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第四級アンモニウム塩及びこれを含む酸化反応用触媒、エポキシ化合物の製造方法、並びに、酸化反応用触媒の分離方法
説明

第四級アンモニウム塩及びこれを含む酸化反応用触媒、エポキシ化合物の製造方法、並びに、酸化反応用触媒の分離方法

【課題】酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化された生成物を製造する方法において、反応後の反応溶液中の生成物からの酸化反応用触媒の簡便かつ容易な分離を可能とする第四級アンモニウム塩を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される第四級アンモニウム塩。
【化1】


[式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。R4は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。nは1〜20の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アンモニウム塩及びこれを含む酸化反応用触媒、エポキシ化合物の製造方法、並びに、酸化反応用触媒の分離方法に関する。より詳しくは、酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化する酸化反応において、酸化された生成物から酸化反応用触媒を簡便かつ容易に分離することを可能とする第四級アンモニウム塩及びこれを含む酸化反応用触媒に関する。また、上記酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素によりオレフィンの炭素−炭素二重結合をエポキシ化するエポキシ化合物の製造方法に関する。さらに、上記酸化反応用触媒の簡便かつ容易な分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化剤を用いた酸化反応は様々な用途に利用されており、例えば、第1級アルコールの酸化によるアルデヒド及びカルボン酸の製造、第2級アルコールの酸化によるケトンの製造、不飽和化合物の酸化によるエポキシ化合物及びジオールの製造などの各種の有機化合物の製造に利用されている。中でも、酸化剤として過酸化水素を用いた酸化反応は、過酸化水素が安価であり、腐食性を示さず、副生成物が水であることから、環境負荷低減等の観点で注目を集めている。
【0003】
従来、例えば、少なくとも1つの二重結合を有する不飽和化合物を過酸化水素によりエポキシ化する反応においては、触媒として、金属化合物(例えば、タングステンなどの周期表第6族元素を含む化合物、レニウムなどの周期表第7族元素を含む化合物、オスミウム等の周期表第8族元素を含む化合物など)が使用され、工業的には、低コストの点から、周期表第6族元素を含む化合物(特に、タングステン化合物)が広く使用されている。
【0004】
特許文献1には、分子内に1個以上のC=C結合を分子内に有する有機化合物から、安価で汎用性が高く、且つ触媒活性を高く維持できる酸化触媒で、エポキシ化合物を製造する方法として、タングステン化合物、りん酸アンモニウム、及び過酸化水素を含む水相中に対して、分子内に1個以上のC=C二重結合を分子内に有する有機化合物とオニウム塩からなる有機相を添加し、反応させる方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、温和な条件下、有機溶媒を使用せず、二重結合を有する有機化合物(オレフィン)類と過酸化水素水溶液との反応により、高効率で上記二重結合をエポキシ化することができる活性の高い触媒系でのエポキシ化合物の製造方法として、タングステン化合物、並びに、特定構造の3級アミン、及び/又は特定構造の4級アンモニウム塩を触媒として用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−106009号公報
【特許文献2】特開2010−155805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に開示されたエポキシ化合物の製造方法においては、生成物として得られるエポキシ化合物から触媒として用いたタングステン化合物を分離することが困難であるという問題が生じていた。より詳しくは、特許文献1、2に開示されたエポキシ化合物の製造方法では、反応後の反応溶液において、水相と有機相の両相にタングステン化合物が存在するため、有機相中の生成物とタングステン化合物とを分離することが困難であった。
【0008】
このため、酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物(例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する有機化合物)を酸化し、対応する酸化された生成物((「酸化化合物」と称する場合がある;例えば、上記エポキシ化合物)を製造する方法においては、酸化化合物からの酸化反応用触媒の分離が簡便かつ容易に実施できることが求められているのが現状である。
【0009】
従って、本発明の目的は、酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化された生成物(特に、エポキシ化合物)を製造する方法において、反応後の反応溶液中の生成物からの酸化反応用触媒の簡便かつ容易な分離を可能とする第四級アンモニウム塩を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化された生成物を製造する方法において、反応後の反応溶液中の生成物から簡便かつ容易に分離することができる、有機化合物の酸化反応用触媒を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素によりエチレン性不飽和二重結合を有する有機化合物(オレフィン)の二重結合をエポキシ化し、エポキシ化合物を製造する方法において、反応後の反応溶液中のエポキシ化合物からの酸化反応用触媒の分離を簡便かつ容易に行うことができるエポキシ化合物の製造方法を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化された生成物を生成させた後の反応溶液中の該生成物から、上記酸化反応用触媒を簡便かつ容易に分離することができる酸化反応用触媒の分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造の第四級アンモニウム塩を相間移動触媒として含む酸化反応用触媒を、過酸化水素による有機化合物の酸化反応の酸化反応用触媒として使用すると、反応後の反応溶液中の生成物(酸化化合物)から上記酸化反応用触媒を簡便かつ容易に分離できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。R4は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。nは1〜20の整数である。]
で表される第四級アンモニウム塩を提供する。
【0012】
また、本発明は、相間移動触媒として前記の第四級アンモニウム塩を含むことを特徴とする有機化合物の酸化反応用触媒を提供する。
【0013】
さらに、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含む前記の酸化反応用触媒を提供する。
【0014】
さらに、前記ヘテロポリ酸若しくはその塩が、リン原子、並びに、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含むヘテロポリ酸若しくはその塩である前記の酸化反応用触媒を提供する。
【0015】
さらに、前記前駆化合物が、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含む無機酸又はその塩、並びに、リン原子含有オキソ酸又はその塩を含む前記の酸化反応用触媒を提供する。
【0016】
さらに、前記有機化合物の酸化反応が、過酸化水素によるオレフィンのエポキシ化反応である前記の酸化反応用触媒を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素によりオレフィンの炭素−炭素二重結合をエポキシ化し、エポキシ化合物を生成させる工程を含むことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化化合物を生成させた後の反応溶液中の前記酸化化合物から、前記酸化反応用触媒を分離する方法であって、前記反応溶液の温度制御により前記酸化反応用触媒を選択的に水相に分配させる工程と、その後、分液操作により前記反応溶液の有機相と水相とを分離する工程とを含むことを特徴とする酸化反応用触媒の分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第四級アンモニウム塩は上記構造を有するため、該第四級アンモニウム塩を相間移動触媒として含む酸化反応用触媒を、過酸化水素による有機化合物の酸化反応における触媒として用いると、反応後の反応溶液における生成物(酸化化合物)からの上記酸化反応用触媒の分離を簡便かつ容易に行うことができる。従って、本発明の第四級アンモニウム塩を用いると、酸化反応用触媒の回収及び再利用が容易であるためコスト面で有益であり、なおかつ生成物から高効率で酸化反応用触媒を分離することができるため、高い純度の生成物(酸化化合物)を高い生産性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、酸化反応用触媒の有機相への分配挙動の温度応答性(温度依存性)を評価した結果を示す図(横軸:温度、縦軸:タングステンの有機相への存在比率)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第四級アンモニウム塩]
