説明

第IX因子の部位特異的修飾

本発明は、修飾化第IX因子ポリペプチド、例えば、1個またはそれ以上の導入されたシステイン部位を有する第IX因子ポリペプチドに関する。修飾化第IX因子ポリペプチドは、生体適合性ポリマーと結合していてもよい。本発明はまた、修飾化第IX因子ポリペプチドを作製する方法、および例えば血友病Bを患う患者を処置するために、第IX因子ポリペプチドを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月16日に出願された米国仮出願番号第61/124,568号の利益を主張するものであり、その内容は、それらの全体を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
発明の分野
本発明は、修飾化第IX因子ポリペプチド、例えば、1個またはそれ以上の導入されたシステイン部位を有する第IX因子ポリペプチドに関する。修飾化第IX因子ポリペプチドは、生体適合性ポリマーと結合していてもよい。本発明はまた、修飾化第IX因子ポリペプチドを作製する方法、および例えば血友病Bを患う患者を処置するために、第IX因子ポリペプチドを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血友病は、男性34,500人に1人の割合で生じ、血中における低いもしくは検出不能なFIXタンパク質を生じる凝固第IX因子(FIX)をコードする遺伝子のさまざまな遺伝学的欠損により生じる(Kurachi, et al., Hematol. Oncol. Clin. North Am. 6:991-997, 1992; Lillicrap, Haemophilia 4:350-357, 1998)。不十分なレベルのFIXは、凝固欠損および制御されない出血に起因する症状を生じる。血友病Bは、血漿由来のもしくは組み換えFIXタンパク質の静脈内投与により有効に処置され、すでに開始されている出血を止めるか、または出血が生じないように(予防)する (Dargaud, et al., Expert Opin. Biol. Ther. 7:651-663; Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。有効な予防は、正常レベルの約1%であるFIXの最少トラフレベルを維持することを必要とする(Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。天然のFIX(血漿由来もしくは組み換え)の半減期が約18から24時間であるために、FIXレベルは、ボーラス投与後の3から4日以内に正常レベルの1%未満まで落ち、有効な予防を達成するためには平均して3日毎の繰り返し投与を必要とする(Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。そのような頻繁な静脈内投与は、患者には問題であり、特に子供において有効な予防を達成するのが困難である(Petrini, Haemophilia 13 Suppl 2:16-22, 2007)。より長い半減期を有するFIXタンパク質は、低頻度の投与を可能にすることから、医学的にかなり有益であり得る。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本願の1つの局面は、1個またはそれ以上のポリマー結合部位、例えば、遊離システイン残基を導入することにより修飾されたアミノ酸配列を含むFIXポリペプチド(また、修飾化FIXポリペプチドもしくはFIX変異形と呼ばれる)を提供する。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、R338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異、ならびにT148C、V153C、T163C、L165C、N167C、T169C、T172C、F175C、K201C、K247C、K413C、L414CおよびT415Cからなる群から選択される少なくとも1個のシステイン置換を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、R338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異、ならびにT148C、V153C、T163C、L165C、T172C、F175C、K247C、L414CおよびT415Cからなる群から選択される少なくとも1個のシステイン置換を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、R338A、V86AまたはR338AとV86Aの両方と組み合わせたT169C、K201C、K247CもしくはL414C置換またはT169C、K201C、K247CもしくはL414C置換を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基160-164間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基160-164間に導入されている少なくとも2個、3個、4個または5個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、残基A161とE162の間に挿入される単一システイン残基を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、R338A、V86AまたはR338AとV86Aの両方と組み合わせた残基A161とE162の間に挿入される単一システイン残基を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基160-161間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基161-162間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基162-163間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、アミノ酸残基163-164間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、本明細書に記載された突然変異の組み合わせを含む。
【0005】
ある態様において、修飾化ポリペプチドは、凝固活性を有する。ある態様において、ポリペプチドは、R338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異を含む。ある態様において、ポリペプチドは、突然変異R338AおよびV86Aの両方を含む。
【0006】
本願の他の局面は、置換もしくは導入されたシステイン残基により生体適合性ポリマーと結合した少なくとも1個の置換もしくは導入されたシステインを有する修飾化ポリペプチドを提供する。ある態様において、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコールである。ある態様において、ポリエチレングリコールは、3,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する。ある態様において、ポリエチレングリコールは、5,000ダルトンから85,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する。
【0007】
ある態様において、少なくとも1個の置換もしくは導入されたシステインを有する修飾化ポリペプチドは、機能的に定義されている。ある態様において、少なくとも1個の導入もしくは置換されたシステインが、少なくとも1個の導入もしくは置換されたシステインが存在しない分泌型ポリペプチドの量と比較した場合に、分泌型ポリペプチドの量を70%以上減少させない修飾化FIXポリペプチドが提供される。
【0008】
ある態様において、少なくとも1個の導入もしくは置換されたシステインが、少なくとも1個の導入もしくは置換されたシステインが存在しないポリペプチドと第VIII因子(FVIII)、第XI因子(FIX)もしくは第X因子(FX)の相互作用と比較した場合に、当該ポリペプチドとFVIII、FXIもしくはFXの少なくとも1個の相互作用を50%以上減少させない修飾化FIXポリペプチドが提供される。ある態様において、ポリマーとの結合(少なくとも1個の導入もしくは置換されたシステインによる)が、非結合ポリペプチドとFVIII、FXIもしくはFXの相互作用と比較した場合に、当該ポリペプチドとFVIII、FXIもしくはFXの少なくとも1個の相互作用を50%以上減少させない修飾化FIXポリペプチドが提供される。ある態様において、ポリマーとの結合が非結合ポリペプチドと比較した場合に少なくとも30%までポリペプチドの血清半減期を増大させる修飾化FIXポリペプチドが提供される。ある態様において、少なくとも100ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する修飾化FIXポリペプチドが提供される。
【0009】
本願はまた、突然変異R338AおよびV86Aを含む、FIXポリペプチドを提供する。ある態様において、ポリペプチドは、少なくとも700ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する。
【0010】
本願はまた、修飾化FIXポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤であって、パイロジェンフリーである医薬製剤を提供する。
【0011】
本願はまた、血友病Bを処置する方法であって、処置を必要とする対象に治療上有効量の本明細書に記載された医薬製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
本願はまた、修飾化ポリペプチドをコードするDNA配列および当該DNA配列を導入した真核生物宿主細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、野生型FIXまたはFIX突然変異タンパク質を導入したHKB11細胞からの上清におけるFIXのウエスタンブロット解析を示す。抗-第IX因子ポリペプチド-HRP抗体を用いて、FIXタンパク質を検出した。
【図2】図2は、野生型FIXまたはさまざまなFIX突然変異タンパク質を導入したHKB11細胞からの上清におけるFIX発現レベル、活性および比活性を示す。各個々の実験における野生型FIXの発現および活性に基づいて野生型発現および活性の割合を計算し、それは、3または4回の独立したトランスフェクションの平均を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。野生型タンパク質の発現レベルは、実験間で0.5から2 μg/mLの間で変わり、野生型FIXの比活性は、実験に依存して80から150 IU/mgの間で変わった。
【図3】図3は、表形式で図2に記載された結果を示す。* Cat = 触媒ドメイン、AP = 活性化ペプチド。
【図4】図4は、8つの種からの活性化ペプチド内のFIX配列の多配列アライメントを示す。Vector NTI(Informax)での多配列アルゴリズムを用いて、8つの種からの成熟したFIXのアミノ酸配列を並べた。活性化ペプチドの領域のみを示す。ダッシュ記号は、アライメントを最大化するためにギャップが挿入されたことを示す。
【図5】図5は、方法I (Q-Sepharose(商標))により精製されたL414C-PEGのゲル解析を示す。フロースルー(FT)および溶出物(EL)を回収して、Centricon(登録商標)により少量まで濃縮した。ゲル電気泳動後、同じゲルを、順番に、クマシーブルー(図5a)、ヨード(図5b)および銀染色(図5c)で染色した(各染色の間に脱染色工程を含む)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
血中タンパク質の半減期を増大させる1つの方法は、ポリマーとの化学的結合であり、それは、タンパク質を分解および/または除去から保護する(Molineux, Cancer Treat. Rev. 28 Suppl A:13-16, 2002; Duncan, et al., Clin. Pharmacokinet. 27:290-306, 1994; Werle, et al., Amino Acids 30:351-367, 2006)。最も一般に用いられるポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、PEGとの結合は、インターフェロン、GCSFおよびFVIIIを含む多くのタンパク質の半減期を増大させることに成功している。
【0015】
ポリエチレングリコール(PEG)と分子との共有結合であるPEG化は、インビトロでのタンパク質の半減期を増大させることが証明された1つの方法である。PEGは、直鎖もしくは分岐型であり得て、異なる特徴を有する異なる分子を産生し得る。ペプチドまたはタンパク質の半減期を増大させることに加えて、PEG化は、治療剤に対する抗体産生を減少させ、プロテアーゼ消化からタンパク質を保護し、腎臓ろ過で除去されるタンパク質の量を減少させるために使用される(Harris, et al., Clin. Pharmacokinet. 40:539-551, 2001)。さらに、PEG化はまた、タンパク質の全体の安定性および溶解性を増大させ得る。最後に、PEG化タンパク質の持続的血中濃度は、薬剤のT/P比(trough to peak level)を減少させることにより副作用効果の程度を減少させ、その結果、早期の時点で生理学的レベルを超える(super-physiological)タンパク質を導入する必要性を除去することができる。
【0016】
タンパク質のPEG化は、2つの一般的な方法により達成され得る。第1の方法において、PEGは、表面に曝された残基の第一級アミン、特にリシン残基と無作為に結合される。巨大なポリマー、例えばPEGを用いて第一級アミン(N末端およびリシン)を標的とすることによるFIXの無作為な修飾が試みられてきた(例えば、米国公開番号2005/172459を参照のこと)。無作為なPEG化の不利な点は、生じた分子が既定の構造を有さず、タンパク質の活性がかなり減少し得ることである。
【0017】
部位特異的PEG化と呼ばれる第2の方法において、タンパク質は、遊離システイン残基(すなわち、ジスルフィド結合に関与しないシステイン)の導入により修飾され、PEGは、例えば、特にGM-CSF (Doherty, et al., Bioconjug. Chem. 16:1291-1298, 2005)、FVIII (米国公開番号2006/0115876)およびEPO (Long, et al., Exp. Hematol. 34:697-704, 2006)について記載されたとおりのマレイミド化学を用いて当該部位に結合し得る。部位特異的PEG化は、既定の構造を有する分子を生じ、結合部位の注意深い選択によりタンパク質活性についての負の効果を最小限にする機会を提供する。部位特異的ポリマー結合が成功するために、タンパク質は、天然で生じる遊離システイン残基を有していてはならず、タンパク質中に導入された新規システインのみがポリマーとの結合に利用可能な唯一のシステインである。PCT国際公開WO 2007/135182は、ポリマーとの結合を目的としてFIXのシステイン置換を作製する一般的な方法を開示しているが、これらの置換部位のどれが実際に当該目的のために使用され得るかを証明していない。
【0018】
アミノ酸配列および利用可能な結晶構造に基づいて、FIXは、新規な遊離システインを産生する突然変異がポリマー結合のための単一の既定された部位を作製するようないずれの遊離システイン残基も有していないように考えられる。遊離システインの導入は、遊離スルフヒドリル基の反応性のために、タンパク質発現についての有害効果を有し得ることが記載されている。新規システイン残基の導入は、タンパク質上の表面に露出した位置に存在すべきであり、タンパク質の機能を破壊すべきではないか、もしくはタンパク質発現を減少させるべきではない。このために、遊離システインを導入するための適当な部位の同定は、自明ではないか、もしくは明らかではない。
【0019】
