説明

符号化装置、符号化方法、記録装置、記録方法、復号装置、復号方法

【課題】マークポジション記録が行われるバルク記録方式(多層記録)にとって好適な符号化方式を実現する。
【解決手段】2m個のmビットデータ語に対し、2n個のnビット符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を対応づけた変換テーブルを用意する。その上で、入力されたmビットのデータ語を、上記変換テーブルに基づき符号化する。これによりシンボル「1」の数が疎となる傾向に符号化を行うことができ、バルク層内にマークポジション記録による多層記録を行うバルク記録方式が採用される場合において、好適な符号化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mビットのデータ語をnビットの符号語に変換して上記mビットのデータ語についての符号化を行う符号化装置とその方法に関する。また、そのような符号化により得られた記録符号列を記録する記録装置とその方法に関する。さらには、符号列を復号する復号装置とその方法に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Kees A. Schouhamer Imminkによる”EFMPlus:THE CODING FORMAT OF THE MULTIMEDIA COMPACT DISC”, IEEE Transaction on Consumer Electronics, Vol.41, Issue 3, Aug. 1995.
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第95/22802号
【特許文献2】特開2008−135144号公報
【特許文献3】特開2008−176902号公報
【背景技術】
【0004】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが広く普及している。
これら現状で普及している光ディスクでは、記録符号をNRZI(Non Return to Zero Inverting)で定義して、記録時にNRZ(Non Return to Zero)符号に変換してから記録するマークエッジ記録を行うようにされている。
【0005】
また、光ディスクでは、トラッキングエラー信号をグルーブやピットなどから得る関係から、記録符号の低域成分が少ないことが要求される。すなわち、トラッキングサーボ帯域は記録符号の信号帯域に比べて低いところにあるが、記録符号に低域成分が多いと、トラッキングエラー信号に記録符号の成分が重畳してトラッキングサーボ特性を劣化させる恐れがあるためである。
【0006】
そこで従来の光ディスクでは、記録するNRZ符号列のデジタル累積加算値DSV(Digital Sum Value)の絶対値が低くなるような制御をすることによって、記録符号の低域成分の抑圧を図るということが行われる。
例えば、CDではEFM変調符号を用いており、14ビットの符号語と次の符号語との間に最小走行長d=2の制限を満たし、かつ符号列のDSVの絶対値が小さくなるような予め決められた3ビットの連結ビットを選択して挿入するような符号化法が取られている。
また、DVDではEFM Plusという変調符号を用いて、あるデータ語に関しては主テーブルと代理テーブルから符号列のDSVの絶対値が小さくなる方の符号語を選択して符号化してDSV制御が行われている。この変調符号は、例えば非特許文献1や特許文献1に記載されている。
【0007】
また、BDでは17PPという変調符号を用いているが、BDの記録データフォーマットにDCコントロールビットが周期的に定義されていて、符号列のDSVの絶対値が下がるような「0」か「1」のDCコントロールビットを選択してから符号化が行われている。
【0008】
また、例えば磁気ディスク記録媒体などの記録変調符号化方式として、(2,7)RLLも知られている。この(2,7)RLLは、d=2かつk=7の走行長制限を満たすもので、可変長テーブルを用いた符号化を行う。符号化率は1/2となる。
具体的に(2,7)RLLでは、以下のような規則で入力データの符号化を行うものとされている。
入力データ→符号
11 →1000
10 →0100
000→000100
010→100100
011→001000
0011→00001000
0010→00100100
このような(2,7)RLLの変換規則によれば、例えば「110110011」なる入力データは、「11」→「1000」,「011」→「001000」,「0011」→「00001000」より、「100000100000001000」という符号列に変換される。
【0009】
一方で、CD、DVD、BDなど現状において普及している光ディスクに対し、先に本出願人は、次世代を担う光ディスクとして、例えば特許文献2や特許文献3に記載されるようないわゆるバルク記録型(単にバルク型とも呼ばれる)の光ディスクを提案している。
【0010】
ここで、バルク記録とは、例えば図18に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体100)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0011】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献2には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0012】
マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式と、ネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
ポジ型マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
また、ネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。このネガ型マイクロホログラム方式では、初期化処理として、予めバルク層に干渉縞を形成しておく処理が必要となる。
【0013】
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば特許文献3に開示されるようなボイド(空包、空孔)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空包を記録する手法である。特許文献3に記載されるように、このように形成された空包部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空包部分は記録マークとして機能し、これによって空包マークの形成による情報記録が実現される。
【0014】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、上述のポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、特許文献3には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
【0015】
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク記録型(単にバルク型とも称する)の光ディスク記録媒体であるが、このようなバルク型の光ディスク記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層102においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図18に示したバルク型記録媒体100の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
【0016】
このため実際において、バルク型記録媒体100に対しては、次の図19に示すような案内溝を有する基準となる反射面(基準面)を設けるようにされている。
具体的には、カバー層101の下面側に例えばピットやグルーブの形成による案内溝(位置案内子)がスパイラル状又は同心円状に形成され、そこに選択反射膜103が成膜される。そして、このように選択反射膜103が成膜されたカバー層102の下層側に対し、図中の中間層104としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層102が積層される。
ここで、上記のようなピットやグルーブ等による案内溝の形成により、例えば半径位置情報や回転角度情報などの絶対位置情報(アドレス情報)の記録が行われている。以下の説明では、このような案内溝が形成され絶対位置情報の記録が行われた面(この場合は上記選択反射膜103の形成面)のことを、「基準面Ref」と称する。
【0017】
上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体100に対しては、図中に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光とも称する)のみでなく、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)を、それぞれ共通の対物レンズを介して照射するようにされる。
【0018】
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層102に到達してしまうと、当該バルク層102内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、上記サーボ用レーザ光として、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとした上で、基準面Refに形成される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜103を設けるものとしている。
【0019】
以上の前提を踏まえた上で、バルク型記録媒体100に対するマーク記録時の動作について説明すると、先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層102に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層102内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層102内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1が最上部に設定された情報記録層位置Lであり、以降、L2→L3→L4→L5の順で下層側に設定された情報記録層位置Lとなる。
【0020】
マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層102内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
【0021】
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために基準面Refよりも下層側に形成されたバルク層102に到達させ、なお且つバルク層102内において合焦位置の選択が可能とされる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための録再光用フォーカス機構(エキスパンダ)が設けられることになる。
つまり、このように設けられたエキスパンダにより、対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させることで、録再用レーザ光の合焦位置をサーボ用レーザ光とは独立して調整するものである。
録再用レーザ光のトラッキング方向における位置は、上記のようなサーボ用レーザ光を用いた対物レンズのトラッキングサーボにより、基準面Refにおける案内溝の直下となる位置に自動的に制御される。
【0022】
なお、マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体100について再生を行う際は、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(再生時については情報記録層L、マーク形成層Lとも称する)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行うことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ここで、上記により説明したようなバルク型記録媒体100において、特にボイドを記録する手法が採られる場合には、記録マークのエッジ位置を正確にコントロールすることが困難とされているなどの事情から、マーク/スペースの長さの組み合わせで記録情報を表現するマークエッジ記録ではなく、マークポジション記録を採用することになる。
【0024】
マークポジション記録を採用する場合、安定した再生性能を確保するにあたっては、マークエッジ記録を行う場合のようなDSV制御を行うことよりも、ボイドの形成間隔を疎(sparse)にするということが重要となる。
図20は、この点について説明するための図であり、(a)図はバルク層102におけるボイドの形成間隔が密な場合における反射光の様子を示し、(b)図はバルク層102におけるボイドの形成間隔が疎な場合における反射光の様子を示している。
バルク型記録媒体100では、多層記録された記録符号を読み出すことを考えると、他の層からの記録符号の漏れ込みである層間クロストークの抑制を図ることが、再生性能の向上にあたって重要となる。これら図20(a)(b)を比較すると、層間クロストークの抑制にあたっては、形成されるバルクの数(記録符号の「1」の数)がなるべく少なく、疎であることが望ましいことは明らかである。
【0025】
従来の光ディスクにおいて採用されていた変調符号であるEFM、EFM Plus、17PPなどでは、マークエッジ記録の際にDSV制御は可能であるが、必ずしも「1」が疎な記録符号列を発生することはできないものとなる。
本発明はこのような問題の解決を図るべく為されたものであり、マークポジション記録が行われるバルク記録方式(多層記録)にとって好適な符号化方式を提案することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このため、本発明では符号化装置として以下のように構成することとした。
すなわち、mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を、2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルを備える。
また、入力されたmビットのデータ語を上記変換テーブルに基づいて符号化する符号化部を備えるようにした。
【0027】
また、本発明では記録装置として以下のように構成することとした。
つまり、mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を、2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルを備える。
また、入力されたmビットのデータ語を上記変換テーブルに基づいて符号化する符号化部を備える。
また、上記符号化部が出力した上記符号語に基づき光記録媒体に対する記録を行う記録部を備えるようにした。
【0028】
また、本発明では復号装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の復号装置は、mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、入力された上記mビットのデータ語を、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルに基づいて変換する符号化により得られた符号列について復号化を行う復号装置であって、
上記変換テーブルそのもの又は上記変換テーブルと同じデータ語と符号語との対応づけがされたテーブルを復号化テーブルとして備えると共に、入力された符号列と対応するデータ列を、上記復号化テーブルに基づいて出力する復号化部を備えるものである。
【0029】
上記のように本発明の符号化では、2m個のmビットデータ語に対し、2n個のnビット符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を対応づけた変換テーブルを用意しておくものとし、入力されたmビットのデータ語を上記変換テーブルに基づき符号化するものとしている。
このような本発明によれば、シンボル「1」の数が疎となる傾向に符号化を行うことができる。
また、このような本発明の符号化で得られた符号列に関しては、上記本発明の復号装置のように、入力された符号列に対応するデータを上記復号化テーブルに基づき出力するものとすることで、適正に復号化することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、記録符号の「1」の数が少なく疎となるような符号化を行うことができ、それによりバルク層内にマークポジション記録による多層記録を行うバルク記録方式が採用される場合において、好適な符号化とすることができる。そしてその結果、バルク型記録媒体の再生安定化が図られるようにできる。
【0031】
また、本発明の復号装置(及び復号方法)によれば、本発明の符号化で得られた符号列を適正に復号できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態の記録再生装置の内部構成を示した図である。
【図2】実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体の断面構造図である。
【図3】第1の実施の形態の変換テーブルのデータ構造(先頭一部)を示した図である。
【図4】第1の実施の形態の変換テーブルのデータ構造(続き)を示した図である。
【図5】符号化部の内部構成を示した図である。
【図6】連結ビットの挿入を含む第1の実施の形態としての符号化手法について説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態としての符号化処理の具体的な手順を示したフローチャートである。
【図8】復号化部の内部構成を示した図である。
【図9】連結ビットの除去を含む第1の実施の形態としての復号化手法について説明するための図である。
【図10】第1の実施の形態としての復号化処理の具体的な手順を示したフローチャートである。
【図11】10,000,000符号語に対するoccurrenceのヒストグラムを示した図である。
【図12】第1の実施の形態としての符号化を行った場合のoccurrenceの等高線マップを示した図である。
【図13】(2,7)RLLによる符号化を行った場合のoccurrenceの等高線マップを示した図である。
【図14】第2の実施の形態の変換テーブルのデータ構造(先頭一部)を示した図である。
【図15】第2の実施の形態の変換テーブルのデータ構造(続き)を示した図である。
【図16】第2の実施の形態としての符号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図17】第2の実施の形態としての復号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図18】バルク記録方式について説明するための図である。
【図19】基準面を備える実際のバルク型記録媒体の断面構造と記録/再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
【図20】バルク型記録媒体について記録符号のシンボル「1」の数を疎とする符号化が有利である点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

