説明

第4級アンモニウム化合物と精油及び/又はその構成要素の相乗的組合せを含む抗菌組成物

【課題】増強された抗菌効果を示す第4級アンモニウム化合物及び精油又はその個々の構成要素を含む組成物の提供。
【解決手段】皮膚又は粘膜に塗布するためにローション、ゲル、クリーム、ソープ等に含まれうる。本発明は、相乗的な抗菌効果が精油又はその個々の構成要素と低濃度の第4級アンモニウム化合物を組み合わせることによって得られるという観察に少なくとも一部基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第4級アンモニウム化合物と精油及び/又はその個々の構成要素の組合せを含む組成物、並びにこのような組成物の使用方法に関する。これはこのような組合せが相乗的に増強された抗菌効果を示すという発見に少なくとも一部基づく。
【背景技術】
【0002】
精油は、植物源又は動物源から得られる揮発性油であり、複数の構成要素(例えば、モノテルペン炭化水素及びセスキテルペン炭化水素、モノテルペンアルコール、モノテルペンエステル、モノテルペンエーテル、モノテルペンアルデヒド、モノテルペンケトン、モノテルペン酸化物及びセスキテルペンアルコール、セスキテルペンエステル、セスキテルペンエーテル、セスキテルペンアルデヒド、セスキテルペンケトン、セスキテルペン酸化物等)の複雑な混合物からなる。これらの精油及びこれらの単離された構成要素は、芳香剤及び香味剤として頻繁に用いられ、また創傷治癒の特性のために民間療法で広く用いられている。
【0003】
科学的な研究が、精油の有益な効果を裏付けた。ユーカリの精油が、「中枢及び末梢の鎮痛効果並びに好中球依存性及び好中球非依存性の抗炎症活性を有する」ことが見出され(非特許文献1)、そして同様の活性がラベンダー(Lavendula angustifolia Mill.)の精油に観察された(非特許文献2)。精油が、抗菌活性(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)及び抗真菌活性(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)を示すことが示された。精油の殺ウイルス活性もまた観察され、これには単純ヘルペスウイルス1型及び2型に対する直接的な殺ウイルス効果が含まれる(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。
【0004】
第4級アンモニウム化合物(「QAC」)は、元のアンモニウムカチオンの4つの水素すべてが有機基で置換されている1群のアンモニウム塩である。これらは、4つの有機基及び1つの酸基に結合した中心の窒素原子を有する。QACは2つの相(液体−液体又は固体−液体)の境界面に分配され、これら2つの異なる相の間に連続性を導入する傾向を有する。QACは効果的な抗菌活性を有し、細菌細胞の作用を妨げることが可能であることが知られている。QACは防腐剤、消毒剤、保存剤、殺生剤等として用いられている。
【0005】
Johnsonらの(特許文献1)及び(特許文献2)は、外因性抗菌化合物の取り込みを高めるセスキテルペノイドの使用に関する。同様に、関連文献が、細菌の外因性抗菌化合物に対する透過性及び感受性を増強させる上での、ネロリドール、ファルネソール、ビサボロール及びアプリトーンのようなセスキテルペノイドの使用を開示しており、セスキテルペノイドが、非特異的かつ一般的な効果を有することを示唆している(非特許文献13)。特に、Brehm−Stecherらは、ネロリドール、ファルネソール、ビサボロール及びアプリトーンが抗生物質(エリスロマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、シプロフラキシン、クリンダマイシン、及びテトラサイクリン)に対する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の感受性を増強させたことを報告している。さらに、Brehm−Stecherらは、抗菌薬剤としてのQACの用途を開示していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Silva et al., 2003, J. Ethnopharmacol. 89(2-3); 277-283
【非特許文献2】Hajhashemi et al., 2003, J. Ethnopharmacol. 89(1):67-71
【非特許文献3】Bezic et al., 2003, Phytother. Res. 17(9):1037-1040
【非特許文献4】Goren et al., 2003, Z. Naturforsch. 58(9-10):687-690
【非特許文献5】de Abreu Gonzaga et al., 2003, Planta Med. 69(8):773-775
【非特許文献6】Valero and Salmera, 2003, Int. J. Food Microbiol. 85(1-2):73-81
【非特許文献7】Paranagama et al., 2003, Lett. Appl. Microbiol. 37(1):86-90
【非特許文献8】Shin, 2003, Arch. Pharm. Res. 26(5):389-393
【非特許文献9】Velluti et al., 2003, Int. J. Food Microbiol. 89:145-154
【非特許文献10】Garcia et al., Phytother. Res. 17(9):1073-1075
【非特許文献11】Minami et al., 2003, Microbial Immunol. 47(a):681-684
【非特許文献12】Schuhmacher et al., 2003, Phytomedicine 10:504-510
【非特許文献13】Brehm-Stecher et al. 2003, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 47(10):3357-3360
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,319,958号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0165130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非刺激性で、安全で、かつ種々の商業的及び非商業的な環境下における繰り返しの使用に対して効果的である抗菌組成物に対する絶え間ない要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第4級アンモニウム化合物と精油及び/もしくはその個々の構成要素の組合せを含む抗菌組成物に関する。このような組合せは、皮膚又は粘膜に塗布(適用)するために、ローション、ゲル、クリーム、ソープ等に含まれうる。本発明は、精油及び/もしくはその個々の構成要素と低濃度の第4級アンモニウム化合物との組合せによって相乗的な抗菌効果が得られるという観察に、少なくとも一部基づく。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は組成物及びそれらの使用方法に関する。ここでゲル、クリーム、軟膏剤、ローション又はソープの抗細菌活性は、相乗作用する量の第4級アンモニウム化合物と精油及び/もしくは1つ以上のその個々の構成要素を含むことによって増強される。本発明の製剤は、相乗的に有効量の少なくとも1つの第4級アンモニウム化合物と少なくとも1つの精油及び/もしくはその個々の構成要素を含む。
