説明

第2族金属酸化物膜の堆積のための第2族金属前駆体

【課題】第2族アルカリ土類金属含有酸化物膜などの化学気相成長(CVD)に使用する新規な金属前駆体の揮発源の提供。
【解決手段】ジケトン化合物とアミン化合物から得られるβ−ケトエナミン化合物(例えば2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンなど)とストロンチウム、バリウムなどの第2族金属化合物とから調整された第2族金属含有多座配位β−ケトイミネート前駆体及び該前駆体を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、例えばサイクリック化学気相成長法(CCVD)又は原子層成長法(ALD)などの化学気相成長法(CVD)のプロセスにおいて、第2族金属含有酸化物の層を半製品の半導体基板上に堆積させるために使うのに適した、第2族金属−有機物の錯体(複合体)及びそれらの液体組成物に関する。より詳細には、第2族金属−有機物の錯体は、有機的な特性を有し、かつ環境条件で安定である多座配位β−ケトイミネート配位子を含む。
【背景技術】
【0002】
半導体工業では、第2族アルカリ土類金属含有酸化物膜などの化学気相成長(CVD)において使うための、異なる金属前駆体の揮発源に対する需要が高まっている。そのような金属源に必要とされる重要な性質は、対象基板上へ膜を堆積させるために制御された態様で分解できる金属含有蒸気を生じさせるために、それらが容易に蒸発するか、又は昇華することである。この用途だけでなく、他の用途でも、アルカリ土類化合物が、昇華及び堆積場所への移動を促進する高揮発性を有すること、それらが、450℃のオーダーのものなどの比較的低い温度で、酸化剤の有無によらず、熱的に膜を堆積できること、そして特定の適用範囲に対して、それらが酸化物の形態で堆積し、かつ例えばカーボネートなどの他の分解物の形態では堆積しないことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アルカリ土類金属β−ジケトイミネート及び特定の誘導体が、CVD法において既に使われている。アルカリ土類金属及び多座配位子の錯体は、前駆体として先行技術において採用されているが、そのような錯体は主に多量体(通常、その揮発性及び安定性は十分ではない)として存在する。それ故に、半導体製造工業では、これらの金属含有前駆体を使用して、ケイ素、金属窒化物、金属酸化物及び他の金属含有層などの基板上に共形(コンフォーマル)な金属含有膜を形成するための、原子層成長(「ALD」)を含有するCVDプロセスのための前駆体を含む新規な金属源が引き続き要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明は、構造式A:
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基、及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;そしてRは、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)、
【0007】
構造式B:
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基、及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり、それ故に金属中心と5員又は6員の配位環を形成し;そしてn=3、4、5である。)、並びに
【0010】
構造式C:
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;Rは、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり;そしてR及びRは、それぞれ独立してC〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)
【0013】
からなる群から選択される多座配位β−ケトイミネートを提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、フルオロアルキル基を含まない上述の多座配位β−ケトイミネートを提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、化学気相成長法又は原子層成長法により基板上に第2族金属含有膜を堆積させるために使うのに適した液体組成物であって、本発明による多座配位β−ケトイミネート;並びに脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ニトリル、有機エステル、有機アミン、ポリアミン、有機アミド、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの結晶構造を示す図である。
【図2】ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウム(実線)対2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オン(破線)のTGAを示す図である。
【図3】ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの結晶構造を示す図である。
【図4】ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムのTGAを示す図である。
【図5】ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)バリウムの結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、第2族金属含有多座配位β−ケトイミネート前駆体及び第2族金属含有多座配位β−ケトイミネート前駆体を含む組成物に関し、この多座配位β−ケトイミネート前駆体は、分子のイミノ部分中にアルコキシ基を組み込んでいる。この化合物及び組成物は、化学気相成長法(CVD)によってケイ素、金属窒化物、金属酸化物及び他の金属層などの基板上に金属含有膜を形成するのに有用である。本明細書では、用語「化学気相成長法」とは、基板が、基板表面上で反応及び/又は分解して好ましい堆積を提供する1つ以上の揮発性前駆体に曝される任意の方法をいう。例としては、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、低圧化学気相成長法(LPCVD)、直接液体注入化学気相成長法(DLCVD)、ホットワイヤー化学気相成長法(HWCVD)、サイクリック化学気相成長法(CCVD)、分子層堆積法(MLD)、原子層成長法(ALD)、及び金属−有機物化学気相成長法(MOCVD)が挙げられる。堆積した金属膜(それは第2族金属酸化物膜を含む)には、コンピューターチップ、光学素子、磁気情報媒体から、支持材料上にコーティングされた金属触媒までの様々な用途がある。
【0018】
本発明の金属含有多座配位β−ケトイミネート前駆体は、元素の周期表の第2族金属を含む。第2族金属としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、第2族金属は、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムである。本発明のより好ましい実施形態では、第2族金属は、ストロンチウム又はバリウムである。
【0019】
好ましくは、本発明による多座配位β−ケトイミネートは、イミノ基中にアルコキシ基を組み込んでいる。多座配位β−ケトイミネートは、構造式A、B及びCによって表される群から選択される。構造式Aは、
【0020】
【化4】