−第1の実施の形態−
<1.記録再生装置及光記録媒体の構成>
<2.変換テーブルの例>
<3.第1の実施の形態の符号化>
[3-1.符号化部の内部構成]
[3-2.符号化の具体的な手法]
[3-3.処理手順]
[3-4.第1の実施の形態の符号化のまとめ]
<4.第1の実施の形態の復号化>
[4-1.復号化部の内部構成]
[4-2.復号化の具体的な手法]
[4-3.処理手順]
<5.シミュレーション結果>
−第2の実施の形態−
<6.第2の実施の形態の符号化>
<7.第2の実施の形態の復号化>
<8.変形例>
【0034】
−第1の実施の形態−
<1.記録再生装置及光記録媒体の構成>

図1は、本発明の一実施形態としての記録再生装置の内部構成を示した図である。
先ず、図中のバルク型記録媒体1は、先の図19で説明したものと同様、バルク層としての記録層を有するバルク型の光記録媒体とされる。
バルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
【0035】
ここで、図2は、バルク型記録媒体1の断面構造図を示している。
この図2に示されるように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
【0036】
なお、本明細書において「上層側」とは、記録や再生を行うためのレーザ光照射を行う装置側からの光入射面側を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0037】
バルク型記録媒体1において、上記カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられている。位置案内子は、スパイラル状又は同心円状に形成される。
上記案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がピット列で形成される場合、ピットとランドの長さの組み合わせにより位置情報(絶対位置情報:ディスク上での回転角度位置を表す情報としての回転角度情報や、半径位置情報など)が記録される。或いは、案内溝がグルーブとされる場合、当該グルーブを周期的に蛇行(ウォブル)させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報の記録が行われる。
カバー層2は、例えばこのような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0038】
また、上記案内溝が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、当該バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
本例の場合において、録再用レーザ光は波長=405nm程度、サーボ用レーザ光は波長=640nm程度とされている。
【0039】
上記選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、例えば先に説明したポジ型マイクロホログラム方式やネガ型マイクロホログラム方式、ボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド(空包)記録方式が採用される場合を例示する。
【0040】
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、上述の案内溝としての位置案内子が形成された選択反射膜3は、前述もしたようにサーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、実施の形態においても選択反射膜3が形成された面は基準面Refと称する。
【0041】
先の図19においても説明したように、バルク型の光記録媒体においては、バルク層内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置L)が設定されるものとなる。図示による説明は省略するが、本実施の形態のバルク型記録媒体1においても、必要な数だけ情報記録層位置Lが設定されているとする。
【0042】
ここで、各層位置の具体例について述べておくと、最上部に位置する情報記録層位置Lについては、バルク型記録媒体1の表面(最上面)からおよそ100μmの位置として設定される。また、最下部に位置する情報記録層位置Lは、上記表面からおよそ300μmの位置として設定される。
そして、これら最上部の情報記録層位置Lから最下部の情報記録層位置Lまでの間の各情報記録層位置Lは、隣接する各情報記録層位置Lの間隔が、層間クロストークを考慮し平均で10μm設けられるようにされている。
ちなみに、基準面Refの位置は上記表面からおよそ50μmの位置であり、従って基準面Refから上記最上部の情報記録層位置Lまでの間隔はおよそ50μmとなる。
【0043】
説明を図1に戻す。
実施の形態の記録再生装置においては、バルク型記録媒体1に対して記録/再生のためのレーザ光照射を行う光学ピックアップ13が設けられている。
光学ピックアップ13内には、先の図19にて説明した録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とをそれぞれ出射する録再用レーザ光源とサーボ用レーザ光源とが設けられる。また、これら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを共に集光してバルク型記録媒体1に照射する対物レンズや、対物レンズをトラッキング方向及びフォーカス方向に駆動可能に保持する2軸アクチュエータも設けられる。さらには、上記それぞれの光源から出射された録再用レーザ光とサーボ用レーザ光を同軸上に合成して上記対物レンズに導き且つ、バルク型記録媒体1から上記対物レンズを介して入射する録再用レーザ光の反射光とサーボ用レーザ光の反射光とを別々の光路に分光する分光素子(例えばダイクロイックプリズムなど)や、上記録再用レーザ光の反射光を受光する録再光用受光部、上記サーボ用レーザ光の反射光を受光するサーボ光用受光部も備えられている。
また、先の図19にて説明したような、対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させる録再光用フォーカス機構(エキスパンダ)も設けられる。この録再光用フォーカス機構が設けられることで、記録時において、サーボ用レーザ光による基準面Refを対象とした対物レンズのフォーカスサーボが行われる下で、バルク層5内に設定された所要の情報記録層位置Lに対して選択的にマークを記録することができる。
【0044】
なお、実際には、記録再生装置に対しては、先の図19にて説明したような記録時におけるサーボ用レーザ光の反射光に基づくレーザ光の照射位置の制御や、再生時における録再用レーザ光の反射光に基づくレーザ光の照射位置制御を行うためのサーボ回路や、光学ピックアップ13のスライド機構、バルク型記録媒体1を回転駆動するスピンドルモータも設けられるものとなるが、これらの構成は実施の形態としての符号化処理や復号処理に直接関わるものでないため、ここではその図示による説明は省略した。
【0045】
そして、記録再生装置には、バルク層5に記録すべき符号列(記録符号列)を生成するための構成として、図中の符号化部10、及び変換テーブル11が設けられている。
符号化部10は、入力される記録データについて、そのmビットのデータ語を、逐次変換テーブル11を用いて符号化し出力する。
なお、符号化部10の内部構成、及び符号化部10が行う実施の形態としての符号化処理については後に改めて説明する。
ここで変換テーブル11は、記録再生装置内に設けられた所要のメモリ装置に記憶されている。
【0046】
符号化部10による符号化処理により得られた記録符号列は、記録制御部12に供給される。
記録制御部12は、上記記録符号列に基づき光学ピックアップ13内の前述した録再用レーザ光源を発光駆動して、バルク層5内へのマーク記録を実行させる。
この場合、記録制御部12は、上記記録符号列に対し、従来の例えばDVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc:登録商標)などの光ディスクシステムで行われているようなNRZ(Non Return to Zero)変調処理は施さず、いわゆるマークポジション記録が行われるように上記録再用レーザ光源を発光駆動する。
本例の場合、記録制御部12は、上記記録符号列のシンボル「1」に対応してマークが記録され、シンボル「0」に対応してはスペースが形成されるように上記録再用レーザ光源を発光駆動する。
【0047】
また、バルク型記録媒体1に記録されたマークからの反射光は、前述した光学ピックアップ13内の録再光用受光部により検出され、再生信号(以下、再生信号RFとも称する)が得られる。
このようにして得られたマーク列についての再生信号は、アンプ14にて増幅された後、AGC(Auto Gain Control)回路15にてゲイン調整が為される。
【0048】
そして、AGC回路15を介した再生信号は、図のようにPLL(Phase Locked Loop)回路16とA/D変換器17とにそれぞれ供給される。
PLL回路16は、上記再生信号に基づくPLL処理によってクロックCLKを生成する。該クロックCLKはA/D変換器17など必要な各部のクロックとして供給される。
【0049】
A/D変換器17は、上記再生信号をデジタルサンプリングする。A/D変換器17によりサンプリングされた再生信号はイコライザ(EQ)18に供給される。
【0050】
イコライザ18、及びビタビ復号器19は、いわゆるPRML(Partial Response Most Likelihood)復号方式により再生信号を2値化するために設けられる。
イコライザ18は、A/D変換器17にてサンプリングされた再生信号について所定のPRのクラス(たとえば1:2:2:1や1:2:2:2:1など)に応じたPR等化処理を施し、ビタビ復号器19に出力する。
ビタビ復号器19は、PR等化された再生信号についてビタビ復号処理を行って2値化された再生信号を得る。
【0051】
ビタビ復号器19により得られた2値化再生信号(前述の記録符号列に相当)は、復号化部20に供給される。
復号化部20は、上記2値化再生信号としての符号列を、変換テーブル11を用いて逐次mビットのデータ語に変換することで、再生データ列を得る。すなわち、前述の記録データを再生した再生データを得るための復号化処理を行うものである。
なお、この復号化部20の内部構成や変換テーブル11を用いた具体的な復号化処理の内容についても後に改めて説明する。
【0052】
ここで、図1に示した記録再生装置の構成はこれに限定されるべきものでない。
例えば 再生信号RFの2値化処理をPRML復号処理により行う場合を例示したが、再生信号RFの2値化手法はこれに限定されるべきものではない。
また、クロックCLKを生成するにあたってのPLL処理に関しては、例えばITR(Interpolated Timing Recovery)方式などのデジタルPLL処理で実現するように構成するようにもできる。
【0053】
<2.変換テーブルの例>

