説明

第VIIa因子のアシルスルファミド阻害剤

一般式Iの化合物は、組織因子第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及びカリクレインのようなセリンプロテアーゼ酵素を阻害するのに有用で、改良された透過性特性を有している。これらの化合物は凝血疾患を予防し、及び/又は治療する方法において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
米国特許法施行規則第1.53(b)条に従って出願されたこの非仮出願は、2003年5月20日に出願された米国仮出願第60/471804号の米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
一態様では、本発明は、組織因子(TF)/第VIIa因子、第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインの阻害剤である新規な化合物、並びにこれらの化合物を含む組成物に関する。前記化合物はこれらの因子を阻害し、それによって媒介される疾患を治療するのに有用である。例えば、前記化合物は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインを阻害することによって哺乳動物における血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療するのに有用である。
【0003】
(発明の背景)
正常な止血は凝固の開始、形成及び凝血溶解の過程の複雑なバランスの結果による。血球、特定の血漿タンパク質及び血管表面の間の複雑な相互作用が、傷害や失血が生じない限り、血液の流動性を維持する。
多くの重要な疾患状態は異常な血栓形成(血栓症)に関連している。例えば、アテローム斑(プラーク)の損傷による局所的な血栓形成が急性心筋梗塞及び不安定狭心症の主要な原因である。血栓溶解療法又は経皮的血管形成術の何れかによる冠動脈内血栓性閉塞の治療には患部血管の急性血管溶解再閉鎖が付随しうる。更に、特に下肢の手術を受ける高割合の患者が、患部領域への血流を減じる静脈血管系の血栓形成を被っている。合衆国では毎年、血栓予防がおよそ330万の患者に係わっており、深部静脈血栓がおよそ600000人の患者に生じている。突発性心房細動を有する毎年およそ5百万人の患者に卒中が生じている。静脈血栓塞栓症は、特に癌患者における血栓疾患の別の徴候である。
血栓の形成を制限し又は防止するための安全で効果的な治療用抗凝固剤に対する需要が継続して存在している。
【0004】
血液凝固は組織傷害時に体液を封じ込めるために重要であり、宿主の防御機構の重要な要素である。凝固(coagulation)又は凝血(clotting)(血栓形成)には、トロンビンの生成並びに不透性の架橋フイブリン血餅へのフィブリノーゲンの転換に至る過程における多数のチモーゲンの連続的活性化が関与している。トロンビンの生成は、集中的に研究され、広く特徴付けがなされてきた血液凝固カスケードの結果である。例えば、Lawson, J.H.等(1994) J. Biol. Chem. 269:23357を参照のこと。このカスケードの凝固反応は開始、増幅及び伝播段階を含む。また、カスケードは外因系経路と内因系経路に分けられている。内因系経路では第XII、XI、及びIX因子が関与し、第IXa因子のそのコファクターとの複合体の第VIIIa因子が形成されるに至る。この複合体は第X因子を第Xa因子に転換する。第Xa因子は、そのコファクターとの複合体の第Va因子を形成する酵素であり、速やかにプロトロンビンをトロンビンに転換する。トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリン単量体に転換し、これが重合して血栓を形成する。外因系経路には第VIIa因子と組織因子が関与し、これらが複合体(組織因子/第VIIa因子)を形成し、第X因子を第Xa因子に転換する。内因系経路におけるように、第Xa因子がプロトロンビンをトロンビンに転換する。
【0005】
トロンビン(第IIa因子)は、上でみたように、フィブリノーゲンをフィブリンに転換することによって凝固カスケードにおいて中心的な位置を占めている。従って、トロンビン阻害剤の開発に多くの合成努力が向けられている。例えば、米国特許第5656600号;第5656645号;第5670479号;第5646165号;第5658939号;第5658930号及び国際公開第97/30073号を参照のこと。合成のトロンビン阻害剤として調製されている更なる化合物はN-アリールスルフィン化フェニルアラニンアミド類である。
承認されている抗凝固剤治療薬には経口投与されるワルファリン(COUMADIN(登録商標))及び皮下注射可能なLMWH(低分子量ヘパリン)が含まれる。キシメラガトラン(EXANTA(登録商標))は静脈血栓塞栓症の予防と治療及び心房細動の患者における発作の予防のための経口のトロンビン阻害剤として開発中のものである(AstraZeneca)。第Xa因子の既知の阻害剤にはビスアミジン化合物(Katakura, S.(1993) Biochem. Biophys. Res. Commun.,197:965)及びアルギニンの構造をベースとする化合物(国際公開第93/15756号;国際公開第94/13693号)が含まれる。またフェニル及びナフチルスルホンアミドは第Xa因子阻害剤であることが示されている(国際公開第96/10022号;国際公開第96/16940号;国際公開第96/40679号)。
【0006】
組織因子/第VIIa因子は、第X因子及び/又は第IX因子を活性化することによって血液凝固に関与するセリンプロテアーゼ複合体である。第VIIa因子は、肝臓で合成され血液中に分泌されて単鎖グリコペプチドとして循環する第VII因子というその前駆体から製造される。第VII因子のcDNA配列は特徴付けられている(Hagen等, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 83:2412-2416)。
組織因子/第VIIa因子の様々な天然及び合成の阻害剤が知られており、種々の有効性と選択性を有している。組織因子経路阻害剤(TFPI;Broze, 1995, Thromb. Haemostas., 74:90)及びネマトーダ抗凝固ペプチドc2(NAPc2;Stanssens等、1996、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93:2149)は組織因子/第VIIa因子複合体との第4級阻害複合体の生成前に第Xa因子に結合する。小タンパク質の直接の阻害剤(Dennis等, 1994, J. Biol. Chem., 35:22137)及び組織因子/第VIIa因子の不活性形態もまた知られている(Kirchhofer等、1995、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biol., 15:1098; Jang等、1995、Circulation, 92:3041)。また、結合親和性を保持しているがコファクター活性を減少させた変異体組織因子の合成ペプチド及び可溶型が調製されている(Roenning等、1996、Thromb. Res., 82:73;Kelley等, 1997, Blood, 89:3219)。米国特許第5679639号はセリンプロテアーゼ活性を阻害するポリペプチドと抗体を記載している。米国特許第5580560号は改善された半減期を持つ変異体第VIIa因子を記載している。米国特許第5504067号及び米国特許第5504064号は出血の治療のための切断型組織因子を記載している。クニッツ(Kunitz)型ドメイン-組織因子融合タンパク質がまた二機能性抗凝固剤であることが示されている(Lee等、1997、Biochemistry, 36:5607-5611)。組織因子/第VIIa因子複合体が、外科手術の際の出血と血管内血栓症の防止の分離に基づく阻害剤の開発のための魅力ある標的であることが示されている(Harker等, 1995, Thromb. Haemostas., 74:464)。
【0007】
凝固カスケードにおける酵素をブロック又は阻害する化合物は、異常な血栓症によって特徴付けられる症状を持つことが疑われる哺乳動物における血栓症を治療又は予防するのに治療的に有用である。例えば、動脈脈管構造について、確立されたアテローム硬化性斑の破裂による異常な血栓形成は、急性心筋梗塞及び不安定狭心症の主要な原因である。血栓症治療又は経皮的冠動脈形成術(PTCA)による冠動脈内血栓性閉塞の治療には血管の再閉鎖が伴いうる。静脈脈管構造では、特に腹部及び下半身領域の手術を受ける多くの患者が、血流を減少させ、肺塞栓に至りうる血栓形成を経験する。静脈及び動脈系双方において広まった血管内凝固障害が敗血症ショックの間に共通に生じ、迅速で広範な血栓形成と臓器不全に至りうる。
例えばワルファリンのようなクマリンタイプには、過剰な出血(少量及び多量の出血)を含むある種の治療的制約がある。典型的には遅い作用開始(プロトロンビン性)及び長い作用時間がまた緊急処置を複雑化し頻繁なモニタリングを必要とする(Levine等(1995) Chest 108 (4S), 276S;Lafata等(2000) Thrombosis and Thrombolytics 9:S13; Marchetti等(2001) Am. J. Med. 111:130;Garcia-Zozaya, I. (1998) J. of Kent. Med. Assoc. 96(4):143)。また典型的には、血液レベルをモニターするコストはクマリン及びヘパリンタイプの抗凝固療法のコストを遙かに凌ぐ。
【0008】
PTCAと再疎通術が閉塞した血管を治療するために好まれている処置である。しかし、これらの処置に続く動脈血栓症はなお心不全の主要な原因となっている。最も広く使用されている抗凝血剤であるヘパリンは急性動脈血栓症又は再血栓形成(rethrombosis)の治療と予防に必ずしも有効であるとは示されていない。
タンパク質の既知の三次元構造に基づく小分子阻害剤の合成と開発は現代医薬開発の挑戦である。多くのトロンビン阻害剤はヒルジンタイプの構造を持つように設計されている。Stubbs及びBode, Current Opinion in Structural Biology 1994, 4:823-832。新規の合成トロンビン阻害剤並びに第Xa因子及び組織因子/第VIIa因子が報告されている。例えば、Annual Reports in Medicinal Chemistry, 1995-1997, Academic Press, San Diego, CA;米国特許第5589173号及び米国特許第5399487号を参照のこと。
米国特許第6472393号及び国際公開第00/41531号は、アシルスルホンアミド及びベンズアミジン部分を持つ組織因子/第VIIa因子のようなセリンプロテアーゼ阻害剤のクラスを記述している。これらのセリンプロテアーゼ阻害剤は強力なインビボでの抗血栓活性を有していることが証明されている。しかしながら、最適化された活性、選択性及び薬物動態学的特性、例えばクリアランス、半減期及び生物学的利用能を有する組織因子/第VIIa因子阻害剤に対する需要は尚も存在している。組織因子/第VIIa因子阻害剤のプロドラッグ形態を用いて改善された経口的生物学的利用能を確立することができる。
【0009】
(発明の要約)
本発明の態様は、凝固カスケードにおける因子/酵素を阻害し、動脈又は静脈血管における血栓形成を予防し又は治療するのに有用である新規化合物である。これらの化合物は凝固因子阻害剤として、また一般に抗凝固剤として有用である。
一実施態様では、本発明の化合物は組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、又はカリクレインを選択的に阻害する。
本発明の一態様は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子又はトロンビンの活性を、阻害有効量の本発明の新規な阻害剤又はこれら化合物を含む組成物にこれら酵素を接触させることによって、阻害する方法を提供する。更なる目的は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン媒介疾患を、有効量の本発明の化合物の一又は該化合物を含む組成物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することによって、治療する方法を提供することにある。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一又は該化合物を含む組成物、及び担体又は割形剤を、治療を必要とする哺乳動物に投与することによって、血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法を提供することにある。
【0010】
次の記述により明らかになるであろうこれら及び他の目的は、次の一般式I:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
Qは:
(1)1〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキル;
(2)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した6〜約10の環炭素原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルキル;
(3)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルキル;
(4)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルキル;
(5)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル;
(6)2〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルケニル;
(7)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルケニル;
(8)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルケニル;
(9)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルケニル;
(10)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルケニル;
(11)6〜約10の環炭素原子を有する置換されていてもよいアリール;
(12)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と5〜約10の環原子を有する、置換されていてもよいヘテロアリールで、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
(13)3〜約10の環炭素原子を有する、置換されていてもよい炭素環;
(14)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と3〜約10の環原子を有する、置換されていてもよい複素環で、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
であり;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシであり;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
各Rは独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は双方のRが、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、カルボキシアルキル、アルコキシ、アルカノイル又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい複素環を形成し;
は、H、アルキル又は置換アルキルであり;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
は、H、未置換又は置換アルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R、並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択され;
各Rは独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R又はOC(O)Rであり;
とRは独立して、H又はC-Cアルキルである]
を有する本発明のアシルスルファミド化合物、及びその酸及び塩基との付加塩、溶媒和物及びプロドラッグにより達成される。
【0011】
式Iの化合物のプロドラッグ形態、例えばPr及び/又はPrがプロドラッグ部分を形成するものは、改善された薬物動態学的特性、例えば経口生物学的利用能を有し得る。
更に本発明の目的は、これらの化合物を含有する組成物及び以下に記載する方法により達成される。
【0012】
(発明の詳細な記述)
定義
疾患に関する「第VIIa因子」、「組織因子/第VIIa因子」、「第VIIa組織因子」、「第Xa因子」、「トロンビン」又は「カリクレイン」という用語は、血液凝固に関与し、これらの酵素の一又は複数が疾患又は症状の生理学的徴候の少なくとも一を減少させ又は除去する疾病又は生理学的症状を意味する。
「血栓症」という用語は、哺乳動物の血管又はプラスチック又はガラス管やバイアルのような合成容器中での血液凝固又は血栓の発生又は生成を意味する。その元の部位から離れて他の部位で見出される血栓は血栓性塞栓と呼ばれる。
「異常な血栓症」という用語は、哺乳動物の良好な健康状態に反した哺乳動物で発生する血栓症を意味する。
【0013】
「アルキル」という用語は、単独で又は他の用語の部分として使用され、分枝状又は非分枝状の飽和した脂肪族炭化水素基であって、特定される炭素原子数を持ち、あるいは数が特定されていない場合には12を含み12までの炭素原子を持ち、又はn及びmが整数として特定されているC-Cアルキルとして表される基を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、3-ヘプチル、2-メチルヘキシル等が含まれる。「低級アルキル」「C−Cアルキル」及び「1から6の炭素原子のアルキル」という用語は同義語であって、置き換え可能に使用される。「C−Cアルキル」基にはメチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル又はsec-ブチルが含まれる。
【0014】
「置換アルキル」又は「置換C-Cアルキル」(ここで、m及びnはアルキル基に含まれる炭素原子の範囲を特定する整数である)という用語は、1、2又は3のハロゲン(F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、非置換及び置換C-Cアルコキシ、保護されたヒドロキシ、アミノ(アルキル及びジアルキルアミノを含む)、保護されたアミノ、非置換及び置換C−Cアシルオキシ、非置換及び置換C-Cヘテロシクリル、非置換及び置換フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、非置換及び置換カルボアルコキシ、非置換及び置換アシル、カルバモイル、カルバモイルオキシ、シアノ、メチルスルホニルアミノ、非置換及び置換ベンジルオキシ、非置換及び置換C-Cカルボシクリル又はC-Cアルコキシ基により置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同一の又は異なる置換基で1回、2回又は3回置換されていてもよい。
【0015】
上記の置換アルキル基の例には、これらに限られないが;シアノメチル、ニトロメチル、ヒドロキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、カルボキシプロピル、2-アミノプロピル、アルキルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、カルバモイルオキシメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロ(n-ブチル)、2-アミノ(イソ-プロピル)、2-カルバモイルオキシエチル等が含まれる。またアルキル基はカルボシクロ基で置換されていてもよい。その例には、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、及びシクロヘキシルメチル基、並びに対応する-エチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル基等が含まれる。例示的基には、置換メチル基、例えば、「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたメチル基が含まれる。置換メチル基の例には、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル(例えばテトラヒドロピラニルオキシメチル)、アセトキシメチル、カルバモイルオキシメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、カルボキシメチル、ブロモメチル及びヨードメチルなどの基が含まれる。
【0016】
「アルコキシ」という用語は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ等の基のような特定の炭素原子数を持つ基を示す。アルコキシ基は、RがC-Cアルキル基である、RO−として表されてもよい。「置換アルコキシ」という用語は「置換C-Cアルキル」基、例えば2,2,2-トリフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロプロポキシ等と同じ置換基で置換されたこれらのアルコキシ基を意味する。
「アシルオキシ」という用語は、ここでは、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ等のような特定の炭素原子数を持つカルボアシルオキシ基を示す。アシルオキシ基は、RがH又はC-Cアルキル基である、RC(O)O−として表されてもよい。「置換アシルオキシ」という用語は「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルコキシ基を意味する。
「アルキルカルボニル」、「アルカノイル」及び「アシル」という用語は、ここでは交換可能に使用され、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイル等の特定の炭素原子数を持つ基を包含する。
「カルボシクリック」「カルボシクリル」及び「カルボシクロ」という用語はそれだけでまたカルボシクロアルキル基のような複合基中の一部として使用される場合には、3から14の炭素原子、例えば3から7の炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式の脂肪族環を意味する。カルボシクリック基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基が含まれる。「置換カルボシクリック」及び「カルボシクロ」という用語は、「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらの基を意味する。
「カルボシクロアルキル」基は上で定義されたアルキル基に共有的に結合した上で定義したカルボシクロ基である。
【0017】