【0021】
として規定される。
式中、Mは、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどの第2族金属である。好ましくは、Mは、ストロンチウム又はバリウムである。本発明の錯体に利用される有機基(すなわち、R基)は、各種の有機基を含んでよく、それらは、直鎖又は分岐鎖でよい。好ましい実施形態では、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。本明細書では、「アルコキシアルキル」基とは、C−O−C部分を含むエーテル状の部分をいう。例としては、−CHCH−O−CHCH−O−CH及び−CHCH−O−CH−O−CHが挙げられる。好ましくは、Rは、例えばtert‐ブチル基、sec−ブチル及びtert−ペンチル基などの4〜6個の炭素原子を含むかさ高いアルキル基である。最も好ましいR基は、tert‐ブチル又はtert−ペンチルである。好ましくは、Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、Rは、水素、又はC〜Cアルキルである。好ましくは、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、RはC〜Cアルキルである。好ましくは、RはC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレンであり、より好ましくは、Rは、3又は4個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の不斉中心炭素原子を有する分岐鎖アルキレン架橋基を含む。特定の理論に結び付けようとしなくても、配位子内の不斉中心が、融点を下げるだけでなく、錯体の熱安定性を向上させる役割を担うことが分かる。好ましくは、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、RはC〜Cアルキルである。
【0022】
構造式Bは、
【0023】
【化5】

【0024】
として規定される。
式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される第2族金属であり、nは4、5、又は6である。好ましくは、Mはストロンチウム又はバリウムである。本発明の錯体に利用される有機基(すなわち、R基)は、各種の有機基を含んでよい。好ましい実施形態では、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。好ましくは、Rは、例えばtert‐ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ペンチル基などの、4〜6個の炭素原子を含むかさ高いアルキル基である。最も好ましいR基は、tert‐ブチル又はtert−ペンチルである。好ましくは、Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され、より好ましくは、Rは、水素、C〜Cアルキルである。好ましくは、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、RはC〜Cアルキルである。好ましくは、RはC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレンであり、より好ましくは、Rは2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり、それ故に、金属中心と5員又は6員の配位環を形成し、そしてn=3、4、又は5である。好ましい実施形態では、Rは、
【0025】
【化6】

【0026】
又は
【0027】
【化7】

【0028】
である。
【0029】
構造式Cは、
【0030】
【化8】

【0031】
として規定される。
式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選択される第2族金属である。好ましくは、Mはストロンチウム又はバリウムである。本発明の錯体に利用される有機基(すなわち、R基)は、各種の有機基を含んでよい。好ましい実施形態では、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。好ましくは、Rは、例えばtert‐ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ペンチル基などの、4〜6個の炭素原子を含むかさ高いアルキル基である。最も好ましいR基は、tert‐ブチル又はtert−ペンチルである。好ましくは、Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、Rは水素又はC〜Cアルキルである。好ましくは、Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。より好ましくは、RはC〜Cアルキルである。好ましくは、Rは、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレン、C〜C10フルオロアルキレン及びC〜C10アリールからなる群から選択され、より好ましくは、Rは2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり、それ故に金属中心と5員又は6員の配位環を形成する。好ましい実施形態では、Rは、
【0032】
【化9】

