説明

競技情報管理システム、無線機器、および、競技情報記録方法

【課題】 競技情報を競技者個々に管理することのできる競技情報管理システム等を提供する。
【解決手段】 審判員JGは、競技者RNの反則を発見すると、その競技者RNに警告を告げると共に、審判端末50を操作し、審判端末50からその競技者RNの無線タグ60に向けて警告を通知するための通知情報を送信する。無線タグ60は、審判端末50から通知情報が送られると(受信すると)、記憶している累積警告回数を条件に応じて1だけ加算し、加算後の累積警告回数を含む応答情報を審判端末50に返信する。審判端末50は、この応答情報に基づいて、その競技者RNの累積警告回数を表示部に表示する。この際、審判員JGは、表示される累積警告回数が3回以上である場合に、その競技者RNに失格を告げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競技情報を競技者個々に管理することのできる競技情報管理システム、無線機器、および、競技情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
最近では、各計時ポイントにおける通過タイムも含めた競技タイムを計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイムを計測する計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。
【0003】
このような計測システムは、マラソン競技以外の各種競技にも適用可能であるため、例えば、競歩競技にも導入しようとする計画が持ち上がっている。
それでも、競歩競技は、他の陸上競技と異なり、競技タイムを計時するだけでなく、競技者個々に警告回数の管理を行う必要があるため、そのままの計測システムでは不十分であった。
つまり、競歩競技では、競技中において競技者が「ロス・オブ・コンタクト」(接地不良)や、「ベント・ニー」(膝曲がり)等の反則を行うと、審判員がその競技者に対して警告を出すことになっている。そして、この警告(異なる審判員からの警告)が3回以上累積した場合、その競技者は失格となり、途中で競技を中止することになる。
そのため、競歩競技においては、このような警告回数を競技者個々に対応させて管理しなければならなかった。なお、現状では、警告掲示板(ホワイトボート等)をゴール付近に設置し、審判員から連絡を受けた競技役員が、この警告掲示板に警告を示す印を競技者(ゼッケン番号)に対応させて書き加えることにより、手作業にて警告回数の管理を行っていた。
【0004】
一方、最近では、審判員の採点を支援しようとする支援システムも考え出されている。例えば、スケート競技やスノーボード競技といった採点型の競技において、競技中に計測した速度や高さ等のデータ(計測データ)を審判員に提示して、審判員の採点を支援するシステムである。
具体的には、スケート靴等にセンサを取り付け、このセンサが検出した計測データを競技者が身につける腕時計端末から審判サーバに送信することで、審判サーバが計測データを記憶する。そして、採点を行う審判員が審判端末から審判サーバにアクセスし、この計測データを参照することで、客観的な採点を行えるようにする、というものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−208995号公報 (第6−13頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1の技術を活かして、競歩競技に適用することも考えられる。
しかしながら、特許文献1の技術では、サーバ側で各競技者の警告情報(警告回数等の情報)を一元管理する必要があるため、システム規模がある程度大きくなってしまうという問題があった。
また、これとは別に競技タイムを計測する必要もあり、システム規模が更に大きくなることが予想される。
【0006】
このため、競技タイムの計時と共に警告情報の管理も行うことのできる、より小規模なシステムの開発が求められていた。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することのできる競技情報管理システム、無線機器、および、競技情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技情報管理システムは、
審判員が使用する端末と、競技者が携帯する無線機器と、を含む競技情報管理システムであって、
前記端末には、
前記無線機器に向けて警告を通知するための通知情報を送信する情報送信手段と、
前記情報送信手段が送信した通知情報に応答して、前記無線機器から返信される応答情報を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段が受信した前記応答情報に含まれる警告情報の内容を表示する表示手段と、が設けられ、
前記無線機器には、