本発明の第四級アンモニウム塩は、下記式(1)で表される化合物(第四級アンモニウム塩)である。
【化2】

【0022】
上記式(1)中のR1、R2、R3(R1〜R3)は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。
【0023】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキル基などが挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)などのC1-20アルキル基などが挙げられる。
【0024】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基などのC3-12のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0025】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0026】
また、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0027】
上記R1〜R3における炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)などのアルコキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基などのアラルキルオキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基などのアシルオキシ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基などのアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基などのアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基などのモノ又はジアルキルアミノ基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基などのアシルアミノ基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0028】
中でも、上記R1〜R3としては、それぞれ、炭素数1〜20(C1-20)の飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は飽和脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基(特に、アラルキル基)が好ましい。
【0029】
上記式(1)中のR4は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。上記置換基を有していてもよい炭化水素基としては、上記R1、R2、R3と同様のものが挙げられる。中でも、上記R4としては、炭素数1〜6(C1-6)の飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、飽和脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基(特に、アラルキル基)が好ましい。
【0030】
上記式(1)中のX-は、式(1)で表される第四級アンモニウム塩におけるアンモニウムカチオン(第四級アンモニウムイオン)のカウンターアニオン(対イオン;一価のアニオン)である。上記カウンターアニオンとしては、ブレンステッド酸の共役塩基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオンなど)、硫酸水素イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスファイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、アルコキシドイオン(メトキサイドイオン、エトキサイドイオンなど)などが挙げられる。中でも、上記カウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、メタンスルホン酸イオン、硫酸水素イオンが好ましい。
【0031】
上記式(1)中のnは、1〜20の整数を示す。nとしては、特に、生成物からの酸化反応用触媒の分離の効率の観点で、2〜12の整数が好ましく、より好ましくは3〜8の整数である。
【0032】
本発明の第四級アンモニウム塩としては、具体的には、例えば、下記式で表される化合物(第四級アンモニウム塩)が挙げられる。
【化3】

【0033】
本発明の第四級アンモニウム塩は、公知乃至慣用の第四級アンモニウム塩の製造方法により製造することができ、その製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(1a)で表される化合物を原料として使用し、該化合物における水酸基(式(1a)中に表された水酸基)を有機合成の分野で周知慣用の脱離基に変換して、下記式(1b)で表される化合物を生成させた後、さらに、下記式(1c)で表される化合物(第三級アミン)と反応させる方法により製造することができる。
【化4】

(式(1a)中、R4、nは、前記に同じ。)
【化5】

(式(1b)中、R4、nは、前記に同じ。Lは、脱離基を示す。)
【化6】

(式(1c)中、R1、R2、R3は、前記に同じ。)
【0034】
上記式(1a)で表される化合物は、エチレングリコールが重合した構造を有するポリエチレングリコール、又はこれらのモノエーテル体である。上記式(1a)で表される化合物としては、市販品を使用することもできるし、例えば、ポリエチレングリコールの場合には、公知乃至慣用の方法を用いて、エチレングリコールを重縮合させたり、エチレンオキシドを開環重合させることにより、製造することができる。また、ポリエチレングリコールのモノエーテル体の場合には、公知乃至慣用の方法を用いて、ポリエチレングリコールの1のヒドロキシル基をエーテル化(例えば、アルキルエーテル化)することにより、製造することができる。
【0035】
上記式(1b)におけるL(脱離基)としては、有機合成の分野で周知の脱離基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、ハロゲン基(ハロゲン原子)、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
上記式(1a)で表される化合物における水酸基を脱離基に変換するための化合物(「脱離基導入用化合物」と称する場合がある)としては、公知乃至慣用のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、メタンスルホン酸クロライド、トリフルオロメタンスルホン酸クロライド等の置換基を有していてもよい低級アルキルスルホン酸クロライド;ベンゼンスルホン酸クロライド、トルエンスルホン酸クロライド等の置換基を有していてもよい芳香族スルホン酸クロライド;メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などの置換基を有していてもよい低級アルキルスルホン酸無水物;ベンゼンスルホン酸無水物、トルエンスルホン酸無水物などの置換基を有していてもよい芳香族スルホン酸無水物;ジエチルホスホニルクロライドなどの置換基を有していてもよい低級アルキルリン酸クロライド;ジフェニルホスホニルクロライドなどの置換基を有していてもよい芳香族リン酸クロライドなどが挙げられる。上記脱離基導入用化合物における置換基としては、例えば、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0037】
また、上記式(1a)で表される化合物における水酸基を脱離基に変換し、式(1b)で表される化合物を生成させる方法としては、上述の脱離基導入用化合物を反応させる方法以外に、例えば、式(1a)で表される化合物と塩化チオニルとを反応させて、Lが塩素原子である式(1b)で表される化合物を生成させる方法、又は、上記Lが塩素原子である式(1b)で表される化合物をさらに、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウム等と反応させることによって、Lがヨウ素原子である式(1b)で表される化合物を生成させる方法等が挙げられる。
【0038】
上記式(1a)で表される化合物における水酸基を脱離基に変換し、式(1b)で表される化合物を生成させる際の反応条件等は、特に限定されず、有機合成の分野で慣用の条件等から適宜選択することができる。
【0039】
上記式(1b)で表される化合物は、慣用の方法、例えば、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により精製したものを次の反応に使用してもよい。
【0040】
次に、上記式(1b)で表される化合物と、式(1c)で表される第三級アミンとを反応させることにより、本発明の第四級アンモニウム塩を生成させることができる。式(1c)で表される第三級アミンとしては、具体的には、例えば、N,N−ジメチル−N−オクタデシルアミン、N,N,N−トリオクチルアミン、N−ベンジル−N−メチル−N−オクタデシルアミン、N,N−ジオクチル−N−メチルアミンなどが挙げられる。
【0041】
上記式(1b)で表される化合物と式(1c)で表される第三級アミンとの反応は、有機溶媒の存在下で実施することができる。上記有機溶媒としては、式(1b)で表される化合物と、式(1c)で表される第三級アミンの両方を溶解することができ、反応を阻害しないものであればよく、特に限定されないが、例えば、シクロプロパノール、シクロヘキサノールなどのシクロC3-10アルカノール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル(鎖状エステル)類;クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール類などが挙げられる。上記有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
