説明

符号化信号記録装置

【課題】 MPEGモードで記録された圧縮信号を既存のDVCで再生させると信号が記録されていることが認識できない。
【解決手段】 MPEG方式で圧縮符号化した圧縮信号を記録するMPEG記録モードでは、図3(b)で示す如く、MPEG方式の圧縮信号のみならず、DV方式で圧縮した音声信号も記録する。従って、再生装置は、この音声信号の再生が可能となり信号が記録されていることを認識できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、映像音声信号を複数の圧縮符号化方式で圧縮符号化して得た符号化信号を記録する符号化信号記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディジタルの信号形態による映像音声信号を圧縮符号化し、これを磁気テープに記録し、再生する記録再生装置として、DV方式のカメラ一体型ビデオテープレコーダ(以下、DVCと記す)が知られている。このDVCには、複数の符号化モードが規定されており、現在のところの映像音声信号をSDモードで圧縮符号化する製品のみが販売されている。
【0003】しかし、このSDモードは、映像信号にフレーム内圧縮を施して記録するモードであるため、フレーム単位での編集が可能であるという利点を有するものの、圧縮率を高めるのが困難であり、結果として長時間記録に向かないという欠点もある。
【0004】そこで、SDモードと同じフレーム内圧縮を施すものの、その圧縮率を高めたSDLモードや、MPEG方式のフレーム間圧縮を施し、更に圧縮率を高めたMPEGモードを搭載したDVCの製品化が望まれている。
【0005】図4は、DVCの磁気テープ上に記録される圧縮信号の記録フォーマットを示す図であり、図4(a)は、SDモード又はSDLモードで圧縮符号化した圧縮信号の記録フォーマットを示しており、図4(b)はMPEGモードで圧縮符号化した圧縮信号の記録フォーマットを示している。
【0006】まず、図4(a)に示すSDモード又はSDLモードによる圧縮信号の記録フォーマットについて説明すると、1つのトラックの先頭から順に、トラック上での基準信号であるITI(Insert and Track Information)、SDモード又はSDLモードで圧縮符号化されたオーディオ信号、SDモード又はSDLモードで圧縮符号化されたビデオ信号、トラックIDやその他の付加情報よりなるサブコードが記録される。また、各信号の境界には、各信号が独立して書き換えられるようIBG(Inter Block Gap)が設けられる。
【0007】一方、MPEGモードにおいては、図4(b)の如く記録フォーマットが規定されており、SDモード又はSDLモード時にビデオ信号が記録される記録領域にMPEGモードで圧縮符号化されたオーディオ・ビデオ信号が記録され、SDモード又はSDLモード時にオーディオ信号が記録される記録領域が空き領域とされる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、DVCにおいては、何れのモードの圧縮信号を記録する際も、同一種別の磁気テープを使用する。また、SDモードのみに対応した既存のDVCでは、記録媒体上に記録されている記録モードを識別するための情報を無視して、圧縮信号の再生を行う。
【0009】従って、SDモードのみに対応した既存のDVCによりMPEGモードで圧縮符号化した圧縮信号が記録される磁気テープを再生させても、映像音声信号が出力されず、使用者は、信号が記録されていることを認識できない場合がある。そして、使用者は、何の信号も記録されていない磁気テープであると勘違いして、記録済みの圧縮信号に他の信号を上書きしたり、記録済みの圧縮信号を消去してしまうおそれがあった。
【0010】本願発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、SDモードのみに対応した既存のDVCで再生させても、信号が記録されていることを識別できるよう記録を行う符号化信号記録装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、本発明に係る符号化信号記録装置は、相異なる符号化方式の映像音声情報を記録媒体に記録する符号化信号記録装置であり、入来する映像情報に第1の映像符号化方式の符号化を施して第1の映像信号として出力する第1の映像符号化部と、前記映像情報に前記第1の映像符号化方式とは異なる第2の映像符号化方式の符号化を施して第2の映像信号として出力する第2の映像符号化部と、入来する音声情報に第1の音声符号化方式の