「アルケニル」という用語は、一又は複数の炭素−炭素二重結合を含む所定の炭素原子数を有する分岐状又は非分岐状の炭化水素基を意味し、各二重結合は独立してシス、トランス、又は非幾何学的異性体である。「置換アルケニル」という用語は「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルケニル基を意味する。
「アルキニル」という用語は、一又は複数の炭素−炭素三重結合を含む所定の炭素原子数を有する分岐状又は非分岐状の炭化水素基を意味する。「置換アルキニル」という用語は「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルキニル基を意味する。
「アルキルチオ」及び「C-C12置換アルキルチオ」という用語は、各々硫黄に結合したC-C12アルキル及びC-C12置換アルキル基を意味し、その硫黄は、アルキルチオ又は置換アルキルチオ基が所定の基又は置換基に結合する点である。
「アリール」という用語は、単独で又は他の用語の部分として用いられる場合、所定の炭素原子数を持つか、又は数が指定されない場合は、最大14までの炭素原子を持つ、縮合又は非縮合のホモサイクリック芳香族基を意味する。アリール基「Ar」には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル(naphthacenyl)等が含まれる(Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J.A.編)13版, 表7-2[1985]参照)。
「アリールオキシ」という用語は、アリール基と酸素原子を有する基を示す。アリールオキシ基はArO−として表され得る。アリールオキシ基の例には、フェノキシ((CO−、PhO−)が含まれる。
「アリールアルコキシ」という用語は、アリール基、アルキル基及び酸素原子を有する基を示す。アリールアルコキシ基は、Ar-(C-Cアルキル)−O−として表され得る。アリールアルコキシの例にはベンジルオキシ(CCHO−、BnO−)が含まれる。
【0018】
「置換フェニル」又は「置換アリール」という用語は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えばC-Cアルキル)、アルコキシ(例えばC-Cアルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、トリフルオロメチル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、又は他の特定された基から選択される1、2、3、4又は5、例えば1-2、1-3又は1-4の置換基で置換されたフェニル基又はアリール基を示す。これらの置換基のメチン(CH)及び/又はメチレン(CH)基の一つはついで上に示したようなものと同様の基で置換されうる。「置換フェニル」という用語の例には、これらに限られないが、モノ-又はジ(ハロ)フェニル基、例えば4-クロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、3,4-ジブロモフェニル、3-クロロ-4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル等;モノ-又はジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2,4-ジヒドロキシフェニル、それらの保護されたヒドロキシ誘導体等;ニトロフェニル基、例えば3-又は4-ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば4-シアノフェニル;モノ-又はジ(C−Cアルキル)フェニル基、例えば、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2-メチルフェニル、4-(イソ-プロピル)フェニル、4-エチルフェニル、3-(n-プロピル)フェニル等;モノ又はジ(アルコキシ)フェニル基、例えば3,4-ジメトキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-エトキシ-4-イソプロポキシフェニル、3-エトキシ-s-ブトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-エトキシフェニル、4-(イソプロポキシ)フェニル、4-(t-ブトキシ)フェニル、3-エトキシ-4-メトキシフェニル等;3-又は4-トリフルオロメチルフェニル;モノ-又はジカルボキシフェニル又は(保護されたカルボキシ)フェニル基、例えば4-カルボキシフェニル;モノ-又はジ(ヒドロキシメチル)フェニル又は(保護されたヒドロキシメチル)フェニル、例えば3-(保護されたヒドロキシメチル)フェニル又は3,4-ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノ-又はジ(アミノメチル)フェニル又は(保護されたアミノメチル)フェニル、例えば2-(アミノメチル)フェニル又は2,4-(保護されたアミノメチル)フェニル;あるいはモノ-又はジ(N-(メチルスルホニルアミノ))フェニル、例えば3-(N-メチルスルホニルアミノ)フェニルが含まれる。また、「置換フェニル」という用語は、その置換基が異なっている二置換フェニル基、例えば3-メチル-4-ヒドロキシフェニル、3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシ-4-ブロモフェニル、4-エチル-2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル、2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル等、並びにその置換基の1、2、又は3が異なっている三置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノ、3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-フェニルスルホニルアミノ、及びその置換基が異なっている四置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-5-メチル-6-フェニルスルホニルアミノを表す。例示的な置換フェニル基には、3-メトキシフェニル、3-エトキシ-フェニル、4-ベンジルオキシフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノフェニル基が含まれる。また「置換フェニル」という用語は、アリール、フェニル又はヘテロアリール基が縮合したフェニル基も表す。縮合環はまた「置換アルキル」基に対して上に特定した任意の、例えば1、2又は3の置換基で置換されうる。
【0019】
「アラルキル」という用語は、所定の炭素原子数を有するアルキル基に結合した、所定の炭素原子数を有する1、2、又は3のアリール基を意味し、これらに限定されないが、ベンジル(CCH-、Bn-)、ナフチルメチル、フェネチル(CCHCH-)、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、トリチル等が含まれる。一つの例示的アリールアルキル基はベンジル基である。アラルキル基はAr-(C-Cアルキル)-と表すことができる。
「置換アラルキル」という用語は、任意の炭素において任意のアリール環位置を介してアルキル基と結合されたアリール基、例えばC-C10アリール基で置換されたアルキル基、例えばC-Cアルキル基であって、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アミノ、保護されたアミノ、C-Cアシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルバモイル、カルバモイルオキシ、シアノ、C-Cアルキルチオ、N-(メチルスルホニルアミノ)又はC-Cアルコキシから選択される1、2又は3の基で、アルキル位置において置換されている基を示す。場合によっては、アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、又はN-(メチルスルホニルアミノ)基から選択される1、2、3、4又は5の基で置換されていてもよい。上述の如く、C-Cアルキル部分又はアリール部分の何れか又は両方が二置換されている場合、置換基は同じでも異なってもよい。またこの基は置換アラルコキシ基の置換アラルキル部分としても現れうる。
「置換アラルキル」という用語及びそれが「置換アルコキシ」基に生じる場合のこの基の例には、2-フェニル-1-クロロエチル、1-フェニル-1-クロロメチル、1-フェニル-1-ブロモメチル、2-(4-メトキシフェニル)エチル、2,6-ジヒドロキシ-4-フェニル(n-ヘキシル)、5-シアノ-3-メトキシ-2-フェニル(n-ペンチル)、3-(2,6-ジメチルフェニル)-n-プロピル、4-クロロ-3-アミノベンジル、6-(4-メトキシフェニル)-3-カルボキシ(n-ヘキシル)、5-(4-アミノメチルフェニル)-3-(アミノメチル)(n-ペンチル)等のような基が含まれる。
【0020】
ここで用いられる「カルボキシ-保護基」という用語は、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、カルボン酸基をブロック又は保護するのに通常用いられるカルボン酸基のエステル誘導体の一つを意味する。そのようなカルボン酸保護基の例には、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4-メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル、2,2',4,4'-テトラメトキシベンズヒドリル、アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル又はt-アミル、トリチル、4-メトキシトリチル、4,4'-ジメトキシトリチル、4,4',4"-トリメチトキシトリチル、2-フェニルプロプ-2-イル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2-トリクロロエチル、ベータ-(トリメチルシリル)エチル、ベータ-(ジ(n-ブチル)メチルシリル)エチル、p-トルエンスルホニルエチル、4-ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1-(トリメチルシリルメチル)プロプ-1-エン-3-イル等の部分が含まれる。誘導体化カルボン酸が、分子の他の部分に対する引き続く反応の条件に対して安定であり、適当な時点で分子の残りの部分を破壊することなく除去できる限り、用いられるカルボキシ保護基の化学種は重要ではない。特に、カルボキシ-保護された分子を強い求核塩基や、ラネーニッケル等の高活性化金属触媒を用いる還元条件を施さないことが重要である。(このような過酷な除去条件は、下記に検討するアミノ-保護基及びヒドロキシ-保護基を除去する際でもまた避けるべきである。)カルボン酸保護基には、アリル及びp-ニトロベンジル基が含まれる。セファロスポリン、ペニシリン及びペプチド分野で使用されるのと同様のカルボキシ保護基も、カルボキシ基置換基の保護に使用できる。これらの基の更なる例は、E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J.G.W. McOmie, 編, Plenum Press, New York, N.Y., 1973, Chapter 5,及びT.W. Greene,「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981, Chapter 5に見出される。「保護されたカルボキシ」という用語は、上記のカルボキシ-保護基の一つで置換されたカルボキシ基を意味する。
【0021】
ここで用いられる用語「アミド-保護基」は、ペプチド分野でペプチド窒素を望ましくない副反応から保護するのに典型的に用いられる任意の基を意味する。このような基には、p-メトキシフェニル、3,4-ジメトキシベンジル、ベンジル、O-ニトロベンジル、ジ-(pメトキシフェニル)メチル、トリフェニルメチル、(p-メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジフェニル-4-ピリジルメチル、m-2-(ピコリル)-N'-オキシド、5-ジベンゾスベリル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル等が含まれる。これらの保護基の更なる記載は、Theodora W. Greeneによる「Protective Groups in Organic Synthesis」, 1981, John Wiley and Sons, New York に見出すことができる。
「ヘテロシクリック基」、「ヘテロシクリック」、「ヘテロシクリック」又は「ヘテロシクロ」という用語は、単独で及びヘテロシクロアルキル基のような複素基中の部分として使用されるとき、交換可能に使用され、一般に3から約10の環状原子の、所定の原子数を有する任意の単環式、二環式又は三環式の飽和又は非芳香的に不飽和な環を意味し、環状原子は炭素及び1、2、3又は4の窒素、硫黄又は酸素原子である。典型的には、5-員環は0から2の二重結合を有し、6-又は7-員環は0から3の二重結合を有し、窒素又は硫黄ヘテロ原子は場合によっては酸化されていてもよく、任意の窒素へテロ原子は場合によっては第4級化されていてもよい。その例には、ピロリジニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2H-ピラニル、テトラヒドロピラニル、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチエタニル、アジリジニル、アゼチジニル、1-メチル-2-ピロリル、ピペリジニル、及び3,4,5,6-テトラヒドロピペリジニルが含まれる。
【0022】
「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクロアルケニル」基は上で定義されたようなアルキル又はアルケニル基に共有結合された上で定義されたヘテロシクロ基である。
別段の定義をしない場合、「ヘテロアリール」は、単独で及びヘテロアラルキル基のような複素基の部分として使用されるとき、所定の原子数を有する任意の単環式、二環式、又は三環式芳香環系であって、少なくとも一つの環が窒素、酸素及び硫黄の群から選択される1から4のヘテロ原子を含む、例えば、少なくとも一のヘテロ原子が窒素である5-、6-又は7-員環であるものを意味する(上掲のLang's Handbook of Chemistry)。定義に含まれるものは、上記のヘテロアリール環の任意のものがベンゼン環に縮合している任意の二環式基である。
以下の環系は、「ヘテロアリール」という用語が意味するヘテロアリール(置換又は非置換)基の例である:チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、チアジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、テトラジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、及びプリニル、並びにベンゾ-縮合誘導体、例えばベンズオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリル。
【0023】
硫黄又は酸素原子と1から3の窒素原子を含む複素5員環系も、本発明での使用に適している。複素環基の例には、チアゾリル、特にチアゾル-2-イル及びチアゾル-2-イル-N-オキシド、チアジアゾリル、特に1,3,4-チアジアゾル-5-イル及び1,2,4-チアジアゾル-5-イル、オキサゾリル、例えばオキサゾル-2-イル、及びオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、及び1,2,4-オキサジアゾル-5-イルが含まれる。2から4の窒素原子を持つ5員環系の更なる例の群には、イミダゾリル、例えばイミダゾル-2-イル;トリアゾリル、例えば1,3,4-トリアゾル-5-イル;1,2,3-トリアゾル-5イル、1,2,4-トリアゾル-5-イル、及びテトラゾリル、例えば1H-テトラゾル-5-イルが含まれる。ベンゾ縮合誘導体の例の一群は、ベンズオキサゾル-2-イル、ベンズチアゾル-2-イル及びベンズイミダゾル-2-イルである。
上記の複素環系の更なる適切な特定の例は、1から3の窒素原子を含む6員環系である。そのような例には、ピリジル、例えばピリド-2-イル、ピリド-3-イル、及びピリド-4-イル;ピリミジル、例えばピリミド-2-イル及びピリミド-4-イル;トリアジニル、例えば1,3,4-トリアジン-2-イル、及び1,3,5-トリアジン-4-イル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イル、及びピラジニルが含まれる。ピリジンN-オキシド及びピリダジンN-オキシド及びピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニル及び1,3,4-トリアジン-2-イル基が例示的な基である。
置換されていてもよい複素環系の置換基と、上で検討した5員及び6員環系の更なる例は、W. Druckheimer等の米国特許第4278793号に見出すことができる。
【0024】
「ヘテロアリール」の例示的な基には;1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,2,4-チアジアゾル-5-イル、3-メチル-1,2,4-チアジアゾル-5-イル、1,3,4-チアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-ヒドロキシ-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イルのナトリウム塩、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5イル、1,3-オキサゾル-2-イル、1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-(ヒドロキシメチル)-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、1,2,4-オキサジアゾル-5-イル、1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-チオール-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-(メチルチオ)-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル5-イルのナトリウム塩、2-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、4-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、ピリド-2-イルN-オキシド、6-メトキシ-2-(n-オキシド)-ピリダズ-3-イル、6-ヒドロキシピリダズ-3-イル、1-メチルピリド-2-イル、1-メチルピリド-4-イル、2-ヒドロキシピリミド-4-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-asトリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-as-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-asトリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-メトキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2,6-ジメチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]-ピリダジン-6-イルが含まれる。
【0025】
「ヘテロアリール」の他の基には:4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(2-ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルが含まれる。
「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアラルケニル」基は上で定義されたようなアルキル基又はアルケニル基に共有結合した上で定義されたヘテロアリール基である。
【0026】
「薬学的に許容可能な塩」には、酸及び塩基の両方の付加塩が含まれる。「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的効能と性質とを保持し、生物学的に又は他の形で所望されないものではない塩を意味するもので、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等で生成され、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボキシル及びスルホンクラスのものから選択される。
【0027】
「薬学的に許容可能な塩基付加塩」には、無機塩基、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等から誘導されるものが含まれる。薬学的に許容可能な無毒の有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、自然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が含まれる。非毒性有機塩基にはイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインが含まれる。
ここで用いられる「プロドラッグ」という用語は、薬学的に望ましい特徴又は性質(例えば、輸送、生物学的利用能、薬物動態学など)を向上させ、活性な親薬剤を放出するために生物内で自発的であれ酵素的であれ生変換を必要とする親薬剤分子の誘導体を意味する。
【0028】
(実施態様)
本発明は第VIIa因子を阻害し予期されない改善された薬物動態学的特性を示す化合物を提供する。本発明の化合物は改善されたインビボでのクリアランス及び/又は半減期を有する。
本発明の一実施態様では、第Xa因子、トロンビン又はカリクレインの阻害に対して特異的に組織因子/第VIIa因子を阻害する化合物が提供される。
他の実施態様は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子又はトロンビン活性を、治療的阻害量の本発明の新規な阻害剤又はこれら化合物を含む組成物にこれらの酵素を接触させることにより阻害する方法を提供する。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一つ又はその化合物を含む組成物を治療を必要とする哺乳動物に投与することによって組織因子/第VIIa因子媒介疾患を治療する方法を提供することにある。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一つ又はその化合物と希釈剤、担体又は賦形剤を含む組成物を治療を必要とする哺乳動物に投与することによって血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法を提供することにある。
【0029】
本発明は一般に、予期しない改善された透過性及び/又は生物学的利用能を示す、第VIIa因子のアシルスルファミド阻害剤に関しており、該阻害剤は次の一般式I:

[上式中、R、R、R、A、B、Q、Pr及びPrは上記の意味を持つ]
を有する。これらの意味において、アルキルは、非置換又は置換C-Cアルキルであり;アルケニルは、非置換又は置換C−Cアルケニルであり;アルキニルは、非置換又は置換C-Cアルキニルであり;アリールは、非置換又は置換ナフチル又はフェニルであり、アラルキルは非置換又は置換ベンジルである。
【0030】
各Rは独立して、H、アルキル、置換アルキル、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は双方のR置換基が、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、カルボキシアルキル、アルコキシ、アルカノイル又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい複素環を形成する。一実施態様において、RはH、アルキル、アラルキルであり、メチル、エチル、プロピル、ベンジルを含む。他の実施態様において、双方のRはH又はメチルである。別に、双方のR置換基は、それらが依存する窒素原子と共同して、モルホリノ複素環を形成する。
【0031】
は、H、未置換又は置換アルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R並びにアルキル、R又はRが1-3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択される。特定の実施態様において、RはHである。
各Rは独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R又はOC(O)Rである。他の実施態様において、ベンズアミジン環のRの一方はHであり、他方はFである。他の実施態様において、ベンズアミジン環の双方のRはHである。
【0032】
他の実施態様では、PrとPrは独立して、化合物の透過性、よって生物学的利用能を向上させるプロドラッグ基であり、取り込まれたときに開裂されて遊離のアミジン基を生じる。PrとPrは独立して、H、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシであり;ここでアルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;また炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく、更に上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1〜3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよい。
【0033】
「置き換え」とは、アルキル、アルコキシ、アルカノイル等の基の脂肪族部分の炭素原子と係留する水素原子(例えばメチレン基)が特定の原子又は二価の基の一つで置換されていることを意味する。例えば、アルキル鎖のメチレン基を酸素原子と置換するとエーテルが形成される。他の実施態様では、PrがHであり、Prが特定の基から選択される。他の実施態様では、Prはヒドロキシ又はアルコキシ、あるいはハロゲン、例えばClで置換されていてもよく;又はFで三置換されていてもよいアルカノイルである。他の実施態様では、Prは2-トリクロロエチルオキシカルボニルである。Pr基はヒドロキシ及びエトキシであってもよい。他の実施態様では、Prは炭素環を含み、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルオキシ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニル、アリールアルカノイル又はアリールアルカノイルオキシからなる群から選択される。このタイプの例示的Pr基は、ベンジル、置換ベンジル、ベンゾイル、1又は2のCF基で置換されたベンゾイル、1又は2のCF基で置換されたベンゾイルオキシである。一実施態様において、Prはフェノキシ、双方のメタ位がCFで置換された(つまり、3,5-二置換)ベンジル、メタ位とパラ位の双方がCFで置換された(つまり、3,4-二置換)ベンジル、オルト位とメタ位の双方が置換された(つまり、2,3-二置換)ベンジル、又はCFで置換された(2,3-、3,4-又は3,5-二置換)ベンジルオキシカルボニルである。あるいは、PrがHであり、Prが特定の基の一つから選択される。このような実施態様において、Prはアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、又はアリルオキシである。
【0034】
Qは:
(1)1〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキル;
(2)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した6〜約10の環炭素原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルキル;
(3)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルキル;
(4)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルキル;
(5)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル;
(6)2〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルケニル;
(7)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルケニル;
(8)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルケニル;
(9)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルケニル;
(10)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルケニル;
(11)6〜約10の環炭素原子を有する置換されていてもよいアリール;
(12)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と5〜約10の環原子を有する、置換されていてもよいヘテロアリールで、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
(13)3〜約10の環炭素原子を有する、置換されていてもよい炭素環;
(14)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と3〜約10の環原子を有する、置換されていてもよい複素環で、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
である。
【0035】
一実施態様において、Qは、ハロ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、OC-Cアルキル-NR、C-Cアルキル-C(O)NR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)R、C-Cハロアルキル、O-アラルキル(例えばベンジルオキシ)、C(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NRS(O)、NRS(O)、S(O)、S(O)NRから選択される1-5、2-4、又は2-3の置換基で置換されていてもよいフェニルであり、ここでR及びRは独立して、H又はC-Cアルキルである。この実施態様において、それぞれの残りの可変種R、R、R、A、B及びRは独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。各アルキル、アルケニル及びアルキニル部分は、上述したように置換されていてもよい。
【0036】
一実施態様において、Qは次の構造:

[上式中、
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシ、NR、SR又はORであり、ここでR及びRは独立して、H又は未置換又は置換C-Cアルキルであり;
10、R11及びZは独立して、それぞれ、H、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、OC-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、上述したように、ここでR及びRは独立して、H又は未置換又は置換C-Cアルキルであり、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環であり、nは1又は2であり;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はニトロである]
を有する。この実施態様において、それぞれの残りの可変種R、R、R、A、B、X及びYは独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。各アルキル、アルケニル及びアルキニル部分は、上述したように置換されていてもよい。
【0037】
本発明の種々の態様において、Z及びZは水素であってよく;Z、Z及びR11は水素であってよく;又はZ、R10及びR11は水素であってよく;残った環置換基は上述したものである。
【0038】
他の実施態様において、Qが置換フェニルである場合、環の4-及び5位又は5-及び6位にある置換基は、互いに結合して、未置換又は置換炭素環又は複素環を形成する。このような化合物の例を以下に示し:

ここで符号には、式IIa及びIIbにより表されるように、以下に示す位置においてフェニル環に縮合した5員又は6員の炭素環又は複素環が含まれる。

フェニル環に縮合していてもよい5員又は6員の炭素環又は複素環の適切な例には、以下に示す環系が含まれ、ここでRは上述したようなものである。


【0039】
Qが置換フェニルである化合物において、R10は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアミノアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、並びにC-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロ、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、C-Cアミノアルキル、OC(O)-C-Cアルキル、C(O)O-C-Cアルキル、及びC(O)OHで置換されたフェノキシ-及びベンジルオキシ-からなる群から選択され、ここで残りの可変種は独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。
また関心があるのは、R11がNR-Cアルキル-C(O)NR、NRS(O)n-R又はNRS(O)n-R12であり、nが1又は2であり、及び/又はZ=Z=H及び/又はR10がOR、OR12、OC-C10-アラルキル、OC-Cアルキル-OR又はOC-Cアルキル-OR12であり、R及びR12が上述したように未置換又は置換されている化合物である。適切な置換R及びR12には、上述したように置換された、例えば1又は2のC-Cアルコキシ、C-Cアルコキシ-C-Cアルコキシ、ハロ、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、C-Cアミノアルキル、OC(O)-C-Cアルキル、C(O)O-C-Cアルキル、C-CアルキルC(O)OR、C-CアルキルOC(O)OR又はC(O)OHを有するこれらの基が含まれる。これらの化合物において、それぞれの残りの可変種は独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。
【0040】
他の実施態様において、A及びBは独立してCH又はCRであり、ここでRはH、ハロゲン、C1-6アルキル又はOHであり、残りの可変種は独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。一実施態様において、A及びBの一方はFであり、他方はC-Fである。他の実施態様において、A及びBは双方ともCHである。
他の実施態様において、RはHであり、又はRはCHであり、ここで残りの可変種は独立して選択され、上記した定義の任意のものを有しうる。
【0041】
特定の実施態様において、式Iの化合物は表1の化合物からなる群から選択される。
表1









【0042】
アシルスルファミド化合物の合成
本発明の化合物は、標準的な教科書に記載され、引用されている標準的な化学の方法論を用いた方法によって調製することができる(例えば、Smith, M.及びMarch, J. "March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th Edition" McGraw-Hill, New York, 2001); Collman, J.P., Hegedus, L.S., Norton, J.R., Finke, R.G. "Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry" University Science, Mill Valley, 1987; Larock, R.C. "Comprehensive Organic Transformations" Verlag, New York, 1989)。本発明の実施態様で明らかにされた変換のための試薬は標準的なものであり、標準的な参考本及び“Fiesers' Reagents for Organic Synthesis” Volumes 1-22 (John Wiley, New York)のようなシリーズに見出すことができる。
【0043】
本発明の化合物の合成における例示的反応は、以下に示すように:

[上式中、A、B、R、R、R及びQは上述した意味を有する]
スルファミドNH-SO-NRとカルボン酸中間体とを反応させることを含む。得られたアシルスルファミド化合物のシアノ基は、公知の手順を使用してアミジノ基C(NH)NHが導入された活性化合物に転換される。例えば、シアノ化合物は、アルコール等の溶媒においてヒドロキシルアミン(NHOH、又はその塩)と反応させ、続いてアルコール等の溶媒中でラネーニッケルを用いて還元されてもよく、又は最初にエタノールHCl、ついでアルコール性アンモニアを用い、ピンナー方法によって反応させ、対応するアミジノ化合物を生じせしめてもよい。あるいは、ピリジン/ジエチルアミン(1/1)/硫化水素、続いてヨウ化メチル/アセトニトリル、ついで酢酸アンモニウム/エタノールを使用する改変ピンナー反応によっても、所望するアミジノ化合物が提供されるであろう。
【0044】
上述したカルボン酸化合物は、その全体が出典明示してここに導入される、米国特許第6472393号に記載されているもの等、標準的な合成技術を使用して調製されてよい。このような合成経路の一つは、以下のスキーム:

に示すような、適切な置換前駆物質を使用する縮合反応である。
【0045】
この縮合は、触媒、例えばルイス酸触媒と、アルキルアルコール(ROH)、例えば低級、つまりメタノール、エタノール、i-プロパノール等のC-Cのアルキルアルコールの存在下で実施され、過剰の水、一般には約10以上の当量の水を用いたその中間体の加水分解が続く。適切なルイス酸にはBFエーテル、AlCl等が含まれる。W-NCは、Wが任意の好適な炭化水素基、一般には例えば約12以下の炭素原子を有するアルキル、カルボシクロアルキル、又はアラルキル基でありうるイソニトリルである。一つの例示的なイソニトリルはベンジルイソニトリルである。エステル生成物は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィー、再結晶化等を含む標準的な技術によって精製されてよい。エステルのカルボン酸中間体への転換は、アルカリ金属の水酸化物、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物を用いた鹸化により容易に実施される。同様に、カルボン酸中間体を所望のスルファミドと反応させ、続いてシアノ基をアミジンに転換して、本発明の活性化合物を付与してもよい。
【0046】
特定の実施例において、R11にスルホンアミドを基が導入されたカルボキシ中間体は、以下のスキーム:

を使用して調製されてもよい。
【0047】
この実施態様の他の変形例において、Qは、以下に記載するような置換基Z、Z及びR-R11を有する置換フェニルである。
A及びBが窒素である対応する化合物が所望されている場合、上述した反応に使用されるアニリン又は置換アニリンは、対応するアミノ-ピリジン又は置換アミノ-ピリジン化合物で置き換えられる。
スルホンアミド窒素が置換基を担持している化合物は、公知の反応を使用する窒素原子の従来的なアルキル化、例えば公知の手順に従って硫酸ジアルキル、アルキルハライド等を用いたアルキル化により調製することができる。
【0048】
一実施態様において、Qは置換アリール、例えば以下の構造:

を有する置換フェニル基である。
この構造において、Z、Z、R-R11は、一般的及び例示的実施態様の双方にて上述したものである。この実施態様の化合物は、構造Q-CHOを有する適切な置換ベンズアルデヒド(RがH)を使用し、上述したスキーム1に記載されたようにして調製される。これらの置換ベンズアルデヒドは商業的供給源から容易に入手可能であり、又は確立された合成化学技術を使用し、入手可能なベンズアルデヒド類から、容易に調製することもできる。
【0049】
一実施態様において、Qはニトロ基で置換されている。ニトロ基の一つの位置がR11であるならば(ここで、Z、Z、R及びR10は、一般的及び例示的実施態様において上述したものである)、ニトロ基は適切な還元剤を使用して、アミノ基にさらに還元することもできる。一般的に、先のスキームに示したシアノ-アミン化合物又はシアノ-スルホンアミド化合物は、好ましくはシアノ基上のR11でニトロ基を還元するであろう還元剤と反応する。これらの特性を有する任意の還元剤、例えば水素及びPt/C触媒が使用され得る。ついで、前記反応により得られたアニリンは塩化スルホニル(Wが上述したものであるClSOW)と反応して、スルホンアミド化合物を生成することができる。
【0050】
複素環化合物を含む本発明の他の化合物は、上述した合成スキームを使用することができる単一の出発物質から容易に調製される。例えば、単一のニトロ及びヒドロキシ置換されたアルデヒド類から出発し、上述したように縮合すると、環状のウレタン又はオキサゾール化合物に直接転換可能な対応するエステルが提供され、ついで、既に記載されているように合成することで、本発明の化合物を提供できる。これらの反応は、5位及び6位で縮合される環では、以下の様に図示される。

【0051】
環がフェニル環の4位及び5位に縮合する化合物は、以下に示すように、適切な置換アルデヒドを用いて出発する、類似した方法により調製される。

【0052】
他の縮合複素環化合物は、本発明の付加的な化合物を提供するための化学合成分野においてよく知られている適切な置換出発物質と、従来からの合成化学反応を使用することで調製される。例えば縮合フラン環系は以下に示すように、対応するハロ、及びヒドロキシ置換アルデヒド類とから調製することができる。

