説明

競技台と競技シューズ

【課題】 高齢者などの健康維持と機能回復訓練をサポートする競技台と競技シューズに関する。
【解決手段】球体を転がして競技を行うための競技面の中間部を他の部分よりも高くし、前記中間部から、互いに対向する端辺に向かって高さが減少するように傾斜させた競技台において、前記競技台が略方形状であり、競技面の縁端部に沿って少なくとも前記球体の直径よりも広幅員の凹型断面の樋状部材を設け、かつ、該樋状部材の側縁部に前記競技面より所定の高さだけ高い壁を設けた用具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者などの健康維持と機能回復訓練をサポートする競技台と競技シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
インドアスポーツである卓球などは、適度な運動量と球技としての娯楽性から子供から大人まで幅広く多くの人に愛好されてきた。ところが、足腰が弱った高齢者などがプレーをするには、常に起立した状態であることや、アウトボールを拾う時の動作が非常にハードになることが原因で、やむなく運動を諦め遠ざかっている。
【0003】
特許文献1には、運動能力の低い人や身体に弱点のある人が無理なく球技を楽しむことができる球技ゲームとして、ゲーム板が、競技面の中央部を他の部分より高くし、中央部から互いに対向する端辺に向かって高さが減少するよう傾斜させてボールが手元に戻るための工夫や、さらに、競技面の側縁部に高い壁を設けてボールの飛び出しを防ぐ技術が開示されている。特許文献2には、卓球台の外周にボールの落下を防止するためのネットを取り付けた技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−301178号公報
【特許文献2】特開2003−275358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状においてリハビリテーションに使用する一般的な訓練用具は、障害程度に応じて平行棒から自転車漕ぎなどの用具が使用されている。訓練内容はPTなどの指示に従って基本動作を長時間繰り返し行うため、リハビリといえば辛く苦しく歯を食い縛って頑張ることとされてきた。医学的にもリハビリテーションに伴う多少の苦痛は必要悪として黙認されながらも、リハビリテーションの最大効果を生み出す要素が「継続性」であるため、訓練継続への動機づけとなる手法を求めるニーズが重要テーマとされ、介護保険制度でも介護予防推進事業が加算の対象となっている。
【0006】
特許文献1が目指す技術は、エアーホッケーのように圧縮空気発生装置を不要とし、競技台に高低差や障害物などを設けることで競技に意外性と偶然性を持たせ、さらに、特殊な打撃具を使うことなどで運動能力の低下した競技者などに配慮することを特徴としている。ところが、この技術に従って実際に競技を行えばプレー中のボールは左右側の壁に接触することが圧倒的に多く、その動きはエアーホッケーやビリヤードのように作戦的な要素ではなく、失敗によるラインアウトであるため、そのままプレーを続行すれば競技にメリハリが無くなり、技術の向上心が無為になることから継続意欲への興味が大きく失われる。競技の公平さはハンディキャップで補うことがベターであり、強弱両者の競技が伯仲し競争心を沸き立たせるためのキーポイントである。その事例は、ゴルフの愛好者がプレーに熱中し熱心に練習を継続する心理が如実に物語っている。また、常に起立した状態でプレーを行うことや、アウトボールを拾うなどの動作がハードになることから高齢者や障害者が本文献の発明による競技台でプレーを行うことは非常に困難である。特許文献2の技術では、ゲーム板の周辺部に落球防止用のネットを設けた装置であるが、ボールの受け損じやミスプレーをして高く跳ねたボールなどはネットからは容易に飛び出しラインアウトになる。その上、ボールが相手側に落ちればその都度対戦者に迷惑を掛けることになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題点を解決するため、本発明に係る請求項1記載の構成は、球体を転がして競技を行うための競技面の中間部を他の部分よりも高くし、前記中間部から、互いに対向する端辺に向かって高さが減少するように傾斜させた競技台において、前記競技台が略方形状であり、競技面の縁端部に沿って少なくとも前記球体の直径よりも広幅員の凹型断面の樋状部材を設け、かつ、該樋状部材の側縁部に前記競技面より所定の高さだけ高い壁を設けた構成とされている。