式(1b)で表される化合物と式(1c)で表される第三級アミンとの反応は、例えば、これらの化合物を共存させ、加熱することにより進行させることができる。式(1c)で表される第三級アミンの使用量は、特に限定されないが、式(1b)で表される化合物1モルに対して、1.0〜5.0モルが好ましく、より好ましくは1.2〜1.5モルである。
【0043】
式(1b)で表される化合物と式(1c)で表される第三級アミンとの反応における有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(1b)で表される化合物100重量部に対して、20〜1000重量部が好ましく、より好ましくは50〜500重量部である。
【0044】
式(1b)で表される化合物と式(1c)で表される第三級アミンとの反応の温度(反応温度)としては、特に限定されないが、40〜150℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃である。また、上記反応の時間(反応時間)としては、特に限定されないが、2〜10時間が好ましく、より好ましくは3〜5時間である。
【0045】
本発明の第四級アンモニウム塩は、慣用の方法、例えば、濃縮、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により精製することができる。
【0046】
[酸化反応用触媒]
本発明の第四級アンモニウム塩は、有機化合物の酸化反応用触媒における相間移動触媒として好ましく使用することができる。より詳しくは、本発明の第四級アンモニウム塩は、過酸化水素により有機化合物を酸化する酸化反応において使用される、酸化反応用触媒の相間移動触媒として好ましく使用できる。以下、相間移動触媒として本発明の第四級アンモニウム塩を含む酸化反応用触媒を、「本発明の酸化反応用触媒」と称する場合がある。
【0047】
本発明の酸化反応用触媒は、相間移動触媒として本発明の第四級アンモニウム塩を少なくとも含む。また、本発明の酸化反応用触媒は、相間移動触媒としての本発明の第四級アンモニウム塩の他に、過酸化水素による酸化反応そのものを触媒する成分(「酸化反応触媒」と称する)を含む。上記酸化反応触媒としては、公知乃至慣用の酸化反応触媒を使用することができ、特に限定されないが、一般に、過酸化水素を酸化剤として使用する酸化反応においては、金属原子を含む化合物が酸化反応触媒として使用される。上記金属原子を含む化合物としては、例えば、タングステン、マンガン、バナジウム、モリブデン、チタン、アルミニウム、ニオブなどの金属原子を含む化合物などが挙げられる。
【0048】
本発明の酸化反応用触媒は、上記酸化反応触媒として、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含むことが好ましい。上記ヘテロポリ酸若しくはその塩としては、公知の種々のヘテロポリ酸若しくはその塩を使用することができ、特に限定されないが、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、タングストモリブドリン酸、タングストモリブドケイ酸、リンバナドモリブデン酸などが挙げられる。中でも、上記ヘテロポリ酸としては、リン(リン原子)、並びに、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種(1種以上)の金属(金属原子)を含有するヘテロポリ酸が好ましい。このようなヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸、リンマンガン酸、リンモリブデン酸、リンバナジン酸、などが挙げられる。中でも、特に、コストの観点からリンタングステン酸が好ましい。上記ヘテロポリ酸の塩としては、例えば、上記例示のヘテロポリ酸のオニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられる。
【0049】
上記ヘテロポリ酸若しくはその塩の前駆化合物とは、ヘテロポリ酸若しくはその塩を形成(調製)可能な1種又は2種以上の化合物を意味する。上記前駆化合物は、反応系内で必ずしもヘテロポリ酸若しくはその塩を形成していないくてもよい。上記前駆化合物としては、例えば、タングステン、マンガン、バナジウム、モリブデン、チタン、アルミニウム、ニオブ等の金属原子(好ましくは、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子)を少なくとも含む化合物(「金属化合物」と称する場合がある)と、リン、ケイ素、ヒ素からなる群より選択された少なくとも1種のヘテロ原子(好ましくは、リン(リン原子))を少なくとも含む化合物との組み合わせを用いることができる。即ち、上記ヘテロポリ酸若しくはその塩は、タングステン、マンガン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含む化合物と、リンを少なくとも含む化合物とから調製されるヘテロポリ酸若しくはその塩であることが好ましい。
【0050】
上記ヘテロ原子を含む化合物としては、例えば、リン原子を含む化合物として、リン酸、ポリリン酸(ピロリン酸、メタリン酸を含む)、(ポリ)リン酸塩{(ポリ)リン酸の金属塩[例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの(ポリ)リン酸アルカリ金属塩;リン酸カルシウムなどの(ポリ)リン酸アルカリ土類金属塩;リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなどの(ポリ)リン酸水素アルカリ金属塩;リン酸水素カルシウムなどの(ポリ)リン酸水素アルカリ土類金属塩;(ポリ)リン酸アルミニウム塩(リン酸ピロリン酸アルミニウム複塩を含む)などの(ポリ)リン酸金属塩]}などが挙げられる。なお、上記リン原子を含む化合物には、五酸化二リンなどの上記リン原子を含む化合物を合成する材料(又は原料)も含まれる。上記リン原子を含む化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、取り扱い性、コストの観点から、リン酸又はリン酸塩(特に、リン酸)等のリン原子含有オキソ酸又はその塩が好ましい。また、上記ヘテロ原子を含む化合物としては、例えば、ケイ素原子を含む化合物としてケイ酸(オルトケイ酸、メタケイ酸等)、ヒ素原子を含む化合物としてヒ酸、亜ヒ酸などが挙げられる。
【0051】
上記金属化合物としては、例えば、タングステン、マンガン、バナジウム、モリブデン、チタン、アルミニウム、ニオブなどの金属のハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩、錯体、上記金属原子より構成されたポリ酸又はその塩などが挙げられる。これらの金属化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
上記金属化合物の中でも、タングステンを含む化合物(タングステン化合物)としては、例えば、タングステンのハロゲン化物(塩化タングステンなど);タングステンの無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩など);タングステンの有機酸塩(酢酸塩など);タングステンを中心金属とする錯体;タングステンのイソポリ酸又はその塩(タングステン酸;タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウムなどのタングステン酸のアルカリ金属塩など)、ヘテロポリ酸又はその塩(タングストリン酸(又はタングストリン酸塩)(例えば、12−タングストリン酸、11−タングストリン酸など)、バナジウムタングステン酸、モリブデンタングステン酸、マンガンタングステン酸、コバルトタングステン酸、ケイタングステン酸、リンバナドタングステン酸、マンガンモリブデンタングステン酸又はこれらの塩(例えば、アルカリ金属塩など)など)が挙げられる。
【0053】
上記金属化合物としては、特に、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含む無機酸(ポリ酸、イソポリ酸)又はその塩が好ましい。
【0054】
即ち、上記ヘテロポリ酸若しくはその塩の前駆化合物としては、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含む無機酸又はその塩、並びに、リン原子含有オキソ酸又はその塩の組み合わせが好ましい。
【0055】
本発明の酸化反応用触媒がヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含む場合、本発明の第四級アンモニウム塩の含有量(含有割合)は、特に限定されないが、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物1モル(前駆化合物の場合はヘテロポリ酸若しくはその塩1モルに相当する量)に対して、0.01〜5モルが好ましく、より好ましくは0.03〜3モル、さらに好ましくは0.05〜1モルである。
【0056】
本発明の酸化反応用触媒は、本発明の第四級アンモニウム塩、ヘテロポリ酸(又はその前駆化合物)以外にも、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、ハイドロキノン類、トリアルキルアミン類、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0057】
本発明の酸化反応用触媒を調製する方法は、特に限定されない。あらかじめ本発明の第四級アンモニウム塩と、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物などのその他の成分を混合して組成物とした状態で反応溶液に添加してもよいし、本発明の第四級アンモニウム塩とその他の成分を別々に反応溶液に添加してもよい。
