説明

第VII因子遺伝子発現阻害のための組成物及び方法

本発明は二本鎖リボ核酸(dsRNA)を提供し、またそのようなdsRNAを使用して細胞又は哺乳類内第VII因子遺伝子発現を阻害するための組成物及び方法を提供する。本発明はウイルス性出血性発熱を含む凝固障害など第VII因子遺伝子発現に惹起される病状及び疾患を治療する組成物及び方法も提供する。本発明で特徴とされるdsRNAは長さ30ヌクレオチド未満、通常、長さ19〜24ヌクレオチドの領域を有するRNA(アンチセンス鎖)を含み、第VII因子遺伝子のmRNA転写の対応領域に実質的に相補的又は完全に相補的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年12月10日に出願された米国仮出願第61/012,670号、及び2007年12月19日に出願された米国仮出願第61/014,879号の利益を主張する。これら両方の先行出願がその全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は二本鎖リボ核酸(dsRNA)、及び第VII因子発現を阻害するためのRNA干渉媒介におけるその使用、及び第VII因子介在性障害、例えば、ウイルス性出血性発熱の治療又は予防のためのdsRNAの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
第VII因子(FVII)は凝固に関与する。血管損傷時、血管外に位置する組織因子(TF)は血液及び循環第VII因子に曝露される。FVIIはいったんTFと結合すると、トロンビン(第IIa因子)、活性化X因子及びFVIIa‐TF複合体自体が含まれる様々なプロテアーゼによってFVIIaに活性化される。TF/FVIIa複合体は凝固開始の役割に加えて、凝固活性化とは独立した直接的な炎症促進効果を有することが報告されている。
【0004】
多くのウイルスがヒト及び他のいくつかの霊長類において致死的出血性疾患を惹起することが報告されている。これらのウイルスはフィロウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、及びフラビリダが含まれる多くのウイルスファミリー由来である。出血性発熱患者は典型的には重度の消費性の播種性血管内凝固症候群(DIC)を発現する。DICは、過剰なトロンビン生成をもたらす広範囲の凝固カスケードの系統的活性化を特徴とする。加えて、凝固因子の消費を伴う線溶系活性化は凝固因子減少及び血小板膜糖蛋白質分解をもたらす。
【0005】
ある感染体は感染後に凝固系を活性化することも知られている。細菌性細胞生成物、ウイルス感染及びサイトカインを含む様々な炎症刺激が内皮細胞及び単球表面上のTF発現を誘発し、それによって凝固経路を活性化することが報告されている。
【0006】
二本鎖RNA分子(dsRNA)はRNA干渉(RNAi)として知られている高度に保存された調節機構において遺伝子発現をブロックすることが示されている。特許文献1(Fireら)では、シー・エレガンスのunc‐22遺伝子発現を阻害するための、長さが少なくとも25ヌクレオチドのdsRNAの使用が開示されている。dsRNAは、植物(例えば、特許文献2、Waterhouse et al.;及び特許文献3、Heifetz et al.を参照のこと)、ショウジョウバエ(例えば、非特許文献1を参照のこと)、及び哺乳類(特許文献4、Limmer;及びDE 101 00 586.5, Kreutzer et al.を参照のこと)を含む他の生物内で標的RNAを分解することも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/32619号
【特許文献2】国際公開第99/53050号
【特許文献3】国際公開第99/61631号
【特許文献4】国際公開第00/44895号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yang, D., et al., Curr. Biol. (2000)10:1191−1200
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は二本鎖リボ核酸(dsRNA)を提供し、またそのようなdsRNAを使用して細胞又は哺乳類内第VII因子遺伝子発現を阻害するための組成物及び方法を提供する。本発明はウイルス性出血性発熱を含む凝固障害など第VII因子遺伝子発現に惹起される病状及び疾患を治療する組成物及び方法も提供する。本発明で特徴とされるdsRNAは長さ30ヌクレオチド未満、通常、長さ19〜24ヌクレオチドの領域を有するRNA(アンチセンス鎖)を含み、第VII因子遺伝子のmRNA転写の対応領域に実質的に相補的又は完全に相補的である。
【0010】
一実施形態では、本発明は第VII因子遺伝子発現阻害のための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAには、互いに相補的な、例えば、実質的に相補的な、完全に相補的な、又は生理的条件下でハイブリダイズするために十分に相補的な少なくとも2つの配列が含まれる。dsRNAには第一配列を含むセンス鎖及び第二配列を含むアンチセンス鎖が含まれる。アンチセンス鎖は第VII因子をコードするmRNAの対応領域に実質的又は完全に相補的なヌクレオチド配列を含み、該相補性領域は長さ30ヌクレオチド未満、通常19〜24ヌクレオチド、例えば、19〜21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、dsRNAの長さは約10〜約15ヌクレオチドであり、他の実施形態ではdsRNAの長さは約25〜約30ヌクレオチドである。一実施形態では、dsRNAは、第VII因子発現細胞と接触すると、第VII因子遺伝子発現を少なくとも25%、例えば、少なくとも35%、又は少なくとも40%阻害する。一実施形態では、第VII因子dsRNAは安定した核酸粒子(SNALP)内で形成される。
【0011】
一実施形態では、dsRNAは例えば、本明細書に記載される検定による測定においてmRNAレベルを少なくとも40%、60%、80%、又は90%低減し得る。例えば、dsRNAはラットの肝第VII因子mRNAレベルを、第VII因子標的siRNAを製剤化した98N12‐5の単回投与などによって少なくとも40%、60%、80%、又は90%低減し得る。別の実施形態では、dsRNAは、例えば、本明細書に記載された検定による測定において蛋白質レベルの類似した減少を引き起こす。さらに別の実施形態では、第VII因子標的siRNA(siFVII)を製剤化した98N12‐5の単回注入は、例えば、本明細書に記載される検定による測定において1、2、3又は4週間以上サイレンシングを媒介し得る。FVIImRNA及び蛋白質レベルを測定する検定は当分野で知られている標準方法によっても実施し得る。例えば、FVIImRNAはRT‐PCR又はノーザンブロット解析によって測定し得る。FVII蛋白質レベルは酵素検定によって、又は抗体に基づく方法、例えば、ウエスタンブロット、ELISA、若しくは免疫組織化学によって測定し得る。
【0012】
FVIIを標的とするdsRNA分子は、表1、2、及び3のセンス配列からなる群から選択されるdsRNAの第一配列、並びに表1、2、及び3のアンチセンス配列からなる群から選択される第二配列を含み得る。本発明で特徴とされるdsRNA分子は天然で存在するヌクレオチドを含み得、又は2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、5’‐ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、及びコレステリル誘導体又はドデカン酸ビスデシルアミド基に結合する末端ヌクレオチドなど少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み得る。あるいは、修飾ヌクレオチドは、2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、2’‐デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックトヌクレオチド、脱塩基性ヌクレオチド、2’‐アミノ修飾ヌクレオチド、2’‐アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホラミデート、及びヌクレオチド含有非天然塩基の群から選択してもよい。一般的に、前記dsRNAの第一配列は表1、2、及び3のセンス配列からなる群から選択され、第二配列は表1、2、及び3のアンチセンス配列からなる群から選択される。
【0013】
別の実施形態では、本発明はFVIIを標的とするdsRNAが含まれる細胞を提供する。該細胞は通常、ヒト細胞などの哺乳類細胞である。
【0014】
別の実施形態では、本発明はFVIIを標的とするdsRNAの1つ以上、及び製薬上許容可能な担体が含まれる生物における第VII因子遺伝子発現阻害のための医薬組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、細胞内第VII因子遺伝子発現の阻害方法を提供し、該方法には下記の工程が含まれる。
(a)二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、互いに相補的、例えば、実質的に又は完全に、互いに相補的な少なくとも2つの配列が含まれるdsRNAの細胞内導入工程、及び
(b)工程(a)において産生した細胞を第VII因子遺伝子のmRNA転写物を分解させるのに十分な時間維持し、それによって細胞内第VII因子遺伝子の発現を阻害する工程。
【0016】
dsRNAには第一配列を含むセンス鎖及び第二配列を含むアンチセンス鎖が含まれる。該アンチセンス鎖は第VII因子をコードするmRNAの対応領域に実質的に又は完全に相補的な相補性領域を含み、該相補性領域は長さ30ヌクレオチド未満、通常、長さ19〜24ヌクレオチドであり、該dsRNAは、第VII因子発現細胞と接触すると、第VII因子遺伝子発現を少なくとも40%阻害する。一実施形態では、dsRNAは例えば、本明細書に記載される検定による測定においてmRNAを少なくとも40%、60%、80%、又は90%低減し得る。例えば、第VII因子標的siRNA製剤98N12‐5の単回投与後に、dsRNAはラット肝第VII因子mRNAレベルを少なくとも40%、60%、80%、又は90%低減し得る。一実施形態ではdsRNAは、例えば、本明細書に記載される検定による測定において蛋白質レベルの類似した減少をもたらす。別の実施形態では、第VII因子標的siRNA(siFVII)を製剤化した98Nl2‐5の単回注入は、例えば、本明細書に記載される検定による測定において1、2、3又は4週間以上サイレンシングを媒介し得る。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、第VII因子介在性障害の治療、予防又は管理方法を、そのような治療、予防又は管理を必要とする患者への本発明で特徴とされる1つ又は複数のdsRNAの治療的又は予防的有効量の投与によって提供する。
【0018】
一実施形態では、FVIIdsRNAはウイルス性出血性発熱などの出血性発熱の治療に使用し得る。そのような発熱はフィロウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、又はフラビリダ科のウイルスなどのウイルスによって惹起され得る。例えば、FVIIdsRNAはフィロウイルス科のウイルス、例えば、エボラ又はマールブルグウイルス、又はアレナウイルス科のウイルス、例えば、ラッサウイルスによって惹起される出血性発熱の治療に使用し得る。
【0019】
別の実施形態では、本明細書で特徴とされるFVIIdsRNAは出血性発熱に惹起される可能性のあるもののような、凝固因子異常又は炎症反応の治療に使用される。
【0020】
別の実施形態では、FVIIdsRNAは血栓性障害、例えば、動脈硬化性プラークの破裂によって生じる可能性のある局所血栓などの治療に使用し得る。別の実施形態では、FVIIdsRNA投与は急性心筋梗塞又は不安定狭心症の治療又は予防に使用される。FVIIdsRNAは閉塞性冠動脈内血栓治療にも使用し得る。別の実施形態では、FVIIdsRNAは深部静脈血栓症の治療又は予防のために投与される。さらに別の実施形態では、FVIIdsRNAは、例えば、癌患者における静脈血栓塞栓症の治療又は予防のために投与される。
【0021】
別の実施形態では、FVIIdsRNAを患者に投与し、1、2、3、又は4週間後、患者は、例えば、血液中若しくは尿中、又は肝臓など特定組織内のFVIImRNAレベルを測定するために試験される。FVIImRNAレベルが予め設定したレベルを超えると測定された場合、患者にFVIIdsRNAをもう一度投与する。FVIImRNAレベルが予め設定したレベル未満と測定された場合は、患者にFVIIdsRNAをもう一度投与することはない。さらに別の実施形態では、FVIIdsRNAは増殖性障害、例えば、卵巣癌、乳癌、頭頚部癌、前立腺癌、結腸直腸癌又は肺癌などの癌の治療のために投与される。
【0022】
単回投与が長期間のサイレンシングを提供し得ることが発見されている。したがって、別の実施形態では、FVIIdsRNAの1回用量が患者に投与され、該用量は第VII因子mRNA又は蛋白質が、少なくとも治療後5、10、又は15日間、治療前レベル(又は未治療時に見られるであろうレベル)の20%以下、少なくとも治療後5、10、又は15日間、治療前レベル(又は未治療時に見られるであろうレベル)の40%以下、少なくとも治療後5、10、15、又は20日間、治療前レベル(又は未治療時に見られるレベル)の60%以下、少なくとも治療後5、10、15、20、又は25日間、治療前レベル(又は未治療時に見られるであろうレベル)の80%以下となるのに十分な用量である。
【0023】
一実施形態では、FVIIdsRNAを1回用量投与し、初回投与又はコース投与終了後少なくとも5、10、15、20、又は25日間はFVIIdsRNAの追加用量を投与しない。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、本発明で特徴とされるdsRNAの1つの少なくとも一本鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される調節配列を含む、細胞内第VII因子遺伝子発現を阻害するベクターを提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は細胞内第VII因子遺伝子発現を阻害するベクターを含む細胞を提供する。該ベクターとしては本発明で特徴とされるdsRNAの1つの少なくとも一本鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される調節配列が挙げられる。
【0026】
【表1】