【0011】
用語「相乗作用する」及び「相乗的に有効」とは、本発明に用いられる場合、生物学的な効果を生じるように2つ以上の薬剤を塗布することによって生じる生物学的な効果が、個々の薬剤を塗布することによって生じる生物学的な効果の合計よりも大きいことを意味する。
【0012】
本発明で使用するのに適している第4級アンモニウム化合物の例としては、塩化ベンザルコニウム(「BZK」)、塩化ベンゼトニウム(「BZT」)、他のハロゲン化ベンザルコニウム又はハロゲン化ベンゼトニウム(ベンザルコニウム臭化物もしくはベンゼトニウム臭化物又はベンゼトニウムフッ化物もしくはベンザルコニウムフッ化物を含むが、これらに限定されない)、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルアミドプロパルコニウム、塩化ベヘナルコニウム、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘナミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、ステアルアルコニウムクロリド、オレアルコニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、塩化デクアリニウム、N−ミリスチル−N−メチル−モルホリニウムメチルサルフェート、ポリ[N−[3−(ジメチルアンモニオ)プロピル]−N’−[3−(エチレンオキシエテレンジメチルアンモニオ)プロピル]ウレアジクロリド]、α−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)−エチレンジクロリド]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
第4級アンモニウム化合物の濃度は、約0.01%と0.5%の間でありえ;好ましくは、第4級アンモニウム化合物は、濃度が0.05%と0.3%の間、より好ましくは0.1%と0.2%の間の、塩化ベンゼトニウム又は塩化ベンザルコニウムである。これらの割合、及び本明細書中の他の割合は、特に断らない限り、重量パーセント(重量/重量)である。
【0014】
本明細書中で定義される場合、精油(「EO」)は植物源もしくは動物源から得られる揮発性油又はそれらの合成等価物であり、モノテルペン炭化水素及びセスキテルペン炭化水素、モノテルペンアルコール、モノテルペンエステル、モノテルペンエーテル、モノテルペンアルデヒド、モノテルペンケトン、モノテルペン酸化物及びセスキテルペンアルコール、セスキテルペンエステル、セスキテルペンエーテル、セスキテルペンアルデヒド、セスキテルペンケトン、セスキテルペン酸化物等のような複数の構成要素の複雑な混合物からなる。EOの例としては、ベルガモット油、クラリセージ油、イランイラン油、ネロリ油、サンダルウッド油、フランキンセンス油、ショウガ油、ペパーミント油、ラベンダー油、ジャスミンアブソリュート、ゼラニウム油(ブルボン)、スペアミント油、チョウジ油、パチョリ油、ローズマリー油、ローズウッド油、ビャクダン油、ティーツリー油、バニラ油、レモングラス油、シダーウッド油、バルサム油、タンジェリン油、ヒノキ油、ヒバ油、ギンコ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、及びスイートオレンジ油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
精油の個々の構成要素(「IC」)は、(天然)油又は完全にもしくは部分的に合成したものから単離しうる。また精油の個々の構成要素(「IC」)としては、l−シトロネロール、α−アミルシンナムアルデヒド、ライラル(lyral)、ゲラニオール、ファルネソール、ヒドロキシシトロネラール、イソオイゲノール、オイゲノール、ユーカリプトール、リナロオール、シトラール、チモール、リモネン及びメントールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ICのさらなる例としては、セスキテルペノイド化合物が挙げられ、これは精油の活性化合物でありうる。15個の炭素を含むセスキテルペノイド化合物は、5個の炭素数のイソプレン単位3つから生合成的に形成される。セスキテルペノイド化合物としては、ファルネソール、ネロリドール、ビサボロール、アプリトーン、カマズレン、サンタロ−ル、ジンジベロール(zingiberol)、キャロトール及びカリオフィレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
1つ以上のEOの混合物、1つ以上のICの混合物、並びに1つ以上のEO及び1つ以上のICの混合物が、本発明に含まれる。
【0018】
EO及びICの濃度は、約0.01%と10%の間;好ましくは、0.05%と1.0%の間又は0.05%と0.5%の間、さらに好ましくは、0.2%と0.5%の間でありうる。好ましい実施形態において、EOはレモン油であり、そして/あるいはICはファルネソールである。
【0019】
特定的であるが、非限定的ないくつかの実施形態において、本発明は、製剤が塗布された皮膚又は粘膜の刺激を抑制する量の亜鉛をさらに含むゲル、クリーム、ローション又は軟膏剤(これらに限定されない)を含む製剤に関する。亜鉛は、精油の刺激作用を低減するために加えられる。局所に用いる組成物における亜鉛の使用は、当該分野で公知であり、以下の特許に開示される:米国特許第5,708,023号、同第5,965,610号、同第5,985,918号及び同第6,037,386号。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、低濃度の2つ以上の水溶性亜鉛塩を用いる。用語「低濃度」とは、ゲル又はクリーム内の遊離の亜鉛イオン(Zn2+)の割合が0.5重量%未満であることを意味する。これらの組成物に使用するのに適切な亜鉛塩としては、酢酸亜鉛(水への1.64mole/lの溶解度)、酪酸亜鉛(水への0.4mole/lの溶解度)、クエン酸亜鉛(水への0.1mole/l未満の溶解度)、グルコン酸亜鉛(水への0.28mole/lの溶解度)、グリセリン酸亜鉛(適度な水溶性)、グリコール酸亜鉛(適度な水溶性)、ギ酸亜鉛(水への0.33mole/lの溶解度)、乳酸亜鉛(水への0.17mole/lの溶解度)、ピコリン酸亜鉛(適度な水溶性)、プロピオン酸亜鉛(水への1.51mole/lの溶解度)、サリチル酸亜鉛(低い水溶性)、酒石酸亜鉛(適度な水溶性)及びウンデシレン酸亜鉛(適度な水溶性)が挙げられる。特定の好ましい実施形態において、これらの亜鉛塩は、効果的な量で以下の2つ以上の組合せを含む:酢酸亜鉛(0.05%〜2.0%)、クエン酸亜鉛(0.05%〜2.0%)、グルコン酸亜鉛(0.05%〜2.0%)及び乳酸亜鉛(0.05%〜2.0%)。好ましい実施形態において、これらの亜鉛塩は、0.2%〜0.6%のグルコン酸亜鉛、0.1%〜0.3%の酢酸亜鉛及び0.1%〜0.3%の乳酸亜鉛である。特定の好ましい実施形態において、これらの亜鉛塩は、0.3%のグルコン酸亜鉛、0.1%の酢酸亜鉛、及び0.1%の乳酸亜鉛、又は0.2%の乳酸亜鉛及び0.2%のグルコン酸亜鉛である。本発明の相乗的な組合せを含みうるさらなる組成物は、国際特許出願PCT/US03/03896(WO03/066001として2003年8月14日に公開)に記載され、これはその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0021】
