説明

端面検査方法および端面検査装置

【課題】積層体の切断端面に沿って上向きおよび下向きのバリなどの欠陥部位を精度よく求める。
【解決手段】積層体の端面を撮影し、取得した画像データから積層体の領域を求め、積層体の領域の画像データを利用して当該領域に近似する矩形を求め、積層体の領域から矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求め、取得した画像データから積層体の総厚みよりも薄い芯材の領域を算出し、求めた芯材の領域から予め決めた芯材の厚み分をノイズとみなして除去し、芯材の欠陥部位を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、芯材に活物質を塗布した積層体として、二次電池の電極板が知られている。金属薄または金属板に活物質を塗布し、所定の枚葉状に切断した電極板を製造する過程で、電極板の端面で発生する欠けやバリを検査している。具体的には、光の照射により発光する背景色調板上に枚葉の電極板を載置し、照明装置によって電極板の表面に向けて光を照射しながら当該電極板の表面をカメラで撮影する。
【0002】
取得した画像データに微分フィルタをかけて背景色調板、芯材および活物質からの光の反射度合いの変化を微分処理し、画像データにおける濃淡レベルの変化によって電極板の輪郭を強調している。その後、ノイズ処理を行って当該輪郭抽出データと予め定めた既定値と比較する。当該既定値の範囲内に輪郭抽出データが収まっているかどうかによって、電極板の欠けやバリを検出している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−40383号公報
【0004】
従来の検査方法を利用してバリの発生した電極板を除去して製造した二次電池であるにも関わらず、不良品が発生している。そこで、当該不良品の発生原因を鋭意検討したところ、次のような新たな知見を発明者等は得た。
【0005】
すなわち、従来の検査方法では電極板を平面視したときに、その幅方向からはみ出るバリを検出するのに有効に機能している。しかしながら、電極板を平面視したとき、バリは幅方向のみならなす、その先端が上側または下側に向いているものも含まれる。これら上下向きのバリを従来の検査では検出することができなかった。それ故に、絶縁物であるセパレータを介在させて複数枚の電極板を多層にしたとき、上下向きのバリがセパレータに突き刺さって貫通し、セパレータを介して交互に積層された正極と負極の電極板が短絡していることが分かった。
【0006】
さらに、電極板のみならず、活物質表面の凹凸差の大きい箇所では、芯材と同様に上向きのバリ状になっており、当該活物質が積層時に押しつぶされ、粉塵となって二次電池内を汚染していた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、芯材または芯材に塗布物質が塗布された積層体の端面で発生しているバリを精度良く検出することのできる端面検査方法および端面検査装置を提供することを主たる目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、芯材に塗布物質を塗布して形成した積層体の端面を検査する端面検査方法であって、
前記端面を撮影する撮影過程と、
前記撮影過程で取得した画像データから前記積層体の領域を求める第1領域抽出過程と、
前記第1領域抽出過程で求めた積層体の領域の画像データを利用して当該領域に近似する矩形を求める矩形近似過程と、
前記積層体の領域から前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める第1欠陥部位算出過程と、
前記撮影過程で取得した画像データから前記積層体の総厚みよりも薄い芯材の領域を抽出する第2領域抽出過程と、
前記第2領域抽出過程で求めた芯材の領域から予め決めた芯材の厚み分をノイズとみなして除去し、芯材の欠陥部位を抽出する第2欠陥部位算出過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
(作用・効果) この方法によれば、積層体の断面、端面の領域と当該領域を形成する画像データを利用して矩形を近似し、実際の積層体の領域と当該矩形の差分をとる。差分により余った領域と予め決めた基準値との比較から積層体(塗布物質)で発生しているバリなどの欠陥部位を検出することができる。すなわち、積層体を構成する塗布物質の端面を正面視したとき、積層体の表裏面側に向かって発生している上向きおよび下向きのバリなどの欠陥部位を精度よく検出することができる。
【0010】