【0058】
[酸化化合物の製造方法]
本発明の酸化反応用触媒は、有機化合物の酸化反応用の触媒として使用される。より詳しくは、本発明の酸化反応用触媒は、過酸化水素により有機化合物を酸化し、対応する酸化化合物(生成物)を生成させる工程を少なくとも含む酸化化合物の製造方法において好ましく使用できる。以下、本発明の酸化反応用触媒を使用した上記酸化化合物の製造方法(本発明の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化化合物を生成させる工程を少なくとも含む酸化化合物の製造方法)を、「本発明の酸化化合物の製造方法」と称する場合がある。
【0059】
(有機化合物)
本発明の酸化化合物の製造方法において使用される原料(酸化される基質)としての有機化合物としては、過酸化水素により酸化される化合物であれば、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、「オレフィン」と称する場合がある)、アルコール、ケトンなどが挙げられる。オレフィンを過酸化水素で酸化すると、通常、炭素−炭素二重結合(エチレン性不飽和二重結合)がエポキシ化され、対応するエポキシ化合物が生成する。また、条件によっては、ジオールが生成する。第1級アルコールを過酸化水素で酸化すると、アルデヒド、カルボン酸等が生成する。第2級アルコールを過酸化水素で酸化すると、ケトン、カルボン酸等が生成する。また、ケトンを過酸化水素で酸化すると、バイヤービリガー酸化が進行して、エステル(鎖状ケトンの酸化の場合)、ラクトン(環状ケトンの酸化の場合)が生成する。過酸化水素を用いた酸化反応のうち、最も代表的な酸化反応は、オレフィンの酸化、特に、エポキシ化反応である。以下、オレフィンのエポキシ化(オレフィンの炭素−炭素二重結合のエポキシ化)について詳細に説明するが、本発明の酸化反応用触媒は当該反応に限らず、上記のいずれの酸化反応においても使用することができる。
【0060】
上記オレフィンは、分子内(1分子中)に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合(非芳香族性炭素−炭素二重結合)を有するものであればよく、特に限定されない。即ち、上記オレフィンは、分子内に1以上のエチレン性不飽和二重結合を有していてもよい。上記オレフィンには、(i)炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素、(ii)シクロアルケン環(シクロアルカジエン環などのシクロアルカポリエン環も含む)を含有する化合物などが含まれる。これらの化合物は、置換基を有していてもよい。なお、液相で酸化反応を行う場合には、上記オレフィンとして、通常、反応条件下で液体または固体の(又は液体と混和性のある)オレフィンが選択される場合が多い。
【0061】
(i)炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、3−ヘキセン、1−へプテン、2−へプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、2−メチル−2−ブテン、1−ノネン、2−ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセンなどのC2-40アルケン(好ましくはC2-30アルケン、さらに好ましくはC2-20アルケン);ブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサンジエン、1,6−ヘプタンジエン、1,7−オクタジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエンなどのC4-40アルカジエン(好ましくはC4-30アルカジエン、さらに好ましくはC4-20アルカジエン);ウンデカトリエン、ドデカトリエンなどのC6-30アルカトリエン(好ましくはC6-20アルカトリエン)などが挙げられる。炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状脂肪族炭化水素は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
これらの直鎖または分岐鎖状脂肪族炭化水素は、例えば、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基など)、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、メルカプト基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基(例えば、C1-6アルコキシ基など)など)、ハロアルコキシ基、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC1-10アルコキシカルボニル基(例えば、C2-10アルコキシカルボニル基など)など)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基などのC2-10アシル基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基などのC1-10アシルオキシ基等)、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)などの置換基を有してもよい。なお、置換基の数及び置換位置は特に限定されない。
【0063】
置換基を有する上記直鎖又は分岐鎖状脂肪族炭化水素としては、例えば、置換基としてアリール基(例えば、フェニル基など)を有する上記直鎖又は分岐鎖状脂肪族炭化水素(たとえば、フェニルエチレン(またはスチレン)、1−フェニルプロペン、2−フェニル−1−ブテン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエンなど)などが挙げられる。なお、置換基としてアリール基(例えば、フェニル基など)を有する上記直鎖又は分岐鎖状脂肪族炭化水素は、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基などの、C2-10アルケニル基(好ましくは、C2-6アルケニル基)など)で置換されている芳香族化合物と称することもでき、このような芳香族化合物は、側鎖に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有している限り、上記アルケニル基及び/又は芳香環に置換基(例えば、上記例示の置換基など)を有していてもよく、上記アルケニル基と芳香環との間に、連結基(後述する連結基など)を有していてもよい。
【0064】
(ii)シクロアルケン環(シクロアルカジエン環などのシクロアルカポリエン環も含む)を含有する化合物としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセンなどのC3-20シクロアルケン(好ましくはC4-14シクロアルケン、更に好ましくはC5-10シクロアルケン);シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、シクロデカジエンなどのC5-20シクロアルカジエン(好ましくはC5-14シクロアルカジエン、さらに好ましくはC5-10シクロアルカジエン);シクロオクタトリエンなどのC7-20シクロアルカトリエンなどが挙げられる。シクロアルケン環を有する化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、C3-20シクロアルケンが好ましく、さらにC5-10シクロアルケン[例えば、C6-8シクロアルケン(例えば、シクロヘキセンなどのC5-6シクロアルケンなど)]を好ましく使用できる。
【0065】
これらの化合物は、シクロアルケン環に置換基を有していてもよい。置換基の数および置換位置は特に限定されない。置換基としては、(i)炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状脂肪族炭化水素の項で例示の置換基の他、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などのC1-10アルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)など);ハロアルキル基;アルケニル基(例えば、上記例示のアルケニル基など);アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基など)などが挙げられる。
【0066】
上記オレフィンは、複数のアルケン単位及び/又はシクロアルケン単位を含む化合物であってもよい。上記複数のアルケン単位及び/又はシクロアルケン単位を含む化合物における複数のアルケン単位及び又はシクロアルケン単位は、同種であってもよく、異種であってもよい。また、上記複数のアルケン単位及び/又はシクロアルケン単位は、単結合で結合(直接結合)していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。上記連結基は、1種であってもよく、複数種であってもよい。なお、上記「アルケン単位」とは、上記(i)炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖状脂肪族炭化水素に対応する1価または多価基であってもよく、アルカジエン単位などのアルカポリエン単位も含む意味で用いる。また、上記「シクロアルケン単位」とは、上記(ii)シクロアルケン環を含有する化合物に対応する1価または多価基であってもよく、シクロアルカジエン単位などのシクロアルカポリエン単位も含む意味で用いる。
【0067】