【0008】
この構成による競技台でプレーを行う場合の基本ルールは、三次元的な空間でボールを叩くのではなく競技面上でボールを転がしながらラリーの応酬を行い、ボールが側壁面のいずれかに接触して凹型の樋に落球すればラインアウトで失点する。周縁の壁の高さは少なくとも使用球の直径よりも1.5倍乃至2.0倍以上の高さのフェンスとされており、通常のラリーの応酬であればコート外に飛び出すことは原則としてゼロに近くなり、アウトボールを拾うなどのハードな動作から開放される。アウトボールは傾斜したガータ面に沿って転がりながら戻ってくるため、球を拾う動作が省略されてプレーをスムーズに続行することができる。
【0009】
本発明に係る請求項2記載の構成は、競技台が、床面に直接セットされ、傾斜面の両端辺部の外側に少なくとも一人以上が座れる椅子を併設した構成とされている。
【0010】
これによれば、椅子に座って球が蹴れる状態の人であれば、片足又は両足を使ってボールを転がすことでプレーを行うことができる。起立した状態に比べ、運動能力の低い人や身体に弱点のある人であっても無理なく球技を楽しむことが可能となり、さらに、前方向・左右・ひねりなど、脚や膝などの下半身を動かすことで、足関節・膝伸展筋力・股関節・ (大腿四頭筋郡・ハムストリング筋)の可動域の広がりと腸腰筋への作用が顕著となる。
【0011】
ここで、使用される椅子として二人用のベンチを採用し、さらに、手摺を左右側に設けることや前方側にずれ落ち防止用のベルトを取り付けることが好ましい。シングルプレーだけでなくダブルスのプレーにも対応でき、動作上も股関節の可動域を広げるため下半身を活発に動かすこととなり、手摺やベルトの作用により安全性が確保ができるからである。
【0012】
本発明に係る請求項3記載の構成は、競技台を用いて行うプレーにおいて、専ら競技に使用するシューズの爪先側及び又は、側面にラケット状部材を取り付けた構成とされている。
【0013】
これによれば、ゲームを通じてボールを蹴るテクニックが向上し、片足又は両足の運動は、足関節・膝伸展筋力・股関節・ (大腿四頭筋郡・ハムストリング筋)の可動域の広がりに作用し、リハビリテーション上非常に効果的となる。
【0014】
ここで、ラケット部の形状や着脱は自由であり、角度の変更も調節自在としてもよい。障害程度や部位により自由度があった方が好ましいからである。
【0015】
ここで、ラケット部に空洞(図示せず)を設け打撃時の反射音や振動音を発生させてもよい。プレイャーが手ごたえと動きを感じ、弱視者であつても参加ができるからである。
【0016】
ここで、万歩計(登録商標) を取りつけることも自由である(図示せず)。訓練者がリハビリの有効性を認識し実感することで意欲が再生し、継続性にプラス効果が生じるからである。
【0017】
本発明に係る請求項4記載の構成によれば、ラケット部材が、別体からなるシューズカバーに設けられた構成とされている。
【0018】
これによれば、一般のスニーカーであっても対応が可能となる。さらに、ラケット部材が着脱自在となることや、足の甲部分やかかと側をマジックテープ(登録商標)やゴムベルトなどで止める手段を講じてもよい。さまざまな履物の使用が可能となるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例1によれば、
ア、ガータ付きの競技台によりボールが自動的に回収されるため、足腰が弱った高齢者や障害者だけでなく、一般人にとっても無駄な動きの少ないスポーツゲームとなる。
イ、ガータ部材を設置したことで緊張感が生じ、練習に対する励みと向上心が健康増進とリハビリテーションに効果的となる。