芯材は、積層体の総厚みよりも薄く、積層体の長手中心に沿って存在している。また、検出対象の欠陥部位は、積層体の表裏面に向かう上下向きの部位なので、当該欠陥部位は、実際の芯材よりもその厚みが大きく表示される。それ故に、予め決まっている芯材の厚み分をノイズとみなして画像データから除去することにより、欠陥部位のみを抽出することができる。
【0011】
したがって、芯材よりも大きい厚みの積層体の領域から塗布物質に発生している欠陥部位を求めるための演算処理よりも、芯材に発生している欠陥部位を求める演算処理を簡素化することができる。その結果、塗布物質の欠陥部位を求める方法と同じ方法で芯材を求める場合に比べて演算処理を高速化することができる。
【0012】
上記方法において、矩形近似過程で求めた矩形と積層体の領域と合わせ込むフィッティング過程を含み、
前記第1欠陥部位算出過程は、前記積層体の領域からフィッティング後の前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求めることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、実際の積層体の領域に矩形をフィッティングさせるので、バリを精度よく検出することができる。つまり、本来矩形内に収まっていなければならない、積層体の端面形状からはみ出る部位が求められる。当該部位をバリなどの芯材および塗布物質の欠陥部位とみなすことができる。
【0014】
また、上記方法において、第1領域抽出過程で求めた積層体領域と矩形近似過程で求めた矩形領域の差分をとり、余った領域の面積に応じて積層体の長手方向に沿って画像を所定数に分割する分割過程を含み、
前記分割した画像ごとに矩形近似過程から第21欠陥部位算出過程を繰り返して塗布物質の欠陥部位を求めることが好ましい。
【0015】
この方法によれば、積層体を長手方向に分割してから再度矩形近似をするので、矩形を長方形または正方形に近い形状として求めることができる。すなわち、積層体が長手方向に波打っている場合や湾曲している場合に発生しがちな誤差を無くすことができ、欠陥部位をより精度よく求めることができる。
【0016】
また、上記方法において、第2欠陥部位算出過程は、求めた芯材の画像を画素単位で削除してゆく収縮処理および収縮処理後の画像に画素単位で増加させる膨張処理を順に行い、欠陥部位のみを求めることが好ましい。
【0017】
この方法によれば、収縮処理により実際の芯材の画像が除去されてゆき、芯材よりも厚みが大きく映り込んでいる欠陥部位のみが残る。収縮処理後の画像に対して膨張処理することにより、残った欠陥部位の画像のみ明確に抽出することができる。
【0018】
また、上記方法において、第1領域抽出過程の後に、芯材および積層体のうち少なくとも積層体の領域を強調する領域強調処理過程を備えることが好ましい。
【0019】
この方法によれば、正確に取得しきれていない画像データ部分を補完し、芯材および積層体の領域を強調することができる。
【0020】
なお、上記方法において、所定幅にスリットされた帯状の積層体の切断端面を検査するのに適用させることができる。
【0021】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0022】
すなわち、芯材に塗布物質を塗布して形成した積層体の端面を検査する端面検査装置であって、
前記積層体の端面に向けて光を照射する照射ユニットと、
光の照射された芯材の端面を撮影する撮影ユニットと、
前記撮影ユニットで取得した画像データを利用して芯材および積層体の欠陥部位を検査する画像処理ユニットとを備え、
前記画像処理ユニットは、撮影ユニットで取得した画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部から画像データを読み出し、当該画像データから前記積層体および芯材の領域を求める領域抽出部と、
前記積層体の領域の画像データを利用して当該領域に近似する矩形を求める矩形近似部と、
前記積層体の領域から前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める第1欠陥部位算出部と
前記芯材の領域から予め決めた芯材の厚み分をノイズとみなして除去し、芯材の欠陥部位を求める第2欠陥部位算出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、上記方法を好適に実施することができる。
【0024】
なお、当該構成において、画像処理ユニットは、矩形近似部で求めた矩形を積層体の領域に合わせ込むフィッティング部を備え、
