでの間、継続的に行われてもよい。以下、図9及び図10を用いて、本実施形態に係るスケジューリング部264によるスケジューリングの一例について説明する。
【0061】
図9は、LTEのフレーム構造の一例について説明するための説明図である。LTEのフレーム構造は、ダウンリンクのリソースとアップリンクのリソースとで共通である。リソースは、時間領域でそれぞれ10msの時間長Tを有する無線フレーム(Radio Frame)に区分される。1つの無線フレームは、それぞれ1msの長さを有する10個のサブフレームから構成される。1つのサブフレームは、0.5msの時間長Tslotを有する2つのタイムスロット(0.5msスロット)を含む。1つの0.5msスロットは、通常、時間方向に7つのシンボルを有する。ここでのシンボルとは、ダウンリンクについてはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボル、アップリンクについてはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)シンボルである。1つのシンボル及び周波数方向の1つのサブキャリアは、リソースの最小単位であるリソースエレメント(Resource Element)を構成する。リソースのスケジューリングは、時間方向に1つの0.5msスロット、周波数方向に12個のサブキャリア(帯域幅は180kHz)を含むリソースブロック(Resource Block)を割当て可能な最小単位として行われる。
【0062】
図10は、スケジューリング部264によるスケジューリング処理の一例について説明するための説明図である。図10において、上段にはアップリンクリソースの6つのサブフレームSFU1〜SFU6、下段にはダウンリンクリソースの6つのサブフレームSFD1〜SFD6が示されている。ダウンリンクの各サブフレームの先頭の3つのシンボルは、PDCCH(Physical Downlink Control Channel)のために使用され得る。スケジューリング情報は、このPDCCH上で基地局から端末装置へと配信される。ダウンリンク信号は、スケジューリンク情報により示されるリソースの割当てに従って、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)上で送信される。アップリンク信号は、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)上で送信される。ダウンリンク信号のためのリソース割当ては、割り当てられるリソースと同じサブフレーム内のPDCCH上で配信されるスケジューリング情報により示される(図中の矢印A1、A2)。一方、アップリンク信号のためのリソース割当ては、割り当てられるリソースよりも4つ前のサブフレーム内のPDCCH上で配信されるスケジューリング情報により示される(図中の矢印A3)。スケジューリング部264は、これらリソースの割当てを、割当て対象のデータ量、1つ以上の端末装置からレポートされるCQI及びアップリンクのスケジューリンク要求などに基づいて決定する。
【0063】
本実施形態において、スケジューリング部264は、上述したように、検出部262により端末装置100における受信品質の低下が検出された場合には、端末装置100へのダウンリンク信号の送信を、端末装置100からアップリンク信号が送信されないタイミングに優先的にスケジューリングする。即ち、スケジューリング部264は、端末装置100から受信される上述した品質通知メッセージが検出部262により検出されると、当該メッセージに含まれる端末IDから端末装置100を識別する。そして、スケジューリング部264は、識別した端末装置100を宛て先とするダウンリンクデータが発生すると、当該端末装置100からのアップリンク送信がスケジューリングされていないタイミングに該当するPDSCHのリソースブロックを特定し、特定したリソースブロックに端末装置100へのダウンリンク送信を割り当てる。
【0064】
このようなスケジューリングにより、端末装置100においてLTEのダウンリンク信号の受信、アップリンク信号の送信及び無線LAN信号の送信が同時に行われることが回避される。こうした並行的な通信の抑制は、少なくとも一定期間の間継続される。その期間の長さは、例えば、予め固定的に定義されてもよく、又は端末装置100のユーザにより設定され、品質通知メッセージを用いてスケジューリング部264へ通知されてもよい。一定期間の経過後に端末装置100において無線LANの利用が終了していれば、並行的な通信の抑制を解除しても、ダウンリンク信号の受信品質は所望の品質に維持され得る。一方、無線LANの利用が終了しておらず、ダウンリンク信号の受信品質が再び低下する場合には、再度端末装置100から品質通知メッセージが送信され得る。また、スケジューリング部264は、並行的な通信の抑制の解除を要求するメッセージが端末装置100から受信されるまで、並行的な通信の抑制を継続してもよい。
【0065】
(4)その他の構成要素
記憶部270は、ハードディスク又は半導体メモリなどの記憶媒体を用いて、通信制御装置200の動作のためのプログラム及びデータを記憶する。例えば、端末装置100を宛て先とするダウンリンクデータが発生した後、端末装置100からのアップリンク送信が終了するまでダウンリンク送信を待機する必要がある場合には、ダウンリンクデータは、記憶部270において一時的にバッファリングされ得る。
【0066】
[2−3.変形例]
