説明

第一スズ口腔ケア組成物

開示されているのは、口腔用組成物であって、第一スズイオン源と、多価カチオン源と、ミネラル界面活性剤と、を含み、抗菌効果、口臭抑制、歯垢成長及び代謝の抑制、歯肉炎の低減、歯周病への進行の低減、知覚過敏の低減、並びに歯冠及び歯根のう触の低減を含む、フッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩から誘導される増強された治療効果を提供する。上記の効果は、従来の第一スズ含有組成物と比較して、1)歯の着色汚れレベルの低下、2)収れん性が低減されそれにより組成物の審美的特性を改良、3)歯石形成の低減、及び4)安定性、生物学的利用能の増強、またそれ故に、第一スズの有効性の増強を包含する重大な改良と共に提供される。ミネラル界面活性剤は、歯のようなミネラル表面に対して直接性であり、第一スズ(Sn+2)、亜鉛(Zn+2)、銅(Cu+2)、アルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+2、Fe+3)、ストロンチウム(Sr+2)、カルシウム(Ca+2)、バリウム(Ba+2)、マグネシウム(Mg+2)、及びマンガン(Mn+2)を包含する多価カチオンに対するキレート化活性を有する剤である。好ましいミネラル界面活性剤としては、ホスフェート、ホスホネート、又はカルボキシ基を含有するポリマー若しくはコポリマーが挙げられる。組成物は、フッ化物イオン源も含んでもよく、単一相又は二相組成物として処方されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化第一スズのような、第一スズ(stannous)塩を含有する改良された口腔用組成物に関する。これらの改良された組成物は、抗菌効果、口臭抑制、歯垢成長及び代謝の抑制、歯肉炎低減、歯周病ヘの進行の低減、知覚過敏の低減、並びに歯冠及び歯根のう触及び侵触の低減を包含する、フッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩から供給される一連の口腔内利益を提供する。上記の利益は、従来の第一スズ含有組成物と比較して、1)歯の着色汚れレベルの低下、2)収れん性が低減されそれにより組成物の審美的特性を改良、3)歯石形成の低減、及び4)安定性、生物学的利用能の増強、またそれ故に、抗菌、抗歯垢及び抗歯肉炎剤としての第一スズの有効性の増強を包含する大きな改良と共に提供される。改良された第一スズ含有組成物は、第一スズと、第2の多価カチオンと、好ましくは高分子、特に縮合ポリホスフェート、ポリホスホネート又はポリカルボキシレートのようなアニオン性ポリマーを包含するミネラル界面活性及びキレート化剤と、の組み合わされた効果を通じてこれらの利益を提供する。本発明は、フッ化第一スズのような、第一スズ塩を含有する口腔用組成物の着色汚れを低減し、審美的望ましさを改良しながら、治療的有効性を増強する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化第一スズは、口腔用製品に処方されたときのその有効性が一般的に知られている。フッ化第一スズは、虫歯の抑制における治療的有効性のために練り歯磨きに組み込まれた第一のフッ化物源であった。フッ化第一スズジェル、リンス、及び歯磨剤は、以後、虫歯、知覚過敏、歯垢及び歯肉炎の低減のための臨床的有効性を提供することが明らかにされてきた。これらの臨床的効果に加えて、フッ化第一スズ含有処方は、化学的及び抗菌作用を通じて口臭改良の利益の提供にも役立つ場合がある。フッ化第一スズ処方は、典型的に、酸化又は沈殿に失われる第一スズを考慮して、保管中に生物学的に利用可能な(すなわち、可溶性及び反応性の)レベルの第一スズを維持するように設計された安定化システムを包含する。したがって、フッ化第一スズ処方は、追加の第一スズ含有成分を用いて処方されてきており、これが臨床的有効性を維持するための第一スズのリザーバとして高濃度の第一スズを提供する。残念ながら、フッ化第一スズ組成物は非常に有効であることが既知であるが、十分なフッ化第一スズの安定性を提供する処方の開発及び第一スズの副作用における複雑さによって、商業的利用の成功が困難となっている。増大された又は改良された有効性を提供する処方は、一般に、副作用の増大を促進する。これは、臨床的及び商業的利用を制限する。
【0003】
通常のフッ化第一スズの使用で最も顕著な副作用の1つは、歯の黄〜茶色の着色汚れである。この着色汚れは、菌膜、歯垢、及び食事由来構成要素と、有効なフッ化第一スズ処方での処置中に歯表面に付着した利用可能な第一スズとの反応から派生する。
【0004】
有効なフッ化第一スズ処方の使用中に、日常的に直面する第2の副作用は、容認できない処方の収れん性である。収れん剤は、その低い細胞浸透性が細胞表面及び間質空間への作用を制限する、局所適用されたタンパク質沈殿剤である。強力な収れん剤は、組織の収縮及びしわを誘発することができ、粘液分泌物が沈殿又は減少しうる。口腔製品内で、これらの化学的作用は、舌、歯肉組織又は頬側上皮のような口腔内で不快な「乾燥」をもたらす。生物学的利用能のための十分な第一スズを含有する第一スズ処方は、患者及び消費者によって慣例的に収れん剤と評され、この特性は望ましくない。収れん性は、製品の使用後に最も顕著である。
【0005】
フッ化第一スズ歯磨剤組成物の通常使用の第3の副作用は、この組成物による歯石減少の有効性低下である。抗菌、抗歯肉炎及びその他の期待される利益に対して有効であることが証明されたフッ化第一スズ歯磨剤が、望ましくない歯肉縁上歯石蓄積の予防に対して、必ずしも再現可能な臨床的作用を示すとは限らないことが立証されてきた。歯肉縁上歯石の形成の抑制は、他の臨床的利益と共に、専門家、患者及び消費者から望まれている。口腔用組成物の多機能活性は、衛生を簡素化し、治療的口腔健康を維持するための全体論アプローチを提供することができる。
【0006】
有効で消費者が容認できるフッ化第一スズ口腔用組成物を開発するための過去の試みは、これらの累積的不利点を解決しようと試みてきたが、完全に成功したものはない。米国特許第5,004,597号(マジェッティ(Majeti)らに発行)は、フッ化第一スズ及びグルコン酸塩を含有する口腔用組成物を開示している。グルコン酸第一スズの包含の結果、処方有効性及び安定性が改良される。この処方製品は、有効であるが、望ましくないレベルの歯の着色汚れを生じる。更に、この処方は、主に第一スズの収れん性に由来する望ましくない審美性を有した。同様に、米国特許第5,578,293号(プレンシペ(Prencipe)らに発行)は、第一スズイオン濃度を安定化するための有機酸化合物の使用を開示している。フッ化第一スズ及び有機酸としてのシトレートと合わせて、この処方は可溶性ピロリン酸塩も包含する。米国特許第4,323,551号(パラン(Parran)ら)は、抗結石効果を提供するためのピロリン酸塩の使用を開示している。臨床研究により、自然の及び抗菌剤に誘発される歯の着色汚れの発生の防止における、ピロホスフェートのようなアニオン性ミネラル界面活性阻害物質の可能性が実証されてきた。(グロスマン(Grossman)、ボルマー(Bollmer)、スツルゼンバーガー(Sturzenberger)及びヴィック(Vick)、「臨床歯科医学誌(Journal of Clinical Dentistry)」、6(4)、185〜187、1995)。プレンシペ(Prencipe)らの特許では、すべての実施例が、第一スズイオンの安定化及び沈殿の防止のために十分な量のクエン酸及び/又はクエン酸ナトリウム二水和物のいずれかを包含している。これらのレベルはまた、第一スズのピロリン酸塩への結合を直接阻害する。第一スズがピロリン酸塩に結合すると、フッ化第一スズの抗菌活性が低下することが、研究で裏付けられている。第一スズイオンを沈殿及びピロホスフェート結合に対して有効に安定化するために必要なシトレートのレベルは、第一スズ組成物の審美性を大幅に低下させもする。組成物は、塩辛く、酸っぱいと考えられ、第一スズのシトレートへの結合は更に収れん剤として作用し、これが全体的な味の受容性を低減する。米国特許第5,213,790号(ルカコヴィック(Lukacovic)らに発行)も、第一スズ組成物におけるシトレートイオン源の使用を開示している。米国特許第5,780,015号(フィッシャー(Fisher)らに発行)は、収れん性低下を助けるために硬化ヒマシ油が使用される、カリウム塩及び第一スズ塩を含有する二相歯磨剤の使用を開示している。第一スズ塩は、プレンシペ(Prencipe)らに記述されたように、有機酸化合物の使用により安定化される。効果的な第一スズ組成物を製造するための別の試みは、米国特許第5,716,600号(ザーラドニック(Zahradnik)らに発行)に記載されている。この特許は、時間の経過に伴うフッ化第一スズの分解を防止するのに役立つ低水分処方を開示する。処方の着色汚れを低減するための試みはなされない。
【0007】
米国特許第5,017,363号(スホネン(Suhonen)に発行)は、第一スズイオンを有効に安定化する量のアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸又はマレイン酸との第一スズイオンキレート化コポリマーを開示している。スホネン(Suhonen)は、組成物が、シリカ、可溶性ピロホスフェートのような可溶性ホスフェート(例えば、ピロリン酸四ナトリウム及びピロリン酸四カリウム)、及びアルデヒド基含有化合物、を実質的に含まず、これは第一スズイオンキレート化ポリマーの安定化機能がこれらの成分の存在下では有効でないためであることを開示している。
【0008】
米国特許第5,338,537号(ホワイト,Jr.(White, Jr.)らに発行)は、低分子量ジホスホン酸の使用を開示しており、これは組成物による着色汚れの傾向の低減を助けるために、第一スズの結合剤として使用される。着色汚れ可能性の低減に有効であると同時に、実験室研究で、低分子量ジホスホン酸と錯化された第一スズを含有する処方の抗菌活性が非常に低いことが実証された。類似の結果は、上記のように、可溶性ピロリン酸塩を、強力なシトレートキレート化の不在下で用いた処方で得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,004,597号
【特許文献2】米国特許第5,578,293号
【特許文献3】米国特許第4,323,551号
【特許文献4】米国特許第5,213,790号
【特許文献5】米国特許第5,780,015号
【特許文献6】米国特許第5,716,600号
【特許文献7】米国特許第5,017,363号
【特許文献8】米国特許第5,338,537号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「臨床歯科医学誌(Journal of Clinical Dentistry)」、6(4)、185〜187、1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述に基づき、同じ化学的及び生化学的結合部位が、抗菌/抗歯垢の活性及び安定化の両方のため並びにフッ化第一スズの歯の着色汚れ可能性の安定化及び低減のために必要とされる場合があることが明らかである。したがって、安定化及び/又は歯の着色汚れの低減を達成するため、抗菌/抗歯垢活性が損なわれる場合がある。これは、最適なフッ化第一スズ口腔用組成物の開発を困難にし、現在の市場でフッ化第一スズ組成物の数が限られることを説明する。第一スズを含有する口腔用組成物の使用への消費者の受容性及び受諾を改良するため、高い有効性を有するが着色汚れ及び収れん性のようなその他のマイナスの審美性が低レベルである第一スズ組成物が必要である。更に、これらの処方は歯石形成の低減及び抑制に対して同時の有効性を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、口腔用組成物であって、第一スズイオン源と、多価カチオン源と、ミネラル界面活性剤とを含み、ミネラル界面活性剤が、第一スズを結合して、前述の組成物が、歯の着色汚れ及び収れん性の極小の副作用と共に、増強された治療有効性を提供する、口腔用組成物に関する。組成物は、歯肉縁上歯石の低減及び抑制を同時に提供する。ミネラル界面活性剤は、歯のようなミネラル表面に対して直接性であり、更に第一スズ(Sn+2)、亜鉛(Zn+2)、銅(Cu+2)、アルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+2、Fe+3)、ストロンチウム(Sr+2)、カルシウム(Ca+2)、バリウム(Ba+2)、マグネシウム(Mg+2)、及びマンガン(Mn+2)のような多価カチオンへのキレート化活性を有する剤である。組成物は、フッ化物イオン源もまた含んでよい。本発明の口腔ケア組成物は、単一相又は二相組成物として処方されてもよい。本発明は、歯の着色汚れ又は収れん性の極小の副作用と共に、並びに臨床的に有効な量のフッ化第一第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩をミネラル界面活性剤、好ましくはホスフェート−、ホスホネート−又はカルボキシ−含有ポリマー及び多価カチオン源と組み合わせて含む安定な歯磨剤組成物を対象者に投与することによる有効な歯石抑制とを有する第一スズ含有組成物を、有効に送達する方法も提供する。