天然のFIXは、発現すると約55,000ダルトンの一本鎖糖タンパク質である。それは、4つの構造ドメインを有している: Glaもしくはγカルボキシグルタミン酸-リッチドメイン; EGF様領域; 活性化ペプチド; および活性部位を含む触媒ドメイン(Thomson, Blood 67:565-572, 1986)。FIXは、461個のアミノ酸の一本鎖ポリペプチドとして肝臓で合成され、ゴルジ体および小胞体を通過する際に大規模な翻訳後修飾を受ける(Nemerson, et al., CRC Crit. Rev. Biochem. 9:45-85, 1980; Stenflo, et al., Annu. Rev. Biochem. 46:157-172, 1977)。シグナル配列およびプロペプチドが除去され、415個のアミノ酸を有する成熟したタンパク質(配列番号1で示される)を生じる(Choo, et al., Nature 299:178-180, 1982; Kurachi, et al., Proc Natl Acad Sci USA 79:6461-6464, 1982)。効率的なγカルボキシル化は、FIXの凝固活性のために重要であり、ヒトにおいて12個のGlaがN末端Glaドメイン内に作製される(Gla36およびGla40におけるγカルボキシル化は、機能のために重要ではない)(DiScipio, et al., Biochemistry 18:899-904, 1979; Gillis, et al., Protein Sci. 6:185-196, 1997)。さらに、天然のFIXは、2個のN結合グリコシル化部位(N157、N167)、6個のO結合グリコシル化部位(S53、S61、T159、T169、T172、T179)、ならびにSerリン酸化(S158)、チロシン硫酸化(Y155)およびβ-ヒドロキシル化(D64)についての1個の部位を含む(McMullen, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 115: 8-14, 1983)。
【0020】
損傷の結果として血管壁に露出すると、活性化された第VII因子(FVII)は、組織因子(TF)と複合体を形成することにより通常の止血過程を開始する。次いで、複合体はFIXを活性化し; 活性化型は、第IX因子ポリペプチドa (FIXa)と呼ばれる。FIXの活性化ペプチドは、FXIaまたは組織因子(TF)/FVIIa複合体により、2個の部位でタンパク質分解切断により除去され、触媒的に活性な分子であるFIXaを産生する。FIXaおよび第VIIIa因子(FVIIIa)は、FXを第Xa因子(FXa)に変換し、順にプロトロンビンをトロンビンに変換する。最終的にトロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変換し、フィブリン血栓の形成を生じる。
【0021】
野生型FIXは、多くの翻訳後修飾(そのいくつかは、インビボ薬物動態プロファイルにおいて役割を果たすことが示されている)を有するので、システイン残基は、これらの他の修飾に影響を与えない位置に導入され得る。FIXは、いったん産生されると、血友病Bについての有効な処置であるために酵素活性を保持し、FVIII、FXIおよびFXと相互作用するべきである。導入されるシステイン残基または結合するポリマーは、これらの相互作用および機能を妨害するべきではない。
【0022】
本出願は、ポリマー結合についての部位を提供するためにシステイン残基が導入されたFIXの多くの例示的な変異形を提供する。さらに、本出願は、これらの変異形が哺乳類細胞で発現し得ることを証明し、凝固アッセイでの活性を証明する。最後に、これらの修飾部位は、FIXの比活性を高める変更と組み合わせることができ、それは、突然変異R338Aおよび突然変異V86Aを含むがこれらに限定されない(Chang, et al., J. Biol. Chem. 273:12089-12094, 1998; Chang, et al, J. Biol. Chem. 277:25393-25399, 2002)。突然変異R338AおよびV86Aの一方もしくは両方との組み合わせは、ポリマー結合部位の付加から生じる活性の減少を補い、修飾化ポリペプチドの比活性が野生型FIXと同様であるか、もしくはそれよりも高くなるようにする。
【0023】
本願はまた、一部において、最少の機能妨害を示し、したがって、FIXのバイオアベイラビリティを増大させることについての有用性を有するポリマー結合化FIXポリペプチドを提供する。これらのポリマー結合化ポリペプチドは、FIXの比活性を高める変更と組み合わせることができ、それは、突然変異R338Aおよび/または突然変異V86Aを含むがこれらに限定されない。FIXの比活性を高める変更は、配列修飾またはポリマー結合による凝固活性の潜在的な欠損を補い得て、それはまた、低レベルのタンパク質で効果を与えることにより、修飾化分子の効果を潜在的に延長し得る。
【0024】
修飾化FIXポリペプチド
本願は、ポリマー結合のための1個またはそれ以上の部位を含むFIXポリペプチド、すなわち、修飾化FIXポリペプチドを提供する。本明細書で使用される「第IX因子ポリペプチド」は、内在的な凝固経路のメンバーであり、血液凝固のために重要であるヒト血漿FIX糖タンパク質を意味する。この定義は、ヒト血漿FIX糖タンパク質の天然および組み換え型を含むことが理解されるべきである。他に特定もしくは指示がなければ、本明細書で使用されるFIXは、凝固におけるその通常の役割でのすべての機能的ヒトFIXタンパク質分子を意味し、そのすべての断片、類似体および誘導体を含む。本出願のポリペプチドに言及するとき、「断片」、「誘導体」、「類似体」および「変異形」なる用語は、実質的に同一の生物学的機能もしくは活性を保持するポリペプチドの断片、誘導体、類似体および変異形を意味する。
【0025】
FIXポリペプチドは、例えば、FIX、FIXaおよびFIX活性を有するFIXの切断型を含むがこれらに限定されない。少なくともある程度のFIX活性を維持する上記のいずれかの生物学的に活性な断片、欠失変異形、置換変異形もしくは付加変異形はまた、FIXポリペプチドとして使用され得る。
ある態様において、FIXポリペプチドは、配列番号1と少なくとも約70%、80%、90%または95%同一のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、生物学的に活性である。生物学的活性は、例えば、本明細書に記載された凝固アッセイにより決定され得る。
【0026】
修飾化FIXポリペプチドはまた、アミノ酸の保存的置換を含み得る。保存的置換は、あるアミノ酸の類似の特性を有する他のアミノ酸への置換として当分野において認識されており、例えば、下記の変化を含む: アラニンからセリン; アルギニンからリシン; アスパラギンからグルタミンもしくはヒスチジン; アスパラギン酸からグルタミン酸; システインからセリン; グルタミンからアスパラギン; グルタミン酸からアスパラギン酸; グリシンからプロリン; ヒスチジンからアスパラギンもしくはグルタミン; イソロイシンからロイシンもしくはバリン; ロイシンからバリンもしくはイソロイシン; リシンからアルギニン; メチオニンからロイシンもしくはイソロイシン; フェニルアラニンからチロシン、ロイシンもしくはメチオニン; セリンからスレオニン; スレオニンからセリン; トリプトファンからチロシン; チロシンからトリプトファンもしくはフェニルアラニン; およびバリンからイソロイシンもしくはロイシン。ある態様において、配列番号1のFIXポリペプチドは、1個またはそれ以上のポリマー結合部位の導入に加えて、1-30個、1-20個または1-10個の保存的アミノ酸置換を含む。
【0027】
一文字表記、その対応するアミノ酸および三文字表記は、下記のとおりである: A、アラニン(Ala); C、システイン(Cys); D、アスパラギン酸(Asp); E、グルタミン酸(Glu); F、フェニルアラニン(Phe); G、グリシン(Gly); H、ヒスチジン(His); I、イソロイシン(Ile); K、リシン(Lys); L、ロイシン(Leu); M、メチオニン(Met); N、アスパラギン(Asn); P、プロリン(Pro); Q、グルタミン(Gln); R、アルギニン(Arg); S、セリン(Ser); T、スレオニン(Thr); V、バリン(Val); W、トリプトファン(Trp); Y、チロシン(Tyr); およびノルロイシン(Nle)。
【0028】
本願の1つの局面は、ポリマー結合部位が非内因性システイン残基により導入される修飾化FIXポリペプチドを提供する。1個またはそれ以上の内因性FIXアミノ酸残基をシステイン残基で置換するか、または1個またはそれ以上のシステインをFIXポリペプチドに付加することによりシステイン残基が置換され得る。システイン残基の付加は、2個の存在するアミノ酸残基間、例えば、ヒトFIXのアミノ酸残基160-161の間、161-162の間、162-163の間または163-164の間に存在し得る。
【0029】
使用されるアミノ酸置換についての用語は、下記のとおりである。最初の文字は、ヒトFIXの位置に天然で存在するアミノ酸残基を示す。次の番号は、成熟したヒトFIXアミノ酸配列(配列番号1)中の位置を示す。第2の文字は、天然のアミノ酸を置換する(取り換える/置き換える)異なるアミノ酸を示す。例えば、R338Aは、配列番号1の338位におけるアルギニン残基がアラニン残基で置換されていることを示す。
【0030】
本明細書で使用されるFIX残基の番号システムは、成熟したヒトFIXタンパク質のそれを意味し、残基1は、シグナル配列およびプロペプチドの除去後の成熟したFIXポリペプチドの最初のアミノ酸を示す。天然もしくは野生型FIXは、配列番号1で示されるとおり、成熟した完全長ヒトFIX分子である。
【0031】
ある態様において、結合部位は、細胞内でのタンパク質の機能またはその発現を低減させないFIX中の位置で改変される。1個またはそれ以上のポリマー結合部位を有するFIXポリペプチドを設計するためにいくつかの基準が適用され得る。ある態様において、結合部位は、表面に露出している。表面露出は、Autin, et al., (J. Thromb. Haemost. 3:2044-2056, 2005)で決定されるとおり、表面露出面積に基づいて決定され得る。ある態様において、結合部位の導入は、血友病Bと関連することが既知である突然変異を導入しない。既知の突然変異は、ワールドワイドウェブ(kcl.ac.uk/ip/petergreen/haemBdatabase.html)および表1で見出され得る。
【0032】
1個またはそれ以上の導入されたポリマー結合部位を有する修飾化FIXポリペプチドの特性とコントロールポリペプチドの特性を比較することが好ましくあり得る。比較のための特性は、例えば、可溶性、活性、血清半減期、ポリマー結合および結合特性を含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、生体適合性ポリマーと結合し得る。比較のための最も適当なコントロールポリペプチドを選択することは、当業者の範囲内である。ある態様において、コントロールポリペプチドは、1個またはそれ以上の導入されたポリマー結合部位を除いて修飾化ポリペプチドと同一である。ある態様において、コントロールポリペプチドは、当該コントロールポリペプチドがポリマーと結合しないことを除いて修飾化ポリペプチドと同一である。例えば、ポリペプチドは、野生型FIXポリペプチドならびに1個またはそれ以上の活性化突然変異、例えば、R338Aおよび/またはV86Aを含むFIXポリペプチドを含む。
【0033】
本願の1つの局面は、コントロールポリペプチドを超えて増加したインビトロもしくはインビボ安定性を有する修飾化FIXポリペプチドを提供する。増大した血清半減期およびインビボ安定性は、治療有効性を達成するために必要とされる投与頻度を減少させることが好ましくあり得る。したがって、ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、コントロールポリペプチドと比較して約20%、約30%、約40%、約60%、約80%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%または約1000%まで増加した血清半減期を有する。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも10日、または少なくとも20日もしくはそれ以上の血清半減期を有する。ある態様において、増大した血清半減期を示すFIXポリペプチドは、PEG化されている。
【0034】
ポリペプチド剤を患者に投与する文脈において本明細書で使用される「半減期」なる用語は、患者における薬剤の血中濃度が半分まで減少するのに必要とされる時間として定義される。薬物動態解析ならびに半減期およびインビボ安定性を決定するための方法は、当業者に既知である。詳細は、Kenneth, et al., Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and in Peters, et al., Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)に見出され得る。また、t-αおよびt-β半減期ならびに曲線下面積(AUC)のような薬物動態パラメーターを記載した“Pharmacokinetics,” M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982)を参照のこと。
【0035】
修飾化FIXポリペプチドの活性は、絶対値として、例えば、ユニットで、またはコントロールポリペプチドの活性の割合として記載され得る。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、コントロールタンパク質と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%または約80%以上減少しない比活性(specific activity)を有し得る。例えば、修飾化FIXポリペプチドは、修飾化ポリペプチドがコントロールの比活性と比較して少なくとも約20%の比活性を維持する場合に、コントロールFIXポリペプチドと比較して約80%以上減少しない比活性を有し得る。第IX因子ポリペプチド比活性は、凝固カスケードにおいて機能する能力として定義され得て、活性化血小板上においてFVIIIaとの相互作用によるFXaの形成を誘導するか、または血栓の形成を補助し得る。活性は、例えば、McCarthy, et al., (Thromb Haemost. 87(5):824-830, 2002)に記載された血栓解析のような技術、および当業者に既知の他の技術によりインビトロで評価され得る。活性はまた、血友病Bについての遺伝学的突然変異を有するように意図的に交配されたいくつかの動物系統(そのような系統から産生された動物は、FIXを欠損している)のうちの1つを用いてインビボで評価され得る。そのような系統は、さまざまな起源、例えば、the Division of Laboratories and Research, New York Department of Public Health, Albany, N.Y.およびthe Department of Pathology, University of North Carolina, Chapel Hill, N.C.から入手可能であるがこれらに限定されない。これらの起源の両方は、例えば、イヌ血友病Bを患うイヌを提供する。あるいは、FIXが欠損したマウスを利用することができる(Sabatino, et al., Blood 104:2767-2774, 2005)。FIX活性について試験するために、試験ポリペプチドを疾患動物に注入し、小さく切り、健常なコントロールと出血時間を比較する。
【0036】
ヒト野生型FIXは、約200ユニット/mgの比活性を有する。第IX因子ポリペプチドの1ユニットは、通常の(プールされた)ヒト血漿の1ml中に存在するFIXの量(100%のFIXレベルに相当する)として定義されている。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、少なくとも100ユニット/mg FIXポリペプチドの比活性を有する。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、少なくとも約120、約140、約160、約180、約200、約220、約240、約260ユニットまたはそれ以上/mg FIXポリペプチドの比活性を有する。ある態様において、FIXの比活性は、APTTまたは活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイを用いて測定される(例えば、Proctor, et al., Am. J. Clin. Pathol. 36:212, 1961に記載されており、実施例を参照のこと)。
