説明

第VIII−Fc因子キメラおよびハイブリッドポリペプチドならびにその使用法

本発明は、第VIII因子を投与する方法;第VIII因子を含むキメラおよびハイブリッドポリペプチドを投与する方法;第VIII因子を含むキメラおよびハイブリッドポリペプチド;このようなキメラおよびハイブリッドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;このようなポリヌクレオチドを含む細胞;ならびにこのような細胞を用いてこのようなキメラおよびハイブリッドポリペプチドを産生する方法を提供する。本発明の方法は、予防的治療またはオンデマンド治療を必要としている対象に対して実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、止血障害の治療法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病Aは、FVIII活性の欠損をもたらす第VIII因子(FVIII)遺伝子における突然変異および/または欠失に起因するX関連出血障害である(Peyvandi et al. 2006)。この疾患は、特発性出血や外傷後の過剰な出血により特徴付けられる。長い期間にわたり、筋肉や関節中に繰り返し出血し(幼少期に始まることが多い)、その結果、血友病性関節症や不可逆的な関節損傷が起こる。この損傷は進行性であり、関節の可動性が非常に限定されたり、筋萎縮症や慢性痛が起こったりする可能性がある(非特許文献1(その全体として参照により本明細書中に組み込まれる))。
【0003】
A2ドメインは第VIII因子分子の凝固促進活性に必要である。研究により、ブタ第VIII因子はヒト第VIII因子よりも6倍高い凝固促進活性を有することが示され(非特許文献2)、ヒト第VIII因子とブタ第VIII因子との間の凝固活性の差は、ヒトA2ドメインおよびブタA2ドメインにおける1以上の残基間のアミノ酸配列の差に基づくようである(非特許文献3)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0004】
血友病Aの治療は、FVIII活性を正常レベルの1〜5%まで回復させて、特発性出血を予防することを目標とする補充療法による(非特許文献4(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。出血症状をオンデマンドで治療するため、または予防的に治療することにより起こる出血症状を予防するために利用可能な血漿由来の組換えFVIII製品がある。これらの製品の半減期に基づき、治療レジメンでは頻繁に静脈内投与することが必要とされる。そのような頻繁な投与は痛みを伴い、かつ不都合である。
【0005】
死亡率の低下、関節損傷の予防、および生活の質の改善は、血漿由来の組換えFVIIIの開発による重要な功績である。出血を長期間予防することが、血友病A患者の治療における別の重要な進展となるであろう。しかし、現在まで、長期の保護を可能にする製品は開発されていない。したがって、現行の治療法よりも許容性かつ有効な、第VIII因子欠乏に起因する血友病の改善された治療法が依然として必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rodriguez−Merchan, E.C., Semin. Thromb. Hemost. 29:87−96 (2003)
【非特許文献2】Lollar, P., and E. T. Parker, J. Biol. Chem. 266:12481−12486 (1991)
【非特許文献3】Lollar, P., et al., J. Biol. Chem. 267:23652−23657 (1992)
【非特許文献4】Mannucci, P.M., et al., N. Engl. J. Med. 344:1773−1779 (2001)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第VIII因子を投与する方法;第VIII因子を含むキメラポリペプチドおよびそのようなキメラポリペプチドのハイブリッドを投与する方法;第VIII因子を含むキメラポリペプチドおよびそのようなキメラポリペプチドのハイブリッド;そのようなキメラおよびハイブリッドポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド;そのようなポリヌクレオチドを含む細胞;ならびにそのような細胞を用いてそのようなキメラおよびハイブリッドポリペプチドを産生する方法を提供する。
【0008】
本発明は、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、この対象に、治療量のキメラ第VIII因子ポリペプチド、たとえばキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチドを、当量の、非第VIII因子部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)、例えばFc部分を含まない前記第VIII因子に必要であるよりも少なくとも約1.5倍長い投与間隔で投与することを含む方法を提供する。
【0009】
投与間隔は、当量の、Fc部分などの非第VIII因子部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)に必要であるよりも、少なくとも約1.5〜6倍長いか、1.5〜5倍長いか、1.5〜4倍長いか、1.5〜3倍長いか、または1.5〜2倍長くてもよい。投与間隔は、当量の、Fc部分などの非第VIII因子部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)に必要であるよりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5または6倍長くてもよい。投与間隔は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日ごとまたはそれ以上であってよい。
【0010】
投与間隔は、少なくとも約1.5〜5、1.5、2、3、4、もしくは5日またはそれ以上であってよい。
【0011】
本発明はさらに、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、この対象に、治療量のキメラ第VIII因子ポリペプチド、たとえばキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチドを投与して、当量の、Fc部分などの非第VIII因子部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)により得られる血漿濃度対時間曲線下の面積(AUC)よりも少なくとも約1.25倍大きなAUCを得ることを含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、治療量の、第VIII因子およびFcを含むポリペプチドを、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日ごと、またはそれ以上の投与間隔で投与することを含む方法も提供する。
【0013】
本発明の方法は、予防的治療またはオンデマンド治療を必要としている対象に対して実施することができる。
【0014】
オンデマンド治療には、出血症状、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉中への大出血、口腔大出血、外傷、頭部外傷(trauma capitis、head trauma)、消化管出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、腹膜後隙における出血、または腸腰筋鞘における出血の治療が含まれる。対象は、外科的予防、術中管理、または外科手術のための治療を必要としている可能性がある。そのような外科手術としては、たとえば、小手術、大手術、抜歯、扁桃摘出、鼠径部ヘルニア切開、滑膜切除、人工膝関節全置換術、開頭、骨接合、外傷外科、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術または関節置換手術が挙げられる。
【0015】
オンデマンド治療に関して、前記キメラポリペプチドの投与間隔は、およそ24〜36、24〜48、24〜72、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、もしくは72時間ごとまたはそれ以上で1回である。
【0016】
本発明の方法で使用できる治療量は、約10〜約100IU/kgであり、さらに具体的には、約10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、または90〜100IU/kgであり、さらに具体的には、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100IU/kgである。
【0017】
本発明の方法で使用できる治療量は、約10〜約150IU/kgであり、さらに具体的には、約100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150IU/kgであり、さらに具体的には、約110、115、120、125、130、135、140、145、または150IU/kgである。
【0018】
本発明の方法における対象は、ヒト対象であってもよいし、または非ヒトほ乳類であってもよい。非ヒトほ乳類としては、たとえば、マウス、イヌ、霊長類、サル、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ならびに他の家畜および小動物が挙げられる。投与間隔およびAUCの決定は、単一の対象で、または対象の集団で実施することができる。
【0019】
第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、ヒト第VIII因子、または非ヒト第VIII因子、たとえばブタ、マウスまたはイヌ第VIII因子であり得る。第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、Bドメインの完全または部分欠失を有し得る。
【0020】
第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含まない表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一であり得る。第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含まない表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一であり得る。
【0021】
第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含む表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一であり得る。第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含む表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一であり得る。
【0022】
Fc部分(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表2に示すFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と少なくとも90%または95%同一であり得る。Fc部分(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表2に示すFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と同一であり得る。
【0023】
キメラポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%もしくは95%同一であるか、またはシグナル配列を含む表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含む可能性がある。キメラポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一であるか、またはシグナル配列を含む表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と同一である配列を含む可能性がある。
【0024】
キメラポリペプチドは、前記キメラポリペプチドと結合した第2のポリペプチドを含むハイブリッドの形態であってよく、この場合、前記第2のポリペプチドは、Fcを含む可能性があるか、または本質的にFcからなる可能性がある。
【0025】
第2のポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と少なくとも90%または95%同一であるか、またはシグナル配列を含む表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と少なくとも90%または95%同一である配列を含む可能性があるか、または本質的にこの配列からなる可能性がある。第2のポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と同一であるか、またはシグナル配列を含む表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と同一である配列を含む可能性があるか、または本質的にこの配列からなる可能性がある。
【0026】
キメラポリペプチドまたはハイブリッドを、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与することができる。
【0027】
本発明はさらに、前記キメラおよびハイブリッドポリペプチド自体、それらをコード化するポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む培養されたヒト胚細胞、ならびにそのようなキメラおよびハイブリッドポリペプチドを産生する方法、およびそのような方法により産生されるポリペプチドも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】rFVIIIFcモノマーの略図である。
【図2】50IU/kgの静脈内投与後の血友病AマウスにおけるReFacto(登録商標)と比較したrFVIIIFcのWBCT(n=6マウス/群)。
【図3】50IU/kgのrFVIIIFc、ReFacto(登録商標)およびAdvate(登録商標)の1回のIV投与後の血友病Aマウス由来の血漿中の色素生成活性。
【図4A】血友病AイヌにおけるrFVIIIFcおよびReFacto(登録商標)のWBCT。(A)rFVIIIFc。(B)交差研究において、ReFacto(登録商標)と、それに続いてrFVIIIFc。
【図4B】血友病AイヌにおけるrFVIIIFcおよびReFacto(登録商標)のWBCT。(A)rFVIIIFc。(B)交差研究において、ReFacto(登録商標)と、それに続いてrFVIIIFc。
【図5】血友病Aイヌにおける静脈内rFVIIIIFcおよびReFacto(登録商標)の薬物動態学(ELISAにより測定)。
【図6】血友病Aイヌにおける単回静脈内投与後のrFVIIIおよびReFacto(登録商標)の活性(FVIII特異的色素生成検定により測定)。
【図7】カニクイザルにおける単回静脈内投与(125IU/kg)後のrFVIIIFcおよびXynthaの経時的な群平均血漿濃度(n=6、平均±SD)。血漿濃度はELISAにより測定した。
【図8】カニクイザルにおける単回静脈内投与(125IU/kg)後のrFVIIIFcおよびXynthaの個々の血漿濃度対時間曲線(n=6、平均±SD)。血漿濃度はELISAにより測定した。(A)ELISAによるrFVIIIFc。(B)ELISAによるXyntha。
【図9】カニクイザルにおけるrFVIIIFcおよびXynthaの単回静脈内投与(125IU/kg)後の群平均血漿色素生成活性(n=6、平均±SD)。FVIII特異的色素生成検定を用いてFVIII活性を測定した。
【図10】カニクイザルにおけるrFVIIIFcおよびXynthaの単回静脈内投与(125IU/kg)後の個々の血漿色素生成活性対時間曲線(n=6、平均±SD)。FVIII特異的色素生成検定を用いてFVIII活性を測定した。(A)rFVIIIFc色素生成活性。(B)Xyntha色素生成活性。
【図11】rFVIII−Fcの生化学的特性化:第X因子濃度の関数としての第X因子の活性化。
【図12】rFVIII−Fcの生化学的特性化:第IXa因子濃度の関数としての第X因子の活性化。
【図13A】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定、25IU/kg(A)または65IU/kg(B);および色素生成検定、25IU/kg(C)または65IU/kg(D))。
【図13B】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定、25IU/kg(A)または65IU/kg(B);および色素生成検定、25IU/kg(C)または65IU/kg(D))。
【図13C】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定、25IU/kg(A)または65IU/kg(B);および色素生成検定、25IU/kg(C)または65IU/kg(D))。
【図13D】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定、25IU/kg(A)または65IU/kg(B);および色素生成検定、25IU/kg(C)または65IU/kg(D))。
【図14A】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定(A)または色素生成検定(B))。
【図14B】時間に対する観察された群平均FVIII活性(±SE)(一段階検定(A)または色素生成検定(B))。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、現在知られている第VIII因子産物で可能であるよりも長い投与間隔および/または大きなAUCを用いて第VIII因子で血友病Aを治療する方法を提供する。本発明はさらに、改善された第VIII因子キメラポリペプチド、第VIII因子キメラポリヌクレオチド、および産生方法も提供する。
【0030】
血友病Aの治療は、FVIII活性を正常レベルの1〜5%まで回復させて、特発性出血を予防することを目標とする補充療法による(Mannucci, P.M., et al., N. Engl. J. Med. 344:1773−9 (2001)(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる))。出血症状をオンデマンドで治療するか、または予防的治療により出血症状が起こるのを防止するために利用可能な血漿由来の組換えFVIII産物がある。これらの産物の半減期(10〜12時間)に基づいて(White G.C., et al., Thromb. Haemost. 77:660−7 (1997); Morfini, M., Haemophilia 9 (suppl 1):94−99; discussion 100 (2003))、治療レジメンには、通常、予防のためには週2〜3回、そしてオンデマンド治療のためには1日1〜3回の頻繁な静脈内投与が必要である(Manco−Johnson, M.J., et al., N. Engl. J. Med. 357:535−544 (2007))(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。そのような頻繁な投与は、苦痛を伴い、かつ不便である。
【0031】
本発明は、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、対象に、治療量のキメラ第VIII因子ポリペプチド、たとえばキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチド、またはそのようなポリペプチドのハイブリッドを、当量の、非第VIII因子部分を含まない、例えばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)に必要な投与間隔よりも少なくとも約1.5倍長い投与間隔で投与することを含む方法を提供する。
【0032】
投与間隔は、当量の、非第VIII因子部分を含まない、たとえばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)に必要である投与間隔よりも、少なくとも約1.5〜6倍長い、1.5〜5倍長い、1.5〜4倍長い、1.5〜3倍長い、または1.5〜2倍長いものであってよい。投与間隔は、当量の、非第VIII因子部分を含まない、たとえばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)に必要である投与間隔よりも、少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5または6倍長くてもよい。投与間隔は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日ごとまたはそれ以上であってよい。
【0033】
投与間隔は、少なくとも約1.5〜5、1.5、2、3、4、もしくは5日またはそれ以上であってよい。
【0034】
本発明はさらに、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、対象に、治療量のキメラ第VIII因子ポリペプチド、たとえばキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチド、またはそのようなポリペプチドのハイブリッドを投与して、当量の、非第VIII因子部分を含まない、たとえばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子部分からなるポリペプチド)により得られる血漿濃度対時間曲線下の面積(AUC)よりも少なくとも約1.25倍大きなAUCを得ることを含む方法も提供する。
【0035】
本発明はさらに、第VIII因子を、それを必要とする対象に投与する方法であって、対象に、治療量の、第VIII因子およびFcを含むポリペプチドまたはそのようなポリペプチドのハイブリッドを、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日ごとまたはそれ以上の投与間隔で投与することを含む方法も提供する。
【0036】
本発明の方法は、予防的治療またはオンデマンド治療を必要としている対象に関して実施することができる。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、「投与する」とは、薬剤的に許容される本発明の第VIII因子ポリペプチドを、薬剤的に許容される経路で対象に与えることを意味する。好ましい投与経路は、静脈内であり、例えば静脈内注射および静脈内注入である。さらなる投与経路としては、たとえば、皮下、筋肉内、経口、鼻、および肺投与が挙げられる。キメラポリペプチドおよびハイブリッドタンパク質を、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与することができる。
【0038】
「血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)」とは、本明細書中で用いられる場合、薬理学における専門用語と同じであり、投与後の第VIII因子の吸収の速度および程度に基づく。AUCは、特定の時間、たとえば12、18、24、36、48、もしくは72時間にわたって、または曲線の勾配に基づいた外挿を用いて無限大で決定される。本明細書中で他に特別の定めがない限り、AUCは無限大で決定される。AUCの決定は、単一の対象において、または平均を計算する対象の集団において実施することができる。
【0039】
第VIII因子の「Bドメイン」は、本明細書中で用いられる場合、内部アミノ酸配列同一性およびトロンビンによるタンパク質分解的切断部位、例えば完全長ヒト第VIII因子の残基Ser741−Arg1648によって定義される当該技術分野で公知のBドメインと同じである。他のヒト第VIII因子ドメインは、以下のアミノ酸残基:A1、残基Ala1−Arg372;A2、残基Ser373−Arg740;A3、残基Ser1690−Ile2032;C1、残基Arg2033−Asn2172;C2、残基Ser2173−Tyr2332によって定義される。A3−C1−C2配列は残基Ser1690−Tyr2332を含む。残りの配列、残基Glu1649−Arg1689は、通常、第VIII因子軽鎖活性化ペプチドと呼ばれる。ブタ、マウスおよびイヌ第VIII因子について、Bドメインをはじめとするドメインの全てについての境界の位置も、当該技術分野で公知である。好ましくは、第VIII因子のBドメインは欠失している(Bドメイン欠失第VIII因子」または「BDDFVIII」)。BDDFVIIIの一例はREFACTO(組換えBDDFVIII)であり、これは、表2A(i)の配列の第VIII因子部分(配列番号2のアミノ酸−19〜1438または1〜1438)と同じ配列を有する。
【0040】
「Bドメイン欠失第VIII因子」は、米国特許第6,316,226号、第6,346,513号、第7,041,635号、第5,789,203号、第6,060,447号、第5,595,886号、第6,228,620号、第5,972,885号、第6,048,720号、第5,543,502号、第5,610,278号、第5,171,844号、第5,112,950号、第4,868,112号、および第6,458,563号(そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示される完全または部分欠失を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のBドメイン欠失第VIII因子配列は、米国特許第6,316,226号の第4カラム第4行から第5カラム第28行および実施例1〜5(またUS6,346,513においても)で開示される欠失のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態において、本発明のBドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,789,203号の第2カラム第26〜51行および実施例5〜8(またUS6,060,447、US5,595,886、およびUS6,228,620)で開示される欠失を有する。いくつかの実施形態において、Bドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,972,885号の第1カラム第25行から第2カラム第40行;米国特許第6,048,720号の第6カラム第1〜22行および実施例1;米国特許第5,543,502号の第2カラム第17〜46行;米国特許第5,171,844の第4カラム第22行から第5カラム第36行;米国特許第5,112,950号の第2カラム第55〜68行、図2、および実施例1;米国特許第4,868,112号の第2カラム第2行から第19カラム第21行および表2;米国特許第7,041,635号の第2カラム第1行から第3カラム第19行、第3カラム第40行から第4カラム第67行、第7カラム第43行から第8カラム第26行、および第11カラム第5行から第13カラム第39行;または米国特許第6,458,563号の第4カラム第25〜53行で記載されている欠失を有する。いくつかの実施形態において、Bドメイン欠失第VIII因子は、Bドメインの大部分が欠失しているが、国際公開第91/09122号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されるように、第1翻訳産物の2つのポリペプチド鎖へのインビボタンパク質分解処理に必須であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含む。いくつかの実施形態において、Bドメイン欠失第VIII因子は、アミノ酸747〜1638が欠失している構造にされる。すなわち、Bドメインが実質的に完全に欠失している。Hoeben R.C., et al. J. Biol. Chem. 265 (13): 7318−7323 (1990)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Bドメイン欠失第VIII因子はさらに、第VIII因子のアミノ酸771〜1666またはアミノ酸868〜1562が欠失していてもよい。Meulien P., et al. Protein Eng. 2(4): 301−6 (1988)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の一部であるさらなるBドメイン欠失としては、たとえば:アミノ酸982〜1562または760〜1639の欠失(Toole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1986) 83, 5939−5942))、797〜1562の欠失(Eaton, et al. Biochemistry (1986) 25:8343−8347))、741〜1646の欠失(Kaufman(PCT公開出願番号国際公開第87/04187号))、747〜1560の欠失(Sarver, et al., DNA (1987) 6:553−564))、741〜1648の欠失(Pasek(PCT出願第88/00831号))、816〜1598または741〜1689の欠失(Lagner (Behring Inst. Mitt. (1988) No 82:16−25, EP 295597))(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)が挙げられる。前記欠失のそれぞれは、任意の第VIII因子配列でなされる可能性がある。
【0041】
