説明

端末装置

【課題】ITSを使用することによって、CO量を低減する技術を提供する。
【解決手段】端末装置14は、エンジンにて駆動される車両に搭載される。取得部72は、本車両の存在位置に関する情報を取得する。取得部72は、少なくともひとつの基地局装置からの信号を受信することによって、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報を取得する。導出部74は、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報と、本車両の存在位置に関する情報とをもとに、車両の走行速度を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に所定の情報が含まれた信号を送受信する端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。ITS(Intelligent Transport Systems)のような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。さらに、車車間通信に加えて路車間通信が実行されれば、通信形態が多様になる。
【0005】
車両がエンジンにて駆動される場合、排気ガスによってCOが出力される。COは地球の大気をつくる成分のひとつであり、それ自体は有害ではない。COは、地上から出る熱を吸い取る「温室効果」を有しているので、COの排出量が多くなると、環境問題である地球温暖化につながるといわれている。そのため、環境問題を考慮すると、車両から排出されるCO量の低減が要求される。前述のITSを使用することによって、CO量を低減することが望ましい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ITSを使用することによって、CO量を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、エンジンにて駆動される車両に搭載される端末装置であって、本車両の存在位置に関する情報を取得する第1取得部と、少なくともひとつの基地局装置からの信号を受信することによって、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報を取得する第2取得部と、第2取得部において取得した少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報と、第1取得部において取得した情報とをもとに、車両の走行速度を導出する導出部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様もまた、端末装置である。この装置は、エンジンにて駆動される車両に搭載される端末装置であって、本車両の存在位置に関する情報を取得する第1取得部と、少なくともひとつの基地局装置からの信号を受信することによって、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報を取得する第2取得部と、第2取得部において取得した少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報と、第1取得部において取得した情報とをもとに、車両の走行経路を導出する導出部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ITSを使用することによって、CO量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る通信システムの別の構成を示す図である。
【図3】図1または2の基地局装置の構成を示す図である。
【図4】図4(a)−(d)は、図1または2の通信システムにおいて規定されるフレームのフォーマットを示す図である。
【図5】図5(a)−(b)は、図4(a)−(d)のサブフレームの構成を示す図である。
【図6】図6(a)−(b)は、図1または2の通信システムにおいて規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す図である。
【図7】図6(a)のデータペイロードに含まれる情報を示す図である。
【図8】図1または2の車両に搭載された端末装置の構成を示す図である。
【図9】図8の通知部において表示される画面を示す図である。
【図10】図8の通知部において表示される別の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。ここで、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
【0013】
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。つまり、端末装置が制御情報の内容を認識することによって、路車間通信と車車間通信との干渉が低減される。ここで、端末装置は、路車送信期間以外の車車間通信を実行するための期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号を送信する。
【0014】
端末装置は、車両に搭載されており、車両は、エンジンで駆動される。環境問題として、エンジンによるCOの排出量の低減が望まれているが、これを解決するためのひとつの手法は、エンジンの回転数の増加を抑制することである。例えば、エンジンの回転数を増加させることによって高速で走行しても、赤信号で交差点に停止するようでは、COの排出量が増加してしまう。それよりも、エンジンの回転数の増加を抑制させることによって速度をある程度抑制しながらも、青信号で交差点を通過する方が、COの排出量を抑制できる。これに対応するために、本実施例に係る通信システムの基地局装置は、信号機の灯色および当該灯色の継続時間に関する情報が含まれたパケット信号を路車送信期間にて報知する。端末装置は、複数の基地局装置からのパケット信号を受信する。これは、複数の交差点に対する信号機の情報を取得することに相当する。端末装置は、取得した情報をもとに、青信号のタイミングで交差点を通過するための速度を導出し、速度を運転者へ通知する。なお、以下の説明において、例えば、基地局装置は路側機に対応し、端末装置は車載器に対応する。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、第1信号機16a、第2信号機16b、第3信号機16c、第4信号機16dと総称される信号機16、ネットワーク202を含む。なお、各車両12には、図示しない端末装置が搭載されている。また、エリア212は、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214は、エリア212の外側に形成されている。
【0016】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。左から右へ進む車両12のために、第1信号機16aが設置され、右から左へ進む車両12のために、第2信号機16bが設置され、上から下へ進む車両12のために、第3信号機16cが設置され、下から上へ進む車両12のために、第4信号機16dが設置されている。基地局装置10は、信号機16に対応づけて配置されている。
【0017】
通信システム100は、交差点に基地局装置10を配置する。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。パケット信号に含まれるべきデータとして、複数種類のデータが想定される。ひとつが、渋滞情報や工事情報等のデータであり、別のひとつが、信号機16に関する情報(以下、「信号機情報」という)のデータである。後者には、信号機16の設置位置、現在の灯色、当該灯色の継続時間に関する情報が含まれる。基地局装置10は、これらのデータが含まれたパケット信号としてRSUパケット信号を路車送信期間にて報知する。
【0018】