第1の実施の形態の符号化/復号化で用いる変換テーブル11について説明しておく。
先ず前提として、実施の形態において、変換テーブル11では、mビットのデータ語に対し、nビットの符号語を対応づける(ここでm,nは共に1以上の整数であり、且つn>mであるとする)。具体的に本実施の形態の場合は、m=16、n=29として、16ビットのデータ語に29ビットの符号語を対応づけるものとしている。
【0054】
また、実施の形態では、符号化結果として得られる符号列が、最短0連続長d(d≠0)及び最長0連続長k(k>d)の走行長制限を満たすように、符号化を行うものとする。具体的に本実施の形態の場合、走行長制限はd=2かつk=12が満たされるようにする。換言すれば、シンボル「1」の間の「0」の連続長が2以上12以下となるように制限するものである。
【0055】
ここで、このような走行長制限を設ける理由の1つとしては、本例ではバルク記録としてボイド記録を行うようにしていることが挙げられる。すなわち、本例のようにバルク層5にボイドを記録するとした場合には、マーク間の距離(つまり符号列のシンボル「1」の間の距離)が近接し過ぎると、隣接ボイドとの融合(くっつき)が生じ、記録符号を正しく再生することができなくなってしまう。このため、最小0連続長dの制限が必要となる。
一方で、PLL回路16にてタイミング同期を行う際には、再生信号RFの「1」が得られたタイミングとクロックCLKのエッジとの位相誤差信号を得る必要があるが、このときに再生信号RFの「1」がある程度の時間的間隔で到来しなければPLL同期をかける機会が少なくなるので、クロックジッターが大となってしまう。そこで、最大0連続長の制限も必要となるものである。
【0056】
これらの前提を踏まえた上で、本例において、変換テーブル11に格納する符号語は以下のように選定したものとなる。
先ず、n=29ビットのバイナリ符号語(229個)のうちで、d=2かつk=12による走行長制限を満たすものは80,966個存在する。そしてこのうち、符号語の始端側の条件として、シンボル「1」で始まり次のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下である、又は(k/2)−1個以下のシンボル「0」の連続で始まるという条件を満たし、且つ、符号語の終端側の条件として、k/2個以下のシンボル「0」の連続で終端する、又はシンボル「1」で終端しその前のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下であるという条件を満たす符号語は、68,182個存在する。
この68,182個の符号語集合は、後述する連結ビットの挿入を前提としたときに、該連結ビットで連結されたn×2+1ビットによる符号列が上記の走行長制限を満たすことができるように選定されたものとなり、以下、S0と表記する。
【0057】
そして本実施の形態では、このように選定したS0符号語集合のうちから、一符号語中でのシンボル「1」の数が少ない65,536個を抽出し、これを変換テーブル11に格納するものとしている。
ここで以下、符号語中でのシンボル「1」の数は「occurrence」とも称する。
【0058】
図3,図4は、変換テーブル11のデータ構造を示している。
なお、これら図3,図4において、図中Dataの欄はデータ語(HEX表示)を表し、Codeの欄は符号語(バイナリ表示)を表している。またOccの欄はoccurrenceを表す。
これら図3,図4を参照して分かるように、本実施の形態の変換テーブル11では、mビットの符号語に対し、上述のS0符号語集合のうちからoccurrenceが小である方から順に抽出したnビットの符号語を対応づけるものとしている。
【0059】
<3.第1の実施の形態の符号化>
[3-1.符号化部の内部構成]

図5は、図1に示した符号化部10の内部構成を示している。
なおこの図では符号化部10の内部構成と共に、図1に示した変換テーブル11も併せて示している。
図示するように符号化部10内には、データ語/符号語変換部10a、符号語端変換・連結ビット挿入部10b、及びメモリ10cが設けられる。
【0060】
図1にも示した記録データは、データ語/符号語変換部10aに対して入力される。
データ語/符号語変換部10aは、記録データとして入力されたm=16ビットのデータ語ごとに、それに対応するn=29ビットの符号語を変換テーブル11から検索し、出力する。
ここで、或る時刻tにおけるmビットの入力データ語は図のように「Dt」と表記する。
また、入力データ語Dtを変換テーブル11で変換して得られたnビットの符号語については「Ct」と表記する。
【0061】
符号語端変換・連結ビット挿入部10bは、上記データ語/符号語変換部10aより逐次入力されるnビットの符号語について、時刻的に連続する2つのnビット符号語(Ct-1,Ct)の間に対するaビット(aは1以上の整数)の連結ビットの挿入を行うと共に、必要に応じて符号語Ct-1の終端ビット及び符号語Ctの始端ビットの値を変換を行う。
この場合、a=1とされ、符号端変換・連結ビット挿入部10bは、nビットの符号語(Ct-1)に1ビットの連結ビットを加えた合計30ビットの符号(図中Ct-1&A)を逐次出力するようにされている。
なお、この符号語端変換・連結ビット挿入部10bによる具体的な処理内容については後述する。
【0062】
メモリ10cは、符号語端変換・連結ビット挿入部10bが符号語Ctを一時刻前の符号語Ct-1として保持しておくために設けられる。
【0063】
[3-2.符号化の具体的な手法]

図6は、上記連結ビットの挿入を含む第1の実施の形態としての符号化手法について説明するための図である。
先ず、この場合の符号化では、連結ビットの挿入にあたり、符号語Ct-1の終端ビットの値(Ct-1[28]と表記する)と、符号語Ctの始端ビットの値(Ct[0]と表記する)とを取得する。
そして、図示もしているように、(Ct-1[28],Ct[0])が(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である場合には、連結ビット(A)として「0」を挿入する。
一方、(Ct-1[28],Ct[0])=(1,1)である場合には、Ct-1[28]及びCt[0]を「0」に変換すると共に、連結ビット(A)として「1」を挿入する。
【0064】
このような連結ビット挿入処理を行うことで、符号化率をできるだけ高めるという前提の下で、走行長制限を満たすための符号語の選定条件を緩和することができる。
例えば仮に、上記のような連結ビットの挿入を行わないとした場合、d=2かつk=12の走行長制限を満たすにあたっては、前述のS0符号語集合の選定条件にさらにシンボル「1」で始まるもの及びシンボル「1」で終端するものを除く、という条件を課す必要がある。このことによっては、S0符号語集合のうちのoccurrenceが小である符号語の減少は避けられない。
このことからも理解されるように、上記のような連結ビットの挿入を行うことによっては、或る符号化率をできるだけ高めつつ所定の走行長制限を満すにあたって、変換テーブル11内にoccurrenceが小である符号語がより多く格納される傾向となるように図ることができる。
【0065】
また、上記の連結ビット挿入処理によれば、Ct-1[28]=1且つCt[0]=1である場合には、Ct-1[28]=0,Ct[0]=0に変換されるので、この点でもシンボル「1」がより疎となる符号化を実現することができる。
【0066】
[3-3.処理手順]

図7は、上記により説明した第1の実施の形態としての符号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこの図7は、図5に示した符号語端変換・連結ビット挿入部10bが行うべき具体的な処理の手順を示したものとなる。
【0067】
図7において、先ずステップS101では、N=0に設定する。ここでNは、データ語/符号語変換部10aからの符号語の入力が初回入力であるか否かを識別するための識別子であり、N=0が初回入力である旨を表し、N=1が初回以降の入力である旨を表す。
【0068】
そして、続くステップS102では、符号語(Ct)を入力し、次のステップS103において、N=1であるか否かを判別する。N=1ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS104にて符号語Ctをメモリ10cに保持(次時刻において符号語Ct-1となる)した上で、ステップS105にてN=1に設定し、先のステップS102に戻る。
このように初回に入力された符号語については、先ずはメモリ10cに保持されるのみとなる。
【0069】
一方、ステップS103において、N=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS106においてCt-1[28]とCt[0]の値を取得し、続くステップS107において、Ct-1[28]=1且つCt[0]=1であるか否かを判別する。
ステップS107において、Ct-1[28]=1且つCt[0]=1ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS108において符号語Ct-1に連結ビットA=0を付して出力し、ステップS110に進む。
【0070】
一方ステップS107において、Ct-1[28]=1且つCt[0]=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS109においてCt-1[28]=0,Ct[0]=0とし、符号語Ct-1に連結ビットA=1を付して出力する。
該ステップS109の処理を行った後は、ステップS110に進む。
【0071】
ステップS110では、符号語Ctを符号語Ct-1としてメモリ10cに保持する。
そして続くステップS111では、符号化を終了すべき状態となったか否かを判別する。具体的にこのステップS111では、例えば図示は省略した制御部からの符号化停止指示など、予め符号化処理を終了すべきとして定められた所定の条件の成立有無を判別することになる。
ステップS111において、未だ符号化を終了すべきではないとの否定結果が得られた場合は、先のステップS102に戻る。
一方、符号化を終了すべきであるとの肯定結果が得られた場合はこの図に示す一連の処理は終了となる。
【0072】
[3-4.第1の実施の形態の符号化のまとめ]