【0027】
「s」はホスホロチオエート連結を示す。2’‐O‐Me修飾ヌクレオチドは小文字で示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
Nは任意のヌクレオチド(G、A、C、T)を指す。
【0031】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を本明細書で下に説明する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は本明細書及び図面から、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】FVIIsiRNA投与後の肝FVIImRNAレベルを示す棒グラフである。
【図2】FVIIsiRNA投与後の血清FVII蛋白質レベルを示す棒グラフである。
【図3】FVIIsiRNA投与後のプロトロンビン時間を示す棒グラフである。
【図4】リポソーム的に製剤化したFVIIdsRNAによる処理後のマウス肝細胞内FVII蛋白質レベルを示す棒グラフである。リポソーム的に製剤化したルシフェラーゼdsRNAを陰性対照として使用した。
【図5】エボラに感染し、FVIIdsRNAで処理したマウスの生存レベルを示すグラフである。陰性対照は未処理マウス及びルシフェラーゼdsRNAで処理したマウスを含んだ。
【図6】0時点でLNP0l‐siFVIIを5mg/kg単回ボーラス静脈注射で処理したC57BL/6系マウスにおける第VII因子蛋白質レベルの経時変化を示すグラフである。
【図7】図7A及び7Bは、GenBank寄託番号NM_000131.3(3141bp)(2007年11月18日付のGenBank記録)のヒトFVII転写変異体のmRNA配列を示す。
【図8】図8A及び8Bは、GenBank寄託番号NM_019616.2(3141bp)(2007年11月18日付のGenBank記録)のヒトFVII転写変異体のmRNA配列を示す。
【図9】図9A及び9Bは、GenBank寄託番号NM_001080136.1(2424bp)(2007年1月13日付のGenBank記録)のアカゲザルFVII転写変異体のmRNA配列を示す。
【図10】GenBank寄託番号D21212.1(478bp)(2006年12月27日付のGenBank記録)のアカゲザルFVIIの部分的cds配列を示す。
【図11】図11A〜11Cは、ENSEMBLE寄託番号EMSMMUT00000001477(1389bp)のアカゲザルFVII配列を示す。
【図12】ENSEMBLE寄託番号EMSMMUT00000042997(1326bp)のアカゲザルFVII配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、並びにdsRNAを使用して細胞又は哺乳類内第VII因子遺伝子発現を阻害するための組成物及び方法を提供する。本発明は、dsRNAを使用して第VII因子遺伝子発現により惹起された哺乳類の病状及び疾患の治療のための組成物並びに方法も提供する。dsRNAはRNA干渉(RNAi)として知られたプロセスを通してmRNAの配列特異的分解を指令する。該プロセスは哺乳類及び他の脊椎動物を含む多種多様の生物において生じる。
【0034】
本発明で特徴とされるdsRNAは、長さ30ヌクレオチド未満、通常、長さ19〜24ヌクレオチドの領域を有するRNA(アンチセンス鎖)を含み、第VII因子遺伝子のmRNA転写産物の少なくとも一部に実質的に又は完全に相補的である。これらdsRNAの使用は、哺乳類の血栓症に関係しているとみなされる遺伝子のmRNAの標的化分解を可能にする。細胞ベース及び動物の検定を使用して、本発明者らは、これらdsRNAは超低用量でRNAiを特異的且つ効果的に媒介し得て、第VII因子遺伝子発現を有意に阻害することを示してきている。したがって、本発明で特徴とされる方法及び組成物には血栓性障害治療に有用なdsRNAが含まれる。
【0035】
下記の詳細な説明は標的第VII因子遺伝子発現を阻害するdsRNA及びdsRNAを含む組成物の作製及び使用方法、並びに血栓性障害などの第VII因子発現に惹起される疾患及び障害を治療する組成物及び方法を開示する。本発明で特徴とされる医薬組成物は、製薬上許容可能な担体と共に、長さ30ヌクレオチド未満、通常、長さ19〜24ヌクレオチドで、第VII因子遺伝子のRNA転写産物の少なくとも一部に実質的に相補的な相補性領域を有するアンチセンス鎖を有するdsRNAを含む。
【0036】
したがって、本発明のある態様では、製薬上許容可能な担体と共にFVIIを標的とするdsRNAを含む医薬組成物、第VII因子遺伝子発現を阻害する組成物の使用方法、及び第VII因子遺伝子発現に惹起される疾患を治療する医薬組成物の使用方法を提供する。
【0037】
I.定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の請求項で使用されるある用語及び語句の意味を下に提供する。本明細書の他の箇所における用語の使用法と本項で提供するその定義との間に明らかな矛盾があった場合、本項の定義が優先されるものとする。
【0038】
「G」、「C」、「A」及び「U」は通常、塩基として各々グアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルを含むヌクレオチドを表す。しかしながら、「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」という用語は、下に詳述する通り、修飾ヌクレオチド、又は代用置換部分も示し得ることが理解される。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルを、そのような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対合特性を実質的に変えずに他の部分と置換してよいことをよく理解している。例えば、イノシンをその塩基として含むヌクレオチドは、制限なく、アデニン、シトシン、又はウラシルを含むヌクレオチドと塩基対となってよい。したがって、ウラシル、グアニン、又はアデニンを含むヌクレオチドは、本発明で特徴とされるヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含むヌクレオチドによって置換してよい。別の例では、標的mRNAと塩基対合するG‐Uゆらぎを形成するためにオリゴヌクレオチドの任意の箇所のアデニン及びシトシンを各々グアニン及びウラシルと置換し得る。そのような置換部分を含む配列は本発明で特徴とされる実施形態である。
【0039】
本明細書で使用される「第VII因子」とは、第VII因子mRNA、蛋白質、ペプチド、又はポリペプチドを意味する。「第VII因子」という用語は、当分野でAI132620、Cf7、凝固第VII因子前駆体、凝固第VII因子、FVII、血清プロトロンビン転化促進剤、FVII凝固蛋白質、及びエプタコグアルファとしても知られている。
【0040】
本明細書においては、「標的配列」とは、一次転写産物のRNAプロセシング産物であるmRNAを含む、第VII因子遺伝子の転写中に形成されたmRNA分子のヌクレオチド配列の隣接部を意味する。
【0041】
本明細書においては、「配列が含まれる鎖」という用語は、標準的ヌクレオチド命名法を使用して示した配列によって記載されるヌクレオチド鎖を含むオリゴヌクレオチドを示す。
【0042】
本明細書においては、別に示されない限り、「相補的な」という用語は、ヌクレオチド対に関して使用される場合、伝統的なワトソン‐クリック対、すなわち、GC、AT、又はAUを意味する。それはまたヌクレオチドの一方又は両方が本明細書に記載されるように、例えば、リボース修飾又はリン酸骨格修飾により修飾されている伝統的なワトソン‐クリック対合にまで及ぶ。それは実質的に塩基対合特性を変えないイノシン又は他の構成要素との対合も含み得る。
【0043】
当業者に理解されるように、本明細書においては、別に示されない限り、「相補的な」という用語は、第二ヌクレオチド配列との関連で第一ヌクレオチド配列について記載するために使用するとき、第二ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、ある条件下において、第一ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドがハイブリダイズし二重鎖構造を形成する能力を示す。相補性とは、生理的条件下、例えば、生物内に発生する可能性のある生理的に関連した条件下のハイブリダイゼーションを可能とする完全相補性、実質的相補性、及び十分な相補性を含み得る。完全な相補性とは、上記に定義した個々の対について、第一及び第二配列の対全てにおける相補性を指す。本明細書の第二配列に関して配列が「実質的に相補的な」とき、2つの配列は完全に相補的となり得るか、又はそれらはそれらの最終適用に最も関連する条件下においてハイブリダイズ能力を保持しつつ、ハイブリダイゼーション時に1つ以上の、しかし通常は4、3又は2つ以下のミスマッチ塩基対を形成してよい。実質的な相補性は緊縮条件下のハイブリダイゼーションとしても定義し得、緊縮条件とは:400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃又は70℃で12〜16時間、そしてそれに続く洗浄を含み得る。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終適用にしたがって2つの配列の相補性を試験する上で最も適切な条件設定を決定することができる。
【0044】
しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション時に1つ又は複数の単鎖突出部を形成するように設計されている場合、そのような突出部は相補性の決定に関してミスマッチとみなされない。例えば、長さ21ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド及び長さ23ヌクレオチドの別のオリゴヌクレオチドを含み、長い方のオリゴヌクレオチドが、短い方のオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチド配列を含む、dsRNAも、本明細書の目的のために「完全に相補的」と呼び得る。
【0045】
「相補的」配列は、本明細書において使用するときは、ハイブリダイズ能力に関する上記の要件を満たす限り、非ワトソン‐クリック塩基対並びに/又は非天然及び修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含んでもよく、又はそれから全体が形成されてもよい。そのような非ワトソン‐クリック塩基対は、G:Uゆらぎ塩基対又はHoogstein塩基対合を含むが、これらに限定されない。
【0046】
「相補的な」、「完全に相補的な」、「実質的に相補的な」、及び生理的条件下、例えば、生物内に発生する可能性がある生理的関連条件下においてハイブリダイゼーションを可能とするのに十分な相補性という用語は、それらの使用において理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間、又はdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列の間でマッチする塩基に関して本明細書で使用してよい。
【0047】
本明細書において使用するとき、メッセンジャーRNA(mRNA)に「相補的、例えば、実質的に少なくとも一部相補的な」ポリヌクレオチドとは、対象のmRNA隣接部(例えば、コード第VII因子)に対して相補的な、例えば、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、該配列が第VII因子をコードするmRNAの途切れのない部分に実質的に相補的な場合、第VII因子mRNAの少なくとも一部に対して相補的である。
【0048】
「二本鎖RNA」又は「dsRNA」という用語は、本明細書において使用される場合、上に定義される2つの逆平行及び実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子、又はリボ核酸分子複合体を示す。二重鎖構造を形成する二本の鎖は、1つのより大きなRNA分子の異なる部分でよく、又は別々のRNA分子でもよい。二本の鎖が1つのより大きな分子の一部であり、したがって片方の鎖の3’末端と二重鎖構造を形成する他方の鎖の5’末端との間が一続きのヌクレオチド鎖によって連結している場合、連結したRNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。二本の鎖が、片方の鎖の3’末端と二重鎖構造を形成する他方の鎖の5’末端との間の一続きのヌクレオチド鎖ではない方法によって共有連結している場合、該連結構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は同数又は異なる数のヌクレオチドを有してよい。塩基対の最大数はdsRNAの短い方の鎖におけるヌクレオチド数である。二重鎖構造に加えて、dsRNAは1つ又は複数のヌクレオチド突出部を含んでよい。本明細書で使用されるdsRNAは「低分子阻害性RNA」、「siRNA」、「iRNA剤」又は「RNAi剤」とも称される。
【0049】
本明細書において使用するとき、「ヌクレオチド突出部」とはdsRNAの片方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸びる、又はその逆のときにdsRNAの二重鎖構造から突き出す1つ又は複数の不対ヌクレオチドのことを指す。「平滑」又は「平滑末端」とは該dsRNA末端に不対ヌクレオチドを有さないこと、すなわち、ヌクレオチドの突出部を有さないことを意味する。「平滑末端」dsRNAとはその長さ全体において二本鎖である、すなわち、該分子のいずれの末端にもヌクレオチドの突出部を有さないdsRNAのことである。
【0050】
「アンチセンス鎖」という用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNA鎖を指す。本明細書において使用するとき、「相補性領域」という用語は、ある配列、例えば本明細書で定義されるような標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域が標的配列に対し完全に相補的ではない場合、ミスマッチは末端領域内が最も忍容され、存在すれぱ通常、末端領域又は、例えば、5’及び/若しくは3’末端の6、5、4、3、若しくは2ヌクレオチド以内の領域内である。
【0051】
本明細書で使用される「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNA鎖を指す。
【0052】
「同一性」という用語は、2ポリヌクレオチド以上の配列同士を比較して決定される、該配列間の関係性である。同一性とはそのような配列ストリング間の適合性によって決定されるポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定する多くの方法が存在するが、該用語は当業者に周知である(例えば、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press (1987)、及びSequence Analysis Primer, Gribskov., M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991)を参照のこと)。本明細書で使用される「実質的に同一」とは、dsRNAのセンス鎖と標的遺伝子の対応部分との間の相同度が非常に高いこと(例えば、100%の配列同一性)を意味する。しかしながら、90%より高い、又は95%より高い配列同一性を有するdsRNAを本発明に使用してよく、したがって遺伝子変異、菌株多型性、又は進化の多様性による予測可能な配列変異は忍容し得る。dsRNAは典型的には標的RNAに対して100%相補的であるが、いくつかの実施形態では、dsRNAはRNAと標的遺伝子との間に単数又は複数の塩基対のランダムなミスマッチを含んでよい。
【0053】
本明細書において使用される「SNALP」という用語は、安定的な核酸脂質粒子を指す。SNALPとは、iRNA剤又はiRNA剤が転写されるプラスミドなどの核酸を含む還元された水性内部をコーティングする脂質小胞を表す。SNALPは、例えば、米国特許出願公開第20060240093号、第20070135372号、及び2008年4月15日に出願された米国特許出願第61/045,228号に記載されている。これらの出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0054】
「細胞内導入」とは、dsRNAを指す場合、当業者に理解される、細胞内への取り込み又は吸収の促進を意味する。dsRNAの吸収又は取り込みは自発的拡散性又は能動的細胞プロセスを通して、又は助剤若しくはデバイスによって生じ得る。本用語の意味はin vitro細胞に限定されない。dsRNAは細胞が生命体の一部であるとき「細胞内導入」してもよい。そのような場合、細胞内導入は生物への送達が含まれる。例えば、in vivo送達において、dsRNAは組織部位内へ注入、又は全身投与し得る。in vitro細胞内導入には、電気穿孔法及びリポフェクチン法など当分野で知られている方法が含まれる。
【0055】
「サイレンス」及び「発現阻害」という用語は、それらが第VII因子遺伝子を指す限り、本明細書では、第一細胞又は細胞群と実質的に同一だがそのように処理されていない(対照細胞)第二細胞又は細胞群と比較したときの、第VII因子遺伝子が転写され、第VII遺伝子発現が阻害されるように処理されている第一細胞又は細胞群から単離され得るmRNA量の低減によって示される、第VII因子遺伝子発現の少なくとも部分的な抑制を示す。阻害度は通常、
[(対照細胞内のmRNA)−(処理した細胞内のmRNA)]/(対照細胞内のmRNA)×100%
と表される。
【0056】
あるいは、阻害度は、第VII因子遺伝子転写に機能的に関連づけられるパラメーター、例えば細胞から分泌される第VII因子遺伝子にコードされる蛋白質量、又はある表現型、例えばアポトーシスを示す細胞の数の減少を単位として与えられ得る。原則上、第VII因子遺伝子サイレンシングは、構成的に又はゲノム工学のいずれかによって標的を発現している任意の細胞において、及び任意の適切な検定によって決定してよい。しかしながら、所与のsiRNAが第VII因子遺伝子発現をある程度阻害し、したがって本発明に包含されるかどうかを決定するために参照が必要な場合、下記の実施例にて提供する検定はそのような参照の役割を果たすものとする。
【0057】
例えば、ある例では、本発明で特徴とされる二本鎖オリゴヌクレオチド投与によって第VII因子遺伝子発現は少なくとも約20%、25%、35%、40%又は50%抑制される。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって第VII因子遺伝子は少なくとも約60%、70%、又は80%抑制される。他の実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって第VII因子遺伝子は少なくとも約85%、90%、又は95%抑制される。
【0058】
「治療(treat)」、「治療(treatment)」などの用語は、ウイルス性出血性発熱などの疾患又は障害の緩和(relief)又は軽減(alleviation)を指す。本発明において、本明細書の下記に記載される任意の他の状態(例えば、血栓性障害以外の第VII因子介在性状態)に関連する範囲で、「治療(treat)」、「治療(treatment)」などの用語は、そのような状態に関連した少なくとも1つの症状を緩和(relieve)又は軽減(alleviate)すること、又はそのような状態の進行を減退若しくは逆行させることを意味する。
【0059】
本明細書においては、「第VII因子介在性状態又は疾患」という用語並びに関連用語及び語句は、不適切、例えば、正常より高い、第VII因子活性を特徴とする状態又は障害を指す。不適切な第VII因子機能活性は正常時に第VII因子を発現しない細胞内での第VII因子発現、又は第VII因子発現増加(例えば、ウイルス性出血性発熱、又は血栓の症状に至る)の結果として生じる可能性がある。第VII因子介在性状態又は疾患には不適切な第VII因子の機能活性が完全に又は部分的に介在する可能性がある。しかしながら、第VII因子介在性状態又は疾患は、第VII因子調整が基礎疾患又は障害に対するいくらかの効果をもたらすものである(例えば、第VII因子阻害剤は少なくともいくらかの患者において患者の健康のいくらかの改善をもたらす)。
【0060】
「出血性発熱」としてはウイルス感染に惹起される疾患(illness)の組み合わせが挙げられる。発熱及び胃腸症状は典型的には毛細管出血を続発する。
【0061】
「凝固因子異常」とは対象の血液凝固機序における任意の欠陥である。
【0062】
本明細書においては、「血栓性障害」とは好ましからぬ血液凝固を特徴とする任意の障害である。
【0063】
本明細書においては、「治療的有効量」及び「予防的有効量」という語句はウイルス性出血性発熱、又はそのような障害、例えば、出血、発熱、衰弱、筋肉痛、頭痛、炎症、若しくは循環性ショックの明白な症状の治療、予防、又は管理における治療的利益を提供する量を指す。具体的な治療的有効量は一般の医師が容易に決定し得て、当分野で知られている要因、例えば血栓性障害タイプ、患者の既往歴及び年齢、疾患段階、並びに他剤投与などによって変わる可能性がある。
【0064】
本明細書において使用するとき、「医薬組成物」には薬理学的有効量のdsRNA及び製薬上許容可能な担体が含まれる。本明細書において使用するとき、「薬理学的有効量」、「治療的有効量」又は単に「有効量」とは意図した薬理学的、治療的又は予防的結果を得る上で有効なRNA量を指す。例えば、疾患又は障害に関連した測定可能なパラメーターが少なくとも25%減少したときに、与えられた臨床治療が有効とみなされる場合、該疾患又は障害の治療のための薬物の治療的有効量は、該パラメーターの少なくとも25%の減少をもたらすために要される量である。
【0065】
「製薬上許容可能な担体」という用語は、治療剤投与のための担体を指す。そのような担体には、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。該用語は細胞培養用培地を明確に除外する。薬物経口投与用の製薬上許容可能な担体には、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑剤、甘味剤、香味料、着色剤及び保存料などの製薬上許容可能な賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。トウモロコシ澱粉及びアルギン酸が適切な崩壊剤である一方、適切な不活性希釈剤としては炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、並びにラクトースが挙げられる。滑剤は、存在する場合、通常マグネシウムステアレート、ステアリン酸又はタルクである一方、結合剤は澱粉及びゼラチンを含んでよい。所望の場合、錠剤は胃腸管内吸収を遅延化するためにグリセリンモノステアレート又はグリセリルジステアレートなどの材料でコーティングしてよい。
【0066】
本明細書において使用するとき、「形質転換細胞」とはdsRNA分子が発現する可能性があるベクターを導入した細胞である。
【0067】
II. 二本鎖リボ核酸(dsRNA)
一実施形態では、本発明は細胞内又は哺乳類内において第VII因子遺伝子発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。該dsRNAには、第VII因子遺伝子発現で形成されたmRNAの対応領域に相補的であり、長さ30ヌクレオチド未満であり、通常、長さ19〜24ヌクレオチドである相補性領域を含むアンチセンス鎖が含まれる。一実施形態ではdsRNAは、前記VII因子遺伝子発現細胞との接触時、前記VII因子遺伝子発現を、例えば、細胞ベースの検定において、少なくとも25%、例えば、少なくとも40%阻害する。dsRNAには二重鎖構造を形成するハイブリダイズに十分相補的な2本のRNA鎖が含まれる。センス鎖には、適切な条件下で結合した場合、二本鎖がハイブリダイズして二重鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖に相補的な領域が含まれる。一般的に、二重鎖構造は15〜30、より通常では18〜25、さらにより通常では19〜24、及び最も通常では21〜23塩基対の長さである。同様に、標的配列への相補性領域は15〜30、より通常では18〜25、さらにより通常では19〜24、及び最も通常では21〜23ヌクレオチドの長さである。FVIIを標的とするdsRNAはさらに1つ又は複数の単鎖ヌクレオチド突出部を含んでよい。dsRNAは当分野で知られている標準方法によって、以下で詳細に考察するように、例えばBiosearch、Applied Biosystems, Inc.から市販されている自動DNA合成装置の使用などによって合成し得る。一実施形態では、第VII因子遺伝子はヒト第VII因子遺伝子である。特定の実施形態では、第一配列は表1、2、及び3のセンス配列からなる群から選択され、第二配列は表1、2、及び3のアンチセンス配列からなる群から選択される。一実施形態では、切断は表1、2、及び3のdsRNAの切断部位の6、5、4、3、2又は1ヌクレオチド以内である。
【0068】
さらなる実施形態では、dsRNAには表1、2、及び3に提示される配列の群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列が含まれる。他の実施形態では、dsRNAには、本群から選択される少なくとも2つの配列であり、少なくとも2つの配列の片方は少なくとも2つの配列の他方に相補的であって、少なくとも2つの配列の片方は第VII因子遺伝子発現で発生するmRNA配列に実質的に相補的であるdsRNAが含まれる。一般的に、dsRNAは2つのオリゴヌクレオチドを含み、第一のオリゴヌクレオチドは表1、2、又は3に記載されるセンス鎖であり、第二のオリゴヌクレオチドは表1、2、又は3に記載されるアンチセンス鎖である。
【0069】
当業者は、20〜23、厳密には21塩基対の二重鎖構造を含むdsRNAがRNA干渉の誘発に特に有効であることが確認されてきていることをよく理解している(Elbashir et al., EMBO 2001, 20:6877−6888)。しかしながら、他の者はより短い又はより長いdsRNAも同様に有効であり得ることを見出している。上記の実施形態では、表1、2、及び3に提示したオリゴヌクレオチド配列の性質の故に、本発明で特徴とされるdsRNAは最小21ntの長さの少なくとも一本の鎖を含み得る。一方又は両方の末端上のほんの数ヌクレオチドを差し引いた、表1、2又は3の配列の1つを含むより短いdsRNAは、上記のdsRNAと比較して同様に有効な可能性があることを合理的に期待し得る。したがって、表1、2、又は3の配列の1つの少なくとも15、16、17、18、19、20、又はそれより多い隣接ヌクレオチドの部分配列を含み、第VII因子遺伝子発現の阻害能力が、本明細書で下で記載されるFACS検定において、完全配列を含むdsRNAから5、10、15、20、25、又は30%より多く阻害能力が異なることはない、dsRNAが本発明によって企図される。
【0070】
加えて、表1、2、及び3に提示したdsRNAはRNAiベース切断感受性の第VII因子mRNAにおける選択部位を特定する。したがって、本発明は、本発明の製剤の1つによって標的とされる配列内を標的とするdsRNAをさらに含む。本明細書において使用するとき、第二dsRNAが第一dsRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNA内の任意の箇所のメッセージを切断する場合、第二dsRNAは第一dsRNA配列内を標的とすると言われる。そのような第二剤は通常、表1、2、又は3に示し、第VII因子遺伝子において選択された配列の隣接領域から取られた追加のヌクレオチド配列に連結した配列の1つの少なくとも15隣接ヌクレオチドからなる。
【0071】
本発明で特徴とされるdsRNAは標的配列に対する1つ又は複数のミスマッチを含み得る。一実施形態では、dsRNAは3より多くのミスマッチを含まない。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチ部分は典型的には相補性領域中心に位置しない。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチは典型的にはいずれかの末端から5ヌクレオチド、例えば相補性領域の5’又は3’末端のいずれかから5、4、3、2、又は1ヌクレオチドに制限される。例えば、第VII因子遺伝子領域に相補的な23ヌクレオチドのdsRNA鎖では、dsRNAは通常、中心部13ヌクレオチド内にミスマッチを全く含まない。本明細書に記載する方法は、標的配列に対するミスマッチを含むdsRNAが、第VII因子遺伝子発現阻害において有効であるかどうか決定するために使用し得る。ミスマッチを伴うdsRNAの第VII因子遺伝子発現阻害における有効性の考察は、特に第VII因子遺伝子内の特定の相補性領域が集団内に多形性配列変異を有することが知られている場合に重要である。
【0072】
一実施形態では、dsRNAの少なくとも1つの末端に、1〜4、通常1又は2ヌクレオチドの単鎖ヌクレオチド突出部がある。少なくとも1つのヌクレオチド突出部を有するdsRNAは平滑末端対応物よりも優れた阻害特性を期せずして有する。さらに、本発明者らは、1ヌクレオチド突出部のみの存在がdsRNAの干渉作用を、その全体の安定性に影響を与えずに強化することを見出した。1つの突出部のみを有するdsRNAは、in vivo、並びに様々な細胞、細胞培養用培地、血液、及び血清で特に安定且つ有効であることが証明された。一般的に、単鎖突出部はアンチセンス鎖の3’末端、あるいは、センス鎖の3’末端に位置する。dsRNAは通常、アンチセンス鎖の5’末端に位置する平滑末端を有していてもよい。そのようなdsRNAは改善された安定性及び阻害作用を有し、したがって低用量、すなわち、5mg/レシピエントの体重1kg/日未満での投与が可能である。一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖はセンス鎖の各3’末端及び5’末端に1〜10ヌクレオチド突出部を有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖はアンチセンス鎖の各3’末端及び5’末端に1〜10ヌクレオチド突出部を有する。別の実施形態では、突出部内の1ヌクレオチド以上がヌクレオシドチオホスフェートと置換される。
【0073】
さらに別の実施形態では、dsRNAは安定性を高めるため化学的に修飾されている。例えば、FVIIを標的とするdsRNAの核酸は、参照することにより本明細書に組み込まれる“Current protocols in nucleic acid chemistry”, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されるような当分野にてよく確立された方法によって合成及び/又は修飾してよい。dsRNA化合物の具体例としては、修飾骨格を含む又は天然ヌクレオシド間結合を含まないdsRNAが挙げられる。本明細書に定義される通り、修飾した骨格を有するdsRNAには、骨格内にリン原子を有し続けるdsRNAも骨格内にリン原子を有さないdsRNAも含まれる。本明細書の目的のため、及び当分野においてときどき参照されるように、それらのヌクレオシド間骨格内にリン原子を有さない修飾dsRNAはオリゴヌクレオシドともみなし得る。
【0074】
代表的な修飾dsRNA骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネート並びに3’‐アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホラミデート及びアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、並びに正常な3’‐5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’‐5’結合アナログ、並びにヌクレオシド単位の隣接対が3’‐5’から5’‐3’へ又は2’‐5’から5’‐2’へ結合した逆極性を持つものが挙げられる。種々の塩、混合塩、及び遊離酸の形態も含まれる。
【0075】
上記のリン含有連結調製を説明している代表的な米国特許は、各々が、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,195号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,316号、第5,550,111号、第5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、及び第5,625,050号が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
リン原子を含まない、代表的な修飾dsRNAの骨格は、短鎖アルキル若しくは短鎖シクロアルキルヌクレオシド間結合、混合されたヘテロ原子とアルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1つ以上の短鎖ヘテロ原子若しくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成される。これらには、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、アミド骨格、並びにN、O、S及びCH構成成分が混合された部分を有する他の骨格が含まれる。
【0077】
上記のオリゴヌクレオシド調製を説明している代表的な米国特許は、各々が、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,64,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号、及び第5,677,439号を含むが、これらに限定されない。
【0078】
他の代表的なdsRNA模倣物では、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方が新規な基と置換される。塩基単位は適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーション用に維持されている。そのようなオリゴマー化合物の1つであり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されてきているdsRNA模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、dsRNAの糖骨格はアミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子と直接に又は間接的に結合する。PNA化合物の調製を説明している代表的な米国特許は、各々が、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;及び第5,719,262号を含むが、これらに限定されない。PNA化合物に関するさらなる説明はNielsen et al., Science, 1991, 254, 1497−1500に見出され得る。
【0079】
代表的な実施形態では、dsRNAはヘテロ原子骨格、特に上記に参照した米国特許第5,489,677号の‐CH‐NH‐CH‐、‐CH‐N(CH)‐O‐CH‐[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られている]、‐CH‐O‐N(CH)‐CH‐、‐CH‐N(CH)‐N(CH)‐CH‐及び‐N(CH)‐CH‐CH‐[天然ホスホジエステル骨格は‐O‐P‐O‐CH‐として表される]、並びに上記に参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格を伴うホスホロチオエート骨格及びオリゴヌクレオシドを有する。他の実施形態では、本発明で特徴とされるdsRNAは上記に参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有する。
【0080】
修飾dsRNAは1つ又は複数の置換した糖部分を含んでもよい。代表的なdsRNAは2’位に下記の1つを含む:OH;F;O‐、S‐、若しくはN‐アルキル;O‐、S‐、若しくはN‐アルケニル;O‐、S‐又はN‐アルキニル;又はO‐アルキル‐O‐アルキルであって、アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換又は非置換のC〜C10アルキル又はC〜C10アルケニル及びアルキニルであり得る。代表的な修飾としてはO[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、及びO(CHON[(CHCH)](式中n及びmは1〜約10である)が挙げられる。他の実施形態では、dsRNAは2’位に下記の1つを含む:C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O‐アルカリル又はO‐アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポータ基、インターカレータ、dsRNAの薬物動態学的特性を改善するための基、又はdsRNAの薬力学的特性を改善するための基、並びに類似した特性を有する他の置換基。一実施形態では、修飾としては2’‐メトキシエトキシ(2’‐O‐CHCHOCH、2’‐O‐(2‐メトキシエチル)又は2’‐MOEとしても知られる)(Martin et al., HeIv. Chim. Acta, 1995, 78, 486−504)、すなわち、アルコキシ‐アルコキシ基が挙げられる。他の実施形態では、修飾には下記の実施例に記載されるように2’‐ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’‐DMAOEとしても知られる、O(CHON(CH基、、及び2’‐ジメチルアミノエトキシエトキシ(当分野で2’‐O‐ジメチルアミノエトキシエチル又は2’‐DMAEOEとしても知られる)、すなわち、下記の実施例にも記載される2’‐O‐CH‐O‐CH‐N(CHが含まれる。
【0081】
他の修飾には2’‐メトキシ(2’‐OCH)、2’‐アミノプロポキシ(2’‐OCHCHCHNH)及び2’‐フルオロ(2’‐F)が含まれる。類似した修飾はdsRNA上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の3’位又は2’‐5’位の連結したdsRNA及び5’末端ヌクレオチドの5’位においても行ってよい。dsRNAは、フラノース型五炭糖の代わりにシクロブチル部分などの糖質模倣物も有してよい。そのような修飾糖構造の調製を説明している代表的な米国特許には、本出願と共に共同保有され、且つ各々がその全体を参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、第5,359,044号、第5,393,878号、第5,446,137号、第5,466,786号、第5,514,785号、第5,519,134号、第5,567,811号、第5,576,427号、第5,591,722号、第5,597,909号、第5,610,300号、第5,627,053号、第5,639,873号、第5,646,265号、第5,658,873号、第5,670,633号;及び第5,700,920号が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
dsRNAはまた、核酸塩基(当分野において単に「塩基」と称されることが多い)に対する修飾又は置換を含んでいてもよい。本明細書において使用するとき、「修飾されていない」又は「天然の」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基には、他の合成及び天然の核酸塩基、例えば5‐メチルシトシン(5‐me‐C)、5‐ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2‐アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6‐メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2‐プロピル及び他のアルキル誘導体、2‐チオウラシル、2‐チオチミン及び2‐チオシトシン、5‐ハロウラシル及びシトシン、5‐プロピニルウラシル及びシトシン、6‐アゾウラシル、シトシン及びチミン、5‐ウラシル(擬ウラシル)、4‐チオウラシル、8‐ハロ、8‐アミノ、8‐チオール、8‐チオアルキル、8‐ヒドロキシル及び他の8‐置換アデニン並びにグアニン、5‐ハロ、特に5‐ブロモ、5‐トリフルオロメチル及び他の5‐置換ウラシル並びにシトシン、7‐メチルグアニン及び7‐メチルアデニン、8‐アザグアニン及び8‐アザアデニン、7‐デアザグアニン及び7‐デアザアデニン、並びに3‐デアザグアニン及び3‐デアザアデニンが含まれる。さらに、核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858−859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるもの、及びSanghvi, Y S., Chapter 15, DsRNA Research and Applications, pages 289−302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993に開示されるものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、オリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、5‐置換ピリミジン、6‐アザピリミジン、並びに2‐アミノプロピルアデニン、5‐プロピニルウラシル及び5‐プロピニルシトシンを含むN‐2、N‐6及びO‐6置換プリンが含まれる。5‐メチルシトシンの置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されてきており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., DsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276−278)、特に2’‐O‐メトキシエチル糖修飾と組み合わされたとき、典型的な塩基置換基を表す。
上記のいくつかの修飾した核酸塩基並びに 他の修飾した核酸塩基の調製を説明している代表的な米国特許は、参照することにより各々が本明細書に組み込まれる米国特許第4,845,205号、第5,130,30号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、及び第5,681,941号と同様に上記の米国特許第3,687,808号を含むが、これらに限定されず、米国特許第5,750,692号も含まれ、それも参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0083】
FVIIを標的とするdsRNAの別の修飾としては、dsRNAの活性、細胞分布又は細胞取り込みを高める1つ以上の部分又は複合体へのdsRNAの化学的連結が挙げられる。そのような部分は、限定するものではないが、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 199, 86, 6553−6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994 4 1053−1060)、チオエーテル、例えば、ベリル‐S‐トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306−309; Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533−538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10, 1111−1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327−330; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49−54)、リン脂質、例えば、ジ‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロール又はトリエチル‐アンモニウム1,2‐ジ‐O‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロ‐3‐H‐ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651−3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777−3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969−973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651−3654)、パルミトイル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229−237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ‐カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923−937)である。
【0084】
そのようなdsRNA複合体の調製を説明している代表的な米国特許は、参照することにより各々が本明細書に組み込まれる米国特許第4,828,979号、第4,948,882号、第5,218,105号、第5,525,465号、第5,541,313号、第5,545,730号、第5,552,538号、第5,578,717号、第5,580,731号、第5,591,584号、第5,109,124号、第5,118,802号、第5,138,045号、第5,414,077号、第5,486,603号、第5,512,439号、第5,578,718号、第5,608,046号、第4,587,044号、第4,605,735号、第4,667,025号、第4,762,779号、第4,789,737号、第4,824,941号、第4,835,263号、第4,876,335号、第4,904,582号、第4,958,013号、第5,082,830号、第5,112,963号、第5,214,136号、第5,082,830号、第5,112,963号、第5,214,136号、第5,245,022号、第5,254,469号、第5,258,506号、第5,262,536号、第5,272,250号、第5,292,873号、第5,317,098号、第5,371,241号、第5,391,723号、第5,416,203号、第5,451,463号、第5,510,475号、第5,512,667号、第5,514,785号、第5,565,552号、第5,567,810号、第5,574,142号、第5,585,481号、第5,587,371号、第5,595,726号、第5,597,696号、第5,599,923号、第5,599,928号及び第5,688,941号を含むが、これらに限定されない。
【0085】
所与の化合物は全位置均一に修飾される必要はなく、実際には1つより多くの上記の修飾のが単一化合物又はdsRNA内の単一ヌクレオシドすらにも取り込まれてよい。本発明はキメラ化合物であるdsRNA化合物も含む。「キメラ」dsRNA化合物又は「キメラ」とは、本発明において、化学的に異なる領域を2つ以上含むdsRNA化合物、特にdsRNAであり、各々が少なくとも1つのモノマー単位、すなわち、dsRNA化合物の場合はヌクレオチドで構成されている。これらのdsRNAは典型的には、該dsRNAはdsRNAに増大したヌクレアーゼ分解耐性、増大した細胞取り込み、及び/又は増大した標的核酸結合親和力を付与するように修飾されている少なくとも1つの領域を含む。dsRNAの付加的領域はRNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断可能な酵素の基質としての役割を果たし得る。例として、RNase HはRNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。RNase Hの活性化は、したがって、RNA標的の切断をもたらし、それによってdsRNAによる遺伝子発現阻害の有効性を大いに高める。その結果、同一標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと同様の結果が、キメラdsRNA使用時により短いdsRNAにおいてしばしば得られる。RNA標的の切断はゲル電気泳動及び、必要に応じて、当分野で知られている関連する核酸ハイブリダイゼーション技術により日常的に検出し得る。
【0086】
ある例では、dsRNAを非リガンド基によって修飾してよい。多くの非リガンド分子はdsRNAの活性、細胞分布又は細胞取り込みを高めるためにdsRNAに複合化されており、そのような複合化の実施手順は科学的文献において入手可能である。そのような非リガンド部分には、コレステロール(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル‐S‐トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306、 Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111、 Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327;、Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2‐ジ‐O‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロ‐3‐H‐ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651、 Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミトイル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ‐カルボニル‐オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)などの脂質成分が含まれている。そのようなdsRNA複合体の調製を説明している代表的な米国特許は上に挙げた。代表的な複合体化プロトコルは、該配列の1つ又は複数の位置にアミノリンカーを有するdsRNA合成を含む。アミノ基は次いで適切なカップリング又は活性化試薬を使用して複合化される分子と反応する。該複合体化反応は、dsRNAが固体支持体に結合したまま又は溶液相内のdsRNA切断後のいずれかで実施してよい。HPLCによるdsRNA複合体精製により典型的には純粋な複合体が得られる。コレステロール複合体の使用は、例えば、第VII因子発現部位である膣上皮細胞標的を高め得る。
【0087】
ベクターによりコードされるRNAi剤
FVIIを標的とするdsRNAはin vivoで細胞内にて組換えウイルスベクターからも発現し得る。例えば、組換えウイルスベクターは、dsRNA及びdsRNA配列発現のための任意の適切なプロモーターをコードする配列を含み得る。適切なプロモーターとしては、例えば、U6又はHl RNA pol IIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。他の適切なプロモーターの選択は当分野における技術範囲である。組換えウイルスベクターは特定の組織内又は特定の細胞内環境におけるdsRNA発現を誘導可能な又は調節可能なプロモーターも含み得る。dsRNAをin vivo細胞内に送達するための組換えウイルスベクターの使用についての詳細は、以下で考察する。
【0088】
FVIIを標的とするdsRNAは2つの分離した相補的なRNA分子、又は2つの相補性領域を伴う単一RNA分子のいずれかとして組換えウイルスベクターから発現し得る。
【0089】
発現させるべきdsRNA分子のためのコーディング配列を受け入れ可能な任意のウイルスベクター、例えばアデノウイルス(AV)、アデノ関連性ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス)、ヘルペスウイルスなどに由来するベクターを使用し得る。ウイルスベクターの向性は外被蛋白質又は他のウイルス由来の他の表面抗原を有するベクターをシュードタイプ化することによって、又は必要に応じて異なるウイルスカプシド蛋白質を置換することによって修飾し得る。
【0090】
例えば、レンチウイルスベクターは水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなど由来の表面蛋白質でシュードタイプ化し得る。AAVベクターは、ベクターを操作して、異なるカプシド蛋白質血清型を発現させることによって異なる細胞を標的とするようにし得る。例えば、血清2型ゲノム上の血清2型カプシド発現AAVベクターはAAV2/2と呼ばれる。AAV2/2ベクター内のこの血清2型カプシド遺伝子はAAV2/5ベクターを得るために血清5型カプシド遺伝子と置換し得る。異なるカプシド蛋白質血清型を発現するAAVベクターを構築する技術は当分野の技術範囲である。例えば、全体の開示が参照により本明細書に組み込まれるRabinowitz J E et al. (2002), J Virol 76:791−801を参照のこと。
【0091】
本発明における使用に適切な組換えウイルスベクターの選択、ベクター内へのdsRNA発現のための核酸配列挿入方法、及び関心のある細胞へのウイルスベクター送達方法は当分野の技術範囲である。例えば、全体の開示が参照により本明細書に組み込まれるDornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301−310、 Eglitis M A (1988), Biotechniques 6: 608−614、 Miller A D (1990), Hum Gene Therap. 1: 5−14、 Anderson W F (1998), Nature 392: 25−30、 and Rubinson D A et al., Nat. Genet. 33: 401−406を参照のこと。
【0092】
代表的なウイルスベクターはAV及びAAV由来である。一実施形態では、FVIIを標的とするdsRNAは例えば、U6若しくはH1 RNAプロモーター、又はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターのいずれかを含む組換えAAVベクター由来の2つの別々の、相補的な単鎖RNA分子として発現される。
【0093】
FVIIを標的とするdsRNAを発現するための適切なAVベクター、組換えAVベクターの構築方法、及び標的細胞内へのベクター送達方法はXia H et al. (2002), Nat. Biotech. 20: 1006−1010にて記載されている。
【0094】
FVIIを標的とするdsRNAを発現するための適切なAAVベクター、組換えAVベクターの構築方法、及び標的細胞内へのベクター送達方法は、全体の開示が参照することにより本明細書に組み込まれるSamulski R et al. (1987), J. Virol. 61: 3096−3101、 Fisher K J et al. (1996), J. Virol, 70: 520−532、 Samulski R et al. (1989), J. Virol. 63: 3822−3826、米国特許第5,252,479号、米国特許第5,139,941号、国際公開特許第94/13788号、及び国際公開特許第93/24641号にて記載されている。
【0095】
III. dsRNAを含む医薬組成物
一実施形態では、本発明は本明細書に記載のdsRNA、及び製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。dsRNAを含む医薬組成物は第VII因子発現が介在した病的プロセスなど、第VII因子遺伝子の発現又は活性に関連した疾患又は障害の治療に有用である。そのような医薬組成物は送達様式に基づき製剤化される。一例は非経口送達を介した全身投与用に製剤化した組成物である。
【0096】
本発明で特徴とされる医薬組成物は第VII因子遺伝子発現の阻害に十分な量を投与する。本発明者らは、それらの改善された有効性のため、FVIIを標的とするdsRNAを含む組成物を驚異的な低用量で投与し得ることを見出した。最大投与量でレシピエントの体重1kg、一日あたり5mg dsRNA(例えば、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg)が、第VII因子遺伝子発現を阻害又は完全に抑制するのに十分である。
【0097】
一般に、dsRNAの適切用量は、レシピエントの体重1kg、一日あたり0.01〜5.0mgの範囲、通常、体重1kg、一日あたり1μg〜1mgの範囲となる。医薬組成物は1日1回投与してよく、又はdsRNAは2、3、若しくはそれより多いサブ用量を1日を通して適切な間隔で、又は制御した放出性製剤を通した持続注入若しくは送達を使用しても投与してよい。その場合、各サブ用量に含まれるdsRNAは総1日投与量に到達するため相応に、より少量でなければならない。用量単位は、例えば、数日間持続してdsRNA放出を提供する従来の持続した放出性製剤を使用して数日間に渡って送達するように調合し得る。持続放出性製剤は当分野で周知であり、例えば本発明の製剤と使用し得る製剤の膣内送達に特に有用である。本実施形態では、用量単位には対応する複数日の用量が含まれる。
【0098】
疾患又は障害の重症度、以前の治療、対象の全般的な健康状態及び/又は年齢、並びに他の疾患症状が含まれるがこれらに限定されない、いくつかの因子が対象を有効に治療するために要求される投与量及びタイミングに影響を与える可能性があることは、当業者に理解される。さらに、組成物の治療的有効量を用いた対象の治療は単回治療又は一連の治療を含み得る。本発明に含まれる個々のdsRNAのための有効な投与量及びin vivo半減期は、従来の方法を使用して、又は本明細書の他の箇所に記載の適切な動物モデルを使用したin vivo試験に基づいて推定し得る。
【0099】
マウス遺伝学の進歩は、第VII因子発現の介在する病的プロセスなど様々なヒト疾患研究のための多くのマウスモデルを生み出した。そのようなモデルは、dsRNAのin vivo試験、及び治療的有効量の決定のために使用される。
【0100】
本発明はFVIIを標的とするdsRNA化合物を含む医薬組成物及び製剤も含む。医薬組成物は多くの方法で投与してよく、該方法は局所又は全身治療のいずれが望ましいかによって、且つ治療部位によって決まる。投与は局所、肺、例えば、吸入又は噴霧器などによる粉剤若しくはエアロゾル吹送によって;気管内、鼻内、表皮及び経皮、経口又は非経口によって行ってよい。投与は、例えば関節内への直接的な関節内注入、胃腸管への直接的な送達のための直腸投与、子宮内及び膣内への送達のための膣内投与、眼内送達のための硝子体内投与による局所送達を介して特定の組織へ優先的に局在するようにも設計してよい。非経口投与としては静脈内、動脈内、関節内、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は注入;又は頭蓋内、例えば、髄腔内又は脳室内の投与が挙げられる。
【0101】
局所投与用の医薬組成物及び医薬製剤には、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び粉剤を含んでよい。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性の基材、増粘剤などが必要又は望ましい場合がある。コーティングを施したコンドーム、グローブなども有用な場合がある。局所製剤としては、dsRNAが脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤及び界面活性剤のような局所送達剤と混合されているものが挙げられる。代表的な脂質及びリポソームとしては、中性(例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、エタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))及びカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。dsRNAはリポソーム中に封入されてもよいし、又はリポソームとの、特にカチオン性リポソームとの複合体を形成してもよい。あるいは、dsRNAは、脂質、特にカチオン性脂質との複合体としてもよい。代表的な脂肪酸及びエステルとしては、限定するものではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1‐モノカプレート、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1‐10アルキルエステル(例えばイソプロピルミリステート(IPM))、モノグリセリド、ジグリセリド、又は製薬上許容可能なこれらの塩が挙げられる。局所製剤については、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる1999年5月20日出願の米国特許出願第09/315,298号明細書に詳細に記載されている。
【0102】
一実施形態では、本発明で特徴とされるFVIIdsRNAは、(例えば、SPLP、pSPLP、SNALP、又は他の核酸‐脂質粒子を形成するため)脂質製剤内に完全に封入されている。本明細書において使用するとき、「SNALP」という用語はSPLPを含む安定した核酸‐脂質粒子を指す。本明細書において使用するとき、「SPLP」という用語は脂質小胞内に封入したプラスミドDNAを含む核酸‐脂質粒子を指す。SNALP及びSPLPは典型的には、粒子の集合(例えば、PEG‐脂質複合体)を予防するカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び脂質を含む。SNALP及びSPLPは、静脈内(i.v.)注射後に延長された循環期間を示し、遠位部(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)に蓄積するため、全身適用にとって極めて有用である。国際公開第00/03683号にて説明されているように、SPLPは「pSPLP」を含み、封入された縮合剤‐核酸複合体を含む。本発明の粒子の平均直径は典型的には約50nm〜約150nm、より典型的には約60nm〜約130nm、より典型的には約70nm〜約110nm、最も典型的には約70〜約90nmであり、実質的に無毒性である。加えて、核酸は、本発明の核酸‐脂質粒子内に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解耐性を示す。核酸‐脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号;第5,981,501号;第6,534,484号;第6,586,410号;第6,815,432号;及び国際公開第96/40964号にて開示されている。
【0103】
一実施形態では、脂質の薬物に対する比(質量/質量比)(例えば、脂質のdsRNAに対する比)は約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、又は約6:1〜約9:1の範囲となる。
【0104】
カチオン性脂質は、例えば、N,N‐ジオレイル‐N,N‐ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N‐ジステアリル‐N,N‐ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N‐(I‐(2,3‐ジオレオイルオキシ)プロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N‐(I‐(2,3‐ジオレイルオキシ)プロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、N,N‐ジメチル‐2,3‐ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2‐ジリノレニルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2‐ジリノレイルカルバモイルオキシ‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐C‐DAP)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin‐DAC)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐モルホリノプロパン(DLin‐MA)、1,2‐ジリノレオイル‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2‐ジリノレイルチオ‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐S‐DMA)、1‐リノレオイル‐2‐リノレイルオキシ‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐2‐DMAP)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin‐TMA.Cl)、1,2‐ジリノレオイル‐3‐トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin‐TAP.Cl)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐(N‐メチルピペラジノ)プロパン(DLin‐MPZ)、又は3‐(N,N‐ジリノレイルアミノ)‐1,2‐プロパンジオール(DLinAP)、3‐(N,N‐ジオレイルアミノ)‐1,2‐プロパンジオ(DOAP)、1,2‐ジリノレイルオキソ‐3‐(2‐N,N‐ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin‐EG‐DMA)、2,2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノメチル‐[1,3]‐ジオキソラン(DLin‐K‐DMA)、又はその混合物であってよい。カチオン性脂質は粒子内に存在する総脂質の約20mol%〜約50mol%又は約40mol%を含んでよい。
【0105】
非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン4‐(N‐マレイミドメチル)‐シクロヘキサン‐l‐カルボキシレート(DOPE‐mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル‐ホスファチジル‐エタノールアミン(DSPE)、16‐O‐モノメチルPE、16‐O‐ジメチルPE、18‐1‐トランスPE、1‐ステアロイル‐2‐オレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、又はその混合物を含むが、これらに限定されないアニオン性脂質又は中性脂質でよい。非カチオン性脂質は粒子内に存在する総脂質の約5mol%〜約90mol%、約10mol%、又はコレステロールが含まれる場合約58mol%であってよい。
【0106】
粒子の集合を阻害する複合脂質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)‐脂質であってもよく、該PEG‐脂質はPEG‐ジアシルグリセロール(DAG)、PEG‐ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG‐リン脂質、PEG‐セラミド(Cer)、又はそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。PEG‐DAA複合体は、例えば、PEG‐ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG‐ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG‐ジパルミチルオキシプロピル(C16)、又はPEG‐ジステアリルオキシプロピル(C18)でよい。粒子の集合を予防する複合脂質は粒子内に存在する総脂質の0mol%〜約20mol%又は約2mol%でよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、核酸‐脂質粒子は、例えば、粒子内に存在する総脂質の約10mol%〜約60mol%又は約48mol%のコレステロールをさらに含む。
【0108】
一実施形態では、脂質‐siRNAナノ粒子(すなわち、LNP01粒子)を調製するために脂質様物質ND98 4HCl(MW 1487)(式1)、コレステロール(Sigma−Aldrich)、及びPEG‐セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を使用し得る。エタノール中の各ストック溶液は、ND98、133mg/mL;コレステロール、25mg/mL、PEG‐セラミドC16、100mg/mLのように調製し得る。ND98、コレステロール、及びPEG‐セラミドC16ストック溶液は次いで、例えば、42:48:10モル比で併合し得る。併合脂質溶液はエタノール最終濃度が約35〜45%及び酢酸ナトリウム最終濃度が約100〜300mMとなるように、水性siRNA(例えば、pH5の酢酸ナトリウム溶液)と混合し得る。脂質‐siRNAナノ粒子は混合時、典型的には自発的に形成される。所望の粒子サイズ分布によって、生成したナノ粒子混合物は例えばLipex押出機(Northern Lipids, Inc)などのthermobarrel押出機を使用してポリカーボネート膜(例えば、100nmカットオフ)を通して押し出し得る。いくつかの場合では、押出工程を省き得る。エタノール除去及び同時緩衝液交換は例えば、透析又は接線流濾過によって達成し得る。緩衝液は、例えば、約pH7、例えば、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、又は約pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)と交換し得る。
【0109】
【化1】