競技者個人の競技情報を記憶するための記憶手段と、
近傍に位置する前記端末から送られる前記通知情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記通知情報に基づく前記警告情報を前記記憶手段に格納する警告情報格納手段と、
前記警告情報格納手段が格納した前記警告情報に基づく前記応答情報を前記端末に送信する送信手段と、が設けられている、
ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、端末の情報送信手段は、無線機器に向けて警告を通知するための通知情報を送信する。また、情報受信手段と、情報送信手段が送信した通知情報に応答して、無線機器から返信される応答情報を受信する。
一方、無線機器の記憶手段は、競技者個人の競技情報を記憶する。また、受信手段は、近傍に位置する端末から送られる通知情報を受信する。警告情報格納手段は、受信手段が受信した通知情報に基づく警告情報を記憶手段に格納する。そして、送信手段は、警告情報格納手段が格納した警告情報に基づく応答情報を端末に送信する。
【0010】
このように、端末から送られた通知情報に基づいて、無線機器には、警告情報が記憶される。そして、この警告情報が応答情報として端末に返信される。
この結果、警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【0011】
前記無線機器には、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記計時ポイントを検出した際に、前記計時手段により計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定手段と、
前記タイム特定手段が特定した前記競技タイムを前記記憶手段に格納するタイム格納手段と、が更に設けられてもよい。
【0012】
前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、累積警告回数が含まれ、前記送信手段が前記端末に送信する前記応答情報には、前記累積警告回数が含まれるようにしてもよい。
【0013】
前記情報送信手段が前記無線機器に送信する前記通知情報には、警告時間及び当該端末を使用する審判員の識別情報が含まれ、前記受信手段が受信する前記通知情報及び前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、前記警告時間及び前記審判員の識別情報が含まれるようにしてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る無線機器は、
競技者が携帯する無線機器であって、
競技者個人の競技情報を記憶するための記憶手段と、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記計時ポイントを検出した際に、前記計時手段により計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定手段と、
前記タイム特定手段が特定した前記競技タイムを前記記憶手段に格納するタイム格納手段と、
近傍に位置する所定の端末から送られる警告を通知するための通知情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記通知情報に基づく警告情報を前記記憶手段に格納する警告情報格納手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、記憶手段は、競技者個人の競技情報を記憶する。また、計時手段は、例えば、現在時刻等の時刻を計時する。検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する。タイム特定手段は、検出手段が計時ポイントを検出した際に、計時手段により計時される時刻を競技タイムとして特定する。タイム格納手段は、タイム特定手段が特定した競技タイムを記憶手段に格納する。受信手段は、近傍に位置する所定の端末(例えば、審判員に使用される端末)から送られる警告を通知するための通知情報を受信する。そして、警告情報格納手段は、受信手段が受信した通知情報に基づく警告情報を記憶手段に格納する。
このように、無線機器は、計時ポイントを検出し競技タイムを特定すると共に、端末から送られる通知情報を受信する。そして、特定した競技タイム及び、通知情報に基づく警告情報を記憶する。
この結果、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【0016】
上記の無線機器は、前記記憶手段に記憶される競技情報を送信する送信手段を更に備え、
前記タイム計時手段が前記競技タイムを特定した場合には、前記送信手段が、特定した前記競技タイムを所定の通信装置に向けて送信し、前記受信手段が前記通知情報を受信した場合には、前記送信手段が、前記警告情報格納手段が格納した前記警告情報を送信元の端末に向けて送信してもよい。