【0013】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、次の「発明を実施するための形態」から当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書は、本発明を詳しく指摘し明確に請求する特許請求の範囲でまとめられるが、本発明は、以下の説明から更に良く理解されるものと考えられる。
【0015】
本明細書で用いられるすべての百分率は、特に指定されない限り、歯磨剤組成物の重量による。本明細書で用いられるすべての比率は、特に指定されない限り、全組成物のモル比である。すべての測定は、特に指定しない限り25℃で行われる。
【0016】
本明細書では、「含む」とは、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の成分を加えることができることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「包含する」及びその変形は非限定的であることを意図し、挙げられた品目の詳細説明は、本発明の材料、組成物、装置及び方法でも有用であるその他の同様の品目を除外しない。
【0018】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」及びその変形は、特定の状況下において特定の効果をもたらす本発明の実施形態を指す。しかし、同一又は異なる状況下において、その他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図していない。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きパウダー、局所口腔用ゲル、口内洗浄剤、義歯製品、マウススプレー、薬用キャンディー(lozenge)、経口錠剤、又はチューインガムの形態であってもよい。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」は、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、又は液体処方を意味する。歯磨剤組成物は、ペーストを囲むゲルを有する、深くまで達する縞状、表面的な縞状、多層状、又はこれらのいずれかの組み合わせのような、どのような所望の形態であってもよい。
【0021】
口腔用組成物は、単一相口腔用組成物であってもよく、又はそれぞれが別々の相にある又は2つ以上の口腔用組成物の組み合わせであってもよい。本明細書で「単一又は別々の相」は、各組成物のすべての構成成分が、液体、固体及びガス状構成成分を含有してもよい1つの混合物に共に混合されることを意味する。したがって、各相は、均質又は不均質であってもよい。「口腔用組成物」とは、通常の投与過程では、特定の治療剤の全身投与の目的で意図的に嚥下されず、むしろ、口腔の活性を目的として実質的に全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される製品である。用語「全組成物」は、本明細書で使用するとき、それが単一相を含有するか多相を含有するかにかかわらず、口腔に供給される全組成物を意味する。
【0022】
二相口腔用組成物が望ましい場合、各口腔用組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画に収容され、並行して分与されるであろう。本明細書で使用するとき、用語「ディスペンサー」は、練り歯磨きを投与するのに好適なあらゆるポンプ、チューブ、又は容器を意味する。
【0023】
用語「口腔に許容可能なキャリア」は、本明細書で使用するとき、本発明の組成物に使用するための安全かつ有効な物質を包含する。このような材料は、フッ化物イオン源、抗結石剤又は抗歯石剤、緩衝剤、シリカなどの研磨剤、過酸化物源のような漂白剤、アルカリ金属重炭酸塩、増粘材料、湿潤剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、キシリトール、着色剤、及びこれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない、口腔ケア組成物における従来の添加剤である。
【0024】
本明細書において、用語「歯石」及び「結石」は、同じ意味で用いられ、石灰化した歯垢バイオフィルムを指す。
【0025】
用語「第一スズ」は、本明細書で使用するとき、歯磨剤又はその他の口腔製品内にあり、フッ化第一スズを包含する第一スズ塩のような供給源によって供給される第一スズを意味すると定義される。また、安定化目的で添加される、フッ化第一スズ以外の第一スズ塩によって提供される第一スズイオンを指してもよい。
【0026】
本明細書に有用な活性物質及び他の成分は、美容的及び/若しくは治療的な利益、又はそれらが要求される作用様式若しくは機能によって、本明細書中で分類又は記述されてもよい。ただし、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては美容的及び/若しくは治療的な1つを超える利益をもたらすこと、又は1つを超える作用様式で作用することもあることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上実施されるものであって、成分を特に規定した用途又は列挙した用途に制限しようとするものではない。
【0027】
本発明は、口腔用組成物であって、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価カチオンの供給源と、第一スズ及び多価カチオンに対するキレート化活性を有するミネラル界面活性剤と、を含み、組成物は、歯の着色汚れ及び収れん性の極小の副作用と共に第一スズからの増強された治療有効性を提供する、口腔用組成物に関する。本明細書で「第一スズからの治療有効性」は、抗菌効果、口臭の抑制、歯垢の成長及び代謝の抑制、歯肉炎低減、歯周病への進行の低減、及び知覚過敏の低減を包含することを意味する。組成物は、好ましくはフッ化物の供給源を含み、これはフッ化第一スズ、その他のフッ化物塩、又はこれらの組み合わせであってもよい。組成物は、歯肉縁上歯石の低減及び抑制を同時に提供する。歯の着色汚れ及び収れん性の低減は、好適なポロキサマー成分の利用を包含する、共同作用する適切な処方によって増強されてもよい。
【0028】
ミネラル界面活性剤(MSA)は、好ましくは高分子であり、特に平均鎖長が約4以上のポリホスフェート、ポリホスホネート、その他のホスフェート−、ホスホネート−、若しくはカルボキシ−含有ポリマーのようなアニオン性ポリマーである。当業者は、平均鎖長が約4以上のポリホスフェートのような高分子結合剤は、第一スズ含有歯磨剤システムにおいてピロホスフェート又はトリポリホスフェートと類似の挙動をすると想定するであろう。着色汚れの形成を防止するためのピロホスフェート、ジホスホネート、又はトリポリホスホネートを使用した第一スズの化学的結合又はキレート化は、治療可能性に容認できない損失も生じることが見出された。しかし、長鎖ポリホスフェート及びその他のホスフェート−又はホスフェート−含有ポリマーは、第一スズの有効性を大幅に低減することなく、歯の着色汚れ及び処方の収れん性という副作用を低減することができることから、予想外の結果を生じる。実際には、これらの高分子MSAをフッ化第一スズのような第一スズ塩を含有する口腔用組成物に包含することは、着色汚れ及び収れん性のレベルが低減された重大な治療的有効性を提供し、同時にフッ化第一スズのみを含有するか又はシトレートのような安定化剤と共にフッ化第一スズを含有する先行技術の組成物と比較して、歯肉縁上歯石の低減を同時に提供することが見出された。
【0029】
本発明の口腔ケア組成物は、単一相又は二相組成物として処方されてもよい。本発明の1つの実施形態は、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価金属イオンの供給源と、好ましくは亜鉛源とを含む第1の組成物と、MSAを含む第2の組成物とを含む、二相口腔用組成物を提供する。この実施形態では、MSAは、平均鎖長が約4以上の線状ポリホスフェートであってもよい。ポリホスフェートを含有する組成物は、ポリホスフェートの加水分解を最小限に抑えるために好ましくは水分が約20%までに限られるであろう。
【0030】
本発明の更なる実施形態は、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価金属イオンの供給源と、平均鎖長が約4以上の線状ポリホスフェートのようなMSAと、を含む単一相口腔用組成物に関する。単一相組成物は、線状ポリホスフェートが加水分解に対して安定化されるように処方される。
【0031】
本発明は、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価金属イオンの供給源と、ホスホネート、ジホスホネート、及びカルボキシ官能基の1つ又は組み合わせを含有するMW500以上のアニオン性ポリマーと、を含む単一相又は二相組成物にも関する。
【0032】
本発明は、臨床的に有効な量のフッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩と、第一スズ以外の多価金属イオンの供給源と、ホスフェート−又はホスホネート−含有ポリマーのようなミネラル界面活性と、キレート化剤と、を組み合わせて含む安定な歯磨剤組成物を対象者に投与することによって、歯の着色汚れ又は収れん性の副作用が極小で、有効な歯石抑制を有する第一スズ含有組成物を有効に送達する方法も提供する。この改良された第一スズ口腔用組成物を送達する方法の1つは、物理的に分離された区画に収容された、2つの歯磨剤組成物を含む歯磨剤の適用を伴う。別の方法は、対象者に安定な単一相歯磨剤組成物を投与することを伴う。安定な単一相組成物の1つの実施形態は、ポリホスフェート、又はその他のホスフェート−又はホスホネート−含有アニオン性ポリマー、第一スズイオン源としてのフッ化第一スズ、亜鉛イオン源を含み、組成物は、安定性の要求により、総水分含有量が低くてもよい。
【0033】
本発明の改良された第一スズ含有組成物を送達するための好ましい方法は、物理的に分離された区画に収容された、2つの歯磨剤組成物を含む歯磨剤の適用を伴う。物理的分離は、各歯磨剤相及びその成分の十分な安定化を考慮している。使用する際に組み合わせたとき、1つの歯磨剤相中の第一スズ(フッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩)と、別の歯磨剤相中のMSAとの化学的相互作用が、両成分の適切な送達を可能にし、それ故、十分な治療的活性を歯石の低減のための十分な有効性の提供、並びに歯の着色汚れ及び収れん性という望ましくない副作用の著しい低減を共に生じさせる。第1の歯磨剤組成物は、第一スズイオンの供給源を含み、一方で第2の歯磨剤組成物は、好ましくはポリホスフェート又はホスフェート、ホスホネート、カルボキシ基若しくはこれらの混合物を含有するその他のアニオン性ポリマー若しくはコポリマーを含む。第一スズ以外の多価カチオンの供給源は、他の構成成分との相互作用により、第1及び第2の組成物のいずれか又は両方に組み込まれてもよい。