【0110】
LNP01製剤については、例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる国際公開第2008/042973号に記載されている。
【0111】
標準又は押し出さない方法のいずれかによって調製される製剤は、類似した手法で特徴づけし得る。例えば、製剤は典型的には視覚検査で特徴づけられる。それらは集合又は沈降物のない白色半透明溶液であるべきである。脂質‐ナノ粒子の粒子サイズ及び粒子サイズ分布は光散乱、例えば、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern, USA)を使用して測定し得る。粒子サイズは約20〜300nm、例えば40〜100nmなどであるべきである。粒子サイズ分布は単峰型であるべきである。該製剤における総siRNA濃度は、並びに内包画分は、色素排除法を使用して推定される。製剤化したsiRNAの試料は製剤崩壊界面活性剤、例えば、0.5%Triton−X100の有無下でRibogreen(Molecular Probes)などのRNA結合性色素とともにインキュベートし得る。該製剤内の総siRNAは標準曲線に対する、界面活性剤を含む試料からのシグナルによって決定し得る。内包画分は総siRNA含量から(界面活性剤の非存在下におけるシグナルによって測定した)「遊離」siRNA含量を差し引いて決定する。内包siRNAの百分率は典型的には>85%である。SNALP製剤において、粒子サイズは少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、及び少なくとも120nmである。適切な範囲は典型的には少なくとも約50nm〜少なくとも約110nm、少なくとも約60nm〜少なくとも約100nm、又は少なくとも約80nm〜少なくとも約90nmである。
【0112】
経口投与用の組成物及び製剤には、粉剤若しくは顆粒剤、マイクロ粒子、ナノ粒子、水中若しくは非水性媒体中の懸濁液若しくは溶液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ剤、錠剤又は小型錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましい場合がある。代表的な経口製剤は、dsRNAが1つ又は複数の浸透促進剤、界面活性剤及びキレート剤と共に投与されるものである。代表的な界面活性剤には、脂肪酸及び/又はそのエステル若しくは塩、胆汁酸及び/又はその塩が含まれる。代表的な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)及びウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ‐24,25‐ジヒドロ‐フシジン酸ナトリウム及びグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。代表的な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1‐モノカプレート、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はモノグリセリド、ジグリセリド又は製薬上許容可能なこれらの塩(例えばナトリウム塩)が挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤は、浸透促進剤の組み合わせ、例えば脂肪酸/塩を胆汁酸/塩と組み合わせたものを含む。一実施形態では、組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸及びUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透促進剤には、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテルが挙げられる。FVIIを標的とするdsRNAは、噴霧乾燥した粒子などの顆粒形態、又はマイクロ粒子若しくはナノ粒子を形成するように複合体化された形態で、経口送達してよい。dsRNAの複合体化剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化したゼラチン、アルブミン、澱粉、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)及び澱粉;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAEで誘導体化されたポリイミン、ポルラン、セルロース及び澱粉が挙げられる。代表的な複合体化剤としては、キトサン、N‐トリメチルキトサン、ポリ‐L‐リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp‐アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAEメタクリレート、DEAEヘキシルアクリレート、DEAEアクリルアミド、DEAEアルブミン及びDEAEデキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D、L‐乳酸)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、アルギネート、及びポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤及びその調製については、各々がその全体を参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第08/886,829号(1997年7月1日出願)、同第09/108,673号(1998年7月1日出願)、同第09/256,515号(1999年2月23日出願)、同第09/082,624号(1998年5月21日出願)及び同第09/315,298号(1999年5月20日出願)に詳細に述べられている。
【0113】
非経口、髄腔内又は脳室内投与用の組成物及び製剤は、無菌の水溶液を含んでよく、該水溶液は、緩衝液、希釈剤及びその他の適切な添加剤、例えば、限定するものではないが、浸透促進剤、担体化合物、及びその他の製薬上許容可能な担体又は賦形剤も含んでよい。
【0114】
本発明の医薬組成物としては、限定するものではないが、液剤、乳剤、及びリポソーム含有製剤が挙げられる。これらの組成物は、限定するものではないが、予め形成された液剤、自己乳化型の固体及び自己乳化型の半固体が含まれる様々な構成成分から作製してよい。
【0115】
本発明の医薬製剤は、便利なように単位投与形態で提供してよく、医薬品産業において周知の従来の技術にしたがって調製してよい。そのような技術は、有効成分を製薬用の担体又は賦形剤と共に会合させる工程を含む。一般に、製剤は、有効成分を液体担体若しくは微粉固体担体若しくは両方と共に均一かつ念入りに会合させ、次いで必要な場合は生成物を成形することにより調製される。
【0116】
本発明の組成物は、多くの可能な投与形態のうち任意のもの、例えば、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル剤、坐剤、及び浣腸剤などに製剤化してよい。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混成媒体中の懸濁液としても製剤化してよい。水性懸濁液は、該懸濁液の粘性を高める物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどをさらに含んでよい。懸濁液は安定剤も含んでよい。
【0117】
本発明の一実施形態では、医薬組成物はフォーム剤として製剤化及び使用してよい。医薬フォーム剤には、限定するものではないが、乳剤、マイクロエマルジョン、クリーム剤、ゼリー剤及びリポソームなどの製剤が挙げられる。これらの製剤の性質は基本的に類似しているが、構成成分及び最終生成物の粘稠度においては異なっている。そのような組成物及び製剤の調製は、一般的に製薬及び製剤分野の当業者に知られており、本発明の組成物の製剤化に適用してよい。
【0118】
乳剤
本発明の組成物は乳剤として調製及び製剤化されてよい。乳剤は典型的には一方の液体が他方の中に通常は直径0.1μmを超える小滴形態で分散している不均質な系である(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199、 Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p.245、 Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p.335、 Higuchi et al, in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p.301)。乳剤は、互いによく混合かつ分散された非混和性の2つの液相を含む二相系であることが多い。一般に、乳剤は、油中水(w/o)型又は水中油(o/w)型のどちらであってもよい。水相が大量の油相中で微細に分割され細かい小滴として分散される場合、生成組成物は油中水(w/o)型乳剤と呼ばれる。あるいは、油相が大量の水相中で微細に分割され細かい小滴として分散される場合、生成組成物は水中油(o/w)型乳剤と呼ばれる。乳剤は、分散相と、さらに水相、油相中又はそれ自体が分離した相の溶液として存在する可能性のある活性薬物とに加えて追加の構成成分を含んでよい。乳化剤、安定剤、染料及び酸化防止剤のような医薬賦形剤が、必要に応じて乳剤中に存在していてもよい。医薬乳剤は3つ以上の相で構成される多相乳剤、例えば油中水中油(o/w/o)型乳剤及び水中油中水(w/o/w)型乳剤の事例のようなものであってもよい。そのような複雑な製剤は、単純な二成分の乳剤にはないある種の利点を備えていることが多い。o/w型乳剤の個々の油の小滴がより小さな水滴を囲む多相乳剤は、w/o/w型乳剤を構成する。同様に、油性連続相中で安定化した水の小球に囲まれた油の小滴の系は、o/w/o型乳剤を提供する。
【0119】
乳剤は、熱力学的安定性がほとんど又は全くないことを特徴とする。多くの場合、乳剤の分散相すなわち不連続相は、外相すなわち連続相中に十分に分散し、乳化剤又は製剤の粘性によってこの形態に維持される。乳剤型の軟膏基剤及びクリーム剤の場合のように、乳剤相のうちいずれかが半固体又は固体であってよい。乳剤を安定させる他の手段は、乳剤のいずれかの相に組み込むことができる乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、大きく分けて4つの分類、すなわち合成界面活性剤、天然に存在する乳化剤、吸水性基剤、及び微細分散固体に分類してよい(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199)。
【0120】
表面活性剤としても知られる合成界面活性剤は、乳剤の製剤化に広い適用可能性が見出されてきており、文献中に総説もある(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.285、 Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p.199)。界面活性剤は典型的には両親媒性であり、親水性部分及び疎水性部分を含む。界面活性剤の親水性と疎水性性質との比率は親水/親油バランス(HLB)と名付けられており、製剤の調製において界面活性剤を分類及び選択する際に有益な手段である。界面活性剤は、親水基の性質に基づいて異なる種類、すなわち非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性に分類することができる(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.285)。
【0121】
乳剤製剤に使用される天然の乳化剤には、ラノリン、みつろう、ホスファチド、レシチン及びアカシアが挙げられる。吸水性基剤は、脱水ラノリン及び親水ワセリンのように、水分を吸収してw/o型乳剤を形成しつつも半固体の粘稠度を維持し得るように、親水性の特性を有している。微粉固体も、特に界面活性剤と組み合わされて、及び粘性の調製物において、良質の乳化剤として使用されている。それには、極性の無機固体、例えば重金属の水酸化物、非膨潤性の粘土、例えばベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状のケイ酸アルミニウム及びコロイド状のケイ酸アルミニウムマグネシウム、色素並びに無極性の固体、例えば炭素又はトリステアリン酸グリセリルが含まれる。
【0122】
乳化作用を持たない種々様々な材料も乳剤製剤に含まれており、乳剤の特性の一要素となっている。それには、脂肪、油、ろう、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水コロイド、保存剤及び酸化防止剤が挙げられる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.335、 Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199)。
【0123】
親水コロイドすなわちハイドロコロイドとしては、天然に存在するゴム及び合成ポリマー、例えば多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、カラヤゴム及びトラガント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース)、及び合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテル及びカルボキシビニルポリマー)などが挙げられる。これらは水中で分散又は膨張し、分散相の小滴の周囲に丈夫な界面膜を形成し、かつ外相の粘性を高めることにより、乳剤を安定させるコロイド溶液を形成する。
【0124】
乳剤は、微生物の増殖を引き起こしやすい可能性のある、炭水化物、蛋白質、ステロール及びホスファチドのような多くの成分を含むことが多いので、これら製剤には保存剤が組み込まれることが多い。乳剤製剤に含めるのに一般に使用される保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウムクロライド、p‐ヒドロキシ安息香酸のエステル、及びホウ酸が挙げられる。酸化防止剤も一般に、乳剤製剤の変質を防ぐため該製剤に添加される。使用される酸化防止剤は、フリーラジカル捕捉剤、例えばトコフェロール、アルキルガラート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、又は還元剤、例えばアスコルビン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムなど、並びに酸化防止剤相乗剤、例えばクエン酸、酒石酸及びレシチンなどでよい。
【0125】
経皮的、経口及び非経口経路を介した乳剤製剤の適用並びに乳剤製剤の製造方法については、文献に総説がある(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199)。経口送達用の乳剤製剤は、製剤化が容易であり、さらに吸収及びバイオアベイラビリティの見地から有効であるため、非常に広く使用されている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.245、 Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199)。鉱油の緩下剤、脂溶性ビタミン及び高脂肪の栄養剤は、o/w型乳剤として一般に経口投与されてきている材料に含まれる。
【0126】
本発明の一実施形態では、dsRNA及び核酸の組成物はマイクロエマルジョンとして製剤化される。マイクロエマルジョンは、光学的に等方性かつ熱力学的に安定な単一の溶液である、水、油及び両親媒性物質の系として定義することができる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.245)。典型的には、マイクロエマルジョンは、最初に油を水性の界面活性剤溶液中に分散させて、次に十分な量の第四成分、一般には中鎖長アルコールを加えて透明な系を形成することにより、調製される系である。したがって、マイクロエマルジョンは、表面活性分子の界面膜によって安定している2つの非混和性液体の、熱力学的に安定し、等方的に透明な分散物としても説明されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185−215)。マイクロエマルジョンは一般に、油、水、界面活性剤、界面活性助剤及び電解質を含む3〜5つの構成成分の組み合わせによって調製される。マイクロエマルジョンが油中水(w/o)型であるか水中油(o/w)型であるかは、使用される油及び界面活性剤の特性、並びに界面活性剤分子の極性頭部及び炭化水素の尾部の構造及び幾何学的密集状態に依存する(Schott, in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p.271)。
【0127】
状態図を利用する現象学的アプローチが広く研究されてきており、マイクロエマルジョンを製剤化する方法に関する包括的な知識が当業者にもたらされている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.245、 Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.335)。従来の乳剤に比べて、マイクロエマルジョンには、自然に形成される熱力学的に安定した小滴の製剤中で水不溶性の薬物を可溶化するという長所がある。
【0128】
マイクロエマルジョンの調製に使用される界面活性剤には、限定するものではないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレアート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(SO750)、デカグリセロールデカオレアート(DAO750)が挙げられ、単独又は界面活性助剤との組み合わせられる。界面活性助剤は、通常はエタノール、1‐プロパノール及び1‐ブタノールのような短鎖アルコールであり、界面活性剤の界面膜に浸透し、その結果として、界面活性剤分子間に生じた空所に不規則な界面膜を作り出すことによって、界面の流動性を増大させる役割を果たす。しかしながら、マイクロエマルジョンは界面活性助剤を使用せずに調製してよく、アルコールを含まない自己乳化型マイクロエマルジョンの系が当分野で知られている。水相は、典型的には、限定するものではないが、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びエチレングリコール誘導体でよい。油相は、限定するものではないが、Captex300、Captex355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C〜C12)モノ、ジ及びトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C〜C10グリセリド、植物油及びシリコーン油などのような材料を含んでよい。
【0129】
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化及び薬物吸収増大の見地から特に興味深い。ペプチドなどの薬物の経口バイオアベイラビリティを増大させるために、脂質を用いるマイクロエマルジョン(o/w型及びw/o型の両方)が提案されてきている(Constantinides et al, Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385−1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol, 1993, 13, 205)。マイクロエマルジョンがもたらす長所は、薬物の可溶化の改善、酵素加水分解からの薬物の防護、界面活性剤により誘発された膜の流動性及び透過性の変化に起因する薬物吸収増大の可能性、調製の容易さ、固体剤形の場合の経口投与の容易さ、臨床上の効能の改善、並びに毒性の減少である(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385; Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138−143)。多くの場合、マイクロエマルジョンは、その構成成分を一緒にすると周囲温度で自然に形成され得る。このことは、熱に不安定な薬物、ペプチド又はdsRNAを製剤化する場合に特に有利であり得る。マイクロエマルジョンはまた、化粧用途及び製薬用途の両方における有効成分の経皮送達にも有効となっている。本発明のマイクロエマルジョン組成物及び製剤は、胃腸管からのdsRNA及び核酸の全身吸収増大を促進し、同時に胃腸管、膣、口腔及び他の投与領域内におけるdsRNA及び核酸の局所的な細胞内取り込みを改善するであろうと期待される。
【0130】
本発明のマイクロエマルジョンは、製剤の特性を改善し、本発明のdsRNA及び核酸の吸収を増大させるために、追加の構成成分及び添加剤、例えばソルビタンモノステアレート(Grill3)、Labrasol、及び浸透促進剤なども含んでよい。本発明のマイクロエマルジョンに使用される浸透促進剤は、大きく分けて5つの部類、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、及び非キレート性の非界面活性剤、のうちの1つに属するように分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。これらの部類の各々については上で考察した。
【0131】
リポソーム
マイクロエマルジョンの他に、研究され、薬物の製剤化に使用されている、多くの組織化された界面活性剤構造物がある。これらには単層、ミセル、二層及び小胞が挙げられる。リポソームのような小胞は、その特異性及び作用持続時間ゆえに、薬物送達の見地から大きな関心が持たれている。本発明において使用されるとき、「リポソーム」という用語は、球状の1つ又は複数の二層をなすように配置された両親媒性脂質で構成されている小胞を意味する。
【0132】
リポソームは、親油性の物質から形成された膜と水性内部とを有する単層又は多層の小胞である。水性の部分は、送達すべき組成物を含んでいる。カチオン性リポソームは、細胞壁に融合することができるという長所を有する。非カチオン性リポソームは、効率的に細胞壁と融合することはできないが、in vivoでマクロファージによって取り込まれる。
【0133】
無傷の哺乳類の皮膚を越えるためには、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、各直径が50nm未満の一連の微小な細孔を通り抜けなければならない。したがって、変形能力が高く且つそのような微小な細孔を通り抜けることのできるリポソームを使用することが望ましい。
【0134】
リポソームのさらなる長所を挙げると、天然リン脂質から得られたリポソームは生体適合性及び生物分解性を有すること、リポソームは多種多様な水溶性及び脂溶性の薬物を組み込み得ること、リポソームは、その内部区画内に封入された薬物を代謝及び分解から保護し得ること、である(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.245)。リポソーム製剤の調製において考慮すべき重要な事柄は、脂質表面電荷、小胞サイズ及びリポソームの水容量である。
【0135】
リポソームは、作用部位への有効成分の移送及び送達に有用である。リポソーム膜は生体膜に構造上似ているので、リポソームが組織に対して適用されると、リポソームは細胞膜との融合を開始し、リポソームと細胞との融合が進行するにつれて、リポソームの内容物は、活性物質が作用することのできる細胞内に移される。
【0136】
リポソーム製剤は、多くの薬物の送達様式として広範囲な研究の中心となっている。局所投与については、リポソームが他の製剤に勝る長所をいくつか示すという証拠が増えつつある。そのような長所には、投与された薬物の高度の全身吸収に関連した副作用の低減、所望の標的における投与された薬物の蓄積増大、並びに親水性及び疎水性の両方の種々様々な薬物を皮膚内に投与する能力が含まれる。
【0137】
いくつかの報告書では、リポソームが高分子量のDNAなどの物質を皮膚内に送達する能力について詳述されている。鎮痛剤、抗体、ホルモン及び高分子量DNAなどの化合物が皮膚に投与されている。適用の大部分は表皮上層を標的とする結果となった。
【0138】
リポソームは大きく2つに分類される。カチオン性リポソームは正に荷電したリポソームであり、負に荷電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する。正に荷電したDNA/リポソーム複合体は、負に荷電した細胞表面に結合し、エンドソーム内に内部移行する。エンドソーム内の酸性pHによりリポソームは破裂し、その内容物を細胞の細胞質中に放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980−985)。
【0139】
pH感受性であるか又は負に荷電したリポソームは、DNAと複合体を形成する代わりにDNAを封入する。DNAと脂質の両方が同様に荷電しているので、複合体形成ではなく斥力が生じる。それでもなお、一部のDNAはこれらのリポソームの水性内部に捕捉される。pH感受性のリポソームは、培養中の細胞単層にチミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを送達するために使用されている。該外来遺伝子の発現は標的細胞内で検出された(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269−274)。
【0140】
主要なタイプの1つのリポソーム組成物は、天然ホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性のリポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)又はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成し得る。アニオン性のリポソーム組成物は一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、アニオン性の融合性リポソームは主としてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)、例えば大豆のPC及び卵のPCなどから形成される。別のタイプは、リン脂質及び/又はホスファチジルコリン及び/又はコレステロールの混合物から形成される。
【0141】
いくつかの研究により、薬物のリポソーム製剤の皮膚への局所送達について評価がなされている。モルモット皮膚へのインターフェロン含有リポソーム塗布は、ヘルペスによる皮膚のただれを低減したが、他の手段(例えば液剤又は乳剤)によるインターフェロン送達では効果がなかった(Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405−410)。さらに、補足研究により、水性の系を使用したインターフェロン投与に対してリポソーム製剤の一部として投与されたインターフェロンの有効性が試験され、そのリポソーム製剤が水性投与より優れているとの結論が下された(du Plessis et al., Antiviral Research, 1992, 18, 259−265)。
【0142】
非イオン性のリポソーム系も、皮膚への薬物送達におけるその有用性を決定するために、特に非イオン性界面活性剤及びコレステロールを含む系について検討されている。Novasome(商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン‐10‐ステアリルエーテル)及びNovasome(商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン‐10‐ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウス皮膚の真皮内にシクロスポリンAを送達するために使用された。結果から、そのような非イオン性のリポソーム系が、皮膚の様々な層内にシクロスポリンAが沈着するのを促進するのに有効であることが示された(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0143】
リポソームはまた、「立体的に安定した」リポソームも含み、該用語は、本明細書において使用するとき、1つ又は複数の特殊な脂質を含むリポソームを指し、該脂質は、リポソームに組み込まれると、そのような特殊な脂質を欠くリポソームと比較して長い循環寿命をもたらす。立体的に安定したリポソームの例は、リポソームの小胞を形成する脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドG1のような糖脂質を1つ又は複数含む、又は(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分のような1つ又は複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、ガングリオシド、スフィンゴミエリン、又はPEGで誘導体化された脂質を含有している立体的に安定したリポソームについては少なくとも、これらの立体的に安定したリポソームの循環半減期の延長は、細網内皮系(RES)の細胞内取り込みの減少に由来すると当分野では考えられている(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42; Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0144】
1つ又は複数の糖脂質が含まれる様々なリポソームが当分野で知られている。Papahadjopoulos et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)には、モノシアロガングリオシドG1、ガラクトセレブロシド硫酸及びホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善する能力について報告されている。これらの知見は、Gabizon et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)によって説明されている。いずれもAllenらの米国特許第4,837,028号及び国際公開第88/04924号は、(1)スフィンゴミエリン、及び(2)ガングリオシドG1又はガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2‐sn‐ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号(Limら)に開示されている。
【0145】
1つ又は複数の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソーム及びその調製法が、当分野で知られている。Sunamoto et al. (Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含む非イオン系洗剤2C1215Gを含むリポソームについて記載している。Ilium et al. (FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、ポリマー状のグリコールを用いたポリスチレン粒子の親水コーティングにより血中半減期が有意に延長されることを記載している。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボキシル基を取り付けることによって修飾された合成リン脂質については、Sears(米国特許第4,426,330号及び同第4,534,899号)によって記載されている。Klibanov et al. (FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEG又はPEGステアレートで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが、有意に延長された血液循環半減期を有することを実証する実験について記載している。Blume et al. (Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、そのような観察を他のPEG誘導体化リン脂質に、例えばジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)及びPEGの組み合わせから形成されるDSPE‐PEGに拡大適用した。外表面上にPEG部分が共有結合しているリポソームは、欧州特許第0 445 131 B1号及びFisherの国際公開第90/04384号に記載されている。PEGで誘導体化されたPEを1〜20モル%含有するリポソーム組成物及びその使用方法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号及び同第5,356,633号)、及びMartinら(米国特許第5,213,804号及び欧州特許第0 496 813 B1号)によって記載されている。多くの他の脂質‐ポリマー複合体を含むリポソームが、国際公開第91/05545号及び米国特許第5,225,212号(いずれもMartinら)並びに国際公開第94/20073号(Zalipskyら)に開示されている。PEG修飾されたセラミド脂質を含むリポソームは、国際公開第96/10391号(Choiら)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)及び米国特許第5,556,948号(Tagawaら)には、表面上の官能基部分を用いてさらに誘導体化し得るPEG含有リポソームについて記載されている。
【0146】
核酸を含むリポソームは当分野で限られた数が知られている。Thierryらの国際公開第96/40062号には、リポソーム中への高分子量核酸の封入方法が開示されている。Tagawaらの米国特許第5,264,221号は、蛋白質が結合したリポソームを開示し、そのようなリポソームの内容物はdsRNAを含み得ると主張している。Rahmanらの米国特許第5,665,710号には、リポソーム中にオリゴデオキシヌクレオチドを封入するある方法について記載されている。Loveらの国際公開第97/04787号は、raf遺伝子を標的とするdsRNAを含むリポソームを開示している。
【0147】
Transfersomeはさらに別のタイプのリポソームであり、薬物送達用ビヒクルの好ましい候補である変形能力の高い脂質凝集物である。Transfersomeは、非常に変形能力が高い脂質小滴であるため該小滴よりも小さい細孔を容易に通り抜けることができるものとして説明してよい。Transfersomeは使用される環境に適応可能であり、例えば、自己最適化し(皮膚の細孔の形状に適応)、自己修復し、分断されることなく標的に到達することが多く、また多くの場合自己装荷型である。Transfersomeを作製するために、標準的なリポソーム組成物に、表面の境界面の活性化物質、通常は界面活性剤を加えることが可能である。Transfersomeは皮膚に血清アルブミンを送達するために使用されている。Transfersomeを介した血清アルブミンの送達は、血清アルブミンが含まれる溶液の皮下注射と同程度に有効であることが示されている。
【0148】
界面活性剤は、乳剤(マイクロエマルジョンが含まれる)及びリポソームのような製剤に広い用途が見出されている。天然及び合成の両方の多くの様々なタイプの界面活性剤の特性を分類及び格付けする最も一般的な方法は、親水/親油バランス(HLB)の使用によるものである。親水基(「頭部」としても知られる)の性質は、製剤に使用される様々な界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p.285)。
【0149】
界面活性剤分子がイオン化されない場合、該分子は非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品及び化粧品に広い用途が見出されており、広範囲のpH値に対して使用可能である。一般に、それらのHLB値範囲はその構造に依存して2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグルセリルエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、及びエトキシ化エステルのような非イオン性のエステルが含まれる。非イオン性のアルカノールアミド及びエーテル、例えば脂肪族アルコールエトキシレート、プロポキシ化アルコールなどであり、エトキシ化/プロポキシ化ブロックポリマーなども、この分類に含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤部類のうち最も一般的な成員である。
【0150】
界面活性剤分子が水に溶解又は分散されたとき、該分子が負電荷を保有する場合、その界面活性剤はアニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤には、石鹸、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミドなどのカルボキシレート、硫酸アルキル及びエトキシ化硫酸アルキルなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレート及びスルホスクシネート、並びにホスフェートが挙げられる。アニオン性界面活性剤部類の中で最も重要なメンバーは硫酸アルキル及び石鹸である。
