説明

第VIIa因子のベンゾフラン阻害剤

式Iの化合物は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及びカリクレインのようなセリンプロテア-ゼ酵素を阻害する点で有用性を有し、改良された薬物動態学的特性を有している。これらの化合物は凝固疾患を予防し、及び/又は治療する方法において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
米国特許法施行規則第1.53(b)条に従って出願されたこの非仮出願は、2003年5月20日に出願された米国仮出願第60/471879号の米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
一態様では、本発明は、組織因子(TF)/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインの阻害剤である新規なベンゾフラン化合物、並びにこれら化合物を含む組成物に関する。ベンゾフラン化合物はこれらの因子を阻害し、それによって媒介される疾患を治療するのに有用である。例えば、これら化合物は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインを阻害することによって哺乳動物における血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療するのに有用である。
【0003】
(発明の背景)
正常な止血は凝固の開始、形成及び凝血溶解の過程の複雑なバランスの結果による。血球、特定の血漿タンパク質及び血管表面の間の複雑な相互作用が、傷害や失血が生じない限り、血液の流動性を維持する。
多くの重要な疾患状態は異常な血栓形成(血栓症)に関連している。例えば、アテローム斑(プラーク)の損傷による局所的な血栓形成が急性心筋梗塞及び不安定狭心症の主要な原因である。血栓溶解療法又は経皮的血管形成術の何れかによる冠動脈内血栓性閉塞の治療には患部血管の急性血管溶解再閉鎖が付随しうる。更に、特に下肢の手術を受ける高割合の患者が、患部領域への血流を減じる静脈血管系の血栓形成を被っている。合衆国では毎年、血栓予防がおよそ330万の患者に係わっており、深部静脈血栓がおよそ600000人の患者に生じている。突発性心房細動を有する毎年およそ5百万人の患者に卒中が生じている。静脈血栓塞栓症は、特に癌患者における血栓疾患の別の徴候である。
血栓の形成を制限し又は防止するための安全で効果的な治療用抗凝固剤に対する需要が継続して存在している。
【0004】
血液凝固は組織傷害時に体液を封じ込めるために重要であり、宿主の防御機構の重要な要素である。凝固(coagulation)又は凝血(clotting)(血栓形成)には、トロンビンの生成並びに不透性の架橋フイブリン血餅へのフィブリノーゲンの転換に至る過程における多数のチモーゲンの連続的活性化が関与している。トロンビンの生成は、集中的に研究され、広く特徴付けがなされてきた血液凝固カスケードの結果である。例えば、Lawson, J.H.等(1994) J. Biol. Chem. 269:23357を参照のこと。このカスケードの凝固反応は開始、増幅及び伝播段階を含む。また、カスケードは外因系経路と内因系経路に分けられている。内因系凝固カスケード経路では第XII、XI、及びIX因子が関与し、第IXa因子のそのコファクターとの複合体の第VIIIa因子が形成されるに至る。この複合体は第X因子を第Xa因子に転換する。第Xa因子は、そのコファクターとの複合体の第Va因子を形成する酵素であり、速やかにプロトロンビンをトロンビンに転換する。トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリン単量体に転換し、これが重合して血栓を形成する。外因系経路には第VIIa因子と組織因子が関与し、これらが複合体(組織因子/第VIIa因子)を形成し、第X因子を第Xa因子に転換する。内因系経路におけるように、第Xa因子がプロトロンビンをトロンビンに転換する。
【0005】
トロンビン(第IIa因子)は、上でみたように、フィブリノーゲンをフィブリンに転換することによって凝固カスケードにおいて中心的な位置を占めている。従って、トロンビン阻害剤の開発に多くの合成努力が向けられている。例えば、米国特許第5656600号;第5656645号;第5670479号;第5646165号;第5658939号;第5658930号及び国際公開第97/30073号を参照のこと。合成のトロンビン阻害剤として調製されている更なる化合物はN-アリールスルフィン化フェニルアラニンアミド類である。
承認されている抗凝固剤治療薬には経口投与されるワルファリン(COUMADIN(登録商標))及び皮下注射可能なLMWH(低分子量ヘパリン)が含まれる。キシメラガトラン(EXANTA(登録商標))は静脈血栓塞栓症の予防と治療及び心房細動の患者における発作の予防のための経口の直接血栓阻害剤として開発中のものである(AstraZeneca)。第Xa因子の既知の阻害剤にはビスアミジン化合物(Katakura, S.(1993) Biochem. Biophys. Res. Commun.,197:965)及びアルギニンの構造をベースとする化合物(国際公開第93/15756号;国際公開第94/13693号)が含まれる。またフェニル及びナフチルスルホンアミドは第Xa因子阻害剤であることが示されている(国際公開第96/10022号;国際公開第96/16940号;国際公開第96/40679号)。
【0006】
組織因子/第VIIa因子は、第X因子及び/又は第IX因子を活性化することによって血液凝固に関与するセリンプロテアーゼ複合体である。第VIIa因子は、肝臓で合成され血液中に分泌されて単鎖グリコペプチドとして循環する第VII因子というその前駆体から製造される。第VII因子のcDNA配列は特徴付けられている(Hagen等, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 83:2412-2416)。