【0017】
前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、累積警告回数が含まれるようにしてもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に競技情報記録方法は、
競技者が携帯し、競技者個人の競技情報を記録するための記憶部を有する無線機器における競技情報記録方法であって、
時刻を計時する計時ステップと、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて前記計時ポイントを検出した際に、前記計時ステップにて計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定ステップと、
前記タイム特定ステップにて特定した前記競技タイムを前記記憶部に格納するタイム格納手段と、
近傍に位置する所定の端末から送られる警告を通知するための通知情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信した前記通知情報に基づく警告情報を前記記憶部に格納する警告情報格納ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、計時ステップは、例えば、現在時刻等の時刻を計時する。また、検出ステップは、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する。タイム特定ステップは、検出ステップにて計時ポイントを検出した際に、計時ステップにて計時される時刻を競技タイムとして特定する。タイム格納手段は、タイム特定ステップにて特定した競技タイムを記憶部に格納する。受信ステップは、近傍に位置する所定の端末(例えば、審判員に使用される端末)から送られる警告を通知するための通知情報を受信する。そして、警告情報格納ステップは、受信ステップにて受信した通知情報に基づく警告情報を記憶部に格納する。
【0020】
このように、競技情報記録方法は、計時ポイントを検出し競技タイムを特定すると共に、端末から送られる通知情報を受信する。そして、特定した競技タイム及び、通知情報に基づく警告情報を記憶部に格納する。
この結果、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態にかかる競技管理システムについて、以下図面を参照して説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される競技管理システムの構成の一例を示す模式図である。この競技管理システムは、例えば、競歩競技における競技タイムの計時及び、警告情報(警告回数等の情報)の管理に使用される。
以下、競歩競技の一例として、スタート/ゴールが競技場KJ(場内のトラック)にて行われ、途中が場外の周回コースSCにて行われる場合について説明する。
【0024】
図示するように、この競技管理システムは、各計時ポイント(競技場KJ内のゴール地点や周回コースSCの中間地点等)に配置された磁場発生装置10及び、通信装置20と、競技場KJ内や周回コースSCの所定位置に配置された警告表示機30及び、受信端末40と、各審判員JGによりそれぞれ使用される審判端末50と、各競技者RNにそれぞれ携帯される無線タグ60と、を含んで構成される。
【0025】
磁場発生装置10は、走路上に配置されたループコイルに所定周波数の正弦波を供給することにより、このループコイル上に電磁場を発生させる。
具体的に磁場発生装置10は、図2(a)に示すような略「8の字」形状に形成されたループコイルLCに正弦波を供給する。図示するように、このループコイルLCは、8の字順方向巻きとなっており、8の字の中心(中点)、すなわち交差部に給電点sを有するように形成され、この給電点sを通って競技者RNの走行方向に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、略平行に所定距離だけ隔てた直線a,bに沿って、8の字の上下部が形成されている。なお、ループコイルLCは、この直線bが計時を行うための計時ライン上に重なるように配置される。
【0026】
そして、ループコイルLCは、図2(a)の給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっており、磁場発生装置10から正弦波が供給されると、コイル上に交流電磁場を生成する。具体的には、図2(b)に示すように、一方のコイル部上に第1の電磁場110aを生成するとともに、他方のコイル部上に第1の電磁場110aに対して競技者RNの走行方向(矢印A方向)に隣接し且つ第1の電磁場110aと電磁力を打ち消しあう第2の電磁場110bを生成する。