前記第1欠陥部位算出部は、前記積層体の領域ごとにフィッティングにより求めた矩形の領域との差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求めることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、積層体が湾曲または波打っている場合、近似した矩形も湾曲の傾きに応じて傾く。このとき、実際の積層体および芯材の画像領域の四隅に近似した矩形の四隅は重ならない。しかしながら、フィッティングした矩形は重なる。したがって、画像領域全体から欠陥部位をより精度よく検出することができる。
【0026】
さらに、画像処理ユニットは、積層体の領域と矩形領域の差分をとり、余った領域の面積に応じて積層体の長手方向に沿って画像を所定数に分割する分割判定部を備えることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、表示されている積層体を長手方向に沿って複数個に画像に分割することにより、当該積層体の領域にフィッティングさせる近似矩形を長方形または正方形に近づけることができる。したがって、積層体が湾曲または波打っている場合であっても、その端面に発生している欠陥部位をより精度よく検出することができる。
【0028】
また、この構成において、領域抽出部で求めた芯材および積層体の画像のうち少なくとも積層体の領域を強調する領域強調部を備えることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、正確に取得しきれていない画像データ部分を補完し、芯材および積層体の輪郭を強調することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の端面検査方法および端面検査装置によれば、積層体を構成する芯材と塗布物質の端面に沿って上向きおよび下向きのバリなどの欠陥部位を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例に係る端面検査装置の概略構成図である。
【図2】電極板の端面検査を示す図1のA−A矢視断面図である。
【図3】実施例装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】実施例装置による検査処理を示すフローチャートである。
【図5】塗布物質の欠陥部位を求めるフローチャートである。
【図6】芯材の欠陥部位を求めるフローチャートである。
【図7】電極板を撮像した画像である。
【図8】二値化処理後の塗布物質を強調した領域画像である。
【図9】塗布物質の矩形近似処理の模式図である。
【図10】塗布物質のフィッティング処理の模式図である。
【図11】分割後の塗布物質の矩形近似処理の模式図である。
【図12】分割後の塗布物質のフィッティング処理の模式図である。
【図13】分割画像の塗布物質から欠陥部位を求める模式図である。
【図14】芯材の領域画像である。
【図15】芯材の収縮処理した画像である。
【図16】膨張処理によって鮮明化した欠陥部位の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。なお、本実施例では、図3に示すように、二次電池(例えば、リチウムイオン電池など)に利用する芯材4の両面に塗布物質5(例えば、活物質など)の塗布された正極または負極用の電極板3を利用している。ボビンに巻回された長尺の当該電極板3を長手方向に沿って所定幅に切断した当該端面に発生しているバリなどの欠陥部位を検査する装置を例に採って説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施例に係る端面検査装置の概略構成を示す図である。
【0034】
この端面検査装置は、光学ユニット1と画像処理装置2などから構成されている。
【0035】
光学ユニット1は、ガイドローラ6によって所定のテンションの付与された電極板3の端面に向けて配備された光学カメラ7、電極板3の撮影領域に向けて光を照射する照射ユニット8および電極板3を挟んで光学カメラ7に対向配備された背景板9などから構成されている。
【0036】
背景板9としては、撮影対象物に応じて、反射用の白色板または光を吸収する黒色板などを適宜に変更する。なお、本実施例では黒色板を利用している。
【0037】
画像処理装置2は、図3に示すように、撮影条件などを設定入力する操作部10、設定入力画像や撮影した画像を表示する表示部11および電極板3の端面に発生している欠陥部位を求める画像処理ユニット12などを備えている。
【0038】
画像処理ユニット12は、記憶部13、領域抽出部14、領域強調部15、矩形近似部16、分割判定部17、第1欠陥部位算出部18および第2欠陥部位算出部19を備えている。なお、当該画像処理ユニット12を構成する各部の機能については、図4から図6に示すフローチャートを利用し、以下の当該実施例装置の動作説明において詳述する。