無線通信システムが上述したスケジューリングの仕組みを有する場合であっても、利用可能なリソースが少ないときには、端末装置100によるアップリンク信号の送信と同じタイミングに端末装置100によるダウンリンク信号の受信が割り当てられる可能性がある。また、品質通知メッセージの伝送が何らかのエラーによって失敗した場合にも、端末装置100によるアップリンク信号の送信と同じタイミングに端末装置100によるダウンリンク信号の受信が割り当てられ得る。さらに、端末装置100にサービスを提供している基地局が、並行的な通信の抑制のための機能をサポートしていない可能性もある。そこで、端末装置100の第1通信部110は、検出部150により受信品質の低下が検出された後、第1通信部110による送信と受信とが同じタイミングにスケジューリングされた場合に、当該タイミングでアップリンク信号を送信しなくてもよい。例えば、第1通信部110は、アップリンク信号の送信を一旦保留してダウンリンク信号のみを正常に受信した後、再度アップリンク信号の送信のためのスケジューリングを通信制御装置200に要求してもよい。それにより、端末装置100においてダウンリンク信号の受信品質の低下をより確実に回避することができる。
【0067】
[2−4.処理の流れの例]
図11は、本実施形態に係る端末装置100と通信制御装置200との間の通信制御処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0068】
図11において、まず、端末装置100の第1通信部110と通信制御装置200の端末通信部210との間で、アップリンク送信とダウンリンク送信とが同時に行われる(ステップS102)。端末装置100の検出部150は、第1通信部110によるダウンリンク信号の受信品質及びアップリンク信号の送信タイミングをモニタリングしており、第1通信部110及び第2通信部130の並行的な通信に起因するダウンリンク信号の受信品質の低下を検出する(ステップS104)。端末装置100の通知部162は、検出部150により上述した受信品質の低下が検出されると、通信制御装置200へ受信品質の低下を通知する品質通知メッセージを生成し、生成した品質通知メッセージを通信制御装置200へ送信する(ステップS106)。
【0069】
その後、端末装置100の第1通信部110は、送信すべきアップリンクデータが発生すると、通信制御装置200へスケジューリング(アップリンク送信の許可)を要求する(ステップS108)。通信制御装置200のスケジューリング部264は、かかるスケジューリング要求に応じて、いずれかのアップリンクリソースを端末装置100に割り当てる(ステップS110)。そして、スケジューリング部264は、リソースの割当てを示すスケジューリング情報をPDCCH上で端末装置100へ配信する(ステップS112)。
【0070】
さらに、通信制御装置200において、端末装置100を宛て先とするダウンリンクデータが発生したものとする(ステップS114)。スケジューリング部264は、スケジューリング対象のダウンリンクリソースと同じタイミングのアップリンクリソースが端末装置100に既に割り当てられている場合には、そのダウンリンクリソースに端末装置100を宛て先とするダウンリンクデータの送信を割り当てない(ステップS116)。ここでのスケジューリング結果を示すスケジューリング情報もまた、PDCCH上で端末装置100へ配信される(ステップS112)。
【0071】
端末装置100の第1通信部110は、ステップS112において受信したスケジューリング情報により示されるアップリンクリソースのタイミングと同じタイミングのダウンリンクリソースが自装置に割り当てられていないことを確認する(ステップS118)。そして、第1通信部110は、割り当てられたアップリンクリソースを用いて、アップリンク信号を送信する(ステップS120)。
【0072】
次に、通信制御装置200のスケジューリング部264により、端末装置100を宛て先とするダウンリンクデータの送信がスケジューリングされる(ステップS122)。そして、スケジューリング部264は、リソースの割当てを示すスケジューリング情報をPDCCH上で端末装置100へ配信する(ステップS124)。端末装置100の第1通信部110は、受信されたスケジューリング情報に従って、通信制御装置200から送信されるダウンリンク信号を受信する(ステップS126)。なお、ステップS114において発生したダウンリンクデータについてのスケジューリング及びダウンリンク送信は、ステップS120におけるアップリンク信号の送信よりも前に行われてもよい。
【0073】
[2−5.第1の実施形態のまとめ]
本実施形態によれば、FDDを使用する第1の無線通信方式と、第2の無線通信方式とに従って通信可能な端末装置100における並行的な通信に起因する受信品質の低下が、第1の無線通信方式に従った通信をスケジューリングする通信制御装置200へ通知される。通信制御装置200は、かかる通知に応じて、端末装置100における受信品質を低下させないようにスケジューリングを調整する。それにより、端末装置100によるダウンリンク信号の受信が、端末装置100によるアップリンク信号の送信とは異なるタイミングに優先的にスケジューリングされる。その結果、端末装置100による第1の無線通信方式のアップリンク信号の送信と第2の無線通信方式の信号の送信とが並行的に行われたとしても、それに応じて生じ得る雑音又は妨害波が第1の無線通信方式のダウンリンク信号の受信品質を低下させることが回避される。
【0074】
また、本実施形態によれば、端末装置100は、第1通信部110におけるダウンリンク信号の受信品質を表す信号とアップリンク信号が送信されるタイミングを表す信号との相関に基づいて、並行的な通信に起因する受信品質の低下を検出する。従って、本実施形態において提案される仕組みを、例えばLTE用の通信インタフェース及び無線LAN用の通信インタフェースのうち無線LAN用の通信インタフェースを改変することなく、比較的少ないコストで導入することができる。