ウ、ラインアウトの判定が明確となりプレー中のトラブルが解消する。
エ、端辺部に設けたフェンス壁がアウトボールを減少させ、ゲームの進行をスムーズに続行できる。
オ、ハンディキャップを設ければ、広範囲な競技者がプレーを公平に楽しむことができ身体障害者だけでなく健常者や幼少児童にも適応できるゲームとなる。
【0020】
実施例2によれば、
ア、椅子を使用することで、座位姿勢で球が蹴れる状態の人であれば、片足又は両足を使ってボールを転がしプレーを行うことができるため、起立した状態に比べ、運動能力の低い人や身体に弱点のある人であっても無理なく球技を楽しむことが可能となる。
イ、前方向・左右・ひねりなど、脚や膝などの下半身を動かすことで、足関節・膝伸展筋力・股関節・ (大腿四頭筋郡・ハムストリング筋)の可動域の広がりと腸腰筋への作用が顕著となることは、既に医学的に証明(後述)されている。
ウ、膝や脚や足首の動きは反射神経と判断力を刺激して頭脳を活性化させ痴呆の予防に有効であるは、既に医学的に証明されている。
エ、下肢筋力の向上が躓きによる転倒事故防止に繋がり、多くの寝たきり者を生み出す悲惨な現状を救済し、行政が推進する介護予防事業に大きく貢献する。
オ、ハンディキャップを有していてもプレーがエンジョイできることで、訓練の苦しさを楽しさに変え、訓練の継続効果を自分自身が実感することで、リハビリテーションへの意欲の再成に貢献する。
【0021】
実施例3によれば、
ア、シューズに取り付けたラケット部材の作用を通じて打球に勢いと変化が生じ、ゲームが多彩となりテクニックが使えることで面白味が増す。
【0022】
実施例4によれば、
ア、一般のスニーカーであっても対応が可能となり、自分の履物をそのまま使用することができ経済性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、ガータ付き競技台Aの平面図であり、図2は、凹型断面の樋状部材6の断面図であり、図3は、ゲーム中の競技者1の動きを示す説明図である。図1及び図3に示す競技台Aは、球体3を転がして競技を行う方形状のコートであり、中央の稜線2aから両端辺2b,2cに向かって高さが低くなる傾斜面4で形成され、長さ方向中央にはプレー用の中央線5が描かれている。図2は、凹型の樋状部材の断面図を示し、傾斜面4の縁端部には球体3の直径よりも広幅員の凹型断面の樋状部材6と、樋状部材6の側縁部には球体3の直径よりも略1.5倍程度の高さの壁7を設け、競技面2全体は脚部8で支えられている。
【0024】
図4は、床面に設置したコートを示す斜視図であり、図5は、ゲーム中の競技者の動きを示す説明図である。競技台Aが、床面に直接セットされ傾斜面の両端辺部2b,2cの外側に少なくとも一人以上が座れる椅子9を併設し、椅子の両側には肘掛部10と前方側に滑り止め具(図示せず)が取り付けてある。
【0025】
図6は、シューズの爪先側にラケット部を設けたスニーカーの説明図であり、シューズの爪先側にラケット部11を設けている。ラケット部材11は木材又は合成樹脂製を用いれば打撃音が発生するが硬質ゴムであってもよい。図7は、シューズカバー13を取り付けた状態を示す斜視図であり、自分のシューズにシューズカバー13を履いて、脱げ止めベルト16で固定した状態を示している。ここで、ラケット部の垂直角度を直角より大きい鈍角にすればボール3をヒットしても競技台Aからは飛び出し難くなり、また、障害内容により患足側の水平角度を変更自在としてもよい。図8は、シューズカバー13を履きボール3を前方向にセットした状態を示す断面図である。
【0026】