【0034】
本発明の組成物の必須及び任意構成成分は、以下の項に記載される。
【0035】
第一スズイオン源
本発明は、1つの必須成分として第一スズイオン源を包含する。第一スズイオンは、口腔用組成物に添加されるフッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩から提供される。フッ化第一スズは、虫歯、歯肉炎、歯垢、及び過敏性の低減、並びに口臭効果の提供に役立つことが見出された。口腔用組成物に提供される第一スズは、組成物を使用する対象者に有効性を提供するであろう。他の第一スズ塩としては、塩化第一スズ二水和物、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、及び酒石酸第一スズが挙げられる。好ましい第一スズイオン源は、フッ化第一スズ及び塩化第一スズ二水和物である。第一スズ塩の組み合わせは、全組成物の約0.05重量%〜約11重量%の量で存在するであろう。好ましくは、第一スズ塩は約0.1%〜約7%、より好ましくは約0.4%〜約3%の量で存在する。処方は典型的には、フッ化第一スズ及び他の第一スズ塩により提供される第一スズ濃度を包含し、それは全組成物中に約3,000ppm〜約15,000ppmの第一スズイオンの範囲である。
【0036】
第一スズ塩、特にフッ化第一スズ及び塩化第一スズを含有する歯磨剤については、米国特許第5,004,597号(マジェティ(Majeti)ら)に記載されている。第一スズ塩のその他の記述は、米国特許第5,578,293号(プリンシペ(Prencipe)らに発行)、及び同第5,281,410号(ルカコヴィク(Lukacovic)らに発行)に見出される。第一スズイオン源に加えて、マジェティ(Majeti)ら及びプリンシペ(Prencipe)らに記載されている成分のような、第一スズを安定化するために必要な他の成分が包含されてもよい。
【0037】
ミネラル界面活性剤(MSA)
本発明は、ミネラル界面活性剤(MSA)を包含し、これは歯に対する直接性を有し、並びに第一スズ及びその他の多価カチオンに対するキレート化又は結合活性も有する。本明細書で略語「MSA」は、そのような剤を示す。「ミネラル(mineral)」記述子は、界面活性剤の界面活性又は直接性(substantivity)が、リン酸カルシウムミネラル又は歯のようなミネラル表面に向かうことを伝えることを意図する。好ましいMSAは、高分子であり、特に、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシ及びこれらの混合物から選択されるアニオン性基を含有するポリマーである。このようなアニオン性官能基は、これらの剤に、カチオン性又は正に荷電した存在物(entities)と反応する能力を提供する。
【0038】
これらの剤は、フッ化第一スズ(SnF)からのイオン性フッ化物放出及び第一スズの結合時により提供されるイオン形態のフッ化物の増大によって証明されるように、第一スズを結合する親和性を、特に第一スズイオンキレート化によって示す。有効な剤は、リン酸カルシウムミネラルに対する表面反応性も示し、それ故、結石又は歯石の形成を遅延させると予想される。この剤は、着色汚れ抑制、表面コンディショニング及び抗酸触の利益も提供する。理想的には、これらの剤は第一スズと結合するであろうが、なお、虫歯、口臭及び歯肉炎を包含する歯周病の抑制に対するフッ化第一スズの有効性に悪影響を及ぼすことなく、組み合わされた混合物が所望の歯石抑制、着色汚れ抑制、及び表面コンディショニングを提供することを可能にするであろう。
【0039】
MSAによる第一スズの結合又はキレート化は、第一スズを特に水性環境中で安定化する手段を提供し、水性環境中で第一スズは第一スズ化合物を形成することができるか又は溶液から沈殿することができ、それによって利用可能な第一スズイオンの量を低減し、その結果、組成物の有効性を低減する。例えば、フッ化第一スズ組成物は、米国特許第5,017,363号(スホネン(Suhonen))で、アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸又はマレイン酸とのコポリマーによって安定化されると報告されている。このコポリマーは、第一スズの酸化又は溶液からの沈殿を防止するのに十分に強力である第一スズイオンとのキレートを形成する能力を有すると報告されている。
【0040】
第一スズの結合又はキレート化に加え、好ましい高分子MSAは、エナメル質表面に対する強力な親和性を持ち、エナメル質表面上にポリマー層又はコーティングを形成し、所望の表面保護及びコンディショニング効果を生じるであろう。かかるポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマー;ポリホスホネート;ホスフェート−若しくはホスホネート−含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物のような高分子電解質である。好適な高分子ミネラル界面活性剤としては、米国特許第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てデゲンハーツ(Degenhardt)ら)に記載されているカルボキシ置換アルコールポリマー、並びに米国特許第5,011,913号(ベネディクトら)におけるジホスホネート誘導体化ポリマー、例えば同第4,627,977号(ガファル(Gaffar)ら)に記載されているようなポリアクリレート、及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えばガントレツ(Gantrez))を包含する合成アニオン性ポリマー、が挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート変性ポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、薄膜タンパク質を脱着し、エナメル質表面への結合を維持するのに十分な表面結合性を有する。歯の表面では、末端又は側鎖にホスフェート又はホスホネート官能基を有するポリマーがいずれも好ましいが、ミネラル結合活性を有する他のポリマーも吸着親和性に依存して有効であることを示す場合がある。
【0041】
好適なホスホネート含有高分子MSAの追加の例としては、米国特許第4,877,603号(デゲンハーツ(Degenhardt)ら)に抗結石剤として開示されているジェム状ジホスホネートポリマー、同第4,749,758号(ダーシュ(Dursch)ら)及び英国特許第1,290,724号(ともにヘキスト(Hoechst)に譲渡)に洗剤及び洗浄組成物への使用に好適として開示されている、ホスホネート基含有コポリマー、並びに米国特許第5,980,776号(ザキクハニ(Zakikhani)ら)及び同第6,071,434号(デービス(Davis)ら)におけるスケール及び腐食防止剤、コーティング、セメント及びイオン交換樹脂を包含する用途に有用であるとして開示されているコポリマー及びコテロマーが挙げられる。好ましいポリマーとしては、英国特許第1,290,724に開示されているビニルホスホン酸、アクリル酸、及びこれらの塩の水溶性コポリマーが挙げられ、これらのコポリマーは、約10重量%〜約90重量%のビニルホスホン酸及び約90重量%〜約10重量%のアクリル酸を含有し、より詳細にはこれらのコポリマーはビニルホスホン酸とアクリル酸との重量比が70%ビニルホスホン酸対30%アクリル酸;50%ビニルホスホン酸対50%アクリル酸;又は30%ビニルホスホン酸対70%アクリル酸である。他の好ましいポリマーとしては、1個以上の不飽和C=C結合を有するジホスホネート又はポリホスホネートモノマー(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸及び2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)と、不飽和C=C結合を有する少なくとも1つの更なる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)とを共重合することにより調製される、ザキクハニ(Zakikhani)及びデービス(Davis)により開示された水溶性ポリマーが挙げられ、これらは以下の構造を有するものなどである。
【0042】
1.以下の構造を有する、アクリル酸と2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸とのコテロマー:
【化1】

【0043】
2.以下の構造を有する、アクリル酸とビニルジホスホン酸とのコポリマー:
【化2】

【0044】
好適なポリマーとしては、ロディア(Rhodia)から表記ITC1087(平均分子量3,000〜60,000)及びポリマー(Polymer)1154(平均分子量6,000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマーが挙げられる。
【0045】
好ましいMSAは、イオン性フッ化物のような処方の他の構成成分に安定であり、高水分処方中で加水分解しないと考えられ、それ故に、単一相歯磨剤又は口内洗浄剤処方を可能にする。MSAがこれらの安定性を持たない場合、1つの選択肢は、MSAが非相溶性構成成分から物理的に分離された二相処方を処方することである。
【0046】
好ましい高分子MSAは、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは一般に、主に線状構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、幾つかの環状誘導体が存在する場合がある。特に有効なのは、有効濃度での表面吸着がアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化する十分な非結合ホスフェート官能基を生成するように、約4以上のホスフェート基の平均鎖長を有するポリホスフェートである。ピロホスフェート及びトリポリホスホネートは、追加の抗結石剤の下で別途論じられる。長鎖ポリホスフェート塩としては、特に、テトラポリホスフェート及びヘキサメタホスフェートが挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は無定形のガラス状物質として生じる。好適なポリホスフェートの例は、次式の線状「ガラス状」ポリホスフェートである:
XO(XPO
式中、Xはナトリウム、カリウム又はアンモニウムであり、nの平均は約6〜約125である。好ましいポリホスフェートはFMC社(FMC Corporation)により製造されており、ソダホス(Sodaphos)(n≒6)、ヘキサホス(Hexaphos)(n≒13)、及びガラスH(Glass H)(n≒21)として商業的に既知である。最も好ましいポリホスフェートは、ガラスH(Glass H)である。これらのポリホスフェートは単独で又はそれらを組み合わせて用いてもよい。
【0047】
平均鎖長が約4を超えるポリホスフェートは、組成物のpHを変えることに加え、室温で口腔用組成物中のイオン性フッ化物と反応し、モノフルオロホスフェートイオンを生じることが知られている。この反応は、口腔用組成物の有効性及び安定なイオン性フッ化物及びポリホスフェートを口腔表面に提供する能力を損なう。ポリホスフェートは、加水分解することも既知である。したがって、このようなポリホスフェートを用いた処方は、多少の困難を呈する。ポリホスフェートを加水分解及び/又は非相溶性成分との相互作用から安定化する1つの方法は、歯磨剤組成物の総水分含有量を低減することである。米国特許第5,939,052号(ホワイト,Jr.(White, Jr.)らに発行)は、ポリホスフェートを更に記載している。ホスフェート源は、カーク・オスマー(Kirk-Othmer)の「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(第4版、第18巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)、1996年)にもより詳細に記載されている。