【0075】
また、端末装置100は、ダウンリンク信号の受信品質を判定するために、LTE方式などの無線通信方式において周期的に基地局へレポートされるチャネル品質指標を用いることができる。この場合、ダウンリンク信号の受信品質の測定機能を追加的に実装する必要がないため、本実施形態において提案される仕組みの導入はさらに容易となる。
【0076】
<3.第2の実施形態>
第2の実施形態において、並行的な通信を抑制するための仕組みは、一般的なセルラ通信端末である端末装置300と図12に例示する構成を有する通信制御装置400とによって実現される。端末装置300は、図1に例示した端末装置UE2に相当し得る。通信制御装置400は、図1に例示した基地局BS3に相当し得る。
【0077】
[3−1.通信制御装置の構成例]
通信制御装置400は、LTE方式に従った通信をスケジューリングする装置である。さらに、通信制御装置400は、端末装置のための無線LAN接続機能をサポートする。
【0078】
図12は、第2の実施形態に係る通信制御装置400の構成の一例を示すブロック図である。図12を参照すると、通信制御装置400は、第1通信部410、第2通信部430、検出部450、制御部460、記憶部470及びネットワーク通信部480を備える。
【0079】
(1)第1通信部
第1通信部410は、FDDを使用する第1の無線通信方式に従って通信する通信インタフェースである。本実施形態において、第1の無線通信方式は、LTE方式である。第1通信部410は、通信制御装置400の周囲のセル内に位置する(端末装置300を含む)1つ以上の端末装置に、FDDモードで無線通信サービスを提供する。第1通信部410による通信のスケジューリングは、後述する制御部460のスケジューリング部464により行われる。
【0080】
本実施形態において、第1通信部410は、後述する検出部450による品質低下検出処理の際に使用される品質検出信号SIG1を生成する。品質検出信号SIG1は、受信信号の品質を表す信号である。例えば、第1通信部410は、図6に例示した端末装置100の第1通信部110と同様の構成を有してもよい。そして、第1通信部410は、端末装置から受信されるアップリンク信号の品質レベルをベースバンド処理部において測定し、品質検出信号SIG1を生成し得る。
【0081】
(2)第2通信部
第2通信部430は、第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する通信インタフェースである。本実施形態において、第2の無線通信方式は、無線LAN方式である。第2通信部430による通信においては、CSMA/CA方式によって信号の衝突が回避される。第2通信部430による信号の送信又は受信は、第1通信部410によるアップリンク信号の受信及びダウンリンク信号の送信と同時に行われる可能性がある。
【0082】
本実施形態において、第2通信部430は、後述する検出部450による品質低下検出処理の際に使用される送信タイミング信号SIG2を生成する。送信タイミング信号SIG2は、第2通信部430による信号の送信タイミングを表す信号である。
【0083】
図13は、図12に示した第2通信部430の詳細な構成の一例を示すブロック図である。図13を参照すると、第2通信部430は、アンテナセクション432、デュプレクサ434、受信セクション436、ベースバンド処理部440、送信セクション444及びバイアス制御部448を有する。アンテナセクション432は、送受信アンテナ(ANT)、外部アンテナ用の接続端子(CNT)及びアンテナスイッチ(SW)を含む。デュプレクサ434は、受信セクション436の受信帯域と送信セクション444の送信帯域とを分離する。受信セクション436は、受信増幅器(AMP)、バンドパスフィルタ(BPF)及び直交復調器438を含む。直交復調器438は、水晶発振器(OSC)により生成され周波数シンセサイザ(SYN)により調整される受信周波数で受信信号を復調する。ベースバンド処理部440は、受信セクション436において復調された受信信号の復号及び誤り訂正などを行う。送信セクション444は、直交変調器446、可変利得増幅器(VGA)、バンドパスフィルタ(BPF)、送信増幅器(AMP)及びアイソレータ(ISO)を含む。直交変調器446は、水晶発振器(OSC)により生成され周波数シンセサイザ(SYN)により調整される送信周波数で、ベースバンド処理部440により符号化される送信信号を変調する。バイアス制御部448は、受信セクション436及び送信セクション444に供給されるバイアス成分を制御する。また、バイアス制御部448は、送信セクション444に供給されるバイアス成分の値に基づいて送信タイミング信号SIG2を生成する。そして、バイアス制御部448は、生成した送信タイミング信号SIG2を検出部450へ出力する。
【0084】
(3)検出部
検出部450は、第1通信部410による通信と第2通信部430による通信とが同じタイミングで生じることに起因する第1通信部410の受信品質の低下を検出する。本実施形態において、検出部450は、第1通信部410の受信品質を表す品質検出信号SIG1と第2通信部430により信号が送信されるタイミングを表す送信タイミング信号SIG2との相関に基づいて、上記受信品質の低下を検出する。
【0085】