「キメラポリペプチド」とは、本明細書中で用いられる場合、その中に異なる起源由来の少なくとも2つのポリペプチド(またはサブ配列もしくはペプチド)を含むポリペプチドを意味する。キメラポリペプチドには、たとえば異なる遺伝子、異なるcDNA、または異なる動物もしくは他の種などの異なる起源由来の2、3、4、5、6、7、またはそれ以上のポリペプチドが含まれ得る。キメラポリペプチドは、たとえば、異なるサブ配列を結合する1以上のリンカーを含み得る。したがって、1つのキメラポリペプチド内で、サブ配列を直接結合することができるか、もしくはリンカーを介して間接的に結合させることができるか、またはその両方である。キメラポリペプチドは、たとえば、シグナル配列などのさらなるペプチドおよびタンパク質精製または検出を支援する6HisおよびFLAGなどの配列を含み得る。加えて、キメラポリペプチドは、N末端および/またはC末端へのアミノ酸またはペプチド付加を有し得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、第VIII因子部分と非第VIII因子部分とを含む。例示的な非第VIII因子部分としては、例えば、Fc、XTEN、およびアルブミンが挙げられる。本発明の例示的なキメラポリペプチドとしては、例えば、キメラ第VIII−Fc因子ポリペプチド、キメラ第VIII因子−XTENポリペプチド、およびキメラ第VIII因子−アルブミンポリペプチドが挙げられる。
【0043】
例示的なキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチドとしては、例えば、配列番号2、6、8、10、および12(表2)(それらの、シグナル配列および配列番号4のキメラFcポリペプチドの有無を問わない)が挙げられる(表2)。
【0044】
キメラポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%もしくは95%同一の配列またはシグナル配列を含む表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%または95%同一の配列を含み得る。キメラポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一の配列またはシグナル配列を含む表2A(i)に示される第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と同一の配列を含み得る。
【0045】
前述のように、例示的なキメラポリペプチドとしては、1以上のXTENポリペプチドと融合した第VIII因子を含む。Schellenburger et al., Nat. Biotech. 27:1186−90 (2009)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。第VIII因子は、XTENポリペプチドのN末端またはXTENポリペプチドのC末端と融合する可能性がある。ただし、第VIII因子−XTEN融合タンパク質の第VIII因子成分をプロテアーゼにより処理して、処理された第VIII因子含有ポリペプチドを得ることができるものとする。プロテアーゼ部位がXTEN部分と第VIII因子部分との間に含まれて、そのような処理が可能になる可能性がある。XTENポリペプチドとしては、例えば、国際公開第2009/023270号、国際公開第2010/091122号、国際公開第2007/103515号、US2010/0189682、およびUS2009/0092582(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)で開示されているものが挙げられる。
【0046】
前述のように、例示的なキメラポリペプチドは、1以上のアルブミンポリペプチドと融合した第VIII因子も含む。好ましくは、アルブミンはヒトアルブミンである。第VIII因子は、アルブミンのN末端またはアルブミンのC末端のいずれかと融合し得る。ただし、第VIII因子−アルブミン融合タンパク質の第VIII因子成分を酵素的に活性なプロタンパク質コンベルターゼにより処理して、処理された第VIII因子含有ポリペプチドを得ることができるものとする。本発明で使用できるアルブミンの例、たとえばそのフラグメントは公知である。たとえば、米国特許第7,592,010号;米国特許第6,686,179号;およびSchulte, Thrombosis Res. 124 Suppl. 2:S6−S8 (2009)(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0047】
いくつかの実施形態において、第VIII因子部分を含むキメラポリペプチドは、同じ第VIII因子部分からなり、非第VIII因子部分を含まないポリペプチドよりも、増加した半減期(t1/2)を有する。t1/2が増加したキメラ第VIII因子ポリペプチドを、本明細書中では長時間作用性第VIII因子と呼ぶ場合がある。長時間作用性キメラ第VIII因子ポリペプチドとしては、例えば、Fcに融合した第VIII因子(例えば、FVIIIFcモノマーダイマーハイブリッドなどのハイブリッドの形態のキメラ第VIII因子ポリペプチドを含む;実施例1、図1、および表2A;ならびに米国特許第7,404,956号および第7,348,004号を参照)、XTENに融合した第VIII因子、およびアルブミンに融合した第VIII因子が挙げられる。
【0048】
「培養」、「培養する」および「培養している」とは、本明細書中で用いられる場合、細胞増殖もしくは分裂を可能にするインビトロ条件下で細胞をインキュベートすること、または細胞を生きた状態で維持すること、を意味する。「培養された細胞」とは、本明細書中で用いられる場合、インビトロで繁殖する細胞を意味する。
【0049】
「第VIII因子」とは、本明細書中で用いられる場合、他に特別の定めがない限り、凝固においてその通常の役割の機能的第VIII因子ポリペプチドを意味する。したがって、第VIII因子という用語は、機能的である変異体ポリペプチドを包含する。好ましい第VIII因子タンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、およびネズミ第VIII因子タンパク質である。背景技術のセクションで記載したように、多くの機能的フラグメント、突然変異体および修飾バージョンと同様に、完全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は知られている。ヒト第VIII因子配列の例は、配列番号2、6、8、10、および12(表2)においてサブ配列として示される。第VIII因子ポリペプチドとしては、例えば、完全長第VIII因子、N末端でMetがない完全長第VIII因子、成熟第VIII因子(シグナル配列がない)、N末端でさらなるMetを有する成熟第VIII因子、および/またはBドメインが完全または部分的に欠失した第VIII因子が挙げられる。好ましい第VIII因子変異体は、部分欠失または完全欠失にかかわらず、Bドメイン欠失を含む。
【0050】
前述および後述のように、非常に多くの機能的第VIII因子変異体が知られている。加えて、第VIII因子における数百の非機能的突然変異が血友病患者で同定され、これらの突然変異の第VIII因子機能に対する影響は、置換の性質よりも、第VIII因子の3次元構造内のどこにそれらがあるかによるものであることが見出されている(Cutler et al., Hum. Mutat. 19:274−8 (2002))(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。加えて、ヒトおよび他の種由来の第VIII因子の比較により、機能に必要である可能性がある保存された残基が特定された(Cameron et al., Thromb. Haemost. 79:317−22 (1998);US6,251,632)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0051】
ヒト第VIII因子遺伝子がほ乳類細胞で単離され、発現され(Toole, J. J., et al., Nature 312:342−347 (1984); Gitschier, J., et al., Nature 312:326−330 (1984); Wood, W. I., et al., Nature 312:330−337 (1984); Vehar, G. A., et al., Nature 312:337−342 (1984);国際公開第87/04187号;国際公開第88/08035号;国際公開第88/03558号;米国特許第4,757,006)(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)、そしてアミノ酸配列がcDNAから推定された。Caponら、米国特許第4,965,199(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、ほ乳類宿主細胞における第VIII因子の産生およびヒト第VIII因子の精製のための組換えDNA法を開示している。CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞およびBHKC(ベビーハムスター腎臓細胞)におけるヒト第VIII因子発現が報告されている。Bドメインの一部または全部を欠失させるためにヒト第VIII因子を修飾し(米国特許第4,994,371号および第4,868,112号(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる))、そしてヒト第VIII因子Bドメインのヒト第V因子Bドメインでの置換が実施された(米国特許第5,004,803号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。ヒト第VIII因子をコード化するcDNA配列および予想されるアミノ酸配列はそれぞれ、米国出願公開第2005/0100990号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の配列番号1および2で示される。
【0052】
米国特許第5,859,204号、Lollar, J. S.(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、抗原性が減少し、かつ免疫反応性が減少した第VIII因子の機能的突然変異体を報告している。米国特許第6,376,463号、Lollar, J. S.(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も、免疫反応性が減少した第VIII因子の突然変異体を報告している。米国出願公開第2005/0100990号(Saenkoら、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、第VIII因子のA2ドメインにおける機能的突然変異を報告している。
【0053】
Bドメイン欠失を含む多くの機能的第VIII因子分子が以下の特許で開示されている:US6,316,226およびUS6,346,513(どちらもBaxterに譲渡);US7,041,635(In2Genに譲渡);US5,789,203、US6,060,447、US5,595,886、およびUS6,228,620(Chironに譲渡);US5,972,885およびUS6,048,720(Biovitrumに譲渡)、US5,543,502およびUS5,610,278(Novo Nordiskに譲渡);US5,171,844(Immuno Agに譲渡);US5,112,950(Transgene S.A.に譲渡);US4,868,112(Genetics Instituteに譲渡)(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0054】
ブタ第VIII因子配列は公開され(Toole, J. J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5939−5942 (1986))(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ブタ脾臓cDNAライブラリーからの第VIII因子配列のPCR増幅から得られる完全ブタcDNA配列が報告されている(Healey, J. F., et al., Blood 88:4209−4214 (1996)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。全ドメイン、全サブユニット、および特異的アミノ酸配列の置換を有するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子が、LollarおよびRungeによる米国特許第5,364,771号、ならびに国際公開第93/20093号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示された。最近では、ブタ第VIII因子のA1およびA2ドメインのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列ならびにブタA1および/またはA2ドメインが対応するヒトドメインで置換されたキメラ第VIII因子が国際公開第94/11503号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で報告された。米国特許第5,859,204号、Lollar, J.S.も、ブタcDNAおよび推定されたアミノ酸配列を開示している。Emoryに譲渡された第6,458,563号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、Bドメイン欠失ブタ第VIII因子を開示している。
【0055】
第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含まない表2に示された第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一であり得る。第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含まない表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一であり得る。
【0056】
第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含む表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一であり得る。第VIII因子(またはキメラポリペプチドの第VIII因子部分)は、シグナル配列を含む表2に示される第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一であり得る。
【0057】
「当量」とは、本明細書中で用いられる場合、国際単位で表されるのと同じ量の第VIII因子活性を意味し、これは問題のポリペプチドの分子量に無関係である。1国際単位(IU)の第VIII因子活性は、1ミリリットルの正常ヒト血漿中の第VIII因子の量にほぼ対応する。ヨーロッパ薬局方色素生成性基質検定および一段階凝固検定をはじめとするいくつかの検定が第VIII因子活性を測定するために利用可能である。
【0058】
「Fc」は、本明細書中で用いられる場合、他に特別の定めがない限り、機能的新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーを意味する。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体により特異的に結合され得る任意の分子であり、その結果、FcRn結合パートナーのFcRn受容体による活発な輸送が起こる。したがって、Fcという用語には、機能的であるIgG Fcの任意の変異体が含まれる。FcRn受容体と結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(Burmeister et al. 1994, Nature 372:379(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。FcのFcRnとの主な接触域は、CH2およびCH3ドメインの接合点付近である。Fc−FcRn接触は、全て1つのIg重鎖内である。FcRn結合パートナーとしては、例えば、全IgG、IgGのFcフラグメント、およびFcRnの完全結合領域を含むIgGの他のフラグメントが挙げられる。主な接触部位としては、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、308〜311、および314ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385〜387、428、および433〜436が挙げられる。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメント、または領域のアミノ酸ナンバリングについての言及は、すべて、Kabat et al. 1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest, U. S. Department of Public Health, Bethesda; MD(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に基づく。(FcRn受容体はヒトをはじめとするいくつかのほ乳類種から単離されている。ヒトFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列は公知である(Story et al. 1994, J. Exp. Med. 180: 2377)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域の有無にかかわらず免疫グロブリンのCH2およびCH3ドメインを含み得る。例示的なFc変異体は、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で提供される。
【0059】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、1以上の突然変異、および突然変異の組み合わせを含み得る。
【0060】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、Oganesyan et al., Mol. Immunol. 46:1750 (2009)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているようなM252Y、S254T、T256E、およびそれらの組み合わせなどの増加した半減期を付与する突然変異;Vaccaro et al., Nat. Biotechnol. 23:1283 (2005)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているようなH433K、N434F、およびそれらの組み合わせ;US2009/0264627A1(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の1〜2ページ、段落[0012]、ならびに実施例9および10で開示される突然変異体;ならびにUS20090163699A1(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の2ページ、段落[0014]〜[0021]で開示される突然変異体を含み得る。
【0061】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)としてはさらに、例えば、以下の突然変異を挙げることができる:IgGのFc領域は、部位特異的突然変異誘発法などのよく認識された手順に従って修飾して、修飾IgGもしくはFcフラグメントまたはそれらの部分を得ることができ、これらはFcRnにより結合される。そのような修飾には、例えば、FcRn接触部位から遠い修飾ならびにFcRnに対する結合を保存するか、またはさらには増強する接触部位内の修飾が含まれる。例えば、ヒトIgG1Fc中の以下の1つのアミノ酸残基(Fcy1)は、FcRnに対するFc結合親和性を著しく失うことなく置換され得る:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、A330S、P331A、P331S、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447A(ここで、例えばP238Aは、位置番号238でアラニンにより置換された野生型プロリンを表す。アラニンに加えて、他のアミノ酸を前述の位置で野生型アミノ酸と置換することができる。突然変異を単独でFc中に導入すると、天然のFcと異なる100を越えるFcRn結合パートナーを生じる可能性がある。さらに、2、3、またはそれ以上のこれらの個々の突然変異の組み合わせをあわせて導入すると、数百を超えるFcRn結合パートナーを生じる可能性がある。これらの突然変異のうちのあるものは、FcRn結合パートナーに対して新しい機能を付与する可能性がある。例えば、一実施形態は、N297Aを組み入れて、高度に保存されたN−グリコシル化部位を除去する。この突然変異の効果は、免疫原性を減少させ、それによりFcRn結合パートナーの循環半減期を増強すること、ならびにFcRnに対する親和性を損なうことなく、FcRn結合パートナーがFcyRI、FcyRIIA、FcyRIIB、およびFcyRIIIAと結合することができなくなるようにすることである。(Routledge et al. 1995, Transplantation 60:847(その全体が参照により本明細書に組み込まれる); Friend et al. 1999, Transplantation 68:1632(その全体が参照により本明細書に組み込まれる);Shields et al. 1995, J. Biol. Chem. 276:6591(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマ受容体は、下部ヒンジ領域(一般的にアミノ酸234〜237)内のIgG上の結合部位を認識するようである。したがって、新しい機能および可能性が減少した免疫原性の別の例は、例えば、ヒトIgG1「ELLG」のアミノ酸233〜236をIgG2「PVA」からの対応する配列(1つのアミノ酸欠失を有する)と置換することによるなど、この領域の突然変異から生じる可能性がある。種々のエフェクター機能を媒介するFcyRI、FcyRII、およびFcyRIIIは、そのような突然変異が導入されない場合はIgG1と結合しないことが証明されている(Ward and Ghetie 1995, Therapeutic Immunology 2:77(その全体が参照により本明細書に組み込まれる);およびArmour et al.1999, Eur. J. Immunol. 29:2613(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。前記突然変異から生じる新規機能の更なる例として、FcRnに対する親和性がいくつかの例では野生型の親和性よりも増加する可能性がある。この増加した親和性は、増加した「オン」速度、減少した「オフ」速度または増加した「オン」速度と減少した「オフ」速度の両方を反映する可能性がある。FcRnに対する増加した親和性を付与すると考えられる突然変異としては、例えば、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが挙げられる(Shields et al. 2001, J. Biol. Chem. 276:6591, その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0062】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表2に示すFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)に対して少なくとも90%または95%同一であり得る。Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表2に示すFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)に対して同一であり得る。
【0063】
「ハイブリッド」ポリペプチドおよびタンパク質とは、本明細書中で用いられる場合、キメラポリペプチドの第2のポリペプチドとの組み合わせを意味する。ハイブリッド中のキメラポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、タンパク質間相互作用、例えば電荷間相互作用または疎水性相互作用により互いに結合することができる。ハイブリッド中のキメラポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、ジスルフィド結合または他の共有結合により互いに結合することができる。ハイブリッドは、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。米国特許第7,404,956および7,348,004(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)も参照のこと。第2のポリペプチドは、同じキメラポリペプチドの第二のコピーであり得るか、または同一でないキメラポリペプチドであり得る。例えば、図1、実施例1、および表2を参照のこと。好ましい実施形態では、第2のポリペプチドは、Fcを含むポリペプチドである。好ましい実施形態では、キメラポリペプチドはキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチドであり、第2のポリペプチドは、本質的にFcからなる。例えば、介在するリンカー配列のない、ヒトIgG1のダイマーFcドメインに融合した組換えBドメイン欠失ヒトFVIII(BDD−rFVIII)の1つの分子からなるrFVIIIFc組換え融合タンパク質である実施例1のハイブリッドポリペプチドである。このハイブリッドポリペプチドは、本明細書中では、FVIIIFcモノマーFc融合タンパク質、FVIIIFcモノマーハイブリッド、モノマーFVIIIIFcハイブリッド、およびFVIIIFcモノマー−ダイマーと呼ばれる。実施例1、図1、および表2Aを参照のこと。実施例は、このハイブリッドポリペプチドについての前臨床および臨床データを提供する。
【0064】
ハイブリッド中の第2のポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)に対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列またはシグナル配列を含む表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)に対して少なくとも90%または95%同一である配列を含み得るか、あるいは本質的にこの配列から構成され得る。第2のポリペプチドは、シグナル配列を含まない表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)に対して同一であるか、もしくはシグナル配列を含む表2A(ii)に示されるアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)に対して同一である配列を含み得るか、または本質的にこの配列から構成され得る。
【0065】
図1は、Bドメイン欠失第VIII−Fc因子キメラポリペプチドの構造、およびFcポリペプチドである第2のポリペプチドとの関連を示す略図である。このハイブリッドを得るために、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によりヒト肝臓ポリARNA(Clontech)からFVIII特異的プライマーを用いて、ヒト組換えBドメイン欠失FVIIIのコーディング配列を得た。FVIII配列には、FVIIIの天然のシグナル配列が含まれる。2682bpの全欠失について、Bドメイン欠失はセリン743(S743;2287bp)からグルタミン1638(Q1638;4969bp)までであった。次に、RT−PCRにより、ヒト白血球cDNAライブラリー(Clontech)からFc特異的プライマーを用いて、ヒト組換えFcのコーディング配列を得た。Bドメイン欠失FVIII配列が介在するリンカーなしでFc配列のN末端に直接融合するようにプライマーを設計した。FVIIIFcDNA配列をほ乳類二重発現ベクターpBUDCE4.1(Invitrogen)中にCMVプロモーターの制御下でクローンした。マウスIgkシグナル配列を含む第二の同じFc配列をRT−PCRにより得、発現ベクターpBUDCE4.1中で第二のプロモーターであるEF1αの下流にクローンした。
【0066】
rFVIIIFc発現ベクターを、Lipofectamine2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いてヒト胚腎臓293細胞(HEK293H; Invitrogen)にトランスフェクトした。Zeocin(Invitrogen)での選択により安定なクローン細胞系を生成させた。1つのクローン細胞系である3C4−22を用いてインビボでの特性化のためにFVIIIFcを生成させた。組換えFVIIIFcをBiogen Idec(マサチューセッツ州ケンブリッジ)で産生し、精製した(McCue et al. 2009)。前記トランスフェクション法は、3つの産物、すなわち、モノマーrFVIIIFcハイブリッド、ダイマーrFVIIIFcハイブリッドおよびダイマーFcを生成することが予想される。しかし、これらの細胞から馴化培地ではダイマーrFVIIIFcは本質的に検出されなかった。むしろ、馴化培地はFcおよびモノマーrFVIIIFcを含んでいた。ダイマーrFVIIIFcのサイズは大きすぎて、細胞からの十分な分泌を阻止した可能性がある。この結果は、モノマーの精製を3つのタンパク質全てが存在する場合よりも簡単にするので、この結果は有益であった。この研究で使用した物質は、約9000IU/mgの比活性を有していた。
【0067】
「投与間隔」は、本明細書中で用いられる場合、対象に投与される複数の投与間で経過する時間量を意味する。投与間隔の比較は、単一の対象において、または対象の集団において実施することができ、次いで集団中で得られる平均を計算することができる。
【0068】
本発明のキメラ第VIII因子ポリペプチド、たとえばキメラ第VIII−Fc因子ポリペプチド(第VIII因子を含むポリペプチドまたはハイブリッド)を投与する場合の投与間隔は、当量の、非第VIII因子部分を含まない、たとえばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子からなるポリペプチド)に必要な投与間隔よりも少なくとも約1.5倍長くてもよい。投与間隔は、当量の、非第VIII因子部分を含まない、たとえばFc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子からなるポリペプチド)に必要な投与間隔よりも少なくとも約1.5〜6倍長い、1.5〜5倍長い、1.5〜4倍長い、1.5〜3倍長い、または1.5〜2倍長くてもよい。投与間隔は、当量の、非第VIII因子部分を含まない前記第VIII因子たとえば、Fc部分を含まない前記第VIII因子(前記第VIII因子からなるポリペプチド)に必要な投与間隔よりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5または6倍長くてもよい。投与間隔は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日ごとまたはそれ以上である。投与間隔は、少なくとも約1.5〜5、1.5、2、3、4、または5日またはそれ以上であってよい。オンデマンド治療に関して、前記キメラポリペプチドまたはハイブリッドの投与間隔は、およそ24〜36、24〜48、24〜72、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、または72時間ごとまたはそれ以上で1回である。