【0151】
界面活性剤分子が水に溶解又は分散されたとき、該分子が正電荷を保有する場合、その界面活性剤はカチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩及びエトキシ化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩はこの分類において最もよく使用されるものである。
【0152】
界面活性剤分子が正電荷又は負電荷のいずれかをも保有する能力を有する場合、その界面活性剤は両性として分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N‐アルキルベタイン及びホスファチドが挙げられる。
【0153】
薬品、製剤、及び乳剤における界面活性剤の使用については総説がある(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p.285)。
【0154】
浸透促進剤
一実施形態では、本発明は、動物の皮膚への核酸、特にdsRNAの効率的な送達を達成するために様々な浸透促進剤を使用する。ほとんどの薬物は、イオン化及び非イオン化の両方の状態で溶液中に存在する。しかしながら、通常は脂溶性又は親油性の薬物だけが容易に細胞膜を横断する。横断しようとする細胞膜が浸透促進剤で処理されると、親油性ではない薬物ですら細胞膜を横断する可能性が見出されてきている。浸透促進剤は、親油性ではない薬物が細胞膜を横切って拡散するのを支援することに加えて、親油性の薬物の透過性も高める。
【0155】
浸透促進剤は、5つの大きな分類、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、及び非キレート性の非界面活性剤のうちの1つに属するものとして分類することができる(Lee et al, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。上述の浸透促進剤の分類各々について、下でより詳細に述べる。
【0156】
界面活性剤:本発明に関して、界面活性剤(又は「表面活性剤」)は、水溶液中に溶解されると、該溶液の表面張力又は該水溶液と別の液体との間の界面張力を低減し、その結果として粘膜を介したdsRNA吸収を増強させる化学成分である。胆汁酸塩及び脂肪酸に加えて、これら浸透促進剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル及びポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテル(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92);並びにペルフルオロ化合物の乳剤、例えばFC‐43(Takahashi et al., J. Pharm. Pharmacol, 1988, 40, 252)などが含まれる。
【0157】
脂肪酸:浸透促進剤として作用する様々な脂肪酸及びその誘導体としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n‐デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1‐モノオレオイル‐rac‐グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセリル1‐モノカプレート、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC〜C10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピル及びt‐ブチル)、並びにそれらのモノグリセリド及びジグリセリド(すなわちオレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレエートなど)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carryier Systems, 1991, p.92、 Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33、 El Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651−654)。
【0158】
胆汁酸塩:胆汁の生理的役割には、脂質及び脂溶性ビタミンの分散及び吸収を促進することが含まれる(Brunton, Chapter 38 in: Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Ed., Hardman et al. Eds., McGraw−Hill, New York, 1996, pp. 934−935)。様々な天然胆汁酸塩及びその合成誘導体は浸透促進剤として作用する。したがって、「胆汁酸塩」という用語には、天然に存在する胆汁成分のうち任意のもの、並びにその合成誘導体のうち任意のものが含まれる。胆汁酸塩としては、例えば、コール酸(又はその製薬上許容可能なナトリウム塩であるコール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ‐24,25‐ジヒドロフシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム及びポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル(POE)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92、 Swinyard, Chapter 39 In: Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990, pages 782−783、 Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33、 Yamamoto et al., J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25、 Yamashita et al., J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579−583)。
【0159】
キレート剤:キレート剤は、本発明に関して使用されるとき、金属イオンと複合体を形成することにより溶液中から金属イオンを取り除き、その結果として粘膜を介したdsRNA吸収を増強させる化合物として定義することができる。キレート剤を本発明において浸透促進剤として使用することについては、特性解析されているほとんどのDNAヌクレアーゼが触媒作用に二価金属イオンを必要とし、したがってキレート剤によって阻害を受けるので、キレート剤はDNase阻害剤としての役割も果たすというさらなる長所を有する(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315−339)。キレート剤としては、限定するものではないが、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)、クエン酸、サリチレート(例えばナトリウムサリチレート、5‐メトキシサリチレート及びホモバニレート)、コラーゲンのN‐アシル誘導体、β‐ジケトンのラウレス‐9及びN‐アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92、 Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33、 Buur et al., J. Control Rei., 1990, 14, 43−51)。
【0160】
非キレート性の非界面活性剤:本明細書中で使用されるとき、非キレート性の非界面活性剤の浸透促進化合物は、キレート剤又は界面活性剤として示す活性は有意ではないが、それにもかかわらず消化器粘膜を介したdsRNAの吸収を高める化合物として定義し得る(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33)。この部類の浸透促進剤としては、例えば、不飽和の環式尿素、1‐アルキル‐及び1‐アルケニルアザシクロ‐アルカノン誘導体(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92)、並びに非ステロイド性抗炎症薬、例えばジクロフェナクナトリウム、インドメタシン及びフェニルブタゾン(Yamashita et al., J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621−626)が挙げられる。
【0161】
細胞レベルでのdsRNAの取り込みを高める薬剤を本発明の医薬組成物及びその他の組成物にも添加してよい。例えば、カチオン性脂質、例えばリポフェクチン(Junichiら、米国特許第5,705,188号)、カチオン性のグリセロール誘導体、並びにポリカチオン型分子、例えばポリリシン(Lolloら、国際公開第97/30731号)なども、dsRNAの細胞内取り込みを高めることが知られている。
【0162】
他の薬剤、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコールのようなグリコール、2‐ピロールのようなピロール、アゾン、並びにリモネン及びメントンのようなテルペンなどは、投与された核酸の浸透を高めるために利用してよい。
【0163】
担体
本発明のある種の組成物は、製剤中に担体化合物も組み入れる。本明細書において使用するとき、「担体化合物」又は「担体」とは、核酸又はそのアナログであって、不活性である(すなわち、それ自身は生物学的活性を有していない)が、例えば生物学的活性を有する核酸の分解又は循環血中からの除去促進により生物学的活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低減するin vivoプロセスにより核酸として認識されるものを指し得る。核酸及び担体化合物を、典型的には担体化合物を過剰量として併用投与すると、おそらくは共通の受容体に関する担体化合物と核酸との間の競合により、肝臓、腎臓又は他の循環血流外の蓄積部位で回収される核酸の量を大幅に低減し得る。例えば、部分的にホスホロチオエートを有するdsRNAをポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジル酸又は4‐アセトアミド‐4’イソチオシアノ‐スチルベン‐2,2’‐ジスルホン酸と共に併用投与すると、該dsRNAの肝臓組織での回収は低減し得る(Miyao et al, DsRNA Res. Dev., 1995, 5, 115−121、 Takakura et al., DsRNA & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177−183)。
【0164】
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」すなわち「賦形剤」は、製薬上許容可能な溶媒、懸濁化剤、又は動物に1つ又は複数の核酸を送達するための他の任意の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体でも固体でもよく、想定された投与方法によって、所与の医薬組成物の核酸及び他の成分と組み合わせたときに所望の体積、粘稠度などを提供するように選択される。代表的な医薬担体には、限定するものではないが、結合剤(例えば、予めゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、増量剤(例えば、ラクトース及びその他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート又はリン酸水素カルシウムなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、水素化植物油、トウモロコシ澱粉、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウムなど)、並びに湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられる。
【0165】
核酸との間で有害反応を起こさない、製薬上許容可能な有機又は無機の経口投与に適した賦形剤も、本発明の組成物を製剤化するために使用し得る。適切な製薬上許容可能な担体としては、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0166】
核酸の局所投与用製剤は、滅菌及び非滅菌の水溶液、アルコールのような一般的な溶媒中の非水性溶液、又は液体若しくは固体の油性基剤中の核酸溶液を含んでよい。該溶液はまた、緩衝液、希釈剤及びその他の適切な添加剤も含んでよい。核酸との間で有害反応を起こさない、製薬上許容可能な有機又は無機の経口投与に適した賦形剤を使用し得る。
【0167】
製薬上許容可能な適切な賦形剤としては、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0168】
その他の構成成分
本発明の組成物は、通常、医薬組成物中に見出される他の補助成分を、該成分の分野で確立された使用量レベルで、付加的に含んでよい。したがって、例えば、組成物は、追加の、混合可能な、薬学的活性物質、例えば止痒剤、収斂剤、局所麻酔薬又は抗炎症薬などを含んでもよく、又は本発明の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに役立つ追加の物質、例えば色素、香料剤、保存剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤及び安定剤などを含んでもよい。しかしながら、そのような物質を加える場合は、該物質は本発明の組成物成分の生物学的活性を過度に妨げてはならない。製剤は滅菌し得て、望ましい場合は、該製剤の核酸との間で有害な相互反応を生じない補助的薬剤、例えば滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を操作するための塩類、緩衝液、着色剤、香味料及び/又は芳香剤などと混合し得る。
【0169】
水性懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなど該懸濁液の粘性を増大させる物質を含んでよい。該懸濁液は安定剤も含んでよい。
【0170】
本発明で特徴とされるある実施形態は、(a)1つ又は複数のdsRNA分子、及び(b)1つ又は複数の他の治療剤であってdsRNA介在性ではない機構によって機能するもの、を含有する医薬組成物を提供する。例えば、1つ又は複数の他の治療剤は抗凝固剤を含む。模範的な抗凝固剤は、例えば、ワルファリン(COUMADIN(商標));LMWH(低分子量ヘパリン);第Xa因子インヒビター、例えば、ビスアミジン化合物、並びにフェニル及びナフチルスルホンアミド;未分画ヘパリン;アスピリン;並びに血小板糖蛋白質Ilb/IIIaブロッカーを含む。
【0171】
そのような化合物の毒性及び治療効果は、例えばLD50(集団の50%が死亡する用量)及びED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手法によって決定し得る。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療指数であり、治療指数はLD50/ED50比として表すことができる。適切な化合物は典型的には高い治療指数を指す。
【0172】
細胞培養検定及び動物実験から得られたデータを、ヒトで使用するための用量範囲の策定において使用し得る。本発明で特徴とされる組成物の用量は、通常、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度範囲内にある。用量は、この範囲内で、使用される剤形及び利用される投与経路に依存して変動してよい。本明細書で特徴とされる方法で使用される任意の化合物について、治療上有効な用量を、細胞培養検定から最初に推定し得る。用量は、細胞培養で決定されるようなIC50(すなわち症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)が含まれる、該化合物の循環血漿中濃度範囲、又は適切な場合には標的配列のポリペプチド産物の循環血漿中濃度範囲(例えば、該ポリペプチドの濃度減少を達成する)を達成するように、動物モデルにおいて策定してよい。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用し得る。血漿中レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定してよい。
【0173】
上記で考察したように、dsRNAを独立に又は複数として投与することに加えて、FVIIを標的とするdsRNAは、第VII因子発現介在性病的プロセスの治療に有効な他の既知の製剤と組み合わせて投与し得る。どの場合も、投与する医師は、当分野で既知又は本明細書に記載の標準的な有効性尺度を使用して観察された結果に基づいて、dsRNA投与の量及びタイミングを調節し得る。
【0174】
第VII因子遺伝子発現に惹起される疾患の治療方法
一実施形態では、本発明は、ウイルス性出血性発熱などの第VII因子遺伝子発現介在性病状を有する対象の治療方法を提供する。本実施形態では、dsRNAは第VII因子発現蛋白質制御のための治療剤として作用する。該方法には第VII因子遺伝子発現が抑制されるように、ウイルス感染患者などの患者(例えば、ヒト)への医薬組成物投与が含まれる。それらの高い特異性により、本発明で特徴とされるdsRNAは特異的に第VII因子遺伝子のmRNAを標的とする。
【0175】
本明細書においては、「第VII因子介在性状態又は疾患」という用語並びに関連用語及び語句は、好ましからぬ又は不適切な、例えば、異常な第VII因子活性を特徴とする状態又は障害を指す。不適切な第VII因子機能活性は正常時に第VII因子を発現しない細胞内での第VII因子発現、又は第VII因子発現及び/若しくは活性の増加の結果として生じる可能性がある(例えば、ウイルス性出血性発熱症状、又は血栓性障害に至る)。第VII因子介在性状態又は疾患は第VII因子の不適切な活性化のために生じる可能性がある不適切な第VII因子機能活性によって完全に又は部分的に介在される可能性がある。それらに関係なく、第VII因子介在性状態又は疾患は、RNA干渉を介した第VII因子の調節が基礎疾患又は障害に対するいくらかの効果をもたらすものである(例えば、第VII因子インヒビターは少なくともいくらかの患者における患者の健康のいくらかの改善をもたらす)。
【0176】
本発明の抗第VII因子dsRNAは対象におけるウイルス性出血性発熱の治療又は診断に使用してよい。治療方法は、本明細書に記載された抗第VII因子dsRNAを出血性発熱治療に有効な量を対象へ投与することを含む。
【0177】
病的プロセスとは有害な作用をもたらす生物学的プロセスの分類を指す。例えば、調整されていない第VII因子発現はウイルス性出血性発熱、血栓性障害及び癌に関連する。本発明で特徴とされる化合物は、典型的には該化合物がプロセスの程度又は重症度を低減するとき、病的プロセスを調節し得る。例えば、第VII因子の発現又は少なくとも1つの活性を低減する、そうでなければ調節するdsRNA投与によって、出血性発熱を予防し得、又は関連した病的プロセスを調節し得る。
【0178】
したがって、本明細書で特徴とされるdsRNA分子もウイルス性出血性発熱の治療又は予防に使用してよい。dsRNAは凝固障害若しくは炎症反応を寛解及び/又は予防することによって出血性発熱を治療又は予防し得る。
【0179】
本明細書で特徴とされるdsRNA分子は血栓性障害治療にも使用してよい。第VII因子を標的とするdsRNAにより治療し得る血栓性障害は、局所血栓、急性心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈内血栓性閉塞、又は深部静脈血栓症を含むが、これらに限定されない。
【0180】
本発明に含まれる医薬組成物は、静脈内、筋肉内、関節内、腹腔内、皮下、硝子体内、経皮、気道(エアロゾル)、鼻内、直腸内、膣内及び局所(口腔内及び舌下を含む)投与、並びに硬膜外投与を含む経口又は非経口経路を含むが、これらに限定されない当分野で知られている任意の手段によって投与してよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は静脈注射又は注入によって投与する。
【0181】
第VII因子遺伝子発現の阻害方法
さらに別の態様では、本発明は哺乳類内の第VII因子遺伝子発現の阻害方法を提供する。該方法は標的VII因子遺伝子発現が抑制されるような、本発明で特徴とされる組成物の哺乳類への投与を含む。それらの高い特異性のために、本発明で特徴とされるdsRNAは特異的に標的VII因子遺伝子のRNA(一次又はプロセシング後)を標的とする。dsRNAを使用した第VII因子遺伝子発現阻害の組成物及び方法は、本明細書の他の箇所に記載されているように実施し得る。
【0182】
一実施形態では、該方法はdsRNAを含む組成物投与を含み、該dsRNAは治療対象の哺乳類の第VII因子遺伝子のRNA転写産物の少なくとも一部に対して相補的なヌクレオチド配列を含む。治療対象の生物がヒトなどの哺乳類であるとき、該組成物は、静脈内、筋肉内、関節内、頭蓋内、皮下、硝子体内、経皮、気道(エアロゾル)、鼻内、直腸内、膣内及び局所(口腔内及び舌下を含む)投与を含むが、これらに限定されない経口又は非経口経路を含む、当分野で知られている任意の手段によって投与してよい。ある実施形態では、組成物は静脈注射又は注入によって投与する。
【0183】
dsRNA発現ベクター
別の態様では、FVII遺伝子発現活性を調節するFVII特異的dsRNA分子はDNA又はRNAベクター内に挿入した転写単位によって発現する(例えば、Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5−10; Skillern, A., et al., 国際公開第00/22113号、Conrad、国際公開第00/22114号、及びConrad、米国特許第6,054,299号を参照のこと)。これらのトランス遺伝子は直鎖状コンストラクト、環状プラスミド、又はウイルスベクターとして挿入し得、これらは宿主ゲノム内へ統合されたトランス遺伝子として取り込まれ且つ遺伝し得る。トランス遺伝子はまた染色体外プラスミドとして遺伝されるのを可能にするよう構築され得る(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. ScL USA (1995) 92:1292)。
【0184】
dsRNAの個々の鎖は、2つの別々の発現ベクター上のプロモーターによって転写され且つ標的細胞内に同時に形質転換し得る。あるいはdsRNAの個々の各鎖を同一発現プラスミド上に位置する両プロモーターによって転写し得る。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムループ構造を有するようにリンカーポリヌクレオチド配列により接合された逆方向反復として発現する。
【0185】
組換えdsRNA発現ベクターは通常DNAプラスミド又はウイルスベクターである。dsRNA発現ウイルスベクターは、アデノ関連性ウイルス(総説については、Muzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158:97−129)を参照のこと)、アデノウイルス(例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6:616)、Rosenfeld et al. (1991, Science 252:431−434)、及びRosenfeld et al. (1992), Cell 68:143−155)を参照のこと)、又はアルファウイルス、並びに当分野で知られている他のものが挙げられるが、これらに限定されないものに基づいて構築し得る。レトロウイルスは、in vitro及び/又はin vivoで上皮細胞を含む多くの異なるタイプの細胞内への様々な遺伝子導入に使用されている(例えば、Eglitis, et al., Science (1985) 230:1395−1398、 Danos and Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 85:6460−6464、 Wilson et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014−3018、 Armentano et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:61416145、 Huber et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039−8043、 Ferry et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377−8381、 Chowdhury et al., 1991, Science 254:1802−1805、 van Beusechem. et al., 1992, Proc. Nad. Acad. Sci. USA 89:7640−19 、 Kay et al., 1992, Human Gene Therapy 3:641−647、 Dai et al., 1992, Proc. Natl.Acad. Sci. USA 89:10892−10895、 Hwu et al., 1993, J. Immunol. 150:4104−4115、米国特許第4,868,116号、米国特許第4,980,286号、国際公開第89/07136号、国際公開第89/02468号、国際公開第89/05345号、及び国際公開第92/07573号を参照のこと)。細胞ゲノム内に挿入した遺伝子を形質導入及び発現できる組換えレトロウイルスベクターは適切なパッケージング細胞株内へのPA317及びPsi‐CRIPなどの組換えレトロウイルスゲノムのトランスフェクトによって産生し得る(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2:5−10、 Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349)。組換えアデノウイルスベクターは感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌ、及びチンパンジー)内の多種多様の細胞及び組織への感染に使用し得(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、感染のために有糸分裂的活性細胞を要さないという長所も有する。
【0186】
DNAプラスミド又はウイルスベクターのいずれかにおいてdsRNA発現を駆動するプロモーターは、発現プラスミドがT7プロモーターからの転写に必要とするT7 RNAポリメラーゼもコードするという条件で、真核RNAポリメラーゼI(例えばリボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えばCMV早期プロモーター又はアクチンプロモーター又はUl snRNAプロモーター)若しくは通常RNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えばU6 snRNA又は7SK RNAプロモーター)又は原核生物プロモーター、例えばT7プロモーターでよい。プロモーターは膵臓へのトランス遺伝子発現も指令し得る(例えば膵臓のインスリン調節配列(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511−2515)を参照のこと)。
【0187】
加えて、トランス遺伝子発現は、例えば、ある生理的レギュレータ、例えば、循環グルコースレベル、又はホルモンに感受性の調整配列などの誘導型調整配列及び発現系を使用することによって正確に調整し得る(Docherty et al, 1994, FASEB J. 8:20−24)。細胞内又は哺乳類内トランス遺伝子発現の制御に適切な、そのような誘導型発現系としては、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量化の化学的誘導物質、及びイソプロピル‐ベータ‐D1‐チオガラクトピラノシド(EPTG)による調整が挙げられる。当業者はdsRNAトランス遺伝子の意図した使用に基づき適切な調整/プロモーター配列を選択することができるだろう。
【0188】
一般的に、dsRNA分子を発現可能な組換えベクターは下記の通り送達され、標的細胞内に残存する。あるいは、dsRNA分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用し得る。そのようなベクターは必要に応じて反復投与し得る。dsRNAはいったん発現すると、標的RNAと結合し、その機能又は発現を調節する。dsRNA発現ベクターは、静脈内若しくは筋肉内投与、患者から体外移植された標的細胞へ投与後の患者への再導入、又は所望の標的細胞内への導入を可能とする他の任意の手段などによって全身に送達し得る。
【0189】
dsRNA発現DNAプラスミドは典型的には、カチオン性脂質担体(例えばオリゴフェクトアミン)又は非カチオン性脂質担体(例えばTransit−TKO(商標))との複合体として標的細胞内にトランスフェクトされる。1週間以上の単独第VII因子遺伝子又は複数第VII因子遺伝子の異なる領域を標的とするdsRNA介在性ノックダウンのための複数脂質トランスフェクションも本発明によって企図される。ベクターの宿主細胞内への成功的導入は既知の様々な方法を使用して監視し得る。例えば、一過性トランスフェクションは緑色蛍光蛋白質(GFP)のような蛍光標識などのレポータを用いてシグナル化し得る。ex vivo細胞の安定したトランスフェクションは、ハイグロマイシンB耐性のような特異性環境因子(例えば、抗生物質及び薬物)耐性を有するトランスフェクトした細胞を提供する標識を使用して確実にし得る。
【0190】
第VII因子特異性dsRNA分子はまたベクター内に挿入し、ヒト患者に対する遺伝子治療ベクターとして使用もし得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与によって(米国特許第5,328,470号を参照)又は定位注入によって(例えば、Chen et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054−3057を参照のこと)、対象に送達し得る。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は許容可能な希釈剤内の遺伝子治療ベクターを含み得、又は遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放マトリックスを含み得る。あるいは、組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターから完全な遺伝子送達ベクターを無傷で産生し得る場合、医薬調製物は遺伝子送達系を産生する細胞を1つ又は複数含み得る。
【0191】
別段の指定がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本発明の実施又は試験には、本明細書に記載のものと類似した又は同等の方法及び材料を使用し得るが、適切な方法及び材料を下に記載する。全ての刊行物、特許出願、特許、及び本明細書に記載した他の参考文献がその全体を参照することにより組み込まれる。矛盾が生じる場合、定義を含め、本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例証することのみを意図し、限定する意図はない。
【実施例】
【0192】
(実施例1)
FVII標的siRNAの設計。凝固第VII因子(AI132620、Cf7、凝固第VII因子前駆体、凝固第VII因子、FVII、血清プロトロンビン転化促進因子、FVII凝固蛋白質、及びエプタコグアルファとしても知られる)を標的とするsiRNAを同定するためにsiRNA設計を実施した。
【0193】
2種のFVII転写変異体に対するヒトmRNA配列、RefSeq番号:NM_000131.3(3141bp)(例えば、図7A及び7Bを参照のこと)及びNM_019616.2(3075bp)(2007年11月18日付のGenBank記録)(例えば、図8A及び8Bを参照のこと)を使用した。アカゲザル配列はNCBI及びENSEMBLデータベース源から収集した(下記参照)。
【0194】
予測したヒトFVII特異性を有するヒト及びアカゲザル(Macaca mulatto)FVIIへに対して交差反応性であるsiRNA二重鎖を設計した。スクリーニングのために24種の二重鎖を合成した。これらを表1に示す。
【0195】
ヒト‐アカゲザル交差反応。ヒト‐アカゲザル交差反応をsiRNAのin silico選択における必要条件として定義した。この目的のため、FVIIのための2つのキュレーションされたヒト変異体及び入手可能なアカゲザル配列が19mer siRNA標的部位を含むことを確認した。
【0196】
2種のFVII転写変異体に対するヒトmRNA配列をNCBIヌクレオチドデータベースからダウンロードした;これらの1つであるNM_000131.3をさらに参照配列として使用した。
【0197】
NCBIヌクレオチドデータベース(NM_001080136.1‐2424bp及びD21212.1‐478bp、部分的cds)、及びENSEMBLデータベース(ENSMMUT00000001477‐1389bp及びENSMMUT00000042997‐1326bp)からダウンロードしたアカゲザルFVIImRNA配列を、全長2424bpのアカゲザルFVIIの共通配列を構築するために配列比較した。
【0198】
全ての可能性のある19mersをヒトmRNA参照配列から抽出し、NM_000131.3の3122(センス鎖)配列、反応性FVIIsiRNAに対応する標的部位候補のプールが得られた。
【0199】
キュレーションされたヒト変異体及びアカゲザル共通配列の両方に対して反応するsiRNAを決定するため、siRNA標的部位の各候補をヒトRefSeq配列NM_019616.2及び部分的なアカゲザル配列内で探索した。得られたsiRNAをヒト‐アカゲザル交差反応性siRNAと定義した。
【0200】
特異性予測。予測したsiRNA特異性を最終選択基準として使用し、ヒトFVIImRNAであるが、他のヒトmRNAではない配列を標的とすることによって示された。
【0201】
非FVIIヒト転写産物(潜在的な「オフターゲット」遺伝子)を標的しないヒトFVII特異的siRNAを同定するため、ヒト‐アカゲザル交差反応性siRNAを、包括的ヒトトランスクリプトームを表すとみなされるヒトRefSeq mRNAデータベースにおいて相同性検索に供した。
【0202】
この目的のため、ヒトRefSeqデータベース(release24)の各配列に対して最も相同性がヒットする領域のアンチセンス及びセンス鎖を決定するためにfastAアルゴリズムを使用した。
【0203】
得られた、全RefSeqエントリーの配列比較をperlスクリプトによってさらに分析してミスマッチの数及び位置を抽出し、これに基づき特異性スコアを算出した。
【0204】
算出した特異性スコアすなわち、高度に特異的であるスコア>3、特異的であるスコア=3、及び中等度に特異的であるスコア=2.2〜2.8、に基づきsiRNA鎖を特異性分類に分類した。
【0205】
siRNA配列選択。siRNAの選択において、アンチセンス鎖に対して特異性スコア2.8以上、及びセンス鎖に対してスコア2以上をsiRNA選択の必要条件として選択し、一方4個以上連続したG(ポリG配列)を含む配列は全て除外した。
【0206】
上記の全てのヒト及びアカゲザルFVIImRNAに対し交差反応を示し、特異性基準を満たした24種のsiRNA配列を選択した(表1参照)。得られた24種のセットは2個の高度に特異的、16個の特異的、及び6個の中等度に特異的なsiRNA(アンチセンス鎖の特異性のみ考慮)からなった。
【0207】
(実施例2)
in vivoのFVIIサイレンシング。ラット(n=4)に脂質様製剤98N12‐5で製剤化したsiFVIIを1.25、2.5、3、3.5、4、5、及び10mg/kg単回静脈注射した。
【0208】
動物を投与後48時間に出血させ及び屠殺した。肝第VII因子mRNAレベルの有意な用量依存的低下が観察され、1.25、2.5、及び5mg/kg投与時に各々40%、80%、及び90%超抑制された(図1)。策定した対照siRNA(siCont)を使用時に抑制は観察されず、抑制の特異性が示された。肝第VII因子mRNAレベル低下は同時に血清第VII因子蛋白質レベルの用量依存的低下を引き起こし、最高用量投与時にはほぼ完全に抑制した(図2)。
【0209】
予期した通り、有意に低下した血清第VII因子レベルは処理した動物において表現型効果を生み出した。第VII因子は外因性凝固経路の一部であるため、処理した動物は、プロトロンビン時間(PT)延長での測定によると、この経路を通じた凝固の異常を有していた(図3)。策定した対照群はPT摂動を示さなかったため、表現型効果は特異的であり送達ビヒクルに起因しないことが見出された。得られた遺伝子の発現抑制は高度に持続性であった。第Vll因子を標的とするsiRNA(siFVII)を製剤化した98Nl2‐5の単回注入で、ほぼ4週間持続する発現抑制の媒介が可能であった。
【0210】
siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列は下記の通りである。
【0211】
【数1】