組織因子/第VIIa因子の様々な天然及び合成の阻害剤が知られており、種々の有効性と選択性を有している。組織因子経路阻害剤(TFPI;Broze, 1995, Thromb. Haemostas., 74:90)及びネマトーダ抗凝固ペプチドc2(NAPc2;Stanssens等(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93:2149)は組織因子/第VIIa因子複合体との第4級阻害複合体の生成前に第Xa因子に結合する。小タンパク質の直接の阻害剤(Dennis等, 1994, J. Biol. Chem., 35:22137)及び組織因子/第VIIa因子の不活性形態もまた知られている(Kirchhofer等(1995) Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biol., 15:1098; Jang等(1995) Circulation, 92:3041)。また、結合親和性を保持しているがコファクター活性を減少させた変異体組織因子の合成ペプチド及び可溶型が調製されている(Roenning等(1996) Thromb. Res., 82:73;Kelley等(1997) Blood, 89:3219)。米国特許第5679639号はセリンプロテアーゼ活性を阻害するポリペプチドと抗体を記載している。米国特許第5580560号は改善された半減期を持つ変異体第VIIa因子を記載している。米国特許第5504067号及び米国特許第5504064号は出血の治療のための切断型組織因子を記載している。クニッツ(Kunitz)型ドメイン-組織因子融合タンパク質がまた二機能性抗凝固剤であることが示されている(Lee等(1997) Biochemistry, 36:5607-5611)。組織因子/第VIIa因子複合体が、外科手術の際の出血と血管内血栓症の防止の分離に基づく阻害剤の開発のための魅力ある標的であることが示されている(Harker等, 1995, Thromb. Haemostas., 74:464)。
【0007】
凝固カスケードにおける酵素をブロック又は阻害する化合物は、異常な血栓によって特徴付けられる症状を持つことが疑われる哺乳動物における血栓症を治療又は予防するのに治療的に有用である。例えば、動脈脈管構造について、確立されたアテローム硬化性斑の破裂による異常な血栓形成は、急性心筋梗塞及び不安定な狭心症の主要な原因である。血栓症治療又は経皮的冠動脈形成術(PTCA)による閉塞性心臓血栓形成の治療には血管の再閉鎖が伴いうる。静脈脈管構造では、特に腹部及び下半身領域の手術を受ける多くの患者が、血流を減少させ、肺塞栓に至りうる血栓形成を経験する。静脈及び動脈系双方において広まった血管内凝固障害が敗血症ショックの間に共通に生じ、迅速で広範な血栓形成と臓器不全に至りうる。
例えばワルファリンのようなクマリンタイプには、過剰な出血(少量及び多量の出血)を含むある種の治療的制約がある。典型的には遅い作用開始(プロトロンビン性)及び長い作用時間がまた緊急処置を複雑化し頻繁なモニタリングを必要とする(Levine等(1995) Chest 108 (4S), 276S;Lafata等(2000) Thrombosis and Thrombolytics 9:S13; Marchetti等(2001) Am. J. Med. 111:130;Garcia-Zozaya, I. (1998) J. of Kent. Med. Assoc. 96(4):143)。また典型的には、血液レベルをモニターするコストはクマリン及びヘパリンタイプの抗凝固療法のコストを遙かに凌ぐ。
【0008】
PTCAと再疎通術が閉塞した血管を治療するために好まれている処置である。しかし、これらの処置に続く動脈血栓症はなお心不全の主要な原因となっている。最も広く使用されている抗凝血剤であるヘパリンは急性動脈血栓症又は再血栓形成(rethrombosis)の治療と予防に必ずしも有効であるとは示されていない。
タンパク質の既知の三次元構造に基づく小分子阻害剤の合成と開発は現代医薬開発の挑戦である。多くのトロンビン阻害剤はヒルジンタイプの構造を持つように設計されている。Stubbs及びBode, Current Opinion in Structural Biology 1994, 4:823-832。新規の合成トロンビン阻害剤並びに第Xa因子及び組織因子/第VIIa因子が報告されている。例えば、Annual Reports in Medicinal Chemistry, 1995-1997, Academic Press, San Diego, CA;米国特許第5589173号及び米国特許第5399487号を参照のこと。
米国特許第6472393号及び国際公開第00/41531号は、アシルスルホンアミド及びベンズアミジン部分を持つ組織因子/第VIIa因子のようなセリンプロテアーゼ阻害剤のクラスを記述している。これらのセリンプロテアーゼ阻害剤は強力なインビボでの抗血栓活性を有していることが証明されている。しかしながら、最適化された活性、選択性及び薬物動態学的特性、例えばクリアランス、半減期及び生物学的利用能を有する組織因子/第VIIa因子阻害剤に対する需要は尚も存在している。組織因子/第VIIa因子阻害剤のプロドラッグ形態を用いて改善された経口的生物学的利用能を確立することができる。
【0009】
(発明の要約)
本発明の態様は、凝固カスケードにおける因子/酵素を阻害し、動脈又は静脈血管における血栓形成を予防し又は治療するのに有用である新規化合物である。これらの化合物は凝固因子阻害剤として、また一般に抗凝固剤として有用である。
一実施態様では、本発明の化合物は組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、又はカリクレインを選択的に阻害する。
本発明の一態様は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子又はトロンビンの活性を、阻害有効量の本発明の新規な阻害剤又はこれら化合物を含む組成物にこれら酵素を接触させることによって、阻害する方法を提供する。更なる目的は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン媒介疾患を、有効量の本発明の化合物の一又は該化合物を含む組成物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することによって、治療する方法を提供することにある。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一又は該化合物を含む組成物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することによって、血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法を提供することにある。