【0039】
<ステップS1> 条件設定
検査対象の電極板3の全長、幅、芯材4および塗布物質5の厚みなどが、操作部10から入力または表示部11に表示されている情報から選択される。また、芯材4および塗布物質5の欠陥部位の判定に利用する基準値や設定値なども予め設定入力される。これら設定条件は、記憶部13に格納される。
【0040】
<ステップS2> 画像取得
条件設定が完了し、電極板3の搬送と同時に光学カメラ7が電極板3の端面の撮影を開始する。撮影された図7に示す画像の当該画像データは、リアルタイムに記憶部13に記憶されてゆく。記憶された画像データは、領域抽出部14によって読み出され、二値化処理される。その後、当該二値化処理された画像データに基づいて、第1領域抽出側と第2領域抽出側の2つの処理が並列で実行される。そこで、先ず、第1領域抽出の処理について説明する。なお、第1領域抽出側の処理系統では、電極板3の外形から塗布物質5に発生しているバリを検出している。
【0041】
<ステップS3> 第1領域抽出
領域抽出部14は、先ず、電極板3の領域、すなわち、塗布物質5の領域を求める。例えば、画像に表示される撮影対象物は、背景板9および電極板3である。また、電極板3は、芯材4と塗布物質5から構成されている。これら3つの物質は、反射率が異なる。つまり、金属薄である芯材4の輝度が最も高く、塗布物質5、背景板9の順に輝度が低くなってゆく。そこで、二値化処理の画像データにおいて、0から255階調の範囲で各物質の濃淡レベルに応じたものを実験などのよって予め基準値を求めておき、取得した実画像データと基準値を比較し、図8に示すように、塗布物質5の領域のみを求める。
【0042】
<ステップS4> 領域強調処理
領域強調部15は、求めた塗布物質5の領域画素に対して膨張および収縮させるクロージング処理を少なく1回行う。このとき、塗布物質5の端面に凹凸または切断時の粉塵の付着による光の拡散によって生じる輝度ムラなどの影響で欠損する画素が補完される。したがって、図8に示すように、連続的に繋がった塗布物質5の領域が強調される。なお、当該領域強調処理は、クロージング処理以外にフィルタリング処理を利用してもよい。
【0043】
<ステップS5> 矩形近似処理
矩形近似部16は、塗布物質5の輪郭座標を利用して最小二乗法により、図9に示すように、実際の輪郭画像に近似させた矩形20を求める。
【0044】
<ステップS10> 第1欠陥部位算出
当該ステップS10では、塗布物質5の欠陥部位を求める。当該欠陥部位を求めるために、図5に示すように、以下のステップS13からステップS18の処理が繰り返し実行される。
【0045】
<ステップS11> 比較処理
ステップS4で求めた塗布物質5の領域とステップS5で求めた矩形領域の差分をとる。
【0046】
<ステップS12> 分割判定
分割判定部17は、ステップS6で差分し、余った領域、すなわち、図10に示す近似矩形からはみ出るハッチング部分の面積を算出する。当該面積に応じて電極板3の画像を長手方向に最適となる分割数を求める。例えば、実験などにより予め決めた設定値で当該面積を除算し、その値を四捨五入したときの値が2以上であれば、分割有りと判定し、2未満であれば分割不要と判定する。なお、当該判定は設定条件などによって適宜変更される。例えば、分割演算結果が“0”または“1”となるように設定し、“0”の場合には分割無とし、“1”の場合は分割有と判定していもよい。
【0047】
すなわち、余った領域の面積が大きい場合ほど、電極板3が湾曲している。したがって、後の矩形近似処理の際に、求める矩形と実際の塗布部材5の輪郭とが略一致するような値を設定値とする。
【0048】
判定の結果、分割が必要な場合はステップS13にすすむ。分割が不要な場合はステップS14にすすむ。
【0049】
<ステップS13> 分割処理
ステップS12で求めた分割数に応じて、画像データを分割する。
【0050】
<ステップS14> 矩形近似処理
矩形近似処理部16は、分割画像ごとに矩形近似処理を実行する。本実施例では3分割され、図11に示すように、その左側の画像から塗布物質5の領域に近似する矩形領域21を求める。例えば、塗布物質5の領域の輪郭座標を利用して最小二乗法により実際の塗布物質5の領域に近似させた矩形領域21を求める。
【0051】
<ステップS15> フィッティング処理
矩形近似処理が完了すると、図12に示すように、分割画像内の塗布物質5の領域の四隅と近似矩形の四隅とが一致するようにフィッティング処理を行う。
【0052】