上記連結基は、通常、多価基(例えば、2価の基など)である。連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、2−メチルブタン−1,3−ジイル基等のC1-20アルキレン基など)、シクロアルキレン基(たとえば、1,4−シクロヘキシレン基等のC4-10シクロアルキレン基など)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC6-10アリーレン基など)、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、エーテル結合及びウレタン結合から選択された少なくとも1種で構成される。
【0068】
上記オレフィンの炭素数(置換基及び/又は連結基を含む場合には、置換基及び/又は連結基(置換基と連結基の両方を含む場合には、置換基及び連結基)に含まれる炭素数を合算した個数)は、特に限定されないが、2〜40個が好ましく、より好ましくは6個以上(例えば、6〜30個)、さらに好ましくは6〜25個、特に好ましくは6〜20個(例えば、7〜20個)である。
【0069】
このようなオレフィンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記オレフィンは、(ii)シクロアルケン環(例えば、C3-20シクロアルケン環、好ましくはC6-20シクロアルケン環、特にシクロヘキセン環)を含有する化合物であることが好ましい。上記オレフィンは、1又は複数のシクロアルケン環(特にシクロヘキセン環)を有していてもよい。
【0070】
代表的な上記オレフィンには、例えば、下記式(a)
【化7】

(式(a)中、R5は、水素原子又はアルキル基を示し、R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基を示す。)
で表される化合物や、下記式(b)
【化8】

(式(b)中、R7は単結合、又は、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基を示す。R5は前記に同じ。p及びqは、同一又は異なって、0又は1以上の整数である)
で表される化合物などが含まれる。なお、p及びqが0であり、R7が単結合である場合には、上記式(b)で表される化合物は、2つのシクロヘキセン環が直接結合した構造を有する。
【0071】
7で示される直鎖又は分岐鎖状アルキレン基(アルキリデン基も含む)としては、例えば、置換基を有していてもよいアルカン(たとえば、エタン、プロパン、イソペンタン、2,2−ジメチルプロパンなどのC1-20アルカンなど)に対応する2価の基[具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖又は分岐鎖状C2-20アルキレン基(またはアルキリデン基)]などが挙げられる。また、上記式(b)においてp及びqは、1であることが好ましい。
【0072】
具体的には、上記オレフィンには、例えば、上記式(a)において、R5及びR6が水素原子であるシクロヘキセン、R5が水素原子であり、R6がメトキシカルボニル基であるシクロヘキサ−3−エンカルボン酸メチル(下記式(a−1))、R5が水素原子であり、R6がアリル基である4−アリルシクロヘキセン(下記式(a−2))、R5がメチル基であり、R6がビニル基である2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン(下記式(a−3))、R5がメチル基であり、R6がイソプロペニル基である2−メチル−4−(2−プロペニル)シクロヘキセン(下記式(a−4));上記式(b)において、R5が水素原子であり、R7がメチレン基であり、pが1、qが0であるシクロヘキサ−3−エンカルボン酸シクロヘキセニルメチル(下記式(b−1))、R5が水素原子であり、R7が2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイルであり、p及びqが1であるビス[1,3−(シクロヘキサ−3−エンカルボン酸)]−2,2−ジメチルプロピルエステル(下記式(b−2))、R5がメチル基であり、R7が2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイルであり、pおよびqが1であるビス[1,3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸)]−2,2−ジメチルプロピルエステル[4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸=2,2−ジメチル−3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボニルオキシ)プロピル](下記式(b−3))、及び、ビス[1,3−(3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸)]−2,2−ジメチルプロピルエステル[3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸=2,2−ジメチル−3−(3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボニルオキシ)プロピル](下記式(b−4))などが含まれる。
【0073】
【化9】

【0074】
例えば、オレフィンとして、上記式(b−1)で表されるシクロヘキサ−3−エンカルボン酸シクロヘキセニルメチルを用いると、対応するエポキシ化合物(下記式(c)で表される3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)が得られる。また、オレフィンとして、上記式(a−3)で表される2−メチル−4−ビニルシクロヘキセンを用いると、対応するエポキシ化合物(下記式(d−1)で表されるモノエポキシ体及び下記式(d−2)で表されるジエポキシ体)が得られる。さらに、オレフィンとして、上記式(b−3)で表されるビス[1,3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸)]−2,2−ジメチルプロピルエステル[4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸=2,2−ジメチル−3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボニルオキシ)プロピル]を用いると、対応する下記式(e)で表されるエポキシ化合物が得られる。また、オレフィンとして、上記式(b−4)で表されるビス[1,3−(3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸)]−2,2−ジメチルプロピルエステル[3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボン酸=2,2−ジメチル−3−(3−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボニルオキシ)プロピル]を用いると、対応する下記式(f)で表されるエポキシ化合物が得られる。
【0075】
【化10】

【0076】
(過酸化水素)
酸化剤として使用する過酸化水素(又は過酸化水素水溶液)は、慣用の方法で合成してもよく、市販品を用いてもよい。過酸化水素水溶液を使用する場合の過酸化水素の濃度は、特に限定されないが、取り扱い性などの観点から、20〜70w/v%が好ましく、より好ましくは22〜67w/v%、さらに好ましくは25〜65w/v%である。
【0077】
上記過酸化水素(実質的に添加する過酸化水素)の使用量は、特に限定されないが、上記有機化合物(オレフィン等)1モルに対して、0.1〜10モルが好ましく、より好ましくは0.2〜8モル、さらに好ましくは0.3〜5モルである。
【0078】
(本発明の酸化反応用触媒の使用量)
本発明の酸化化合物の製造方法では、有機化合物の酸化反応における触媒として、本発明の酸化反応用触媒を使用する。本発明の酸化反応用触媒における本発明の第四級アンモニウム塩の使用量は、特に限定されないが、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)の被酸化基(例えば、オレフィンの炭素−炭素二重結合等)1モルに対し、0.01〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.03〜3モル%、さらに好ましくは0.05〜2モル%である。本発明の第四級アンモニウム塩の使用量が0.01モル%未満であると、酸化反応の進行が遅くなったり、反応後の反応溶液における生成物と酸化反応用触媒の分離の効率が低下する場合がある。
【0079】
また、本発明の酸化反応用触媒がヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含む場合、その使用量(前駆化合物の場合にはヘテロポリ酸若しくはその塩1モルに相当する量)は、特に限定されないが、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)の被酸化基(例えば、オレフィンの炭素−炭素二重結合等)1モルに対し、0.01〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.03〜3モル%、さらに好ましくは0.05〜2モル%である。本発明の第四級アンモニウム塩の使用量が0.01モル%未満であると、酸化反応の進行が遅くなる場合がある。
【0080】
また、本発明の酸化反応用触媒が上記前駆化合物を含み、上記前駆化合物として、上記金属化合物とヘテロ原子を含む化合物との組み合わせを用いる場合、ヘテロ原子を含む化合物の使用量は、特に限定されないが、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)の被酸化基(例えば、オレフィンの炭素−炭素二重結合等)1モルに対し、0.05〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜7モル%、さらに好ましくは0.2〜4モル%である。