つまり、直線b上の電磁場の磁界強度は、第1の磁場110aと第2の磁場110bとの磁場の磁力の打ち消しにより、その両側の電磁界強度よりも極めて小さくなっている(例えば、電磁界強度が”0”となっている)。
【0027】
図示するような電磁場中を、電磁場の検出方向(検出コイル面Dに対して直角な方向)が走路と垂直(つまり、検出コイル面Dが走路に対して平行方向)に配置された電磁場検出コイルC(後述する無線タグ60のLFアンテナ61)が矢印B方向に移動すると、図2(c)に示すような電磁界強度分布が得られる。つまり、電磁場検出コイルCは、走路に対して垂直方向の磁束をコイル面Dにて捉えることになるため、丁度中心にて、電磁界強度が極めて小さくなる(例えば、電磁界強度が”0”となる)図2(c)に示すような電磁界強度分布を検出する。
このため、競技者RNがループコイルLC上を、矢印B方向に沿って通過した場合に、無線タグ60は、計時ラインL上(直線b上)を、第1の電磁場110aと第2の電磁場110bとの間の電磁場の変極点(後述するトリガポイント)として検出することができる。
【0028】
図1に戻って、通信装置20は、所定規格の無線通信を行う装置であり、上述した磁場発生装置10の近傍に配置され、競技タイムの計時を行った無線タグ60と通信を行う。この際、通信装置20は、無線タグ60からタグID(識別情報)と共に送られる競技タイム及び、警告情報を受信する。なお、警告情報の詳細については、後述する。
また、通信装置20は、無線タグ60から受信した警告情報等を警告表示機30(受信端末40)に向けて送信する。
なお、通信装置20は、受信したタグID等により、競技者RNの周回回数等も管理する。
【0029】
警告表示機30は、例えば、電光掲示盤等からなり、受信端末40から供給される情報に基づいて、各競技者RNの警告状況等を表示する。
具体的に警告表示機30は、図3に示すような競技者RNのゼッケン番号と、警告を示す×印(警告1回に付き、×印1つ)とが対応付けられた警告状況表を表示する。
【0030】
図1に戻って、受信端末40は、無線通信機能を有するパーソナルコンピュータ等からなり、各通信装置20から送信された警告情報等を受信し、競技者RN単位に集計する。そして、上述した図3に示すようなゼッケン番号と警告回数(×印の数)とが対応付けられた表示用情報(警告状況表)を生成し、警告表示機30に供給する。
【0031】
審判員JGに使用される審判端末50は、情報受信手段及び情報送信手段としての無線通信部と、表示手段としての表示部と、審判員JGを識別するための審判IDや後述する対応テーブルを記憶する記憶部と、を有するPDA(Personal Digital Assistants)端末等からなり、近傍に位置する無線タグ60と通信を行う。
具体的に審判端末50は、記憶部に図4に示すような、競技者RNのゼッケン番号と無線タグ60のタグIDとの対応関係を規定するための対応テーブルを記憶しており、この対応テーブルを使用して、無線タグ60を指定した通信を行うことが可能となっている。
審判員JGは、競技者RNの反則を発見すると、その競技者RNに警告を告げると共に、審判端末50を操作し、審判端末50からその競技者RNの無線タグ60に向けて警告を通知するための通知情報を送信する。なお、通知情報には、審判IDも含まれている。
また、審判端末50は、送信した通知情報に応答して無線タグ60から返信される応答情報を受信する。この応答情報には、無線タグ60にて加算された累積警告回数も含まれている。そして、審判端末50は、この応答情報に基づいて、その競技者RNの累積警告回数を表示部に表示する。
この際、審判員JGは、表示される累積警告回数が3回以上である場合に、その競技者RNに失格を告げる(より詳細には、その審判員JGが失格を告げる権限を有していることが条件となっている)。
【0032】
なお、現実には、審判員JGと競技者RNとの位置関係等によっては、審判員JGがその競技者RNに失格を告げる機会を逃してしまう場合もある。また、失格を告げる権限を有しない審判員JGが3回目の警告を発する場合もある。
これらの場合、失格が告げられない競技者RNは、そのまま競技を続けることになるが、他の審判員JG(権限を有する審判員JG)が、審判端末50から無線タグ60に問い合わせて、累積警告回数を照会することで、失格のまま競技を続けている競技者RNに失格を告げることができる。
つまり、審判端末50は、競技者RNの無線タグ60に向けて照会情報も送信可能であり、無線タグ60から返信される応答情報(同様に、累積警告回数が含まれる)を受信して、累積警告回数を表示する。
【0033】
一方、競技者RNに携帯される無線タグ60は、競技者RNと共に、スタート地点から各計時ポイント(中間地点やゴール地点等)に移動する。そして、各計時ポイントにて磁場発生装置10により生成される電磁場の変極点を検出し、その時点で計時している時刻を競技タイムとして特定する。