検出部450は、図7を用いて説明した第1の実施形態に係る端末装置100の検出部150による品質低下検出処理と同様に、上記受信品質の低下を検出してよい。より具体的には、例えば、品質検出信号SIG1は、アップリンク信号が受信された際に当該アップリンク信号の品質が所定の閾値よりも低い場合にはLow(0)を示し、それ以外の場合にはHigh(1)を示す信号である。送信タイミング信号SIG2は、第2通信部430により無線LAN信号が送信されるタイミングにおいてOn(0)を示し、それ以外のタイミングではOff(1)を示す信号である。検出部450は、品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2の論理和を計算し、その計算結果を相関検出信号SIG3とする。さらに、検出部450は、一定の期間(例えば1つ又は複数のサブフレーム期間など)ごとに、無線LAN信号の1回の送信あたりの相関検出信号SIG3の信号レベルの平均値SIG3´を計算する。そして、検出部450は、かかる平均値SIG3´が所定の閾値を下回る場合に、第1通信部410による送信と第2通信部430による送信とが同じタイミングで生じることに起因する第1通信部410の受信品質の低下が生じていると判定し得る。検出部450は、受信品質についての検出遅延が相関検出の精度を低下させることを回避するために、送信タイミング信号SIG2に遅延を付加した上で品質検出信号SIG1及び送信タイミング信号SIG2の論理和を計算してもよい。
【0086】
検出部450は、このように並行的な通信に起因する第1通信部410の受信品質の低下を検出し、検出結果を制御部460へ出力する。
【0087】
(4)制御部
制御部460は、CPU又はDSPなどのプロセッサを用いて、通信制御装置400の動作全般を制御する。本実施形態において、制御部460は、スケジューリング部464を含む。
【0088】
スケジューリング部464は、第1通信部410を介する1つ以上の端末装置によるLTE方式に従った通信をスケジューリングする。スケジューリング部464は、検出部450により上述した受信品質の低下が検出された場合には、第1通信部410によるアップリンク信号の受信を、第2通信部430により信号が送信されないタイミングに優先的にスケジューリングする。このようなスケジューリングは、受信品質の低下が検出された後、所定の期間が経過するまでの間、継続的に行われてもよい。以下、図14を用いて、本実施形態に係るスケジューリング部464によるスケジューリングの一例について説明する。
【0089】
図14は、無線LANの送信タイミングの一例を示している。無線LANのデータフレームを送信しようとする送信局(WLAN Tx)は、まず、RTS(Request To Send)フレームを送信する。RTSには、送信予定のデータフレームに対するACK(確認応答)が終了するまでのマイクロ秒単位の時間を示すNAV(Network Allocation Vector)が記述される。データ交換に関与しない他の全ての装置は、RTSに記述されたNAVを0になるまでカウントダウンし、カウントダウンが終了するまでの間は無線リソースがビジーであると判断する。RTSを送信した送信局の通信相手である受信局(WLAN Rx)は、RTSの受信からショートフレーム間スペース(SIFS:Short Inter-Frame Space)で規定された期間が経過すると、CTS(Clear To Send)フレームを送信する。CTSには、受信予定のデータフレームに対するACKが終了するまでの時間を示す(RTSのNAVより小さい)NAVが記述される。データ交換に関与しない他の全ての装置は、CTSに記述されたNAVを0になるまでカウントダウンし、カウントダウンが終了するまでの間は無線リソースがビジーであると判断する。送信局と受信局との間でRTS及びCTSの交換が完了すると、送信局から受信局へデータフレーム(DATA)が送信され、受信局から送信局へACKが返送される。この間、無線リソースがビジーであると判断する他の装置は信号を送信しないため、送信局と受信局との間で交換される信号が他の信号と衝突することが回避される。ACKの受信から分散フレーム間スペース(DIFS:Distributed Inter-Frame Space)で規定された期間が経過すると、他の装置による無線リソースへのアクセスの試行は再び可能となる。DIFSの後には、複数のスロットからなるバックオフ(BO)ウィンドウ期間が続く。バックオフウィンドウの長さは、アクセスを試行する装置ごとにランダムに選択される。無線リソースへの次のアクセス権は、最も短いバックオフウィンドウを選択した装置に与えられる。例えば、802.11b標準仕様では、バックオフウィンドウの長さは、0.62〜20.46msの範囲内で選択され得る。
【0090】
本実施形態において、スケジューリング部464は、第2通信部430におけるSIFS、DIFS、NAV及びバックオフウィンドウの長さなどの設定を参照すると共に、送信データのバッファリング状態、キャリアセンシングの結果、前回の信号の送信又は受信からの経過時間などに基づいて、第2通信部430による次回以降の信号の送信タイミングを予測する。そして、スケジューリング部464は、検出部450により受信品質の低下が検出された後、自装置に接続している端末装置からアップリンクのスケジューリング要求が受信されると、当該端末装置によるアップリンク送信を、予測した無線LAN信号の送信タイミングと重ならないPUSCHのリソースブロックに優先的に割り当てる(例えば、図14の矢印A4参照)。
【0091】
このようなスケジューリングにより、通信制御装置400においてLTEのアップリンク信号の受信、ダウンリンク信号の送信及び無線LAN信号の送信が同時に行われることが回避される。こうした並行的な通信の抑制は、少なくとも一定期間の間継続されてよい。
【0092】
(5)その他の構成要素
記憶部470は、ハードディスク又は半導体メモリなどの記憶媒体を用いて、通信制御装置400の動作のためのプログラム及びデータを記憶する。ネットワーク通信部480は、図1に例示したインターネットN2などのネットワークと接続される通信インタフェースである。