【0048】
平均で21のホスフェート繰り返し単位を有する縮合ポリホスフェートを含有する処方については、ホスフェートアニオンの全モル数対第一スズイオンの全モル数の理想的な比は、ホスフェートアニオン対第一スズイオンのモル比が約0.2:1〜約5:1、好ましくは約0.5:1〜約3:1、より好ましくは約0.6:1〜約2:1、最も好ましくは約0.7:1〜約1:1であることが見出された。
【0049】
他のポリリン酸化化合物を、ポリホスフェート、特に、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸);ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて又はその代わりに、MSA/キレート剤として用いてもよい。本明細書で好ましいのは、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩である。本明細書では、用語「フィテート」は、フィチン酸及びその塩、並びにその他のポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。
【0050】
更に、使用されてもよい他の非高分子MSAは、当該技術分野で結石形成の遅延及び形成後の結石の除去の目的で提唱されたキレート化材料である。結石の抑制に対する化学的手法は、一般にカルシウムイオンのキレート化、並びに/又は結石の形成を防止し及び/若しくはカルシウムの除去によって成熟した結石を分解する結晶成長阻害を伴う。これらの化学的キレート剤は、以下に「抗結石剤」に関する節でより詳しく論じられる。
【0051】
必要なMSAの量は、第一スズを結合し、適切な抗菌活性を可能にし、歯の着色汚れ及び処方の収れん性を低減し、歯石低減が可能であると思われる、有効な量である。MSAの有効量は、典型的には、全口腔用組成物の約0.05重量%〜約35重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約5重量%〜約25重量%、最も好ましくは約6重量%〜約20重量%であろう。
【0052】
第一スズイオンを有効に結合することに加え、MSA/キレート化剤の幾つかは、組成物の不溶性構成成分の可溶化剤として有用であることが見出された。例えば、ガラスH(Glass H)ポリホスフェートは、不溶性の第一スズ塩並びに第一スズ酸化物及び水酸化物を可溶化することが見出された。
【0053】
多価カチオン源
本発明の組成物は、好ましくは亜鉛(Zn+2)、銅(Cu+2)、アルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+2、Fe+3)、ストロンチウム(Sr+2)、カルシウム(Ca+2)、バリウム(Ba+2)、マグネシウム(Mg+2)、及びマンガン(Mn+2)のような無機イオンを包含する第一スズ以外の多価カチオンの供給源を含む。このような多価カチオンは、結合又はキレート化によって第一スズを安定化させるために組成物に組み込まれたMSA/キレ−ト剤に対して、第一スズと競争する。キレート化は第一スズの安定化に有効であるが、このような化学的に安定化された第一スズイオンは、生物学的利用能が非常に限られ、それ故、治療的有効性が低下する可能性があることが見出された。第一スズと同じ系内に競争カチオンを有することで、キレート剤による第一スズの過安定化が避けられ、競争カチオンとの交換により第一スズが利用可能となる。第2の多価カチオンの包含は、このように、第一スズをキレート化する能力を持つが第一スズの治療有効性を低下させる傾向がある低分子量のジホスホネート、ピロホスフェート、及びトリポリホスホネートのようなキレート剤の使用を可能にする。
【0054】
多価カチオン源は、一般的に、多価カチオン対第一スズのモル比が好ましくは1:1以上となるのに十分な濃度で存在する。これは、MSAに対して第一スズと競争するためのその他の多価カチオンの十分な濃度を確実とする。その他の多価カチオンの濃度は、当然、組成物の審美性及び安定性のような第2の検討事項にも依存し、好ましい1:1の比よりも低くてもよい。好ましい多価カチオンは、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、及びオキザラートのような塩から又は酸化物若しくは水酸化物から供給される無機カチオンである。多価カチオン源は、水に可溶性、微溶性又は不溶性であってもよい。
【0055】
好ましい実施形態では、組成物は、第一スズの供給源としてフッ化第一スズ、亜鉛イオンの供給源として亜鉛塩及びMSA/キレート剤としてポリホスフェートを含む。組成物は、単一相製品として又はフッ化第一スズ及び亜鉛塩を第1の組成物に用い、ポリホスフェートMSAを第2の組成物に用いた二相製品として処方されてもよい。二相組成物の別の実施形態では、第2の組成物は無水マレイン酸又はマレイン酸及びメチルビニルエーテル(ガントレツ(Gantrez))のコポリマーをMSAとして含む。これらの実施形態では、亜鉛イオン対第一スズイオンの好ましいモル比は約0.5:1〜約5:1の範囲である。
【0056】
更なる実施形態では、組成物は、単一相又は二相であってもよく、カルシウムイオンの供給源としてカルシウム塩、第一スズ及びフッ化物の供給源としてフッ化第一スズ、及びMSAとしてポリホスフェート、無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー又はこれらの混合物を含む。二相組成物は、フッ化第一スズを第1の組成物に含み、塩化カルシウム及びMSAを第2の組成物に含む。
【0057】
経口で許容可能なキャリア物質
本発明の組成物の調製において、1つ以上のキャリア材料又は賦形剤を組成物に添加することが望ましい。このような材料は、当該技術分野で周知であり、調製される組成物に望まれる物理的、審美的及び性能特性に基づいて、当業者によって容易に選択される。これらのキャリアは、典型的には口腔用組成物の約50重量%〜約99重量%、好ましくは約70重量%〜約98重量%、より好ましくは約90重量%〜約95重量%の濃度で包含されてもよい。このような任意のキャリアの例を、以下の段落で述べる。
【0058】
総水分含有量
商業的に好適な口腔用組成物の調製に用いる水は、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含まないべきである。口腔用組成物において、水は、本明細書の組成物の約0重量%〜約95重量%、好ましくは約5重量%〜約50重量%含まれてもよい。この水分含有量は、単一相口腔用組成物中のものでもよく、又は二相口腔用組成物で得られる総水分含有量であってもよい。口腔用組成物が平均鎖長が4以上のポリホスフェートを含む場合、このポリホスフェートを含有する組成物又は相は、より低濃度の水、一般的には約20%までの全水分を含むであろう。好ましくは、総水分含有量は、口腔用組成物の約2重量%〜約20重量%、より好ましくは約4重量%〜約15重量%、最も好ましくは約5重量%〜約12重量%である。水の量は、添加された遊離水に加えて、ソルビトール、シリカ、界面活性剤溶液及び/又は着色溶液のような他の材料に伴って導入された遊離水を包含する。
【0059】
緩衝剤
本組成物は緩衝剤を含有してもよい。本明細書で使用するとき、緩衝剤とは、組成物のpHをpH約3.0〜pH約10の範囲に調整するために用いることができる剤を指す。第一スズを含有する口腔用組成物の相は、一般的に約3.0〜約7.0、好ましくは約3.25〜約6.0、より好ましくは約3.5〜約5.5のスラリーpHを有するであろう。MSA/キレート化剤を含有する相は、一般的には約4.0〜約10、好ましくは約4.5〜約8、より好ましくは約5.0〜約7.0のスラリーpHを有するであろう。第一スズとMSA/キレート化剤との両方を単一相内に含有する口腔用組成物は、一般的には約4〜約7、好ましくは約4.5〜約6.5、より好ましくは約5〜約6のpHを有するであろう。
【0060】
好適な緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物を包含する。具体的な緩衝剤には、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。好ましい緩衝剤は、第一スズイオンを錯化することなく、pHを標的範囲内に制御するものであろう。好ましい緩衝剤としては、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、安息香酸及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、本組成物の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、及びより好ましくは約1.5重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。
【0061】
フッ化物イオン源
本発明の口腔用組成物は、任意に、生物学的に利用可能で効果的なフッ化物イオンを提供する能力がある可溶性フッ化物源を包含するであろう。好ましいフッ化物イオン源には、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン及びモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。フッ化第一スズは、好ましい可溶性フッ化物源である。この成分は、第一スズ源及びフッ化物源の両方として機能してもよい。米国特許第2,946,725号(ノリス(Norris)ら、1960年7月26日発行)、及び同第3,678,154号(ウィッダー(Widder)ら、1972年7月18日発行)は、このようなフッ化物源並びにその他のものを開示している。
【0062】
本発明の組成物は、約50ppm〜約3500ppm、好ましくは約500ppm〜約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができる可溶性フッ化物イオン源を含有してもよい。所望の量のフッ化物イオンを供給するため、フッ化物イオン源は、口腔に供給される全口腔用組成物の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約0.6重量%の量で全口腔用組成物中に存在してもよい。
【0063】
抗結石剤
結石形成に関連するミネラル付着の低減に有効であることが既知の材料は、本明細書で第一スズのMSA/キレート化剤又は安定剤として使用されてもよい。キレート化剤は、細菌の細胞壁中に見出されるカルシウムを錯化することができ、このバイオマスを無傷に保つのを助けるカルシウム架橋からカルシウムを除去することによって歯垢を破壊することもできる。しかしながら、カルシウムに対する親和性が高すぎるキレート化剤を用いることは、結果として歯の脱灰をもたらす可能性があり、これは本発明の目的及び意図に反するために、望ましくない。好適なキレート化剤は、通常はカルシウム結合定数が約10〜10であり、歯垢及び結石の形成を減少させ、改善された洗浄を提供する。キレート化剤は、金属イオンと錯化する能力も持ち、それ故に、第一スズ安定化のために使用することができる。
【0064】
その抗結石活性で有用なこのようなキレート化剤としては、ピロホスフェート、トリポリホスホネート、並びにEHDP及びAHPのようなジホスホネートが挙げられる。本発明の組成物でピロホスフェートイオンの供給源として有用なピロリン酸塩としては、ピロリン酸二アルカリ金属塩、ピロリン酸三アルカリ金属塩、及びこれらの混合物が挙げられる。非水和形態並びに水和形態の、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が、好ましい種である。本発明の組成物では、ピロホスフェート塩は、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、又は溶解した形態と溶解していない形態の混合物のピロホスフェート、の3つの形態のうちの1つの形態で存在してもよい。
【0065】