また、無線タグ60は、審判端末50から自己のタグIDが指定され、上述した通知情報が送られると(受信すると)、記憶している累積警告回数を条件に応じて1だけ加算し、加算後の累積警告回数を含む応答情報を審判端末50に返信する。また、上述した照会情報を受信した場合も、現在の累積警告回数を含む応答情報を返信する。
【0034】
このような無線タグ60の詳細について、図5を参照して説明する。図5は、無線タグ60の構成の一例を示すブロック図である。図示するように、無線タグ60は、LFアンテナ61と、増幅回路62と、検出手段としての検出回路63と、タイム特定手段、タイム格納手段及び警告情報格納手段としての制御部64と、計時手段としての計時部65と、記憶手段としての記憶部66と、受信手段及び送信手段としての通信回路67と、を含んで構成される。
【0035】
LF(Low Frequency)アンテナ61は、磁場発生装置10により上述したループコイルLC上に生成された電磁場を検出する。LFアンテナ61は、検出した電磁界強度を示す検出信号を増幅回路62に供給する。
【0036】
増幅回路62は、LFアンテナ61から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路63に供給する。
【0037】
検出回路63は、増幅回路62から供給される検出信号に従って、ループコイルLC上における電磁場の変極点を検出する。
より詳細に説明すると、検出回路63は、一例として、図6(a)に示すような抵抗R1〜R3、コンデンサC、及び、オペアンプOPから構成される。この検出回路63は、入力される検出信号の電圧が増加時に所定電圧の信号を出力し、また、入力される検出信号の電圧が減少時には信号を出力しない。
そのため、ループコイルLC上において、検出回路63は、図6(b)に示すように、生成された電磁場の電磁界強度の増加を検出し、2回目の電磁界強度の増加時に電磁場の変極点として検出する。つまり、図6(b)に示す2回目の立ち上がりを、ループコイルLC上におけるトリガポイントとして特定する。
【0038】
図5に戻って、制御部64は、無線タグ60全体を制御する。例えば、制御部64は、検出回路63がループコイルLC上における電磁場の変極点を検出したタイミングで、計時部65が計時していた現在時刻を競技タイムとして特定する。そして、特定した競技タイムを記憶部66に順次記憶させる。
また、制御部64は、通信回路67が審判端末50から送られる通知情報を受信すると、記憶部66に記憶している警告情報を更新する。すなわち、通知情報に含まれる審判ID及び、受信時刻(計時部65が受信時に計時していた時刻)を警告情報に追加すると共に、警告情報の累積警告回数を1だけ加算する。
なお、同じ審判員JGからの警告は、累積警告回数を増やす対象としない規則であるため、同じ審判IDが警告情報に記憶されている場合に、制御部64は、累積警告回数を加算しない。同様に、国際大会では、同じ国籍の審判員JGからの警告は、累積警告回数を増やす対象としないため、例えば、審判IDに含まれる国籍を示すコード値が同じである場合に、制御部64は、累積警告回数を加算しない。
更に、図示せぬ時刻配信装置から送られる基準時刻(一例として、現在時刻)を、通信回路67が受信すると、制御部64は、計時部65が計時する時刻を適宜補正(設定)する。
【0039】
計時部65は、制御部64により適宜補正(設定)され、通信回路67が受信した基準時刻に同期した現在時刻を計時する。
なお、計時部65は、高安定水晶発振器を備えており、現在時刻の計時を安定して維持することが可能となっている。
【0040】
記憶部66は、例えば、不揮発性メモリからなり、競技タイムや警告情報等の競技情報を記憶する。
具体的に記憶部66内には、図7(a)に示すような競技タイムを記憶するためのエリア66aと、図7(b)に示すような警告情報を記憶するためのエリア66bとが設けられている。
エリア66aには、各計時ポイントにて計時された競技タイムがそれぞれ格納可能となっている。また、エリア66bには、審判ID、警告時刻、及び、累積警告回数等が格納可能となっている。
なお、競技開始前には、これらのエリア(情報)は、制御部64によりクリアされている。つまり、累積警告回数は、初期値の「0」が設定された状態で競技が開始される。
この他にも、記憶部66は、別エリアに固有の識別情報(タグID)を予め記憶している。このタグIDは、無線タグ60毎に異なる値が予め割り振られている。
【0041】
通信回路67は、所定の通信アンテナを介して、審判端末50や通信装置20等と通信を行う。
つまり、通信回路67は、審判端末50から送られる通知情報や照会情報を受信すると共に、これらに応答して応答情報を審判端末50に送信する。
また、通信回路67は、制御部64が特定した競技タイムや、記憶部66に記憶されている警告情報(累積警告回数等)を通信装置20に向けて送信する。
【0042】