本発明のゲル、軟膏剤、ローション又はクリームは、皮膚又は身体のさまざまな粘膜(口腔、鼻腔、膣腔もしくは直腸腔を含むがこれらに限定されない)に局所的に塗布しうる。
【0022】
好ましい実施形態において、このゲル、ローション、軟膏剤又はクリームは、水、ゲル化剤、増粘剤、親水性ポリマーもしくは疎水性ポリマー、乳化剤、軟化剤及び/又はアルコール(例えば、エタノール)の混合物を含みうる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、10重量%〜90重量%のアルコール、15重量%〜70重量%の水、0.05重量%〜3.0重量%の増粘剤及び/又はゲル化剤、並びに0.1重量%〜3.0重量%の軟化剤を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、増粘剤が存在する場合、それはポリアクリル酸系増粘剤(例えば、これらに限定されないがカルボマー、カルボポール、又はウルトレズ(ultrez))ではない。それはポリアクリル酸系増粘剤は、第4級アンモニウム化合物と両立しないことが見出されているためである。いずれか特定の説にとらわれることなく、このような増粘剤のアニオン基は、第4級アンモニウム化合物のカチオン基と相互作用しうると考えられる。好ましくは、ゲル化剤を用いる場合、それはアニオン剤ではなく非イオン剤又はカチオン剤である。
【0024】
本発明の組成物は必要に応じて、1つ以上のさらなる抗微生物剤(例えば、これらに限定されないが抗ウイルス物質、抗細菌物質、又は抗真菌物質)をさらに含む。抗微生物剤はまた、殺ウイルスもしくはウイルスの増殖を防ぐ特性、殺細菌もしくは細菌の増殖を防ぐ特性、又は殺真菌もしくは真菌の増殖を防ぐ特性のいずれかの組合せを保有する物質を含む。抗微生物剤は当業者に周知である。抗微生物剤の例としては、ヨードフォア、ヨウ素、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、セトリミド、クロルヘキシジン(遊離塩基及び/もしくは塩)、他のビグアニド(例えば、ポリヘキサメチルビグアニド(PHMB)及びグルコン酸クロロヘキシジン(CHG))、クロロエレゾール(chloroeresol)、クロロキシレノール、ベンジルアルコール、ブロノポール、クロルブタノール、エタノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、2,4−ジクロロベンジルアルコール、チオメルサール、クリンダマイシン、エリスロマイシン、過酸化ベンゾイル、ムピロシン、バシトラシン、ポリミキシンB、ネオマイシン、トリクロサン、パラクロロメタキシレン、ホスカルネット、ミコナゾール、フルコナゾール、イトリコナゾール、ケトコナゾール及びこれらの製薬上許容可能な塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に有用である抗微生物剤のこれらの例及びさらなる例は、Goodman及びGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics(Goodman Gilman A, Rall TW, Nies AS, Taylor P, ed.(Pergamon Press; Elmsford, N.Y.:1990))のような文献に見出され、その内容は本明細書中に参考として援用される。
【0025】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、グルコン酸クロロヘキシジン(CHG)及びポリヘキサメチルビグアニド(PHMB)からなる群から選択されるビグアニド化合物を含む。好ましくは、このビグアニド化合物は、0.1重量%〜2.0重量%の間の濃度で存在する。
【0026】
製薬上許容可能なクロルヘキシジン塩は、当業者に周知であり、パルミチン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・ジホスファニレート(chlorhexidine diphosphanilate)、ジグルコン酸クロルヘキシジン(「CHG」)、二酢酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン二塩酸塩、クロルヘキシジンジクロリド、クロルヘキシジンジヒドロアイオダイド、二過塩素酸クロルヘキシジン、二硝酸クロルヘキシジン、硫酸クロルヘキシジン、亜硫酸クロルヘキシジン、チオ硫酸クロルヘキシジン、二酸リン酸クロルヘキシジン、ジフルオロリン酸クロルヘキシジン、二ギ酸クロルヘキシジン、二プロピオン酸クロルヘキシジン、ニヨード酪酸クロルヘキシジン、二−n−吉草酸クロルヘキシジン、二カプロン酸クロルヘキシジン、マロン酸クロルヘキシジン、コハク酸クロルヘキシジン、リンゴ酸クロルヘキシジン、酒石酸クロルヘキシジン、二モノグリコール酸クロルヘキシジン、モノジグリコール酸クロルヘキシジン、二乳酸クロルヘキシジン、二−α−ヒドロキシイソ酪酸クロルヘキシジン、二グルコヘプトナートクロルヘキシジン、クロルヘキシジン・ジ−イソチオネート、二安息香酸クロルヘキシジン、二ケイ皮酸クロルヘキシジン、二マンデル酸クロルヘキシジン、二イソフタル酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・ジ−2−ヒドロキシナフトエート、及びエンボン酸クロルヘキシジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の組成物を処方する際には、上記の構成成分の活性を有さないが、全体として組成物の処方及び使用を助ける構成成分を製剤にさらに含ませることもできると考えられる。このような構成成分の例は、生物学的目的に製剤を製造する当業者に周知である。これら構成成分の例としては、結合剤、軟化剤、保存剤(例えば、メチルパラベン)、潤滑剤、着色剤、香料等のような物質が挙げられる。従って、意図される表面が皮膚である場合、本発明の組成物は既知のローション又は医薬に加えられる構成成分を含みうる。これらは、皮膚に対して生理学的に許容可能であり、刺激不活性剤の作用を逆転又は妨害する構成成分を含まない。
【0028】