【0069】
好ましくは、有効量は、25〜65IU/kg(25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62、64、または65IU/kg)であり、投与間隔は、3〜5、3〜6、3〜7、3、4、5、6、7、もしくは8日またはそれ以上で1回、もしくは1週につき3回、または1週につき3回以下である。好ましくは、有効量は65IU/kgであり、投与間隔は1週間に1回、または6〜7日ごとに1回である。
【0070】
「長時間作用性第VIII因子」は、基準の第VIII因子よりも増加した半減期(本明細書中で、t1/2、t1/2ベータ、除去半減期およびHLとも称する)を有する第VIII因子である。長時間作用性第VIII因子の増加した半減期は、例えば、Fc、XTENまたはアルブミンなどの1以上の非第VIII因子ポリペプチドに対する融合によるものであり得る。増加した半減期は、例えばペグ化などの1以上の修飾によるものであり得る。例示的な長時間作用性第VIII因子ポリペプチドとしては、例えば、Fcを含むキメラ第VIII因子ポリペプチド、XTENを含むキメラ第VIII因子ポリペプチドおよびアルブミンを含むキメラ第VIII因子ポリペプチドが挙げられる。さらなる例示的な長時間作用性第VIII因子ポリペプチドとしては、例えば、ペグ化第VIII因子が挙げられる。
【0071】
長時間作用性キメラ第VIII因子ポリペプチドの場合の「基準」ポリペプチドは、例えばFc部分、XTEN部分、またはアルブミン部分のない同じ第VIII因子部分などの、キメラポリペプチドの第VIII因子部分から本質的になるポリペプチドである。同様に、修飾第VIII因子の場合の基準ポリペプチドは、修飾されてない同じ第VIII因子、例えばペグ化されてない第VIII因子である。
【0072】
いくつかの実施形態において、長時間作用性第VIII因子は、対象に投与される場合、以下の特性の1以上を有する:
約14〜41.3時間の前記対象中の平均滞留時間(MRT)(活性);
約1.22〜5.19mL/時/kg以下の前記対象中のクリアランス(CL)(活性);
約11〜26.4時間の前記対象中のt1/2ベータ(活性);
1IU/kgあたり約1.38〜2.88IU/dLの前記対象中の増分回収率(incremental recovery)(K値)(活性;観察値);
約37.7〜79.4mL/kgの前記対象中のVss(活性);および
1IU/kgあたり約19.2〜81.7IU*h/dLの前記対象中のAUC/用量。
【0073】
いくつかの実施形態において、長時間作用性第VIII因子は患者集団に投与された場合に以下の特性の1以上を有する:
1IU/kgあたり1.38IU/dLを越える平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
1IU/kgあたり少なくとも約1.5、少なくとも約1.85、または少なくとも約2.46IU/dLの平均増分回収率(K値)(活性;観察値)。
約2.33±1.08mL/時/kg以下の前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
約1.8〜2.69mL/時/kgの前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
修飾がなく前記第VIII因子を含むポリペプチドのクリアランスの約65%である前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
少なくとも約26.3±8.33時間の前記患者集団における平均滞留時間(MRT)(活性);
約25.9〜26.5時間の前記患者集団における平均MRT(活性);
修飾がなく前記第VIII因子を含むポリペプチドの平均MRTよりも約1.5倍長い前記患者集団における平均MRT(活性);
約18.3±5.79時間の前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
約18〜18.4時間である前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
修飾がなく前記第VIII因子を含むポリペプチドの平均t1/2ベータよりも約1.5倍長い前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
1IU/kgあたり約2.01±0.44IU/dLの前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
1IU/kgあたり約1.85〜2.46IU/dLの前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
修飾がなく前記第VIII因子を含むポリペプチドの平均増分回収率の約90%である前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
約55.1±12.3mL/kgの前記患者集団における平均Vss(活性);
約45.3〜56.1mL/kgの前記患者集団における平均Vss(活性);
1IU/kgあたり約49.9±18.2IU*h/dLの前記患者集団における平均AUC/用量(活性);
1IU/kgあたり約44.8〜57.6IU*h/dLの前記患者集団における平均AUC/用量(活性)。
【0074】
「オンデマンド治療」とは、本明細書中で用いられる場合、短期間にわたって行われることを目的とし、出血症状などの現状に反応して、または計画された手術などの認識された必要性に対する治療を意味する。オンデマンド治療を必要とし得る状態としては、例えば、出血症状、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉中への大出血、口腔大出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、腹膜後隙における出血、または腸腰筋鞘における出血が挙げられる。対象は、外科的予防、術中管理、または外科手術のための治療を必要とする可能性がある。そのような外科手術としては、例えば、小手術、大手術、抜歯、扁桃摘出、鼠径部ヘルニア切開、滑膜切除、人工膝関節全置換術、開頭、骨接合、外傷外科学、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術、または関節置換手術が挙げられる。
【0075】
好ましくは、オンデマンド治療は、単回投与で出血(たとえば、特発性出血)の80%超(80%超、81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超、もしくは100%)または80〜100%、80〜90%、85〜90%、90〜100%、90〜95%、もしくは95〜100%を解消する。好ましくは、出血症状の80%超(81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、もしくは100%)または80〜100%、80〜90%、85〜90%、90〜100%、90〜95%、もしくは95〜100%が、オンデマンド治療後に医師により優または良と評価される。好ましくは、出血症状の5%超、(6%超、7%超、8%超、9%超、10%超、11%超、12%超、13%超、14%超、15%超、16%超、17%超、18%超、19%超、20%超)、または5〜20%、5〜15%、5〜10%、10〜20%、もしくは10〜15%がオンデマンド治療後に医師により可と評価される。
【0076】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は交換可能に用いられ、共有結合したアミノ酸残基から構成されるポリマー化合物を指す。
【0077】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」は交換可能に用いられ、共有結合したヌクレオチド残基からなるポリマー化合物を指す。ポリヌクレオチドは、DNA、cDNA、RNA、1本鎖、もしくは2本鎖、ベクター、プラスミド、ファージ、またはウイルスであり得る。ポリヌクレオチドとしては、例えば、表2のポリペプチドをコード化する表1中のものが挙げられる(表1を参照のこと)。ポリヌクレオチドとしてはさらに、例えば、表1のポリヌクレオチドのフラグメント、例えば、表2のポリペプチドのフラグメント、例えば、第VIII因子、Fc、シグナル配列、6Hisおよび表2のポリペプチドの他のフラグメントをコード化するものが挙げられる。
【0078】
「予防的治療」とは、本明細書中で用いられる場合、対象に長期間にわたって複数回投与で第VIII因子ポリペプチドを投与して、対象の血漿中の第VIII因子活性のレベルを増大させることを意味する。好ましくは、増大したレベルは、特発性出血の発生率を低下させるか、または例えば、不測の損傷の場合に出血を予防するために十分である。好ましくは、予防的治療中に、対象中の血漿タンパク質レベルは、当該対象のベースラインレベルよりも低くならないか、または重篤な血友病を特徴付ける第VIII因子のレベルよりも低くならない(<1IU/dl[1%])。
【0079】
好ましくは、予防法は、各患者についてのPKデータを決定することにより、そして1〜3%のFVIII活性のトラフレベルを維持する投与間隔で本発明の第VIII因子を投与することにより、個々の患者にあわせて「調整」される。2ヶ月の期間にわたって2以上の突発性出血症状と定義される許容できない出血症状を対象が経験する場合に、調節をおこなうことができる。この場合、調節は、3〜5%のトラフレベルを目標とする。好ましくは、予防的治療の結果、出血の予防および制御、出血の持続的制御、出血からの持続的保護、および/または持続的利益が得られる。予防、例えば持続的保護は、最終測定時点までの増加したAUC(AUC−LAST)および減少したクリアランスにより示すことができ、その結果、短時間作用型FVIIIと比較して増加した終末相t1/2となる。好ましくは、予防は、短時間作用型FVIIIに対して、より良好なCmax、より良好なTmax、および/またはより大きな平均滞留時間によって示される。好ましくは、予防の結果、注射(たとえば、最後の注射)後、約24、36、48、72、または96時間以内(たとえば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、96、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96時間、好ましくは72時間以内)に、突発性出欠症状が起こらない。好ましくは、予防の結果、週に一度の投薬(たとえば、65IU/kg)で、30%超(たとえば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、96、87、88、89、または90%超、好ましくは50%超)の年間出血症状の平均的減少となる。
【0080】
「対象」とは、本明細書中で用いられる場合、ヒトまたは非ヒトほ乳類を意味する。非ヒトほ乳類としては、例えば、マウス、イヌ、霊長類、サル、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ならびに他の家畜および小動物が挙げられる。
【0081】
「治療量」とは、本明細書中で用いられる場合、本明細書中で記載されるように、治療目標を達成する用量を意味する。第VIII因子の必要な用量の計算は、平均で、体重1kgあたり1IUの第VIII因子が血漿第VIII因子活性を約2IU/dL上昇させるという経験的知見に基づく。必要な用量は、次式:
必要な単位=体重(kg)×所望の第VIII因子増加(IU/dLまたは正常値の%)×0.5(IU/dLあたりのIU/kg)
を用いて決定される。
【0082】
本発明の方法で使用できる治療量は、約10〜100IU/kgであり、さらに具体的には、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、または90〜100IU/kgであり、さらに具体的には、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100IU/kgである。
【0083】
本発明の方法において用いることができるさらなる治療量は、約10〜約150IU/kgであり、さらに具体的には、約100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150IU/kgであり、さらに具体的には、約110、115、120、125、130、135、140、145、または150IU/kgである。
【0084】
「変異体」とは、本明細書中で用いられる場合、もとのポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、その基本的な特性、例えば第VIII因子凝固活性またはFc(FcRn結合)活性を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一般的に、変異体は全体的に非常に類似し、多くの領域でもとのポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同一である。変異体は、例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドフラグメント、もとのポリペプチドの欠失、挿入、および修飾バージョンを含む。
【0085】
変異体ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1、3、5、7、9、または11中のヌクレオチドコーディング配列(第VIII因子部分、Fc部分(個々にもしくは一緒に))またはその相補鎖、本明細書中で言及される刊行物および特許で開示されるものなどの既知突然変異体および組換え第VIII因子もしくはFcのヌクレオチドコーディング配列またはその相補鎖、配列番号2、4、6、8、10、もしくは12のポリペプチドをコート化するヌクレオチド配列(第VIII因子部分、Fc部分(個々にもしくは一緒に))、および/またはこれらの核酸分子のうちいずれかのポリヌクレオチドフラグメント(たとえば、本明細書中で記載されるフラグメント)と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含み得るか、またはこのヌクレオチド配列から構成され得る。これらの核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下または低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドも、これらのポリヌクレオチドが機能的である限り、これらのポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドと同様に、変異体として含まれる。
【0086】
変異体ポリペプチドは、例えば、配列番号2、4、6、8、10、または12で示されるポリペプチド配列(第VIII因子部分、Fc部分(個々にまたは一緒に))、および/またはこれらのポリペプチドのいずれかのポリペプチドフラグメント(たとえば、本明細書中に記載されるフラグメント)と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を含み得るか、またはこのアミノ酸配列から構成され得る。
【0087】
基準ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸により、当該核酸のヌクレオチド配列は、当該ヌクレオチド配列が、基準ヌクレオチド配列のそれぞれ100のヌクレオチドあたり5ポイントまでの突然変異を含み得ること以外は、基準配列と同一であることを意味する。言い換えると、基準ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有する核酸を得るためには、基準配列中のヌクレオチドの5%までが欠失しているか、もしくは別のヌクレオチドで置換されていてもよいか、または基準配列中の全ヌクレオチドの5%までの複数のヌクレオチドが基準配列中に挿入されていてもよい。クエリー配列は、例えば、配列番号1または3に示される全配列、ORF(オープンリーディングフレーム)、または本明細書中で特定される任意のフラグメントであってよい。
【0088】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリペプチドが本発明のヌクレオチド配列またはポリペプチドと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、公知コンピュータープログラムを用いて通常どおり決定することができる。クエリー配列(基準もしくはもとの配列)および対象配列間の最良の全体的マッチを決定するための好ましい方法(グローバル配列アラインメントとも呼ばれる)は、Brutlagらのアルゴリズム(Comp. App. Biosci. (1990) 6:237−245)(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に基づいたFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリー配列および対象配列はどちらもDNA配列である。UをTに変換することによって、RNA配列を比較することができる。前記グローバル配列アラインメントの結果は%同一性で表される。%同一性を計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントで用いられる好ましいパラメーターは次のとおりである:マトリックス(Matrix)=Unitary、k−tuple=4、ミスマッチペナルティー(Mismatch Penalty)=1、ジョイニングペナルティー(Joining Penalty)=30、ランダム化グループ長(Randomization Group Length)=0、カットオフスコア(Cutoff Score)=1、ギャップペナルティー(Gap Penalty)=5、ギャップサイズペナルティー(Gap Size Penalty)0.05、ウインドウサイズ(Window Size)=500または対象ヌクレオチド配列の長さ(いずれか短い方)。
【0089】
対象配列が内部決質のためではなく5’または3’欠失のためにクエリー配列よりも短いならば、結果に対して手作業で補正を加えなければならない。これは、FASTDBプログラムが%同一性を計算する場合に対象配列の5’および3’トランケーションを計上しないからである。クエリー配列と比較して、5’または3’末端でトランケートされた対象配列について、%同一性は、クエリー配列の全塩基のパーセントとして、マッチ/整列しない対象配列の5’および3’であるクエリー配列の塩基の数を計算することにより補正する。ヌクレオチドがマッチ/整列するかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。このパーセンテージを次いで、特定のパラメーターを用いて前記FASTDBプログラムにより計算された%同一性から差し引いて、最終%同一性スコアを得る。この補正されたスコアは、本発明の目的のために用いられるものである。FASTDBアラインメントにより示されるように、クエリー配列とマッチ/整列しない対象配列の5’および3’塩基の外側の塩基のみを、%同一性スコアを手作業で調節する目的のために計算する。
【0090】
例えば、90塩基対象配列を100塩基クエリー配列と整列させて、%同一性を決定する。欠失が対象配列の5’末端で起こり、したがって、FASTDBアラインメントは、5’末端の最初の10塩基のマッチ/整列を示さない。10の不対塩基は配列の10%(一致しない5’および3’末端の塩基の数/クエリー配列中の塩基の総数)であり、したがって10%をFASTDBプログラムにより算出された%同一性スコアから差し引く。残りの90塩基が完全にマッチするならば、最終%同一性は90%である。別の例で、90塩基対象配列を100塩基クエリー配列と比較する。今度は、欠失は内部欠失であるので、クエリーとマッチ/整列しない塩基は対象配列の5’または3’にはない。この場合、FASTDBにより算出された%同一性を手作業で補正しない。再度、クエリー配列とマッチ/整列しない対象配列の5’および3’の塩基のみを手作業で補正する。本発明の目的に関しては、他の手作業の補正は行わない。
【0091】
本発明のクエリーアミノ酸配列と少なくとも、例えば、95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドにより、対象ポリペプチドのアミノ酸配列は、対象ポリペプチド配列がクエリーアミノ酸配列のそれぞれ100のアミノ酸につき5までのアミノ酸改変を含み得ること以外は、クエリー配列と同一であることを意味する。言い換えると、クエリーアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、対象配列中のアミノ酸残基の5%までを挿入、欠失、(インデル)または別のアミノ酸で置換することができる。基準配列のこれらの改変は、基準アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置またはそれらの末端位置間のどこで起こってもよく、基準配列中の残基間で個々に、または基準配列内の1以上の連続群中のいずれかで点在している。
【0092】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、たとえば、配列番号2(第VIII因子部分、Fc部分(それぞれもしくは一緒に))または4、あるいは既知第VIII因子のアミノ酸配列またはFcポリペプチド配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、公知コンピュータープログラムを用いて通常どおり決定することができる。クエリー配列(基準またはもとの配列)と対象配列との間の最良の全体的なマッチを決定する好ましい方法(グローバル配列アラインメントとも呼ばれる)は、Brutlagらのアルゴリズム(Comp. App. Biosci. 6:237−245(1990)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に基づいたFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリーおよび対象配列は、両ヌクレオチド配列または両アミノ酸配列のいずれかである。前記グローバル配列アラインメントの結果は%同一性で表される。FASTDBアミノ酸アラインメントで用いられる好ましいパラメーターは次のとおりである:マトリックス=PAM0、k−tuple=2、ミスマッチペナルティー=1、ジョイニングペナルティー=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウインドウサイズ=配列長、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー=0.05、ウインドウサイズ=500または対象アミノ酸配列の長さ(どちらか短い方)。
【0093】
対象配列が、内部欠失のためではなく、NまたはC末端欠失のためにクエリー配列よりも短い場合、結果に対して手作業で補正を行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、グローバル%同一性を算出する場合に対象配列のN末端およびC末端トランケーションを計上しないからである。クエリー配列と比べて、N末端およびC末端でトランケートされた対象配列について、%同一性は、クエリー配列の全塩基のパーセントとして、対応する対象残基とマッチ/整列しない対象配列のN末端およびC末端であるクエリー配列の残基の数を計算することにより補正される。残基がマッチ/整列するかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。このパーセンテージを次いで特定のパラメーターを用いて前記FASTDBプログラムにより算出された%同一性から差し引いて、最終%同一性スコアを得る。この最終%同一性スコアは、本発明の目的に関して用いられるものである。クエリー配列とマッチ/整列しない対象配列のN末端およびC末端に対する残基のみを%同一性スコアを手作業で調節する目的に関して考慮する。すなわち、クエリー残基のみが対象配列の最も遠いN末端およびC末端残基の外側に位置する。
【0094】
例えば、90アミノ酸残基対象配列を100残基のクエリー配列と整列させて、%同一性を決定する。欠失は対象配列のN末端で起こり、したがって、FASTDBアラインメントはN末端の最初の10残基のマッチ/整列を示さない。10の不対残基は配列の10%(一致しないN末端およびC末端の残基の数/クエリー配列中の残基の総数)であり、したがって、10%をFASTDBプログラムにより算出された%同一性スコアから差し引く。残りの90残基が完全にマッチする場合、最終%同一性は90%となる。別の例では、90残基対象配列を100残基クエリー配列と比較する。今回は、欠失は内部欠失であるので、クエリーとマッチ/整列しない対象配列のN末端またはC末端の残基はない。この場合、FASTDBにより算出される%同一性は手作業で補正されない。再度、FASTDBアラインメントで示されるように、クエリー配列とマッチ/整列しない対象配列のN末端およびC末端の外側の残基位置のみを、手作業で補正する。本発明の目的に関しては他の手作業の補正は行わない。
【0095】
ポリヌクレオチド変異体は、コーディング領域、非コーディング領域、または両方で改変を含み得る。特に好ましいのは、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コード化されたポリペプチドの特性もしくは活性を改変しない改変を含むポリヌクレオチド変異体である。遺伝コードの縮重によるサイレント置換によって産生されるヌクレオチド変異体が好ましい。さらに、5〜10、1〜5、または1〜2アミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失または付加されている変異体も好ましい。たとえば特定の宿主に関してコドン発現を最適化(ヒトmRNAにおけるコドンを、大腸菌(E. coli)などの細菌宿主により好まれるものへ変更)するためなど、様々な理由で、ポリヌクレオチド変異体を産生することができる。
【0096】
天然に存在する変異体は、「対立遺伝子多型(allelic variant)」と呼ばれ、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態のうちの1つを指す(Genes II, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, New York (1985))。これらの対立遺伝子多型は、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドレベルのいずれかで様々である可能性があり、本発明に含まれる。あるいは、天然に存在しない変異体は、突然変異誘発技術によるか、または直接合成により産生することができる。
【0097】
タンパク質工学および組換えDNAテクノロジーの公知方法を用いて、変異体を生成させて、ポリペプチドの特性を改善または改変することができる。たとえば、生物学的機能を実質的に失うことなく、1以上のアミノ酸を分泌されたタンパク質のN末端またはC末端から欠失させることができる。Ron et al., J. Biol. Chem. 268: 2984−2988 (1993)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の著者らは、3、8、または27のアミノ末端アミノ酸残基の欠失後でさえもヘパリン結合活性を有する変異体KGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端からの8〜10アミノ酸残基の欠失後に、最高10倍まで高い活性を示した(Dobeli et al., J. Biotechnology 7:199−216 (1988)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0098】
さらに、十分な証拠により、変異体は多くの場合、天然に存在するタンパク質と類似した生物学的活性を保持することが示される。例えば、Gayleおよび共同研究者(J. Biol. Chem 268:22105−22111 (1993)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、ヒトサイトカインIL−1aの詳細な突然変異分析を行った。彼らは、ランダム突然変異誘発を使用して、分子の全長にわたって変異体あたり平均して2.5アミノ酸変化である3,500を越える個々のIL−1a突然変異体を生成させた。複数の突然変異をあらゆる可能なアミノ酸位置で調査した。調査者らは、分子のほとんどは[結合または生物学的活性]のいずれかに対してほとんど影響を及ぼすことなく改変することができる」ことを見いだした。(要約を参照のこと)。実際、調査した3,500を越えるヌクレオチド配列のうち、わずか23の独自のアミノ酸配列だけが、野生型とは活性が有意に異なるタンパク質を産生した。
【0099】
前述のように、ポリペプチド変異体としては、例えば、修飾ポリペプチドが挙げられる。修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(Mei et al.、Blood 116:270−79(2010)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のタンパク質に対するトランスファー−RNA媒介性付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン化が挙げられる。いくつかの実施形態において、第VIII因子は、任意の都合のよい位置でペグ化など修飾される。いくつかの実施形態において、第VIII因子は、第VIII因子の表面に露出したアミノ酸で、好ましくは、操作されたシステインであり得る表面に露出したシステインでペグ化される。Mei et al. (2010)。いくつかの実施形態において、修飾された第VIII因子、たとえばペグ化第VIII因子は、長時間作用性第VIII因子である。
【0100】