【0053】
本発明の範疇にさらに含まれるものは、上述した化合物のプロドラッグである。適切なプロドラッグには、生理学的条件下で親化合物を生成するために例えば加水分解されて遊離される公知のアミノ保護-及びカルボキシ保護基が含まれる。例示的クラスのプロドラッグは、アミノ、アミジノ、アミノアルキレンアミノ、イミノアルキレンアミノ又はグアニジノ基の窒素原子が、ヒドロキシ(OH)基、アルキルカルボニル(-CO-W)基、アルコキシカルボニル(-CO-OW)、アシルオキシアルキル-アルコキシカルボニル(-CO-O-W-O-CO-W)基(ここで、Wは一価又は二価の基であり、上述の通りである)又は式-C(O)-O-CP1P2-ハロアルキルを有する基(ここで、P1及びP2は同一か又は異なっており、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、シアノ、C-Cハロアルキル又はアリールである)で置換された化合物である。窒素原子は、本発明の化合物のアミジノ基の窒素原子の一つでありうる。これらのプロドラッグ化合物は、上述した本発明の化合物を活性化アシル化合物と反応させ、本発明の化合物中の窒素原子を活性化アシル化合物のカルボニルに結合させることで調製される。適切な活性化カルボニル化合物はカルボニル炭素に結合する良好な脱離基を有しており、アシルハロゲン化物、アシルアミン、アシルピリジニウム塩、アシルアルコキシド、特にアシルフェノキシド、例えばp-ニトロフェノキシアシル、ジニトロフェノキシアシル、フルオロフェノキシアシル、及びジフルオロフェノキシアシルを含む。反応は一般的に発熱反応で、例えば−78から約50℃の低い温度にて不活性溶媒中で行われる。反応は通常は無機塩基、例えば炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウム、あるいは有機塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン等を含むアミンの存在下で行われる。プロドラッグの調製方法の一つは1998年10月22日公開の国際公開98/46576号に記載されている。
【0054】
本発明の化合物は一又は複数の不斉炭素原子を含む。従って、化合物はジアステレオマー、エナンチオマー又はそれらの混合物として存在し得る。上述の合成は、出発物質又は中間生成物として、ラセマート、ジアステレオマー又はエナンチオマーを使用することができる。ジアステレオマー化合物はクロマトグラフィー又は結晶化法により分離することができる。同様に、エナンチオマー混合物は、同技術又は当該分野で公知の他の技術を使用して分離することができる。各不斉炭素原子はR又はS配置に存在し、これらの配置の双方が本発明の範囲内である。
【0055】
活性
ここに開示されたようにして製造され選択された本発明の化合物は、セリンプロテアーゼ酵素、例えば第VIIa因子、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、カリクレイン及び/又はトロンビンの阻害剤であることが発見された。これらの化合物はこれらの酵素の触媒作用を阻害でき、しかして凝血カスケードを抑制し、凝血、及び/又は血管中での血栓又は閉塞の形成、及び/又は血液の凝固時間の増加を予防又は制限するように機能する。従って、本発明の化合物は第X因子を第Xa因子に変換する組織因子/第VIIa因子の能力を阻害し、プロトロンビンをトロンビン(第IIa因子)に変換する第Xa因子の能力を阻害し;及び/又はフィブリノーゲンをフィブリン単量体に変換するトロンビンの能力を阻害する。
【0056】
本発明の化合物の抗凝固作用はアッセイを用いて試験することができる。プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)凝血時間アッセイは、増大した濃度の阻害剤を血漿に加えた後にプールした正常血漿(ヒト又は様々な動物種)中で実施される。凝血時間はACL300自動凝固アナライザー(Coulter Corp., Miami, FL)及び次に示される商業的に入手可能な試薬を用いて決定される。
PTアッセイ:様々な濃度での阻害剤の水溶液が、阻害剤1部に対して血漿が9部の割合でプールされた正常血漿に加えられる。ついで、これらの混合物はアナライザーのサンプルカップに加えられる。ヒト再脂肪化組織因子及びCa++イオンの混合物であるイノビン(Innovin)(登録商標)(Dade International Inc., Miami, FL)が試薬カップに加えられる。サンプルとイノビン(登録商標)の正確な容積が、37℃に予め恒温したアクリル回転体のセルに自動的に移される。2分間のインキュベーション時間の後、遠心により2つの化合物が一緒に混合された時点で凝固が開始する。凝固は光学的に監視され、凝血時間は秒単位で記録される。Janson等 (Janson, T.L.,等1984, Haemostasis 14: 440-444)と一致して、再脂肪化ヒト組織因子は試験した全ての種において凝固に有効な開始剤である。このシステムにおいて、コントロール血漿(血漿プラス阻害剤希釈剤)の凝血時間は通常8〜10秒である。曲線は凝血時間対阻害剤濃度のデータに適合され、PTがコントロール血漿に比べて2倍になった濃度がそれぞれの阻害剤に対して決定される。
【0057】
APTTアッセイ:阻害剤と血漿が一緒に混合され、上記のようにしてACL300サンプルカップに移される。アクチンFS(登録商標)及びCaCl(Dade International Inc.,Miami, FL)がそれぞれ試薬カップ1及び2に加えられる。正確な容量のサンプル及び活性剤(アクチンFS(登録商標))が予め恒温した回転体(37℃)のセルに自動的に移され、遠心により混合される。2分間の活性化後、CaClの添加により凝固が開始される。PT法において記載されたようにして、凝固が監視され、データが算出される。血漿コントロールのAPTTは典型的には12から32秒であり、アッセイに使用される血漿の種に依存する。
【0058】
本発明の化合物は採血管中での凝固を阻害するためのインビトロの診断用試薬として有用である。採血する手段としてその中を真空したストッパーを備えた試験管の使用がよく知られている(Kasten, B. L., (1990) "Specimen Collection", Laboratory Test Handbook, 2版, Lexi-Comp Inc.,Cleveland , PP 16-17, Jacobs, D.S.等編)。そのような真空管は凝固阻害添加剤の入っていないものであり得るが、その場合、それらは血液からの哺乳動物血清の分離に有用である。またそれらはヘパリン塩、クエン酸塩又はシュウ酸塩のような凝固阻害添加剤を含んでいるかもしれないが、その場合は、それらは血液からの哺乳動物血漿の分離に有用である。本発明の化合物は血液収集管に導入され、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインを阻害する機能をし、管中へ採血された哺乳動物の血液の凝固を防止する。
【0059】
血液収集管で使用した場合、本発明の化合物は単独でも、混合物又は他のこの分野で知られる凝血阻害化合物と組合せして使用してもよい。本発明の化合物の量は、管に血液が採血された場合に凝血塊の形成を防止又は阻害するのに十分な量でなければならない。これらの化合物はヘパリン塩のような既知の凝血阻害化合物と同様の方法で管に導入されうる。通常、液体は既知の方法を使用して凍結乾燥される。典型的には、管は約2から約10mlの哺乳動物血液を含み、化合物はこの量の血液の凝固を防止するのに十分な量で加えられる。適した濃度は約10−1000nMである。
【0060】
これらの化合物は哺乳動物の循環器系での塞栓及び血栓の形成を阻害し、従ってインビボでも有用である。血栓塞栓性の障害は哺乳動物の塞栓及び血栓の形成の感受性に直接的に関連していることが示されている。例えば、静脈管での血栓の形成は血栓性静脈炎を招き、典型的には安静と抗凝血剤の投与で治療される。本発明の抗凝血化合物で治療することができる他の症状には、血栓性リンパ管炎、血栓性静脈洞炎、血栓性心内膜炎、血栓性血管炎及び血栓性動脈炎が含まれる。
血管形成術や血栓溶解療法のような医療処置を受けた哺乳動物は特に血栓形成を生じやすい。本発明の化合物は血管形成術に伴う血栓形成の阻害に使用できる。これらは、また、組織プラスミノーゲン活性化因子及びその誘導体(米国特許第4752603号;第4766075号;第4777043号;欧州特許第199574号;欧州特許第238304号;欧州特許第228862号;欧州特許第297860号;国際公開第89/04368号;国際公開第89/00197号)、ストレプトキナーゼ及びその誘導体、又はウロキナーゼ及びその誘導体のような抗血栓剤と組み合わせて使用されて、血栓溶解療法に伴う動脈の再閉塞を防止することができる。上述の血栓溶解剤と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物は抗凝血剤より前に、同時に又は後で投与されうる。
【0061】
腎臓透析、血液酸素付加、心臓カテーテル及び同様の医療処置を受けた哺乳動物、並びにある種の人工器官が取り付けられた哺乳動物はまた血栓塞栓性障害にかかりやすい。生理学的条件において、また既知の原因で又はそれ無しで血栓塞栓性障害を引き起こしうる。
このように、ここで記載された化合物は哺乳動物における血栓塞栓性疾患の治療において有用性を有しうる。ここで記載された化合物はまた抗凝血剤治療の添加剤として、例えばアスピリン、ヘパリン、又はワルファリン、及び他の抗凝血剤と組み合わせて使用されうる。上述の様々な凝血障害は、疾患の結果として生じる出血を防止するように本発明の化合物で治療される。これら及び関連する疾患のためのここで記載された化合物の用途は当業者には明らかであろう。
この発明の化合物はまた、一般に中間体として、又は凝固セリンプロテアーゼ阻害剤の前駆体として有用であり、よって心疾患の治療に加えて、これら化合物を転移性疾患に、又は凝固の阻害を必要とする任意の疾患に有用に用いることができる。
【0062】
アシルスルファミド化合物の投与
本発明のアシルアスルファミド化合物は治療される症状に適した任意の経路によって投与されうる。好適な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内及び硬膜外を含む)、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、膣等が含まれる。好ましい経路は例えばレシピエントの状態に応じて変わりうることは理解される。アシルスルファミド化合物が経口投与される場合、化合物は、丸薬、カプセル剤、錠剤等々として薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と共に製剤化できる。アシルスルファミド化合物が非経口的に投与される場合、化合物は、薬学的に許容可能な非経口ビヒクルと共に単位投薬注射可能形態で製剤化できる。
【0063】
アシルスルファミド化合物の薬学的製剤
本発明の治療用アシルスルファミド化合物の薬学的製剤は様々な経路と投与タイプ用として調製することができる。所望の度合いの純度を持つアシルスルファミド化合物を任意には薬学的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤又は安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences (1980) 16版, Osol, A.編)と、凍結乾燥製剤、粉砕粉末、又は水溶液の形態で混合する。製剤化は、周囲温度、適切なpH、所望する純度で、生理学的に許容可能な担体、すなわち使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である担体と混合することにより実施することができる。製剤のpHは主として化合物の特定の用途と濃度に依存するが、約3から約8の間の範囲とできる。pH5の酢酸バッファー中での製剤化が適切な実施態様である。
ここで使用される阻害化合物は、好ましくは滅菌されている。通常、化合物は固体組成物として保存されるが、凍結乾燥製剤又は水溶液も許容できる。
本発明の薬学的組成物は良好な医療行為に一致した形で処方され、用量が決められ、投与されうる。この点で考慮すべき要因には、治療中の特定の疾患、治療中の特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、並びに医療師に知られている他の因子が含まれる。投与される化合物の「治療的に有効な量」はそのような考慮によって左右され、凝固因子媒介疾患を防止し、軽減し又は治療するのに必要な最少の量である。そのような量は好ましくはホストに毒性であるか又はホストを出血に対してより高い感受性にする量以下である。
【0064】
一般的な事項として、非経口投与される阻害剤の各投薬当たりの最初の薬学的に有効な量は、一日当たり約0.01−100mg/kg患者体重の範囲、すなわち一日当たり約0.1から20mg/kg患者体重で、使用される化合物の典型的な最初の範囲は0.3から15mg/kg/日である。
本発明のアシルスルファミド化合物は、経口、局所、経皮的、非経口、皮下、腹膜内、肺内及び鼻腔内、及び免疫抑制局所治療に対して望まれるならば、病巣内投与(阻害剤を、移植前に移植片に注入又は他の接触させることを含む)を含む任意の適した手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。
許容される希釈剤、担体、賦形剤、及び安定化剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEENTM)、プルロニクス(PLURONICSTM)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、活性な薬学的成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマクロエマルション中に捕捉されていてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Science 16版, Osol, A. 編(1980)に開示されている。
【0065】
徐放製剤を調製することができる。徐放製剤の好適な例には、アシルスルファミド化合物を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
インビボ投与のために使用される製剤は滅菌されていなければならず、これは滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
製剤には上記の投与経路に適したものが含まれる。製剤は簡便には単位投薬形態で提供することができ、薬学の分野でよく知られている方法の任意のものによって調製することができる。一般に技術及び製剤はRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, PA)に見出される。このような方法は、一又は複数の補助成分を構成する担体と活性成分を混合する工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液体の担体又は細かく粉砕された固体担体又はその両方と均一にかつ密に混合し、ついで必要ならば生成物を成形することによって調製される。
【0066】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の感染に対しては、製剤は、好ましくは、例えば0.075から20%w/wの量で活性成分(類)を含む局所用軟膏又はクリームとして適用される。軟膏に製剤される場合、活性成分はパラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に用いることができる。あるいは、活性成分は水中油クリーム基剤でのクリームに製剤化することができる。
所望される場合、クリーム基剤の水性相は多価アルコール、すなわち、例えばプロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)及びその混合物のような二又はそれ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含みうる。局所用製剤は、好ましくは、皮膚又は他の患部領域を通しての活性成分の吸収又は浸透を向上させる化合物を含みうる。そのような皮膚浸透向上剤の例はジメチルスルホキシド及び関連類似体を含む。
【0067】
この発明のエマルションの油性相は知られた方法で既知の成分から構成することができる。該相は単に一種の乳化剤(他にエマルジェント(emulgent)としても知られている)を含んでいてもよいが、望ましくは脂肪又は油との、あるいは脂肪と油の双方との少なくとも一の乳化剤の混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含有せしめられる。油と脂肪の双方を含むことがまた好ましい。併せて、安定化剤と共に又は安定化剤を伴わない乳化剤(類)はいわゆる乳化ロウを構成し、油及び脂肪と共にロウはクリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤に使用するのに適したエマルジェント及びエマルション安定化剤には、トゥイーン(Tween(登録商標))60、スパン(Span(登録商標))80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノ-ステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0068】
本発明の水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合せしめられて活性物質を含む。そのような賦形剤には、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメローゼ、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、及び分散又は湿潤剤、例えば天然に生じるホスファチド(例えばレシチン)、脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンステアラート)、長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が含まれる。水性懸濁液はまた一又は複数の保存料、例えばエチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾアート、一又は複数の着色剤、一又は複数の香味剤及び一又は複数の甘味料、例えばスクロース又はサッカリンを含みうる。
【0069】
アシルスルファミド化合物の薬学的組成物は滅菌された注射用製剤の形態、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液であってもよい。この懸濁液は上に述べた好適な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知技術に従って処方することができる。滅菌された注射用製剤はまた1,3-ブタン-ジオール溶液又は凍結乾燥粉末として調製したもののように、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒は水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌固定化油を溶媒又は懸濁媒質として便宜的に用いることができる。この目的に対して、合成のモノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定化油を用いることができる。また、オレイン酸のような脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。