【0033】
又は
【0034】
【化10】

【0035】
である。
【0036】
好ましくは、R及びRは、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、上述の構造式A、B及びCの化合物は、フルオロアルキル基を含まない。
【0038】
本発明による多座配位β−ケトイミネート配位子は、例えば、ジケトンを提供するための、ナトリウムのアミド又は水素化物などの強塩基の存在下における、かさ高いケトン及びエチルエステルのクライゼン縮合などの周知の手法と、その後に続くアルコキシアルキルアミンとのシッフ塩基縮合反応などの別の既知の手法によって、調製され得る。例えば、シッフ塩基縮合反応は下記に示される。
【0039】
【化11】

【0040】
得られた配位子は、液体の真空蒸留又は固体の結晶化によって精製され得る。上述のように、かさ高いR基が、シッフ縮合において起こる副反応を防ぎ、その後に金属中心を分子間相互作用から守るので、かさ高いR基、例えば、ケトン官能基に結合した炭素に付いている水素のないC4〜10分岐鎖アルキル基を利用することが好ましい。しかし、注目すべきは、多座配位子中のR1−6基が、得られた金属含有錯体の分子量(それは、錯体が十分に高い蒸気圧を有することを可能にする)を下げるために、できる限り小さくなるべきであるということである。
【0041】
次に、本発明の金属含有錯体は、下記に示すように、溶媒中での多座配位ケトイミナート配位子と金属アルコキシドの反応によって、調製され得る。
【0042】
【化12】