基地局装置10からのパケット信号には、設定された路車送信期間に関する情報も含まれており、当該情報が制御情報に相当する。端末装置は、エンジンにて駆動される車両12に搭載される。端末装置は、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、端末装置は、車車送信期間においてキャリアセンスにてパケット信号を報知する。ここで、端末装置は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。
【0019】
また、端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置によって転送される。一方、基地局装置10からのパケット信号を受信できない端末装置、つまりエリア外214に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。さらに、端末装置は、他の端末装置からのパケット信号を受信することによって、他の端末装置が搭載された車両の接近を運転者へ通知する。また、端末装置は、複数の基地局装置からのパケット信号に含まれた信号機情報を抽出する。その結果、端末装置は、複数の信号機16に対する信号機情報を取得する。端末装置は、複数の信号機16に対する信号機情報をもとに、青信号のタイミングで交差点を通過するための速度を導出する。また、端末装置は、青信号のタイミングで交差点を通過するための経路を導出する。経路は、受信したパケット信号を報知した基地局装置が配置された交差点の範囲で導出される。端末装置は、導出した速度や経路を運転者へ通知する。
【0020】
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の別の構成を示す。図2での方角は図1と同様であるので、ここでは説明を省略する。図2では、東西の方向にふたつの道路が示され、南北の方向に3つの道路が示されている。このような配置によって、6つの交差点が示されている。また、各交差点に基地局装置10が設置されている。そのため、第1基地局装置10aから第6基地局装置10fが互いに別の交差点に配置されている。さらに、基地局装置10と対応づけられるように、各交差点に信号機16が設置されている。図2において、車両12は、北側の道路を西から東に向かって走行している。また、車両12に搭載された端末装置は、各基地局装置10からのパケット信号を受信する。その結果、端末装置は、6つの信号機に対する信号機情報をもとに、速度や経路を導出する。なお、図2は、700MHz帯の無線周波数を使用することによって、遠方の信号機に対する信号機情報を端末装置が収集する場合を想定しているが、5GHz帯の無線周波数を使用する場合、最近接の信号機に対する信号機情報のみを端末装置は収集する。
【0021】
図3は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部30、IF部32、ネットワーク通信部80を含む。処理部26は、フレーム規定部40、選択部42、生成部46、記憶部48を含む。RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
【0022】
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0023】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0024】
フレーム規定部40は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部40は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部40は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、フレーム規定部40は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。図4(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図4(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。図4(b)−(d)の説明は、後述し、図3に戻る。
【0025】
選択部42は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部42は、フレーム規定部40にて規定されたフレームを受けつける。選択部42は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。選択部42は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。抽出方法は後述する。選択部42は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部42は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部42は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
【0026】
図4(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
【0027】
図4(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図4(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図3に戻る。選択部42は、選択したサブフレームの番号を生成部46へ出力する。
【0028】
生成部46は、選択部42から受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきRSUパケット信号を生成する。図5(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。図5(a)は、路車送信期間が設定されたサブフレームを示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、車車送信期間の順に構成される。図5(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。
【0029】
ここでは、RSUパケット信号の構成を説明する。図6(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図6(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」を配置する。データペイロードに含まれる情報については、後述する。図6(b)は、生成部46によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分が含まれている。基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含む。プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」は基地局装置10を示す。選択部42が、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、選択部42は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。図3に戻る。
【0030】
ネットワーク通信部80は、図示しないネットワーク202に接続される。ネットワーク通信部80は、ネットワーク202から、渋滞情報や工事情報等を受けつける。記憶部48は、受けつけた渋滞情報や工事情報等を記憶する。IF部32は、図示しない信号機16に接続される。IF部32は、信号機16から信号機情報を受けつける。記憶部48は、受けつけた信号機情報を記憶する。信号機情報には、交差点情報、方路ごとの信号情報等が含まれている。交差点情報は、信号機16が設置されている交差点に関する情報であり、交差点の緯度、経度、方路数が示されている。