主に溶解したピロホスフェートを含む組成物とは、少なくとも1つのピロホスフェートイオン源が、少なくとも約1.0%の遊離ピロホスフェートイオンを提供するのに十分な量である組成物を指す。遊離ピロホスフェートイオンの量は、約1%〜約15%、1つの実施形態においては約1.5%〜約10%、及び別の実施形態では約2%〜約6%であってよい。遊離ピロホスフェートイオンは、組成物のpHに依存して多様なプロトン化状態で存在してもよい。
【0066】
主に溶解していないピロホスフェートを含む組成物とは、全ピロホスフェート塩の約20%以下が組成物中に溶解し、好ましくは全ピロホスフェートの約10%未満が組成物中に溶解して含有される組成物を指す。ピロリン酸四ナトリウム塩は、これらの組成物中の好ましいピロホスフェート塩である。ピロリン酸四ナトリウムは、無水塩型若しくは十水和物型、又は歯磨剤組成物中において固形で安定な他の任意の種であってよい。塩は固体粒子状形態であり、これは結晶及び/又は非晶状態であってもよく、塩の粒径は、好ましくは、審美的に許容可能であって、使用中容易に溶解するのに十分に小さい。これらの組成物の製造に有用なピロホスフェート塩の量は、歯石抑制に有効な任意の量であり、一般に、歯磨剤組成物の約1.5重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、最も好ましくは約3重量%〜約8重量%である。
【0067】
組成物はまた、溶解したピロホスフェート塩と溶解していないピロホスフェート塩との混合物もまた含んでよい。前述のピロホスフェート塩のいずれを用いてもよい。
【0068】
ピロリン酸塩は、カーク・オスマー(Kirk-Othmer)の「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(第3版、第17巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)、1982年)に、より詳細に記載されている。
【0069】
抗結石剤として使用されるキレート化剤のその他の例としては、英国特許第490,384号(1937年2月15日)に開示されているエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸及び関連化合物;米国特許第3,678,154号(ウィッダー(Widder)ら、1972年7月18日)、同第5,338,537号(ホワイト,Jr.(white, Jr)、1994年8月16日発行)、及び同第5,451,401号(ザービィ(Zerby)ら、1995年9月19日発行)のポリホスホネート;米国特許第3,737,533号(フランシス(Francis)、1973年6月5日)のカルボニルジホスホネート;米国特許第4,138,477号(ガファル(Gaffar)、1979年2月6日発行)の亜鉛化合物とカルボン酸、スルホン酸及び/又はホスホン酸ラジカルを含有するアニオン性ポリマーとの反応又は相互作用によって生成する亜鉛−ポリマー混合物;いずれも米国特許第5,849,271号(1998年12月15日発行)及び同第5,622,689号(1997年4月22日発行)(いずれもルカコヴィック(Lukacovic))の酒石酸;米国特許第5,015,467号(スミサーマン(Smitherman)、1991年5月14日発行)の酸又は塩の形の酒石酸モノコハク酸、酒石酸ジコハク酸、及びこれらの混合物;米国特許第4,847,070号(ピルツ(Pyrz)ら、1989年7月11日)及び同第4,661,341号(ベネディクト(Benedict)ら、1987年4月28日)のアクリル酸ポリマー又はコポリマー;米国特許第4,775,525号(ペラ(Pera)、1988年10月4日発行)のアルギン酸ナトリウム;英国特許第741,315(1955年11月30日発行、PCT国際公開特許WO99/12517(1999年3月18日発行)及び米国特許第5,538,714号(ピンク(Pink)ら、1996年7月23日発行)のポリビニルピロリドン;米国特許第第5,670,138号(ヴェネマ(Venema)ら、1997年9月23日発行)、及び日本国公開第2000−0633250号(ライオン(Lion Corporation)、2000年2月29日発行)のビニルピロリドンとカルボキシレートとのコポリマーが挙げられる。抗結石剤として使用されてもよいその他のキレート化剤としては、グルコン酸、酒石酸、クエン酸及び薬剤として許容されるこれらの塩が挙げられる。例としては、グルコン酸ナトリウム若しくはカリウム又はクエン酸ナトリウム若しくはカリウム;クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩混合物;クエン酸亜鉛三水和物;酒石酸二ナトリウム;酒石酸二カリウム;酒石酸ナトリウムカリウム;酒石酸水素ナトリウム;酒石酸水素カリウムが挙げられる。本発明に用いられる好適なこのようなキレート剤の量は、約0.1%〜約2.5%、好ましくは約0.5%〜約2.5%、より好ましくは約1.0%〜約2.5%である。
【0070】
本発明に用いるのに好適な更に他の抗結石剤は、米国特許第4,138,477号(1979年2月6日)、及び同第4,183,914号(ガファル(Gaffar)ら、1980年1月15日)に開示されている高分子ポリカルボキシレートであり、無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)、スチレン、イソブチレン又はエチルビニルエーテルのような別の重合可能なエチレン不飽和モノマーとのコポリマーを包含する。かかる物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸又は部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例は、約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの1:4〜4:1コポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GAFケミカルズ社(GAF Chemicals Corporation)のガントレツ(Gantrez)AN139(分子量500,000)、AN119(分子量250,000)、及びS−97医薬品等級(分子量70,000)として入手可能である。
【0071】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、無水マレイン酸とエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばモンサント(Monsanto)EMA NO.1103、分子量10,000及びEMA等級61として入手可能であるもの、及びアクリル酸とメチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0072】
砥粒研磨物質
砥粒研磨物質も、口腔用組成物中に含まれてもよい。本発明の組成物への使用が考えられる砥粒研磨物質は、象牙質を過度に磨耗しない任意の物質であることができる。加えて、砥粒研磨物質は、第一スズ又はフッ化物の安定性を損なわないように口腔用組成物に処方されるべきである。例えば、二相口腔用組成物において、砥粒研磨物質は、好ましくはフッ化物イオン源及び第一スズイオン源とは別の相にある。
【0073】
典型的な砥粒研磨物質には、ゲル及び沈殿を包含するシリカ;アルミナ;オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、及びピロリン酸塩を包含するリン酸塩;及びこれらの混合物が挙げられる。具体例には、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、βピロリン酸カルシウム(beta calcium pyrophosphate)、炭酸カルシウム、及び尿素及びホルムアルデヒドの粒子状縮合生成物のような樹脂性研磨物質、及びクーリー(Cooley)らにより米国特許第3,070,510号(1962年12月25日発行)に開示されたような他のものが挙げられる。研磨剤の混合物を使用してもよい。口腔用組成物又は特定の相が、約4以上の平均鎖長を有するポリホスフェートを含む場合には、カルシウム含有研磨剤及びアルミナは、好ましい研磨剤ではない。最も好ましい研磨剤はシリカである。
【0074】
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に削らない、優れた歯の清浄及び研磨性能という独特の効果があるため好ましい。他の研磨剤と同様に、本明細書のシリカ砥粒研磨物質は、一般に、約0.1ミクロン〜約30ミクロン、好ましくは約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、沈降シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルであることができ、米国特許第3,538,230号(ペイダー(Pader)ら、1970年3月2日発行)及び同第3,862,307号(ディギュリオ(DiGiulio)、1975年1月21日発行)に記載されている。好ましいのは、W.R.グレース・アンド・カンパニー(W.R.Grace & Company)のダビソン化学部門(Davison Chemical Division)により商標名「サイロイド(Syloid)」で市販されているシリカキセロゲルである。J.M.ヒュ−バー社(J. M. Huber Corporation)によって「ゼオデント(Zeodent)」の商品名で市販されているもののような沈殿シリカ物質、特に「ゼオデント(Zeodent)119」の表記を持つシリカも好ましい。本発明の練り歯磨きに有用なシリカ歯科用研磨剤の種類は、米国特許第4,340,583号(ワソン(Wason)、1982年7月29日発行)に、より詳細に記載されている。その他の好適なシリカ研磨剤は、ライス(Rice)の米国特許第5,589,160号、同第5,603,920号、同第5,651,958号、同第5,658,553号、同第5,716,601号、及びホワイト,Jr.(white, Jr.)らの同第6,740,311号に記載されている。本明細書に記載の口腔用組成物の研磨剤は、一般的に、組成物の約6重量%〜約70重量%の濃度で存在する。好ましくは、口腔用組成物は、口腔用組成物の約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。
【0075】
過酸化物源
本発明は、組成物中に過酸化物源を包含してもよい。過酸化物源は、過酸化水素、過酸化物カルシウム、過酸化尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい過酸化物源は、過酸化カルシウムである。好ましくは、安定性を最大にするため、過酸化物源は、第一スズイオン源と同じ相にない。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してもよい。本発明の組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、最も好ましくは約0.3重量%〜約0.8重量%の過酸化物源を含有してもよい。
【0076】
アルカリ金属重炭酸塩
本発明はアルカリ金属重炭酸塩もまた包含してよい。アルカリ金属重炭酸塩は水に可溶性であり、安定化されていない限り、水性系で二酸化炭素を放出する傾向がある。重炭酸ナトリウムは、重曹としても知られ、好ましいアルカリ金属重炭酸塩である。アルカリ金属重炭酸塩は、緩衝剤としても機能する。アルカリ金属重炭酸塩緩衝剤のpHから、重炭酸塩は好ましくは第一スズイオン源とは別の相にある。本発明の組成物は、口腔用組成物の約0.5重量%〜約50重量%、好ましくは約0.5重量%〜約30重量%、より好ましくは約2重量%〜約20重量%、最も好ましくは約5重量%〜約18重量%のアルカリ金属重炭酸塩を含有してもよい。
【0077】
追加のキャリア