【0037】
FIXポリペプチドは、肝臓もしくは腎臓細胞のような細胞に発現すると、細胞内機構により合成され、翻訳後修飾を受けて、当該細胞により細胞外環境に分泌され得る。したがって、細胞から分泌されるFIXポリペプチドの量は、タンパク質翻訳の過程および細胞外分泌の両方に依存する。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、コントロールタンパク質の分泌量と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%または約80%以上減少しない量で分泌され得る。例えば、修飾化FIXポリペプチドは、当該修飾化FIXポリペプチドがコントロールと比較して少なくとも約20%の量で分泌される場合に、コントロールFIXポリペプチドと比較して、約80%以上減少しない量で分泌され得る。分泌されるFIXポリペプチドの量は、例えば、任意の既知の技術を用いて細胞外培地中のタンパク質レベルを決定することにより測定され得る。タンパク質定量についての伝統的な方法論は、2-Dゲル電気泳動法、質量分析法および抗体結合法を含む。生物学的サンプル中のタンパク質レベルをアッセイする方法は、例えば、抗体に基づく技術、例えば、イムノブロッティング(ウエスタンブロッティング)、免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を含む。
【0038】
ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、コントロールタンパク質とFVIII、FXIまたはFXの少なくとも1個との相互作用と比較して、約40%、約50%、約60%、約70%または約80%以上減少しないレベルでFVIII、FXIまたはFXの少なくとも1個と相互作用する。例えば、修飾化FIXポリペプチドは、当該修飾化FIXポリペプチドがコントロールと比較して少なくとも約20%のレベルでFVIII、FXIまたはFXの少なくとも1個と相互作用する場合に、コントロールFIXポリペプチドと比較して、約80%以上減少しないレベルでFVIII、FXIまたはFXの少なくとも1個と相互作用する。FIXと凝固カスケードの他のメンバーとの結合は、当業者に既知の任意の方法により決定され得て、例えば、Chang, et al., (J. Biol. Chem. 273:12089-12094, 1998)に記載された方法を含む。
【0039】
本出願は、一部において、1個またはそれ以上のポリマー結合部位を含むFIXポリペプチドを提供する。ある態様において、結合部位は、遊離システイン残基である。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T148C、V153C、T163C、L165C、N167C、T169C、T172C、F175C、K201C、K247C、K413CおよびT415Cからなる群から選択される少なくとも1個のシステイン置換、ならびに(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T148C、V153C、T163C、L165C、T172C、F175C、K247CおよびT415Cからなる群から選択される少なくとも1個のシステイン置換、ならびに(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T148Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) V153Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T163Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) L165Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T172Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) F175Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) K247Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、FIXポリペプチドは、(i) T415Cおよび(ii) 突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。
【0040】
ある態様において、FIXポリペプチドは、導入されたシステイン残基でPEG化される。ある態様において、PEG化は、対応する非PEG化FIXポリペプチドと比較して、少なくとも約20%、約30%、約40%、約60%、約80%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%または約1000%までFIXポリペプチドの血清半減期を増大させる。
【0041】
ある態様において、T169C、K201C、K247CまたはL414C置換を含むFIXポリペプチドが提供される。ある態様において、これらのポリペプチドはさらに、突然変異R338A、突然変異V86Aまたはその両方を含む。ある態様において、これらのポリペプチドは、導入されたシステイン残基でPEG化されており、PEG化は、対応する非PEG化FIXポリペプチドと比較して、少なくとも約20%、約30%、約40%、約60%、約80%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%または約1000%までFIXポリペプチドの血清半減期を増大させる。
【0042】
FIXの活性化ペプチド(AP)は、当該ドメインがタンパク質の触媒活性を減少させることなく除去され得ることが示されており、APがFIXからFIXaの活性化時に除去されるので、ポリマーの部位特異的結合のための魅力的なドメインである(Begbie, et al., Thromb. Haemost. 94:1138-1147, 2005)。したがって、例えばポリマー結合によるAPドメインの修飾は、FIXaの触媒活性を妨害する可能性が高くない。APの結晶構造が存在しないので、当該ドメイン内の残基の溶媒露出度を決定することができない。しかしながら、APが6個のグリコシル化部位を含むという事実は、当該ドメインの多くが溶媒露出していることを示し、それにより、当該ドメインを、部位特異的PEG化を含む部位特異的ポリマー修飾のための魅力的な領域にする。APは、触媒活性を減少させることなく除去され得ることが報告されているが、このドメインは、天然のFIX上に生じる多くの翻訳後修飾を含み、N結合グリコシル化部位(Asn157、Asn167)の両方、チロシン硫酸化部位(Tyr155)、セリンリン酸化(Ser158)、ならびにO結合グリコシル化のための4個の部位(Thr159、Thr169、Thr172、Thr179)を含む。
【0043】
翻訳後修飾は、タンパク質の機能のために重要であることが知られており、特に、インビボで薬物動態を決定することにおいて重要な役割を果たし得る。FIXの場合において、AP内の特定の翻訳後修飾がタンパク質のインビボ回収率(注射後すぐに血中に存在するタンパク質の割合)の重要な決定因子であることを示す証拠が存在し、それは、血友病B患者の治療効果に影響を与え得る(White, et al., Thromb. Haemost. 78:261-265, 1997)。したがって、FIXのAP内の天然に生じる翻訳後修飾を維持することが好ましい。
【0044】
本願は、一部において、FIXの活性化ペプチド、特にアミノ酸残基160から164の間に導入された1個またはそれ以上のポリマー結合部位、例えば遊離システイン残基を含むFIXポリペプチドを提供する。8つの種に由来するFIX配列の多配列アライメントは、マウス、ラットおよびモルモットの配列のすべては、活性化ペプチド中に他の種(ヒト、アカゲザル、イヌ、ウサギ、ブタ)では見出されないさらなるアミノ酸(7から10残基)を有することを証明した(図4)。これらのさらなる配列は、E160とE162の間に位置する。これは、少なくとも10個のアミノ酸残基の挿入が当該部位でのFIX構造において耐容であることを示す。ある態様において、30個、25個、20個、18個、16個、14個または12個までのアミノ酸残基がヒトFIXのアミノ酸残基160から164の間に挿入され得る。ある態様において、10個までのアミノ酸が挿入される。ある態様において、9個までのアミノ酸が挿入される。
【0045】
8つの種に由来するFIX間の多配列アライメントを行うために使用される基準に依存して、ラット、マウスおよびモルモットにおけるさらなるアミノ酸が見出される明らかな部位は、ヒトFIXのE160とA161の間、A161とE162の間、E162とT163の間、またはT163とI164の間であるように変わり得る。ある態様において、1個またはそれ以上のアミノ酸、例えば、1個またはそれ以上のシステイン残基がE160とA161の間に挿入され、1個またはそれ以上のアミノ酸がA161とE162の間に挿入される。ある態様において、1個またはそれ以上のアミノ酸、例えば、1個またはそれ以上のシステイン残基がE160とA161の間に挿入され、1個またはそれ以上のアミノ酸がE162とT163の間に挿入される。ある態様において、少なくとも1個のシステイン残基を含む1個またはそれ以上のアミノ酸がA161とE162の間に挿入され、少なくとも1個のシステイン残基を含む1個またはそれ以上のアミノ酸がE162とT163の間に挿入される。上記の態様のいくつかにおいて、少なくとも1個のシステイン残基を含む1個またはそれ以上のアミノ酸がT163とI164の間に挿入される。ある態様において、少なくとも1個のシステイン残基を含む全30個、25個、20個、18個、16個、14個または12個までのアミノ酸がヒトFIXのアミノ酸残基161から164の間に挿入される。ある態様において、少なくとも1個のシステイン残基を含む全10個までのアミノ酸がヒトFIXのアミノ酸残基160から164の間に挿入される。ある態様において、少なくとも1個のシステイン残基を含む全9個までのアミノ酸がヒトFIXのアミノ酸残基160から164の間に挿入される。ある態様において、1から5個のシステイン残基が導入される。
【0046】
ある態様において、10個までのアミノ酸がE160とA161の間、A161とE162の間、E162とT163の間、またはT163とI164の間に挿入され得て、挿入された配列は、1から5個のシステイン残基を含み、残りの残基は、Ala、Ser、Gly、AspおよびIleの混合からなるものであり得る。ある態様において、挿入される配列は、予測されるヒトT細胞エピトープを避けるように設計され得て、その結果、修飾化タンパク質が患者に投与されるときに、ヒト免疫系による挿入された配列の認識の機会を減少させ得る。
【0047】
ある態様において、単一システイン残基は、A161とE162の間に挿入される。ある態様において、ポリペプチドはさらに、R338A、V86Aまたはその両方を含む。
【0048】
本願の1つの局面は、少なくとも1個またはそれ以上の導入されたポリマー結合部位(少なくとも1個のシステイン残基を含む)、ならびにFIXの活性を増大させる1個またはそれ以上の突然変異を含む修飾化FIXポリペプチドを提供する。活性化FIX突然変異は、例えば、突然変異R338AおよびV86Aを含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、突然変異R338Aを含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、突然変異V86Aを含む。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、突然変異R338AおよびV86Aの両方を含む。
【0049】
本願のさらなる局面は、増大した比活性を有するFIXポリペプチドを提供する。ある態様において、FIXポリペプチドは、突然変異R338AおよびV86Aを含む。ある態様において、ポリペプチドは、少なくとも約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200、約1400、約1600、約1800または約2000ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する。比活性は、例えばAPTTアッセイを用いて決定され得る。これらのポリペプチドは、例えば血友病Bを患う患者における治療剤として有用である。これらのポリペプチドはさらに、突然変異または修飾、例えば、ポリマー結合部位(本明細書に記載された少なくとも1個のシステイン残基を含む)を含み得る。
【0050】
修飾化FIXポリペプチドの作製
ポリマー結合部位を導入するために、アミノ酸残基が挿入されるか、もしくは置換され得る。例えば、システイン残基は、FIXのアミノ酸配列を改変することにより導入され得る。アミノ酸配列の改変は、さまざまな技術により達成され得る。例えば、アミノ酸配列をコードする核酸配列の修飾は、部位特異的突然変異誘発により達成され得る。部位特異的突然変異誘発のための技術は、当業者に既知であり、例えば、Zoller et al., (DNA 3:479-488, 1984)またはHorton, et al., (Gene 77:61-68, 1989, pp. 61-68)に記載されている。したがって、FIXのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を用いて、最適な改変を導入することができる。同様に、特定のプライマーによりポリメラーゼ連鎖反応を用いてDNA構築体を作製する手順は、当業者に既知である(例えば、PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USAを参照のこと)。
【0051】
FIXポリペプチドをコードする核酸構築体はまた、確立された標準的な方法、例えば、Beaucage, et al., (Gene Amplif. Anal. 3:1-26, 1983)に記載されたホスホアミダイト法により合成的に製造され得る。ホスホアミダイト法によると、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成機で合成され、精製され、アニーリングされ(annealed)、連結され、そして適当なベクターにクローン化される。ヒトFIXポリペプチドをコードするDNA配列はまた、例えば、米国特許第4,683,202号; またはSaiki, et al., (Science 239:487-491, 1988)に記載されたとおり、特定のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により製造され得る。さらに、核酸構築体は、合成およびゲノム起源の混合物、合成およびcDNA起源の混合物、またはゲノムおよびcDNA起源の混合物であり得て、それは、標準的な技術に基づいて、核酸構築体全体のさまざまな部分に相当する合成、ゲノムもしくはcDNA起源の断片(所望による)を連結することにより製造され得る。
【0052】
FIXポリペプチドをコードするDNA配列は、組み換えDNA手順を用いて組み換えベクターに挿入され得る。ベクターの選択は、しばしば、ベクターが導入されるべき宿主細胞に依存する。ベクターは、自律複製ベクターまたは組み込みベクターであり得る。自律複製ベクターは、染色体外に存在し、その複製は染色体複製から独立しており、例えばプラスミドである。組み込みベクターは、宿主細胞ゲノムに組み込まれて、それが組み込まれた染色体と共に複製するベクターである。
【0053】
ベクターは、修飾化FIXをコードするDNA配列が当該DNAの転写、翻訳または加工のために必要とされるさらなる断片、例えば、プロモーター、ターミネーターおよびポリアデニル化部位と操作可能に結合した発現ベクターであり得る。一般に、発現ベクターは、プラスミドもしくはウイルスDNAに由来し得るか、またはその両方のエレメントを含み得る。「操作可能に結合する」なる用語は、断片がそれらの意図される目的のために一致して機能する(例えば、転写がプロモーターで開始され、当該ポリペプチドをコードするDNA配列を介して進む)ように配置されていることを示す。
【0054】