【0043】
金属Mは、上記で規定されたとおりである。好ましくは、金属アルコキシドのオキシド部分は、メトキシド、エトキシド、イソ−プロポキシド、n−プロポキシド、tert−ブトキシド、sec−ブトキシド、イソ−ブトキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、この金属アルコキシドは、ストロンチウムイソ−プロポキシドである。
【0044】
本発明による反応に用いるための適切な溶媒としては、例えば、THF、トルエン、ヘキサン、エーテル及びこれらの混合物が挙げられる。THFが好ましい溶媒である。好ましい実施形態では、本発明による反応は、約10℃〜約150℃の温度で起こる。好ましい実施形態では、この反応は、大気温度において、又は溶媒の沸点での還流によって起こる。
【0045】
構造式A、B及びCのそれぞれの化合物は、室温では固体であり、これらの固体は結晶化又は昇華によって精製できる。
【0046】
500℃未満の温度でCVD法、CCVD法又はALD法のいずれかによって、金属酸化物薄膜を形成するために、前駆体として、本発明による多座配位β−ケトイミネート配位子を有する第2族金属含有錯体を利用してよい。CVD法は、酸化剤の有無によらず行うことができるのに対して、ALD法又はCCVD法は、通常、酸化剤などの別の反応剤の利用を伴う。
【0047】
化学気相成長法又は原子層成長法のための酸化剤としては、酸素、過酸化水素及びオゾン並びにプラズマ酸素が挙げられる。多成分の金属酸化物については、本発明による第2族金属含有錯体が同じ多座配位β−ケトイミネート配位子を有するならば、それらの錯体を予め混合できる。多座配位β−ケトイミネート配位子を有するこれらの第2族金属含有錯体は、周知のバブリング又はベーパードロー(vapor draw)法によって、例えばCVD又はALDの反応器中に、蒸気相として送達され得る。利用される溶媒又は混合溶媒に応じて、0.001〜2Mのモル濃度を有する溶液を調製するために、適切な溶媒又は溶媒混合物中に錯体を溶解させることにより、直接液体送達法も利用できる。
【0048】
堆積プロセスに用いるための前駆体を可溶化させるのに利用される溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ニトリル及びアルコールなどの任意の相溶性溶媒又はそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、溶液の溶媒成分は、1〜20個のエトキシ−(CO)−繰り返し単位を有するグリム溶媒;C〜C12アルカノール、C〜Cアルキル部分を含むジアルキルエーテル、C〜C環状エーテル;C12〜C60クラウンO〜O20エーテル(式中、接頭のCの範囲は、エーテル化合物中の炭素原子の数iであり、接尾のOの範囲は、エーテル化合物中の酸素原子の数iである)からなる群から選択される有機エーテル;C〜C12脂肪族炭化水素;C〜C18芳香族炭化水素;有機エステル;有機アミン、ポリアミン及び有機アミドからなる群から選択される溶媒を含む。
【0049】
利点をもたらす別の種類の溶媒は、式RCONR’R”[式中、R及びR’は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは結合して環状基(CH(式中、nは4〜6、好ましくは5である)を形成でき、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及びシクロアルキルから選択される]の有機アミド類である。例えば、N−メチル−又はN−エチル−又はN−シロクヘキシル−2−ピロリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド及びN,N−ジエチルホルムアミドである。
【0050】
本発明の方法の一実施形態では、CCVD、ALD、又はPEALDなどのサイクリックな堆積プロセスを利用してよい。その際には、第2族金属含有錯体又はその溶液、及び、例えば、オゾン、酸素プラズマ又は水プラズマなどの酸化剤が利用される。前駆体の小型容器から反応チャンバにつながっているガス管は約190℃に加熱され、そして第2族金属含有錯体の容器は、バブリングのために約190℃に保たれるのに対して、その溶液は直接液体注入のために180℃に保たれた噴霧器中に注入される。好ましくは、前駆体のパルス導入中に第2族金属含有錯体の蒸気を反応チャンバに運び易くするために、100sccmのアルゴンガスが、キャリアガスとして利用される。反応チャンバのプロセス圧力は、約1Torrである。典型的なALD又はCCVDプロセスでは、酸化ケイ素又は金属窒化物などの基板は、反応チャンバ中の試料加熱台上で加熱され、錯体を基板の表面上へ化学的に吸着させるために、最初に第2族金属含有錯体に曝露される。アルゴンガスなどの不活性ガスが、処理チャンバから未吸着の過剰な錯体をパージする。十分なArパージ後、酸素源を反応チャンバ中に導入して、吸着表面と反応させ、次に、別の不活性ガスをパージして、チャンバから反応副生成物を除去する。好ましい膜厚を得るために、このプロセスサイクルを繰り返すことができる。
【実施例】
【0051】
次の実施例では、三座β−ケトイミネート配位子を有する金属含有錯体の調製並びに金属含有膜堆積プロセスにおける前駆体としてのそれらの使用が説明される。
【0052】
次の実施例では、三座β−ケトイミネート配位子を有する金属含有錯体の調製並びに金属含有膜堆積プロセスにおける前駆体としてのそれらの使用が説明される。
【0053】
実施例1
2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンの合成
18.00g(126.58mmol)の硫酸ナトリウムを加えたTHF100mL中の15.00g(105.49mmol)の2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンの溶液に、9.51g(126.58mmol)の2−メトキシエチルアミンを加えた。この反応混合物を50℃で数日間加熱し、その後にTHFを真空下で混合物から蒸発させて、黄色の油を得た。150mTorrの真空下、130℃で加熱することによる残油の真空供給によって、17.31gの淡黄色の固体を得た。収率は82%であった。H NMR(500MHz,C):δ=11.45(s,1H),5.21(s,1H),2.93(s,3H),2.90(t,2H),2.78(q,2H),1.49(s,3H),1.31(s,9H)
【0054】
実施例2
2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンの合成
ジエチルエーテル中の過剰な量の1−メトキシ−2−プロピルアミン及び過剰な量の硫酸ナトリウム無水物と12.6gの2,2−ジメチルヘキサン−3,5−ジオンを充填した反応フラスコを、GC−MSによってジオンがもはや観測されなくなるまで攪拌した。ろ過により透明溶液を得て、ろ取物をジエチルエーテルで洗浄した。ロータリーエバポレーターによって、混合したジエチルエーテル溶液から、溶媒及び過剰な量のアミンを除去した。600mTorr、96℃での真空蒸留により13.2gの生成物を得た。H NMR(500MHz,C):δ=11.54(s,1H),5.20(s,1H),3.31(m,1H),2.93(s,3H),2.84(m,2H),1.60(s,3H),1.30(s,9H),0.87(d,3H)