本発明の組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、局所口腔用ジェル、口内洗浄剤、義歯製品、マウススプレー、薬用キャンディー、経口錠剤又はチューインガムの形態であり、典型的には所望の稠度を提供するための多少の増粘材料又は結合剤を含有する。増粘材料の量及び種類は、製品の形態に依存するであろう。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような天然ゴムも使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカを増粘剤の一部として使用することができる。増粘剤は、口腔用組成物の約0.1重量%〜約15重量%の量で使用できる。
【0078】
本明細書で望ましい組成物の別の任意構成成分は、湿潤剤である。湿潤剤は、口腔用組成物の空気中への暴露による硬化を回避するのに役立ち、特定の湿潤剤はまた練り歯磨き剤組成物に所望の甘味風味を付与することができる。発明に用いるのに適した湿潤剤には、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、及びその他の食用多価アルコールが挙げられる。湿潤剤は、一般に口腔用組成物の約0重量%〜70重量%、好ましくは約15重量%〜55重量%含まれる。
【0079】
本組成物はまた、一般的に起泡剤と呼ばれる界面活性剤もまた含んでよい。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって適度に安定及び発泡性であるものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合物であってよい。本明細書で有用なアニオン性界面活性剤としては、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。アニオン性界面活性剤の混合物を使用することもできる。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(アグリコーラ(Agricola)ら、1976年5月25日発行)に開示されている。本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(本質的には親水性)と、本質的には脂肪族又はアルキル−芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物として広く定義できる。適した非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー(商品名プルロニック(Pluronic)として販売)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名トゥイーンズ(Tweens)として販売)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物とエチレンオキシドの縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びこのような物質の混合物が挙げられる。ポロキサマーは第一スズの収れん性の低減を助けることが発見されたことから、非イオン性界面活性剤ポロキサマー407は、最も好ましい界面活性剤の一つである。本発明において有用な両性界面活性剤は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く記載されることができ、その際、脂肪族ラジカルは線状又は分枝状であることができ、脂肪族置換基の1つは約8〜約18個の炭素原子を含有し、1つはアニオン性水溶性基、例えばカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。他の好適な両性界面活性剤はベタイン、特に、コカミドプロピルベタインである。両性界面活性剤の混合物も使用できる。好適な非イオン性及び両性界面活性剤の多くが、米国特許第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日発行)に開示されている。本組成物は、典型的には、1つ以上の界面活性剤を各々が組成物の約0.25重量%〜約12重量%、好ましくは約0.5重量%〜約8重量%、及び最も好ましくは約1重量%〜約6重量%の濃度で含む。
【0080】
二酸化チタンもまた本組成物に添加されてよい。二酸化チタンは、組成物に不透明感を加える白色粉末である。二酸化チタンは一般に、組成物の約0.25重量%〜約5重量%含まれる。
【0081】
着色剤もまた本組成物に添加されてよい。着色剤は水溶液の形態であってもよく、好ましくは1%の着色剤水溶液であってもよい着色溶液は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%含まれる。
【0082】
香味系も組成物に添加できる。好適な香味料構成成分としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、メチルサリチレート、ユーカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−パラ−第三ブチルフェニルアセテート及びこれらの混合物が挙げられる。清涼剤も香味系の一部であってもよい。本組成物に好ましい清涼剤は、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(商業的に「WS−3」として知られる)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤及びこれらの混合物である。香味系は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0083】
甘味剤を組成物に添加することができる。これらは、サッカリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、及びこれらの混合物を包含する。種々の着色剤も本発明に組み込んでもよい。甘味剤及び着色剤は、一般に練り歯磨きに、組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0084】
本発明は、抗菌効果を提供するため、第一スズに加えて、他の剤もまた包含してよい。これらの剤は、第一スズとMSAとの間の相互作用を妨げない濃度で包含されてもよい。かかる抗菌剤に包含されるのは、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を包含するフェノール化合物、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル及びハロゲン化カルバニリドのような非水溶性非カチオン性抗菌剤である。水溶性抗菌剤には、とりわけ四級アンモニウム塩及びビス−ビクアニド塩(bis-biquanide salts)が挙げられる。トリクロサンモノホスフェートは、補助的な水溶性抗菌剤である。四級アンモニウム剤としては、四級窒素上の置換基のうちの1つ又は2つが炭素原子約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有する一方、残りの置換基(典型的にはアルキル基又はベンジル基)は、炭素原子約1〜約7個などの、より少ない炭素原子数、典型的にはメチル基又はエチル基を有するものが挙げられる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、セチルピリジニウムクロライド、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化メチルベンゼトニウムは、典型的な四級アンモニウム抗菌剤の代表例である。その他の化合物は、米国特許第4,206,215号(ベイリー(Bailey)、1980年6月3日発行)に開示されているようなビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンである。ビスグリシン酸銅、グリシン酸銅、クエン酸亜鉛、及び乳酸亜鉛のようなその他の抗菌剤も包含されてもよい。エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、及びこれらの混合物を包含する酵素も有用である。こうした剤は、米国特許第2,946,725号(ノリス(Norris)ら、1960年7月26日)、及び同第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら)に開示されている。具体的な抗微生物剤としては、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、及びチモールのような香味油が挙げられる。トリクロサン及びその他のこの種の剤は、米国特許第5,015,466号(パラン,Jr.(Parran,Jr.)らに発行)及び同第4,894,220号(ナビ(Nabi)らに発行)に開示されている。水不溶性抗菌剤、水溶性剤、及び酵素は、2つの相が存在する場合、第1又は第2の口腔用組成物のいずれかに存在してもよい。これらの剤は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約1.5重量%の濃度で存在してもよい。
【0085】
歯磨剤組成物は、ペースト、ゲル、若しくはいずれかの形状、又はこれらのいずれの組み合わせであってもよい。二相歯磨剤が望ましい場合、第1及び第2の歯磨剤組成物は、歯磨剤ディスペンサー内で物理的に分離されているであろう。一般的に、第1の歯磨剤組成物はペーストであり、第2の歯磨剤組成物はゲルであることが好ましい。ディスペンサーは、チューブ、ポンプ、又は練り歯磨きを分与するのに好適なその他の容器であってもよい。この目的に好適な2区画パッケージは、米国特許第4,528,180号、同第4,687,663号、及び同第4,849,213号(すべてシェ−ファー(Shaeffer))に記載されている。ディスペンサーは、開口部を通じて、ほぼ等量の各歯磨剤組成物を供給するであろう。組成物は、いったん分与されると、混ざってもよい。あるいは、口腔用組成物は、両方が同時に使用される2つの歯磨剤を供給するために使用される2つの別個のディスペンサーを含有するキットから供給されてもよい。
【0086】
有効性測定
本発明の組成物の全体的性能は、有効性スコア/着色汚れスコアの比の用語で定義されてもよく、有効性はインビトロ歯垢糖分解再生モデル(i−PGRM)を用いて測定され、着色汚れはインビトロ薄膜茶着色汚れモデル(i−PTSM)を用いて測定される。本発明の組成物は、有効性スコア対着色汚れスコアの比が少なくとも1.2であり、これは、着色汚れの低減を達成しながら、十分な治療的有効性が維持されるという点において現実的な改良を示す。処方の収れん性の改良は、ドライマウスのような処方の食感のパラメーター、及び管理された消費者試験で定義されるようなクリーンマウス指数における、50%を超える増大として定義される。歯肉縁上歯石の制御効果は、歯垢成長及び石灰化分析変法(Modified Plaque Growth and Mineralization assay)を用いる、歯垢石灰化の予防活性により定義される。
【0087】
抗菌活性
治療効果を与えるのに必要な第一スズイオン濃度及び生物学的利用能は、異なる臨床作用、例えば虫歯対歯肉炎について異なっていてもよい。しかし、最低抗菌活性濃度の確立は、その濃度以下では第一スズの治療活性に支障をきたし得ることから、重要である。第一スズの結合は抗菌活性の損失を容易に招くことができることから、第一スズの結合が発生する組成物における有効性を維持することは特に重要である。本明細書では、第一スズイオン源によって提供される最低有効性は、多くの望ましくない口腔内状態に関与する歯垢細菌性バイオフィルムの代謝阻害の発生における効果に関して定義される。有効性は、出願人らの研究所で開発された、インビトロ歯垢糖分解再生モデル(i−PGRM)を用いて測定されるような、その場での歯垢代謝の顕著及び有意な減少により定義される。i−PGRMは、フッ化第一スズを含有する口腔用組成物の臨床的抗菌、抗歯肉炎及び抗歯垢活性を生じるために必要なフッ化第一スズの生物学的利用能との卓越した相関性を与えることが実証された。第一スズ含有組成物の歯肉炎に対する有効性を、米国特許第5,004,597号(マジェッティ(Majeti)ら)に記載されている第一スズ含有歯磨剤処方又は市販のフッ化第一スズ含有歯磨剤、クレスト・ガム・ケア(Crest Gum Care)と直接比較することができる。