FIXポリペプチドを発現させることにおける使用のための発現ベクターは、クローン化遺伝子もしくはcDNAの転写を標的とすることができるプロモーターを含み得る。プロモーターは、宿主細胞における最適な転写活性を示す任意のDNA配列であり得て、それは、宿主細胞に対する同種もしくは異種タンパク質をコードする遺伝子に由来し得る。
【0055】
哺乳類細胞におけるFIXポリペプチドをコードするDNAの転写を標的とするための適当なプロモーターは、例えば、SV40プロモーター(Subramani, et al., Mol. Cell Biol. 1:854-864, 1981)、MT-I (メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter, et al., Science 222:809-814, 1983)、CMVプロモーター(Boshart, et al., Cell 41:521-530, 1985)、またはアデノウイルス2主要後期プロモーター(Kaufman et al.,, Mol. Cell Biol, 2:1304-1319, 1982)である。
【0056】
FIXポリペプチドをコードするDNA配列はまた、所望により、適当なターミネーター、例えば、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter, et al., Science 222:809-814, 1983)またはTPIl (Alber et al., J. MoI. Appl. Gen. 1:419-434, 1982)もしくはADH3 (McKnight, et al., EMBO J. 4:2093-2099, 1985)ターミネーターと操作可能に結合し得る。発現ベクターはまた、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルを含み得る。ポリアデニル化シグナルは、SV40由来の初期もしくは後期ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5 EIb領域に由来するポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto, et al., Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)、またはヒトFIX遺伝子に由来するポリアデニル化シグナルを含む。発現ベクターはまた、エンハンサー配列、例えば、SV40エンハンサーを含み得る。
【0057】
本発明のFIXポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に向けるために、天然のFIX分泌シグナル配列が使用され得る。あるいは、分泌シグナル配列(また、リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列として既知である)は、組み換えベクター中に提供され得る。分泌シグナル配列は、正確なリーディングフレームで、FIX類似体をコードするDNA配列に加えられ得る。分泌シグナル配列は、通常、ペプチドをコードするDNA配列の5'位に位置する。シグナル配列は、例えば、MPIF-1シグナル配列およびスタニオカルシンシグナル配列を含む。
【0058】
FIXポリペプチドをコードするDNA配列、プロモーター、ならびに所望によりターミネーターおよび/または分泌シグナル配列を連結して、複製のために必要な情報を含む適当なベクターにそれらを挿入するために使用される方法は、当業者に既知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照のこと)。
【0059】
哺乳類細胞に導入し、当該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法は、例えば、Kaufman, et al., (J. Mol. Biol. 159:601-621, 1982); Southern, et al., (J. Mol. Appl. Genet. 1:327-341, 1982); Loyter, et al., (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:422-426, 1982); Wigler, et al., (Cell 14:725-731, 1978); Corsaro, et al., (Somatic Cell Genetics 7:603-616, 1981), Graham, et al., (Virology 52:456-467, 1973); およびNeumann, et al., (EMBO J. 1:841-845, 1982)に記載されている。クローン化DNA配列は、例えば、リポフェクション、DEAE-デキストラン-仲介トランスフェクション、マイクロインジェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、レトロウイルス送達、エレクトロポレーション、ソノポレーション、レーザー照射、マグネットフェクション、天然の形質転換、および遺伝子銃形質転換により培養哺乳類細胞に導入され得る(例えば、Mehier-Humbert, et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 57:733-753, 2005を参照のこと)。外因性DNAを発現する細胞を同定および選択するために、一般に、選択可能な表現型を与える遺伝子(選択可能マーカー)が、関心のある遺伝子またはcDNAと共に細胞に導入される。例えば、選択可能マーカーは、薬剤に対する耐性を与える遺伝子、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートを含む。選択可能マーカーは、増幅可能である選択可能マーカーであり得て、それは、配列が連結された場合にマーカーおよび外因性DNAの増幅を可能にする。例えば、増幅可能である選択可能マーカーは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびアデノシンデアミナーゼを含む。適当な選択可能マーカーを選ぶことは、当業者の範囲内である(例えば、米国特許第5,238,820号を参照のこと)。
【0060】
細胞にDNAが導入された後、それらは、適当な増殖培地で培養され、関心のある遺伝子を発現する。本明細書で使用される「適当な増殖培地」なる用語は、細胞の成長および活性FIXポリペプチドの発現のために必要な栄養および他の構成要素を含む培地を意味する。
【0061】
一般に培地は、例えば、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須糖、ビタミン、塩、リン脂質、タンパク質および成長因子を含み、ビタミンK依存性タンパク質、例えば、FIXの場合には、ビタミンKがまた提供され得る。次いで、安定的な方法で選択可能マーカーを発現する細胞の増殖について選択するために薬剤選択が適用される。増幅可能である選択可能マーカーを導入した細胞に関して、クローン化配列の増加したコピー数(それにより、発現レベルを増加させる)について選択するために、薬剤濃度を増加させ得る。次いで、安定的に導入された細胞のクローンは、FIXポリペプチドの発現についてスクリーニングされる。
【0062】
本発明における使用のための哺乳類細胞株は、例えば、COS-1 (ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HKB11細胞(Cho, et al., J. Biomed. Sci, 9:631-638, 2002)およびHEK-293 (ATCC CRL 1573; Graham, et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)細胞株である。さらに、多くの他の細胞株が本発明の範囲内で使用され得て、ラットHep I (ラット肝癌; ATCC CRL 1600)、ラットHep II (ラット肝癌; ATCC CRL 1548)、TCMK-1 (ATCC CCL 139)、Hep-G2 (ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)、CHO-K1 (ATCC CCL 61)およびCHO-DUKX細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)を含む。
【0063】
FIXポリペプチドは、細胞培養培地から回収され得て、次いで、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマト分画およびサイズ排除)、電気泳動手順(例えば、分取等電点電気泳動(IEF)、溶解度差(例えば、硫安分画))、抽出(例えば、Protein Purification, Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)、またはさまざまなそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない当分野で既知のさまざまな手順により精製され得る。1つの例示的な態様において、ポリペプチドは、抗-FIX抗体カラムでの親和性クロマトグラフィーにより精製され得る。さらなる精製は、慣用的な化学的精製法、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより達成され得る。他の精製法が当分野において既知であり、修飾化FIXポリペプチドの精製に適用され得る(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照のこと)。
【0064】
一般に「精製」は、他の構成要素を除去するための分画にかけられたタンパク質もしくはペプチド組成物であって、実質的にその発現する生物学的活性を保持するタンパク質もしくはペプチド組成物を意味する。「実質的に精製された」なる用語が使用される場合に、この表記は、タンパク質またはペプチドが組成物中の主要な構成要素を形成する組成物を意味し、例えば、タンパク質が組成物中の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上を構成する。
【0065】
ポリペプチドの精製の程度を定量するためのさまざまな方法は、当業者に既知である。これらは、例えば、活性画分の比活性を決定するか、またはSDS/PAGE解析により画分内のポリペプチドの量を評価することを含む。画分の純度を評価するための方法は、例えば、活性を最初の抽出物の比活性と比較して画分の比活性を計算すること、したがって、本明細書に記載の「精製倍数(-fold purification number)」により評価される純度の程度を計算することである。活性量を示すために使用される実際のユニットは、当然に特定のアッセイ技術に依存し得る。
【0066】
ポリマー結合
修飾化FIXポリペプチドは、ポリマー部分に結合するために使用され得る1個またはそれ以上のポリマー結合部位を含み得る。ある態様において、FIXポリペプチドは、生体適合性ポリマーと結合し得る。生体適合性ポリマーは、薬物動態における望まれる改善を提供するために選択され得る。例えば、ポリマーの同一性、サイズおよび構造は、FIX活性を有するポリペプチドの血清半減期を改善するか、または許容されない活性の減少を招くことなくポリペプチドの抗原性を減少させるために選択され得る。
【0067】
本発明において使用されるポリマーは、例えば、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリエチレンオキシド、アルキル-ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシド、ポリアルキレンオキシドのコポリマーもしくはブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコールコプロピレングリコール)、ポリ(N-2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)およびデキストランを含むがこれらに限定されない。
【0068】
ポリマーは、特定の構造に限定されることなく、直鎖(例えば、アルコキシPEGもしくは二官能性PEG)、または非直鎖、例えば、分岐型、フォーク型、複数腕型(例えば、ポリオールコアに結合したPEG)および樹状型であり得る。さらに、ポリマーの内部構造は、任意の数の異なる様式で組織され得て、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマーおよびブロックトリポリマーからなる群から選択され得る。
【0069】
PEGおよび他の水溶性ポリマー(すなわち、ポリマー性試薬)は、FIXポリペプチド上の望まれる部位に結合するのに適当な任意の活性化基を用いて活性化され得る。したがって、ポリマー性試薬は、FIXポリペプチドとの反応のための反応性基を有する。代表的なポリマー性試薬およびこれらのポリマーを活性部分に結合するための方法は、当分野において既知であり、さらに、Zalipsky, et al., (“Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols) for Modification of Polypeptides” in Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Plenus Press, New York (1992))、およびZalipsky (Adv. Drug Rev. 16:157-182, 1995)に記載されている。
【0070】
ポリマーの平均分子量は、約100ダルトンから約150,000ダルトンであり得る。しかしながら、例えば、当該範囲は、約5,000ダルトン以上から約100,000ダルトン、約6,000ダルトンから約90,000ダルトン、約10,000ダルトンから約85,000ダルトン、約10,000ダルトン以上から約85,000ダルトン、約20,000ダルトンから約85,000ダルトン、約53,000ダルトンから約85,000ダルトン、約25,000ダルトンから約120,000ダルトン、約29,000ダルトンから約120,000ダルトン、約35,000ダルトンから約120,000ダルトン、約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲の平均分子量を含み得る。
【0071】
生体適合性ポリマーのための平均分子量は、例えば、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトンおよび約75,000ダルトンを含む。上記のいずれかの総分子量を有する生体適合性ポリマーの分岐版(例えば、2個の20,000ダルトンポリマーからなる分岐型40,000ダルトンポリマー)がまた使用され得る。
【0072】
ある態様において、ポリマーは、PEGである。PEGは、市販で入手可能であるか、または当分野において既知の方法に基づいてエチレングリコールの開環重合により製造され得る、十分に既知な水溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)。「PEG」なる用語は、PEGのサイズまたはその末端における修飾にかかわりなく、広く任意のポリエチレングリコール分子を包含するように使用され、式:X-O(CH2CH2O)n-1CH2CH2OH(式中、nは、20から2300であり、Xは、Hまたは末端修飾である)で示され、例えば、C1-4アルキルであり得る。PEGはさらに、結合反応のために必要な化学基を含み得て、それは、分子の化学合成から生じるか、または分子の部分の最適な距離のためのスペーサーとして機能し得る。さらに、そのようなPEGは、共に結合する1個またはそれ以上のPEG側鎖からなり得る。2個以上のPEG鎖を有するPEGは、複数腕型(multiarmed)もしくは分岐型PEGと呼ばれる。分岐型PEGは、例えば、ポリエチレンオキシドのグリセロール、ペンタエリトリトールおよびソルビトールを含むさまざまなポリオールへの添加により製造され得る。例えば、四腕分岐型PEGは、ペンタエリトリトールおよびエチレンオキシドから製造され得る。分岐型PEGは、例えば、欧州公開出願番号473084Aおよび米国特許第5,932,462号に記載されている。PEGの1つの形態は、リシンの第一級アミン基により結合した2個のPEG側鎖(PEG2)を含む(Monfardini, et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995)。