【0055】
実施例3
4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ペンタ−3−エン−2−オンの合成
100mlのテトラヒドロフランに、21.0gのアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(0.2モル)を溶解し、これに、20.0gの2,4−ペンタンジオン(0.2モル)を5分間に亘って滴加した。次に、得られた混合物を一晩中攪拌し、その後に、反応中に形成された縮合物の溶媒及び水を真空蒸留により除去した。次に、最終生成物を透明溶液として真空蒸留した。MeC(O)CHC(NCHCH(OMe))Meの収量=25.0g(理論値の72%) H NMR:(500MHz,C):δ=1.47(s,3H),δ=2.00(d,3H),δ=2.98(t,2H),δ=3.05(s,6H),δ=4.00(t,1H),δ=4.89(s,1H),δ=11.2(bs,1H);211muにおけるGCMS親イオン
【0056】
実施例4
2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンの合成
トルエン150mL中の6.18g(43.46mmol)の2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンの溶液に、5.48g(52.15mmol)のアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールを加え、次に12.0g(84.48mmol)の硫酸ナトリウムを加えた。この反応物を還流によって数日間加熱し、その後に、静止状態下において142℃で加熱することにより、トルエンを蒸留して除去した。100mTorrの真空下、75℃で得られた残油を1時間加熱して、残りのトルエンを除去した。100mTorrの真空下、102℃で加熱することによる残油の真空供給によって、71%の収率であって、7.17gの重量を有する黄緑色の油を得た。H NMR(500MHz,C):δ=11.43(s,1H),5.21(s,1H),4.02(t,1H),3.03(s,6H),2.99(t,2H),1.50(s,3H),1.29(s,9H)
【0057】
実施例5
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの合成
THF中の0.94g(4.56mmol)のSr−イソプロポキシドの懸濁液に、THF中の2.00g(10.04mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンを室温で加えた。この反応混合物は数分で溶液に変化した。この溶液を室温で16時間攪拌した。全揮発分を真空下で蒸発させ、粘着性の黄色の油を得た。冷却された(例えば、約−10℃の)ヘキサンで洗い流した後に、2.57gの粘着性の灰色がかった白色の固体を収集した。
【0058】
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの単結晶をX線単結晶分析によって特定したところ、それが二量体(1個のストロンチウム原子が2個の窒素原子及び5個の酸素原子に7配位されているのに対して、もう一方は3個の窒素原子及び5個の酸素原子に8配位されている)であることを示していた。この化合物の構造を図1に示す。図2を参照すると、錯体のTGAによって、それが250℃を超える温度で揮発し始めることが分かる。約15%の残留物があることは、それが熱的に安定ではないので、それが適切な前駆体ではないことを示唆していた。一方で、純配位子は、120℃を超える温度で揮発し始め、200℃の温度で完全に揮発する。
【0059】
実施例6
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの合成
THF20mL中の1.00g(4.86mmol)のSr−イソプロポキシドの懸濁液に、THF5mL中の1.95g(9.72mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンを加えた。この反応混合物を室温で16時間攪拌しておいて、懸濁液を均質な溶液にした。THFを真空下で蒸発させ、油状の白色固体を得た。真空供給下での全揮発分の除去によって、約1.70gの灰色がかった白色の固体を得た。オクタン中での再結晶によって、72%の収率を有する無色の結晶を得た。H NMR(500MHz,C):δ=5.10(s,1H),3.34(d,1H),3.05(s,3H),2.75(d,1H),1.79(s,3H),1.42(s,9H),1.02(d,3H)
【0060】
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの単結晶をX線単結晶分析により特定したところ、それが単量体(ストロンチウム原子が、2個の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート配位子に6配位されている)であることを示していた。この化合物の構造を図3に示す。図4を参照すると、TGA分析によって、それが揮発性であり、5%未満の残留物があり、それがCVD又はALDプロセスにおいて前駆体として利用できることが示唆されている。
【0061】
実施例7
ビス(4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ペンタ−3−エン−2−オネート)ストロンチウムの合成
THF15mL中の0.50g(2.43mmol)のSr−イソプロポキシドの懸濁液に、THF5mL中の0.90g(4.86mmol)の4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ペンタ−3−エン−2−オンを加えた。得られた懸濁液は約10分間で溶液に変化した。この溶液を16時間攪拌し、その後にTHFを真空下で蒸発させたところ、約1.20gの琥珀色の油が生成した。プロトンNMRによって、生成物を油状にする幾つかの未反応の遊離配位子があることが示された。油のヘキサン溶液から取り出した固体のH NMRによって、それが多量体であることが分かった。
【0062】
実施例8
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの合成
THF25mL中の1.00g(4.86mmol)のSr−イソプロポキシドの懸濁液に、THF5mL中の2.33g(10.21mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンを加えた。得られた懸濁液は約2分間で溶液に変化した。この溶液を室温で16時間攪拌したまま放置し、その後に真空下でTHFを反応混合物から蒸発させて、約0.95gを得た。H NMR(500MHz,C):δ=5.20(s,1H),3.93(t,1H),3.22(d,2H),3.09(s,6H),1.78(s,3H),1.41(s,9H)