【0081】
本発明の酸化化合物の製造方法における酸化反応(エポキシ化反応等)は、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)を含む有機相と、水相(本発明の酸化反応用触媒がヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含む場合には、これらが含まれる)とで構成される2相系溶液に、過酸化水素又はその水溶液を添加して進行させることが好ましい。なお、本発明の酸化反応用触媒における本発明の第四級アンモニウム塩の水相及び有機相それぞれにおける存在割合は、構造及び温度等に依存する。
【0082】
酸化反応では、反応中の酸素発生速度を抑える目的から、本発明の酸化反応用触媒及び被酸化物である有機化合物(オレフィン等)(これらを総称して「原料」と称する場合がある)、並びにその他の成分(例えば、ハイドロキノン類など)を混合した後、得られる混合溶液に過酸化水素を添加することによって、酸化反応(エポキシ化反応等)を開始させるべきである。なお、各原料を添加し混合する場合、各原料において、全量を一括して(又は一回で)添加してもよく、回分して(又は複数回に分けて)添加してもよい。なお、過酸化水素を添加する場合、全量を一括して(又は一回で)添加した場合、反応熱による反応溶液の急激な温度上昇、及びそれに伴う過酸化水素の分解を抑制するため、回分して(又は複数回に分けて)添加するのが望ましい。過酸化水素を回分して(又は複数回に分けて)添加する方法は、特に限定されないが、例えば、過酸化水素を反応溶液に滴下する方法を利用すると、容易に反応速度を調整でき、反応溶液の急激な温度上昇を有効に防止することができる。
【0083】
酸化反応(エポキシ化反応等)は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の存在下で行う場合が多い。なお、上記酸化反応では、過酸化水素を用いて酸化するため、溶媒には、通常、水性溶媒が含まれる。水性溶媒としては、通常、水が使用される。
【0084】
また、上記酸化反応では、上記溶媒は、上記水性溶媒と有機溶媒との混合溶媒であることが好ましい。有機溶媒は、水性溶媒と分液可能である限り、特に限定されず、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、シクロプロパノール、シクロヘキサノールなどのシクロC3-10アルカノール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル(鎖状エステル)類;炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類);クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール類などが挙げられる。上記有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの有機溶媒のうち、反応効率の観点から、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼンなど)が好ましく、特に、クロロベンゼン、トルエンが好ましい。
【0085】
水性溶媒と有機溶媒との割合は、特に限定されないが、前者/後者(重量比)90/10〜5/95の範囲から選択することが好ましく、より好ましくは85/15〜10/90、さらに好ましくは80/20〜15/85、特に好ましくは75/25〜20/80である。また、有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、被酸化物である有機化合物(オレフィン等)1重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.2〜5重量部)である。
【0086】
反応温度(又は反応系の温度)は、特に限定されないが、過酸化水素の分解による酸素発生を考慮し、50〜70℃が好ましく、より好ましくは55〜65℃である。反応温度が70℃を超えると酸素の発生が顕著となり、安全に製造することが困難になる。また、上記反応は、常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行うこともできる。
【0087】
また、反応系(水相)のpHは、特に限定されないが、2〜7が好ましく、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは3.5〜6.5である。
【0088】
反応時間は、特に限定されないが、余剰酸素の発生を避けるため、目的の酸化物が生成した後、速やかに反応を終了させることが好ましい。
【0089】
なお、得られた酸化化合物(エポキシ化合物等)は、目的に応じ、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により原料等から分離精製することができる。
【0090】
[酸化反応用触媒の分離方法]
本発明の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化化合物を生成させた後の反応溶液中の上記酸化化合物からの上記酸化反応用触媒の分離は、上記反応溶液の温度制御により上記酸化反応用触媒を選択的に水相に分配させる工程と、その後、分液操作により上記反応溶液の有機相と水相を分離する工程とを少なくとも含む方法(「本発明の酸化反応用触媒の分離方法」と称する場合がある)により実施できる。これは、反応溶液(通常、有機相と水相の二相系の溶液である)における本発明の酸化反応用触媒の有機相・水相への分配割合が、反応溶液の温度により大きく変化し、本発明の酸化反応用触媒が実質的に有機相に分配されない温度が存在することによる。このような特性は、本発明の第四級アンモニウム塩の有機相・水相への分配割合が温度に大きく依存し、本発明の第四級アンモニウム塩が実質的に有機相に分配されない温度が存在し、当該温度においては、本発明の第四級アンモニウム塩とともに、本発明の酸化反応用触媒における酸化反応触媒(例えば、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物)も選択的に水相へ分配されることによるものと推測される。即ち、本発明の第四級アンモニウム塩が、上記酸化反応触媒を上記酸化化合物から分離させる機能を発揮するものと推測される。
【0091】
従って、本発明の酸化反応用触媒を用いた酸化化合物の製造方法においては、主に、温度制御と分液操作によって生成物と本発明の酸化反応用触媒を分離することができるため、ろ過操作なしで本発明の酸化反応用触媒の回収・再使用(逆を言えば、生成物としての酸化化合物の精製)が可能であり、経済的に非常に有利である。特に、酸化反応触媒としての金属原子を含む化合物(例えば、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物)と生成物との分離は、一般的に非常に困難であるが、本発明の酸化反応用触媒を用いると、上述の分離方法(本発明の酸化反応用触媒の分離方法)により、上記酸化反応触媒(例えば、ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物)と生成物の分離を容易に行うことができるため、非常に有益である。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0093】
製造例1
[下記式(1b−1)で表される化合物の製造]
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(20.0g、57.1mmol)及びトリエチルアミン(17.5g、171mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させた溶液に、40℃において、塩化メタンスルホニル(7.22g、62.9mmol)を加え、60℃まで徐々に昇温して攪拌した。1時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた黄色のスラリーにジクロロメタン20mLを加えることで固体を析出させ、これをろ過して除去した。ろ液を減圧下で濃縮した後、1時間真空乾燥することで、下記式(1b−1)で表される目的物(収量:22.8g、収率:93%)を黄色液体として得た。
【化11】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ3.38(s,3H,CH3)、3.55(dd,2H,J=3.0,6.4Hz,CH2)、3.62−3.69(m,26H,CH2)、3.76(t,2H,J=6.4Hz,CH2).
【0094】
製造例2
[下記式(1b−2)で表される化合物の製造]
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(5.00g、30.5mmol)及びトリエチルアミン(5.03g、45.8mmol)をジクロロメタン30mLに溶解させた溶液に、40℃において、塩化メタンスルホニル(3.85g、33.5mmol)を加え、攪拌した。15分後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた黄色の固体を酢酸エチルに溶解させ、これをシリカゲルカラム(100g、酢酸エチル)に通すことで精製し、下記式(1b−2)で表される目的物(収量:7.29g、収率:93%)を黄色液体として得た。
【化12】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ3.08(s,3H,CH3)、3.38(s,3H,CH3)、3.53−3.55(m,2H,CH2)、3.63−3.69(m,6H,CH2)、3.76−3.78(m,2H,CH2)、4.38−4.39(m,2H,CH2).