<ステップS16> 欠陥部位算出
第1欠陥部位算出部18は、図13に示すように、分割された塗布物質5の領域とフィッティング後の矩形領域の差分をとり、矩形領域からはみ出る部分21を塗布物質5の欠陥部位候補として求める。
<ステップS17> 欠陥判定処理
欠陥部位算出が完了した後、算出した欠陥部位候補に対し、予め決めた欠陥基準値との比較から欠陥の判定を行う。この判定により、最終的に致命的となり得る欠陥部位21のみを算出する。ここで、致命的な欠陥部位21とは、電極板3をセパレータを介して積層したとき、セパレータを貫通しきる恐れのある高さに設定される。したがって、セパレータの厚みなどのよって適宜に変更される。
【0053】
<ステップS18> 分割数=計数値
欠陥部位算出部18は、ステップS12で求めた分割数に達したかどうかを判別する。所定数に達すれば、ステップS30にすすむ。所定数に達していなければ、所定数に達するまでステップS14からの処理が繰り返される。
【0054】
次に、第2領域抽出の処理について説明する。なお、第2領域抽出側の処理系統では、芯材4に発生しているバリなどの欠陥部位を抽出している。
【0055】
<ステップS20> 第2領域抽出
領域抽出部14は、取得した画像データと予め決めた芯材4の基準値を比較し、図14に示すように、芯材4の領域を求める。
【0056】
<ステップS21> 第2欠陥部位算出
当該ステップS21では、芯材4の欠陥部位を求めるために、図6に示すように、以下のステップS22からステップS26の処理が実行される。
【0057】
<ステップS22> 収縮処理
芯材4の厚みは数十から数百μmなので、画面に映り込む領域は、図14に示すように、光の拡散などによって途切れた細いパターンとして映り込んでいる。本実施例では、欠陥部位のない良品の芯材4の厚みが数画素程度で映し出されるように設定されている。第2欠陥部位算出部19は、欠陥部位のない良品の芯材4の画像をノイズとみなし当該画像に対して収縮処理を行う。したがって、厚みが数画素程度の芯材4は、当該収縮処理を繰り返すことにより収縮されつつ、ひいては除去されてゆく。このとき、欠陥部位23は、芯材4の厚みよりも厚みの大きな画像として映り込んでいるので、収縮処理後であっても、図15に示すように、収縮はされつつも画像データとして残っている。
【0058】
<ステップS23> 所定数=計数値
第2欠陥部位算出部19は、予め決めた芯材4の厚みに相当する画素数を除去しきる回数に達しかどうか判別する。判別の結果、所定回数に達すれば次のステップS24にすすむ。所定回数に達していなければ、ステップS22の処理が繰り返される。
【0059】
<ステップS24> 膨張処理
第2欠陥部位算出部19は、収縮処理後に残った画素に対して膨張処理をする。例えば、収縮処理を行った回数まで膨張処理を繰り返すか、あるいは識別し易いサイズになる所定回数まで実行する。したがって、図16に示すように、欠陥部位23のみが強調されて表示部11に表示される。
【0060】
<ステップS25> 所定数=計数値
第2欠陥部位算出部19は、予め決めた膨張処理の回数に達しかどうか判別する。判別の結果、所定回数に達すれば次のステップS30にすすむ。所定回数に達していなければ、ステップS24の処理が繰り返される。
【0061】
<ステップS26> 欠陥判定処理
膨張処理の終了後に算出した欠陥部位候補に対し、予め決めた欠陥基準値との比較から欠陥の判定を行う。この判定により、最終的に致命的となり得る欠陥部位24のみを算出する。ここで、致命的な欠陥部位24とは、電極板3をセパレータを介して積層したとき、塗布物質5の厚み分を超えてセパレータを貫通しきる恐れのある高さに設定される。したがって、塗布物質5の厚みおよびセパレータの厚みなどのよって適宜に変更される。
【0062】
<ステップS30> 処理長さの判定
ステップS1からステップS26までの一巡の処理が完了すると、予め設定した電極板5の処理長さに達したどうかを判定する。所定長さに達すれば、処理を完了する。所定長さに達していなければステップS1からの処理が繰り返される。
【0063】
上述のように、二次電池の端面の領域と当該領域を形成する輪郭座標から矩形を近似し、実際の二次電池の領域と当該矩形をフィッティングさせることにより、本来矩形内に収まっていなければならない、芯材4および塗布物質5の両断面形状からはみ出る上向きおよび下向きの部位をバリなどの欠陥部位として検出することができる。
【0064】
また、テンション不足などにより二次電池が長手方向(搬送方向)に湾曲または波打っている場合であっても、撮影した画像データを所定数に分割してから矩形近似をするので、湾曲などによる誤差を抑えることができ、欠陥部位をより精度よく求めることができる。