符号化を施して第1の音声信号として出力する第1の音声符号化部と、入来する音声情報に第1の音声符号化方式とは異なる第2の音声符号化方式の符号化を施して第2の音声信号として出力する第2の音声符号化部と、前記第1及び第2の映像信号並びに前記第1及び第2の音声信号を記録媒体に記録する記録部とを備え、前記記録媒体の第1の記録領域に前記第1の音声信号を記録すると共に前記記録媒体の前記第1の記録領域と異なる第2の記録領域に前記第1の映像信号を記録する第1の記録モードと、前記記録媒体の前記第1の記録領域に前記第1の音声信号を記録すると共に前記記録媒体の前記第2の記録領域に前記第2の映像信号及び前記第2の音声信号を記録する第2の記録モードとを有することを特徴とするものである。
【0012】また、本発明に係る符号化信号記録装置は、音声情報を格納した格納手段を備え、前記第2の記録モードによる記録時には、前記格納手段から読み出した音声情報に前記第1の音声符号化方式の符号化を施して前記記録媒体の前記第1の記録領域に記録するようにしたことを特徴とするものである。
【0013】また、前記第1の映像信号は、入来する映像情報にフレーム内圧縮を施した映像信号である一方、前記第2の映像信号は、入来する映像情報にフレーム間圧縮を施した映像信号であることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により詳細に説明する。図1は、本発明の実施例に係る符号化信号記録装置を説明するためのブロック図であり、1は入来するディジタル映像信号およびディジタル音声信号をMPEG方式の圧縮信号に圧縮符号化するMPEG符号化部、2は入来するディジタル映像信号をDV方式の圧縮映像信号に圧縮符号化するDVビデオ符号化部、3は入来するディジタル音声信号をDV方式の圧縮音声信号に圧縮符号化するDVオーディオ符号化部である。
【0015】また、4はその内部に蓄積されるディジタル音声信号をDVオーディオ符号化部3に出力するROM、5はMPEG符号化部1が出力する圧縮信号、DVビデオ符号化部2が出力する圧縮映像信号、DVオーディオ符号化部3が出力する圧縮音声信号における1又は複数の信号を選択して、所定のフォーマットの信号として記録媒体6に記録する記録部である。
【0016】次に、本発明の実施例に係る符号化信号記録装置の動作について説明する。なお、本実施例に係る符号化信号記録装置は、SDモードで圧縮符号化した圧縮信号の記録とMPEGモードで圧縮符号化した圧縮信号の記録とが行え、ここでは、SDモードの圧縮信号を記録する記録モードをSD記録モード、MPEGモードの圧縮信号を記録する記録モードをMPEG記録モードと呼ぶものとする。
【0017】まず、SD記録モードで記録を行う場合には、入来するディジタル映像信号に基づきDVビデオ符号化部2が圧縮映像信号を生成すると共に、入来するディジタル音声信号に基づきDVオーディオ符号化部3が圧縮音声信号を生成する。そして、記録部5は、これらの圧縮映像信号および圧縮音声信号から記録信号を生成して、図3(a)で示す如く記録フォーマットにて、DVモードの圧縮信号の記録を行う。
【0018】なお、その際、記録部5は、記録信号の各シンクブロック内に記録モードを示す識別信号を格納して、これを記録媒体6に記録する。また、MPEG符号化部1は、入来するディジタル映像信号およびディジタル音声信号に基づき圧縮信号を生成しても、また、これを生成しなくても良いが、SD記録モードにおいて、MPEGモードの圧縮信号が記録されることはない。また、図3R>3(a)で示す如くトラックは、記録媒体6である磁気テープの長手方向に対して傾斜した傾斜トラックとして、図2で示す如く記録媒体6上に複数形成される。
【0019】一方、MPEG記録モードで記録を行う場合には、入来するディジタル映像信号及びディジタル音声信号に基づきMPEG符号化部1が圧縮信号を生成すると共に、DVオーディオ符号化部3がROM4から出力されるディジタル音声信号に基づき圧縮音声信号を生成して、これを記録部5に出力する。
【0020】そして、記録部5は、MPEG符号化部1から出力される圧縮信号及びDVオーディオ符号化部3から出力される圧縮音声信号に基づき記録信号を生成して、図3(b)で示す如く記録フォーマットにて記録信号を記録する。つまり、SDモード時にビデオ信号が記録される記録領域にMPEGモードで圧縮符号化した、映像音声情報を含む圧縮信号を記録し、SDモード時にオーディオ信号が記録される記録領域にSDモードで圧縮符号化した圧縮音声信号を記録する。また、記録信号の各シンクブロック内に記録モードを示す識別信号が記録される。