「定常状態での分布容積(Vss)」は、本明細書中で用いられる場合、薬剤が分配される見かけの空間(容積)という、薬理学で用いられるこの用語と同じ意味を有する。Vss=定常状態の血漿濃度で割った体内の薬剤の量。
【0101】
「約」とは、本明細書中で範囲について用いられる場合、その範囲の両端を修飾する。したがって、「約10〜20」は、「約10〜約20」を意味する。
【0102】
本発明を詳細に記載してきたが、本発明を限定することを意図するのではなく、説明のみの目的で含まれる以下の実施例を参照することにより、更に明らかに理解されるであろう。本明細書中で言及される全ての特許および刊行物は参照により明白に本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0103】
実施例1
要約
組換えBドメイン欠失第VIII−Fc因子(rFVIIIFc)融合タンパク質を作製して、FVIIIの半減期を延長した。rFVIIIFcを重症の血友病Aのマウスおよびイヌモデルで研究し、rFVIII(ReFacto(登録商標))と比較した。血友病Aマウスにおける全血凝固時間(WBCT)は2〜3倍長く補正され、そして血漿中の除去半減期は、ReFacto(登録商標)と比較すると、rFVIIIFcについてほぼ2倍の長さであった。血友病Aイヌでは、rFVIIIFcの静脈内投与(125IU/kg)はWBCTを正常値に修正した。WBCTは、ReFacto(登録商標)で治療されたイヌについては48時間であるのに比べて、約96時間にわたって20分未満(この時間は、FVIII:C>1%に一致する)にとどまった。イヌ血漿におけるrFVIIIFcの除去半減期は、ELISAまたは色素生成検定を用いて測定した場合、それぞれ15.7±1.7時間および15.4±0.3時間であった。ReFacto(登録商標)は、WBCTをrFVIIIFcの約1/2の長さに修正し、血漿半減期は7.0時間であった。したがって、FVIIIをFcに融合することにより、血漿半減期が増加し、出血から長時間保護する能力を有する分子が産生された。
【0104】
序論
死亡率の低下、関節損傷の予防および生活の質の改善は、血漿由来の組換えFVIIIの開発による重大な功績である。出血からの長時間の保護は、血友病A患者の治療における別の重要な進展である。本発明者等は、FVIIIの半減期を延長するための方法として組換え第VIII−Fc因子(rFVIIIFc)キメラタンパク質およびハイブリッドを作製した。
【0105】
rFVIIIFcは、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFcドメインに組換えにより融合されたBドメイン欠失FVIIIから構成されるヘテロダイマーハイブリッドタンパク質である(図1、配列番号2;表2A)(このタンパク質は、本明細書中ではFVIIIFcモノマーFc融合タンパク質、FVIIIFcモノマーハイブリッド、モノマーFVIIIIFcハイブリッド、およびFVIIIFcモノマー−ダイマーとも呼ばれる)。Fcは、IgGを分解から保護する原因となり、IgGに対してヒトにおいて観察される3週間の半減期を付与する、新生児Fc受容体(FcRn)への結合を可能にする(Ghetie V, and Ward ES., Annu. Rev. Immunol. 2000;18:739−766; Roopenian DC, and Akilesh S., Nature Rev. Immunol. 2007;7:715−725(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる))。
【0106】
IgG1のFcドメインを、成長因子、サイトカイン、酵素および受容体のリガンド結合領域と融合させた(Ashkanazi A, et al., Int. Rev. Immunol. 1993:10:219−27; Chamow SM, and Ashkanazi A, Trends Biotechnol. 1996:14:52−60; Fisher et al., N. Engl. J. Med. 1996:334(26):1697−702(それぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる))。これらのうちのいくつかは重要な治療分子となった(例えば、エタネルセプト、アレファセプト、アバタセプト)。これらの融合タンパク質において、2つのエフェクター分子が2つのFc分子と結合する。この実施例では、rFVIIIFcを、モノマーFc融合タンパク質(表2A(i)中の配列(配列番号2)から構成される1コピーのポリペプチド(シグナル配列の有無を問わない)および表2A(ii)中の配列(配列番号4)(シグナル配列の有無を問わない)からなる1コピーのポリペプチド)として、すなわち、1コピーのエフェクター分子のみを用いて構築し(図1を参照のこと)、本明細書中に提示した研究は、血友病Aのマウスおよびイヌモデルにおいてこの新規タンパク質の薬力学および薬物動態学をrFVIIIと比較する。シグナル配列は、分泌中に切断される。このタンパク質構築物を、本明細書中では、FVIIIFcモノマーFc融合タンパク質、FVIIIFcモノマーハイブリッド、モノマーFVIIIIFcハイブリッド、およびFVIIIFcモノマー−ダイマーと称する。このタンパク質の構造および産生については、実施例1、図1、表2A;ならびに米国特許第7,404,956号および第7,348,004号(そのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0107】
方法および材料
FVIII調製物
組換えFVIIIFc
FVIII特異的プライマーを用いて、ヒト肝臓ポリA RNA(Clonetech)から、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、ヒト組換えBドメイン欠失FVIIIのコード配列を得た。FVIII配列は、FVIIIに関するネイティブシグナル配列を含む。Bドメイン欠失は、2682bpの全体的欠失に関してセリン743(S743;2287bp)からグルタミン1638(Q1638;4969bp)までであった。このタンパク質の構造および製造に関しては、実施例1、図1、表2A;ならびに米国特許第7,404,956号および第7,348,004号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。
【0108】
Fc特異的プライマーを用いて、ヒト白血球cDNAライブラリー(Clonetech)から、RT−PCRにより、ヒト組換えFcに関するコード配列を得た。Bドメイン欠失FVIII配列が、介在リンカーを伴わずに、Fc配列のN末端と直接的に融合されるよう、プライマーを設計した。CMVプロモーターの制御下で、哺乳動物二重発現ベクターpBUDCE4.1(Invitrogen)中に、FVIIIFc DNA配列をクローン化した。マウスIgkシグナル配列を含む第二の同一Fc配列をRT−PCRにより得て、発現ベクターpBUDCE4.1中の第二プロモーター EF1αの下流にクローン化した。
【0109】
リポフェクタミン 2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、ヒト胚性腎臓293細胞(HEK293H;Invitrogen)中にrFVIIIFc発現ベクターをトランスフェクトした。ゼオシン(Invitrogen, Carlsbad, CA)で選択することにより、安定クローン細胞株を生成した。一クローン細胞株 3C4−22を用いて、in vivoで特性化のためのFVIIIFcを生成した。組換えFVIIIFcを産生し、精製した(McCue JT, et al., J. Chromatogr. A 2009; 7824−7830(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、Biogen Idec (Cambridge, MA))。上記のトランスフェクション戦略は、3つの産物、すなわち、単量体rFVIIIFcハイブリッド、二量体rFVIIIFcハイブリッドおよび二量体Fcを生じると予期された。しかしながら、これらの細胞から状態調節培地中で検出される二量体rFVIIIFcは本質的に存在しなかった。むしろ、状態調節培地は、Fcおよび単量体rFVIIIFcを含有した。二量体rFVIIIFcは大きすぎて細胞からの効率的分泌を妨げた、と考えられる。この結果は、3つのタンパク質すべてが存在した場合より単量体の精製を複雑にしないことから、有益であった。これらの試験に用いられる物質は、約9000 IU/mgという特異的活性を有した。さらに、これらのヒト細胞は、この実験で試みられた他の細胞より高いタンパク質レベルを生じた。
【0110】
組換えFVIII
組換えBドメイン欠失FVIII(ReFacto(登録商標))をNovis Pharmaceuticalsから購入し、メーカーの使用説明書に従って調製した。ReFacto(登録商標)(組換えBドメイン欠失FVIII)は、配列番号2のアミノ酸1〜1438と同じアミノ酸配列を有する。
【0111】
血友病A動物
血友病Aマウスは、ペンシルバニア大学のKazazian博士から入手し(Bi L, et al., Nat. Genet. 1995; 10(1): 119−121;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、Syntonixで繁殖された129×B6バックグラウンドでのFVIIIエキソン16ノックアウトである。これらのマウスは、全血凝固時間延長(>60分)を示し、したがって、重症血友病Aの良好なモデルである。
【0112】
血友病Aイヌは、ノースカロライナ大学(Chapel Hill)のフランシス・オーエン血液研究室で保持された近交系コロニー(Graham, JB, et al., J. Exp. Med. 1949; 90: 97−111;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)からであった。これらのイヌは、ヒト疾患の重症型に匹敵する重症血友病表現型を有する(Graham, JB, et al., J. Exp. Med. 1949; 90: 97−111;Lozier, JN, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 2002; 99: 12991−12996;これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。
【0113】
試験計画
血友病Aマウス試験
全血凝固時間(WBCT)に及ぼすrFVIIIFcおよびReFacto(登録商標)の作用を、FVIII欠損マウスで試験した。各タンパク質を50 IU/kgで静脈内投与して、各マウスの尾静脈から、用量投与前に、そして用量投与後の種々の時点で、血液を採取した。血液試料を37℃で微細管中でインキュベートして、血餅の存在に関して1分間に1回、視覚的に検査した。血餅形成の時間を記録した。血餅が60分までに生じなかった場合、凝固時間を>60分と記録した。正常マウスからの血液は、WBCT検定において約4分で凝固する(範囲 2〜7分;n=マウス10匹)。
【0114】
第2組の試験では、血友病Aマウスに、50 IU/kg rFVIIIFc、ReFacto(登録商標)またはAdvate(登録商標)の単一回静脈内用量投与を施した(マウス4匹/時点)。用量投与後0.25、8、24、48および72時間に、10分の1容積の3.2%クエン酸ナトリウム中に心臓穿刺により血液を採取した。血漿を調製し、FVIII特異的色素生成活性検定を用いたFVIII活性に関する分析まで、−80℃で保存した。
【0115】
血友病Aイヌ試験
rFVIIIFcの単一回用量投与PK/PD試験において、Chapel Hillコロニーからの2匹の血友病Aイヌに、125 IU/kgの単一回静脈内用量投与を施して、WBCT、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、FVIIIFc血漿濃度、血液学的および血清化学に関して、用量投与前、および用量投与後の選定時点に、血液試料を採取した。WBCTに関する時点は、用量投与前、用量投与後5および30分、ならびに1、2、4、8、24、32、48、72、96、144および168時間を包含した。凝固活性(aPTT)およびFVIIIFc血漿濃度に関する血液採取は、WBCTに関する上記の時点、ならびに用量投与後15分および3、6、12時間を包含した。
【0116】
ReFacto(登録商標)(イヌM12に関しては114 IU/kg、イヌM38に関しては120 IU/kg)を静脈内投与する第二試験を実行した。凝固時間が≧20分になるまで(FVIII:C>1%と一致)WBCTを測定し、次いで、125 IU/kgのrFVIIIFcを同一イヌに静脈内投与して、WBCT、aPTT、FVIIIFc、血漿濃度、血液学的および血清化学に関して血液試料を採取した。WBCTに関する時点は、用量投与前、用量投与後5および30分、ならびに1、2、4、8、24、32、48、72時間を包含した。FVIIIFcを用量投与後96、120、144および168時間にも、血液を採取した。凝固活性(aPTT)およびFVIIIFc血漿濃度に関する血液採取は、WBCTに関する上記の時点、ならびに用量投与後15分および3、6、12時間を包含した。
【0117】
血友病AイヌにおけるWBCT手順は、血友病Aマウスの場合とはわずかに異なった。rFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)を用量投与後に、種々の時点で1mLの血液を採取し、0.5mLを2つのシリコン処理ガラス管中に配分し、その後、これを28℃水浴中に入れた。1分で開始して、一方の試験管を30秒毎に上下に揺すり、第二試験管は静置したままであった。揺すった試験管中に血餅が生じたら、次に第二試験管を、血餅が形成するまで30秒毎に上下に揺すった。第二試験管中の完全ゲル化血餅までの時間を、WBCTとして記録した。
【0118】
血漿中FVIII活性
FVIII特異的色素生成検定による血漿中のFVIII活性の測定
Sysmex CA1500計器およびSiemans Healthcare Diagnostics(Dallas, TX;キット番号B4238−40)からの試薬を用いて、自動発色法により、FVIII活性に関して血漿試料を試験した。1.5〜0.016 IU/mLの範囲の濃度でヒトFVIII欠失血漿(Stago USA)中に加えた第7次国際標準因子FVIII濃縮物(NIBSC コード 99/678)を用いて作成した標準曲線を用いて、rFVIIIFcの活性を確定した。
【0119】
ELISAによるrFVIIIFcまたはFVIIIの測定
ELISAによるイヌ血漿中のFVIIIFc
A1ドメインに特異的なFVIII抗体(Green Mountain Antibodies:GMA−8002)を96ウェルプレート上に被覆し、37℃で1時間インキュベートした。被覆プレートを、室温で1時間、トゥイーン20、CaClおよびウシ血清アルブミンを含有するトリス緩衝化生理食塩水で遮断して、次に、正常イヌ血漿中に調製された標準、対照および試料を、1:10希釈し、次いで、プレートに付加して、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次に、ロバ(F(ab)’)抗ヒトFc−HRP(Jackson:709−036−098)を付加して、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB(BioFx超高感度基質:TMBS−0100−01)をプレートに付加し、酸で基質反応をクエンチして、SpectraMax Plusプレート読取機(Molecular Devices)で450nmで、吸光度を測定した。
【0120】
ELISAによるイヌ血漿中ReFacto(登録商標)
重鎖上のA1ドメインに特異的な抗FVIII抗体(Green Mountain Antibodies:GMA−8002)を96ウェルプレート上に被覆し、室温で2時間インキュベートした。被覆プレートを、37℃で1時間遮断し、洗浄後、標準、対照および試料を正常イヌ血漿中で調製し、次いで1:10希釈し、プレートに付加して、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次に、検出抗体、予備希釈抗FVIIIホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体(Affinity Biologicals:F8C−EIA−D)で処理して、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB(BioFx超高感度基質:TMBS−0100−01)をプレートに10分間付加した。酸で基質反応をクエンチして、SpectraMax Plusプレート読取機(Molecular Devices)で450nmの波長で、シグナルを測定した。
【0121】
フィブリノーゲンの測定
メーカーの使用説明書に従って、HemosIL(商標)PT−フィブリノーゲン−HS試薬(ILL, MA、カタログ番号0008468210)およびACL 7000凝固分析器(Beckman Coulter)を含有するキットを用いて、Esoterix(Research Triangle Park, NC)で、血漿中のフィブリノーゲンの濃度を測定した。
【0122】
血小板の測定
種特異的スマートカードでプログラムされたVet−ABC−Diff血液学分析器(SCIL Animal Care Co., Gurnee, IL)を用いて、自動化方法により、EDTA抗凝固化全血で血小板を計数した。
【0123】
薬物動態学的分析
PharsightからのWinNonlinソフトウェア、バージョン5.2(Mountain View, Ca)を用いて、非分画解析により、薬物動態パラメーターを算定した。PKパラメーターは、血漿中最大濃度(Cmax)、血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)、排出半減期(t1/2)、配分の容積(Vss)およびクリアランス(Cl)を包含した。
【0124】
結果
組換えFVIII−Fc
rFVIIIFcは、介在リンカー配列を有さないヒトBドメイン欠失FVIIIとヒトIgG1からのFcとの組換え融合物である(rFVIIIFc:図1)。
【0125】
精製rFVIIIFcは、色素生成活性検定を用いて測定した場合、約9000 IU/mgの特異的活性を有する。組換えBドメイン欠失FVIII(ReFacto(登録商標))は、9110〜13700 IU/mgという報告された特異的活性を有する。FVIIIFcとReFacto(登録商標)との間のサイズ差(それぞれ216 kDaおよび170 kDa)を考慮するためのIU/nmolへの特異的活性の変換は、2つのタンパク質がほぼ等価の特異的活性を有する(rFVIIIFcに関しては1970 IU/nmolおよびReFacto(登録商標)に関しては1521〜2287 IU/nmol)、ということを示す。したがって、rFVIIIFcのFVIII活性は、ヒトFVIIIのC末端とヒトFcのN末端との融合による影響を受けない。
【0126】
血友病Aマウスへの投与
単一回50 IU/kg用量のrFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)をFVIII欠損マウス(n=6/群)に静脈内投与した。血液試料を用量投与前および120時間に亘る用量投与後に採取し、WBCTを材料および方法に記載したように決定した。基線WBCTは、60分より大きかった。代表的実験からのデータを、図2および表3に示す。rFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)の用量投与直後に、WBCTを2〜17分に補正した。ReFacto(登録商標)で処置されたマウスからの血液は42時間までに凝固する能力を失ったが、一方、rFVIIIFcで処置された全マウスからの血液は96時間で未だ凝固し、6匹のうちの1匹からの血液は、113時間で凝固していたが、しかし120時間までにはすべてが凝固する能力を失っていた。これらのデータは、rFVIIIFcに関する作用の持続期間は、ReFacto(登録商標)よりも約2〜3時間長い、ということを示唆する。
【0127】
rFVIIIFc、ReFacto(登録商標)またはAdvate(登録商標)(全長組換えFVIII)の色素形成活性を、50 IU/kgの単一回静脈内用量投与後のFVIII欠損マウスで試験した。用量投与前、ならびに投与後8、24,48および72時間に、血液を採取した。FVIII特異的色素形成活性検定を用いて活性を測定した。それを図3に示す。薬物動態パラメーターを、表4に報告する。rFVIIIFcに関する循環半減期は、Advate(登録商標)(7時間)およびReFacto(登録商標)(5時間)と比較して、約1.6〜2倍長かった(11.1時間)。Cmaxは、Advate(登録商標)の0.47±0.30 IU/mLおよびReFacto(登録商標)の0.67±0.44 IU/mLと比較して、rFVIIIFcに関しては1.6±0.36 IU/mLであった。rFVIIIFcの全身曝露は、ReFacto(登録商標)(6.94時間・IU/mL)およびAdvate(登録商標)(3.90時間・IU/mL)と比較して、rFVIIIFc(22.6時間・IU/mL)に関しては顕著に大きく、そして血友病Aマウスにおいては、ReFacto(登録商標)(7.2mL/時間/kg)およびAdvate(登録商標)(12.8時間/mL/kg)の両方と比較して、rFVIIIFcに関するクリアランスは顕著に低かった(2.09 mL/時間/kg)。
【0128】
血友病Aイヌへの投与
rFVIIIFcの薬力学(PD)および薬物動態(PK)を、血友病AイヌのChapel Hillコロニーで試験した。125 IU/kgのrFVIIIFcの単一回静脈内用量投与を、4匹の血友病Aイヌの各々に施して、WBCTは直ちに正常に補正された(図4)。正常イヌにおけるWBCTの範囲は、8〜12分である。約96時間を通してWBCTは20分より低いままであったが、この時間はFVIII:C>1%と一致する。但し、1匹は72時間の間、<20分のWBCTを示した。さらに、aPTTも直ちに正常に補正された(表6)。分子のFVIIIおよびFc部分の両方を検出するよう意図された特異的ELISAを用いて、血漿中のrFVIIIFcの濃度を測定した。血漿濃度対時間曲線を、図5に示す。データのPK分析は、t1/2が15.7±1.7時間であることを示した(表5)。FVIII特異的色素生成活性検定を用いてrFVIIIFcを測定した場合に、同様の結果を得た(t1/2=15.4±0.3時間、表5)。血漿濃度対時間曲線は、両方法を用いて、同様であった(図5および6)。rFVIIIFcに関する特異的活性を用いて活性データをIU/mLからng/mLに変換した場合、ELISAデータとの良好な相関が認められ、それにより、ELISAにより測定されたタンパク質が十分に活性であったことが実証された。
【0129】
rFVIIIFcで処置したイヌのうち2匹は、rFVIIIFc投与の72時間前に、ReFacto(登録商標)の単一回用量投与も受けた(イヌM12は114 IU/kg、イヌM38は120 IU/kg)。WBCTおよびaPTTは、ReFacto(登録商標)の投与直後に、正常に補正された。しかしながら、rFVIIIFcの単一回用量投与後のWBCT正規化は、ReFacto(登録商標)と比較して約2倍長く続いた(図4)。さらに、血漿中のタンパク質濃度をELISAにより測定した場合、rFVIIIFcの血漿半減期(15.7±1.7時間)は、ReFacto(登録商標)(7.0および6.7時間)と比較して、rFVIIIFcに関して約2倍の長さであった(表5)。FVIII特異的色素生成活性により2つの分子を測定した場合、同様の結果を得た。
【0130】
血栓形成性の潜在的危険を査定するために、血小板およびフィブリノーゲンを測定した。rFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)を用量投与後、血小板数および血漿フィブリノーゲン濃度は用量投与前の値から変化しなかった(データは示されていない)。
【0131】
考察
組換えFVIIIFcを、安定的トランスフェクト化細胞株からのヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞中で産生し、細胞培地から精製した。ヒト細胞株中での産生は、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはハムスター乳仔腎臓細胞において産生される一般に市販されているrFVIII製品と比較して、製造に際して有意の変化を示す。この変化についての論理的根拠は、この分子のFVIII部分に必要な翻訳後修飾を実施するよう、最良の備えをヒト細胞は有すると予測される、ということであった。
【0132】
rFVIIIFcおよび組換えBドメイン欠失FVIII(ReFacto(登録商標))に関する分子量の差を考慮するためのIU/nmolへの特異的活性の変換は、特異的活性が両タンパク質に関して同様である(rFVIIIFcに関しては1970 IU/nmolおよびReFacto(登録商標)に関しては1521〜2287 IU/nmol)ことを示した。FVIIIのC1およびC2ドメインは全FVIII活性に不可欠であるリン脂質結合に関与するため、rFVIIIFcに関する特異的活性がFVIIIのC末端とFcのN末端との融合による影響を受けない、ということはやや意外である(Fay, PJ, J. Hematology 83: 103−8 (2006)およびRaut, S, et al., Br. J. Haematol. 107: 323 (1999);これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。
【0133】
血友病Aの処置は、出血症状出現の時点で要求に応じるものであり、あるいは出血の防止のための予防による。オンデマンド治療は依然として高頻度で用いられているが、しかし、予防および関節損傷防止に向かう傾向が認められる(Blanchette P, et al., Haematophilia 2004: 10; 679−683;Manco−Johnson, MJ. Et al., N. Engl. J. Med. 2007; 357: 535−544;これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。患者において1%を上回るFVIII:Cを保持するために、10〜12時間という相対的に短い半減期により、予防のために、一般FVIII製品を2〜3日毎に投与する(Morfini, M, Haemophilia 2003; 9 (suppl 1): 94−99; discussion 100;White GC, et al., Thromb. Haemost. 1997: 77: 660−7;Blanchette, P, et al., J. Thromb. Haemost. 2008 Aug; 6(8): 1319−26;これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。出血からの長期防御を提供する長期作用性FVIII療法は、血友病A患者に関する生活の質の顕著な改善を示す。凝固因子の半減期を延長するための戦略は、他の分子に関して成功しているもの、例えばペギル化(Rostin J. et al., Bioconj. Chem. 2000; 11: 387−96;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、糖PEG化(Stennicke HR, et al., Thromb. Haemost. 2008; 100: 920−8;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、ペギル化リポソームを用いる処方(Spira J, et al., Blood ;2006; 108: 3668−3673; Pan J, et al., Blood 2009; 114: 2802−2811;これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)ならびにアルブミンとの共役(Schulte S., Thromb. Res. 2008; 122 Suppl 4: S14−9;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)を包含する。ペギル化は、クリアランスを低減するためのアプローチを表わすが、しかしながら、in vivoでの修飾の作用は現在のところ知られていない。in vivoでのFVIIIの直接ペギル化の結果は現在のところ未知であるが、一方、ペギル化リポソームを用いて処方されるFVIIIは、臨床的に研究されてきており、出血期間に中等度の影響を及ぼすかまたは全く影響を及ぼさないことを示している(Spira J, et al., Blood ;2006; 108: 3668−3673;Spira J, et al., Thromb. Haemost. 2008 Sep; 100(3): 429−34;これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。
【0134】
FVIIIの半減期を延長するための本発明のアプローチは、FVIIIをIgG1のFcドメインと組換え的に融合することであった。Fcは天然受容体FcRnと結合し、その正常機能は分解からのIgGの保護である。本明細書中に記載される結果は、血友病Aマウスおよび血友病AイヌにおけるrFVIII生成物と比較して、rFVIIIFcの最初の薬物動態および効力特性化を表す。両方の種において、FVIII活性またはELISA(イヌのみ)により測定した場合、rFVIIIFcの半減期はrFVIIIの約2倍であった。これらのデータは、両動物モデルからのWBCT結果とも良好に相関し、すなわち、WBCTに及ぼすrFVIIIFcの作用の持続期間は、ReFacto(登録商標)に比して約2倍の長さであった。イヌにおいて、CmaxおよびクリアランスはrFVIIIFcおよびReFacto(登録商標)に関して同様であったが、しかしAUCおよび定常状態での配分の容積は、それぞれ、ReFacto(登録商標)に比してrFVIIIFcに関しては約1.5倍および2倍であった。この動物モデルにおけるReFacto(登録商標)に関するPKパラメーターは、文献で報告された値と一致する(Brinkhous K, et al., Sem. Thromb. Haemost. 2002; 28: 269−272;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
【0135】
これらの知見がヒトにおける同程度の半減期に言い換えるならば、これは、血友病A患者の処置における有意の進歩を表す。
【0136】
付加的参考文献(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)
【0137】
【数1】