上記のように本実施の形態では、2m個のmビットデータ語に対し、2n個のnビット符号語のうちからoccurrenceが小となるように選定した2m個の符号語を対応づけた変換テーブル11に基づき、入力データ語についての符号化を行うものとしている。
このような変換テーブル11を用いた符号化処理を行う本実施の形態によれば、記録符号列におけるシンボル「1」の数が少なくなるようにすることができる。つまり、シンボル「1」が疎(sparse)な記録符号列を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、(Ct-1[28],Ct[0])が(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である場合には連結ビットとして「0」を挿入し、(Ct-1[28],Ct[0])=(1,1)である場合にはCt-1[28]及びCt[0]を「0」に変換すると共に連結ビットとして「1」を挿入するという、連結ビット挿入処理を行うものとしている。
このような連結ビット挿入処理を行うことによっては、前述の通りS0符号語集合の選定条件を緩和することができ、それによって変換テーブル11により多くのoccurrence
が小な符号語が格納される傾向となるようにでき、結果、よりsparseな記録符号列が生成されるようにできる。またこれと同時に、上記のように(Ct-1[28],Ct[0])=(1,1)である場合はCt-1[28]及びCt[0]を「0」に変換するので、この点でも、よりsparseな記録符号列が生成されるようにできる。
【0074】
また、上記により説明した本実施の形態としての符号化は、符号化率=16/30となるが、これは、先に例示した(2,7)RLLの符号化率=1/2と比較して6.7%の改善が図られるものとなる。つまりその分、本実施の形態の符号化によれば、高記録密度化が図られるものとなる。
【0075】
<4.第1の実施の形態の復号化>
[4-1.復号化部の内部構成]

上記のような第1の実施の形態としての符号化で生成した符号列をデータ列に復号する手法を以下に述べる。
図8は、図1に示した復号化部20の内部構成を示している。
なおこの図では復号化部20の内部構成と共に、図1に示した変換テーブル11も併せて示している。
【0076】
復号化部20内には、連結ビット除去部20a、メモリ20b、及び符号語/データ語変換部20cが設けられる。
【0077】
図1に示したビタビ復号器19からの2値化再生信号は、連結ビット除去部20aに対して入力される。
ここで、上記2値化再生信号は、先に述べた符号語端変換・連結ビット付与部10bより出力される符号列に対応するものとなる。この意味で図8では、連結ビット除去部20aに入力される2値化再生信号を「Ct&A(30bits)」と表記している。
【0078】
連結ビット除去部20aは、上記2値化再生信号を30ビットごとに入力し、連結ビットAの除去と、必要に応じてCt-1[28]及びCt[0]の値の変換を行い、n=29ビットの符号語を逐次出力する。
なお、当該連結ビット除去部20aが行う具体的な処理の内容については後に改めて説明する。
【0079】
メモリ20bは、連結ビット除去部20aが一時刻前の符号語(Ct-1)を保持しておくために設けられる。
【0080】
符号語/データ語変換部20cは、連結ビット除去部20aから逐次入力されるn=29ビットの符号語を、変換テーブル11を用いて逐次m=16ビットのデータ語に変換し出力する。
【0081】
[4-2.復号化の具体的な手法]

図9は、連結ビットの除去を含む第1の実施の形態としての復号化手法について説明するための図である。
この場合の復号化では、先ずは符号語Ct-1と符号語Ctとの間に挿入された連結ビットAの値を取得する。そして、当該連結ビットAの値が「0」である場合は、単に連結ビットAを除去して、符号語Ct-1を出力する。
一方、連結ビットAの値が「1」であった場合には、Ct-1[28]及びCt[0]を「1」に変換した上で、連結ビットAを除去して符号語Ct-1を出力する。
【0082】
このような連結ビット除去処理によって逐次出力されるn=29ビットの符号語を、図8に示した符号語/データ語変換部20cにより逐次m=16ビットのデータ語に変換する。これにより、図1に示した記録データを復元した再生データを得ることができる。つまりこの結果、先に説明した実施の形態としての符号化処理により得られた記録符号列を適正に復号化できたことになる。
【0083】
[4-3.処理手順]

図10は、上記により説明した第1の実施の形態としての復号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこの図10は、図8に示した連結ビット除去部20aが行うべき具体的な処理の手順を示したものとなる。
【0084】
図10において、ステップS201では、N=0に設定する。この場合のNとしても、符号語の入力が初回入力であるか否かを識別するための識別子となり、N=0が初回入力である旨を表し、N=1が初回以降の入力である旨を表す。
【0085】
続くステップS202では、符号語&連結ビット(Ct&A)を入力し、次のステップS203では、N=1であるか否かを判別する。
ステップS203において、N=1ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS204にて符号語Ctをメモリ20bに保持(次時刻において符号語Ct-1となる)し、ステップS205にてAtを保持した上で、ステップS206にてN=1に設定して先のステップS202に戻る。
ここで、「At」は、符号語Ctの終端側に付された連結ビットの値を表し、ステップS205にて保持されたAtは、次時刻にてAt-1となる。
【0086】
一方ステップS203において、N=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS207においてAt-1の値を取得し、続くステップS208において、At-1=1であるか否かを判別する。
ステップS208において、At-1=1ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS209において符号語Ct-1を出力し、ステップS211に進む。
【0087】
一方ステップS208において、At-1=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS210においてCt-1[28]=1,Ct[0]=1とし、符号語Ct-1を出力する。
該ステップS210の処理を行った後は、ステップS211に進む。
【0088】
ステップS211では、符号語Ctを符号語Ct-1としてメモリ20bに保持する。
また続くステップS212では、連結ビットAtをAt-1として保持する。
【0089】
そして、その後のステップS213において、復号化を終了すべき状態となったか否かを判別する。具体的にこのステップS213では、例えば図示は省略した制御部からの復号化停止指示など、予め復号化処理を終了すべきとして定められた所定の条件の成立有無を判別することになる。
ステップS213において、未だ復号化を終了すべきではないとの否定結果が得られた場合は、先のステップS202に戻る。
一方、復号化を終了すべきであるとの肯定結果が得られた場合はこの図に示す一連の処理は終了となる。
【0090】
<5.シミュレーション結果>

図11は、第1の実施の形態の符号化を行った場合の10,000,000符号語に対するoccurrenceのヒストグラムを示している。
なおこの図では、第1の実施の形態としての符号化(d=2,k=12,m=16,n=29,a=1)を行った場合の結果を▲プロットにより示し、先に例示した(2,7)RLLの符号化を行った場合の結果を■プロットにより示している。なおこの図では符号2Byteごとのoccurrence(ここでは単にシンボル「1」の数という意)のヒストグラムを示している。
【0091】
この図11の結果により、第1の実施の形態としての符号化によっては、(2,7)RLLの場合と比較してoccurrenceが4以上の符号を減らしてoccurrenceが2や3の符号に変換できていることがわかる。
この結果からも、第1の実施の形態としての符号化によれば、シンボル「1」を疎(sparse)とする符号化を実現できることが理解できる。
【0092】
また、図12は、第1の実施の形態としての符号化を行った場合のoccurrence(ここでも単にシンボル「1」の数という意)の等高線マップを示し、図13は比較として、(2,7)RLLの符号化を行った場合のoccurrenceの等高線マップを示している。
これら図12,図13では、occurrenceを左から右に36個トレースして、次の行に同様に次々と36行トレースしたマップを示している。色の濃さがoccurrenceを表し、濃度が低いほどoccurrenceは小であることを表す。
またこれら図12,図13においてもoccurrenceは2Byte符号列内の「1」の数を指す。
【0093】
これら図12と図13との比較によっても、本実施の形態の方がよりsparseになっていることが分かる。
このようにsparseな符号化を実現できることで、先の図20の説明からも理解されるように、バルク型の光記録媒体に対しマークポジション記録による多層記録を行う場合において、層間クロストークを効果的に抑制することができる。
【0094】
−第2の実施の形態−
<6.第2の実施の形態の符号化>