本発明は血栓塞栓性及び血液凝固疾患に対して生物活性を有している新規化合物を提供する。本発明のベンゾフラン化合物はかかる疾患を持つヒト患者を治療するのに有用であり得る。
【0010】
一側面では、式I:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
XはC=O又は(CR4a4b)で、ここでmは1又は2であり;
YはS(O)-R、S(O)-NR、S(O)-OR、C(O)R、C(S)R、C(O)-OR、又はC(O)-NRで、ここでnが1又は2であり;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシであり;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
R'とR"はそれぞれ独立してH、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニルであり;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ及びアルコキシカルボニル基はアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよく;上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
はC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は二つのNR及びNR基は共同して複素環を形成し;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
4aとRは、独立して、H、未置換又は置換アルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択されるメンバーであり;
4bはH、アルキル、又は置換アルキルであり;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R及びOC(O)Rから選択される群から選択され;
とRは独立してH又はC-Cアルキルであり;
はH、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、NR又はSRであり;ここで上記アルキル、アルコキシ、及びアルカノイルはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシ又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
11はH、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、O-C-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環で、nは1又は2である]
の化合物と、その酸及び塩基付加塩及びプロドラッグが提供される。
【0011】
式Iの化合物のプロドラッグ形態、例えばアセタミジン置換基Pr及び/又はPrがプロドラッグ部分を形成する場合は、改善された薬物動態学的性質、例えば経口生物学的利用能を有しうる。
本発明の他の態様は、式I化合物又はその薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物と薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又は賦形剤を含む薬学的製剤である。
本発明の一態様は、改善された性質を持つ本発明の化合物の新規な経口利用可能な抗凝固薬学的製剤を提供する。
本発明の他の態様は有効量の式I化合物と治療的性質を持つ第二化合物を含有する薬学的併用剤を提供する。
本発明の他の態様では、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン活性を阻害する方法において、有効量の式Iの化合物に組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレインを接触させることを含んでなる方法が提供される。
本発明の他の態様では、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン媒介疾患を治療する方法において、有効量の式Iのベンゾフラン化合物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法が提供される。
本発明の他の態様には、式Iのベンゾフラン化合物、容器、及び治療法を示すパッケージ挿入物又はラベルを含む製造品、つまりキットが含まれる。
本発明の他の態様には、式Iのベンゾフラン化合物を調製する方法、合成する方法、分離する方法、及び精製する方法が含まれる。
【0012】
(発明の詳細な記述)
定義
疾患に関する「第VIIa因子」、「組織因子/第VIIa因子」、「第VIIa組織因子」、「第Xa因子」、「トロンビン」又は「カリクレイン」という用語は、血液凝固に関与し、これらの酵素の一又は複数が疾患又は症状の生理学的徴候の少なくとも一を減少させ又は除去する疾病又は生理学的症状を意味する。
「血栓症」という用語は、哺乳動物の血管又はプラスチック又はガラス管やバイアルのような合成容器中での血液凝固又は血栓の発生又は生成を意味する。その元の部位から離れて他の部位で見出される血栓は血栓性塞栓と呼ばれる。
「異常な血栓症」という用語は、哺乳動物の良好な健康状態に反した哺乳動物で発生する血栓症を意味する。
【0013】
「アルキル」という用語は、単独で又は他の用語の部分として使用され、分枝状又は非分枝状の飽和した脂肪族炭化水素基であって、特定される炭素原子数を持ち、あるいは数が特定されていない場合には12を含み12までの炭素原子を持ち、又はn及びmが整数として特定されているC-Cアルキルとして表される基を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルフェニル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、3-ヘプチル、2-メチルヘキシル等が含まれる。「低級アルキル」「C−Cアルキル」及び「1から6の炭素原子のアルキル」という用語は同義語であって、置き換え可能に使用される。例示的な「C−Cアルキル」基はメチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル又はsec-ブチルである。