【0031】
方路数とは、交差点から延びる道路の数であり、図1の場合、北へ向かう道路、南へ向かう道路、東へ向かう道路、西へ向かう道路の「4」になる。また、道路ごとに、信号情報が規定される。信号情報は、信号灯色情報を含む。信号灯色情報は、信号機の灯色を示しているが、信号機の灯色は定期的に変わるので、ここではスケジュールの形式で示されている。例えば、12時00分00秒から12時02分59秒までは「赤色」であり、12時03分00秒から12時05分59秒までは「青色」であるように示されている。また、各道路を識別するための識別番号が付与されていてもよい。ここで、隣接した交差点間を単位として、ひとつの道路が規定される。
【0032】
生成部46は、記憶部48に記憶された渋滞情報や工事情報等や信号機情報を抽出し、データペイロードに格納する。特に、信号機情報の内容の変更は、渋滞情報や工事情報等の内容の変更よりも短周期であるので、生成部46は、渋滞情報や工事情報等よりも高い頻度で信号機情報を抽出する。図7は、データペイロードに含まれる情報を示す。ここでは、信号機情報が含まれている場合を示す。データペイロードは、交差点情報と方路M信号情報を含む。交差点情報は前述の通りである。方路M信号情報は、M番目の方路に対する信号情報である。前述のごとく、各道路には識別番号が付与されており、各識別番号に対応した道路の方向も既知であるので、図1の第1信号機16aから第4信号機16dのいずれに対応した信号情報であるかが特定可能になる。図3に戻る。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
【0033】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
図8は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。処理部56は、生成部64、タイミング特定部60、転送決定部90、通知部70、取得部72、導出部74を含む。また、タイミング特定部60は、抽出部66、キャリアセンス部94を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図3のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
【0035】
変復調部54、処理部56は、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、変復調部54、処理部56は、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
【0036】
抽出部66は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部66は、図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部66は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述のフレーム規定部40と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部66は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
【0037】
一方、抽出部66は、RSUパケット信号を受信していない場合、図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部66は、エリア212に存在していることを推定した場合、車車送信期間を選択する。抽出部66は、エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部66は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部94へ出力する。抽出部66は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部94に指示する。
【0038】
キャリアセンス部94は、抽出部66から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部94は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部94は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部94は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部94は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、抽出部66から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、決定した送信タイミングを生成部64へ通知する。
【0039】
取得部72は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部72は、位置情報を生成部64へ出力する。
【0040】
転送決定部90は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部90は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部90は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部90は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部90は、選択対象のメッセージヘッダを生成部64へ出力する。その際、転送決定部90は、再利用回数を「1」増加させる。
【0041】
生成部64は、取得部72から位置情報を受けつけ、転送決定部90からメッセージヘッダを受けつける。生成部64は、図6(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、位置情報をデータペイロードに格納する。生成部64は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、キャリアセンス部94において決定した送信タイミングにて、変復調部54、RF部52、アンテナ50を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
【0042】
通知部70は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部70は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。取得部72は、前述のごとく、本車両12の位置情報を取得する。取得部72は、少なくともひとつの基地局装置10から受信したパケット信号も取得する。パケット信号には、信号機情報が含まれているので、取得部72は、複数の信号機16の交差点情報、信号情報を取得する。具体的には、信号機16の設置位置、各信号機16の灯色、各信号機16の灯色の継続時間に関する情報が取得される。取得部72は、取得した位置情報や信号機情報を導出部74へ出力する。
【0043】
導出部74は、取得部72から、少なくともひとつの信号機16の設置位置、各信号機16の灯色、各信号機16の灯色の継続時間に関する情報と、位置情報とを受けつける。導出部74は、これらの情報をもとに、青信号の間に交差点を通過するための車両12の走行速度を導出する。具体的に説明すると、各信号機16の灯色、各信号機16の灯色の継続時間とをもとに、導出部74は、各信号機16の灯色が青色を示している期間を導出する。また、導出部74は、各信号機16の設置位置に関する情報と、本車両12の位置情報とをもとに、各信号機16までの距離を導出する。導出部74は、各信号機16に対して、青色を示している期間によって距離を除算することによって、速度を導出する。ここで、速度は、青色を示している期間に対応するように所定の範囲を有しており、信号機16が青色を示している間に交差点を通過する範囲を有する。