【0073】
1つの態様において、ポリマーは、末端キャップポリマー、すなわち相対的に不活性な基、例えば低級C1-6アルコキシ基(ヒドロキシル基がまた使用され得る)でキャップされた少なくとも1個の末端を有するポリマーであり得る。ポリマーが、PEG、例えば、ポリマーの一方の末端がメトキシ(--OCH3)基を有するPEGの直鎖型であるメトキシ-PEG (通常、mPEGと呼ばれる)である場合に、他方の末端は、所望により化学的に修飾されたヒドロキシルもしくは他の官能基が使用され得る。
【0074】
複腕型または分岐型PEG分子、例えば、米国特許第5,932,462号に記載されたものはまた、PEGポリマーとして使用され得る。さらに、PEGは、フォーク型PEGを含み得る(例えば、本発明の1個またはそれ以上の態様において使用可能であるさまざまなフォーク型PEG構造を開示したPCT国際公開番号WO 1999/45964を参照のこと)。Z官能基と分岐炭素原子を結合する原子の鎖は連結基として機能し、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0075】
PEGポリマーはまた、PEG鎖の末端においてよりもむしろPEGの長さに沿って共有結合した反応性基、例えばカルボキシル基を有するペンダントPEG分子を含み得る。ペンダント反応性基は、PEGに直接結合するか、またはアルキレン基のようなスペーサー基を介して結合し得る。
【0076】
ポリマー分子とポリペプチドの共有結合を達成するために、ポリマー分子のヒドロキシル末端基は、活性化型で、すなわち、反応性官能基(例えば、第一級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、スクシネート(SUC)、スクシンイミジルスクシネート(SS)、スクシンイミジルスクシナミド(SSA)、スクシンイミジルプロピオネート(SPA)、スクシンイミジルブタノエート(SBA)、スクシンイミジルカルボキシメチレート(SCM)、ベンゾトリアゾールカーボネート(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、ニトロフェニルカルボネート(NPC)およびトレシレート(TRES)を含む)で提供されなければならない。適当な活性化ポリマー分子は、市販で入手可能である(例えば、NOF, Japan; Nektar Therapeutics, Inc., Huntsville, Ala.; PolyMASC Pharmaceuticals plc, UK; またはSunBio Corporation, Anyang City, South Korea)。あるいは、ポリマー分子は、当分野において既知の慣用的な方法により活性化され得る(例えば、WO 90/13540を参照のこと)。本発明における使用のために適当な直鎖もしくは分岐ポリマー分子の特定の例は、市販で入手可能である(例えば、NOF, Japan; Nektar Therapeutics, Inc., Huntsville, Ala)。活性化PEGポリマーの特定の例は、下記の直鎖PEG: NHS-PEG、SPA-PEG、SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG、SCM-PEG、NOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG、TRES-PEG、VS-PEG、OPSS-PEG、IODO-PEGおよびMAL-PEG、ならびに分岐型PEG、例えば、PEG2-NHS、PEG2-MAL、および例えば米国特許第5,932,462号および第5,643,575号(その両方は、引用により本明細書の一部とする)に記載されたものを含む。
【0077】
1つの態様において、ポリマーは、FIXポリペプチド上の遊離システインと反応して共有結合を形成し得るスルフヒドリル基反応性部分を有する。そのようなスルフヒドリル基反応性部分は、チオール、トリフラート、トレシラート、アジリジン、オキシラン、S-ピリジルまたはマレイミド部分を含む。さらに下記の公開物(引用により本明細書の一部とする)は、有用なポリマー分子および/またはPEG化化学を開示している: 米国特許第6,113,906号; 第7,199,223号; 第5,824,778号; 第5,476,653号; 第4,902,502号; 第5,281,698号; 第5,122,614号; 第5,219,564号; 第5,736,625号; 第5,473,034号; 第5,516,673号; 第5,629,384号; 第5,382,657号; WO 97/32607; WO 92/16555; WO 94/04193; WO 94/14758; WO 94/17039; WO 94/18247; WO 94/28024; WO 95/00162; WO 95/11924; WO95/13090; WO 95/33490; WO 96/00080; WO 97/18832; WO 98/41562; WO 98/48837; WO 99/32134; WO 99/32139; WO 99/32140; WO 96/40791; WO 98/32466; WO 95/06058; WO 97/03106; WO 96/21469; WO 95/13312; WO 98/05363; WO 96/41813; WO 96/07670; EP809996; EP921131; EP605963; EP510356; EP400472; EP183503; EP154316; EP229108; EP402378; およびEP439508。
【0078】
システイン残基のPEG化のために、ポリペプチドは、PEG化の前に還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DDT)で処理され得る。次いで、還元剤は、任意の慣用的な方法により、例えば、脱塩で除去され得る。PEGとシステイン残基の結合は、一般に、適当な緩衝液中、pH 6-9、4℃から25℃の温度で、約16時間までの間で起こる。システイン残基に結合するための活性化PEGは、例えば、下記の直鎖および分岐型PEG: ビニルスルホン-PEG (PEG-VS)、例えば、ビニルスルホン-mPEG (mPEG-VS); オルトピリジル-ジスルフィド-PEG (PEG-OPSS)、例えば、オルトピリジル-ジスルフィド-mPEG (MPEG-OPSS); ならびにマレイミド-PEG (PEG-MAL)、例えば、マレイミド-mPEG (mPEG-MAL)および分岐型マレイミド-mPEG2 (mPEG2-MAL)を含む。
【0079】
1つの態様において、1個またはそれ以上の導入されたポリマー結合部位を有するFIXポリペプチドは、ジスルフィド結合を形成することによりポリペプチドのシステイン残基を「キャップする」システインを含む細胞培養培地で増殖する細胞内で発現し得る。ポリマーとFIXポリペプチドを結合させるために、システインキャップを穏やかな還元により除去してキャップを放出し、次いで、システイン特異的ポリマーを加える。
【0080】
本願はまた、ポリマー結合化FIXポリペプチドの製造法であって、ポリマー結合部位、すなわちシステイン残基を、FIXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に導入し; 突然変異ヌクレオチド配列を発現させて、導入されたポリマー結合部位を含むポリペプチドを産生し; 当該ポリペプチドを精製し; 当該ポリペプチドを、還元システイン残基でポリペプチドと反応するように活性化された生体適合性ポリマーと反応させて結合を形成し; そして当該結合体を精製することを含む方法を提供する。他の態様において、本願は、FIXポリペプチド突然変異タンパク質の部位特異的PEG化のための方法であって: (a) 導入されたポリマー結合部位、すなわちFIXポリペプチドの露出表面に導入されたシステイン残基を含むFIXポリペプチドを発現させ(ここで、システインはキャップされている); (b) 導入されたシステインを穏やかに還元し、キャップを遊離する条件下で、FIXポリペプチドを還元剤と接触させ; (c) FIXポリペプチドからキャップおよび還元剤を除去し; そして(d) 還元剤の除去の少なくとも約5、15または30分後に、PEG化FIXポリペプチドが産生されるような条件下で、スルフヒドリル基カップリング部分を含むPEGでFIXポリペプチドを処理することを含む方法を提供する。PEGのスルフヒドリル基カップリング部分は、チオール、トリフラート、トレシラート、アジリジン、オキシラン、S-ピリジルおよびマレイミド部分からなる群から選択される。
【0081】
PEG化FIXポリペプチドを作製する方法の例を下記する。導入された非天然システイン残基を含む約1μMの精製したFIXポリペプチドを、4℃で30分間、0.7 mM Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)または0.07 mMジチオスレイトール(DTT)のような還元剤で穏やかに還元して、「キャップ」を遊離する。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法により、還元剤を「キャップ」と共に除去し、例えば、スピンカラムを介してサンプルを走らせることにより、ジスルフィドが再形成され、導入されたシステインが遊離および還元される。還元剤の除去の少なくとも30分後、FIXポリペプチドを、4℃で1時間、5から85 kDの範囲のサイズを有する少なくとも10倍モル過剰のPEG-マレイミドで処理する。
【0082】
FIXのポリマー結合は、当業者に既知の方法のいずれかにより評価され得る。例えば、ポリマー結合FIXは、還元6%トリス-グリシンSDSポリアクリルアミドゲルでの電気泳動により解析され得る。電気泳動後、ゲルをクマシーブルーで染色してすべてのタンパク質を同定するか、または標準的なウエスタンブロットプロトコールにかけて、非結合FIXポリペプチドと比較した場合のバンド分子量シフトを同定し得る。PEGに特異的なバリウムヨウ素染色は、分子量シフトを有するバンドがPEG化タンパク質を含むことを確認するために使用され得る。ポリマー結合の前後に、FIXポリペプチドはまた、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析で解析して、ポリマー結合の程度および効率を決定し得る。
【0083】
医薬組成物
本願は、一部において、本明細書に記載された1個またはそれ以上の導入されたポリマー結合部位を有するFIXポリペプチドを含む組成物を提供する。ある態様において、生体適合性ポリマーと結合したFIXポリペプチドを含む組成物が提供される。組成物は、インビボ投与のために適当であり、パイロジェンフリーである。組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的にもしくは薬理学的に許容される」なる句は、動物またはヒトに投与された場合に、副作用、アレルギーもしくは他の有害反応を産生しない分子的存在および組成物を意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、任意のおよびあらゆる溶媒、分散液、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような培地および薬剤の使用は、当分野において既知である。補助的な有効成分がまた、組成物に組み込まれ得る。
【0084】
本発明の組成物は、古典的な医薬製剤を含む。本発明によるこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路により利用可能であるかぎり、すべての通常の経路によるものであり得る。医薬組成物は、あらゆる慣用的な方法、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、皮下、肺内、経口、舌下、経鼻、肛門、膣内、もしくは経皮送達によるか、または特定部位への外科的移植により対象に投与され得る。処置は、単一投与または一定期間の複数投与からなるものであり得る。
【0085】
活性化合物は、適当には界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと混合して、水中、遊離塩基もしくは薬学的に許容される塩形の溶液として投与のために製造され得る。分散剤はまた、グリコール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物中で、ならびに油中で製造され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含み得る。
【0086】
注射使用のための適当な医薬形態は、滅菌水性溶液または分散液ならびに滅菌注射用溶液もしくは分散液の即時調製ための滅菌粉末を含む。当該形態は、滅菌されているべきであり、かつ容易な注射能力(syringability)が存在する程度に液体であるべきである。当該形態は、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、微生物、例えば、細菌および真菌の混入作用に対して保存されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、スクロース、L-ヒスチジン、ポリソルベート80、またはその適当な混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散液であり得る。適当な流動性は、例えば、被覆剤、例えばレシチンの使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされ得る。注射用組成物は、等張剤、例えば、糖もしくは塩化ナトリウムを含み得る。注射用組成物の延長した吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中における使用によりもたらされ得る。
【0087】
滅菌注射用溶液は、活性化合物(例えば、FIXポリペプチド)を必要とされる用量で上記で列挙したさまざまな他の成分を含む適当な溶媒に組み込み、その後、フィルター滅菌を行うことにより製造され得る。
【0088】
一般に、分散液は、さまざまな滅菌された有効成分を、必須の分散液媒体および上記で列挙した必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより製造され得る。滅菌注射用溶液の製造のための滅菌粉末の場合において、製造法は、例えば、その滅菌ろ過溶液から有効成分と任意のさらに望まれる成分の粉末を産生する真空乾燥および凍結乾燥技術を含む。
【0089】
溶液は、製剤化されると、投与製剤と適合した方法で投与され得て、それは治療上有効な量であり得る。本明細書で使用される「治療上有効量」は、血中もしくは標的組織に望まれるレベルのポリペプチドを提供するのに必要とされるポリペプチドの量を意味する。正確な用量は、多くの因子、例えば、特定のFIXポリペプチド、治療組成物の構成要素および物理的特性、意図される患者集団、送達様式、個々の患者の条件などに依存し、本明細書に記載された情報に基づいて当業者により容易に決定され得る。
【0090】
製剤は、さまざまな投与形態で、例えば、注射剤などにより容易に投与され得る。水性溶液での非経口投与について、例えば、溶液は適当に緩衝化されるべきであり、所望により、液体希釈剤が最初に十分な生理食塩水もしくはグルコースで等張にされる。これらの特定の水性溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与のために適当である。
【0091】
FIXの投与量は、通常、ユニットで示される。1ユニット/kg 体重のFIXは、0.01 U/ml、すなわち1%まで血中濃度を上昇させ得る。あるいは、健常な患者は、1ユニット/ml 血漿、すなわち100%のFIXを有する。軽症の血友病Bは6-60%、中程度の症状は1-5%、重症(血友病症例の約半数を占める)は1%未満のFIX血中濃度で定義される。予防的処置またはわずかな出血の処置は、通常、15-30%間の上昇したFIXレベルを必要とする。中程度の出血の処置は、通常、30-50%間の上昇したレベルを必要とし、大外傷の処置は、50-100%間の上昇したレベルを必要とし得る。患者の血中レベルを上げるために必要とされる全ユニット数は、下記のとおり決定され得る: 1.0 ユニット/kg x 体重(kg) x 望まれる割合の増加(正常の%)。非経口投与は、薬剤の治療的血中レベルを維持するために、最初のボーラス投与、その後の持続点滴で行われ得る。ある態様において、15〜150ユニット/kg FIXポリペプチドが投与され得る。当業者は、容易に、十分な医療の慣行(medical practice)および個々の患者の臨床的条件により決定される有効な投与量および投与レジメンを最適化し得る。