本発明の非限定的な特定の実施形態において、上記組成物を、既存の製剤に加えうる(ただし、この製剤中の構成成分は本発明の組成物の活性を妨げたり、抑えたりしない)。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、商業的に利用可能であるクリーム、軟膏剤、ゲル又はローションに加えることができる。商業的に利用可能な潤滑剤の例としては、「KY JELLY」「ASTROGLIDE」及び「PREVACARE」の商品名で販売されている潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。商業的に利用可能なローションの例としては、「SOFT−SENSE」「LOTION SOFT」「CUREL」及び「KERI」の商品名で販売されているローションが挙げられるが、これらに限定されない。SOFT−SENSE(Johnson&Son,Inc.,Racine,Wis.)は、精製した水、グリセリンUSP、ジステアリルジモニウムクロリド、ペトロラタムUSP、パルミチン酸イソプロピル、1−ヘキサデカノール、酢酸トコフェリル(ビタミンE USP)、ジメチコン、二酸化チタンUSP、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ナトリウム、及び香料(芳香剤)を含むことが知られている。LOTION SOFT(Calgon Vestal,St.Louise,Mo.)は、非イオン性保湿ローションであり、ムコ多糖を含むことが知られている。CUREL(Bausch&Lomb Incorporated,Rochester,N.Y.)は、脱イオン水、グリセリン、クオタニウム−5、ペトロラタム、パルミチン酸イソプロピル、1−ヘキサデカノール、ジメチコン、塩化ナトリウム、香料、メチルパラベン、及びプロピルパラベンを含むことが知られている。
【0029】
本発明の組成物は、制汗剤、アフターシェイブローション、含水アルコール系皮膚消毒剤及び治療クリーム等に用いられうる。
【0030】
本発明の特定の好ましい実施形態は、限定はしないが、例えば以下のうちの1つ以上を含む:エタノール、n−プロパノール及びイソ−プロパノールを1つ以上含むアルコール(10重量%〜90重量%);抗刺激量の1つ以上の亜鉛化合物;トリメチルアンモニウム置換エポキサイドと反応させたヒドロキシエチルセルロースの1つ以上の重合第四級アンモニウム塩(ポリクオタニウム)(例えば、UケアJR125、UケアJR400、UケアJR30M、UケアLR400、UケアLR30M、もしくはUケアポリマーLKのようなU−ケアポリマー);メトセルA、メトセルE、メトセルK、及びメトセル40シリーズ製品(例えば、メトセルK4MS、メトセルK100、メトセル40−202、メトセルK15MS等)のようなヒドロキシプロピルメチルセルロース;1つ以上の第4級アンモニウム化合物(例えば、BZK又はBZT);塩化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAC」);臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」);オレアルコニウムクロリド;ステアラルコニウムクロリド;インクロクアットBA 85(ババスアミドプロパアルコニウムクロリド);ジベヘニルジモニウムメトサルフェート;インクロクアットBES−35 S(ベヘンアミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート及びステアリルアルコール);インクロクアットB−65C(ベヘンアルコニウムクロリド及びセチルアルコール);インクロクアットベヘニルTMS(ベヘントリモニウムメトサルフェート及びセテアリルアルコール);並びに1つ以上の軟化剤(例えば、プロセチル10 PPG−10セチルエーテル、プロセチル50 PPG−50 セチルエーテル、プロミリスチルPM−3 PPG−3ミリスチルエーテル、ミリスチン酸PPG−3ベンジルエーテル(Crodaのクロダモル STS)、PEG−20アーモンドグリセリド、プロブチルDB−10、グルカムP20、グルカムE−10、グルカムP−10、グルカムE−20、ジステアリン酸グルカムP−20、グリセリン、プロピレングリコール、酢酸セチル及びアセチル化ラノリンアルコール(Acetulan)、ヒドロキシル化ミルクグリセリド(Cremerol HMG);シリコーンオイル(例えば、Dow Corningシリコーンオイル245、244、246、344、345、556);精油(例えば、レモン油、シトロネラオイル、サンダルウッド油、レモングラス油、パチョリ油、チョウジ油、タイム油、ゼラニウム油、バジル油);精油の個々の構成要素(例えば、ファルネソール、シトロネロール、リナロオール、オイゲノール、シトラール、チモール、ユーカリプトール、メントール);並びにビグアニド(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン又はポリヘキサメチルビグアニド)。
【0031】
本発明は、上記の組成物を使用して抗菌効果を得る方法に関する。この方法は、有効量の組成物を表面に塗布する工程を包含する。抗菌効果によって、1つ以上の病原性伝染因子による感染の危険性又は既に感染したものの拡大を顕著に減少させる。感染の危険性を0まで減少させる必要はないが、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少させることが好ましい。得られる防御に対する感染因子の例としては、ブドウ球菌種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis))、連鎖球菌種(例えば、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌種、サルモネラ菌種(例えば、Salmonella typh)、大腸菌種(例えば、Escherichia coli)、ビブリオ菌種、ナイセリア菌種(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)及びNeisseria gonnorhoea)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、クラミジア(Chlamydia trachomatis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、並びにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、本発明の組成物は抗生物質(テトラサイクリン、アンピシリン、リファムピン、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナイスタチン及びバシトラシンが挙げられるが、これらに限定されない)は含まない。
【0033】
以下は、亜鉛塩を伴うか又は伴わない、本発明の製剤の非限定的な特定の例である。
【0034】
亜鉛塩を伴わない製剤
一般的な処方
構成成分 割合の範囲(重量%)
エタノール 50〜90
水 15〜35
U−ケアポリマー 01.〜0.5
Germall+ 0.15〜0.3
第4級アンモニウム化合物 0.05〜0.2
第4級コンディショナー 0.2〜1.0
軟化剤 0.3〜1.0
フェノキシエタノール(存在するならば) 0.5〜1.0
シリコーンオイル 0.2〜1.0
精油/個々の構成要素 0.3〜1.0
ビグアニド(存在するならば) 0.05〜2.0
【0035】
特定の処方
(A)外科用手用アルコール調製物−1
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 28.12