【0095】
製造例3
[下記式(1b−3)で表される化合物の製造]
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(10.0g、28.6mmol)及びピリジン(2.55g、32.2mmol)をクロロホルム20mLに溶解させた溶液に、室温下、塩化チオニル(4.08g、34.3mmol)をクロロホルム9.0mLに溶解させた溶液を加え、60℃において攪拌した。1時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、クロロホルム(100mL×2)を用いて抽出した。有機相を水洗(300mL×1)し、硫酸マグネシウム(50.0g)を用いて乾燥させた。固体をろ過後、ろ液を減圧下で濃縮することで、黄色の液体(11.0g)を得た。
上記で得た黄色の溶液をアセトン(29mL)に溶解させ、室温下でヨウ化ナトリウム(4.29g、28.6mmol)を加え、60℃において攪拌した。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させた後、シリカゲルカラム(20.0g、酢酸エチル)に通すことで精製し、下記式(1b−3)で表される目的物(収量:12.9g、2ステップを通しての収率:98%)を黄色液体として得た。
【化13】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ3.35(m,1H,CH2)、3.42−3.50(m,4H,CH3 and CH2)、3.59−3.94(m,28H,CH2).
【0096】
実施例1
[下記式(1−1)で表される化合物(「PTC−1」と称する)の製造]
N,N−ジメチル−N−オクタデシルアミン(6.19g、20.2mmol)をイソブチルケトン(10mL)に溶解させた溶液に、100℃において上記式(1b−3)で表される化合物(6.48g、14.1mmol)を加え、還流させた。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラム(150g、ジクロロメタン/メタノール/NH3aq.=19/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−1)で表される目的物(収量:2.64g、収率:24.7%)を黄色液体として得た。
【化14】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.88(t,3H,J=7.0Hz,CH3)、1.24−1.37(m,30H,CH2)、1.72−1.79(m,2H,CH2)、3.375(s,3H,CH3)、3.379(s、6H、CH3)、3.54−3.69(m,26H,CH2)、3.89−3.91(m,2H,CH2)、3.99−4.01(m,2H,CH2).
【0097】
実施例2
[下記式(1−2)で表される化合物(「PTC−2」と称する)の製造]
上記式(1b−1)で表される化合物(12.3g、28.6mmol)をメチルイソブチルケトン(5g)に溶解させた溶液に、100℃においてN,N−ジメチル−N−オクタデシルアミン(5.67g、19.0mmol)を加え、還流させた。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラム(100g、クロロホルム/メタノール=10/1〜ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=10/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−2)で表される目的物(収量:13.4g)を黄色液体として得た。
【化15】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.88(t,3H,J=6.5Hz,CH3)、1.23−1.37(m,30H,CH2)、1.72−1.83(m,2H,CH2)、3.369(s,3H,CH3)、3.373(s、3H、CH3)、3.38(s,3H,CH3)、3.53−3.56(m,4H,CH2)、3.60−3.67(m,26H,CH2)、3.72(m,1H,CH2)、3.95−3.99(m,4H,CH2).
【0098】
実施例3
[下記式(1−3)で表される化合物(「PTC−3」と称する)の製造]
上記式(1b−1)で表される化合物(2.06g、4.67mmol)をメチルイソブチルケトン(1.2g)に溶解させた溶液に、100℃においてN,N,N−トリオクチルアミン(2.52g)を加え、還流させた。16時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラム(100g、ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=14/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−3)で表される目的物(収量:1.48g、1.89mmol)を黄色液体として得た。
【化16】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.89(t,9H,J=7.0Hz,CH3)、1.23−1.38(m,30H,CH2)、1.58−1.94(m,6H,CH2)、2.75(s,3H,CH3)、3.28−3.31(m、6H、CH2)、3.38(s,3H,CH3)、3.54−3.69(m,26H,CH2)、3.80−3.82(m,2H,CH2)、3.91−3.93(m,2H,CH2).
【0099】
実施例4
[下記式(1−4)で表される化合物(「PTC−4」と称する)の製造]
PTC−2(3.34g、4.60mmol)、塩化ナトリウム(0.791g、12.34mmol)、及び塩化カリウム(0.920g、12.34mmol)の水溶液(20mL)を50℃において2時間攪拌した。その後、反応混合物にメタノールを加え、減圧下で濃縮した。得られたスラリーに酢酸エチルを加え、セライトを通すことで固体を除去した。ろ液を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラム(66.8g、ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=20/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−4)で表される目的物(収量:1.18g、収率:24.2%)を黄色液体として得た。
【化17】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.88(t,3H,J=7.0Hz,CH3)、1.25−1.36(m,30H,CH2)、1.72−1.80(m,2H,CH2)、3.30(s,3H,CH3)、3.38(s、6H、CH3)、3.47−3.51(m,2H,CH2)、3.54−3.56(m、2H、CH2)、3.61−3.66(m,24H,CH2)、3.84−3.86(m,2H,CH2)、3.98−4.00(m,2H,CH2).
【0100】
実施例5
[下記式(1−5)で表される化合物(「PTC−5」と称する)の製造]
PTC−3(1.48g、1.89mmol)、塩化ナトリウム(0.221g、3.78mmol)、及び塩化カリウム(0.282g、3.78mmol)の水溶液(2mL)を50℃において2時間攪拌した。その後、反応混合物にメタノールを加え、減圧下で濃縮した。得られたスラリーに酢酸エチルを加え、セライトを通すことで固体を除去した。ろ液を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラム(20g、ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=20/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−5)で表される目的物(収量:1.08g、収率:79%)を黄色液体として得た。
【化18】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.89(t,9H,J=7.0Hz,CH3)、1.24−1.36(m,30H,CH2)、1.67−1.71(m,6H,CH2)、3.33−3.36(m,4H,CH2)、3.38(s、3H、CH3)、3.54−3.56(m,2H,CH2)、3.60−3.67(m,26H,CH2)、3.91−3.93(m,2H,CH2)、3.96−3.98(m,2H,CH2).
【0101】
実施例6
[下記式(1−6)で表される化合物(「PTC−6」と称する)の製造]
上記式(1b−2)で表される化合物(12.3g、28.6mmol)をメチルイソブチルケトン(5g)に溶解させた溶液に、100℃においてN,N−ジメチル−N−オクタデシルアミン(5.67g、19.0mmol)を加え、還流させた。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラム(100g、クロロホルム/メタノール=10/1〜ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=10/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−6)で表される化合物(収量:13.7g、収率:86%)を黄色液体として得た。
【化19】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.87(t,3H,J=7.0Hz,CH3)、1.26−1.34(m,30H,CH2)、1.73−1.75(m,2H,CH2)、2.74(s,3H,CH3)、3.36(s,3H,CH3)、3.40(s、6H、CH3)、3.51−3.57(m,4H,CH2)、3.60−3.64(m,4H,CH2)、3.66−3.69(m,2H,CH2)、3.93−3.95(m,2H,CH2)、3.98−3.99(m,2H,CH2).