【0092】
投与頻度は、薬剤の薬物動態パラメーターおよび投与経路に依存し得る。最適な医薬製剤は、投与経路および望まれる用量に依存して、当業者により決定され得る(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 20th edition, 2000を参照のこと(当該文献は、引用により本明細書の一部とする))。そのような製剤は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度およびインビボでの除去速度に影響を与え得る。投与経路に依存して、適当な投与量は、体重、身体表面積または器官サイズに基づいて計算され得る。適当な処置投与量を決定するために必要なさらなる計算の改良は、とりわけ本明細書に開示された用量情報およびアッセイ、ならびに動物もしくはヒト臨床試験において観察された薬物動態データを考慮すると、通常、過度の実験なく当業者により実施される。投与計画は、例えば、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの組み合わせの投与を含むがこれらに限定されない。
【0093】
適当な投与量は、関連する用量応答データと組み合わせて血液凝固レベルを決定するための確立したアッセイの使用により確認され得る。最終的な投与レジメンは、薬剤の作用を修飾する因子、例えば、薬剤の比活性、損傷の重篤度、ならびに患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の感染の重篤度、投与時間、ならびに他の臨床要因を考慮して、担当医により決定され得る。
【0094】
組成物はまた、微生物の成長を予防するか、もしくは低下させるための抗菌剤を含み得る。本発明のために適当な抗菌剤は、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0095】
抗酸化剤は、同様に、組成物中に存在し得る。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され得て、それにより製剤の劣化を防止し得る。本発明における使用のための適当な抗酸化剤は、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0096】
界面活性剤は、賦形剤として存在し得る。界面活性剤は、例えば下記を含む: ポリソルベート、例えば、Tween(登録商標)-20 (ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)およびTween(登録商標)-80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)およびプルロニック(pluronics)、例えば、F68およびF88 (その両方は、BASF, Mount Olive, N.J.から入手可能である); ソルビタンエステル; 脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸および脂肪エステル; ステロイド、例えば、コレステロール; ならびにキレート剤、例えば、EDTA、亜鉛および他のそのように適当なカチオン。
【0097】
酸または塩基は、組成物中に賦形剤として存在し得る。使用され得る酸は、例えば、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。適当な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0098】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して変わり得る。一般に、任意の個々の賦形剤の最適な量は、通常の実験を介して、すなわち、種々の量(低量から高量)の賦形剤を含む組成物を製造し、安定性および他のパラメーターを調べて、その後、重篤な副作用が生じることなく最適なパフォーマンスが得られる範囲を決定することにより決定され得る。一般に、賦形剤は、その濃度が30%重量未満の賦形剤の約1%から約99%重量、約5%から約98%重量、約15から約95%重量の量で組成物中に存在し得る。他の賦形剤と共にこれらの上記の医薬賦形剤は、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy,” 19 ed., Williams & Williams, (1995); the “Physician's Desk Reference,” 52 ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998); およびKibbe, A. H., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3 Edition, American Pharmaceutical Association, Washington, D.C., 2000に記載されている。
【0099】
例示的使用
本明細書に記載された組成物は、FIXの機能的欠損またはFIXの欠損、例えば、短縮されたFIXの半減期、改変されたFIXの結合特性、FIXの遺伝学的欠損、および減少したFIXの血中濃度と関連するすべての出血障害を処置するために使用され得る。FIXの遺伝学的欠損は、例えば、FIXをコードするヌクレオチド配列中の塩基の欠失、付加、および/または置換を含む。1つの態様において、出血障害は、血友病Bであり得る。そのような出血障害の症状は、例えば、難治性鼻出血、口腔粘膜出血、関節血症、血腫、持続性血尿、消化管出血、後腹膜出血、舌/咽頭後出血、頭蓋内出血および外傷に伴う出血を含む。
【0100】
本発明の組成物は、予防適用のために使用され得る。ある態様において、修飾化FIXポリペプチドは、対象自身の抗凝固能力を促進するために、疾患状態または損傷に罹患しやすいか、またはそのリスクが存在する対象に投与され得る。そのような用量は、「予防的に有効な量」と定義され得る。予防のための修飾化FIXポリペプチドの投与は、血友病Bを患う患者が外科手術を受ける場合に、当該手術の1から4時間前にポリペプチドが投与されることを含む。さらに、ポリペプチドは、所望により血友病を患っていない患者における制御不能な出血に対する予防としての使用のために適している。したがって、例えば、ポリペプチドは、手術前に制御不能な出血のリスクが存在する患者に投与され得る。
【0101】
本明細書に記載されたポリペプチド、材料、組成物および方法は、本発明の例示的なものであることが意図され、本発明の範囲が実施例の範囲に限定されないことが理解される。本発明は、開示されたポリペプチド、材料、組成物および方法についての変形を用いて実施され得て、そのような変形は本発明の範囲内のものとしてみなされることを当業者は理解するであろう。
【0102】
下記の実施例は、本明細書に記載された発明を例示するものであるが、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして意図されるべきではない。
【実施例】
【0103】
実施例
本発明がよりよく理解されるために、下記の実施例を示す。これらの実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして意図されるべきではない。本明細書に記載されたすべての公開物は、その全体を引用により本明細書の一部とする。
【0104】
実施例1: インシリコ解析
部位特異的ポリマー結合のためのシステイン置換についての成功部位であり得るFIXの残基を評価するために、インシリコ解析を行った。リシン、フェニルアラニンおよびロイシンの荷電残基は、より頻繁に溶媒露出しており、FVIIIの場合には、これらの残基がシステインに置換したときに最も成功したポリマー結合部位であったので、解析は、これらの残基に焦点を絞った(例えば、米国公開番号2006/0115876を参照のこと)。FIX結晶構造からのデータを用いて、FIX内のリシン、フェニルアラニンおよびロイシン残基の溶媒露出を決定した(Hopfner, et al., Structure 7:989-996, 1999)。溶媒露出され得る他の残基をまた、システイン置換のための可能性のある部位として考慮した。個々の残基とFIXタンパク質構造全体の両方の自由エネルギーについて、各々の残基のシステインへの突然変異の効果を予測するために、コンピューターアルゴリズムFoldXを使用した。FoldXは、タンパク質改変実験の構造活性データに基づいて開発された経験的力場(empirical force field)である(Guerois, et al., J. Mol. Biol. 320:369-387, 2002; Schymkowitz, et al., Nucleic Acids Res. 33:W382-388, 2005; Schymkowitz, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:10147-10152, 2005)。Lys、PheまたはLeuのCysへの単一突然変異を有するFIXaは、23.3から27.1 kcal/moleの範囲(平均して24.9 kcal/mole)の安定的なエネルギーを有していた。タンパク質の安定性に対する突然変異残基が関与するエネルギー範囲は、-2.82から-0.39 kcal/mole(平均して-0.30 kcal/mole)のエネルギー範囲を有する野生型構造のそれと比較して、-0.76から1.63 kcal/mole(平均して0.56 kcal/mole)である。システインへの突然変異後に自由エネルギーの低下またはほとんど変化しない自由エネルギーを生じた残基は、より好ましいものと考えられた。自由エネルギーの上昇(より小さい負の値)を生じたシステイン突然変異は、あまり好ましくないものと考えられた。
【0105】
凝固カスケードにおいて機能するために、FIXタンパク質は、FVIIIaと相互作用するはずである。したがって、FVIIIとの相互作用に関与しないFIXの残基は、当該部位における突然変異単独もしくはポリマーとの結合がFVIIIaとの相互作用を妨害しそうにないので、システインでの置換のための有望な候補である。FIXa構造を用いたFVIIIa - FIXa複合体についてのモデル(1RFN)、FVIIIaの相同性モデル、およびタンパク質-タンパク質ドッキングツールが構築されている(Autin, et al., J. Thromb. Haemost. 3:2044-2056, 2005)。10個の代表的なモデルの中で、実験データにより示された主要なすべての接点(contacts)との一致に基づいて、2個のモデル(T4およびT5)が最良のモデルであると考えられた。T5モデルがこの解析で使用されるモデルである。このモデルに基づいて、FVIIIaとのインターフェースから8Åよりも離れていると予測されるFIXの残基は、好ましいものと考えられた。患者において血友病Bを生じるFIX中の天然で生じる置換突然変異(ストップコドンまたはフレームシフトを生じる突然変異ではない)は、これらの特異的な残基がFIXの機能のために重要であることを示す。そのような突然変異を同定するために、血友病B突然変異データベース(kcl.ac.uk/ip/petergreen/ haemBdatabase.htmlで利用可能である)が使用され、下記の表1で示したとおり、そのような残基をシステインへの突然変異のための候補として取り出した。
【0106】
表1
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
FIX - FVIIIa複合体のT5モデルを用いて、上記と同じ解析(溶媒露出度、自由エネルギーについてシステインへの突然変異の効果、FVIIIとのインターフェースの近接性および血友病B突然変異)を繰り返した。FIXa構造における単一突然変異(Lys、PheまたはLeuのCysへの置換)でのT5モデルについて、安定的エネルギー範囲は、177.0から180.9 kcal/mole(平均して178.7 kcal/mole)である。突然変異残基が関与するエネルギー範囲は、-2.90から1.08 kcal/mole(平均して0.55 kcal/mole)のエネルギー範囲を有する野生型構造と比較して、-0.76から1.67 kcal/mole(平均して0.55 kcal/mole)である。一般に、ドッキング複合体(docked complex)におけるFIXについての残基が関与するエネルギーは、非結合FIXのそれとほぼ同様である。他の溶媒露出残基(Lys、PheまたはLeuではない)について、安定的エネルギー範囲は、169.7から174.4 kcal/mole(平均して170.8 kcal/mole)である。突然変異残基が関与するエネルギー範囲は、-0.57から1.61 kcal/mole(平均して0.99 kcal/mole)であり、それは、-0.63から1.48 kcal/mole(平均して0.82 kcal/mole)のエネルギー範囲を有する野生型構造のそれと類似する。
【0111】
ポリマーとの部位特異的修飾についての潜在的な候補残基を選択するために、いくつかの因子を考慮した。残基の既知でかつ予測される機能的重要性を下記の4つの因子に基づいて決定した: 1) 溶媒露出度、2) FoldXエネルギー、3) Haemophilia B Mutation Database (血友病B突然変異データベース、Kings College London, 2004)に基づいて、FIX遺伝子内に生じる突然変異、および4) EGF2ドメイン(FIXaと共結晶化された構造ドメインであるために、ストリンジェントであり得る)およびFVIIIa (タンパク質-タンパク質ドッキングをモデルとした)の8Å内に存在する残基内の任意の原子の近接性。0.5 kcal/moleまたはそれ以下のFoldXエネルギーのカットオフ値および100Å2またはそれ以上の溶媒露出度(ASA)であると考えられる場合には、2個のLys残基(Lys201およびLys247)のみが適格であると見なされるであろう。PheおよびLeu残基は、これらの基準に基づいて適格ではない。しかしながら、1個または2個の基準(例えば、他のドメインインターフェースに対する近接性またはFoldXエネルギー)のストリンジェントな閾値が修飾される場合には、その後、さらなる残基、例えば、Leu 414、Lys 188およびLys 392が適格となる。これらの中で、Leu 414がタンパク質のカルボキシル末端に近接していたので、さらに関心があるものと考えられた。同様に、Lys、PheまたはLeuではない他の溶媒露出残基中に、部位特異的修飾のために考慮され得る潜在的な候補(例えば、Asp203、Asn249、Arg318)が存在する。
【0112】
実施例2: 活性化ペプチド
翻訳後修飾を破壊しない活性化ペプチド中の潜在的な修飾部位を同定するために、8つの種からの活性化ペプチドのアミノ酸配列を並べて、進化的に保存された領域を同定した(図4)。種間で保存されていないアミノ酸は、翻訳後修飾を含むFIX機能のためにあまり必要とされておらず、したがって、システインへの突然変異のために選択された。さらに、2個のN結合グリコシル化部位およびTyr155におけるチロシン硫酸化についてのコンセンサス配列の一部、ならびにO結合グリコシル化部位およびリン酸化についての部位である残基を避けた。この解析に基づいて、4個のアミノ酸残基(V153、T163、L165、F175)をシステインへの突然変異のために選択した。
【0113】
FIXの部位特異的修飾のためのさらなる方法として、活性化ペプチド中の7個のグリコシル化部位のうちの4個(T148、N167、T169、T172)をシステインに変換し、したがって、グリコシル化部位を潜在的なポリマー結合部位に変換した。これらのグリコシル化部位が表面露出され、通常、糖質で修飾される場合には、ポリマーの結合による修飾がこれらの部位でより耐容であり得る。
【0114】