【0014】
「置換アルキル」又は「置換C−Cアルキル」(ここで、m及びnはアルキル基に含まれる炭素原子の範囲を特定する整数である)という用語は、1、2又は3のハロゲン(F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、非置換又は置換C−Cアルコキシ、保護されたヒドロキシ、アミノ(アルキル又はジアルキルアミノを含む)、保護されたアミノ、非置換及び置換C−Cアシルオキシ、非置換及び置換C−Cヘテロシクリル、非置換及び置換フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、非置換及び置換カルボアルコキシ、非置換及び置換アシル、カルバモイル、カルバモイルオキシ、シアノ、メチルスルホニルアミノ、非置換及び置換ベンジルオキシ、非置換及び置換C−Cカルボシクリル又はC−Cアルコキシ基により置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同一の又は異なる置換基で1回、2回又は3回置換されていてもよい。
【0015】
上記の置換アルキル基の例には、これらに限られないが;シアノメチル、ニトロメチル、ヒドロキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、カルボキシプロピル、2-アミノプロピル、アルキルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、カルバモイルオキシメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロ(n-ブチル)、2-アミノ(イソ-プロピル)、2-カルバモイルオキシエチル等が含まれる。またアルキル基はカルボシクロ基で置換されていてもよい。その例には、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、及びシクロヘキシルメチル基、並びに対応する-エチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル基等が含まれる。上記の基に入る下位の例には、置換メチル基、例えば、「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたメチル基が含まれる。置換メチル基の例には、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル(例えばテトラヒドロピラニルオキシメチル)、アセトキシメチル、カルバモイルオキシメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、カルボキシメチル、ブロモメチル及びヨードメチルなどの基が含まれる。
【0016】
「アルコキシ」という用語は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ等の基のような特定の炭素原子数を持つ基を示す。「置換アルコキシ」という用語は「置換C−Cアルキル」基、例えば2,2,2-トリフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロプロポキシ等と同じ置換基で置換されたこれらのアルコキシ基を意味する。
「アシルオキシ」という用語は、ここでは、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ等のような特定の炭素原子数を持つカルボアシルオキシ基を示す。「置換アシルオキシ」という用語は「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルコキシ基を意味する。
「アルキルカルボニル」、「アルカノイル」及び「アシル」という用語は、ここでは交換可能に使用され、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイル等の特定数の炭素原子を持つ基を包含する。
「カルボシクリル」、「カルボシクリリック」及び「カルボシクロ」という用語はそれだけでまたカルボシクロアルキル基のような複合基中の一部として使用される場合には、3から14の炭素原子、例えば3から7の炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式の脂肪族環を意味する。例示的なカルボシクリル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基が含まれる。「置換カルボシクリル」及び「カルボシクロ」という用語は、「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらの基を意味する。
「カルボシクロアルキル」基は上で定義されたアルキル基に共有的に結合した上で定義したカルボシクロ基である。
【0017】
「アルケニル」という用語は、一又は複数の炭素−炭素二重結合を含む所定数の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の炭化水素基を意味し、各二重結合は独立してシス、トランス、又は非幾何学的異性体である。「置換アルケニル」という用語は「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルケニル基を意味する。
「アルキニル」という用語は、一又は複数の炭素−炭素三重結合を含む所定数の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の炭化水素基を意味する。「置換アルキニル」という用語は「置換C−Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたこれらのアルキニル基を意味する。
「アルキルチオ」及び「C−C12置換アルキルチオ」という用語は、各々硫黄に結合したC−C12アルキル及びC−C12置換アルキル基を意味し、その硫黄は、アルキルチオ又は置換アルキルチオ基が所定の基又は置換基に結合する点である。