【0212】
2’‐O‐Me修飾ヌクレオチドは小文字で、2’‐フルオロ修飾ヌクレオチドは太字の小文字で、及びホスホロチオエート連結はアスタリスクで表す。siRNAは等モル量の相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖をアニールすることによって作製した。
【0213】
使用した全ての動物手順は動物倫理審議委員会(IACUC)により承認され、適用可能な地方、州、及び連邦規制に準拠した。C57BL/6系マウス(Charles River Labs, MA)及びSprague‐Dawley系ラット(Charles River Labs, MA)に生理食塩水又は脂質様製剤内siRNAのいずれかを尾静脈から0.01mL/g注入した。後眼窩からの採血によって採取した試料においける第VII因子蛋白質の血清レベルを、色原体アッセイ(Coaset Factor VII, DiaPharma Group, OH 又はBiophen FVII, Aniara Corporation, OH)を使用して測定した。第VII因子の肝mRNAレベルは分岐DNA法(QuantiGene Assay, Panomics, CA)を使用して測定した。
【0214】
脂質様ベースのsiRNA製剤には、脂質様物質、コレステロール、ポリ(エチレングリコール)‐脂質(PEG‐脂質)、及びsiRNAが含まれた。製剤はSemple及び同僚(Maurer et al. Biophys. J. 80:2310−2326, 2001; Semple et al., Biochim. Biophys. Acta 1510:152−166, 2001)により記載されたものに類似したプロトコルを使用して調製した。98N12‐5(1)・4HCl MW 1489、mPEG2000‐セラミドC16(Avanti Polar Lipids)MW 2634又はmPEG2000‐DMG MW 2660、及びコレステロールMW 387(Sigma−Aldrich)ストック溶液をエタノール中で調製し、混合してモル比42:10:48を得た。混合脂質を125mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.2に添加して35%エタノールを含む溶液を得、空の脂質様ナノ粒子が自然に形成された。得られたナノ粒子を0.08μ膜を通して押し出した(2パス)。35%エタノール及び50mM酢酸ナトリウムpH5.2内siRNAを1:7.5(重量:重量)のsiRNA:総脂質でナノ粒子に添加し、37℃で30分間インキュベートした。siRNA含有脂質様ナノ粒子のエタノール除去及び緩衝液交換は100,000MWCO膜を使用した、リン酸緩衝食塩水に対する接線流濾過によって達成した。最終的に、0.2μ無菌性フィルターを通して製剤を濾過した。粒子サイズはMalvern Zetasizer NanoZS (Malvern, UK)を使用して測定した。siRNA含量は260nmのUV吸収によって測定し、siRNA取り込み効率をRibogreen法32によって測定した。得られた粒子の平均直径は約50nm、ピーク幅20nm、及びsiRNA取り込み効率>95%であった。国際出願第PCT/US2007/080331号も参照のこと。
【0215】
【表4】