上記による第1の実施の形態では、d=2とする走行長制限に対応した符号化・復号化の手法を例示したが、第2の実施の形態では、d=3とする走行長制限に対応した符号化・復号化の手法を提案する。
【0095】
ここで、実施の形態で前提としているようにマークをポジション記録する手法が採られる場合、先の第1の実施の形態のようにd=2とした場合には、高記録密度化を図ることが困難となる虞がある。つまり、d=2としたときにはその分マーク間の最小距離が狭まることになるので、マーク同士が融合して適正な記録が不能となる可能性が高まる。
特に、バルク記録方式として空孔マークを形成するボイド記録方式が採用される場合においては、最短間隔のボイド同士が融合してしまう可能性が高いことが判明した。
【0096】
またこの一方で、dの値を大としてマーク間の最短距離を長くするとした場合には、ウインドウマージンが狭まり、適正にクロックを再生できなくなる虞がある。
【0097】
これらの点を考慮し、第2の実施の形態ではd=3に設定する例を挙げる。
【0098】
この際、d=3であるので、連結ビットについてはそのビット数(a)を1ではなく2に設定する。
また、以下では一例として、m=16、n=34とする場合を挙げる。
以上より本例で設定した条件は、m=16,n=34,d=3,a=2となる。
【0099】
上記の前提を踏まえて、以下、a=2の連結ビットを用いた符号化として、d=3の制限と所定のk制限とよる走行長制限を満たすための具体的な手法について考察してみる。
先ず、1時刻前の符号語Ct-1における終端ビットの値Ct-1[33}=「1」で且つ、現時刻の符号語Ctにおける始端ビットの値Ct[0]=「1」のときは、少なくともd=3の制限が満たされるべく、Ct-1[33]とCt[0]の双方の値を「0」に変更した上で、「1」を含む連結ビットを挿入する。例えば本例では「10」を挿入することとする。
【0100】
この場合において、所定のk制限を満たすことを考えると、n=34の符号語が満たすべき条件として、以下の条件が導出される。

l'≦k−2
r'≦k−1

ただし、
l':「1」で始まる符号語の最初の「1」の後の「0」の連続数
r':「1」で終わる符号語の最後の「1」の前の「0」の連続数

なお確認のために述べておくと、この場合も各符号語(本例ではn=34)については、その符号語自身が「所定のd、k走行長制限を満たす」という条件が課されることは言うまでもない。
【0101】
また、Ct-1[33]=「1」且つCt[0]=「1」となる以外の場合には、2ビットの連結ビットの挿入とk制限とを考慮して、符号語Ct-1の終端部の「0」の連続数と符号語Ctの始端部の「0」の連続数との和(以下、単に和zsとも表記)が、k−2以下であるか否かに着目する。
具体的に、和zsがk−2を超えている場合には、k制限が満たされるべく、連結ビットとしては「1」を含むものを挿入する。前述のように本例ではCt-1[33]=「1」且つCt[0]=「1」の場合に既に連結ビット「10」を割り当てているので、ここでは「01」を挿入する(なお「11」はd制限に違反するので使用できない)。
一方、符号語Ct-1の終端部の「0」の連続数と符号語Ctの始端部の「0」の連続数との和がk−2以下であれば、連結ビット「00」を挿入する。
【0102】
但し、このとき問題となるのは、符号語Ct-1の終端部の「0」の連続数と符号語Ctの始端部の「0」の連続数との和がk−2を超えるケース(つまり連結ビット「01」を挿入するケース)において、Ct-1[33]又はCt[0]のいずれか一方が「1」であるときには、d制限が満たされなくなる可能性があるという点である。
例えば、和zs>k−2となるケースとしては、符号語Ct-1の終端部の「0」の連続数がk−1であり、符号語Ctの始端部の「0」の連続数が0(つまりCt[0]=「1」)というケースも生じ得る。例えばこの場合において、上記のように連結ビット「01」を挿入すると、当該連結ビット「01」の次のビットが「1」となって、d制限に違反してしまうこととなる。
【0103】
このような和zs>k−2の場合におけるd制限違反の問題は、上述のように連結ビット「01」を挿入する場合においては、「符号語Ct-1の終端部の0の連続数が2以上で且つ符号語Ctの始端部の0の連続数が3以上」であるときに、発生するものである。
【0104】
そこで、和zs>k−2となるケースにおいてこのような「符号語Ct-1の終端部の0の連続数が2以上で且つ符号語Ctの始端部の0の連続数が3以上」の制約が満たされて、和zs>k−2の場合におけるd制限違反が防止されるべく、本例では符号語について以下のような制約も課すものとしている。

l ≦ k−3
r ≦ k−4

ただし、
l:符号語の始端側の「0」の連続数
r:符号語の終端側の「0」の連続数
【0105】
符号語についてこのような制約を課すことによって、和zsがk−2を超えるケースとして、必ず、「符号語Ct-1の終端部の0の連続数が2以上で且つ符号語Ctの始端部の0の連続数が3以上」という制約が満たされるようにできる。
【0106】
以上のようにして、d=3及びa=2の条件で且つ所定のk制限を満たす符号化を実現するにあたって、符号語に課されるべき条件は、