実施例2
本試験の目的は、単一回静脈内用量投与後のカニクイザルにおけるrFVIIIFcおよびBDD−rFVIII(Xyntha(登録商標))の薬物動態および薬力学を確定することであった。
【0138】
材料および方法
rFVIIIFc(Biogen Idec):1.2mg/mLおよび9882 IU/mLの濃度で、凍結液として供給。特異的活性は8235IU/mg。−70℃で保存。それを注射前に希釈。
【0139】
名称:Xyntha(登録商標)(Novis Pharmaceuticals);凍結乾燥粉末として供給。これを、メーカーの使用説明書に従って、525 IU/mLの公称濃度を有する溶液を生じるよう再構成する。メーカーの推奨に従って保存。
【0140】
動物
ニュー・イベリア・リサーチセンター(NIRC)コロニーからのカニクイザルを用い、NIRC(New Iberia, LA)で、承認されたNIRC IACUCプロトコール(APS 2008−8733−058)下で、試験(NIRC試験番号8733−0903)を実行した。
【0141】
健康状態が良好であることが確定された6匹の実験未使用カニクイザル(雄3匹、雌3匹)を、試験に用いた。
【0142】
プロトコールおよびUL Lafayette−NIRC標準操作手順に従って、試験を実施した。
【0143】
試験計画
6匹のサル(雄3匹、雌3匹)の各々に、125 IU/kgでrFVIIIFcを静脈内投与した。交差試験で、125 IU/kgで、同一動物にXyntha(登録商標)(BDD−rFVIII)を静脈内投与した。群1動物(n=3)は、0日目にXynthaを、3日目にrFVIIIFcを摂取したが、一方、群2動物(n=3)は、0日目にrFVIIIFcを、その後、4日目にXynthaを摂取した。群2に関しては用量投与間の付加的な日は、計画基線レベルより低く低減するのに十分な時間をrFVIIIFcが有したことを保証するためであった。ELISAならびにFVIII特異的色素生成活性検定によるrFVIIIFcまたはXynthaの測定のために、用量投与前、用量投与後0.25、4、12、24、36、48および72時間目に、各動物から、10分の1容積3.2%クエン酸ナトリウム中に血漿に関して血液を採取した。
【0144】
血漿中のrFVIIIFcおよびFVIIIを測定するためのELISA
サル血漿中のrFVIIIFcの測定方法
サル血漿中のrFVIIIFcを定量するために、この酵素結合免疫吸着検定(ELISA)を設計する。このELISA法では、Bethyl Laboratoriesからのヤギ抗ヒトIgG−(H+L)抗体(サル、吸着)(カタログ番号A80−319A)を、被覆緩衝液中に希釈し、96ウェル微量滴定試料プレート上に固定した。プレートを吸引し、37℃で2時間、遮断緩衝液(3%BSA/1×トリス)を付加することにより、すべての非吸着部位を遮断する。血漿試料を高カルシウム試料希釈緩衝液(3%無脂肪乾燥ミルク/TBST、30mMのCaClを含有)で1:20に希釈し、試料プレート上に分配する。プレートを、37℃で約2時間、インキュベートする。その後、プレートを洗浄し、Green Mountain Antibodiesからのマウス抗Bドメイン欠失(α.BDDA1)因子VIII(A1ドメイン)抗体(カタログ番号GMA−8002)をプレートに付加し、37℃で約1時間インキュベートする。プレートを洗浄後、Southern BiotechからのHRP共役ヤギ抗マウスIgG2a抗体(カタログ番号1080−05)をプレートに付加し、室温で約30分間インキュベートする。プレートを再び洗浄し、テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質溶液を付加し、室温で約30分間インキュベートする。非酸性停止溶液の付加により、反応を停止する。試料中のrFVIIIFcの量に比例して、発色する。単一検出波長650nmを用いて、吸光度プレート読取機でプレートを読取る。4−パラメーター・ロジスティック曲線当てはめプログラムを用いて、光学密度(OD)対濃度をプロットすることにより得られる標準曲線で、rFVIIIFc濃度を決定する。この方法の較正曲線範囲は、5%サル血漿中で0.400ng/mL〜51.2ng/mL(100%サル血漿中では8.00ng/mL〜1024ng/mL)である。5%サル血漿中で0.200ng/mLでの検定の適格範囲外の一較正物質が含まれて、曲線当てはめを促すためのアンカーポイントとして役立ち得る。曲線の最適当てはめに基づいて、アンカーポイントが除去されるかまたは保持される(すなわち、最高数の標準が限定精度内で読取る、%RE)。
【0145】
サル血漿中のFVIIIを測定する方法
サル血漿中のFVIIIを定量するために、この酵素結合免疫吸着検定(ELISA)を設計する。このELISA法では、Green Mountain AntibodiesからのマウスαBDDA1 FVIII抗体(カタログ番号GMA−8002)を被覆緩衝液中に希釈し、96ウェル微量滴定試料プレート上に固定した。プレートを吸引し、37℃で1時間、遮断緩衝液(3%BST/1×トリス)を付加することにより、すべての非吸着部位を遮断する。血漿試料を高カルシウム試料希釈緩衝液(100mMのCaClを含有する遮断緩衝液)で1:20に希釈し、試料プレート上に分配する。プレートを、37℃で約2時間、インキュベートする。プレートを洗浄後、Affinity Biologicals Kitからの検出抗体、HRP標識ポリクローナル抗体(カタログ番号F8C−EIA−D)をTBS/0.05%トゥイーン20中でさらに希釈し、プレートに付加し、室温で約1時間インキュベートする。プレートを再び洗浄し、テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質溶液を付加し、室温で約30分間インキュベートする。酸性停止溶液の付加により、反応を停止する。試料中のFVIIIFcの量に比例して、発色する。単一検出波長450nmを用いて、吸光度プレート読取機でプレートを読取る。4−パラメーター・ロジスティック曲線当てはめプログラムを用いて、光学密度(OD)対濃度をプロットすることにより得られる標準曲線で、FVIII濃度を決定する。この方法の較正曲線範囲は、5%サル血漿中で0.625ng/mL〜20ng/mL(100%サル血漿中では12.5ng/mL〜400ng/mL)である。5%サル血漿中で0.313および0.156ng/mLでの検定の適格範囲外の2較正物質が含まれて、曲線当てはめを促すためのアンカーポイントとして役立ち得る。曲線の最適当てはめに基づいて、アンカーポイントが除去されるかまたは保持される(すなわち、最高数の標準が限定精度内で読取る、%RE)。
【0146】
FVIII特異的色素生成検定
カニクイザル血漿試料中のFVIII活性を投与用量に基づいて概算し、次いで、ヒトFVIII欠失血漿(Diagnostica Stago)中で約0.25〜1 IU/mlに希釈した。FVIII色素生成キット(Siemens)を用いて、Sysmex CA1500(Siemens Diagnostic Healthcare)で試料を分析した。この色素生成検定では、血漿試料中のrFVIIIFcをトロンビンにより活性化する。次に、活性化因子VIII(FVIIIa)は、活性化因子IX(FIXa)、リン脂質(PL)およびカルシウムイオンの存在下で、第X因子(FX)の第Xa因子(FXa)への転換を促す。FXaに特異的なp−ニトロアニリド基質の加水分解により、FXa活性を査定する。405nmで測定されるp−ニトロアニリン(pNA)の放出の初期速度はFXa活性に比例し、したがって、試料中のFVIII活性に比例する。この検定におけるrFVIIIFcによるFVIII活性の定量限界は、〜0.3 IU/mlである。検定は、±20%の精度で約0.06 IU/mlの下限より低い総FVIII活性を測定し得る。個々の動物に関する用量投与前試料の算定活性を各時点での値から差し引いて、PD曲線(FVIII活性対時間)を作成した。
【0147】
ヒトFVIII欠損血漿中に1 IU/mlに希釈されたNIBSC 第7次国際標準因子FVIII濃縮物から、標準曲線を作成した。6A19準曲線をSysmex機器で順次希釈して、0.15、0.1、0.05、0.025、0.0053および0.0026 IU/mlの濃度を得た。機器は内部にすべての試料を1:10希釈するため、FVIII標準濃度は、1.5〜0.026 IU/mlの血漿濃度に対応し、これが測定され得るFVIII活性の範囲である。
【0148】
PK解析
WinNonlinソフトウェアプログラム(バージョン5.2;Pharsight Corporation, Mountain View, CA)で、非分画解析モジュールを用いて、濃度時間プロフィールを評価した。
【0149】
結果
分子のFVIIIおよびFc部分の両方を測定するサンドイッチELISAフォーマットを用いて、サル血漿中のrFVIIIFcの濃度を測定した。データを表7に報告する。用量投与前試料はすべて、定量限界より低かった。図7は、長時間に亘る群平均rFVIIIFcおよびXyntha血漿濃度を示す。個々の血漿濃度対時間曲線を、図8に示す。rFVIIIFcおよびXynthaに関するPKパラメーターの要約を、それぞれ表9および10に示す。rFVIIIFcに関する平均t1/2は11.9±1.7時間(9.3〜14.1時間の範囲)であり、そしてXynthaに関しては、平均排出t1/2は12.7±4.4時間(9.2〜19.9時間の範囲)であった。
【0150】
FVIII特異的色素生成活性検定を用いて、FVIII活性を測定した。データを表8で報告する。内因性FVIIIによる用量投与前活性を、全試料から差し引いた。平均群データのグラフを、図9に示す。個々の血漿濃度対時間曲線を図10に示す。rFVIIIFcおよびXynthaに関するPKパラメーターの要約を、それぞれ表9および10に示す。rFVIIIFcに関する平均t1/2は16.1±6.9時間(11.6〜29.4時間の範囲)であり、そしてXynthaに関しては12.5±1.7時間(10.4〜14.3時間の範囲)であった。
【0151】
考察および結論
排出半減期は、125 IU/kgの単一回静脈内用量投与後のrFVIIIFcおよびXynthaでほぼ同じであった。
【0152】