【0216】
(実施例3)
ウイルス性出血性発熱治療標的としての第VII因子。マウス肝細胞内VII因子の頑強なin vivo発現抑制が脂質で製剤化したFVIIdsRNA(LNP‐01 FVII)投与後に観察された(図4)。マウスにdsRNAを静脈内投与し、24時間後FVII蛋白質について血清を分析した。FVII蛋白質レベルの用量依存的な低下が生じた。LNP‐01で製剤化したルシフェラーゼsiRNAを陰性対照として使用した。
【0217】
第VII因子に対する非最適化リポソーム的に製剤化したdsRNAを使用した予備的データはエボラウイルス感染マウスにおいて有益な生存効果を示した(図5)。マウスはLNP‐01で製剤化したsiRNAで、エボラ−ザイールの30,000LD50感染後0日目(5mg/kg i.v.)及び3日目(3mg/kg i.p.)に処理した。マウス10匹/治療群の生存を監視した。陰性対照は、未処理群マウス及びLNP‐01で製剤化したルシフェラーゼsiRNA処理群マウスを含んだ。観察結果は組換え抗凝固剤NapC2で見られた利益と一致し(Geisbert et al., 2003, Lancet, 362:1953−1958)、特に、エボラ感染非ヒト霊長類及びヒトに見られる凝固因子異常と比較して、マウスモデルにおいては凝固因子異常における役割が低いことを考慮すると、有望であった。
【0218】
(実施例4)
siFVIIによる治療は長期の効果を示した。
【0219】
C57BL/6系マウスをLNP0l‐siFVIIの5mg/kg単回ボーラス静脈注射によって処理した。図6は本投与がFVIIレベル低下を惹起し、3週間より長く持続させたことを示す。
【0220】
(実施例5)
dsRNAの合成
試薬の供給源
試薬の供給源が本明細書中で特に記載されない場合、そのような試薬は、分子生物学において適用するための品質/純度標準の分子生物学用試薬を供給する任意の業者から入手することができる。
【0221】
siRNAの合成
単鎖RNAをExpedite 8909シンセサイザー(Applied Biosystems, Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)、及び固体支持体として制御細孔ガラス(CPG, 500Å, Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)使用して、固体相合成によって1μM規模で産生した。RNA及び2’‐O‐メチルヌクレオチド含有RNAを各々対応するホスホラミダイト及び2’‐O‐メチルホスホラミダイト(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を使用して、固体相合成によって作製した。これら構成要素は、Current protocols in nucleic acid chemistry、Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような標準ヌクレオシドホスホラミダイトを使用してオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択部位に組み込んだ。ホスホロチオエート連結はヨウ素酸化剤溶液をBeaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)のアセトニトリル溶液(1%)と置換して導入した。さらに補助試薬をMallinckrodt Baker (Griesheim, Germany)から得た。
【0222】
定型手順に従い陰イオン交換HPLCによって粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護及び精製を実行した。収率及び濃度は分光光度計(DU 640B, Beckman Coulter GmbH, UnterschleiBheim, Germany)を使用して、波長260nmの各RNA溶液のUV吸収によって測定した。アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)内で、相補鎖の等モル溶液を混合することによって二本鎖RNAを作製し、85〜90℃の水浴で3分間温め、3〜4時間室温に冷却する。アニーリングしたRNA溶液を使用時まで−20℃で保存した。
【0223】
3’‐コレステロール複合化siRNA(以下、‐Chol‐3’と称す)の合成のため、適切に修飾した固体支持体をRNA合成のために使用する。修飾した固体支持体は下記の通り調製する。
【0224】
ジエチル‐2‐アザブタン‐1,4‐ジカルボキシレート AA
【0225】
【化2】