以下、上述した構成の競技管理システムの動作について、図8を参照して説明する。図8は、無線タグ60が競技中に実行する競技情報記録処理を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、無線タグ60は、電磁場変極点を検出したか否かを判別する(ステップS11)。つまり、競技者RNが計時ポイントまで進み、磁場発生装置10により生成された電磁場の変極点を検出した状態であるかどうかを判別する。
【0044】
無線タグ60は、電磁場の変極点を検出していないと判別すると、後述するステップS15に処理を進める。
一方、電磁場の変極点を検出したと判別した場合に、無線タグ60は、競技タイムを特定する(ステップS12)。つまり、無線タグ60は、電磁場の変極点(計時ライン)を検出したタイミングで、計時部65が計時していた現在時刻を競技タイムとして特定する。
【0045】
無線タグ60は、特定した競技タイムを記憶部66に記憶する(ステップS13)。つまり、無線タグ60は、特定された競技タイムを、上述した図7(a)に示すエリア66aに追加して格納する。
【0046】
そして、無線タグ60は、特定した競技タイム及び、格納した警告情報等を近傍の通信装置20に送信する(ステップS14)。つまり、当該計時ポイントにて計時した競技タイム、累積警告回数を含む警告情報、及び、自己のタグIDを、その計時ポイントに配置されている通信装置20に向けて送信する。
なお、通信装置20は、受信したタグID及び警告情報を警告表示機30(受信端末40)に向けて送信する。
そして、受信端末40は、受信した警告情報に含まれる累積警告回数に変化がある(増えている)場合に、警告状況表中の対応する競技者RNの内容を更新して、警告表示機30に表示させる。
【0047】
無線タグ60は、審判端末50から送信され得る情報(通知情報又は照会情報)を受信したか否かを判別する(ステップS14)。つまり、無線タグ60は、自己のタグIDが指定されて、審判端末50から警告を通知する通知情報、又は、累積警告回数を問い合わせる照会情報が送信されたかどうかを判別する。
すなわち、審判員JGが競技者RNの反則を発見した場合に、審判端末50が操作され、その競技者RNの無線タグ60に向けて通知情報を送信されるため、また、審判員JG(権限を有する審判員JG)により審判端末50が操作され、その競技者RNの無線タグ60に向けて照会情報が送信される場合もあるため、無線タグ60は、自己に向けた通知情報や照会情報を受信したかどうかを順次判別する。
【0048】
無線タグ60は、審判端末50から情報を受信していないと判別すると、後述するステップS18に処理を進める。
一方、情報を受信したと判別した場合に、無線タグ60は、その情報が通知情報又は照会情報の何れであるかを判別する(ステップS15)。
【0049】
無線タグ60は、照会情報であると判別すると、後述するステップS17に処理を進める。
一方、通知情報であると判別すると、無線タグ60は、記憶部66に記憶している警告情報を更新する(ステップS16)。すなわち、無線タグ60は、通知情報に含まれる審判ID及び、その受信時刻を、上述した図7(b)に示すエリア66bに追加すると共に、条件に応じてエリア66bの累積警告回数を1だけ加算する。つまり、同じ審判IDが巣での記憶されている場合等では、累積警告回数を加算しない。
【0050】
無線タグ60は、応答情報を生成して、審判端末50に返信する(ステップS17)。つまり、警告情報における現在の累積警告回数を含む応答情報を生成し、審判端末50に送信する。
なお、審判端末50は、無線タグ60から返信される応答情報を受信し、表示部にその内容を表示する。この際、審判員JG(権限を有する審判員JG)は、表示部に表示される累積警告回数が3回以上である場合に、その競技者RNに失格を告げる。
【0051】
無線タグ60は、競技が終了したか否かを判別する(ステップS18)。例えば、電磁場の変極点を検出しない状態のまま、一定時間が経過した場合に、無線タグ60は、競技が終了したと判別する。
無線タグ60は、競技が終了していないと判別すると、ステップS11に処理を戻し、上述のステップS11〜S18の処理を繰り返し実行する。
一方、競技が終了したと判別すると、無線タグ60は、競技情報記録処理を終える。
【0052】
このように、競技情報記録処理により、無線タグ60には、競技タイムや警告情報等の競技情報を適宜記録される。より詳細には、審判員JGは、反則を発見した際に、審判端末50を操作して、その競技者RN(無線タグ60)に向けて、警告を通知する通知情報を送信すると共に、受信した応答情報の内容を審判端末50に表示させて、その競技者RNの累積警告回数を知ることができる。そして、権限を有する審判員JGであれば、累積警告回数が3回以上の場合に、その競技者RNに失格を告げることになる。
また、通信装置20から、計時ポイントを通過した競技者RN(無線タグ60)の警告情報が受信端末40に送られるため、警告表示機30に警告状況表等を表示させることができる。