【0102】
実施例7
[下記式(1−7)で表される化合物(「PTC−7」と称する)の製造]
PTC−6(3.34g、6.17mmol)、塩化ナトリウム(0.721g、12.3mmol)、及び塩化カリウム(0.920g、12.3mmol)の水溶液(20mL)を50℃において2時間攪拌した。その後、反応混合物にメタノールを加え、減圧下で濃縮した。得られたスラリーに酢酸エチルを加え、セライトを通すことで固体を除去した。ろ液を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラム(69g、ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン=20/1/1)に通すことで精製し、下記式(1−7)で表される目的物(収量:1.18g、収率:34%)を黄色液体として得た。
【化20】

1HNMR(500MHz、CDCl3):δ0.89(t,3H,J=7.0Hz,CH3)、1.25−1.39(m,30H,CH2)、1.68−1.72(m,2H,CH2)、3.36−3.39(m,2H,CH2)、3.37(s、6H、CH3)、3.52−3.54(m,2H,CH2)、3.60−3.62(m,4H,CH2)、3.65−3.68(m,2H,CH2).
【0103】
実施例8
[PTC−1を相間移動触媒として用いた3−ビニルシクロヘキセンのエポキシ化反応]
りん酸二水素ナトリウム・二水和物(1.21g、7.77mmol)、及びりん酸水素二ナトリウム・十二水和物(0.330g、0.924mmol)の水溶液(6.66g)に、85%りん酸(0.190g、1.94mmol)、及びタングステン酸ナトリウム・二水和物(0.642g、1.94mmol)を加え、攪拌した。これを、室温下、3−ビニルシクロヘキセン(VCH;10.0g、92.4mmol)、PTC−1(0.385g、0.508mmol)、及びメトキノン(4.00mg)のトルエン溶液(46.9g)に加え、攪拌した。10分後、60℃まで昇温させ、35%過酸化水素(6.92g、71.2mmol)を加え、攪拌した。5時間後、反応混合物を分液し、有機相を減圧下で濃縮した。得られた液体の組成を1HNMR(500MHz,CDCl3)により解析したところ、VCHと1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンの二成分混合物であることがわかった。また、VCHの転化率は38%であった。
【0104】
[温度応答性の評価]
酸化反応用触媒の有機相への分配挙動の温度応答性(温度依存性)を下記の手順で評価した。
タングステン酸ナトリウム・二水和物(1.94mmol)、85%りん酸(2.31mmol)、及びりん酸水素二ナトリウム・十二水和物(0.462mmol)の水溶液(6.40g)に、下記水準1〜4に示す第四級アンモニウム塩(0.508mmol)を下記水準1〜4に示す有機溶媒(10.0g)に溶解させた溶液を加え、30℃において攪拌した。10分後に攪拌を停止し、30分〜1時間程度静置した。上層と下層が完全に分離したことを確認した上で、上層(有機相)を約0.010g分取し、約40gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。引き続き、同様の操作(攪拌、静置、上層の分取、DMFへの溶解)を、40℃、60℃、80℃の加熱下においても実施し(40℃、60℃、80℃の順で実施した)、80℃でのサンプリング(分取及びDMFへの溶解)を終えた後、溶液を30℃まで冷却し、上層をサンプリングした。この操作によって、下記の水準1〜4ごとに5つのサンプル(温度30℃、40℃、60℃、80℃、30℃:計20個)を用意し、それぞれのサンプルに含まれるタングステンの量(含有タングステン量)をICP(ICP発光分析)によって分析した。分析結果を図1に示す。なお、図1の表における横軸は温度、縦軸はタングステンの有機相への存在比率(%)(=100×[有機相に存在するタングステンの量]/([有機相に存在するタングステンの量]+[水相に存在するタングステンの量]))を表す。
・水準1
第四級アンモニウム塩:PTC−1
有機溶媒:トルエン
・水準2
第四級アンモニウム塩:PTC−2
有機溶媒:トルエン
・水準3
第四級アンモニウム塩:PTC−2
有機溶媒:クロロベンゼン
・水準4
第四級アンモニウム塩:N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウム クロリド(BDMSAC)
有機溶媒:トルエン
【0105】
図1に示すように、本発明の第四級アンモニウム塩(PTC−1、PTC−2)を相間移動触媒として含む酸化反応用触媒においては、タングステンの有機相への分配挙動が温度により著しく変化し、タングステンの有機相への分配がほぼ起こらない温度が存在することがわかった。従って、本発明の第四級アンモニウム塩を相間移動触媒として含む酸化反応用触媒を使用すると、有機相に存在する生成物とタングステン(酸化反応触媒)との分離を有機相と水相の分液により行うことが可能である。
一方、相間移動触媒としてBDMSACを含む酸化反応用触媒においては、タングステンの有機相への分配挙動の温度依存性はほとんど観測されず、いずれの温度においても、タングステンが有機相に40%程度分配されていた。従って、有機相と水相の分液による生成物とタングステンの分離を行うことは困難である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。R4は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。nは1〜20の整数である。]
で表される第四級アンモニウム塩。
【請求項2】
相間移動触媒として請求項1に記載の第四級アンモニウム塩を含むことを特徴とする有機化合物の酸化反応用触媒。
【請求項3】
ヘテロポリ酸若しくはその塩又はこれらの前駆化合物を含む請求項2に記載の酸化反応用触媒。
【請求項4】
前記ヘテロポリ酸若しくはその塩が、リン原子、並びに、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含むヘテロポリ酸若しくはその塩である請求項3に記載の酸化反応用触媒。
【請求項5】
前記前駆化合物が、タングステン、マンガン、モリブデン、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含む無機酸又はその塩、並びに、リン原子含有オキソ酸又はその塩を含む請求項3に記載の酸化反応用触媒。
【請求項6】
前記有機化合物の酸化反応が、過酸化水素によるオレフィンのエポキシ化反応である請求項2〜5のいずれか1項に記載の酸化反応用触媒。
【請求項7】
請求項6に記載の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素によりオレフィンの炭素−炭素二重結合をエポキシ化し、エポキシ化合物を生成させる工程を含むことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の酸化反応用触媒の存在下、過酸化水素により有機化合物を酸化し、酸化化合物を生成させた後の反応溶液中の前記酸化化合物から、前記酸化反応用触媒を分離する方法であって、前記反応溶液の温度制御により前記酸化反応用触媒を選択的に水相に分配させる工程と、その後、分液操作により前記反応溶液の有機相と水相とを分離する工程とを含むことを特徴とする酸化反応用触媒の分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−112639(P2013−112639A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260212(P2011−260212)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】