【0088】
i−PGRMは、唾液から歯垢を成長させ、様々な程度の抗菌活性を示すよう設計された剤で処理する手法である。この手法の目的は、歯肉の健康状態に悪影響を及ぼす毒素を産生するために歯垢微生物が利用する代謝経路に対し、化合物が直接的に作用するか否かを判断する、単純かつ迅速な測定方法を提供することである。特に、このモデルは、乳酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸などの有機酸の産生に注目している。この方法は、磨いたガラス棒を唾液中に一晩、ソイブロス及びスクロース中に6時間、及び再び唾液中に一晩浸すことにより、歯垢を成長させて利用する。ガラス棒上に成長した歯垢塊を、次いで、水対歯磨剤の3:1スラリーで1分間処理する。次いで、その塊をソイブロス/スクロース溶液中に6時間置き、6時間後、培養液のpHを測定する。このように、試験処方と対照処方の両方について、培養前のpHと培養後のpHを測定する。この試験は、実験間のばらつきを最小限にするため、通常は何回か繰り返して実施し、繰り返し実験から平均pHを算出する。生物が利用可能な第一スズを高濃度で含有する組成物は、糖分解性微生物による強い反応性のために、i−PGRMアッセイにおいて歯垢酸産生を有意に阻害する。これにより、処方の差による第一スズの安定性及び生物学的利用能を、比較的容易に比較できる。
【0089】
フッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩は、本明細書に記載の口腔用組成物で、所望のi−PGRMスコアを提供するのに有効な量で見出される。所望のi−PGRMスコアを、非第一スズ含有処方(陰性対照)及び米国特許第5,004,597号(マジェッティ(Majeti)ら)に記載されているような第一スズ含有処方(陽性対照)に関して測定する。最も好ましいi−PGRMスコアは、プラシーボ対照とは有意に異なり、理想的には歯垢及び歯肉炎の低減に有効であることが証明されている従来のフッ化第一スズによって提供されるものに近い。有効な歯肉炎有効性は、下記の実施例II比較例に示されるような有効な第一スズ含有歯磨剤の少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%を提供する組成物に対して期待できることが研究で実証された。
【0090】
i−PGRMスコアは、以下の式により計算される。
【数1】

【0091】
平均pH値は、処置後及びスクロース負荷後に得られた培養液のpHを意味する。非第一スズ対照歯垢試料は、大量の酸を生じ、したがってそのpHは陽性対照(比較例の実施例IIに示される安定化されたフッ化第一スズ歯磨剤)で処理された歯垢試料のそれよりも低い。第一スズイオン源とMSAとの組み合わせから調製された処方の有効性は、理想的には第一スズ含有対照に匹敵し、したがって、理想的なi−PGRMスコアは、100%に近づくはずである。
【0092】
着色汚れ低減
歯の着色汚れはフッ化第一スズ組成物の使用に共通する望ましくない副作用である。本明細書に記載の改良されたフッ化第一スズ歯磨剤は、MSAに結合した第一スズからの、より効率的な第一スズ送達により生じる歯の着色汚れ形成の低減を提供する。一般的に第一スズによって引き起こされる歯表面の着色汚れは、臨床的状況において、文献に記載されているロベーネ(Lobene)又はメッケル(Meckel)指数のような着色汚れ指数を用いて測定される。臨床的観測結果と相関する、フッ化第一スズ処方の着色汚れの可能性の定量的予測を提供するインビトロ着色汚れモデルも開発された。これらの方法を用いて、処方を臨床試験の前に試験することができる。
【0093】
インビトロ薄膜茶着色汚れモデル(i−PTSM)は、インビトロ歯垢バイオマスを、プールしたヒト刺激唾液からガラス棒上に3日間かけて成長させる技法である。歯垢バイオマスは、3:1の水対歯磨剤上清で処理し、研磨剤及び不溶性固体を遠心分離で除去し、種々の剤の潜在的な歯の着色汚れレベルを決定する。この技法の目的は、化合物が歯の歯垢着色汚れ量に対する直接的な影響を持つか否かを決定するための単純で迅速な方法を提供することである。この方法は、研磨ガラス棒上でのプールしたヒト唾液から各5分間の処置、続いて10分間の茶処置による歯垢成長を利用する。この処置レジメンを少なくとも3回繰り返した後、歯垢塊を棒から得て、濾過し、380nmでの吸光度を測定する。この試験は、実験間のばらつきを最小限にするため、通常は何回か繰り返して実施し、繰り返し実験から平均吸光度を算出する。
【0094】
着色汚れは、一般的に有効なフッ化第一スズから生じ、フッ化第一スズを上述のMSAの1つ又は混合物と組み合わせることによって低減されることが見出された。第一スズによって引き起こされる着色汚れの低減の利益は、本発明の組成物によって、第一スズ、フッ化物及びMSAの有効性を有意に損なうことなく達成される。本発明の口腔用組成物から得られる着色汚れの量は、一般的な第一スズ含有歯磨剤から得られる着色汚れの量よりも有意に低い。用語「低減された」は、本明細書で使用するとき、統計的に有意な低減を意味する。したがって、第一スズの着色汚れの低減とは、着色汚れの量が、第一スズ含有陽性対照と比較して、統計的に有意に低減されることを意味する。第一スズの有効性が低減されないとは、第一スズの有効性が、第一スズ含有陽性対照と比較して、統計的に有意に低減されないことを意味する。あるいは、着色汚れは、フッ化第一スズ又は着色汚れを生ずることが既知である、別の抗菌剤を含有しない典型的な口腔用組成物を基準にして測定してもよい。したがって、この組成物は、きわめて少ない又はない着色汚れを基準にして測定されてもよい。
【0095】
i−PTSMスコアは、この着色汚れアッセイから、次式により計算できる:
【数2】

【0096】
平均吸光度の値は、歯磨剤処置及び茶でのすすぎ負荷の後で得られる消化された歯垢の比色分析値を指す。使用される第一スズ対照は、一般的に、下記の比較例、実施例IIに例証されるような、高着色汚れのフッ化第一スズ処方である。第一スズ対照試料は、大量の茶の吸収を生じ、したがって、比色分析吸光度が増大される。したがって、i−PTSMスコアは、着色汚れの相対的レベルの尺度である。スコアが低いほど、着色汚れのレベルが低い。第一スズイオン源とMSAとの組み合わせは、着色汚れの低減を提供し、理想的にはi−PTSMスコアが約75%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満であろう。
【0097】
i−PGRMスコア対i−PTSMスコアの比
本明細書で提供される第一スズ組成物における改良の重要な記述子は、着色汚れ可能性と比較した第一スズの有効性の比であり、これらは重要な消費者の関心事項である。本発明の口腔用組成物の有効性は、i−PGRMスコア対i−PTSMスコアの比で測定されるであろう。
【0098】
i−PGRMスコア対i−PTSMスコアの比は、次式に従って計算される:
比=i−PGRMスコア/i−PTSMスコア
本発明に従うと、これらの方法を用いて展開された比は、歯の着色汚れという副作用に関する第一スズ処方有効性の有意な改良のためには、少なくとも約1.2であるべきである。この比は、好ましくは約1.3を超え、より好ましくは約1.5を超え、最も好ましくは約2.0を超える。着色汚れの発生がほとんど又はまったくない場合、比は無限大に近づき、これは好ましい。
【0099】
第一スズの結合
上述のように、第一スズの有効な安定化(副作用が低減された有効性)は、ミネラル界面活性剤(MSA)による第一スズのその場での結合又は錯化によって達成されてもよい。フッ化第一スズを含有する混合組成物では、第一スズの結合の証拠は、利用可能なイオン性フッ化物の電位差検出によって容易に観察される。例えば、ポリホスフェートMSA配位子による第一スズの結合は、フッ化第一スズからのフッ化物の交換及びイオン性フッ化物としての溶液への放出を生じる。フッ化物は、系内でMSA結合剤に続く最も強力な配位子であることから、第一スズ結合の関連尺度は、この技法によって評価できる。したがって、フッ化物放出は、これらの条件下でのMSAによる第一スズ結合の例証である。
【0100】
このアプローチは、第一スズ及び亜鉛イオンとポリホスフェートMSAとの錯化を決定するために用いられた。第一スズイオンがポリホスフェートアニオンによって錯化されていることから、イオン選択的フッ化物電極を用いたフッ化物放出アッセイを用いて、第一スズイオンによるフッ化物の放出及び錯化を観測した。フッ化第一スズの溶液において、ガラスH(Glass H)ポリホスフェートの添加は、第一スズ−ポリホスフェート錯体形成及びその後のフッ化第一スズ錯体からのフッ化物イオンの放出により、遊離フッ化物イオンを生じる。亜鉛イオンは、第一スズイオンよりもポリホスフェートアニオンに対して高い親和性を有する場合があることから、フッ化第一スズとポリホスフェートとの混合物への亜鉛塩の添加は、亜鉛−ポリホスフェート錯体の形成及び後に遊離フッ化物を錯化すると思われる第一スズイオンの放出に好都合であろう。したがって、遊離フッ化物イオンのレベルは、亜鉛イオンの添加によって低下するであろう。
【0101】
フッ化第一スズのみを含有する溶液及びフッ化第一スズに加えて亜鉛塩を含有する溶液を調製した。これらの溶液に、ガラスH(glass H)ポリホスフェート溶液を漸増的に添加し、フッ化物イオンをフッ化物イオン選択的電極により観測した。次の2つの溶液を調製した。
【0102】
溶液1:SnF0.454%
溶液2:SnF0.454%+ZnCl 1.25%(6000ppmの亜鉛イオン)
これらの溶液の各々に、0.1MのガラスH(Glass H)ポリホスフェート(22%w/v)を滴定し、フッ化物イオンを測定した。データは、遊離フッ化物濃度として、添加した滴定液の量の関数としてプロットされる。このインビトロ金属配位子錯化研究の結果を下の表に示す。0.454%フッ化第一スズからの理論的なフッ化物放出は、1100ppmの遊離フッ化物であろう。フッ化第一スズ含有溶液中のフッ化物の大部分は第一スズイオンと錯化していることから、遊離フッ化物はきわめて少ないであろう。ポリホスフェートの添加に伴い、遊離フッ化物イオンが有意に増大し、理論値の1100ppmに近づく。これは、フッ化第一スズがポリホスフェートアニオンで錯化されて第一スズ−ポリホスフェート錯体を形成し、同時にフッ化第一スズ錯体からのフッ化物イオン放出が起こるためである。フッ化第一スズ溶液への亜鉛イオンの添加は、ポリホスフェート濃度の増大と共に遊離フッ化物イオンの濃度を低減する。これは、亜鉛イオンが、ポリホスフェートアニオンとの競争的結合によって第一スズ−ポリホスフェート錯体からの第一スズイオン遊離を助けることを示唆する。
【表1】

【0103】
収れん性低減
収れん性は、多数の第一スズ含有組成物の追加の副作用であり、これはMSAを第一スズ及び第二の多価カチオンとの組み合わせで含む本発明の組成物で有意に改良されている。処方の収れん性は、口腔内官能試験によって測定することができ、被験者は試験処方での歯磨きの前後の口の状態を評価する。これらの研究では、時間依存性研究を、消費者の主観的反応に対する歯磨剤の影響から実施できる。1つのプロトコルでは、官能試験員らは、2回の3分間の歯磨き、フロス処理をし、確実に完全な歯垢除去をしたことを明らかにすることを包含する、精力的な自己口腔衛生で歯を清浄にすることによって、一連のコンディショニングを開始した。被験者らは、その後、試験製品を割当てられ、通常通り1日に2回歯磨きするように指示される。これらの試験で、被験者らは、朝、あらゆる口腔衛生又は食品若しくは飲料の摂取を行う前に、クリニックに報告した。官能試験員らは、その後、歯の清浄な感覚、滑らかな歯の感覚及び清浄な口の感覚に関する質問、並びに口の湿気の評価、を包含する主観的な口の感覚評価質問表に記入するよう求められる。官能試験員らは、その後、割当てられた口腔製品で1分間歯磨きした。昼食前及び夕食前(午後遅く)の時点に、被験者らは再度、主観的口感覚質問表に記入する。これらの試験の結果は、第一スズ塩をガラスH(Glass H)ポリホスフェートのようなMSAと組み合わせて含有する本処方が、歯磨き後の処方収れん性の著しい改良を生じることを示す。収れん性は、MSAを含まない従来の第一スズ処方と比較して低減される。本処方の受容性は、従来のフッ化ナトリウム(NaF)及び歯石抑制歯磨剤のそれぞれに匹敵する。