U−ケアJR 30 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル10(PPG−10、セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0036】
(B)外科用手用アルコール調製物−2
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 27.97
U−ケアJR 30 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル10(PPG−10、セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
PHMB 0.15
【0037】
(C)外科用手用アルコール調製物−3
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 28.12
U−ケアJR 30 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル10(PPG−10、セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.25
ゼラニウム油 0.25
フェノキシエタノール 0.5
【0038】
(D)手術前皮膚用消毒剤−1
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ポビドンヨード 7.5
水 31.07
U−ケアJR 30 0.2
BZT 0.18
CHG 0.05
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0039】
亜鉛塩を伴う製剤
一般的な処方
構成成分 割合範囲(重量%)
エタノール 50〜90
水 15〜35
U−ケアポリマー 01. 〜0.5
Germall+ 0.15〜0.3
第4級アンモニウム化合物 0.05〜0.2
第4級コンディショナー 0.2〜1.0
軟化剤 0.3〜2.0
フェノキシエタノール(存在するならば) 0.5〜1.0
シリコーンオイル 0.0〜1.0
精油/個々の構成成分 0.3〜1.0
ビグアニド(存在するならば) 0.05〜2.0
グルコン酸亜鉛 0.3〜0.6
酢酸亜鉛 0.1〜0.3
乳酸亜鉛 0.1〜0.3
【0040】
特定の処方
(E)手用アルコール消毒剤−1
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
水 36.23
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
パンテノール 1.0
グルコン酸クロルヘキシジン(CHG) 0.05
BZK 0.12
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
【0041】
(F)手用アルコール消毒剤−2
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
水 36.08
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
パンテノール 1.0
グルコン酸クロルヘキシジン(CHG) 0.05
BZK 0.12
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
PHMB 0.15
【0042】
(G)外科用手用アルコール調製物−1
構成成分 割合(重量%)
水 26.87
乳酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.2
メトセル K4MS 0.1
UケアJR 30 0.2
パンテノール 50W 1.0
エタノール 68.0
クロダモルSTS 1.0
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
プロセチル10 0.5
PHMB 0.15
ファルネソール 0.3
BZT 0.18
プロピレングリコール 1.0
【0043】
(H)外科用手用アルコール調製物−2
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 27.32
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.4
乳酸亜鉛 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0044】
(I)外科用手用アルコール調製物−3
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 27.02
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.4
乳酸亜鉛 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
Germall+ 0.15
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
PHMB 0.15
【0045】
(J)外科用手用アルコール調製物−3
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 27.27
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.4
乳酸亜鉛 0.2
パンテノール 1.0
BZT 0.18
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
CHG 0.05
【0046】
(K)外科用手用抗刺激調製物−4
構成成分 割合(重量%)
水 27.15
乳酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.2
メトセル K4MS 0.1
Uケア−JR 30M 0.2
D,L−パンテノール 0.5
塩化ベンゼトニウム 0.18
エタノール 68.0
クロダモル STS 1.0
プロセチル 0.5
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
プロピレングリコール 1.0
ファルネソール 0.5
ポリヘキサメチレンビグアニド 0.15
香水 0.02
【0047】
(L)外科用手用抗刺激調製物−5
構成成分 割合(重量%)
水 26.45
乳酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.2
Klucell MCS 0.8
Uケア−JR 30M 0.2
D,L−パンテノール 0.5
塩化ベンゼトニウム 0.18
エタノール 68.0
クロダモル STS 1.0
プロセチル 0.5
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
プロピレングリコール 1.0
ファルネソール 0.5
ポリヘキサメチレンビグアニド 0.15
香水 0.02
【0048】
(M)亜鉛ゲルを含む外科用手用アルコール調製物
以下の製剤は、ラテックス手袋を装着するヒトで、ラテックスアレルギーを有するヒトに都合よく用いられる。
【0049】
構成成分 割合(重量%)
エタノール 68