以上のように構成された競技台と競技シューズを使用して行う競技方法について、代表例として図5を用い、試合の進行は卓球ルールを適用して説明する。プレイャー1はそれぞれの椅子9に座って両足を競技台のセンターライン5の上に載せてプレーを開始する。先ず先攻のプレイャーが相手コートを狙ってボール3を蹴るとボール3は斜面を登り稜線2aを越えて相手側の斜面に入り、ラリーの応酬が始まる。相手に与える得点は全て自分のミスが原因の返球の失敗であり、最も多いのが打ち損じによるラインアウトである。アウトボールはプレー中のボールの飛び出しを防ぐ壁7に接触し凹型の溝に落ちる。次いで樋状部材6の傾斜したガータに沿って転がりながら自動的に足元に戻るため、プレーがスムーズに続行する。ルールに従って交互にサーブを行えば足腰が弱った高齢者や障害者であっても、前方向・左右・ひねりなど、脚や膝などを駆使しながらゲームに熱中する。リハビリテーションの訓練者であれば、無意識のうちに痛みや苦しさが楽しさに変り、訓練の継続効果を自分自身が実感することでリハビリテーションへの意欲が再成する。特に、競技シューズ12は、歩行に支障が生じない状態のラケット11付きスニーカーを使用するが、さらに、前方側14及び片側面15にラケット部材を取り付けたシューズカバー13を用いれば、様々なテクニックが駆使できるため一層練習に力が入る。また、使用するボールとしては卓球、撞球、ゴルフボール、テニスボールなど様々なサイズのボールについて自由に選択ができるが、、卓球のボールでは軽すぎて手ごたえがなく、実績上硬球テニスのボールが最も好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のコンセプトにより構成された健康増進用具の提案は、リハビリテインメントマシン(機能訓練システム)として既に一部が商品化されている。ゲームを楽しみながら運動機能や脳機能が活性化し、転倒予防やバランス維持に重要な前脛骨筋や大腿直筋、中臀筋などの筋力運動に効果的であることは、2004年6月30日に開催された「転倒防止国際シンポジウム」において、その有効性が九州大学病院リハビリテーション部医学博士高杉紳一郎講師らによる研究成果として発表され、医学的にも実証されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ガータ付き競技台の平面図である。(実施例1)
【図2】凹型断面の樋状部材の断面図である。(実施例1)
【図3】ゲーム中の競技者の動きを示す説明図である。(実施例1)
【図4】床面に設置したコートを示す斜視図である。(実施例2)
【図5】ゲーム中の競技者の動きを示す説明図である。(実施例2)
【図6】シューズの爪先側にラケット部を設けた説明図である。(実施例3)
【図7】シューズカバーを取り付けた状態を示す斜視図である。(実施例4)
【図8】シューズカバーを履きボールを前方向にセットした状態を示す断面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0029】
A 競技台
1 競技者
2 競技面
3 球体
4 傾斜面
5 中央線
6 樋状部
7 壁
8 脚部
9 椅子
10肘掛部
11ラケット部材
12スニーカー
13シューズカバー
14ラケット部材
15ラケット部材
16脱げ止めベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体を転がして競技を行うための競技面の中間部を他の部分よりも高くし、前記中間部から、互いに対向する端辺に向かって高さが減少するように傾斜させた競技台において、
前記競技台が略方形状であり、競技面の縁端部に沿って少なくとも前記球体の直径よりも広幅員の凹型断面の樋状部材を設け、かつ、該樋状部材の側縁部に前記競技面より所定の高さだけ高い壁を設けたことを特徴とする競技台。
【請求項2】
前記競技台が、床面に直接セットされ、傾斜面の両端辺部の外側に少なくとも一人以上が座れる椅子を併設したことを特徴とする請求項1に記載の競技台。
【請求項3】
前記競技台を用いて行うプレーにおいて、専ら競技に使用するシューズの爪先側及び又は、側面にラケット状部材を取り付けたことを請求項1又は2に記載の特徴とする競技シューズ。
【請求項4】
前記ラケット部材が、別体からなるシューズカバーに設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の競技シューズ。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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