【0226】
氷冷したエチルグリシナート塩酸(32.19g、0.23モル)の水溶液(50mL)内に4.7Mの水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を撹拌しながら添加する。次いで、エチルアクリラート(23.1g、0.23モル)を添加し、TLCによって反応終了を確認するまで混合物を室温で撹拌する。19時間後、溶液をジクロロメタン(3×100mL)により分離する。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して蒸発させる。残渣を蒸留してAA(28.8g、61%)を得る。
【0227】
3‐{エトキシカルボニルメチル‐[6‐(9H‐フルオレン‐9‐イルメトキシカルボニル‐アミノ)‐ヘキサノイル]‐アミノ}‐プロピオン酸エチルエステル AB
【0228】
【化3】

【0229】
Fmoc‐6‐アミノ‐ヘキサン酸(9.12g、25.83mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解して氷冷する。ジイソプロピルカルボジイミド(3.25g、3.99mL、25.83mmol)を0℃で溶液に添加する。次いでジエチル‐アザブタン‐1,4‐ジカルボキシレート(5g、24.6mmol)及びジメチルアミノピリジン(0.305g、2.5mmol)を添加する。溶液を室温にし、さらに6時間撹拌する。反応終了はTLCによって確認する。反応混合物を減圧濃縮し、エチルアセテートを添加して、ジイソプロピル尿素を沈殿させる。懸濁液を濾過する。濾過液を5%塩酸水溶液、5%重炭酸ナトリウム及び水で洗浄する。併合有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮して粗生成物を得、カラムクロマトグラフィー(50%EtOAC/ヘキサン)により精製して、AB 11.87g(88%)を得る。
【0230】
3‐[(6‐アミノ‐ヘキサノイル)‐エトキシカルボニルメチル‐アミノ]‐プロピオン酸エチルエステル AC
【0231】
【化4】