【0065】
さらに、二次電池の電極板3の総厚みに対して芯材4の厚みは小さいので、画面に映り込む細いパターンを収縮処理のみによってノイズとして除去し、芯材4より厚みの大きい欠陥部位のみを抽出することができる。当該収縮処理後の画像を膨張することにより、欠陥部位を鮮明に表示させることができる。
【0066】
したがって、芯材4の欠陥部位を求める演算処理が、塗布物質5の欠陥部位を求める演算処理よりも簡素化されているので、トータルの演算時間を短くすることができる。
【0067】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0068】
(1)上記実施例装置は、領域強調部15を利用して塗布物質5の領域を強調していたが、撮像対象の領域が二値化処理で精度よく求めることができる場合、当該機能を利用しなくてもよい。
【0069】
(2)上記実施例装置では、領域抽出部14によって読み出された画像データを二値化処理し、領域抽出を行っているが、読み出された画像データに対し、フィルタ処理などを用いてエッジ強度画像を求め、当該エッジ強度画像に対して二値化処理を行い領域抽出を行ってもよい。
【0070】
(3)上記実施例装置において、芯材4の欠陥部位を求める前に、芯材4の画像を縮小して画素数を減らした後に収縮処理を行ってもよい。また、欠陥部位の抽出が完了した後に、膨張処理を行い、さらに当該画像を所定倍率まで拡大する。この方法によれば、収縮処理の回数を減らすことができる。
【0071】
したがって、この場合、矩形近似処理も含めて上記実施例よりも処理速度が速くなる。
【0072】
(4)上記実施例装置では、第2領域抽出後、分割処理を行っていないが、分割処理を行ってもよい。
【0073】
なお、第2領域抽出後に分割処理を行う場合、芯材4の画像が湾曲して傾いているときに求めた矩形も画面に対して傾いている。したがって、当該傾きを補正した後に、収縮処理および膨張処理を行うことが好ましい。
【0074】
この方法によれば、より精度よく欠陥部位を求めることができる。
【0075】
(5)上記実施例装置では、縮小処理、膨張処理を繰り返し行うことで、欠陥部位を求めているが、縮小処理、膨張処理を行う際に画像の上下方向を長くした矩形構造要素により縮小処理、膨張処理を行ってもよい。例えば、画像の上下方向の画素数3〜5個画素、幅方向を1個画素を単位として収縮する。膨張も同じ画素数を単位とする。この方法によれば、縮小処理、膨張処理の回数を減らすことができる。
【0076】
(6)上記実施例装置では、塗布物質5の領域の面積と矩形の領域の差分によって欠陥部位を求めているが、座標ごとに偏差を求め、当該偏差の絶対値と予め決めた基準値との比較によって求めてもよい。この場合、基準値は、塗布物質5の厚み+許容誤差に設定することができる。
【0077】
(7)上記実施例装置において、ステップS3の第1領域抽出とステップS20の第2領域抽出を並列処理せずにステップS3の後にステップS20を挿入し、シリアル処理してもよい。同様に、ステップS10の第1欠陥部位算出とステップS21の第2欠陥部位算出を並列処理せずに図4のステップS10の後にステップS21を挿入し、シリアル処理してもよい。
【0078】
(8)上記実施例装置は、枚葉に切断した二次電池にも利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 … 光学ユニット
2 … 画像処理装置
3 … 電極板
4 … 芯材
5 … 塗布物質
12 … 画像処理ユニット
13 … 記憶部
14 … 領域抽出部
15 … 領域強調部
16 … 矩形近似部
17 … 分割判定部
18 … 第1欠陥部位算出部
19 … 第2欠陥部位算出部
20,21…矩形領域
22,23…欠陥部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材に塗布物質を塗布して形成した積層体の端面を検査する端面検査方法であって、
前記端面を撮影する撮影過程と、
前記撮影過程で取得した画像データから前記積層体の領域を求める第1領域算出抽出過程と、
前記第1領域抽出過程で求めた積層体の領域の画像データを利用して当該領域に近似する矩形を求める矩形近似過程と、
前記積層体の領域から前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める第1欠陥部位算出過程と、
前記撮影過程で取得した画像データから前記積層体の総厚みよりも薄い芯材の領域を抽出する第2領域抽出過程と、
前記第2領域抽出過程で求めた芯材の領域から予め決めた芯材の厚み分をノイズとみなして除去し、芯材の欠陥部位を求める第2欠陥部位算出過程と、