単位投薬形態をつくるために担体物質と混合されうる活性成分の量は治療されるホストと特定の投与形式に応じて変わる。例えば、ヒトへの経口投与のための時間放出製剤は、全組成物の約5から約95%(重量:重量)と変わりうる適切で簡便な量の担体物質と共に配合されておよそ1から1000mgの活性物質を含みうる。薬学的組成物は投与のために容易に測定可能な量をもたらすように調製することができる。例えば、静脈点滴のための水溶液は、約30mL/hrの割合で適した体積の点滴が生じうるようにするために溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含みうる。
【0070】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤及び意図したレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含みうる水性及び非水性滅菌注射用溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
眼への局所投与に適した製剤には、好適な担体、特に活性成分のための水性溶媒に活性成分が溶解又は懸濁させられた点眼液がまた含まれる。活性成分はそのような製剤中に好ましくは0.5から20%、有利には0.5から10%、特に約1.5%w/wの濃度で存在する。
口への局所投与に適した製剤には、香味基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤に活性成分を含むパスティユ;及び適切な液体担体に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0071】
直腸投与のための製剤は、例えばココアバター又はサリチラートを含む好適な基剤を用いて座薬として提供することができる。
肺内又は経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロン(例えば0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等々のような増分ミクロンで0.1から500ミクロンの範囲の粒子径を含む)の範囲の粒子径を有し、これが鼻経路を通る迅速な吸入又は肺胞嚢に達するように口からの吸入によって投与される。好適な製剤には、活性成分の水性又は油性溶液が含まれる。エアゾール又は乾燥粉末投与に適した製剤は常法によって調製することができ、以下に記載されるようなHIV感染の治療又は予防にこれまで使用されている化合物のような他の治療剤と共に送達できる。
膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当該分野で適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができる。
【0072】
タンパク質治療剤の経口投与は腸での加水分解又は変性のために好ましくないが、経口投与に適したアシルスルファミド化合物の製剤は、予め決められた量のアシルスルファミド化合物をそれぞれ含むカプセル、カチェット(cachets)又は錠剤のような個別単位として調製することができる。
圧縮錠は、場合によってはバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、界面活性剤又は分散剤と混合せしめて粉末又は顆粒のような自由に流動する形態で活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は不活性な液体希釈剤で湿潤させた粉末化活性成分の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は場合によっては被覆し又は切り込み線を入れ、場合によっては活性成分の遅延又は制御放出をもたらすように製剤化される。
【0073】
錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性又は油性懸濁液、分散可能パウダー又は顆粒、エマルション、硬カプセル又は軟カプセル剤、例えばゼラチンカプセル、シロップ又はエリキシル剤を経口用途のために調製することができる。経口用途のためのアシルスルファミド化合物の製剤は薬学的組成物の製造のために当該分野で知られている任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、口に合う製剤を提供するために、甘味料、香味料、着色剤及び保存剤を含む一又は複数の薬剤を含みうる。錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合せしめられて活性成分を含む錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム又はナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクでありうる。錠剤は非被覆でも、又は胃腸管中での崩壊と吸着を遅延させるマイクロカプセル化を含む既知の方法によって被覆してもよく、それによって長時間にわたる持続作用をもたらす。例えば、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを単独で又はロウと共に用いることができる。
【0074】
製剤は、単位投薬又は複数投薬容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用の滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即時混合注射溶液及び懸濁液は既に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好適な単位投薬製剤は、活性成分の、上に記載されたような毎日の投薬又は毎日の部分用量単位、又はその適切な画分を含むものである。
本発明は更に獣医学的担体と共に上述の少なくとも一の活性成分を含む獣医学的組成物を提供する。獣医学的担体は組成物を投与する目的に有用な物質であり、不活性な又は獣医学分野で許容され活性成分と相容性がある固形、液体又は気体物質でありうる。これらの獣医学的組成物は非経口的、経口的又は任意の他の所望の経路によって投与することができる。
【0075】
併用療法
本発明のアシルスルファミド化合物は、抗凝固特性を有し又は血栓塞栓性疾患を治療するのに有用な第二化合物と、薬学的併用製剤又は併用療法としての投薬計画で併用することができる。薬学的併用製剤又は投薬計画の第二化合物は好ましくは互いに悪影響を及ぼさないように併用のアシルスルファミド化合物に相補的な活性を持つ。そのような分子は、好適には、意図された目的に効果的な量で併用薬中に存在する。
併用療法は同時又は逐次の計画として投与されうる。逐次的に投与される場合、併用薬は二回以上の投与で投与することができる。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、何れかの順での逐次投与が含まれ、その場合、好ましくは時間があり、両方の(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を作用させる。
上記の同時投与薬剤の任意のものに適した投薬量は現在使用されているものであり、新たに同定された薬剤と他の化学療法剤又は治療の併用作用(相乗作用)のために低下させることができる。
【0076】
併用療法は、併せて使用される活性成分が化合物を別個に使用して得られた効果の合計よりも大きい場合に「相乗効果」をもたらし、「相乗的」、つまり効果が達成されることが分かる。相乗効果は、活性成分が:(1)同時処方され、併用された単位投薬製剤として同時に投与又は送達され;(2)別個の製剤として交互に又は平行して送達される場合;又は(3)ある種の他の計画によって、達成することができる。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば別個にシリンジで異なった注射によって逐次的に投与され又は送達されるときに達成できる。一般に、交互療法の間、各活性成分の有効用量が逐次的、つまり連続的に投与される一方、併用療法では二又はそれ以上の活性成分の有効用量が併せて投与される。
【0077】
アシルスルファミド化合物の代謝産物
本発明の範囲にまた入るものは、その生成物が先行技術に対して新規で非自明である範囲で、ここに記載されたアシルスルファミド化合物のインビボ代謝産物である。そのような産物は例えば投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化、酵素分解等々から生じうる。従って、本発明は、本発明の化合物を、その代謝産物を生じるのに十分な時間哺乳動物に接触させることを含む方法によって産生される新規で非自明な化合物を含む。
代謝産物は典型的には放射標識(例えばC14又はH)ADCを調製し、それを動物、例えばラット、マウス、モルモット、サルのような動物、又はヒトに検出可能な用量(例えば約0.5mg/kgより多い)で非経口的に投与し、十分な時間かけて代謝を生じさせ(典型的には約30秒から30時間)、尿、血液又は他の生物学的試料からその転換産物を単離することによって同定される。これらの産物は、標識されているので容易に単離される(他のものは代謝産物中で生存するエピトープに結合可能な抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造は常套的な方法、例えばMS、LC/MS又はNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は当業者によく知られた一般的な薬剤代謝研究と同じ方法でなされる。転換産物は、それらがインビボで別に見出されない限り、本発明のアシルスルファミド化合物の治療用投薬の診断アッセイにおいて有用である。
【0078】
製造品
本発明の他の実施態様では、上述の疾患の治療に有用な物質を含む製造品又は「キット」が提供される。製造品は容器と該容器上の又はそれに付随したラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、症状を治療するのに有効なアシルスルファミド化合物又はその製剤を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明のアシルスルファミド化合物である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療のために使用されることを示している。一実施態様では、ラベル又はパッケージ挿入物は、アシルスルファミド化合物を含有する組成物が血栓塞栓性疾患を治療するのに使用できることを示している。また、ラベル又はパッケージ挿入物は、治療される患者が過剰な出血によって特徴付けられる血栓塞栓性疾患を持つ者であることを示しうる。ラベル又はパッケージ挿入物はまた組成物が他の疾患を治療するのに使用できることを示しうる。
製造品は(a)そこにアシルスルファミド化合物を含む第一の容器と;(b)そこに第二の薬学的製剤を含む第二の容器とを含み得、ここで第二の薬学的製剤は抗凝固活性を持つ第二化合物を含有する。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二化合物が発作、血栓、血栓症疾患の危険のある患者を治療することができることを示すパッケージ挿入物を更に含みうる。あるいは、又は付加的に、製造品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器を更に含んでもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0079】
典型的には、本発明の方法に使用される阻害剤は、周囲温度、適切なpH、所望する純度で、生理学的に許容可能な担体、すなわち使用される容量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である担体と混合することにより製剤化される。製剤のpHは主として化合物の特定の用途と濃度に依存するが、約3から約8の間の範囲とできる。pH5の酢酸バッファー中での製剤化が適切な実施態様である。
ここで使用される阻害化合物は、好ましくは滅菌されている。通常、化合物は固体組成物として保存されるが、凍結乾燥製剤又は水溶液も許容できる。
【0080】
本発明の組成物は良好な医療行為に一致した形で処方され、用量が決められ、投与されうる。この点で考慮すべき要因には、治療中の特定の疾患、治療中の特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、並びに医療師に知られている他の因子が含まれる。投与される化合物の「治療的に有効な量」はそのような考慮によって左右され、凝固因子媒介疾患を防止し、軽減し又は治療するのに必要な最少の量である。そのような量は好ましくはホストに毒性であるか又はホストを出血に対してより高い感受性にする量以下である。
【0081】
一般的な事項として、非経口投与される阻害剤の各投薬当たりの最初の薬学的に有効な量は、一日当たり約0.01−100mg/kg患者体重の範囲、好ましくは一日当たり約0.1から20mg/kg患者体重で、使用される化合物の典型的な最初の範囲は0.3から15mg/kg/日である。
本発明の化合物は、経口、局所、経皮的、非経口、皮下、腹膜内、肺内及び鼻腔内、及び免疫抑制局所治療に対して望まれるならば、病巣内投与(阻害剤を、移植前に移植片に浸透又は他の接触させることを含む)を含む任意の適した手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。
【0082】
分離方法
各例示的スキームでは、互いに及び/又は出発物質から反応生成物を分離するのが有利でありうる。各工程又は工程列の所望の生成物が当該分野で一般的な技術によって所望の均質度まで分離され、及び/又は精製される(以下、分離される)。典型的には、そのような分離は、多相抽出、溶媒又は溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、又はクロマトグラフィーを含む。クロマトグラフィーは例えば逆相及び順相;サイズ排除;イオン交換;高圧、中圧、低圧液体クロマトグラフィー法及び装置;小規模分析;疑似移動床(SMB)及び調製用薄膜又は厚膜クロマトグラフィー、並びに小規模薄層及びフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む任意の数の方法を含みうる。
他のクラスの分離方法は、所望の生成物、未反応出発物質、反応副産物等に結合し又はこれらを分離可能にするように選択された試薬での混合物の処理を含む。そのような試薬には、吸着剤又は活性炭のような吸着剤、モレキュラーシーブ、イオン交換媒質等が含まれる。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合の酸、酸性物質の場合の塩基、結合試薬、例えば抗体、結合タンパク質、選択的キレート剤、例えばクラウンエーテル、液/液イオン交換試薬(LIX)等でありうる。
【0083】
適した分離法の選択は関与する物質の性質に依存する。例えば、沸点、蒸留及び昇華における分子量、クロマトグラフィーでの極性官能基の有無、多相抽出における酸性及び塩基性媒質中での物質の安定性等である。当業者であれば所望の分離を達成するのに最も可能性のある技術を利用するであろう。
その立体異性体を実質的に含まない単一の立体異性体、例えばエナンチオマーは、光学的に活性な分解剤を使用するジアステレオマーの形成のような方法を用いてラセミ混合物を分割することによって得ることができる(Eliel, E.及びWilen, S. (1994) “Stereochemistry of Organic Compounds,” John Wiley & Sons, Inc.;Lochmuller, C. H., (1975) J. Chromatogr., 113(3):283-302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物とのイオン性ジアステレオマー塩の生成と分別再結晶又は他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬でのジアステレオマー化合物の生成、ジアステレオマーの分離、及び純粋な立体異性体への転換、及び(3)キラル条件下での実質的に純粋な又は濃縮された立体異性体の直接分離を含む任意の好適な方法によって分離し単離することができる。Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology,” Irving W. Wainer編, Marcel Dekker, Inc., New York (1993)を参照のこと。
【0084】
ここに示された構造において、何れかの特定のキラル原子の立体化学が特定されていない場合、全ての立体異性体が考えられ本発明の化合物として含まれる。立体化学が特定の配置を表す実線の楔又は鎖線によって指定されている場合、その立体異性体はそのように特定され定義される。
方法(1)では、ジアステレオマー塩は、エナンチオマー的に純粋なキラル塩基、例えばブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α-メチル-β-フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等を、酸性官能基を担持する不斉化合物、例えばカルボン酸及びスルホン酸と反応させることによって形成することができる。ジアステレオマー塩は分別再結晶又はイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘導することができる。アミノ化合物の光学異性体の分離の場合は、キラルカルボン酸又はスルホン酸、例えばショウノウスルホン酸、酒石酸、マンデル酸、又は乳酸の付加がジアステレオマー塩の生成を生じうる。
【0085】
別法として、方法(2)によって、分割される基質をキラル化合物の一エナンチオマーと反応させてジアステレオマー対を形成する(Eliel, E.及びWilen, S. (1994) Stereochemistry of Organic Compounds, John Wiley & Sons, Inc., p. 322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬、例えばメンチル誘導体と反応させた後、ジアステレオマーの分離と加水分解によって、純粋な又は濃縮されたエナンチオマーを生じせしめることによって形成させることができる。光学純度を決定する方法は、ラセミ混合体のキラルエステル、例えばメンチルエステル、例えば塩基の存在下で(-)メンチルクロロホルマート、又はMosherエステル、α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセタート(Jacob III. (1982) J. Org. Chem. 47:4165)を製造し、二つのアトロプ異性体エナンチオマー又はジアステレオマーの有無についてNMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性体化合物の安定なジアステレオマーは、アトロプ異性体ナフチル-イソキノリンの分離方法に従って順相及び逆相クロマトグラフィーによって分離し単離することができる(国際公開第96/15111号)。方法(3)によって、二つのエナンチオマーのラセミ混合物をキラル定常期を使用するクロマトグラフィーによって分離することができる(Chiral Liquid Chromatography (1989) W. J. Lough編 Chapman and Hall, New York;Okamoto, (1990) J. of Chromatogr. 513:375-378)。濃縮又は精製したエナンチオマーは、不斉炭素原子を持つ他のキラル分子を区別するために使用される方法、例えば旋光及び円偏光二色性によって区別することができる。
【実施例】
【0086】
本発明は、次の実施例を参照することにより更に十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。以下の例示的化合物は、H NMR及びMSを含む従来からの手段により特徴付け及び構造化されたものである。
全ての特許及び引用文献はその全体を出典明示によりここに取り込む。
【0087】
実施例1