実施例3
これは、重症(<1 IU/dL [1%]内因性因子VIII[FVIII])血友病Aを有する被験体におけるrFVIIIFcの単一回用量投与の安全性、耐容性および薬物動態を評価するよう意図されたI/IIa相・非盲検・交差・用量増加・マルチセンターおよびヒト初回試験である。合計約12名の治療歴のある患者を登録し、25または65 IU/kgでrFVIIIFcを投与する。スクリーニング(参照比較物質であるAdvate(登録商標)[rFVIII]の初回投与前28日以内に計画予定)ならびに初回注射前に無FVIII処置で最低4日(96時間)経過後、約6名の被験体がAdvate(登録商標)の単一回25 IU/kg用量投与を受けて、その後、3日間(72時間)薬物動態(PK)プロフィールを、次いで交差試験を受けて、7日間(168時間)PKプロファイリングのためのrFVIIIFcの25 IU/kg単一回、非盲検用量投与を受けた。最初の3名の被験体には、順次用量投与する。25 IU/kgのrFVIIIFcを用量投与した最初の3名の被験体に関しては、各被験体はrFVIIIFcの注射後14日目(336時間)に阻害剤査定を受ける。次の被験体(最初の3名の被験体のみに関して)の用量投与は、一旦、阻害剤試験が完了したら、行なう。3番目の被験体が14日阻害剤査定を完了した後、残りの3名の被験体(25 IU/kg)および6名の被験体(65 IU/kg)が、各用量群内で、少なくとも1日は離して逐次的に、加入し始める。
【0153】
最後の被験体が25 IU/kg用量のrFVIIIFcを摂取した1週間後に、約6名の独自の被験体が65 IU/kgコホートのために動員される。65 IU/kgコホート中の各被験体は、65 IU/kg用量のAdvate(登録商標)を、その後、4日(96時間)PKプロファイリングと次いで交差試験を受け、そして10日間(240時間)プロファイリングのためのrFVIIIFcの65 IU/kg単一回非盲検用量を摂取する。任意のコホートにおいてrFVIIIFcの初回注射前に出血症状出現が起きた場合には、被験体の予備試験FVIII製品を処置のために用いて、少なくとも4日の間隔を置いた後にPKプロフィールのためのrFVIIIFcの最初の注射を施さなければならない。
【0154】
全被験体が、安全のために、rFVIIIFc 25 IU/kgまたは65 IU/kgの投与後、14日(336時間)および28日安全性評価期間の間、追跡調査される。全被験体が、意図された時点でのFVIII活性の分析のための血液試料とともに、用量投与の前および後に、薬物動態用試料採取を受ける。
【0155】
実施例4
Xアーゼ複合体内の活性
FVIIIタンパク質(rBDD FVIIIおよびrFVIIIFc)とFIXaとの結合を調べるために、そしてFXを活性化するこれらのタンパク質の能力を測定するために、動態試験を実施して、Xアーゼ複合体の状況でのこれらの相互作用を検査した。この検定は、カルシウムの存在下でのリン脂質表面での活性化FIXおよび活性化rBDD FVIIIまたはrFVIIIFcタンパク質とのXアーゼ複合体の形成を、ならびに色素生成または蛍光発生性基質の切断により測定した場合のFXのFXaへの転換をモニタリングすることを包含した。
【0156】
要するに、FVIIIを先ず、α−トロンビンで5分間活性化して、次に、Ca2+および合成リン脂質小胞(25%ホスファチジルセリン(PS)/75%ホスファチジルコリン(PC))または血小板の存在下で、FIXaと混合する。下記の条件下で、FVIIIaおよびFIXaは、リン脂質表面およびカルシウムイオンの存在下で相互作用して、活性Xアーゼ複合体を形成し、これが、タンパク質分解性プロセシングによるFXのFXaへの転換を媒介する。FXaがFXa特異的な色素生成性または蛍光発生性の基質を切断する。切断基質は色素生成性であり、したがって、溶液中の切断基質の量は生成されたFXaの量を示す。これは、405nmでの溶液の吸光度を測定することにより定量される。
【0157】
A.第X因子の活性化
FXを活性化するrBDD FVIIIおよびrFVIIIFcの能力を、上記のXアーゼ複合体の状況で試験した。トロンビン活性化FVIIIタンパク質を、カルシウムの存在下でFIXaおよびリン脂質とともにインキュベートし、次いで、FX特異的基質の存在下で異なる濃度のFXに付加して、FXa生成の速度を確定した(図11)。
【0158】
これらのデータに基づいて、Xアーゼ複合体の状況での異なるFVIIIタンパク質に関するKmおよびVmaxを算定した(Chang 1997)(表11)。6つの分析物(二重反復実行を含有する3つの実験)の平均±対応する標準偏差、として、データを表す。これらのデータに基づいて、これらのタンパク質(rBDD FVIIIおよびrFVIIIFc)は、検定の変化量内で、匹敵するKmおよびVmax値を有することが判明した。したがって、リン脂質との相互作用およびFX活性化の能力に関して、rFVIIIFcを用いて形成されるXアーゼ複合体は、認可製品rBDD FVIII(ReFacto)を用いて形成されるXアーゼ複合体と同様に振舞う。これらの匹敵するデータは、rFVIIIFcが、トロンビンとともに短時間インキュベートされた後にrBDD FVIIIと匹敵する程度に活性化されることも実証する、ということに留意されたい。
【0159】
B.FIXaとの相互作用
rBDD FVIIIおよびrFVIIIFcとFIXaとの相互作用も、Xアーゼ複合体の状況で調べた。Xアーゼ複合体は、一定量のFXおよび種々のFIXaレベルを用いて、上記のように集合され、そしてFXa生成速度が決定される(図12)。これらのデータから、FIXaに対するFVIIIタンパク質の両方を用いて形成されるXアーゼ複合体に関するKd値を確定する(Chang 1997)。6つの分析物(二重反復実行を含有する3つの実験)の平均±対応する標準偏差、として、データを表す(表12)。両タンパク質は同様のKdおよびVmax値を有することが判明したが、これは、rFVIIIFcが認可rBDD FVIII製品と同様のFIXaとの匹敵する相互作用を有する、ということを示す。
【0160】
実施例5
実施例3で考察したI/IIa相臨床試験に関する暫定薬物動態データは、FVIIIFcに関する下記の結果を実証した。FVIIIFcは、ADVATE(全長rFVIII)と比較して、全身曝露(AUCINF)の約50%増、クリアランス(Cl)の約50%減、ならびに排出半減期およびMRTの約50〜70%増を示した。さらに、FVIIIFcは、ADVATEと比較して、C168、TBLP1、TBLP3およびTBLP5値の増大を示した。
【0161】
AUCINF :ゼロから無限までの濃度−時間曲線下面積
ベータHL :排出相半減期;t1/2βとしても言及される
C168 :用量投与後約168時間での基線を上回る概算FVIIIFc活性
Cl :クリアランス
MRT :平均滞留時間
TBLP1 :FVIIIFc活性が基線を上回る約1 IU/dLに減少した場合の用量投与後のモデル予測時間
TBLP3 :FVIIIFc活性が基線を上回る約3 IU/dLに減少した場合の用量投与後のモデル予測時間
TBLP5 :FVIIIFc活性が基線を上回る約5 IU/dLに減少した場合の用量投与後のモデル予測時間
実施例6
組換えBドメイン欠失因子VIII−Fc(rFVIIIFc)融合タンパク質は、FVIIIの半減期を延長するためのアプローチとして作製されてきた。rFVIIIFcの薬物動態(PK)を、血友病AマウスにおいてrFVIIIと比較した。終末半減期は、rFVIIIと比較してrFVIIIFcに関しては2倍長い、ということが判明した。半減期の延長に関する根本的機序がFcRnによるrFVIIIFcの保護のためであることを確証するために、FcRnノックアウトおよびヒトFcRnトランスジェニックマウスにおいて、PKを評価した。単一回静脈内用量(125 IU/kg)を投与して、色素生成活性検定を用いて血漿濃度を測定した。Cmaxは、両マウス系統において、rFVIIIFcおよびrFVIII(XYNTHA(登録商標))間で同様であった。しかしながらrFVIIIFcに関する半減期はFcRnノックアウトマウスにおいてはrFVIIIのものに匹敵したが、一方、rFVIIIFcに関する半減期は、hFcRnトランスジェニックマウスにおいてはrFVIIIより約2倍長く延長された。これらの結果は、FcRnが、rFVIIIと比較した場合、rFVIIIFcの半減期延長を媒介するかまたはそれに関与する、ということを確証する。回転血栓弾性測定法(ROTEM)により測定される全血の血流遮断は、血友病マウスの出血モデルにおける、ならびに臨床的適用において、凝固因子の効力と相関することが示されているため、ROTEMを用いて血友病AマウスにおけるrFVIIIFcのex vivo効力を評価しようとした。血友病Aマウスに、50 IU/kg rFVIIIFc、XYNTHA(登録商標)(FVIII)またはADVATE(登録商標)(FVIII)の単一回静脈内用量投与を施した。用量投与の5分後、血餅形成は、凝固時間(CT)、血餅形成時間(CFT)およびα角に関して同様であった。しかしながら、rFVIIIFcは、用量投与後72および96時間にCTの有意の改善を示し、そしてCFTおよびα角も、rFVIIIFcのPK延長と一致して、XYNTHA(登録商標)(FVIII)およびADVATE(登録商標)(FVIII)の両方に比して96時間で改善された。したがって、FVIIIのFc融合物の構築は、半減期増大と出血からの防御延長を提供する能力を有する作用の明示された機序を有する分子を産生する。
【0162】
実施例7
この実施例は、25および65 IU/kgのFVIII製品で処置された患者16名からのFVIII活性に関する最終分析結果を示す。実施例3および5参照。
【0163】
この実施例において、rFVIIIFcは、ヒトIgG1の二量体Fcドメインと融合される組換えBドメイン欠失ヒトFVIII(BDD−rFVIII)の単一分子からなる組換え融合タンパク質であって、介在リンカー配列を有さない。このタンパク質構築物は、本明細書中では、rFVIIIFcへテロ二量体ハイブリッドタンパク質、FVIIIFc単量体Fc融合タンパク質、FVIIIFc単量体ハイブリッド、単量体FVIIIFcハイブリッドおよびFVIIIFc単量体−二量体とも呼ばれる。図1および表2A参照。
【0164】
rFVIIIFcを用いる前臨床試験は、市販のrFVIII製品と比較して、rFVIII活性の半減期の約2倍の延長を示している。この試験の論理的根拠は、凍結液体処方物中のrFVIIIFcの単一回用量投与の安全性および耐容性を評価し、重症血友病A被験体におけるPKに関するデータを提供することである。この試験に関して、16名の評価可能被験体が、PK評価のために利用可能であった。25(n=6)および65 IU/体重1kg(n=10)の公称用量でのrFVIIIFcおよびAdvateの両方の2つの用量の単一回投与を、約10分間に亘って静脈内に注入した。血漿PK査定のための血液試料を、注入前に、ならびに用量投与後10日までに入手した。AdvateおよびrFVIIIFcの両方に関するFVIII活性のPKを、モデル依存的方法を用いて、この試験で特性化した。
【0165】
目的
この試験の第一の目的は、重症血友病Aを有する年齢12歳以上の治療歴のある患者(PTP)における2つの用量のrFVIIIFc(25および65 IU/kg)の単一回投与の安全性および耐容性を査定することであった。
【0166】
第二の目的は、一段階凝固および色素生成検定においてAdvate(登録商標)と比較した場合の25または65 IU/kgのrFVIIIFcの単一回投与後、長時間に亘るFVIIIの薬力学(PD)的活性により確定される薬物動態(PK)パラメーターを決定することであった。
【0167】
試験計画(実施例3参照)
スクリーニング来院時(Advateの用量投与前28日以内);注射前(Advateの注射)0日目ならびに注射後10および30分ならびに1、3、6および9時間目に;Advateの注射後24時間での1日目に;Advateの注射後48時間での2日目に;Advateの注射後72時間での3日目に;高用量のAdvateの投与後96時間での4日目に(コホートBのみ)、FVIII活性PK評価のために、血液試料を採取した。
【0168】
rFVIIIFcの投与の直前、rFVIIIFcの注射後10および30分ならびに1、3、6および9時間目のrFVIIIFc注射当日に;rFVIIIFcの注射後24時間での1日目に;rFVIIIFcの注射後48、72、96および120時間での2〜5日目に;rFVIIIFcの注射後168時間での7日目に;高用量のrFVIIIFcの投与後192、216および240時間での8、9および10日目に(コホートBのみ)、FVIII活性PK評価のために、血液試料を採取した。rFVIIIFcの注射後672時間での最終試験来院時(rFVIIIFcの注射後28日目)にも、FVIII活性を測定した。
【0169】
薬物動態モデリングおよび算定
略号
TBLP1=FVIII活性が、基線を越えた約1 IU/dLに減少した場合の用量投与後のモデル予測時間。
【0170】