を備えたことを特徴とする端面検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の端面検査方法において、
前記矩形近似過程で求めた矩形と積層体の領域と合わせ込むフィッティング過程を含み、
前記第1欠陥部位算出過程は、前記積層体の領域からフィッティング後の前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める
ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端面検査方法において、
前記第1領域抽出過程で求めた積層体領域と矩形近似過程で求めた矩形領域の差分をとり、余った領域の面積に応じて積層体の長手方向に沿って画像を所定数に分割する分割過程を含み、
前記分割した画像ごとに矩形近似過程から第1欠陥部位算出過程を繰り返して塗布物質の欠陥部位を求める
ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の端面検査方法において、
前記第2欠陥部位算出過程は、求めた芯材の画像を画素単位で削除してゆく収縮処理および収縮処理後の画像に画素単位で増加させる膨張処理を順に行い、欠陥部位のみを求める
ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の端面検査方法において、
前記第1領域抽出過程の後に、芯材および積層体のうち少なくとも積層体の領域を強調する領域強調処理過程を備える
ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の端面検査方法において、
前記積層体は、所定幅にスリットされた帯状であって、当該積層体を搬送しつつスリットされた端面を連続的に撮影し、塗布物質および芯材の欠陥部位を求める
ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項7】
芯材に塗布物質を塗布して形成した積層体の端面を検査する端面検査装置であって、
前記積層体の端面に向けて光を照射する照射ユニットと、
光の照射された芯材の端面を撮影する撮影ユニットと、
前記撮影ユニットで取得した画像データを利用して芯材および積層体の欠陥部位を検査する画像処理ユニットとを備え、
前記画像処理ユニットは、撮影ユニットで取得した画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部から画像データを読み出し、当該画像データから前記積層体および芯材の領域を求める領域抽出部と、
前記積層体の領域の画像データを利用して当該領域に近似する矩形を求める矩形近似部と、
前記積層体の領域から前記矩形の領域の差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める第1欠陥部位算出部と
前記芯材の領域から予め決めた芯材の厚み分をノイズとみなして除去し、芯材の欠陥部位を求める第2欠陥部位算出部と、
を備えたことを特徴とする端面検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の端面検査装置において、
前記画像処理ユニットは、矩形近似部で求めた矩形を積層体の領域に合わせ込むフィッティング部を備え、
前記第1欠陥部位算出部は、前記積層体の領域ごとにフィッティングにより求めた矩形の領域との差分をとり、余った領域を予め決めた基準値との比較から塗布物質の欠陥部位を求める
ことを特徴とする端面検査装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の端面検査装置において、
前記画像処理ユニットは、積層体の領域と矩形領域の差分をとり、余った領域の面積に応じて積層体の長手方向に沿って画像を所定数に分割する分割判定部を備えた
ことを特徴とする端面検査装置。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の端面検査装置において、
前記領域抽出部で求めた芯材および積層体の画像のうち少なくとも積層体の領域を強調する領域強調部を備える
ことを特徴とする端面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−181032(P2012−181032A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42373(P2011−42373)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】