4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンズアルデヒド(12.2g、42mmol)と4-アミノベンゾニトリル(5g、42mmol)を、メタノール(165ml)に溶解させ、2時間攪拌し、ついで60℃で30分加熱した。反応体を放置して室温まで冷却し、ベンジルイソニトリル(5g、42mmol)を添加した。反応体を0℃まで冷却し、三フッ化ホウ素エーテル(16ml、126mmol)を、5分以上かけて滴下した。反応体を0℃で20分攪拌し、ついで放置して室温にした後、周囲温度で2時間攪拌した。水(4ml)を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。次の日の朝、黄色の沈殿物が表れ、固形物を濾過した。固形物をメタノールで洗浄し、空気乾燥させたところ、8gの所望の生成物が生じた。真空にて濾液から溶媒を除去し、酢酸エチルで置き換えた。溶液を水と飽和した重炭酸ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)にかけたところ、さらに7gの所望の生成物(4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸メチルエステルが生じた。HNMR(CDCl):7.68(s,1H)、7.4(m,1H)、、7.0(s,1H)、6.61(d,2H)、6.2(s,1H)、5.2(s,2H)、3.87(s,3H)、3.75(s,3H)。
【0088】
実施例2

上述した酸のメチルエステル(920mg、2.85mmol)を、3/1のTHF/水(40ml)に懸濁させ、0℃まで冷却した。溶液を1NのLiOH(7.1ml、7.1mmol)で処理し、一晩攪拌した。pH=4.0が得られるまで、反応体をトリフルオロ酢酸で酸性化させた。真空にて溶媒を除去し、粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(0.5%の酢酸を含有する酢酸エチル)で精製したところ、1gのカルボン酸が生じた。
【0089】
実施例3

4,5-ジエトキシ-2-ニトロベンズアルデヒド(55.5mg、206mmol)と4-アミノベンゾニトリル(23g、195mmol)を、メタノール(700ml)に溶解させ、60℃で2時間攪拌した。反応体を放置して0℃まで冷却し、トシルメチルイソニトリル(45g、230mmol)を添加した。三フッ化ホウ素エーテル(78ml、620mmol)を、10分以上かけて滴下した。反応体を0℃で30分攪拌し、ついで放置して室温にした後、周囲温度で1.5時間攪拌した。水(18ml)を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。次の日、真空にてメタノールを除去し、残留物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を水で洗浄し、ついで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、真空にて酢酸エチルを除去した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、2:1ついで1:1)にかけたところ、46gの所望の生成物(4-エトキシ-5-エトキシ-2-ニトロ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸メチルエステルが生じた。
【0090】
実施例4

(4,5-ジエトキシ-2-ニトロ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸メチルエステル(11g、27.5mmol)を酢酸エチル(300m)に溶解させ、窒素雰囲気下、5%のPt/C(3g)を収容するフラスコに添加した。窒素を除去し、水素(バルーン)で置き換え、反応体を6時間激しく攪拌した。触媒を濾過し、真空にて溶媒を除去した。残留物をジクロロメタン(約300ml)に溶解させ、ピリジン(5.6ml、70mmol)を添加した。反応体を0℃まで冷却し、メタンスルホニルクロリド(2.5ml、33mmol)を滴下した。反応体を一晩攪拌した。溶液を水で洗浄し、真空にて溶媒を除去した。粗生成物を、シリカを使用するフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 1:1)で精製したところ、5gの所望の生成物-(4-シアノ-フェニルアミノ)-[4,5-ジエトキシ-2-(メタンスルホニルアミノ)-フェニル]-酢酸メチルエステルが生じた。生成物(4-シアノ-フェニルアミノ)-4,5-ジエトキシ-2-メタンスルホニルアミノ-フェニル)-酢酸メチルエステル(5g、10.7mmol)を、乾燥DMF(100ml)に溶解させ、炭酸セシウム(7.25g、22mmol)及びヨードメタン(1ml、16mmol)を添加した。反応体を室温で3時間攪拌し、真空にて溶媒を除去した。残留物を酢酸エチルに溶解させ、1Nの塩酸で酸性化させ、有機相を水で1回洗浄した。物質を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空にて溶媒を除去した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)で精製したところ、2.6gの所望の物質-(4-シアノ-フェニルアミノ)-[4,5-ジエトキシ-2-(メタンスルホニル-メチル-アミノ)-フェニル]-酢酸メチルエステルが生じた。
【0091】
実施例5

4-イソプロポキシ-5-エトキシ-ベンズアルデヒド(10.6g、50mmol)と4-アミノベンゾニトリル(5.9g、50mmol)を、メタノール(150ml)に溶解させ、60℃で1.6時間攪拌した。反応体を放置して0℃まで冷却し、トシルメチルイソニトリル(9.75g、50mmol)を添加した。三フッ化ホウ素エーテル(19ml、150mmol)を、10分以上かけて滴下した。反応体を0℃で30分攪拌し、放置して室温にした後、周囲温度で1.5時間攪拌した。水(4.5ml)を添加し、混合物を室温で2日攪拌した。次の日、真空にてメタノールを除去し、残留物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を水で洗浄し、ついで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、真空にて酢酸エチルを除去した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)にかけたところ、12.5gの所望の生成物(4-イソプロポキシ-5-エトキシ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸メチルエステルが生じた。生成物(4-イソプロポキシ-5-エトキシ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸メチルエステル(6g、16.3mmol)を、THF(約150ml)において、1NのLiOH(約50ml)で処理した。反応体を室温で6時間攪拌し、1Nの塩酸で酸性化させた。真空にてTHFを除去し、酢酸エチル中で生成物を抽出した。粗物質を逆相クロマトグラフィー(3%の酢酸を含有する酢酸エチル)で精製したところ、4.85gの所望の酸-(4-イソプロポキシ-5-エトキシ-フェニル)-(4-シアノ-フェニルアミノ)-酢酸が生じた。
【0092】
実施例6

2-ヒドロキシ-4-ニトロ-ベンゾニトリル(11.2g、68mmol)をDMF(200ml)に溶解させた。炭酸カリウム(11g、80mmol)と臭化ベンジル(9ml、75mmol)を添加した。反応体を一晩室温で攪拌した。真空にてDMFを除去し、残留物を酢酸エチルと水に溶解させた。有機相を分離させ、1NのNaOH、ついで水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物(5g)を酢酸エチル(75ml)に溶解させ、5%のPt/C(500mg)を含むフラスコに添加した。反応体を水素雰囲気(バルーン)下に置き、反応が完了(TLC)するまで、数時間激しく攪拌した。触媒を濾過し、溶媒を除去した。生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、4.12gの4-アミノ,2-ベンジルオキシベンゾニトリルが生じた。
【0093】
実施例7