【0093】
[3−2.処理の流れの例]
図15は、本実施形態に係る端末装置300と通信制御装置400との間の通信制御処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0094】
図15において、まず、端末装置300と通信制御装置400の第1通信部410との間で、アップリンク送信とダウンリンク送信とが同時に行われる(ステップS202)。通信制御装置400の検出部450は、第1通信部410によるアップリンク信号の受信品質及び無線LAN信号の送信タイミングをモニタリングしており、第1通信部410及び第2通信部430の並行的な通信に起因するアップリンク信号の受信品質の低下を検出する(ステップS204)。
【0095】
その後、端末装置300は、送信すべきアップリンクデータが発生すると、通信制御装置400へスケジューリング(アップリンク送信の許可)を要求する(ステップS206)。通信制御装置400のスケジューリング部464は、かかるスケジューリング要求に応じて、第2通信部430による次回以降の無線LAN信号の送信タイミングを判定する(ステップS208)。そして、スケジューリング部464は、無線LAN信号が送信されないタイミングに該当するアップリンクリソースを端末装置300に割り当てる(ステップS210)。さらに、スケジューリング部464は、リソースの割当てを示すスケジューリング情報をPDCCH上で端末装置300へ配信する(ステップS212)。
【0096】
端末装置300は、ステップS212において受信したスケジューリング情報により示される割り当てられたアップリンクリソースを用いて、アップリンク信号を送信する(ステップS214)。
【0097】
[3−3.第2の実施形態のまとめ]
本実施形態によれば、FDDを使用する第1の無線通信方式と、第2の無線通信方式とに従って通信可能な通信制御装置400において、並行的な通信に起因する受信品質の低下が検出されると、その後のスケジューリングが受信品質を低下させないように調整される。その結果、端末装置からの第1の無線通信方式のアップリンク信号の受信と第2の無線通信方式の信号の送信とが並行的に行われなくなるため、並行的な通信に起因するアップリンク信号の受信品質の低下が回避される。
【0098】
<4.総括>
ここまで、図1〜図15を用いて、本開示に係る技術の2つの実施形態について詳細に説明した。これら実施形態によれば、互いに異なる無線通信方式に従って動作する通信インタフェースが同一の筐体内に含まれる場合において、少なくとも一方の無線通信方式がFDDモードで動作するときに、並行的な通信を原因として信号の受信品質が低下することを防止することができる。このような効果は、並行的な通信の抑制によって達成される。従って、これら実施形態においては、複数の通信インタフェースのアンテナ間の離隔距離を大きくする必要がないため、装置の小型化も妨げられない。さらに、フィルタ及び増幅器などの回路素子の特別な設計も要しないため、装置の部品点数を削減し、低コストで装置を製造することができる。また、並行的な通信が抑制されることから、原理的に、1つの筐体内で相互変調に起因する妨害波が受信信号と重ならない。よって、所望の受信品質を達成するために送信電力を増加させなくてよいことから、相対的に低い最大送信電力しか使用できないエリアにおいても、上述したフェムトセル基地局又はモバイルルータなどの装置を使用することが可能となる。さらに、上述した実施形態において提案される仕組みは、周波数チャネルの選択に制約を課さない。
【0099】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の制御処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAMに読み込まれ、プロセッサにより実行される。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、
前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部と、
前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知する通知部と、
を備える端末装置。
(2)
前記検出部は、前記受信品質を表す信号と前記第1通信部又は前記第2通信部により信号が送信されるタイミングを表す信号との相関に基づいて、前記受信品質の低下を検出する、前記(1)に記載の端末装置。
(3)
前記検出部は、前記通信制御装置へのレポートのために測定されるチャネル品質指標を用いて、前記受信品質を判定する、前記(2)に記載の端末装置。
(4)
前記第1通信部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された後、前記第1通信部による送信と受信とが前記通信制御装置により同じタイミングにスケジューリングされた場合に、当該タイミングで信号を送信しない、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の端末装置。
(5)
前記第1の無線通信方式は、LTE方式であり、
前記第2の無線通信方式は、無線LAN方式である、
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の端末装置。
(6)
前記通知部は、前記受信品質の低下を通知するメッセージを、前記第1通信部を介して前記通信制御装置へ送信する、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の端末装置。
(7)