l ≦ k−3
r ≦ k−4
l'≦ k−2
r'≦ k−1

と導出される。
【0107】
ここで、符号化の効率を考慮すると、kの値は小さいほど望ましい。
前述した本例の条件としてのm=16,n=34,a=2、すなわちm/(n+a)=16/36符号が構築できる最小のkは、13であることがわかった。このため本例では、k=13と設定する。
【0108】
このとき、上記によるl、r、l'、r'の制約を満たすn=34の符号語の候補は、69,934個である。
第2の実施の形態では、これら69,934個の符号語のうちの2m=216=65,536個を、符号語中での「1」の数が少ない順に並べて変換テーブル11を作製するものとした。
【0109】
図14,図15は、第2の実施の形態における変換テーブル11のデータ構造を示している。
なお、これら図14,図15においても先の図3や図4と同様に、図中Dataの欄はデータ語(HEX表示)を表し、Codeの欄は符号語(バイナリ表示)を表している。またOccの欄はoccurrenceを表す。
【0110】
これら図14,図15を参照して分かるように、第2の実施の形態の変換テーブル11では、m=34ビットの符号語に対し、上述のl、r、l'、r'の制約(及びd、k制限)を満たすn=34の符号語のうちからoccurrenceが小である方から順に抽出したものを対応づけるものとしている。
【0111】
図16は、第2の実施の形態としての符号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこの図16は、先の図5に示した符号語端変換・連結ビット挿入部10bが行うべき具体的な処理の手順を示したものとなる。
また図16においては、先の図7に示した第1の実施の形態の場合の処理と同様となる処理については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0112】
先の図7と比較して分かるように、この場合もステップS101〜S105の処理については第1の実施の形態の場合と同様の処理を行う。
第2の実施の形態の場合、ステップS103においてN=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS301に進んでCt-1[33]とCt[0]の値を取得する。
【0113】
そして、Ct-1[33]とCt[0]の値を取得した後は、ステップS302において、Ct-1[33]=1且つCt[0]=1であるか否かを判別する。
このステップS302において、Ct-1[33]=1且つCt[0]=1であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS304に進み、Ct-1[33]=0、Ct[0]=0に変更し、符号語Ct-1に連結ビットA=10を付して出力する。当該ステップS304の実行後はステップS110に進む。
【0114】
一方、ステップS302においてCt-1[33]=1且つCt[0]=1ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS303に進み、Ct-1の終端部とCtの終端部の0連続数の和zsがk−2以下であるか否かを判別する。
ステップS303において、和zsがk−2以下であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS305に進んでCt-1に連結ビットA=00を付して出力した後、ステップS110に進む。
【0115】
一方、ステップS303において和zsがk−2以下ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS306に進んでCt-1に連結ビットA=01を付して出力した後、ステップS110に進む。
【0116】
以上で説明した第2の実施の形態としての変換テーブル11の内容及び符号化処理により、m/(n+a)=16/36符号を前提とした場合において、d=3及びk=13による走行長制限を満たし且つシンボル「1」がより疎となる符号化を実現することができる。
【0117】
<7.第2の実施の形態の復号化>