多配列アライメントは、マウス、ラットおよびモルモットが、ヒト、アカゲザル、ブタ、イヌおよびウサギFIXと比較してA161とE162の間にさらなるアミノ酸を有することを明らかにした(図4)。これらのさらなるアミノ酸は、3つの種間で7から10個のサイズで変化し、Aspおよびある程度までのIle残基の提示(over representation)を含む。この観察は、7から10個のさらなる残基が、FIX活性について重大な影響を与えることなく、ラット、マウスおよびモルモットにおける当該部位(ヒトFIX におけるA161とE162の間)で耐容であり得ることを示す。8つの種からのFIX間の多配列アライメントを行うために使用される基準に依存して、ラット、マウスおよびモルモットにおけるさらなるアミノ酸が見出される明らかな部位は、当該部位がヒトFIXのE160とA161の間、A161とE162の間、E162とT163の間、またはT163とI164の間であり得るように変わり得る。したがって、挿入されたシステインが修飾化ポリペプチドにおける162位になるように、アミノ酸161と162の間に挿入された単一システイン残基を含む修飾化ヒトFIXポリペプチドを作製した。
【0115】
実施例3: 発現および活性
上記のインシリコ解析に基づいて、修飾のための潜在的な部位として全部で14個の残基を選択し、発現ベクターpAGE16にクローン化されたヒトFIXコード領域を含むプラスミドpAGE16-FIXの部位特異的突然変異誘発により、14個すべての残基をシステインで置換した(図3)。単一システイン残基がA161とE162の間に挿入されたさらなるFIX突然変異タンパク質(162C突然変異タンパク質)を作製した。効率的な翻訳開始を保証するために、コンセンサスコザック配列をすべてのプラスミド内のATG開始コドンのすぐ5'側に付加した。コード領域全体の二本鎖DNA塩基配列決定により、改変FIXコード配列の配列を確認した。野生型pAGE16-FIXプラスミドおよびさまざまな突然変異型プラスミドを、HEK293細胞とB細胞リンパ腫の融合により作製されたヒト細胞株であるHKB11細胞に一過的に導入した。pAGE16-FIXプラスミドの導入後に、野生型FIXを発現するさまざまな細胞株(CHO、BHK21、HKB11)の能力を調べると、HKB11のみがウエスタンブロットにより培地中で検出可能なFIXタンパク質を産生した。FIXに対するポリクローナル抗体を用いた、導入されたHKB11細胞からの培地のウエスタンブロット解析は、14個すべての置換突然変異タンパク質が測定可能なレベルで発現し、培地中に分泌されていることを証明した(図1)。同じ培地をaPTTアッセイによるFIX凝固活性について解析し、ELISAによりFIXタンパク質レベルを決定した。ELISAおよびaPTTアッセイデータから、突然変異タンパク質の各々の比活性を計算した。図3は、各々の置換突然変異タンパク質についてのFIX活性、発現および比活性データを少なくとも3回の独立した実験からの平均値として要約したものであり、野生型FIXの割合として示している。これらと同様のデータを図表形式で図2に示す。
【0116】
突然変異R338Aを含むFIXポリペプチドならびに突然変異162CおよびR338Aを含むポリペプチドについて、発現レベルおよび比活性を決定した。HKB11細胞に修飾化FIXポリペプチドを導入し、タンパク質レベルおよび比活性を決定するために、上清を回収した。突然変異162CおよびR338Aを含むポリペプチドは、突然変異R338Aのみを含むポリペプチドと比較した場合に、38%で発現し、83%の比活性を示した。データは、2回の独立したトランスフェクションの平均を示す。R338Aタンパク質の発現レベルは、実験間で1.1から3.9 ug/mLの間で変わり、R338Aの活性は、0.5から0.33 IU/mLの間で変わった。
【0117】
実施例4: 突然変異R338AおよびV86Aの組み合わせ
野生型(WT)-FIXまたはFIX-R338Aにおける部位特異的突然変異誘発により、FIXのアミノ酸V86をアラニンに置換した。これらの構築体を含む発現ベクターをHKB11細胞に導入し、3日後に培地を回収し、ELISAによりFIXタンパク質レベルについて、およびaPTTアッセイによりFIX凝固活性についてアッセイした。両突然変異タンパク質は、WT-FIXおよびFIX-R338Aにおいて同様のレベルで発現していた。1回の実験からのデータを表2に示す。表3は、3回の実験の平均を概略したものである。
【0118】
表2
【表5】

【0119】
表3
【表6】

【0120】
結果は、突然変異V86A単独が約1.8倍の比活性の増加を生じ、R338A単独が4.5倍の比活性の増加を生じたことを示す。R338AとV86Aの組み合わせは、野生型FIXと比較して8.1倍の比活性の増加を生じた。これらの結果は、突然変異R338AとV86Aのポジティブ効果が相加効果よりも大きく、WT-FIXと比較して8倍の比活性の増加を有するFIX突然変異タンパク質を生じることを示す。R338A-V86A突然変異タンパク質は、それが現在利用可能な組み換えWT-FIXと同じ治療効果を達成するのにタンパク質の用量を8倍低くすることを可能にするので、血友病B患者のための治療的利点を改善し得る。さらに、R338A-V86Aの増加した比活性は、活性の減少が結合により生じ得るFIXのポリマー結合型を作製する場合に有益であり得る。
【0121】
実施例5: ヒトFIX cDNAのクローニング
ヒトFIX cDNAのコード領域の5'および3'末端における配列に相補的なPCRプライマー対を公開されたcDNA配列(NM_000133)から設計した。5'プライマー
【表7】

は、ATG開始コドン、その上流のコンセンサスコザック配列(下線部分)およびHindIII制限酵素部位を含むFIXコード領域の最初の18個のヌクレオチドを含んでいた。3'プライマー
【表8】

は、FIXコード領域の3'末端から45ヌクレオチド3'側に存在するFIX配列の22個のヌクレオチドおよびその上流のHindIII制限酵素部位を含んでいた。これらのプライマーおよび高忠実度校正(high fidelity proofreading)ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いた正常なヒト肝臓(Stratagene, San Diego, CA)からの第1鎖cDNAの増幅は、予期されたサイズのヒトFIX cDNA (1464 bp)の単一バンドを生じた。HindIIIでの消化後にPCR産物をゲル精製し、次いで、プラスミドpAGE16のHindIII部位にクローン化した。CMVプロモーターに対して正方向でベクター中にFIX cDNAを挿入したクローンを、制限酵素消化により同定した。いくつかのクローンの挿入物について二本鎖DNAの塩基配列決定を行い、公開されたFIX配列に由来する配列のアライメントは、cDNAが成熟したタンパク質のアミノ酸148においてスレオニンを有するヒトFIXをコードすることを示した。148位は、FIXの通常の多型部位であり(T148/A148)、それは、ほとんど活性に影響を与えない。このプラスミドをpAGE16-FIXと命名した。
【0122】
実施例6: FIXシステイン突然変異タンパク質の作製
ヒトFIX配列内のさまざまなアミノ酸をシステインへの突然変異のために選択した。各々の単一アミノ酸突然変異について、Stratageneから入手可能なQuickchange(商標)プライマー設計プログラムを用いて、一組のプライマーを設計した。製造者の指示にしたがって、Quickchange(商標)II XL部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, San Diego, CA)を用いて、これらのプライマーによりpAGE16-FIX プラスミド中に突然変異を作製した。望まれる突然変異を含むクローンをFIXコード領域全体のDNA塩基配列決定により同定した。下記の表4は、突然変異を作製するために使用されるセンス鎖オリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0123】
【表9】

【0124】
実施例7: PEG化のためのシステインの挿入
残基A161とE162の間の活性化ペプチド中にシステイン残基を挿入するために、プライマーt8216c_g8218aおよびt8188cによる部位特異的突然変異誘発を用いて、Y155およびI164において、アミノ酸配列を変更することなくSnaB1およびXbaIについての特定の制限酵素部位を作製した。生じたプラスミドをSnaB1およびXbaIで消化して、残基V156からI164に相当する27bpの断片を取り除き、次いで、オリゴヌクレオチドCF1およびCR1 (表5)のアニーリングにより作製された二本鎖断片に連結した。生じたプラスミドの配列を二本鎖DNA塩基配列決定により決定し、1個のシステイン残基をコードする3 bpの挿入を有していた。1から5個のシステインを含む12個までのアミノ酸のより長い配列を、適当なプライマーを設計することにより、E160とA161の間、またはE160とI164の間の任意の場所に挿入する。システインに加えて、挿入される残基は、Ala、Gly、Ser、AspおよびIle残基の組み合わせからなり得て、インシリコ解析により予測された高親和性T細胞エピトープを避けるように設計され得る。
【0125】
【表10】

【0126】
実施例8: FIXのシステイン突然変異タンパク質とR338Aの組み合わせ
ベクターpAGE16中に各々のFIXのシステイン突然変異を有するプラスミドを、成熟したFIXタンパク質のアミノ酸338位のアルギニンをコードする配列をアラニンをコードする配列に変更するように設計されたプライマーを用いた部位特異的突然変異誘発のための鋳型として使用した。プライマーの配列は、下記のとおりであった:
【表11】

下線部のヌクレオチドは、アルギニンコドン(CGA)をアラニン(GCA)に変える野生型FIX配列からの置換を示す。FIXコード領域全体の二本鎖DNA塩基配列決定により、この突然変異の作製を確認した。
【0127】
実施例9: 細胞培養および一過的導入
HKB11細胞(HEK293とバーキットB細胞リンパ腫株2B8の雑種)を懸濁培養で増殖させて(オービタルシェーカー (100-125 rpm)上、CO2 (5%)インキュベーター中、37℃、10 ng/mL可溶性ビタミンK3 (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を補充した無血清培地(RF#277))、0.25から1.5 x 106 細胞/mLの間の密度で維持した。
【0128】
トランスフェクション用の細胞を1000 rpm、5分間での遠心分離により回収し、次いで、1.1 x 106 細胞/mLでFreeStyle(商標)293 Expression Medium (Invitrogen, Carlsbad, CA)に再懸濁した。6ウェルプレートに細胞を播種し(4.6 mL/ウェル)、37℃でCO2インキュベーター中、オービタルローター(125 rpm)上でインキュベートした。各ウェルのために、5 μgプラスミドDNAを0.2 mL Opti-MEM(登録商標) I medium (Invitrogen)と混合した。各ウェルのために、7 μL 293fectin(商標)試薬(Invitrogen)を0.2 mL Opti-MEM(登録商標) I mediumと穏やかに混合して、室温で5分間インキュベートした。希釈した293fectin(商標)を希釈したDNA溶液に加えて、穏やかに混合し、室温で20-30分間インキュベートし、5 x 106 (4.6 mL) HKB11細胞を播種した各々のウェルに加えた。次いで、細胞を、37℃でCO2インキュベーター中、オービタルローター(125 rpm)上で3日間インキュベートし、その後、1000 rpm、5分間での遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を回収し、4℃で貯蔵した。
【0129】
実施例10: FIXシステイン突然変異タンパク質の発現および精製
FIX-R338A/L414C (338位のアルギニンがアラニンで置換され、414位のロイシンがシステインで置換されたヒトFIX)またはFIX-R338A/162C (338位のアルギニンがアラニンで置換され、システイン残基が配列番号1で示される配列のアミノ酸161と162の間に挿入されたヒトFIX)をコードする哺乳類発現ベクターをHKB11細胞に導入し、ハイグロマイシンでの選択により安定なクローンを得た。これらの細胞の条件培地からイオン交換クロマトグラフィーにより、FIXタンパク質を精製した。
【0130】
実施例11: PEG化および精製
R338A-L414C、R338A-162Cについて、および平行して非特異的PEG化のためのコントロールとしてR338Aについて、PEG化を行った。2 M CaCl2ストック溶液を10 mM CaCl2の最終濃度で各FIXタンパク質に加えた。500 μLのタンパク質溶液に、60 μL 10x反応バッファー(500 mM HEPES, pH7.0, 1M NaCl, 100 mM CaCl2)、6 μL 100x 酸化型グルタチオン(GSSG)/還元型グルタチオン(GSH) (5 mM GSH, 0.2 mM GSSG)、20 μL グルタレドキシン(Grx2) (0.149 mg/mL)および14 μL 水を600 μLの最終容量で加えた。反応混合物を室温で3時間インキュベートし、その後、Spin-6イオン交換カラム(Bio-Rad, Hercules, CA) (10x反応バッファーでプレ平衡化した)を通過させ、GSSG/GSHを除去した。次いで、混合物を4℃で一晩維持し、その後、100 μL 1x 反応バッファーに25 mg PEG-マレイミドを添加した。反応混合物を4℃で一晩インキュベートし、次いで、さらなる精製および解析のために-80℃で保存した。
【0131】
2つの方法のうちの1つを使って、反応混合物からPEG化FIXを精製した。方法Iにおいて、5 kDのMWカットオフを有する透析カセット(Pierce, Rockford, IL)を用いて、L414C-PEG反応混合物をバッファーA (50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 100 mM NaCl)に対して4℃で一晩透析した。サンプルを充填し、バッファーAで洗浄し、バッファーB (50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 100 mM NaCl, 20 mM CaCl2)を用いて0.5 mL/分の速度で溶出することにより、タンパク質を1 mL HiTrapQ(商標) HPカラム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)で精製した。ゲル解析は、非反応性PEG-マレイミドがカラムから洗い流され、PEG化および非PEG化 R338A-L414Cが溶出されることを示した。方法IIについて、R338A-162C-PEG反応混合物をバッファーC(25 mM Tris-HCl, pH 7.5, 50 mM NaCl)で4倍希釈し、その後、1 mL HiTrapQ(商標) Heparin HPカラム(GE Healthcare, Piscataway, NJ) (充填速度0.2 mL/分)に載せた。バッファーCでカラムを洗浄し、急勾配(1分間で100% Dまで、0.5 mL/分の洗浄および溶出速度で)を用いて、バッファーD(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 60 0mM NaCl, 20mM CaCl2)によりPEG化および非PEG化 R338A-L414Cを溶出した。画分(flow-through, wash, peak-1, and peak-2)を回収し、Centricon(登録商標)-10 kD (Millipore, Billerica, MA)で濃縮し、ゲルで解析した。遊離PEGはヘパリンカラムに結合しないが、PEG化および非PEG化R338A-L414Cは、適当なカルシウム勾配条件を与えられたカラムで分離され得ることが見出された。
【0132】
HKB11細胞で発現した精製化R338A-L414CおよびR338A-162Cタンパク質は、タンパク質濃度(OD280)およびヒトFIX欠損血漿におけるaPTTアッセイでの活性から決定されたとおり、600から1,000 IU/mgの比活性を有していた。
【0133】
R338A-L414CのPEG化およびQ-Sepharos(商標) (GE Healthcare, Piscataway, NJ)での精製後、クマシー染色および銀染色(タンパク質を検出するために)、ならびにヨード染色(PEGを検出するために)を用いたゲル電気泳動によりフロースルーおよび溶出物を解析した(図5)。FIXタンパク質(PEG化および非PEG化の両方)はカラムに結合し、遊離PEGはフロースルーされた。次いで、20 mM CaCl2を含むバッファーで、結合したFIXタンパク質を溶出した。結果は、R338AではなくR338A-L414Cがヨードで染色された250 KDaの明らかな分子量を有する高分子量タンパク質バンドを生じたことを示し、これは、PEGが414位の導入されたシステインに部位特異的に結合したことを示す。