前記通知部は、前記受信品質の低下を通知するメッセージを、前記第2通信部を介して前記通信制御装置へ送信する、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の端末装置。
(8)
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、
前記第1通信部を介する通信をスケジューリングするスケジューリング部と、
前記第1の無線通信方式に従って行われる通信と前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って行われる通信とが同じタイミングで生じることに起因する受信品質の低下を検出する検出部と、
を備え、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記第1通信部による通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、
通信制御装置。
(9)
前記検出部は、前記第1の無線通信方式及び前記第2の無線通信方式の双方に従って通信可能な端末装置から受信される、前記受信品質の低下を通知するメッセージを検出し、
前記受信品質は、前記端末装置により前記第1の無線通信方式に従って受信されるダウンリンク信号の品質を表し、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記端末装置へのダウンリンク信号の送信を、前記端末装置からアップリンク信号が送信されない前記タイミングに優先的にスケジューリングする、
前記(8)に記載の通信制御装置。
(10)
前記通信制御装置は、前記第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部、をさらに備え、
前記受信品質は、前記第1通信部により受信されるアップリンク信号の品質を表し、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記第1通信部によるアップリンク信号の受信を、前記第2通信部により信号が送信されない前記タイミングに優先的にスケジューリングする、
前記(8)に記載の通信制御装置。
(11)
前記スケジューリング部は、所定の期間が経過するまでの間、前記第1通信部による通信を前記タイミングに優先的にスケジューリングする、前記(8)〜(10)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(12)
前記第1の無線通信方式は、LTE方式であり、
前記第2の無線通信方式は、無線LAN方式である、
前記(8)〜(11)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(13)
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って行われる通信をスケジューリングする通信制御装置と、
前記第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部、
前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部、及び、
前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記通信制御装置へ前記受信品質の低下を通知する通知部、
を備える端末装置と、
を含み、
前記通信制御装置は、前記端末装置から前記受信品質の低下が通知された場合には、前記第1の無線通信方式に従って行われる通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、
無線通信システム。
(14)
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、を備える端末装置による通信制御方法であって、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出することと、
前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知することと、
を含む通信制御方法。
【符号の説明】
【0102】
100 端末装置
110 第1通信部
130 第2通信部
150 検出部
162 通知部
200,400 通信制御装置
210,410 第1通信部
430 第2通信部
262,450 検出部
264,464 スケジューリング部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、
前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部と、
前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知する通知部と、
を備える端末装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記受信品質を表す信号と前記第1通信部又は前記第2通信部により信号が送信されるタイミングを表す信号との相関に基づいて、前記受信品質の低下を検出する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記通信制御装置へのレポートのために測定されるチャネル品質指標を用いて、前記受信品質を判定する、請求項2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記第1通信部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された後、前記第1通信部による送信と受信とが前記通信制御装置により同じタイミングにスケジューリングされた場合に、当該タイミングで信号を送信しない、請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記第1の無線通信方式は、LTE方式であり、