これにより、競技タイムを計時するシステムを発展させて、各競技者RNの警告情報も管理可能となる。つまり、競技タイムだけでなく警告情報も管理することができる。
【0053】
この結果、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【0054】
上記の実施の形態では、無線タグ60が記憶する警告情報として、審判ID、警告時刻及び、累積警告回数を一例として説明したが、警告情報は、これらに限られず必要な情報を適宜加えてもよい。
また、上記の実施の形態では、失格のまま競技を続けている競技者RNに失格を告げるために、審判端末50側から無線タグ60に累積警告回数を照会する場合について説明したが、無線タグ60側から審判端末50に累積警告回数が3回を超えていることを知らせるようにしてもよい。
例えば、失格を告げる権限を有する審判員JGの審判端末50からは、失格を通知するための失格通知情報を送信するようにし、また、無線タグ60には、この失格通知情報を受信した場合に警告情報に失格情報も含めて記憶するようにする。
そして、無線タグ60は、警告情報において、累積警告回数が3回以上になっているにも拘わらず、警告情報に失格情報が格納されていない場合に、所定時間間隔で、失格通知情報を要求する要求情報を近傍の審判端末50に向けて送信する。この要求情報を、権限を有する審判員JGの審判端末50が受信して、失格を促す旨の表示を行うことで、その審判員JGが対象の競技者RNに失格を告げると共に、審判端末50を操作して、対応する無線タグ60に失格通知情報を送信する。
【0055】
上記の実施の形態では、競歩競技に競技管理システムを適用する場合について説明したが、対象となる競技は、これに限られず任意である。例えば、バイアスロン競技等にも適宜適用可能である。
すなわち、スプリント競技、パシュート競技、マススタート競技、リレー競技等にも適用可能である。
これらの競技は、射撃にて、弾が的から外れた場合に、外れた数に応じて所定のペナルティコース走行するという、パネルティが科せられている。
そのため、例えば、的を外した数を、審判端末50から競技者RNの無線タグ60に通知情報として送信するようにする。そして、無線タグ60は、的を外した数を累積警告回数として記憶し、ペナルティコースを周回する毎に、的を外した数(累積警告回数)をカウントダウンして、適正な数だけペナルティコースの走行を管理する。つまり、ペナルティコースから競技コースに戻る際に、的を外した数が0となっていることを、無線タグ60がチェックするようにする(全弾命中させた場合は、最初から的を外した数が0に設定されている)。
なお、カウントする残りの周回数を、表示盤等に送信するようにし、競技者RNが表示盤に表示される数で、残りの周回数を確認できるようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、競技タイムや警告情報等の競技情報を競技者個々に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る競技管理システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)がループコイルの形状の一例を示す模式図であり、(b)が生成される電磁場を説明するための模式図であり、(c)が電磁場の強度分布を説明するための模式図である。
【図3】警告表示機に表示される警告状況表の一例を示す模式図である。
【図4】審判端末に記憶される対応テーブルの一例を示す模式図である。
【図5】無線タグの構成の一例を示すブロック図である。
【図6】(a)が検出回路の一例を示す回路図であり、(b)が電磁場の検出の様子を説明するための模式図である。
【図7】記憶部に記憶される情報の一例を示す模式図であって、(a)が競技タイム等を示す図であり、(b)が累積警告回数等を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る競技情報記録処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
10 磁場発生装置
20 通信装置
30 警告表示機
40 受信端末
50 審判端末
60 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
審判員が使用する端末と、競技者が携帯する無線機器と、を含む競技情報管理システムであって、
前記端末には、
前記無線機器に向けて警告を通知するための通知情報を送信する情報送信手段と、
前記情報送信手段が送信した通知情報に応答して、前記無線機器から返信される応答情報を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段が受信した前記応答情報に含まれる警告情報の内容を表示する表示手段と、が設けられ、