TBLP3=FVIII活性が、基線を越えた約3 IU/dLに減少した場合の用量投与後のモデル予測時間。
【0171】

KV_M=Cmax_M/実用量(IU/kg)

KV_OB=Cmax_OB/実用量(IU/kg)

IVR_M=100×Cmax_M×血漿容積(dL)/総用量(IU);ここで、血漿溶積(mL)=(23.7×体長(cm))+(9.0×体重(kg))−1709。
【0172】

IVR_OB=100×Cmax_OB×血漿容積(dL)/総用量(IU);ここで、血漿容積(mL)=(23.7×体長(cm))+(9.0×体重(kg))−1709。
【0173】

結果
図13. 観察群平均(+SE)FVIII活性対時間プロフィール。用量レベルにより類別。化合物により群分け(1段階検定;25 IU/kg(A)および65 IU/kg(B)ならびに色素生成検定;25 IU/kg(C)および65 IU/kg(D))。
【0174】
図14. 観察群平均(+SE)FVIII活性対時間プロフィール。用量レベルおよび化合物により群分け(1段階検定;A)(色素生成検定;B)。
【0175】
単一回用量投与薬物動態(一段階検定)
観察FVIII活性は、AdvateまたはrFVIIIFcの短時間IV注入後に急に増大し、平均(±SD)モデル予測Cmax値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては56.6±4.74および121±28.2 IU/dLであり、rFVIIIFcに関しては55.6±8.18および108±16.9 IU/dLであった。AdvateおよびrFVIIIFc処置患者はすべて、FVIII活性の用量関連増大を示した。CmaxおよびAUCINFの両方において観察された増大は、評価された用量範囲を上回る用量に比例するよりわずかに低かった。
【0176】
注入終了後、観察FVIII活性の減少は、基線レベルに到達するまで、単一指数関数型崩壊特性を示した。FVIII活性における減少速度は、Advateに関するものよりrFVIIIFcに関する方が低く、平均(±SD)モデル予測排出半減期値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては11.9±2.98および10.4±3.03時間、ならびにrFVIIIFcに関しては18.0±3.88および18.4±6.99時間であった。排出半減期値は、両FVIII製品に関して評価された用量範囲全体で用量非依存性であると思われた。
【0177】
総全身FVIII曝露(AUCINFにより査定)は、それぞれ25および65 IU/kg用量レベルで、AdvateよりrFVIIIFc投与後に〜48%および61%大きかった。平均(±SD)モデル予測AUCINF値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては974±259および1810±606時間IU/dLであり、rFVIIIFcに関しては1440±316および2910±1320時間IU/dLであった。
【0178】
排出半減期と同様に、MRTはAdvateに比してrFVIIIFcに関して延長された。平均(±SD)モデル予測MRT値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては17.1±4.29および14.9±4.38時間、ならびにrFVIIIFcに関しては25.9±5.60および26.5±10.1時間であった。MRT値は、両FVIII製品に関して評価された用量範囲全体で用量非依存性であると思われた。
【0179】
さらに、CLおよびVに関する第一PKパラメーター値を決定した。rFVIIIFcに関するCL値は単に、等価用量でのAdvateに関して観察された値の〜66%を占めるだけであった。平均(±SD)モデル予測CL値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.70±0.729および4.08±1.69 mL/時間/kg、ならびにrFVIIIFcに関しては1.80±0.409および2.69±1.25 mL/時間/kgであった。V値は、AdvateおよびrFVIIIFc間で似ており、平均(±SD)モデル予測V値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては43.9±4.27および56.1±13.4 mL/kg、ならびにrFVIIIFcに関しては45.3±7.23および61.6±10.6 mL/kgであった。AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って、平均CLおよびV値のわずかな増大が認められた;しかしながら、用量レベル限定と結び付けて考えられる65 IU/kg用量での標準偏差の増大は、これらのパラメーターの用量依存性の査定を混乱させた。例えばrFVIIIFc処置群に関するCV%幾何学平均CL値は、23.0%(25 IU/kg)から48.6%(65 IU/kg)に増大した。
【0180】
第一PKパラメーターのほかに、第二PKパラメーター(例えば、K値、IVR等)を確定して、作用のFVIII持続期間を評価した。PK差の証拠もrFVIIIFcで観察されたが、これは、等価用量でのAdvateと比較した場合のTBLP1およびTBLP3値の増大を実証する。AdvateおよびrFVIIIFcに関するIVRおよびK値は、似ていると考えられた。TBLP1およびTBLP3のわずかな増大が、AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って観察された。これに対して、平均IVRおよびK値のわずかな減少が、AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って認められた。前記のように、これらのパラメーターの用量依存性の査定は、限定用量レベルにより混乱させられる。
【0181】
平均(±SD)観察TBLP1は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.88±0.733および2.93±0.848 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては4.28±0.873および5.16±2.02 IU/dL(IU/kg当たり)であった。平均(±SD)観察TBLP3は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.06±0.527および2.26±0.666 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては3.09±0.623および3.93±1.59 IU/dL(IU/kg当たり)であった。
【0182】
観察Cmax値を用いて算定される平均IVRおよびK値(モデル内の基線および残留薬剤を差し引く)は、一般的に、モデル予測Cmax値を用いて決定される値より大きかった;1分画モデルを用いて観察されるピーク活性よりわずかに低い概算値と一致する。平均(±SD)観察K値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.57±0.198および2.13±0.598 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては2.46±0.330および1.85±0.332 IU/dL(IU/kg当たり)であった。平均(±SD)観察IVR値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては94.1±15.6および85.8±16.5%、ならびにrFVIIIFcに関しては89.5±11.9および74.8±6.72%であった。
【0183】
単一回用量投与薬物動態(色素生成検定)
観察FVIII活性は、AdvateまたはrFVIIIFcの短時間IV注入後に急に増大し、平均(±SD)モデル予測Cmax値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては70.2±9.60および157±38.6 IU/dLであり、rFVIIIFcに関しては70.3±10.0および158±34.7 IU/dLであった。
【0184】
AdvateおよびrFVIIIFc処置患者はすべて、FVIII活性の用量関連増大を示した。CmaxおよびAUCINFの両方において観察された増大は、評価された用量範囲を上回る用量に比例するよりわずかに低かった。
【0185】
注入終了後、観察FVIII活性の減少は、基線レベルに到達するまで、単一指数関数型崩壊特性を示した。FVIIIにおける減少速度は、Advateに関するものよりrFVIIIFcに関する方が低く、平均(±SD)モデル予測排出半減期値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては10.7±1.98および10.3±3.27時間、ならびにrFVIIIFcに関しては16.2±2.92および19.0±7.94時間であった。排出半減期値は、両FVIII製品に関して評価された用量範囲全体で用量非依存性であると思われた。
【0186】
総全身FVIII曝露(AUCINFにより査定)は、それぞれ25および65 IU/kg用量レベルで、AdvateよりrFVIIIFc投与後に〜53%および84%大きかった。平均(±SD)モデル予測AUCINF値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては1080±236および2320±784時間IU/dLであり、rFVIIIFcに関しては1650±408および4280±1860時間IU/dLであった。
【0187】
排出半減期と同様に、MRTはAdvateに比してrFVIIIFcに関して延長された。平均(±SD)モデル予測MRT値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては15.3±2.86および14.8±4.72時間、ならびにrFVIIIFcに関しては23.4±4.22および27.3±11.4時間であった。MRT値は、両FVIII製品に関して評価された用量範囲全体で用量非依存性であると思われた。
【0188】
さらに、CLおよびVに関する第一PKパラメーター値を決定した。rFVIIIFcに関するCL値は単に、等価用量でのAdvateに関して観察された値の〜58−66%を占めるだけであった。平均(±SD)モデル予測CL値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.39±0.527および3.21±1.40 mL/時間/kg、ならびにrFVIIIFcに関しては1.57±0.349および1.86±0.970 mL/時間/kgであった。V値は、AdvateおよびrFVIIIFc間で似ており、平均(±SD)モデル予測V値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては35.8±5.52および43.6±11.2 mL/kg、ならびにrFVIIIFcに関しては35.9±6.65および42.7±8.91 mL/kgであった。AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って、平均CLおよびV値の増大が認められた;しかしながら、用量レベル限定と結び付けて考えられる65 IU/kg用量での標準偏差の増大は、これらのパラメーターの用量依存性の査定を混乱させた。
【0189】
第一PKパラメーターのほかに、第二PKパラメーター(例えば、K値、IVR等)を確定して、作用のFVIII持続期間を評価した。PK差の証拠もrFVIIIFcで観察されたが、これは、等価用量でのAdvateと比較した場合のTBLP1およびTBLP3値の増大を実証する。AdvateおよびrFVIIIFcに関するIVRおよびK値は、似ていると考えられた。
【0190】
TBLP1およびTBLP3のわずかな増大が、AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って観察された。これに対して、平均IVRおよびK値のわずかな減少が、AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って認められた。前記のように、これらのパラメーターの用量依存性の査定は、限定用量レベルにより混乱させられる。
【0191】
平均(±SD)観察TBLP1は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては2.70±0.511および3.09±0.978 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては4.06±0.798および5.66±2.38 IU/dL(IU/kg当たり)であった。平均(±SD)観察TBLP3は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては1.98±0.377および2.39±0.718 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては3.04±0.598および4.44±1.84 IU/dL(IU/kg当たり)であった。
【0192】
観察Cmax値を用いて算定される平均IVRおよびK値(モデル内の基線および残留薬剤を差し引く)は、一般的に、モデル予測Cmax値を用いて決定される値より大きかった;1分画モデルを用いて観察されるピーク活性よりわずかに低い概算値と一致する。平均(±SD)観察K値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては3.08±0.429および2.85±0.721 IU/dL(IU/kg当たり)、ならびにrFVIIIFcに関しては3.12±0.451および2.92±0.985 IU/dL(IU/kg当たり)であった。平均(±SD)観察IVR値は、25および65 IU/kg用量群に関してそれぞれ、Advateに関しては112±14.5および116±26.9%、ならびにrFVIIIFcに関しては113±16.3および117±33.6%であった。
【0193】
結論
AdvateおよびrFVIIIFc処置患者はすべて、評価された用量範囲全体でCmaxおよびAUCINFの匹敵する用量関連性増大を示した。AdvateおよびrFVIIIFc活性のピーク血漿レベルは注入終了後1時間以内に一般的に観察され、用量投与後数日間、依然として検出可能であった。注入終了後、ベースライン補正FVIII活性の減少は、両製品に関して基線レベルに到達するまで、単一指数関数型崩壊特性を示した。排出半減期およびMRTに関するパラメーター値は、両FVIII製品に関して評価された用量範囲全体で用量非依存性であると思われた。AdvateおよびrFVIIIFcの用量増大に伴って、平均CLおよびV値のわずかな増大が認められた;しかしながら、用量レベル限定と結び付けて考えられる65 IU/kg用量での被験体間変動の増大は、これらのパラメーターの用量依存性の査定を混乱させた。
【0194】
rFVIIIFcおよびAdvate活性PKの比較は、匹敵する用量でのAdvateと比較して、rFVIIIFcに関して全身性曝露の約48〜61%(一段階検定)または53〜84%(色素生成検定)増大、クリアランスの約30〜40%低減、排出半減期およびMRTの両方の約50〜80%増大を明示した。PK差の証拠もrFVIIIFcで観察されたが、これは、等価用量でのAdvateと比較した場合のTBLP1およびTBLP3値の増大を実証する。AdvateおよびrFVIIIFcに関するIVRおよびK値は、似ていると考えられた。
【0195】
色素生成検定結果から得られるPKパラメーターは、一般的に、一段階検定からのものと一致したが、但し、色素生成検定はより高い曝露パラメーター(例えばCmax、AUCINF等)概算値を生じた。
【0196】
PKで観察された改善に伴って、rFVIIIFcは出血からの防御延長を提供して、血友病A個体に対する注射頻度を低くし得る。
【0197】
実施例8
rFVIII:Fcのヒトで最初の試験からの暫定PK分析(実施例3)に基づいて、A−LONG試験を計画した。A−LONGは、重症血友病A(<1 IU/dL[<1%]内因性FVIIIと定義される)を有する治療歴のある被験体における出血の防止および処置に際しての組換え因子VIIIFc融合物(FVIII−Fc)の安全性、薬物動態および効力の非盲検マルチセンター評価である。
【0198】
被験体約106名を、3つのレジメンのうちの1つに登録する:目的に合わせた予防レジメン(アーム1)、週投与レジメン(アーム2)および要求に応じたレジメン(アーム3)。
【0199】
アーム1:目的に合わせたレジメン
アーム1は、全群およびPK亜群を包含する。約66名の被験体が登録される。最初のレジメンは、週2回、初日に25 IU/kg、その後、その週の第4日に50 IU/kgである。rFVIIIFcに関するPK結果が得られるまで、被験体はこの週予防レジメンでrFVIIIFcを投与する。この結果に基づいて、各個体に関して目的に合わせた予防レジメンが確立されるが、この場合、用量および間隔は、1〜3%FVIII活性のトラフレベルを保持するよう決定される。次いで、各被験体は、その個々の目的に合わせた予防レジメンを試験中ずっと受ける。
【0200】
被験体は試験全体を通してモニタリングされ、継続中の用量および間隔調整がなされる。調整は、一回り2ヶ月の期間に亘って≧2の特発性出血症状出現と定義される許容不可能な出血症状出現を被験体が経験した場合にのみなされる。この場合、調整は、3〜5%のトラフレベルを目標とする。
【0201】
アーム2:週投与レジメン
約20名の被験体が登録され/無作為化されて、以下のような簡易rFVIIIFc PKプロファイリングを受ける:少なくとも96時間の洗い出し;rFVIIIFc 65 IU/kgの単一回用量投与;0日目にrFVIIIFcで開始して、注射前、ならびに注射開始から10(±2)分、3時間(±15分)、72(±2)時間[第3日]、ならびに96(±2)時間[第4日]を含めた簡易試料採取。簡易PKプロファイリング後、次に被験体は7日毎に65 IU/kgの一定用量投与を受ける。
【0202】
アーム3:要求に応じたレジメン
少なくとも5名の被験体における最低10の主要外科手術を、本試験で評価する。大手術は、全身麻酔および/または呼吸補助を伴う任意の外科的手法(待機または緊急)と定義され、この場合、大きい体腔が貫通され、曝露されるか、あるいは身体的または生理学的機能の実質的減損が生じる(例えば、開腹術、開胸術、開頭術、関節置換術および四肢切断術)。
【0203】
外科手術中の予防のために、被験体は、12〜24時間毎に、35〜50 IU/kgのrFVIIIFcで処置される。手術前に、医者は被験体のrFVIIIFc PKプロフィールを検討し、予定手術の種類ならびに被験体の臨床状態に一般的に必要とされる因子VIII置換の用量投与レジメンを査定する。任意のリハビリ時間を含めた外科的処置期間におけるrFVIIIFcの適切な用量投与のための推奨は、これらの因子を考慮に入れる。
【0204】
この試験の第一の目的は、(a)予防、要求に応じた、および外科的処置レジメンとして施されるrFVIIIFcの安全性および耐容性を評価すること;ならびに(b)予防、要求に応じた、および外科的処置レジメンとして施されるrFVIIIFcの効力を評価することである。この試験の第二の目的は、(a)rFVIIIFcのPKプロフィールを特性化し、FVIIIFcのPKを現行の市販製品であるAdvateと比較すること;(b)FVIIIFcによる個体応答を評価すること;ならびに(c)FVIIIFc消費を評価することである。
【0205】
第一の目的
・予防、週、要求に応じた、および外科的処置レジメンとして施されるrFVIIIFcの安全性および耐容性を評価すること
・予防、要求に応じた、および外科的処置レジメンとして施されるrFVIIIFcの効力を評価すること
第二の目的
・rFVIIIFcのPKプロフィールを特性化し、FVIIIFcのPKを現行の市販製品であるAdvate(登録商標)と比較すること
・rFVIIIFcによる個体応答を評価すること
・予防レジメンにおける出血を適切に防止し;外科的設定における恒常性を保持し;あるいは要求に応じた、週処置または予防設定における出血症状発現を処置するために必要とされる用量およびスケジュールの範囲を特性化すること
・rFVIIIFc消費を評価すること(例えば総年間rFVIIIFc消費量/被験体)。
【0206】
実施例9
臨床的ROTEM査定
実施例8における試験では、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検定による血漿FVIII活性の測定のほかに、全血回転血栓弾性測定(ROTEM)も調べられて、2名の被験体、具体的には、低用量コホート1名および高用量コホート1名におけるrFVIIIFcおよびAdvateによる全般的血流遮断の改善を査定した。
【0207】
rFVIIIFcおよびAdvateは、rFVIIIFc処置前に被験体の血液中に加えた場合、血餅形成において類似的に活性であると思われる。凝固時間(CT)は、市場の約1%〜100%の範囲でrFVIIIFcおよびAdvateの用量に関して線状であり、用量応答は、同一被験体においてrFVIIIFcおよびAdvate間で似ていた。
【0208】
Advateおよびその後のrFVIIIFcの用量投与後、種々の時点でクエン酸処理全血を試料採取し、カルシウム再添加後の血餅形成をROTEMによりモニタリングした。AdvateまたはrFVIIIFc用量投与前の残留物FVIIIレベルによる可変性基線CTにもかかわらず、両製品は、注射後30分に、CTを匹敵可能レベルに有効に補正した。さらに、CTの改善は、25 IU/kgのrFVIIIFcの注射時および注射後3時間目に、この低用量で用量投与された被験体において、Advateに比してより良好に持続された。しかしながら、rFVIIIFc対Advateの示差的改善は、65 IU/kg用量では余り容易に感知できなかった。
【0209】

表1:ポリヌクレオチド配列
A. Bドメイン欠失FVIIIFc
(i)Bドメイン欠失FVIIIFc鎖DNA配列(下線:FVIIIシグナルペプチド;太字:Fc領域)(配列番号1:これは配列番号2をコードする)
【0210】
【化1】

【0211】
【化2】

【0212】
【化3】

(ii)Fc DNA配列(下線:マウスIgκシグナルペプチド)(配列番号3:これは配列番号4をコードする)
【0213】
【化4】

B. 全長FVIIIFc
(i)全長FVIIIFc DNA配列(下線:FVIIIシグナルペプチド;太字:Fc領域)(配列番号5:これは配列番号6をコードする)
【0214】
【化5】

【0215】
【化6】

【0216】
【化7】

【0217】
【化8】

(ii)Fc(A(ii)(配列番号3)と同一配列)

C. 重鎖(HC)−Fc DNA配列(HCおよびFc間にリンカーなし)(下線:シグナルペプチド;太字:Fc領域)(配列番号7:これは配列番号8をコードする)
【0218】
【化9】

【0219】
【化10】

C.
(ii)重鎖(HC)−Fc DNA配列(HCおよびFc間に5アミノ酸リンカー)(下線:シグナルペプチド;太字:Fc領域;二重下線:5アミノ酸リンカー)(配列番号9:これは配列番号10をコードする)
【0220】
【化11】

【0221】
【化12】

C.
(iii)軽鎖(LC)−Fc DNA配列(下線:シグナルペプチド;太字:Fc領域)(配列番号11:これは配列番号12をコードする)
【0222】
【化13】

【0223】
【化14】

表2:ポリペプチド配列
A. Bドメイン欠失FVIII−Fc単量体ハイブリッド(BDD FVIIIFc単量体二量体):BDD FVIIIFcおよびFc鎖を同時発現することにより作製