【0104】
歯石の低減及び抑制
抗結石効果の提供は、本フッ化第一スズ処方の別の望ましい態様である。抗結石活性は、ミネラル界面活性測定並びに歯垢成長及び石灰化アッセイの適用から予測できる。本組成物は、第一スズイオンを結合するポリホスフェートのようなMSAを包含する。好ましい組成物は、歯の表面に対して大きな親和性を有するMSAホスフェートポリマーを含有し、この表面はカルシウムヒドロキシアパタイトを含む。好ましいMSAは、管理された石灰化アッセイで確証されたように、リン酸カルシウム石灰化の有意な低減を生じるホスフェートポリマーを包含するであろう。ポリホスフェート(特に、平均鎖長が約4を超える線状ポリホスフェート)は、ピロホスフェート及びいくつかのその他の一般的に使用される歯洗浄成分と比較して、卓越した活性及び直接性(substantivity)を生じることが見出された。増大された活性及び直接性(substantivity)は、歯の着色汚れ及び歯肉縁上歯石の防止、並びに歯の着色汚れの非研磨的除去の有意な改良につながる。理論に束縛されるものではないが、ポリホスフェートは本質的に、歯のエナメル質上への硬いリン酸カルシウムミネラル付着の形成である、石灰化プロセスを破壊することによって、歯肉縁上歯石の形成を防止すると考えられる。ポリホスフェートの構造が、歯石となる成長するミネラル格子に十分に適合しないことから、ポリホスフェートは、歯の表面に結合することによって、ミネラル構築プロセスを破壊する。
【0105】
処置の方法
本発明は、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価金属イオンの供給源と、及び平均鎖長が約4以上の線状ポリホスフェートのようなミネラル界面活性/キレ−ト化剤と、を含む本組成物を使用することによって、低減された着色汚れと共に歯肉炎及び歯垢を処置する方法にも関する。フッ化物イオンの供給源は、特に第一スズイオン源がフッ化第一スズ又はフルオロリン酸第一スズを含まない場合に、好ましくは包含される。追加的に提供されるのは、口腔ケア組成物の提供方法であり、これは虫歯、歯肉炎、歯垢、歯石、着色汚れ、過敏性、審美性、口臭、食感、及び洗浄の効果を有する。これらの組成物の効果は、組成物が繰り返し使用されるとき、時間と共に増加する場合がある。具体的には、処置の方法は、i−PTSMよって測定したときの第一スズ含有口腔用組成物によって引き起こされる着色汚れを低減しつつ、i−PGRMによって測定したときの歯肉炎及び歯垢の低減を包含する。i−PGRMスコア対i−PTSM着色汚れモデルスコアの比は、約1.2を超える。
【0106】
本発明は、歯のエナメル質上での歯石の発生を低減するための方法、並びに低減された収れん性及び口表面コンディショニング効果を包含する所望の口審美的効果を提供するための方法にも関する。これらの組成物の効果は、組成物が繰り返し使用されるとき、時間と共に増加する場合がある。
【0107】
処置の方法は、第一スズイオン源と、第一スズ以外の多価カチオンの供給源と、ミネラル界面活性剤(MSA)と、を含有する口腔用組成物を調製し、この組成物を対象者への投与を、包含する。対象者への投与は、口腔ケア組成物を、歯磨剤でのブラッシング又は歯磨剤スラリーでのすすぎによって、対象者の歯の表面に接触させることと定義されてもよい。投与は、局所口腔用ゲル、口内洗浄剤、義歯製品、マウススプレー、経口錠剤、薬用キャンディー、又はチューインガムを歯の表面に接触することによるものでもよい。対象者は、歯垢、歯肉炎、歯石、着色汚れ、及び過敏性を包含する口腔内状態の処置又は防止を必要とするいかなるヒト又は動物であってもよい。「動物」とは、特に家庭用ペット若しくは他の家畜、又は捕獲されている動物を包含することを意味する。
【0108】
例えば処理方法は、歯磨剤組成物の1種を用いてヒトがイヌの歯をブラッシングすることを包含してもよい。別の例としては、効果を確認するのに十分な時間、ネコの口を口腔用組成物で口内洗浄することが挙げられるであろう。チュー(chew)及びおもちゃのようなペットケア製品は、本口腔用組成物を含有するように処方されてよい。第一スズ、第2のカチオン、及びMSAを包含する組成物は、生皮、天然又は合成繊維製のロープ、及びナイロン、ポリエステル若しくは熱可塑性ポリウレタン製の高分子物品、のような比較的柔軟であるが強く耐久性のある材料に組み込まれる。動物が製品を噛み、なめ、又はかじるときに、組み込まれた活性要素が動物の口腔内の唾液媒体内に放出され、効果的なブラッシング又はすすぎに匹敵する。
【実施例】
【0109】
以下の実施例及び説明は、本発明の範囲内にある実施形態を更に明らかにする。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変更が発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であるので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0110】
(実施例I)
実施例Iは、第1の歯磨剤組成物にフッ化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩を組み込み、第2の歯磨剤組成物にポリリン酸ナトリウム(FMC社(FMC Corporation)が供給するガラスH(Glass H)、n=21縮合リン酸ポリマー)又は無水マレイン酸若しくはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(ガントレツ(Gantrez))のようなMSAを組み込んだ二相歯磨剤組成物を例証する。第2の多価カチオン源は、いずれかの組成物にも組み込まれる。これらの組成物は、処方者によって選択される従来の方法によって好適に調製されてもよい。
【表2】

【表3】

【0111】
(実施例II)
実施例IIは、第一スズイオン源としての第一スズ塩と、多価カチオン源と、MSAとしてガラスH(Glass H)ポリホスフェート又はガントレツ(Gantrez)と、を組み入れた単相歯磨剤組成物を例証する。組成物は従来の方法を用いて調製されてもよい。
【表4】

【0112】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく限定されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0113】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0114】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯垢及び歯肉炎の低減に有効な抗菌活性を有する口腔ケア組成物であって、
a.第一スズイオン源と、
b.第一スズ以外の多価カチオンの供給源と、
c.歯に対する直接性、並びに第一スズ及び前記多価カチオンに対するキレート化活性を有するミネラル界面活性剤と、
を含み、前記組成物が、増強された第一スズ安定性及び治療有効性を提供する、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記第一スズイオン源が、フッ化第一スズ、塩化第一スズ二水和物、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記多価カチオン源が、亜鉛(Zn+2)、銅(Cu+2)、アルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+2、Fe+3)、ストロンチウム(Sr+2)、カルシウム(Ca+2)、バリウム(Ba+2)、マグネシウム(Mg+2)、マンガン(Mn+2)、及びこれらの混合物から選択される多価無機カチオンを提供する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記ミネラル界面活性剤が高分子であり、リン酸化ポリマー;ポリホスホネート;ポリカルボキシレート;カルボキシ置換ポリマー;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーとエチレン性不飽和モノマー、アミノ酸、タンパク質、ポリペプチド、多糖、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルベンジルクロライド)とのコポリマー;並びにこれらの混合物から選択される高分子電解質である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
0.05%〜35%の縮合リン酸化ポリマーを含み、好ましくは前記リン酸化ポリマーが、2〜125の平均鎖長を有する線状ポリホスフェートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記ミネラル界面活性剤が、無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記ミネラル界面活性剤が、ジホスホネート/アクリレートコポリマー又はコテロマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
フッ化物イオン源、抗菌剤、界面活性剤、増粘材料、湿潤剤、緩衝剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、着色剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記増粘材料が、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
口腔ケア組成物であって、
(a)第一スズイオン源を含む第1の組成物と、
(b)ミネラル表面に対する直接性並びに第一スズ及び前記多価カチオンに対するキレート化活性を有するミネラル界面活性剤を含む第2の組成物と、
(c)前記第1及び第2の組成物のいずれか又は両方に存在する第一スズ以外の多価カチオンの供給源と、
を含み、前記ミネラル界面活性剤が、前記第1の組成物と第2の組成物との口腔内接触により、第一スズイオンをキレート化する、口腔ケア組成物。
【請求項12】
前記第一スズイオン源が、フッ化第一スズを含み、前記多価カチオン源が、亜鉛塩を含み、前記ミネラル界面活性剤が、平均鎖長が4以上の線状ポリホスフェート、無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項11に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
歯垢及び歯肉炎を低減するための第一スズを含有する口腔ケア組成物の治療的有効性を増強し、同時に着色汚れを低減し、審美的望ましさを改良する方法であって、前記口腔ケア組成物が
a)第一スズイオン源と、
b)亜鉛(Zn+2)、銅(Cu+2)、アルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+2、Fe+3)、ストロンチウム(Sr+2)、カルシウム(Ca+2)、バリウム(Ba+2)、マグネシウム(Mg+2)、マンガン(Mn+2)、及びこれらの混合物から選択される多価カチオンの供給源と、
c)歯に対する直接性を有するミネラル界面活性剤と、
を含むように処方することを含み、前記ミネラル界面活性剤が第一スズイオン及び前記多価カチオンを結合して第一スズの安定性及び生物学的利用能を増大させる、方法。

【公表番号】特表2010−505760(P2010−505760A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529784(P2009−529784)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053598
【国際公開番号】WO2008/041055
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】