【0063】
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの単結晶をX線単結晶分析により特定したところ、それが1次元多量体(1個のストロンチウム原子が2個の窒素原子及び6個の酸素原子に8配位されている)であることが分かった。この化合物の構造を図5に示す。
【0064】
実施例9
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)バリウムの合成
THF20mL中の0.96g(2.09mmol)のBa(N(SiMeの透明溶液に、THF5mL中の0.96g(4.19mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンを滴加した。透明溶液が黄色になり、発熱の兆候が生じてから、室温で3時間攪拌した。真空下でのTHFの除去によってベージュ色の発泡体を得た。無水ヘキサンを用いた洗浄によって、1.18gの灰色がかった白色の固体を収集した。H NMR(500MHz,C):δ=5.14(s,1H),4.44(b,1H),3.63(b,2H),3.20(s,6H),1.86(s,3H),1.41(s,9H)
【0065】
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)バリウムの単結晶をX線単結晶分析により特定したところ、それが三量体(1個のバリウム原子が2個の窒素原子及び4個の酸素原子で6配位されているのに対して、もう一方では2個のバリウム原子が3個の窒素原子及び6個の酸素原子で9配位されている)であることが分かった。この化合物の構造を図6に示す。
【0066】
実施例10
2,2−ジメチル−5−[(テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンの合成
THF100mL中の5.00g(35.16mmol)の2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンの溶液に、6.00g(42.24mmol)の硫酸ナトリウムを加え、次に4.27g(42.19mmol)のテトラヒドロフルフリルメチルアミンを加えた。この反応物を16時間還流して、その後に、GCによって反応が終わったことを確認した。全揮発分を真空下で数時間蒸発させて除去した。ショートパス蒸留によって、4.0gの黄色の油を収集した。収率は50%であった。
【0067】
実施例11
ビス(2,2−ジメチル−5−[(テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの合成
THF20mL中の1.00g(4.86mmol)のSr−イソプロポキシドの懸濁液に、THF5mL中の2.19g(9.72mmol)の2,2−ジメチル−5−[(テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンを滴加したところ、懸濁液ができ、これは約2分で溶液に変わった。この反応物を16時間攪拌し、その後に、黄色の溶液を真空下で蒸発させ、2.83gの重量を有する発泡体を得た。H NMRによって、生成物への転化率が50%であることが分かった。H NMR(500MHz,C):δ=5.13(s,1H),3.88(b,2H),3.65(m,1H),3.34(b,1H),3.09(b,1H),1.83(s,3H),1.50(m,2H),1.43(s,9H),1.41(m,1H),1.32(m,1H)
【0068】
実施例12
1.5Torrの圧力における反応チャンバ内においてシリコンウエハーを250℃に保った。180℃でのビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムのSr含有化合物を100sccmのNとともに5秒間に亘ってチャンバに導入した。次に、200sccmのNを10秒間パージした。次に、オゾンを10秒間供給した。その後、200sccmのNで10秒パージした。この手順を200回繰り返して、6nm厚の膜を成膜した。EDXによって、得られた膜がストロンチウム及び酸素を含むことを確認した。
【0069】
比較例1
この実験では、特開平06−298714号の実施例7に示された手順に従った。この例を上記実施例5と比較されたい。
【0070】
THF10mL中の3.34g(16.74mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンをTHF15mL中の0.50g(5.58mmol)のSrHの懸濁液に滴加した。明らかに少量の発泡があった。この反応混合物を室温で16時間攪拌して、灰色のスラリーを得た。THFを真空下で蒸発させ、ろう状の灰色がかった白色の固体を得た。この固体のTGAによって、それが未反応の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンであると分かった。次に、この粗ろう状固体を、特開平06−298714号に記述されたものと同様の真空供給に供した。白色揮発性固体を収集した。そのTGAが純2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンのものと適合したので、それは2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンであった。特開平06−298714号のTGA図は、純2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンのものと一致している。それ故に、ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムの調製については、先行技術の特開平06−298714号に開示されたものが不適格であると分かる。代わりに、配位子自体が実際に単離した。
【0071】
比較例2
この実験では、特開平06−298714号の段落[0052]に示された手順に従った。
【0072】
THF5mL中の3.34g(16.74mmol)の2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンをTHF20mL中の0.58g(4.23mmol)の水素化バリウムの懸濁液に滴加した。得られたスラリーを16時間攪拌し、その後に、THFを真空下で蒸発させ、3.10gの粒子の大きい液体を得た。125mTorrの真空下における150℃での真空供給によって、約2.00gの白色固体を得た。これは、2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンとして特定されたので、反応が起きていないことが分かった。
【0073】
【表1】