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.5
水 22.93
U−ケアJR 30 0.6
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.7
乳酸亜鉛 0.2
酸化亜鉛 2.0
パンテノール 1.0
CHG 0.05
インクロクアットベヘニルTMS 0.5
シリコーンオイル(DC245) 0.5
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
グリセロール 1.0
ファルネソール 0.5
Germal Plus 0.2
フェノキシエタノール 0.5
ベンザルコニウムクロリド 0.12
【0050】
(N)アルコール系抗刺激外科用調製物
構成成分 割合(重量%)
水 26.87
乳酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.2
メトセル K4MS 0.1
UケアJR 30 0.2
パンテノール 50W 1.0
アルコール.SDA−40B 68.0
クロダモルSTS 1.0
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
プロセチル10 0.5
PHMB 0.15
ファルネソール 0.3
BZT 0.18
プロピレングリコール 1.0
【0051】
(O)局所に用いるクリーム−1
構成成分 割合(重量%)
インクロクアットベヘニルTMS 0.8
ポラワックスNF 0.8
ペトロリュームゼリー 3.0
Crothix 1.0
クロダモルMM 1.0
Cremerol HMG 1.0
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 8.0
水 78.22
Uケア JR30−M 0.2
Germall Plus 0.2
BZT 0.18
ゼラニウム油 0.5
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.7
乳酸亜鉛 0.2
酸化亜鉛 2.0
【0052】
(P)局所に用いるクリーム−2
構成成分 割合(重量%)
インクロクアットベヘニルTMS 0.8
ポラワックスNF 0.8
ペトロリュームゼリー 3.0
Crothix 1.0
クロダモルMM 1.0
Cremerol HMG 1.0
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 8.0
水 78.22
Uケア JR30−M 0.2
Germall Plus 0.2
BZT 0.18
バジル油 0.5
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.7
乳酸亜鉛 0.2
酸化亜鉛 2.0
【0053】
(Q)局所に用いるクリーム−3
構成成分 割合(重量%)
インクロクアットベヘニルTMS 0.8
ポラワックスNF 0.8
ペトロリュームゼリー 3.0
Crothix 1.0
クロダモルMM 1.0
Cremerol HMG 1.0
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 8.0
水 78.22
Uケア JR30−M 0.2
Germall Plus 0.2
BZT 0.18
サンダルウッド油 0.25
ファルネソール 0.25
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.7
乳酸亜鉛 0.2
酸化亜鉛 2.0
【0054】
(R)局所に用いるクリーム−4
構成成分 割合(重量%)
インクロクアットベヘニルTMS 0.8
ポラワックスNF 0.8
ペトロリュームゼリー 3.0
Crothix 1.0
クロダモルMM 1.0
Cremerol HMG 1.0
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 8.0
水 78.22
Uケア JR30−M 0.2
Germall Plus 0.2
BZT 0.18
タイム油 0.5
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.7
乳酸亜鉛 0.2
酸化亜鉛 2.0
【0055】
(S)手術前皮膚用消毒剤−1
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ポビドンヨード 7.5
水 30.47
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
BZT 0.18
CHG 0.05
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0056】
(T)手術前皮膚用消毒剤−2
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ポビドンヨード 2.0
水 35.97
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
BZT 0.18
CHG 0.05
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0057】
(U)手術前皮膚用消毒剤−3
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ポビドンヨード 2.0
水 35.52
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
BZT 0.18
CHG 0.5
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0058】
(V)手術前皮膚用消毒剤−4
構成成分 割合(重量%)
エタノール 60
ポビドンヨード 2.0
水 34.02
U−ケアJR 30 0.2
酢酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.3
乳酸亜鉛 0.1
BZT 0.18
CHG 2.0
ファルネソール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
【0059】
(W)亜鉛ゲル手洗い用#1
構成成分 割合(重量%)
Uケア JR30−M 0.05
メトセルK100 0.1
水 36.08
グルコン酸亜鉛 0.3
酢酸亜鉛 0.1
乳酸亜鉛 0.1
Germall Plus 0.2
エタノール 58
イソプロパノール 2.0
シリコーン(ジメチコン) 0.2
インクロクアットベヘニルTMS 0.7
ポラワックスA31 0.3
グリセリン 1.0
セチルエーテル(PPG10) 0.5
CHG 0.05
BZK 0.02
ファルネソール 0.3
【0060】
(X)亜鉛ゲル手洗い用#2
構成成分 割合(重量%)
水 33.45
エタノール 62.0
ファルネソール 0.3
プロピレングリコール 1.0
ポリヘキサメチレンビグアニド 0.15
ババスアミドプロパアルコニウムクロリド 0.3
プロセチル−10(PPG−10セチルエーテル)0.5
クロダモル STS 1.0
BZT 0.1
乳酸亜鉛 0.2
グルコン酸亜鉛 0.2