構築物=HC−LC−Fc融合物。Fc発現カセットをBDDFVIII−Fcと同時トランスフェクトして、BDD FVIIIFc単量体を生成する。BDD FVIIIFc鎖に関しては、Fc配列を太字で示す;HC配列を二重下線で示す;残りのBドメイン配列をイタリック体で示す。シグナルペプチドには下線を付す。
【0224】
i)Bドメイン欠失FVIII−Fc鎖(下線:19アミノ酸シグナル配列)(配列番号2)
【0225】
【化15】

ii)Fc鎖(下線:マウスIgκからの20アミノ酸異種シグナルペプチド)(配列番号4)
【0226】
【化16】

B.全長FVIIIFc単量体ハイブリッド(全長FVIIIFc単量体二量体):FVIIIFcおよびFc鎖を同時発現することにより作製

構築物=HC−B−LC−Fc融合物。Fc発現カセットを全長FVIII−Fcと同時トランスフェクトして、全長FVIIIFc単量体を生成する。FVIIIFc鎖に関しては、Fc配列を太字で示す;HC配列を二重下線で示す;Bドメイン配列をイタリック体で示す。シグナルペプチドには下線を付す。
【0227】
i)全長FVIIIFc鎖(下線:FVIIIシグナルペプチド)(配列番号6)
【0228】
【化17】

【0229】
【化18】

ii)Fc鎖(下線:Igκ鎖からの20アミノ酸異種シグナルペプチド)(配列番号4)
【0230】
【化19】

C. FVIII−Fcへテロ二量体ハイブリッド
これは、HC−FcおよびLC−Fc構築物を同時トランスフェクトすることにより製造される。2つのHC−Fc構築物が製造されている。一方はHCおよびFc間にリンカーを有さず(HC−Fc)、他方は、HCおよびFc間に5アミノ酸リンカーを有する(HC+5−Fc)。FVIIIシグナルペプチドをHC−Fc構築物のために用いたが、一方で、マウスIgκシグナル配列をLC−Fc構築物のために用いた。
【0231】
(i)HC−Fc(太字:Fc配列;下線:シグナルペプチド)(配列番号8)
【0232】
【化20】

(ii)HC+5−Fc(Fc配列を太字で示す;5アミノ酸リンカー配列(FVIIIのBドメインから)をイタリック体で示す;シグナルペプチドに下線を付す)(配列番号10)
【0233】
【化21】

(iii)LC−Fc6His(Fc配列を太字で示す;シグナルペプチドに下線を付す)(配列番号12)
【0234】
【化22】

表3:50 IU/kgのrFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)の単一回静脈内投与後の血友病Aマウスにおける全血凝固時間(WBCT)確定
【0235】
【表3−A】

【0236】
【表3−B】

表4:血友病Aマウスにおける単一回静脈内用量投与後のPKパラメーター(50 IU/kg)
【0237】
【表4】

表5:血友病Aイヌにおける単一回静脈内用量投与後のPKパラメーター(125 IU/kg rFVIIIFc、114および120 IU/kg ReFacto(登録商標))
【0238】
【表5】

表6:rFVIIIFcまたはReFacto(登録商標)を単一回静脈内投与後の血友病AイヌにおいてaPTTにより測定された凝固活性
【0239】
【表6】

表7: ELISAにより測定した125 IU/kgの単一回静脈内投与として投与されたサルにおけるrFVIIIFcまたはXynthaの血漿濃度
【0240】
【表7】

表8: FVIII特異的色素生成活性検定により測定した125 IU/kgの単一回静脈内投与を施されたサルにおけるrFVIIIFcまたはXynthaの血漿濃度(IU/mLで報告)
【0241】
【表8】

表9: 単一回125 IU/kg用量投与後のrFVIIIFcのPKパラメーター
【0242】
【表9】

表10: 単一回IV用量投与(125 IU/kg)後のXynthaのPKパラメーター
【0243】
【表10】

表11:第X因子の活性化
【0244】
【表11】

表12:第IXa因子との相互作用
【0245】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII因子の投与を必要とする被験体への第VIII因子の投与方法であって、前記第VIII因子部分からなる等価量のポリペプチドに必要とされる用量投与間隔より少なくとも約1.5倍長い用量投与間隔で、第VIII因子部分および第二部分を含む治療的用量のキメラポリペプチドを前記被験体に投与することを包含する方法。
【請求項2】
前記キメラポリペプチドがFc部分を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記用量投与間隔が、前記第VIII因子部分からなる等価量のポリペプチドに必要とされる用量投与間隔より、少なくとも約1.5〜6倍、1.5〜5倍、1.5〜4倍、1.5〜3倍または1.5〜2倍長い請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記用量投与間隔が、前記第VIII因子部分からなる等価量のポリペプチドに必要とされる用量投与間隔より、少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5または6倍長い請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記キメラポリペプチドの前記用量投与間隔が、約5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日毎またはそれ以上の間隔である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が予防的処置を必要としている請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記被験体がオンデマンド処置を必要としている請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が出血症状出現に対する処置を必要としている請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記被験体が、関節出血症、筋肉出血、口腔出血(oral bleed)、出血、筋肉への出血、口腔出血(oral hemorrhage)、外傷、頭部外傷、消化器出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、腹膜後隙における出血、あるいは腸腰筋鞘における出血に関する処置を必要としている請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記被験体が、外科的予防、手術中管理または外科手術に関する処置を必要としている請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記外科手術が、小手術、大手術、抜歯術、扁桃摘出術、鼠径ヘルニア切除術、滑膜切除術、人工膝関節全置換術、開頭術、骨接合術、外傷手術、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術または関節置換術である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記キメラポリペプチドの前記用量投与間隔が、24〜36、24〜48、24〜72、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71または72時間あるいはそれより長い時間毎に約1回である請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記治療的用量が10〜100 IU/kgである請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記治療的用量が10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90または90〜100 IU/kgである請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記治療的用量が10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100 IU/kgである請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記被験体がヒトである請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第VIII因子がヒト第VIII因子である請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第VIII因子がBドメインの完全または部分欠失を有する請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記キメラポリペプチドの前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と少なくとも90%または95%同一である請求項17または18記載の方法。
【請求項24】
前記キメラポリペプチドの前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と同一である請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記キメラポリペプチドが、前記キメラポリペプチドと結合した第二ポリペプチドを含むハイブリッドの形態であり、前記第二ポリペプチドが本質的にFcからなる請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%または95%同一である配列を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と同一である配列を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と少なくとも90%または95%同一である配列からなる請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と同一である配列からなる請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記キメラポリペプチドが、少なくとも1つの賦形剤を含む薬学的組成物の一部として投与される請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
第VIII因子の投与を必要とする被験体に第VIII因子を投与する方法であって、第VIII因子部分および第二部分を含む治療的用量のキメラポリペプチドを前記被験体に投与して、前記第VIII因子部分からなる等価量のポリペプチドにより得られるAUCより少なくとも約1.25倍大きい血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)を得ることを包含する方法。
【請求項32】
前記キメラポリペプチドが、約5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日毎またはそれ以上の用量投与間隔で投与される請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記被験体が予防的処置を必要としている請求項31〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記被験体がオンデマンド処置を必要としている請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記被験体が出血症状出現に対する処置を必要としている請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記被験体が、関節出血症、筋肉出血、口腔出血(oral bleed)、出血、筋肉への出血、口腔出血(oral hemorrhage)、外傷、頭部外傷、消化器出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、腹膜後隙における出血、あるいは腸腰筋鞘における出血に対する処置を必要としている請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記被験体が、外科的予防、手術中管理または外科手術に対する処置を必要としている請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記外科手術が、小手術、大手術、抜歯術、扁桃摘出術、鼠径ヘルニア切除術、滑膜切除術、人工膝関節全置換術、開頭術、骨接合術、外傷手術、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術または関節置換術である請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記キメラポリペプチドの前記用量投与間隔が、24〜36、24〜48、24〜72、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71または72時間あるいはそれより長い時間毎に約1回である請求項34〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記治療的用量が10〜100 IU/kgである請求項31〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記治療的用量が10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90または90〜100 IU/kgである請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記治療的用量が10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100 IU/kgである請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記被験体がヒトである請求項31〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記第VIII因子がヒト第VIII因子である請求項31〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記第VIII因子がBドメインの完全または部分欠失を有する請求項31〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一である請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項44記載の方法。
【請求項49】
前記キメラポリペプチドの第VIII因子部分が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一である請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記キメラポリペプチドの前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と少なくとも90%または95%同一である請求項43または44記載の方法。
【請求項51】
前記キメラポリペプチドの前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と同一である請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記キメラポリペプチドが、前記キメラポリペプチドと結合した第二ポリペプチドを含むハイブリッドの形態であり、前記第二ポリペプチドが本質的にFcからなる請求項31〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%または95%同一である配列を含む請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と同一である配列を含む請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と少なくとも90%または95%同一である配列からなる請求項52〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と同一である配列からなる請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記キメラポリペプチドが、少なくとも1つの賦形剤を含む薬学的組成物の一部として投与される請求項31〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
第VIII因子の投与を必要とする被験体に第VIII因子を投与する方法であって、第VIII因子およびFcを含む治療的用量のポリペプチドを、約5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日毎またはそれ以上の用量投与間隔で前記被験体に投与することを包含する方法。
【請求項59】
前記被験体が予防的処置を必要としている請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記治療的用量が10〜100 IU/kgである請求項58〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記治療的用量が10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90または90〜100 IU/kgである請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記治療的用量が10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100 IU/kgである請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記被験体がヒトである請求項58〜62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記第VIII因子がヒト第VIII因子である請求項58〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記第VIII因子がBドメインの完全または部分欠失を有する請求項58〜64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項64記載の方法。
【請求項67】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一である請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一である請求項64記載の方法。
【請求項69】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一である請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と少なくとも90%または95%同一である請求項64または65記載の方法。
【請求項71】
前記第二部分が、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と同一である請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記キメラポリペプチドが、前記キメラポリペプチドと結合した第二ポリペプチドを含むハイブリッドの形態の第VIII因子−Fcキメラポリペプチドであり、前記第二ポリペプチドが本質的にFcからなる請求項58〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%または95%同一である配列を含む請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記キメラポリペプチドが、シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と同一である配列を含む請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と少なくとも90%または95%同一である配列からなる請求項72〜74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と90%または95%同一である配列からなる請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記ポリペプチドが、少なくとも1つの賦形剤を含む薬学的組成物の一部として投与される請求項58〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と少なくとも90%または95%同一である第VIII因子およびFcを含むポリペプチド。
【請求項79】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有さない、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1438;配列番号6のアミノ酸1〜2332;配列番号8のアミノ酸1〜740;配列番号10のアミノ酸1〜745;または配列番号12のアミノ酸1〜684)と同一である請求項78記載のポリペプチド。
【請求項80】
シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と少なくとも90%または95%同一である第VIII因子およびFcを含むポリペプチド。
【請求項81】
前記第VIII因子が、シグナル配列を有する、表2に示した第VIII因子アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1438;配列番号6のアミノ酸−19〜2332;配列番号8のアミノ酸−19〜740;配列番号10のアミノ酸−19〜745;または配列番号12のアミノ酸−20〜684)と同一である請求項80記載のポリペプチド。
【請求項82】
前記Fcが、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と少なくとも90%または95%同一である請求項78〜81記載のポリペプチド。
【請求項83】
前記Fcが、表2に示したFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1439〜1665;配列番号6のアミノ酸2333〜2559;配列番号8のアミノ酸741〜967;配列番号10のアミノ酸746〜972;配列番号12のアミノ酸685〜924)と同一である請求項82記載のポリペプチド。
【請求項84】
シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)と少なくとも90%または95%同一である配列を含む請求項78記載のポリペプチド。
【請求項85】
シグナル配列を有さない、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1〜1665)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(i)に示した第VIII因子およびFcアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸−19〜1665)少なくとも90%または95%同一である配列を含む請求項84記載のポリペプチド。
【請求項86】
第二ポリペプチドを含むハイブリッドの形態であり、前記第二ポリペプチドが本質的にFcからなる請求項78〜85のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項87】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と少なくとも90%または95%同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と少なくとも90%または95%同一である配列からなる請求項85記載のポリペプチド。
【請求項88】
前記第二ポリペプチドが本質的に、シグナル配列を有さない、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸1〜227)と同一である、あるいはシグナル配列を有する、表2A(ii)に示したアミノ酸配列(配列番号4のアミノ酸−20〜227)と90%または95%同一である配列からなる請求項86記載のポリペプチド。
【請求項89】
前記第VIII因子からなるポリペプチドに比して、少なくとも約1.5〜6倍、1.5〜5倍、1.5〜4倍、1.5〜3倍または1.5〜2倍長い半減期を有する請求項78〜88のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項90】
請求項78〜85のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項91】
表1の第VIII因子−Fcヌクレオチド配列(配列番号1、5、7、9または11)を含む請求項90記載のポリヌクレオチド。
【請求項92】
第VIII因子−Fcポリペプチドおよび請求項86〜89のいずれかに記載の第二ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項93】
ベクター、プラスミド、ファージまたはウイルスである請求項90〜92のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項94】
DNAまたはRNAである請求項90〜93のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項95】
請求項89〜94のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む培養ヒト胚性細胞。
【請求項96】
HEK293細胞である請求項95記載の細胞。
【請求項97】
第VIII因子−Fcハイブリッドタンパク質の産生方法であって、以下の:
コード化第VIII因子−Fcキメラポリペプチドおよび本質的にFcからなるコード化ポリペプチドの発現を可能にする条件下で請求項95または96記載の細胞を培養すること;そして
コード化第VIII因子−Fcハイブリッドタンパク質を回収すること
を包含する方法。
【請求項98】
請求項97記載の方法により産生されるタンパク質。
【請求項99】
前記キメラポリペプチドが以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵するリン脂質小胞と相互作用する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する5分以内にαトロンビンにより活性化される能力;および
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第IXa因子と相互作用する能力
からなる群から選択される1つ以上の特質を有する請求項1〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記キメラポリペプチドが、以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKmの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKmで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kmは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKdの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKdで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kdは第IXa因子濃度の一関数として測定される);そして
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第IXa因子濃度の一関数として測定される);
からなる群から選択される1つ以上の特質を有する請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記ポリペプチドが以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵するリン脂質小胞と相互作用する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する5分以内にαトロンビンにより活性化される能力;および
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第IXa因子と相互作用する能力
からなる群から選択される1つ以上の特質を有する請求項58〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記ポリペプチドが、以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKmの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKmで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kmは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKdの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKdで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kdは第IXa因子濃度の一関数として測定される);そして
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第IXa因子濃度の一関数として測定される);
からなる群から選択される1つ以上の特質を有する請求項101記載の方法。
【請求項103】
以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵するリン脂質小胞と相互作用する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成する能力;
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する5分以内にαトロンビンにより活性化される能力;および
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの能力に匹敵する第IXa因子と相互作用する能力
からなる群から選択される1、約1.5または約2またはそれ以上の特質を有する請求項78〜89および98のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項104】
前記ポリペプチドが、以下の:
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKmの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKmで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kmは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第X因子濃度の一関数として測定される);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのKdの約1、約1.5または約2標準偏差以内のKdで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Kdは第IXa因子濃度の一関数として測定される);そして
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのVmaxの約1、約1.5または約2標準偏差以内のVmaxで第X因子を活性化するXアーゼ複合体を形成すること(ここで、Vmaxは第IXa因子濃度の一関数として測定される);
からなる群から選択される1つ以上の特質を有する請求項101記載の方法。
【請求項105】
前記用量がIU/kg当たり1.38 IU/dLより大きい平均増分回収率(K値)(活性:観察値)を有する請求項1〜77のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
前記用量がIU/kg当たり少なくとも約1.5、少なくとも約1.85または少なくとも約2.46 IU/dLの平均増分回収率(K値)(活性:観察値)を有する請求項1〜77および104のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
前記キメラポリペプチドが、前記患者集団または前記被験体における、以下の:
約2.33±1.08 mL/時/kgまたはそれ未満の前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
約1.8〜2.69 mL/時/kgの前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドのクリアランスの約65%である前記患者集団における平均クリアランス(CL)(活性);
約1.22〜5.19 mL/時/kgの前記被験体におけるクリアランス(CL)(活性);
少なくとも約26.3±8.33時間の前記患者集団における平均滞留時間(MRT)(活性);
約25.9〜26.5時間の前記患者集団における平均MRT(活性);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの平均MRTより約1.5倍長い前期患者集団における平均MRT(活性);
約14〜41.3時間の前記被験体における平均滞留時間(MRT)(活性);
約18.3±5.79時間の前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
約18〜18.4時間である前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの平均t1/2ベータより約1.5倍長い前記患者集団における平均t1/2ベータ(活性);
約11〜26.4時間の前記被験体におけるt1/2ベータ(活性);
IU/kg当たり約2.01±0.44 IU/dLの前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
IU/kg当たり約1.85〜2.46 IU/dLの前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
前記第VIII因子部分からなるポリペプチドの平均増分回収率の約90%である前記患者集団における平均増分回収率(K値)(活性;観察値);
IU/kg当たり約1.38〜2.88 IU/dLの前記被験体における増分回収率(K値)(活性;観察値);
約55.1±12.3 mL/kgの前記患者集団における平均Vss(活性);
約45.3〜56.1 mL/kgの前記患者集団における平均Vss(活性);
約37.7〜79.4 mL/kgの前記被験体における平均Vss(活性);
IU/kg当たり約49.9±18.2 IUh/dLの前記患者集団における平均AUC/用量(活性);
IU/kg当たり約44.8〜57.6 IUh/dLの前記患者集団における平均AUC/用量(活性);そして
IU/kg当たり約19.2〜81.7 IUh/dLの前記被験体におけるAUC/用量;
からなる群から選択される1つ以上の薬物動態パラメーターを示す請求項1〜75および104〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
前記第二部分がXTENまたはアルブミンである請求項1〜77および104〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項109】
前記治療的用量が約10〜約150、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、110、115、120、125、130、135、140、145または150 IU/kgである請求項1〜77および104〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項110】
前記用量投与間隔が1.5〜5、1.5、2、3、4または5日またはそれ以上である請求項1〜77および104〜106のいずれかに記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13C】
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【図1】
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【図4A】
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【図4B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2013−512678(P2013−512678A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542240(P2012−542240)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059136
【国際公開番号】WO2011/069164
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512147244)バイオジェン アイデック ヘモフィリア インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】