前記第2の無線通信方式は、無線LAN方式である、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記通知部は、前記受信品質の低下を通知するメッセージを、前記第1通信部を介して前記通信制御装置へ送信する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
前記通知部は、前記受信品質の低下を通知するメッセージを、前記第2通信部を介して前記通信制御装置へ送信する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項8】
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、
前記第1通信部を介する通信をスケジューリングするスケジューリング部と、
前記第1の無線通信方式に従って行われる通信と前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って行われる通信とが同じタイミングで生じることに起因する受信品質の低下を検出する検出部と、
を備え、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記第1通信部による通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、
通信制御装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記第1の無線通信方式及び前記第2の無線通信方式の双方に従って通信可能な端末装置から受信される、前記受信品質の低下を通知するメッセージを検出し、
前記受信品質は、前記端末装置により前記第1の無線通信方式に従って受信されるダウンリンク信号の品質を表し、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記端末装置へのダウンリンク信号の送信を、前記端末装置からアップリンク信号が送信されない前記タイミングに優先的にスケジューリングする、
請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記通信制御装置は、前記第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部、をさらに備え、
前記受信品質は、前記第1通信部により受信されるアップリンク信号の品質を表し、
前記スケジューリング部は、前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合には、前記第1通信部によるアップリンク信号の受信を、前記第2通信部により信号が送信されない前記タイミングに優先的にスケジューリングする、
請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項11】
前記スケジューリング部は、所定の期間が経過するまでの間、前記第1通信部による通信を前記タイミングに優先的にスケジューリングする、請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項12】
前記第1の無線通信方式は、LTE方式であり、
前記第2の無線通信方式は、無線LAN方式である、
請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項13】
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って行われる通信をスケジューリングする通信制御装置と、
前記第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部、
前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出する検出部、及び、
前記検出部により前記受信品質の低下が検出された場合に、前記通信制御装置へ前記受信品質の低下を通知する通知部、
を備える端末装置と、
を含み、
前記通信制御装置は、前記端末装置から前記受信品質の低下が通知された場合には、前記第1の無線通信方式に従って行われる通信を、前記受信品質を低下させないタイミングに優先的にスケジューリングする、
無線通信システム。
【請求項14】
周波数分割複信を使用する第1の無線通信方式に従って通信する第1通信部と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式に従って通信する第2通信部と、を備える端末装置による通信制御方法であって、
前記第1通信部による通信と前記第2通信部による通信とが同じタイミングで生じることに起因する前記第1通信部の受信品質の低下を検出することと、
前記受信品質の低下が検出された場合に、前記第1通信部による通信をスケジューリングする通信制御装置へ、前記受信品質の低下を通知することと、
を含む通信制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−34149(P2013−34149A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170035(P2011−170035)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】