D,L−パンテノール 0.5
Uケア JR 30M 0.2
メトセルK4MS 0.1
【0061】
(Y)ラテックス手袋下用亜鉛ゲルクリーム/ローション
構成成分 割合(重量%)
Uケア JR30−M 0.8
メトセルK100 0.3
水 26.63
グルコン酸亜鉛 0.6
酢酸亜鉛 0.2
乳酸亜鉛 0.2
Germall Plus 0.2
ステアリン酸亜鉛 1.5
酸化亜鉛 1.0
Glucate DO 5.0
エタノール 55.0
イソプロパノール 3.0
シリコーン(ジメチコン) 0.5
インクロクアットベヘニルTMS 1.0
ポラワックスA31 0.5
グリセリン 2.0
セチルエーテル(PPG10) 1.0
CHG 0.05
BZK 0.02
ファルネソール 0.3
ビタミンE 0.2
【0062】
(Z)抗刺激消毒石鹸
構成成分 割合(重量%)
ポリオックスWSR 205 0.1
Uケア Jr30−M 0.2
Germall Plus 0.2
水 86.93
プルロニックF87 2.0
ココアミドプロピルベタイン 1.0
Mirapol A−15 1.0
プロピレングリコール 2.0
ポリクオタニウム−47(Merquat 3330) 3.0
グリセリン 2.0
CHG 0.05
BZK 0.12
トリクロサン 0.3
ファルネソール 0.3
レモン油 0.3
酢酸亜鉛 0.1
乳酸亜鉛 0.1
グルコン酸亜鉛 0.3
【実施例】
【0063】
6.実施例
6.1.実施例1
抗刺激剤として亜鉛塩を含む局所に用いる製剤を、EO及びICの存在下並びに非存在下で、また抗菌化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム(BZK)、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、ジンクピリチオン(ZP)及びトリクロサン(TC))の存在下並びに非存在下で調製した。以下のEO及びICを調べた:典型的な精油としてレモン油、典型的なテルペンアルコールとしてファルネソール及びリナロオール、並びに典型的なアルデヒドとしてシトラール。次いで生じた製剤を、それらの抗菌活性について調べた。
【0064】
6.1.1.方法
アルコール系亜鉛ゲルの調製
アルコール系ゲルを以下のように調製し、そして抗菌剤、EO及び/又はICをこの基剤に加えた。
【0065】
基剤#1
構成成分 重量%
Uケア JR30−M 0.1
メトセルK100 0.1
水 36.4
グルコン酸亜鉛 0.3
酢酸亜鉛 0.1
乳酸亜鉛 0.1
Germall Plus 0.2
エタノール 58
イソプロパノール 2.0
シリコーン(ジメチコン) 0.2
インクロクアットベヘニルTMS 0.7
ポラワックスA31 0.3
グリセリン 1.0
セチルエーテル(PPG10) 0.5
【0066】
血清存在下における迅速な抗菌活性の評価
細菌を含む血液又は他のタンパク質性の流体で汚染されている可能性のある皮膚における抗菌組成物の効果を決定するために、血清存在下で以下のようにして抗菌活性を調べた。手短に言えば、0.5mlの黄色ブドウ球菌(10CFU/ml)を滅菌培養チューブ中0.5mlの成体ウシ血清に加え混合した。0.5mlの試験製剤を各チューブに加え、ボルテックス攪拌した。15秒後、薬物不活性化培地(LTSB)で100分の1にさらに希釈し、そして0.5mlをTSAプレートに播いた。このプレートを37℃で24時間インキュベートし、培養物1mlあたりのコロニー数を決定した。
6.1.2.結果
BZKと組み合わせた場合にファルネソール、リナロオール、シトラール及びレモン油が相乗的な抗菌効果を示したことが観察された。ファルネソールを他の抗細菌化合物(CHG、ZP又はTC)と組み合わせた場合には、このような相乗作用は観察されなかった。以下の表1を参照のこと。
【表1】

【0067】
:BZK:塩化ベンザルコニウム(0.12%);PHMB:塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド(0.15%);CHG:グルコン酸クロルヘキシジン(0.05%);TC:トリクロサン(0.3%);ZP:ジンクピリチオン(0.5%);F:ファルネソール(0.3%);LO:レモン油(0.3%);LI:リナロオール;(0.3%);CI:シトラール(0.3%)。
【0068】
用いた抗細菌化合物の中で第4級アンモニウム化合物である塩化ベンザルコニウムのみが、EO及びICとの組合せにおいて顕著な相乗活性を示したことが、表1からわかる。
【0069】
6.2.実施例2
本実施例は、亜鉛塩の存在下及び非存在下における第4級アンモニウム化合物である塩化ベンゼトニウム(BZT)及びファルネソールを含む組成物の抗菌活性を示す。この抗菌活性を実施例1に記載したように調べた。
【0070】
ファルネソール及びBZTを表2に示す割合で、基剤#1(亜鉛塩を含む)及び以下に示す基剤#2(亜鉛塩を含まない)に加えた。
【表2】

【表3】

【0071】
これらの結果は、亜鉛塩の存在下又は非存在下の両方で生じる、BZT及びファルネソールの相乗的な抗菌効果を示す。
【0072】
6.3.実施例3
基剤#2に様々な割合で加えたファルネソール及び第4級アンモニウム化合物の抗菌効果を、実施例1に記載したのと同一の方法を用いて調べた。この結果を表3に示す。
【表4】

【0073】
これらの結果は、迅速な血清系アッセイにおいて、ファルネソールと組み合わせて用いた場合に第4級アンモニウム化合物であるBZK及びBZTの両方が、黄色ブドウ球菌に対して相乗的な抗菌活性を示すことを示す。
【0074】
6.4.実施例4
第4級アンモニウム化合物であるBZK及びBZTの存在下又は非存在下において、基剤#2に加えた様々なEO及びICの抗菌効果を、実施例1に記載したのと同一のアッセイを用いて調べた。用いた様々な薬剤の量を表4に示す。黄色ブドウ球菌に加え、大腸菌(E.coli)を用いて迅速なアッセイをさらに示した。この結果を表4に示す。
【表5】

【0075】
:BZK:塩化ベンザルコニウム(0.12重量%:保存剤レベル);BZT:塩化ベンゼトニウム(0.18重量%:保存剤レベル);他のすべてのEO/IC(0.5重量%)。
【0076】
これらの結果は、迅速な血清系アッセイにおいて第4級アンモニウム化合物と組み合わせて用いた場合に様々な精油が黄色ブドウ球菌に対して迅速な相乗的抗菌活性を示すことを示す。特に、パチョリ油、バジル油、ユーカリ油、タイム油、チョウジ油、ゼラニウム油、及びシトロネラ油が顕著な抗菌効果を示す。
【0077】
6.5.実施例5
基剤#2に加えたファルネソール及び第4級アンモニウム化合物の組合せに様々なビグアニド抗細菌化合物を添加する効果を、実施例1に記載したアッセイを用いて試験した。この結果を表5に示す。
【表6】

【0078】
PHMBがBZT及びファルネソールの組合せの活性を増強することがわかる。
【0079】
6.6.実施例6
本実施例は、様々な抗菌剤との組合せにおいてファルネソールを含むゲルの抗菌活性を示す。抗菌剤の濃度は、leave−onスキンケア製剤中におけるこの構成成分の許容レベルと適合するように選択した。この抗菌活性を、ゲル基剤#1を用いて実施例1に記載した方法を用いてアッセイした。このデータを表6に示した。
【表7】

【0080】