図17は、上記により説明した第2の実施の形態としての符号化に対応して行われるべき第2の実施の形態としての復号化処理を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこの図17は、図8に示した連結ビット除去部20aが行うべき具体的な処理の手順を示している。
また図17では、先の図10に示した第1の実施の形態の場合の処理と同様となる処理については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0118】
図17において、この場合もステップS201〜S207の処理については図10に示した第1の実施の形態の場合と同様の処理を行う。
第2の実施の形態の場合、ステップS207において連結ビットAt-1の値を取得した後は、ステップS401に進む。
【0119】
ステップS401においては、At-1=10であるか否かを判別する。
このステップS401において、At-1=10ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS403に進んで符号語Ct-1を出力し、ステップS211に進む。
【0120】
一方ステップS401において、At-1=10であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS402においてCt-1[33]=1,Ct[0]=1とし、符号語Ct-1を出力する。
該ステップS402の処理を行った後は、ステップS211に進む。
【0121】
このような第2の実施の形態としての復号化処理により、前述の第2の実施の形態の符号化処理で得られた記録符号列を適正に復号化することができる。
【0122】
<8.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、変換テーブルには、d、kによる走行長制限から導出される選定条件を満たした符号語集合のうちでoccurrenceが小である方から順に選出した2m個の符号語を格納するものとしたが、変換テーブルに格納される符号語としては、必ずしもoccurrenceが少ない方から順に選出したものとされる必要性はなく、occurrenceが大であるものが1又は数個程度含まれてもよい。
ここで本発明の主旨としては、全体としてシンボル「1」が疎となるような符号化が実現されればよいものであって、この点より変換テーブルには、シンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語をデータ語に対応づけて格納するものとすればよい。
【0123】
またこれまでの説明では、走行長制限はd=2かつk=12、又はd=3かつk=13とする場合を例示したが、d、kの値はこれらに限定されるべきでなく、もちろん他のd、kによる走行長制限とする場合にも本発明は好適に適用できる。
【0124】
また、これまでの説明では、連結ビットを挿入する符号化手法を前提としたので、変換テーブルには、「1」始まりの符号語と「1」終端の符号語の格納を許容したが、連結ビットを使用せずにd≧2の最小走行長制限を満たすとした場合は、少なくともこれら「1」始まりと「1」終端の符号語を除いたものを格納するものとすればよい。
ただし、連結ビットを用いた方が符号化率的に有利となることは言うまでもない。
【0125】
また、これまでの説明では、走行長制限を考慮し、変換テーブル11には走行長制限を満たすように選出した符号語集合を格納するものとしたが、例えば記録密度が比較的低く走行長制限を設ける必要性のない場合などには、2n個の全符号語から単純にoccurrenceが小であるものを選出して変換テーブルに格納するようにもできる。
【0126】
また、符号化率については、先に例示したものに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜最適とされる符号化率を設定すればよい。
本発明において、m,nの関係としては、上述のように走行長制限を考慮しない場合も考慮すると、少なくともn>mが満たされればよい。
【0127】
また、これまでの説明では、本発明の符号化装置(符号化方法)や記録装置(記録方法)が記録層に対するマーク記録と記録マークの再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、もちろん記録層に対するマーク記録のみを行う記録装置(記録専用装置)に対しても好適に適用できる。
【0128】
またこれまでの説明では、本発明の復号装置(復号方法)がマーク記録と記録マークの再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、もちろん記録されたマークの再生のみを行う再生装置(再生専用装置)に対しても好適に適用できる。
確認のため述べておくと、再生装置とした場合、復号化で用いるテーブルとしては、符号化で用いた変換テーブル11そのものではなく、変換テーブル11と同じデータ語と符号語との対応づけがされたテーブルを用いることになる。
【符号の説明】
【0129】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、10 符号化部、10a データ語/符号語変換部、10b 符号語端変換・連結ビット付与部、10c,20b メモリ、11 変換テーブル、12 記録制御部、13 光学ピックアップ、14 アンプ、15 AGC回路、16 PLL回路、17 A/D変換器、18 イコライザ、19 ビタビ復号器、20 復号化部、20a 連結ビット除去部、20c 符号語/データ語変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を、2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルと、
入力されたmビットのデータ語を上記変換テーブルに基づいて符号化する符号化部と
を備える符号化装置。
【請求項2】
上記変換テーブルにおいて、
上記2m個の符号語は、2n個の符号語から選出した最短0連続長d(d≠0)及び最長0連続長k(k>d)の走行長制限を満たす符号語集合のうちから選出されたものである
請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
上記符号化部は、
上記変換テーブルにより得た時刻的に連続する2つの符号語の間に、上記走行長制限を満たすようにa個(aは1以上の整数)の連結ビットを挿入する
請求項2に記載の符号化装置。
【請求項4】
上記変換テーブルには、
n個の上記nビットの符号語のうちの上記走行長制限を満たす符号語集合のうちで、シンボル「1」で始まり次のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下であるもの又は(k/2)−1個以下のシンボル「0」の連続で始まるもので、且つk/2個以下のシンボル「0」の連続で終端するもの又はシンボル「1」で終端しその前のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下のものであるという条件を満たす符号語が格納されており、
且つa=1であると共に、
上記符号化部は、
一時刻前の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の終端ビットの値と、現時刻の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の始端ビットの値の双方が「1」であるか否かを判別し、上記終端ビットと上記始端ビットの値の双方が「1」ではないとした場合には、上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「0」を挿入し、上記終端ビットと上記始端ビットの値の双方が「1」であるとした場合は、上記終端ビットと上記始端ビットの値を「0」に変更すると共に、該終端ビットが「0」に変更された上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「1」を挿入する
請求項3に記載の符号化装置。
【請求項5】
m=16,n=29,d=2,k=12,a=1である請求項4に記載の符号化装置。
【請求項6】
d=3且つa=2であり、
l : 符号語の始端側の「0」の連続数
r : 符号語の終端側の「0」の連続数
l':「1」で始まる符号語の最初の「1」の後の「0」の連続数
r':「1」で終わる符号語の最後の「1」の前の「0」の連続数
としたとき、
上記変換テーブルには、
n個の上記nビットの符号語のうちの上記走行長制限を満たす符号語集合のうちで、
l ≦ k−3
r ≦ k−4
l'≦ k−2
r'≦ k−1
を満たす符号語が格納されており、
上記符号化部は、
一時刻前の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の終端ビットの値と、現時刻の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の始端ビットの値の双方が「1」であるか否かを判別し、上記終端ビットと上記始端ビットの値の双方が「1」であるとした場合は、上記終端ビットと上記始端ビットの値を「0」に変更し、該終端ビットが「0」に変更された上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し、且つ上記連結ビットとして「10」を挿入すると共に、