【0074】
上述の表1にまとめられた実施例及び好ましい実施形態の説明は、特許請求の範囲に規定されているように本発明を限定するというよりも、本発明を説明するものとして把握されるべきである。容易に理解されるであろうが、特許請求の範囲で説明されている本発明から逸脱することなく、上記で説明された特徴の多数の変更及び併用を利用できる。そのような変更は本発明の理念及び範囲から逸脱するものとは見なされず、そして全てのそのような変更は次の特許請求の範囲内にあるものと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基、及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;そして
は、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)、
式B:
【化2】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基、及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり;そして
n=3、4、又は5である。)、並びに
式C:
【化3】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり;そして
及びRは、それぞれ独立してC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)
からなる群から選択される多座配位β−ケトイミネート。
【請求項2】
式A、B及びCのそれぞれにおいて、RがC〜Cのかさ高いアルキル基である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項3】
〜Cアルキル基であるRが、tert‐ブチル、イソ‐ブチル、sec−ブチル及びtert−ペンチルからなる群から選択される、請求項2に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項4】
式Aにおいて、Rが、2個又は3個の炭素原子を含む直鎖アルキレン架橋基である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項5】
式Aにおいて、Rが、3個又は4個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の不斉炭素原子を有する、分岐鎖アルキレン架橋基であり;式Bにおいて、Rが、2個又は3個の炭素原子を含み;そして式Cにおいて、Rが、3個又は4個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の不斉炭素原子を有する、分岐鎖アルキレン架橋基である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項6】
式A、B及びCのそれぞれにおいて、Mがストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項7】
式A、B及びCのそれぞれにおいて、Mがバリウムである、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項8】
式Bにおいて、Rが、
【化4】