(a)コントロールである基剤の実験のコロニー数は3.4×10cfu/mlであった。
【0081】
(b)コントロールは、表6に示すゲルに用いたのと同一のゲル基剤であるが、いずれの抗菌剤も含まない。
【0082】
この結果は、抗菌剤の活性を増強させるファルネソールの能力が化合物によって変化することを示す。ファルネソールは、第4級アンモニウム化合物である塩化ベンザルコニウム(BZT)及び塩化ベンゼトニウム(BZK)との相乗作用を示す。ビグアニド抗菌化合物の中で、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)の活性は増強したが、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の活性は増強しない。ファルネソールはまた、トリクロサンとの相乗作用は示さず、またトリクロサンの作用を増強もさせない。従って、相乗作用を示すか又は殺生剤/保存剤の作用を増強させるファルネソールの能力は、当該抗菌剤に特異的である。
【0083】
同様の研究を、上記表6と同じ濃度のファルネソール(0.3重量%、すなわち100gのゲルあたり1.35mM)を用いて、様々な抗微生物剤を同一のモル濃度(100gのゲルあたり0.06mM)でこのゲルに加えた。このデータを以下の表7に示した。
【表8】

【0084】
(a)コントロールである基剤の実験のコロニー数は6.4×10cfu/mlであった。
【0085】
(b)コントロールとして、表7に示したゲルに用いたような同一のゲル基剤であるが、いずれの保存剤/殺生剤も含まないものを用いた。
【0086】
(c)トリクロサンは1.04mMの濃度でさえ効果が無いため0.06mMの濃度で実験を行わなかった。
【0087】
表6に示す結果と同様に、ファルネソールは様々な抗菌剤の抗菌活性の増強に様々な効果を有する。ファルネソールはBZTとの組合せにおいて相乗的な抗菌活性を示すようであるが、トリクロサンとの組合せにおいては示さない。PHMBはファルネソールの活性を増強させるようである。相乗作用を示す又は抗微生物剤の活性を増強させるファルネソールの機構は異なる化合物によって変化するが、同一の化合物に対しては濃度に関係なく(重量%であろうと、モル比であろうと)同一の機構である。
【0088】
様々な文献、特許、刊行物、製品説明書等を本明細書を通じて引用した。これらの開示はすべての目的のためにその全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的に使用するための抗菌組成物であって、
(a)0.01重量%〜0.5重量%の濃度で存在する、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される第4級アンモニウム化合物;
(b)0.05重量%〜1.0重量%の濃度で存在する、精油及びその個々の構成要素からなる群から選択される薬剤;及び
(c)0.1重量%〜2.0重量%の濃度で存在するポリヘキサメチレンビグアニド、
を含み、該第4級アンモニウム化合物及び該薬剤は、相乗的な抗菌活性を示す量で存在する、前記組成物。
【請求項2】
局所的に使用するための抗菌組成物であって、
(a)0.01重量%〜0.5重量%の濃度で存在する、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される第4級アンモニウム化合物;
(b)0.05重量%〜1.0重量%の濃度で存在する、精油及びその個々の構成要素からなる群から選択される薬剤;及び
(c)0.1重量%〜2.0重量%の濃度で存在するグルコン酸クロロヘキシジン、
を含み、該第4級アンモニウム化合物及び該薬剤は、相乗的な抗菌活性を示す量で存在する、前記組成物。
【請求項3】
薬剤が、ベルガモット油、クラリセージ油、イランイラン油、ネロリ油、サンダルウッド油、フランキンセンス油、ショウガ油、ペパーミント油、ラベンダー油、ジャスミンアブソリュート、ゼラニウム油(ブルボン)、スペアミント油、チョウジ油、パチョリ油、ローズマリー油、ローズウッド油、ビャクダン油、ティーツリー油、バニラ油、レモングラス油、シダーウッド油、バルサム油、タンジェリン油、ヒノキ油、ヒバ油、ギンコ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、及びスイートオレンジ油からなる群から選択される精油である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
薬剤が、l−シトロネロール、α−アミルシンナムアルデヒド、ライラル、ゲラニオール、ファルネソール、ヒドロキシシトロネラール、イソオイゲノール、オイゲノール、ユーカリプトール、リナロオール及びシトラールからなる群から選択される精油の個々の構成要素である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
精油の個々の構成要素が、ファルネソールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
刺激を減じる量で2種以上の亜鉛塩をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
2種以上の亜鉛塩が、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、酸化亜鉛、及びステアリン酸亜鉛からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
2種以上の亜鉛塩が、それぞれ0.1重量%〜0.5重量%の濃度で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
0.5重量%〜2重量%の濃度で存在するパンテノールをさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
10重量%〜90重量%の濃度で存在するアルコール、15重量%〜70重量%の濃度で存在する水、0.05重量%〜3.0重量%の濃度で存在する増粘剤及び/又はゲル化剤、並びに0.1重量%〜3.0重量%の濃度で存在する皮膚軟化薬をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
被験体の皮膚のある領域で抗菌効果を生じさせるための医薬の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項12】
被験体の粘膜のある領域で抗菌効果を生じさせるための医薬の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2012−107027(P2012−107027A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8901(P2012−8901)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2006−520288(P2006−520288)の分割
【原出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501306715)ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】