「アリール」という用語は、単独で又は他の用語の部分として用いられる場合、所定の炭素原子数を持つか、又は数が指定されない場合は、最大14までの炭素原子を持つ、縮合又は非縮合のホモサイクリック芳香族基を意味する。アリール基「Ar」には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル(naphthacenyl)等が含まれる(Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J.A.編)13版, 表7-2[1985]参照)。
「アリールオキシ」という用語はアリール基と酸素原子を含む基を意味する。アリールオキシ基はArO-として表すことができる。アリールオキシの例にはフェノキシ(CO-、PhO-)が含まれる。
「アリールアルコキシ」という用語は、アリール基、アルキル基及び酸素原子を含む基を意味する。アリールアルコキシ基はAr-(C-Cアルキル)-O-と表すことができる。アリールオキシの例にはベンジルオキシ(CCHO-、BnO-)が含まれる。
【0018】
「置換フェニル」又は「置換アリール」という用語は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えばC−Cアルキル)、アルコキシ(例えばC−Cアルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、トリフルオロメチル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、又は他の特定された基から選択される1、2、3、4又は5、例えば1−2、1−3又は1−4の置換基で置換されたフェニル基又はアリール基を示す。これらの置換基のメチン(CH)及び/又はメチレン(CH)基の一つはついで上に示したようなものと同様の基で置換されうる。「置換フェニル」という用語の例には、これらに限られないが、モノ-又はジ(ハロ)フェニル基、例えば4-クロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、3,4-ジブロモフェニル、3-クロロ-4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル等;モノ-又はジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2,4-ジヒドロキシフェニル、それらの保護されたヒドロキシ誘導体等;ニトロフェニル基、例えば3-又は4-ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば4-シアノフェニル;モノ-又はジ(低級アルキル)フェニル基、例えば、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2-メチルフェニル、4-(イソ-プロピル)フェニル、4-エチルフェニル、3-(n-プロピル)フェニル等;モノ又はジ(アルコキシ)フェニル基、例えば3,4-ジメトキシフェニル、3,4-エトキシフェニル、3-エトキシ-4-イソプロポキシフェニル、3-エトキシ-s-ブロトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-エトキシフェニル、4-(イソプロポキシ)フェニル、4-(t-ブトキシ)フェニル、3-エトキシ-4-メトキシフェニル等;3-又は4-トリフルオロメチルフェニル;モノ-又はジカルボキシフェニル又は(保護されたカルボキシ)フェニル基、例えば4-カルボキシフェニル;モノ-又はジ(ヒドロキシメチル)フェニル又は(保護されたヒドロキシメチル)フェニル、例えば3-(保護されたヒドロキシメチル)フェニル又は3,4-ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノ-又はジ(アミノメチル)フェニル又は(保護されたアミノメチル)フェニル、例えば2-(アミノメチル)フェニル又は2,4-(保護されたアミノメチル)フェニル;あるいはモノ-又はジ(N-(メチルスルホニルアミノ))フェニル、例えば3-(N-メチルスルホニルアミノ)フェニルが含まれる。また、「置換フェニル」という用語は、その置換基が異なっている二置換フェニル基、例えば3-メチル-4-ヒドロキシフェニル、3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシ-4-ブロモフェニル、4-エチル-2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル、2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル等、並びにその置換基の1、2、又は3が異なっている三置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノ、3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-フェニルスルホニルアミノ、及びその置換基が異なっている四置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-5-メチル-6-フェニルスルホニルアミノを表す。好ましい置換フェニル基には、3-メトキシフェニル、3-エトキシ-フェニル、4-ベンジルオキシフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノフェニル基が含まれる。また「置換フェニル」という用語は、アリール、フェニル又はヘテロアリール基が縮合したフェニル基も表す。縮合環はまた「置換アルキル」基に対して上に特定した置換基の任意のもので置換されうる。
【0019】
「アラルキル」という用語は、所定数の炭素原子を有するアルキル基に結合した所定数の炭素原子を有する1、2、又は3のアリール基を意味し、これらに限定されないが、ベンジル(CCH-、Bn-)、ナフチルメチル、フェネチル(CCHCH-)、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、トリチル等が含まれる。一つの例示的アリールアルキル基はベンジル基である。アラルキル基はAr-(C-Cアルキル)-と表すことができる。