4,5-ジエトキシ-ベンズアルデヒド(3.6g、17.8mmol)と4-アミノ-2-ベンジルオキシベンゾニトリル(3.7g、17.8mmol)を、メタノール(40ml)に溶解させ、2時間攪拌した。トシルメチルイソニトリル(3.48g、17.8mmol)を添加した。反応体を0℃まで冷却し、三フッ化ホウ素エーテル(6.7ml、54mmol)を滴下した。反応体を0℃で30分攪拌し、放置して室温にした後、周囲温度で3.5時間攪拌した。水(1.6ml)を添加し、混合物を室温で2日攪拌した。真空にてメタノールを除去し、残留物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を水で洗浄し、ついで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、真空にて酢酸エチルを除去した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)にかけたところ、4.2gの所望の生成物(3-ベンジルオキシ-4-シアノ-フェニルアミノ)-3,4-エトキシ-フェニル-)-酢酸メチルエステルが生じた。生成物を、水(50ml)メタノール(100m)及びTHF(50ml)において、LiOH(1.96g)で処理した。反応体を室温で3時間攪拌し、酢酸で酸性化させた。真空にて溶媒を除去し、酢酸エチル中で生成物を抽出した。粗物質を逆相クロマトグラフィー(3%の酢酸を含有する酢酸エチル)で精製したところ、5gの所望の酸-生成物(3-ベンジルオキシ-4-シアノ-フェニルアミノ)-3,4-エトキシ-フェニル-)-酢酸が生じた。
【0094】
実施例8

3,4-ジエトキシ-N-(4-シアノフェニル)-フェニルアラニン(1)(500mg、1.47mmol、1.0当量、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI、2.94mmol、2.0当量、Aldrich)及び15mlの乾燥DMFを、周囲温度で1.5時間攪拌した。スルファミド(4.41mmol、3.0当量、Aldrich)を添加した後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(4.41mmol、3.0当量、Fluka)を滴下した。数分以内で反応を完了させ(tlc50hex、48EtOAc、2HOAc)、10%クエン酸水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を水、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて濃縮したところ、650mgの黄色い泡が付与された。50EtOAc/48Hex/2HOAcから生成物を結晶化させ、濾過して収集したところ、487mgのN-[(4-シアノフェニルアミノ)-(3,4-ジエトキシフェニルアセチル)]-スルファミド(2)が付与された。
【0095】
実施例9

N-[(4-シアノフェニルアミノ)-(3,4-ジエトキシフェニルアセチル)]-スルファミド(2)(80mg、0.185mmol)を、0℃にて、HClガスを用いて予め飽和された20mlのエタノールに溶解させた。攪拌した反応混合物を放置して周囲温度まで温めた。2時間後、中間体イミノエステル塩酸塩が沈殿した。エタノール/HClを蒸発させ、固体状イミダートを、メタノールにアンモニアが入った2M溶液75mlに溶解させ、一晩攪拌した。HPLC分析(C-18、25cm、水に10〜90%のアセトニトリルが入ったもの、1.5ml/分 245nm)では、イミダートの残留は見られなかった。溶媒を蒸発させ、逆相HPLCにより生成物を精製した。組合せたフラクションを凍結乾燥させたところ、TFA塩として41mgの3が付与された。
【0096】
実施例10 組織因子/第VIIa因子のアンタゴニストアッセイ
この手順は、本発明のサンプル化合物に対する阻害定数(Ki)を決定するために使用することができる。
材料
アッセイバッファー:100mM Hepes pH7.8、140mM NaCl、0.1%PEG-8000、0.02%Tween-80、5mMのCaCl
血液凝固因子:組換えヒト第VIIa因子(NB#25942-16)
コファクター:可溶型組織因子(1-219)
基質:Chromozym-tPA(ベーリンガー・マンハイム、カタログ#1093 037)。HO中20mMで再構成。使用前にCaClを有するアッセイバッファーで4mMに希釈。
サンプル:(CaClを欠く)アッセイバッファーで3%DMSOにサンプルを希釈。
【0097】
手順
1. CaClを有するアッセイバッファー中、2μg/mL(90nM)の組織因子と1.5μg/mL(30nM)の第VIIa因子の溶液を調製。
2. 室温で15分間インキュベート。
3. 各ウェルに50μLのサンプルを添加。
4. 各ウェルに50μLの組織因子/第VIIa因子溶液を添加。
5. 穏やかに撹拌して室温で15分間インキュベート。
6. 各ウェルに50μLの基質を添加。
7. 20−25秒、プレートを撹拌。
8. 室温で全体で5分間10秒ごとに405nMの吸光度をモニター。
9. 10ポイントにわたってVmaxを算定。
【0098】
実施例11 第Xa因子、トロンビン、及び血漿カリクレインのアッセイ
これらの手順は本発明のサンプル化合物に対する阻害定数(Ki)を決定するために使用できる。
材料
アッセイバッファー:100mM Hepes pH7.8、140mM NaCl、0.1%PEG-8000、0.02%Tween-80
血液凝固因子:ヒト第Xa因子、トロンビン、又は血漿カリクレイン(Hematologic Technologies)。アッセイバッファーで0.45μg/mL(9.8nM)まで希釈。
基質:S-2222、S2366又はS2302 −(以下を参照-Chromogenix Inc,)。HO中5mMで再構成。使用前にアッセイバッファーで1.5mMに希釈。
サンプル:アッセイバッファーで3%DMSOにサンプルを希釈。
【0099】
手順
1. 各ウェルに50μLのサンプルを添加。
2. 各ウェルに50μLの適切に希釈した血液凝固因子を添加。
3. 穏やかに撹拌して室温で5分間インキュベート。
4. 各ウェルに50μLの適切に希釈した基質を添加。
5. 20−25秒、プレートを撹拌。
6. 室温で全体で5分間10秒ごとに405nMの吸光度をモニター。
7. 10ポイントにわたってVmaxを算定。
アッセイ−酵素、基質及び最終濃度

【0100】
実施例12 透過性アッセイ
カコ(Caco)-2又はMDCK細胞を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、及び1%MEM非必須アミノ酸溶液を補填したダルベッコ変法イーグル培地に維持した。細胞を、5%CO及び95%相対湿度の雰囲気中、37℃で培養した。トリプシン-EDTA溶液を用いて80−90%の集密度で細胞を継代させた。細胞を、ラット尾部のコラーゲンを前もって被覆したポリカーボネートトランスウェル(Transwell)(登録商標)フィルター上に播種した。孔径は0.4μMで1cmの成長面積であり、細胞は16x10細胞/mL又は10x10細胞/mL(それぞれカコ-2又はMDCK)の集密度で播種した。アッセイを始める前に、単層をハンクス平衡塩液(HBSS)ですすいだ。輸送アッセイドナー液はpH5.5、6.5又は7.4のHBSS液200μMであった。必要に応じて、1%DMSO又は1%カプチソール(Captisol)を可溶化剤として添加した。細胞を振盪水浴(35rpm)中でインキュベートした。200μLの試料を0、1.5及び3時間においてレシーバー側から採取した。試料をまた0及び3時間においてドナー側から採取した。細胞層の完全性をルシファーイエローでモニター(<1x10−6cm/秒)した。ルシファーイエロー試料をCytoFluor(登録商標)多ウェルプレートリーダー、シリーズ4000(励起1:485、発光1:530)で分析した。全ての他の試料をRP-HPLC及びPhenomenexC18Lunaの3μカラム(50x2.0mm)を使用してAgilentの1100HPLCシステムで分析した。移動相はHO中0.1%TFA及びアセトニトリル中0.1%TFAであった。以下の表の等価値は、ベンズアミジンがベンジルニトリルである、代理ベンジルニトリル化合物のものであることを表している。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式I:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
Qは:
(1)1〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキル;
(2)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した6〜約10の環炭素原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルキル;
(3)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルキル;
(4)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルキル;
(5)1〜約10の炭素原子を有するアルキル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル;
(6)2〜約10の炭素原子を有する置換されていてもよいアルケニル;
(7)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するアリール部分を含む、置換されていてもよいアラルケニル;
(8)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した5〜約10の環原子を有するヘテロアリール部分を含む、置換されていてもよいヘテロアラルケニル;
(9)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環炭素原子を有する炭素環部分を含む、置換されていてもよいカルボシクロアルケニル;
(10)2〜約10の炭素原子を有するアルケニル部分に結合した3〜約10の環原子を有する複素環部分を含む、置換されていてもよいヘテロシクロアルケニル;
(11)6〜約10の環炭素原子を有する置換されていてもよいアリール;
(12)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と5〜約10の環原子を有する、置換されていてもよいヘテロアリールで、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
(13)3〜約10の環炭素原子を有する、置換されていてもよい炭素環;
(14)炭素原子及びヘテロ原子から選択される環原子と3〜約10の環原子を有する、置換されていてもよい複素環で、該ヘテロ原子が窒素、酸素又は硫黄であるもの;
であり;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシであり;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
各Rは独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は双方のRが、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、カルボキシアルキル、アルコキシ、アルカノイル又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい複素環を形成し;
は、H、アルキル又は置換アルキルであり;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
は、H、未置換又は置換アルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R、並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択され;
各Rは独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R又はOC(O)Rであり;
とRは独立して、H又はC-Cアルキルである]
を有する化合物、及びその酸及び塩基との付加塩、溶媒和物及びプロドラッグ。
【請求項2】
Qが、ハロ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、OC-Cアルキル-NR、C-Cアルキル-C(O)NR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)R、C-Cハロアルキル、O-アラルキル、C(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NRS(O)、NRS(O)、S(O)、S(O)NRからなる群から選択される1-5の置換基で置換されていてもよいフェニルであり、ここでR及びRは独立して、H又はC-Cアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが、次の構造:

[上式中、
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシ、NR、SR又はORであり、ここでR及びRは独立して、H又は未置換又は置換C-Cアルキルであり;
10、R11及びZは独立して、それぞれ、H、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、OC-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R及びRは独立して、H又は未置換又は置換C-Cアルキルであり、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環であり、nは1又は2であり;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はニトロである]
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
10が、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアミノアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、並びにC-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロ、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、C-Cアミノアルキル、OC(O)-C-Cアルキル、C(O)O-C-Cアルキル、及びC(O)OHで置換されたフェノキシ-及びベンジルオキシ-からなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
11が、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRS(O)n-R又はNRS(O)n-R12であり、nが1又は2である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
及びZが水素であり、R10がOR、OR12、O(C-C10-アラルキル)、OC-Cアルキル-OR又はOC-Cアルキル-OR12である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
又はZが、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はニトロである、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
10が、OR、OR12、C-Cアルキル-OR又はC-Cアルキル-OR12である、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
11が、NRS(O)n-R又はNRS(O)n-R12であり、nが1又は2である、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
10及びZ、又はZ及びR11が互いに結合して、未置換又は置換の縮合した炭素環又は複素環を形成する、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
Qが、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、カルボキシ、アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいベンゾフラン複素環であり;該アルキル及びアルコキシが、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、カルボキシ、アルコキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよい、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル並びに炭素原子及び1-2のヘテロ原子から選択される5-6の環原子を持つヘテロアリールで、該ヘテロ原子がN、S、又はOであるものからなる群から選択され、またRが、ハロ、ニトロ、C-Cアルキル、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-OR、C-Cハロアルキル、C-Cアルキル-NR、C(O)OR、OC(O)R、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)R、及びNHC(O)NRからなる群から選択される1-3の置換基で置換されていてもよく、ここでRとRが独立してH又はC-Cアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
A及びBがCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
双方のR置換基がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
双方のR置換基がH、メチルであるか、又はそれらが依存する窒素原子と共同して、モルホリノ複素環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
PrがH、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アリールオキシ又はアリールであり;ここで、該アルコキシ、アルカノイル、アリールオキシ及びアリールがハロゲンで置換されていてもよく;PrがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
次の化合物:









からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン活性を阻害する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物に組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレインを接触させることを含んでなる方法。
【請求項19】
組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン媒介疾患を治療する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項21】
有効量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な希釈剤、担体又は賦形剤を含有する薬学的組成物。
【請求項22】
単位投薬形態に製剤化された請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
経口投与される請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
非経口投与される請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の薬学的組成物と;
容器と;
薬学的組成物が血栓症疾患の治療に使用できることを示すパッケージ挿入物又はラベル
を含んでなる製造品。

【公表番号】特表2007−505160(P2007−505160A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533263(P2006−533263)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015915
【国際公開番号】WO2004/113278
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】