【0232】
3‐{エトキシカルボニルメチル‐[6‐(9H‐フルオレン‐9‐イルメトキシカルボニルアミノ)‐ヘキサノイル]‐アミノ}‐プロピオン酸エチルエステル AB(11.5g、21.3mmol)を0℃で20%ピペリジンのジメチルホルムアミド溶液に溶解する。該溶液を1時間撹拌し続ける。反応混合物を減圧濃縮し、残渣に水を添加し、生成物をエチルアセテートで抽出する。粗生成物をその塩酸塩へ転換することにより精製する。
【0233】
3‐({6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル‐アミノ)‐プロピオン酸エチルエステル AD
【0234】
【化5】

【0235】
3‐[(6‐アミノ‐ヘキサノイル)‐エトキシカルボニルメチル‐アミノ]‐プロピオン酸エチルエステル ACの塩酸塩(4.7g、14.8mmol)をジクロロメタン内に取り込む。懸濁液を氷上で0℃に冷却する。懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(3.87g、5.2mL、30mmol)を添加する。生成溶液にコレステリルクロロホルメート(6.675g、14.8mmol)を添加する。反応混合物を一晩撹拌する。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄する。生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製する(10.3g、92%)。
【0236】
1‐{6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}‐4‐オキソ‐ピロリジン‐3‐カルボン酸エチルエステル AE
【0237】
【化6】

【0238】
カリウムt‐ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を乾燥トルエン30mL内でスラリー状にする。混合物を氷上で0℃に冷却し、ジエステルAD 5g(6.6mmol)を20分以内撹拌しながら緩徐に添加する。添加中、温度を5℃未満に保つ。撹拌を0℃で30分継続し、氷酢酸1mLを添加し、直後にNaHPO・HO 4gの水溶液40mLを添加する。生成混合物を2回、各ジクロロメタン100mLで抽出し、併合有機抽出物を2回各10mLリン酸緩衝液で洗浄し、乾燥し、蒸発乾固させる。残渣を60mLトルエンに溶解し、0℃に冷却し、冷却したpH9.5炭酸塩緩衝液50mLで3回抽出する。水性抽出物をリン酸でpH3に調節し、併合クロロホルム40mLで5回抽出し、乾燥させ、蒸発乾固させる。残渣を25%エチルアセテート/ヘキサンを使用したカラムクロマトグラフィーにより精製し、b‐ケトエステル1.9g(39%)を得る。
【0239】
[6‐(3‐ヒドロキシ‐4‐ヒドロキシメチル‐ピロリジン‐1‐イル)‐6‐オキソ‐ヘキシル]‐カルバミン酸17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イル エステル AF
【0240】
【化7】

【0241】
b‐ケトエステル AE(1.5g、2.2mmol)及び水素化ホウ素ナトリウム(0.226g、6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)の還流混合物にメタノール(2mL)を1時間かけて滴下する。撹拌を還流温度で1時間継続する。室温に冷却後、1N HCl(12.5mL)を添加し、混合物をエチルアセテート(3×40mL)で抽出する。併合エチルアセテート層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧濃縮して生成物を得て、カラムクロマトグラフィーにより精製する(10%MeOH/CHCl)(89%)。
【0242】
(6‐{3‐[ビス‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐フェニル‐メトキシメチル]‐4‐ヒドロキシ‐ピロリジン‐1‐イル}‐6‐オキソ‐ヘキシル)‐カルバミン酸17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イル エステル AG
【0243】
【化8】

【0244】
ジオール AF(1.25g、1.994mmol)をピリジン(2×5mL)と減圧蒸発させて乾燥させる。無水ピリジン(10mL)及び4,4’‐ジメトキシトリチルクロライド(0.724g、2.13mmol)を撹拌しながら添加する。反応を室温で一晩実行する。反応をメタノールの添加によって停止させる。反応混合物を減圧濃縮し、残渣にジクロロメタン(50mL)を添加する。有機層を1M重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、濃縮する。残渣のピリジンをトルエンにより蒸発させて除去する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(2%MeOH/クロロホルム、Rf=0.5の5%MeOH/CHCl溶液)により精製する(1.75g、95%)。
【0245】
コハク酸モノ‐(4‐[ビス‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐フェニル‐メトキシメチル]‐1‐{6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}‐ピロリジン‐3‐イル)エステル AH
【0246】
【化9】

【0247】
化合物AG(1.0g、1.05mmol)を無水コハク酸(0.150g、1.5mmol)及びDMAP(0.073g、0.6mmol)と混合し、一晩40℃で減圧乾燥させる。混合物を無水ジクロロエタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.318g、0.440mL、3.15mmol)を添加して溶液をアルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌する。次いでそれをジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷クエン酸水溶液(5重量%、30mL)及び水(2×20mL)で洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮乾固させる。次工程のため残渣をそのように使用する。
【0248】
コレステロール誘導体化CPG AI
【0249】
【化10】

【0250】
サクシネート AH(0.254g、0.242mmol)をジクロロメタン/アセトニトリル混合物(3:2、3mL)に溶解する。そのDMAP(0.0296g、0.242mmol)のアセトニトリル溶液(1.25mL)に2,2’‐ジチオ‐ビス(5‐ニトロピリジン)(0.075g、0.242mmol)のアセトニトリル/ジクロロエタン溶液(3:1、1.25mL)を逐次添加する。生成溶液にトリフェニルホスフィン(0.064g、0.242mmol)のアセトニトリル溶液(0.6mL)を添加する。反応混合物は明橙色に変色する。溶液はリストアクションシェイカーを短時間(5分)使用して十分に撹拌する。長鎖アルキルアミン‐CPG(LCAA‐CPG)(1.5g、61mM)を添加する。懸濁液を2時間撹拌する。CPGは焼結漏斗を介して濾過し、アセトニトリル、ジクロロメタン及びエーテルによって逐次洗浄する。未反応アミノ基は無水酢酸/ピリジンを使用してマスクする。CPGの達成負荷はUV測定(37mM/g)によって測定する。
【0251】
5’‐12‐ドデカン酸ビスデシルアミド基(以下「5’‐C32‐」と称す)又は5’‐コレステリル誘導体基(以下「5’‐Chol‐」と称す)を有するsiRNAの合成は、コレステリル誘導体のために、酸化工程をホスホロチオエート連結を核酸オリゴマーの5’末端に導入するためにBeaucage試薬を使用して実施することを除き、国際公開第2004/065601号に記載されているように実施する。
【図7A】

【図7B】

【図8A】

【図8B】

【図9A】

【図9B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、前記dsRNAが実質的に互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、dsRNAのセンス鎖が第一配列を含み、dsRNAのアンチセンス鎖が第VII因子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な領域を含む第二配列を含み、前記領域が長さ30ヌクレオチド未満であり、前記第一配列が表1、2、及び3の前記センス鎖配列からなる群から選択され、前記第二配列が表1、2、及び3の前記アンチセンス鎖配列からなる群から選択されるdsRNA。
【請求項2】
センス鎖配列が配列番号5の配列を含み、アンチセンス鎖配列が配列番号6の配列を含む、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項3】
98Nl2‐5で製剤化した第VII因子標的siRNAの単回投与によって少なくとも25%発現抑制することにより、dsRNAがラット肝第VII因子mRNAレベルを低減し得る、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項4】
前記dsRNAが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項5】
前記修飾ヌクレオチドが、2’‐O‐メチル修飾ヌクレオチド、5’‐ホスホロチオエート基含有ヌクレオチド、及びコレステリル誘導体又はドデカン酸ビスデシルアミド基に連結した末端ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項4に記載のdsRNA。
【請求項6】
前記修飾ヌクレオチドが、2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ修飾ヌクレオチド、2’‐デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックトヌクレオチド、脱塩基性ヌクレオチド、2’‐アミノ修飾ヌクレオチド、2’‐アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホラミデート、及びヌクレオチド含有非天然塩基からなる群から選択される、請求項4に記載のdsRNA。
【請求項7】
ホスホロチオエート又は2’修飾ヌクレオチドを含む、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項8】
相補性領域が少なくとも15ヌクレオチドの長さである、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項9】
相補性領域が19〜21ヌクレオチドの長さである、請求項1に記載のdsRNA。
【請求項10】
請求項1に記載のdsRNAを含む細胞。
【請求項11】
請求項1に記載のdsRNA及び製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
細胞内VII因子遺伝子発現の阻害方法であって、
(a)請求項1に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)を細胞内に導入する工程と、
(b)工程(a)において産生される細胞を、第VII因子遺伝子のmRNA転写産物を分解するのに十分な時間維持し、それによって細胞内の第VII因子遺伝子発現を阻害する工程とを含む方法。
【請求項13】
ウイルス性出血性発熱の治療、予防又は管理を必要とする患者に対する請求項1に記載のdsRNAの治療的又は予防的有効量の投与を含む、ウイルス性出血性発熱の治療、予防又は管理方法。
【請求項14】
請求項1に記載のdsRNAの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む細胞。

【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505833(P2011−505833A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538109(P2010−538109)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/086158
【国際公開番号】WO2009/076400
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508290910)アルニラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】