「置換アラルキル」という用語は、任意の炭素において任意のアリール環位置を介してアルキル基と結合されたアリール基、例えばC−C10アリール基で置換されたアルキル基、例えばC−Cアルキル基であって、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アミノ、保護されたアミノ、C−Cアシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルバモイル、カルバモイルオキシ、シアノ、C−Cアルキルチオ、N-(メチルスルホニルアミノ)又はC−Cアルコキシから選択される1、2又は3の基で置換されている基を意味する。場合によっては、アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、又はN-(メチルスルホニルアミノ)基から選択される1、2、3、4又は5の基で置換されていてもよい。上述の如く、C−Cアルキル部分又はアリール部分の何れか又は両方が二置換されている場合、置換基は同じでも異なってもよい。またこの基は置換アラルコキシ基の置換アラルキル部分としても現れうる。
「置換アラルキル」という用語及びそれが「置換アルコキシ」基に生じる場合のこの基の例には、2-フェニル-1-クロロエチル、1-フェニル-1-クロロメチル、1-フェニル-1-ブロモメチル、2-(4-メトキシフェニル)エチル、2,6-ジヒドロキシ-4-フェニル(n-ヘキシル)、5-シアノ-3-メトキシ-2-フェニル(n-ペンチル)、3-(2,6-ジメチルフェニル)-n-プロピル、4-クロロ-3-アミノベンジル、6-(4-メトキシフェニル)-3-カルボキシ(n-ヘキシル)、5-(4-アミノメチルフェニル)-3-(アミノメチル)(n-ペンチル)等のような基が含まれる。
【0020】
ここで用いられる「カルボキシ-保護基」という用語は、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、カルボン酸基をブロック又は保護するのに通常用いられるカルボン酸基のエステル誘導体の一つを意味する。そのようなカルボン酸保護基の例には、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4-メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル、2,2',4,4'-テトラメトキシベンズヒドリル、アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル又はt-アミル、トリチル、4-メトキシトリチル、4,4'-ジメトキシトリチル、4,4',4"-トリメチトキシトリチル、2-フェニルプロプ-2-イル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2-トリクロロエチル、β-(トリメチルシリル)エチル、β-(ジ(n-ブチル)メチルシリル)エチル、p-トルエンスルホニルエチル、4-ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1-(トリメチルシリルメチル)プロプ-1-エン-3-イル等の部分が含まれる。誘導体化カルボン酸が、分子の他の部分に対する引き続く反応の条件に対して安定であり、適当な時点で分子の残りの部分を破壊することなく除去できる限り、用いられるカルボキシ保護基の化学種は重要ではない。特に、カルボキシ-保護された分子を強い求核塩基や、ラネーニッケル等の高活性化金属触媒を用いる還元条件を施さないことが重要である。(このような過酷な除去条件は、下記に検討するアミノ-保護基及びヒドロキシ-保護基を除去する際でもまた避けるべきである。)例示的なカルボン酸保護基は、アリル及びp-ニトロベンジル基である。セファロスポリン、ペニシリン及びペプチド分野で使用されるのと同様のカルボキシ保護基も、カルボキシ基置換基の保護に使用できる。これらの基の更なる例は、E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J.G.W. McOmie, 編, Plenum Press, New York, N.Y., 1973, Chapter 5,及びT.W. Greene,「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981, Chapter 5に見出される。「保護されたカルボキシ」という用語は、上記のカルボキシ-保護基の一つで置換されたカルボキシ基を意味する。
【0021】
ここで用いられる用語「アミド-保護基」は、ペプチド分野でペプチド窒素を望ましくない副反応から保護するのに典型的に用いられる任意の基を意味する。このような基には、p-メトキシフェニル、3,4-ジメトキシベンジル、ベンジル、O-ニトロベンジル、ジ-(pメトキシフェニル)メチル、トリフェニルメチル、(p-メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジフェニル-4-ピリジルメチル、m-2-(ピコリル)-N'-オキシド、5-ジベンゾスベリル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル等が含まれる。これらの保護基の更なる記載は、Theodora W. Greeneによる「Protective Groups in Organic Synthesis」, 1981, John Wiley and Sons, New York に見出すことができる。
「ヘテロシクリック基」又は「ヘテロシクリック」又は「ヘテロシクロ」という用語は、単独で及びヘテロシクロアルキル基のような複素基中の部分として使用されるとき、交換可能に使用され、一般に3から約10の環状原子の、所定の原子数を有する任意の単環式、二環式又は三環式の飽和又は非芳香的に不飽和な環を意味し、環状原子は炭素及び1、2、3又は4の窒素、硫黄又は酸素原子である。典型的には、5-員環は0から2の二重結合を有し、6-又は7-員環は0から3の二重結合を有し、窒素又は硫黄原子は場合によっては酸化されていてもよく、任意の窒素へテロ原子は場合によっては第4級化されていてもよい。その例には、ピロリジニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2H-ピラニル、テトラヒドロピラニル、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチエタニル、アジリジニル、アゼチジニル、1-メチル-2-ピロリル、ピペリジニル、及び3,4,5,6-テトラヒドロピペリジニルが含まれる。