【0044】
さらに、導出部74は、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16まで、途中の信号機16を含めて、速度の範囲の論理積を導出することによって、車両12の走行速度を導出する。途中の信号機16は、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16までの最短経路に含まれた信号機16に相当する。当該走行速度は、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16まで、青信号の間に交差点を通過するための速度である。なお、一定値の下限値と、法定速度に対応した上限値が規定される。
【0045】
ここで、導出部74は、始点に対応した信号機16に近い信号機16の速度の範囲から順に論理積を計算する。論理積がゼロになった場合、導出部74は、それまでに導出した速度の範囲を走行速度とする。なお、走行中の道路の進行方向に対する信号機16の信号機情報のみが使用される。つまり、後方や反対車線の信号機16に対する信号機情報は使用されない。導出部74は、走行速度を通知部70に出力する。通知部70は、導出部74から受けつけた走行速度を運転者に通知する。図9は、通知部70において表示される画面を示す。図示のごとく、推奨の走行速度が示されている。図8に戻る。このように、導出部74は、経路上の次の信号機16が赤信号である場合、青信号になるまでの時間と信号機16までの距離から、青信号の間に交差点を通過できる速度を計算する。以上の処理は、ナビゲーションシステムでの経路案内中に、先の信号機情報を取得し、「青信号で通過するための最適な速度」を通知することに相当する。なお、導出部74において論理積がゼロになった場合、通知部70は、青信号での通過が不可能である旨を運転者へ通知してもよい。これにより、運転者は、加速をあきらめるので、CO排出量を削減できる。
【0046】
また、導出部74は、取得部72から受けつけた情報をもとに、青信号の間に交差点を通過可能な走行経路を導出する。走行経路を導出する方法は、走行速度を導出する方法に類似する。これまでは、走行速度を導出する際、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16までの最短経路だけを考慮していたが、ここでは、走行経路を導出する際、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16までの複数の経路を考慮する。複数の経路が導出された場合、導出部74は、経路の始点に対応した信号機16から、終点に対応した信号機16まで最短期間で到着する経路を走行経路として選択する。導出部74は、走行経路を通知部70に出力する。なお、運転者が目的地までの経路を当初の予定から変更した場合に、導出部74は、走行速度や走行経路を更新する。
【0047】
通知部70は、導出部74から受けつけた走行経路を運転者に通知する。図10は、通知部70において表示される別の画面を示す。図10は、図2と同様に示されており、走行経路が矢印にて示されている。以上の処理は、車両12の経路に対し、信号の灯色変化のタイミングなどを考慮し、最適な運転方法を運転者に提供することに相当する。その結果、どの交差点で曲がれば赤信号を回避できるかが示される。制御部58は、端末装置14全体の動作を制御する。
【0048】
本発明の実施例によれば、青信号の間に交差点を通過可能な速度を通知するので、無駄な加速を抑制できる。また、無駄な加速が抑制されるので、CO排出量を削減できる。また、無駄な加速が抑制されるので、一定の速度での走行を実現できる。また、一定の速度での走行が実現されるので、渋滞の発生を抑制できる。また、青信号の間に交差点を通過可能な経路を通知するので、一定の速度での走行を実現できる。また、一定の速度での走行が実現されるので、CO排出量を削減できる。また、複数の信号機に対する信号機情報を使用するので、走行の継続距離を長くできる。
【0049】
また、他の基地局装置から直接受信したパケット信号だけではなく、端末装置から受信したパケット信号をもとに、他の基地局装置によって使用されているサブフレームを特定するので、使用中のサブフレームの特定精度を向上できる。また、使用中のサブフレームの特定精度が向上するので、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率を低減できる。また、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率が低減されるので、端末装置が制御情報を正確に認識できる。また、制御情報が正確に認識されるので、路車送信期間を正確に認識できる。また、路車送信期間が正確に認識されるので、パケット信号の衝突確率を低減できる。
【0050】
また、使用中のサブフレーム以外を優先的に使用するので、他の基地局装置からのパケット信号と重複したタイミングで、パケット信号を送信する可能性を低減できる。また、いずれのサブフレームも他の基地局装置によって使用されている場合に、受信電力の低いサブフレームを選択するので、パケット信号の干渉の影響を抑制できる。また、端末装置によって中継された制御情報の送信元になる他の基地局装置からの受信電力として、当該端末装置の受信電力を使用するので、受信電力の推定処理を簡易にできる。
【0051】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0052】
10 基地局装置、 12 車両、 14 端末装置、 16 信号機、 20 アンテナ、 22 RF部、 24 変復調部、 26 処理部、 30 制御部、 32 IF部、 40 フレーム規定部、 42 選択部、 46 生成部、 48 記憶部、 50 アンテナ、 52 RF部、 54 変復調部、 56 処理部、 58 制御部、 60 タイミング特定部、 64 生成部、 66 抽出部、 70 通知部、 72 取得部、 74 導出部、 80 ネットワーク通信部、 90 転送決定部、 94 キャリアセンス部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにて駆動される車両に搭載される端末装置であって、
本車両の存在位置に関する情報を取得する第1取得部と、
少なくともひとつの基地局装置からの信号を受信することによって、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第2取得部において取得した少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報と、前記第1取得部において取得した情報とをもとに、車両の走行速度を導出する導出部と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
エンジンにて駆動される車両に搭載される端末装置であって、
本車両の存在位置に関する情報を取得する第1取得部と、
少なくともひとつの基地局装置からの信号を受信することによって、少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第2取得部において取得した少なくともひとつの信号機の設置位置、各信号機の灯色、各信号機の灯色の継続時間に関する情報と、前記第1取得部において取得した情報とをもとに、車両の走行経路を導出する導出部と、
を備えることを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−3352(P2012−3352A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135595(P2010−135595)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】