【0134】
R338A-162CのPEG化およびヘパリンカラムでの精製後、FIXタンパク質はカラムに結合し、2つのピーク(ピーク1およびピーク2)で溶出されたが、遊離PEGはカラムに結合しなかった。これらの2つのピークは、各々PEG化および非PEG化R338A-162Cに相当する。ピーク1 (FIX-R338A-162C-PEG)およびピーク2 (FIX-R338A-162C)における両タンパク質を、aPTTアッセイでのそれらの活性についてアッセイした。抗FIXポリクローナル抗体を用いてELISAにより決定されたaPTTユニットとタンパク質量の比率を決定することにより、比活性を計算した。FIX-R338A-162Cについての比活性は、440±60 IU/mgであった。FIX-R338A-162C-PEGについて、ELISAに基づく比活性は400 IU/mgであったが、ELISA値は、カラムにおけるピークサイズと十分に相関せず、これは、ELISAで使用された抗体がPEG化タンパク質に十分に結合しないことを示し、したがって、タンパク質量を過小評価している。ピーク面積に基づいて、FIX-R338A-162C-PEGの比活性は120 IU/mgであると概算され、これは、R338A-162CのPEG化が約70%まで分子の比活性を減少させたことを示す。しかしながら、PEG化R338A-162Cの比活性はなお、分子の触媒活性を増加させる突然変異R338Aの存在のために、血漿由来FIX (比活性約200IU/mg)の比活性の約60%である。したがって、増加したR338A FIX突然変異タンパク質の比活性は、触媒活性についてのPEG化の悪影響を克服するのを助ける。
【0135】
実施例12: FIXについてのウエスタンブロット
細胞培養上清(50 μL)を20 μL 4x SDS-PAGEローディングダイと混合し、95℃で5分間加熱し、NuPAGE(登録商標) 4-12% SDS PAGEゲルに載せ、次いでニトロセルロース膜に移した。5% 粉乳で30分間ブロッキングした後、ヒトFIXに対するHRP-標識化ヤギポリクローナル抗体(US Biological, Swampscott, Massachusetts, Catalog No. F0017-07B)を用いて、室温で60分間、膜をインキュベートした。0.1% Tween(登録商標)-20 (ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)を含むリン酸緩衝生理食塩水バッファーを用いて洗浄を行った後、SuperSignal(登録商標) Pico (Pierce, Rockford, IL)を用いて、HRPからのシグナルを検出し、X線フィルムに曝露した。
【0136】
実施例13: FIX ELISA
細胞培養上清中のFIX抗原レベルを、FIX ELISAキット(Hyphen Biomed/Aniara, Mason, OH)を用いて決定した。細胞培養上清をサンプル希釈バッファー(キットで提供される)で希釈し、標準曲線の範囲内のシグナルを達成した。ヒト血漿から精製したFIXタンパク質(Hyphen Biomed/Aniara, Catalog No. RK032A, 比活性 196 U/mg)をサンプル希釈バッファーで希釈し、100 ng/mLから0.2 ng/mLの標準曲線を作成するために使用した。希釈化サンプルおよび基準物をポリクローナル抗-FIX捕捉抗体で前もって覆われたELISAプレートに加えた。ポリクローナル検出抗体を添加した後、室温で1時間、プレートをインキュベートし、何度も洗浄し、次いで、キットの製造者により記載されたとおりTMB基質(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を用いて発現させ、SpectraMax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて、450 nMでのシグナルを測定する。標準曲線を2成分プロット(component plot)に適合させ、未知の値を曲線から推測した。
【0137】
実施例14: FIX凝固アッセイ
FIX凝固活性を、Electra(商標) 1800C 自動凝固アナライザー(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、FIX欠損ヒト血漿におけるaPTTアッセイにより決定した。要約すると、凝固希釈における上清サンプルの3個の希釈物を機器により作製し、次いで、100 μLを100 μL FIX欠損血漿(Aniara, Mason, OH)および100 μL 自動化aPTT試薬(ウサギ脳リン脂質および微粒シリカ(bioMerieux, Inc., Durham, NC)と混合した。100 μL 25 mM CaCl2 溶液の添加後、血栓形成までの時間を記録した。ELISAアッセイにおいて基準物として用いられたものと同じ精製化ヒトFIX (Hyphen Biomed/Aniara)の連続希釈物を用いて、各ランについての標準曲線を作成した。標準曲線は、通常0.95またはそれよりも良い相関係数を有する直線であり、未知のサンプルのFIX活性を決定するために用いられた。
【0138】
上記したすべての公開物および特許は、引用により本明細書の一部とする。本発明の記載された方法のさまざまな修飾および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかである。
【0139】
本発明は特定の態様との関連で記載されているが、特許請求の範囲に記載された発明は、そのような特定の態様に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、生化学の分野または関連する分野の当業者に明らかである本発明を実施するための上記様式のさまざまな修飾は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識するか、または通常の実験のみを用いてそれを確認することができる。そのような同等物は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異、ならびにT148C、V153C、T163C、L165C、N167C、T169C、T172C、F175C、K201C、K247C、K413C、L414CおよびT415Cからなる群から選択される少なくとも1個のシステイン置換を含む、第IX因子ポリペプチド。
【請求項2】
突然変異R338AおよびV86Aを含む、請求項1に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも1個の置換されたシステインが生体適合性ポリマーと結合している、請求項1または2に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項4】
生体適合性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリエチレンオキシド、アルキル-ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシドおよびデキストランからなる群から選択される、請求3に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項5】
ポリ(アルキレングリコール)がポリエチレングリコールである、請求4に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項6】
ポリエチレングリコールが直鎖または分岐鎖である、請求4に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが3,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項5または6に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項8】
ポリエチレングリコールが5,000ダルトンから85,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項5または6に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項9】
ポリマーとの結合が非結合ポリペプチドと比較した場合に少なくとも30%までポリペプチドの血清半減期を増大させる、請求項3から8のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項10】
ポリペプチドが少なくとも100ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項11】
T169C、K201C、K247CまたはL414C置換を含む、第IX因子ポリペプチド。
【請求項12】
さらにR338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異を含む、請求項11に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項13】
突然変異R338AおよびV86Aを含む、請求項11または12に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項14】
169、201、247および414位からなる群から選択されるシステイン残基が生体適合性ポリマーと結合している、請求項11から13のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項15】
生体適合性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリエチレンオキシド、アルキル-ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシドおよびデキストランからなる群から選択される、請求14に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項16】
ポリ(アルキレングリコール)がポリエチレングリコールである、請求15に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項17】
ポリエチレングリコールが直鎖または分岐鎖である、請求15に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項18】
ポリエチレングリコールが3,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項16または17に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項19】
ポリエチレングリコールが5,000ダルトンから85,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項16または17に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項20】
ポリマーとの結合が非結合ポリペプチドと比較した場合に少なくとも30%までポリペプチドの血清半減期を増大させる、請求項14から19のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項21】
ポリペプチドが少なくとも100ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する、請求項11から19のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項22】
アミノ酸残基160-164間に導入されている少なくとも1個のシステインアミノ酸を含む、第IX因子ポリペプチド。
【請求項23】
アミノ酸残基160-161間、アミノ酸残基161-162間、アミノ酸残基162-163間およびアミノ酸残基163-164間に導入されている1から5個のシステインアミノ酸を含む、請求項22に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項24】
さらにR338AおよびV86Aからなる群から選択される少なくとも1個の突然変異を含む、請求項22または23に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項25】
突然変異R338AおよびV86Aを含む、請求項24に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項26】
少なくとも1個の置換されたシステインが生体適合性ポリマーと結合している、請求項22から25のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項27】
生体適合性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリエチレンオキシド、アルキル-ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシドおよびデキストランからなる群から選択される、請求26に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項28】
ポリ(アルキレングリコール)がポリエチレングリコールである、請求27に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項29】
ポリエチレングリコールが直鎖または分岐鎖である、請求28に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項30】
ポリエチレングリコールが3,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項28または29に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項31】
ポリエチレングリコールが5,000ダルトンから85,000ダルトンの範囲内のみかけの平均分子量を有する、請求項28または29に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項32】
ポリマーとの結合が非結合ポリペプチドと比較した場合に少なくとも30%までポリペプチドの血清半減期を増大させる、請求項26から31のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項33】
ポリペプチドが少なくとも100ユニット/mg ポリペプチドの比活性を有する、請求項22から32のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチド。
【請求項34】
請求項1-33のいずれか1項に記載の第IX因子ポリペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項35】
血友病Bを処置する方法であって、処置を必要とする対象に治療上有効量の請求項34に記載の医薬製剤を投与することを含む、方法。
【請求項36】
医薬製剤が静脈内、皮内、筋肉内または皮下で投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1-33のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、DNA配列。
【請求項38】
宿主細胞が第IX因子ポリペプチドを発現することができる様式で請求項37に記載のDNA配列が導入された、真核生物宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517950(P2011−517950A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505176(P2011−505176)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040691
【国際公開番号】WO2009/140015
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】