【0022】
「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクロアルケニル」基は上で定義されたようなアルキル又はアルケニル基に共有結合された上で定義されたヘテロシクロ基である。
別段の定義をしない場合、「ヘテロアリール」は、単独で及びヘテロアラルキル基のような複素基の部分として使用されるとき、所定の原子数を有する任意の単環式、二環式、又は三環式芳香環系であって、少なくとも一つの環が窒素、酸素及び硫黄の群から選択される1から4のヘテロ原子を含む5-、6-又は7-員環であるものを意味する。例えば、少なくとも一のヘテロ原子が窒素である(上掲のLang's Handbook of Chemistry)。定義に含まれるものは、上記のヘテロアリール環の任意のものがベンゼン環に縮合している任意の二環式基である。
以下の環系は、「ヘテロアリール」という用語が意味するヘテロアリール(置換又は非置換)基の例である:チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、チアジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、テトラジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、及びプリニル、並びにベンゾ-縮合誘導体、例えばベンズオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリル。
【0023】
硫黄又は酸素原子と1から3の窒素原子を含む複素5員環系も、本発明での使用に適している。そのような基の例には、チアゾリル、特にチアゾル-2-イル及びチアゾル-2-イル-N-オキシド、チアジアゾリル、特に1,3,4-チアジアゾル-5-イル及び1,2,4-チアジアゾル-5-イル、オキサゾリル、例えばオキサゾル-2-イル、及びオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、及び1,2,4-オキサジアゾル-5-イルが含まれる。2から4の窒素原子を持つ5員環系の更なる例には、イミダゾリル、例えばイミダゾル-2-イル;トリアゾリル、例えば1,3,4-トリアゾル-5-イル;1,2,3-トリアゾル-5イル、1,2,4-トリアゾル-5-イル、及びテトラゾリル、例えば1H-テトラゾル-5-イルが含まれる。ベンゾ縮合誘導体の例は、ベンズオキサゾル-2-イル、ベンズチアゾル-2-イル及びベンズイミダゾル-2-イルである。
上記の複素環系の更なる好ましい特定の例は、1から3の窒素原子を含む6員環系である。そのような例には、ピリジル、例えばピリド-2-イル、ピリド-3-イル、及びピリド-4-イル;ピリミジル、例えばピリミド-2-イル及びピリミド-4-イル;トリアジニル、例えば1,3,4-トリアジン-2-イル、1,3,5-トリアジン-4-イル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イル、及びピラジニルが含まれる。ピリジンN-オキシド及びピリダジンN-オキシド及びピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニル及び1,3,4-トリアジン-2-イル基が例示的な基である。
置換されていてもよい複素環系の置換基と、上で検討した5員及び6員環系の更なる例は、W. Druckheimer等の米国特許第4278793号に見出すことができる。
【0024】
「ヘテロアリール」には;1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,2,4-チアジアゾル-5-イル、3-メチル-1,2,4-チアジアゾル-5-イル、1,3,4-チアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-ヒドロキシ-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イルのナトリウム塩、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5イル、1,3-オキサゾル-2-イル、1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-(ヒドロキシメチル)-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、1,2,4-オキサジアゾル-5-イル、1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-チオール-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-(メチルチオ)-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル5-イルのナトリウム塩、2-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、4-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、ピリド-2-イルN-オキシド、6-メトキシ-2-(n-オキシド)-ピリダズ-3-イル、6-ヒドロキシピリダズ-3-イル、1-メチルピリド-2-イル、1-メチルピリド-4-イル、2-ヒドロキシピリミド-4-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-as-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-メトキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2,6-ジメチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルが含まれる。
【0025】
「ヘテロアリール」の他の基には:4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(2-ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルが含まれる。