上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語の終端部の「0」の連続数と上記現時刻の入力データ語を変換して得た符号語の始端部の「0」の連続数との和がk−2以下であるか否かを判別し、上記和がk−2以下であるとした場合は上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「00」を挿入し、上記和がk−2以下でないとした場合には上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「01」を挿入する
請求項3に記載の符号化装置。
【請求項7】
m=16,n=34,d=3,k=13,a=2である請求項6に記載の符号化装置。
【請求項8】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、入力された上記mビットのデータ語を、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルに基づいて符号化する
符号化方法。
【請求項9】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を、2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルと、
入力されたmビットのデータ語を上記変換テーブルに基づいて符号化する符号化部と、
上記符号化部が出力した上記符号語に基づき光記録媒体に対する記録を行う記録部と
を備える記録装置。
【請求項10】
上記記録部は、
上記符号語のシンボル「1」をマーク、シンボル「0」をスペースとして上記光記録媒体に対する記録を行う
請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
上記光記録媒体は、深さ方向における複数位置に選択的にマーク記録が行われるバルク層を有するバルク型の光記録媒体であり、
上記記録部は、
上記バルク層に対して空包によるマークを記録する
請求項10に記載の記録装置
【請求項12】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、入力された上記mビットのデータ語を、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルに基づいて符号化する符号化手順と、
上記符号化手順により出力した上記符号語に基づき光記録媒体に対する記録を行う記録手順と
を有する記録方法。
【請求項13】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、入力された上記mビットのデータ語を、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルに基づいて変換する符号化により得られた符号列について復号化を行う復号装置であって、
上記変換テーブルそのもの又は上記変換テーブルと同じデータ語と符号語との対応づけがされたテーブルを復号化テーブルとして備えると共に、
入力された符号列に対応するデータを、上記復号化テーブルに基づいて出力する復号化部を備える
復号装置。
【請求項14】
上記符号化は、
上記変換テーブルにより得た時刻的に連続する2つのnビットの符号語の間に、最短0連続長d(d≠0)及び最長0連続長k(k>d)の走行長制限を満たすようにa個(aは1以上の整数)の連結ビットを挿入して行われ、
上記復号化部は、
上記連結ビットを取り除いて得たnビットの符号語を上記復号化テーブルによりデータ語に変換する
請求項13に記載の復号装置。
【請求項15】
上記変換テーブルには、
n個の上記nビットの符号語のうちの上記走行長制限を満たす符号語集合のうちで、シンボル「1」で始まり次のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下であるもの又は(k/2)−1個以下のシンボル「0」の連続で始まるもので、且つk/2個以下のシンボル「0」の連続で終端するもの又はシンボル「1」で終端しその前のシンボル「1」までの間のシンボル「0」がk−1個以下のものであるという条件を満たす符号語が格納されており、
且つa=1であると共に、
上記符号化は、
一時刻前の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の終端ビットの値と、現時刻の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の始端ビットの値の双方が「1」であるという条件を満たす場合は、上記終端ビットと上記始端ビットの値を「0」に変更すると共に、該終端ビットが「0」に変更された上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「1」を挿入し、上記条件を満たさない場合は、上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「0」を挿入して行われるものとされ、
上記復号化部は、
上記連結ビットの値が「1」であるか否かを判別し、上記連結ビットの値が「1」ではないとした場合は上記連結ビットの時刻的に前のnビットの符号語を上記復号化テーブルでデータ語に変換して出力し、上記連結ビットの値が「1」であるとした場合は上記連結ビットの時刻的に前のnビットの符号語の終端ビットの値と上記連結ビットの時刻的に後となるnビットの符号語の始端ビットの値とを共に「0」に変換し、上記終端ビットを「0」に変換した上記nビットの符号語を上記復号化テーブルによりデータ語に変換して出力する
請求項14に記載の復号装置。
【請求項16】
d=3且つa=2であり、
l : 符号語の始端側の「0」の連続数
r : 符号語の終端側の「0」の連続数
l':「1」で始まる符号語の最初の「1」の後の「0」の連続数
r':「1」で終わる符号語の最後の「1」の前の「0」の連続数
としたとき、
上記変換テーブルには、
n個の上記nビットの符号語のうちの上記走行長制限を満たす符号語集合のうちで、
l ≦ k−3
r ≦ k−4
l'≦ k−2
r'≦ k−1
を満たす符号語が格納されており、
上記符号化は、
一時刻前の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の終端ビットの値と、現時刻の入力データ語を上記変換テーブルで変換して得た符号語の始端ビットの値の双方が「1」であるという条件を満たす場合は、上記終端ビットと上記始端ビットの値を「0」に変更し、該終端ビットが「0」に変更された上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し、且つ上記連結ビットとして「10」を挿入すると共に、
上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語の終端部の「0」の連続数と上記現時刻の入力データ語を変換して得た符号語の始端部の「0」の連続数との和がk−2以下であるという条件を満たす場合は、上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「00」を挿入し、上記和がk−2以下であるとの条件を満たさない場合には上記一時刻前のデータ語を変換して得た符号語を出力し且つ上記連結ビットとして「01」を挿入して行われるものとされ、
上記復号化部は、
上記連結ビットの値が「10」であるか否かを判別し、上記連結ビットの値が「10」であるとした場合は上記連結ビットの時刻的に前のnビットの符号語の終端ビットの値と上記連結ビットの時刻的に後となるnビットの符号語の始端ビットの値とを共に「0」に変換し、上記終端ビットを「0」に変換した上記nビットの符号語を上記復号化テーブルによりデータ語に変換して出力し、上記連結ビットの値が「10」ではないとした場合は上記連結ビットの時刻的に前のnビットの符号語を上記復号化テーブルでデータ語に変換して出力する
請求項14に記載の復号装置。
【請求項17】
mビットのデータ語とnビットの符号語(n,mは共に整数で且つn>m)とについて、入力された上記mビットのデータ語を、2n個の上記nビットの符号語のうちからシンボル「1」の数が少ない傾向となるように選出した2m個の符号語を2m個の上記mビットのデータ語と対応づけた変換テーブルに基づいて変換する符号化により得られた符号列について復号化を行う復号装置であって、
入力された符号列に対応するデータを、上記変換テーブルそのもの又は上記変換テーブルと同じデータ語と符号語との対応づけがされたテーブルの何れかである復号化テーブルに基づいて出力する
復号方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−253605(P2011−253605A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274549(P2010−274549)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】