【0021】ここで、ROM4内には、例えば「再生できない信号が記録されています」とのメッセージがディジタル音声信号の形態で格納されている。従って、このメッセージがSDモードによる圧縮音声信号として記録媒体6に記録され、この記録媒体6を既存のDVCで再生させてもMPEGモードによる符号化信号が記録されていることを認識できる。
【0022】なお、ROM4は必ずしも設ける必要はなく、このROM4を備えない装置でMPEG記録モードの記録を行う場合には、このメッセージ情報に代わり、入来する音声信号をSDモードで圧縮符号化して記録媒体6に記録する。従って、既存のDVCで再生させた場合には、音声のみが再生出力されるため、少なくとも何らかの信号が記録されているということを認識できる。
【0023】以上の如く、本発明に係る符号化信号記録装置によれば、記録モードに拘らず、図4(b)で示した空き領域にSDモードで圧縮符号化した圧縮音声信号を記録するため、記録モードを識別するための情報を無視して再生を行う再生装置で再生させても、何らかの信号が記録されていることを認識できる。
【0024】
【発明の効果】本発明に係る符号化信号記録装置によれば、第1の記録モードで記録を行う際も、第2の記録モードで記録を行う際も、記録媒体の第1の領域に第1の音声信号を記録するため、第1の記録モードのみに対応した既存の再生装置で再生を行う場合であっても、何らかの信号が記録されていることを認識でき、記録媒体上の信号を誤って消去してしまうといった事態を防止できる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る符号化信号記録装置を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る符号化信号記録装置で記録した記録信号のトラックパターンを示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る符号化信号記録装置で記録した記録信号の記録フォーマットを示す図である。
【図4】従来のDVCで記録した記録信号の記録フォーマットを示す図である。
【符号の説明】
1…MPEG符号化部
2…DVビデオ符号化部
3…DVオーディオ符号化部
4…ROM
5…記録部
6…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】相異なる符号化方式の映像音声情報を記録媒体に記録する符号化信号記録装置であり、入来する映像情報に第1の映像符号化方式の符号化を施して第1の映像信号として出力する第1の映像符号化部と、前記映像情報に前記第1の映像符号化方式とは異なる第2の映像符号化方式の符号化を施して第2の映像信号として出力する第2の映像符号化部と、入来する音声情報に第1の音声符号化方式の符号化を施して第1の音声信号として出力する第1の音声符号化部と、入来する音声情報に第1の音声符号化方式とは異なる第2の音声符号化方式の符号化を施して第2の音声信号として出力する第2の音声符号化部と、前記第1及び第2の映像信号並びに前記第1及び第2の音声信号を記録媒体に記録する記録部とを備え、前記記録媒体の第1の記録領域に前記第1の音声信号を記録すると共に前記記録媒体の前記第1の記録領域と異なる第2の記録領域に前記第1の映像信号を記録する第1の記録モードと、前記記録媒体の前記第1の記録領域に前記第1の音声信号を記録すると共に前記記録媒体の前記第2の記録領域に前記第2の映像信号及び前記第2の音声信号を記録する第2の記録モードとを有することを特徴とする符号化信号記録装置。
【請求項2】音声情報を格納した格納手段を備え、前記第2の記録モードによる記録時には、前記格納手段から読み出した音声情報に前記第1の音声符号化方式の符号化を施して前記記録媒体の前記第1の記録領域に記録するようにしたことを特徴とする請求項1記載の符号化信号記録装置。
【請求項3】前記第1の映像信号は、入来する映像情報にフレーム内圧縮を施した映像信号である一方、前記第2の映像信号は、入来する映像情報にフレーム間圧縮を施した映像信号であることを特徴とする請求項1記載の符号化信号記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−9073(P2003−9073A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−194357(P2001−194357)
【出願日】平成13年6月27日(2001.6.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】