である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項9】
が、
【化5】

である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項10】
式Cにおいて、Rが、
【化6】

である、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項11】
ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウム、ビス(2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウム、ビス(,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウム、ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウム、ビス(2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)バリウム、及びビス(2,2−ジメチル−5−[(テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オネート)ストロンチウムからなる群から選択される、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート。
【請求項12】
請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネート;並びに
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ニトリル、有機エステル、有機アミン、ポリアミン、有機アミド、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒
を含み、化学気相法により基板上に第2族金属含有膜を堆積させるための使用に適した、液体組成物。
【請求項13】
溶媒が、1〜20個のエトキシ−(CO)−繰り返し単位を有するグリム溶媒;C〜C12アルカノール、C〜Cアルキル部分を含むジアルキルエーテル、C〜C環状エーテル;C12〜C60クラウンO〜O20エーテル(式中、接頭のCの範囲は、エーテル化合物中の炭素原子の数iであり、そして接尾のOの範囲は、エーテル化合物中の酸素原子の数iである。)からなる群から選択される有機エーテル;C〜C12脂肪族炭化水素;C〜C18芳香族炭化水素;式RCONR’R”[式中、R及びR’は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは結合して環状基(CH(式中、nは4〜6、好ましくは5である。)を形成でき、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及びシクロアルキルから選択される。]の有機アミドからなる群から選択される溶媒である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
溶媒が、N−メチル−又はN−エチル−又はN−シロクヘキシル−2−ピロリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド、及びN,N−ジエチルホルムアミドからなる群から選択される有機アミドである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ニトリル、有機エステル、有機アミン、ポリアミン、有機アミド、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒中に、請求項1に記載の多座配位β−ケトイミネートを溶解させる工程;並びに
基板上に第2族金属含有膜の層を堆積させる工程
を含む、基板上に第2族金属酸化物層を形成するための蒸着方法。
【請求項16】
前駆体源及び酸素含有剤を堆積チャンバに導入し、そして金属酸化物膜を基板上に堆積させる、基板上に共形金属酸化物薄膜を形成するための蒸着方法であって、前記前駆体源として請求項1に記載の金属含有錯体を使用することを含むことを特徴とする蒸着方法。
【請求項17】
蒸着方法が、化学気相成長法及び原子層成長法からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
酸素含有剤が、水、O、H、オゾン、水プラズマ、酸素プラズマ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
式A:
【化7】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され:
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;そして
は、C〜C10アルキル、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)、
式B:
【化8】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり;そして
n=3、4、又は5である。)、並びに
式C:
【化9】

(式中、Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される第2族金属であり;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択され;
は、2個又は3個の炭素原子を含む有機基であり;そして
及びRは、それぞれ独立してC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10脂環式基及びC〜C10アリールからなる群から選択される。)
からなる群から選択される多座配位β−ケトイミネート。
【請求項20】
有機溶媒又は溶媒の混合物中で、多座配位β−ケトイミネート配位子を金属アルコキシドと反応させる工程を含む、金属含有多座配位β−ケトイミネートの製造方法。
【請求項21】
金属アルコキシドが、メトキシド、エトキシド、イソ−プロポキシド、n−プロポキシド、tert−ブトキシド、sec−ブトキシド、イソ−ブトキシド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるアルコキシドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属アルコキシドがストロンチウムイソ−プロポキシドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒が、THF、トルエン、ヘキサン、エーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
金属含有多座配位β−ケトイミネートが、2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オン、2,2−ジメチル−5−[(2−メトキシ−1−メチルエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オン、4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ペンタ−3−エン−2−オン、2,2−ジメチル−5−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オン、及び2,2−ジメチル−5−[(テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ]ヘキサ−4−エン−3−オンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111672(P2010−111672A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−252198(P2009−252198)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】