前記無線機器には、
競技者個人の競技情報を記憶するための記憶手段と、
近傍に位置する前記端末から送られる前記通知情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記通知情報に基づく前記警告情報を前記記憶手段に格納する警告情報格納手段と、
前記警告情報格納手段が格納した前記警告情報に基づく前記応答情報を前記端末に送信する送信手段と、が設けられている、
ことを特徴とする競技情報管理システム。
【請求項2】
前記無線機器には、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記計時ポイントを検出した際に、前記計時手段により計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定手段と、
前記タイム特定手段が特定した前記競技タイムを前記記憶手段に格納するタイム格納手段と、が更に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技情報管理システム。
【請求項3】
前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、累積警告回数が含まれ、
前記送信手段が前記端末に送信する前記応答情報には、前記累積警告回数が含まれる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技情報管理システム。
【請求項4】
前記情報送信手段が前記無線機器に送信する前記通知情報には、警告時間及び当該端末を使用する審判員の識別情報が含まれ、
前記受信手段が受信する前記通知情報及び前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、前記警告時間及び前記審判員の識別情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の競技情報管理システム。
【請求項5】
競技者が携帯する無線機器であって、
競技者個人の競技情報を記憶するための記憶手段と、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記計時ポイントを検出した際に、前記計時手段により計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定手段と、
前記タイム特定手段が特定した前記競技タイムを前記記憶手段に格納するタイム格納手段と、
近傍に位置する所定の端末から送られる警告を通知するための通知情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記通知情報に基づく警告情報を前記記憶手段に格納する警告情報格納手段と、
を備えることを特徴とする無線機器。
【請求項6】
前記記憶手段に記憶される競技情報を送信する送信手段を更に備え、
前記タイム計時手段が前記競技タイムを特定した場合には、前記送信手段が、特定した前記競技タイムを所定の通信装置に向けて送信し、前記受信手段が前記通知情報を受信した場合には、前記送信手段が、前記警告情報格納手段が格納した前記警告情報を送信元の端末に向けて送信する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線機器。
【請求項7】
前記警告情報格納手段が前記記憶手段に格納する前記警告情報には、累積警告回数が含まれる、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の無線機器。
【請求項8】
競技者が携帯し、競技者個人の競技情報を記録するための記憶部を有する無線機器における競技情報記録方法であって、
時刻を計時する計時ステップと、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて前記計時ポイントを検出した際に、前記計時ステップにて計時される時刻を競技タイムとして特定するタイム特定ステップと、
前記タイム特定ステップにて特定した前記競技タイムを前記記憶部に格納するタイム格納手段と、
近傍に位置する所定の端末から送られる警告を通知するための通知情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信した前記通知情報に基づく警告情報を前記記憶部に格納する警告情報格納ステップと、
を備えることを特徴とする競技情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−280414(P2006−280414A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100596(P2005−100596)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】