「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアラルケニル」基は上で定義されたようなアルキル基又はアルケニル基に共有結合した上で定義されたヘテロアリール基である。
【0026】
「薬学的に許容可能な塩」には、酸及び塩基の両方の付加塩が含まれる。「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的効能と性質とを保持し、生物学的に又は他の形で所望されないものではない塩を意味するもので、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等で生成され、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボキシル及びスルホンクラスのものから選択される。
【0027】
「薬学的に許容可能な塩基付加塩」には、無機塩基、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等から誘導されるものが含まれる。薬学的に許容可能な無毒の有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、自然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が含まれる。特定の非毒性有機塩基はイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
ここで用いられる「プロドラッグ」という用語は、薬学的に望ましい特徴又は性質(例えば、輸送、生物学的利用能、薬物動態学など)を向上させ、活性な親薬剤を放出するために生物内で自発的であれ酵素的であれ生変換を必要とする親薬剤分子の誘導体を意味する。
【0028】
(実施態様)
本発明は第VIIa因子を阻害し予期されない改善された薬物動態学的特性を示す化合物を提供する。本発明の化合物は改善されたインビボでのクリアランス及び/又は半減期を有する。
本発明の一実施態様では、第Xa因子、トロンビン又はカリクレインの阻害に対して特異的に組織因子/第VIIa因子を阻害する化合物が提供される。
他の実施態様は、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子又はトロンビン活性を、治療的阻害量の本発明の新規な阻害剤又はこれら化合物を含む組成物にこれらの酵素を接触させることにより阻害する方法を提供する。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一つ又はその化合物を含む組成物を治療を必要とする哺乳動物に投与することによって組織因子/第VIIa因子媒介疾患を治療する方法を提供することにある。更なる目的は、有効量の本発明の化合物の一つ又はその化合物と希釈剤、担体又は賦形剤を含む組成物を治療を必要とする哺乳動物に投与することによって血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法を提供することにある。
【0029】
本発明は一般にインビボでのクリアランス及び/又は半減期のような優れた薬物動態学的特性を示す式Iの化合物に関する:

ここで、R、R、R、R、R11、R'、R"、Pr、Pr、A、B、X、及びYは上記の意味を持つ。これらの意味において、アルキルは、非置換又は置換C-Cアルキルを含み;アルケニルは、非置換又は置換C−Cアルケニルを含み;アルキニルは、非置換又は置換C-Cアルキニルを含み;アリールは、非置換又は置換ナフチル又はフェニルを含み、アラルキルは非置換又は置換ベンジルを含む。
XはC=O又は(CR4a4b)で、ここでmは1又は2であり、R4a及びR4bは以下の記載の通りである。一実施態様では、Xは-CH-である。他の実施態様では、XはC(O)である。
基YはS(O)-R(ここでn=1又は2)、又は基S(O)-NR(ここでn=1又は2)、例えば、nが2でYがS(O)-Rである。YはまたS(O)-NRでnが2である。他の実施態様では、XがC(O)で、YがS(O)-R又はS(O)-NRで、それぞれアシルスルホンアミド又はアシルスルファミドを形成する。
【0030】
他の実施態様では、YがS(O)-Rである場合、Rは炭素原子及び1−2のヘテロ原子から選択された5−6環原子を持つヘテロアリール及びC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジルからなる群より選択され、ここで、ヘテロ原子はN、S、又はOであり、Rはハロ、ニトロ、C-Cアルキル、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OR、C-Cハロアルキル、C-Cアルキル-NR、C(O)OR、OC(O)R、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)R、及びNHC(O)NR(ここでR及びRは独立してH又はC-Cアルキルである)からなる群より選択された1−3の置換基で置換されていてもよい。この実施態様では、残りの可変種R、R、R、R、R11、Pr、Pr、R'、R"、A、B、X及びYのそれぞれは独立して選択され、上記のそれぞれの定義の任意の基でありうる。
【0031】
他の実施態様では、PrとPrは独立してPrとPrは独立して化合物の透過性と従って生物学的利用能を向上させるプロドラッグ基であり、取り込まれたときに開裂されて遊離のアミジン基を生じる。PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシである。上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよい。上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよい。上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1〜3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよい。「置き換え」とは、アルキル、アルコキシ、アルカノイル等の基の脂肪族部分の炭素原子と係留する水素原子(例えばメチレン)が特定の原子又は二価の基の一つで置換されていることを意味する。例えば、アルキル鎖のメチレン基を酸素原子と置換するとエーテルが形成される。一実施態様では、PrがHであり、Prが特定の基、例えばベンジルオキシ(OCHPh)から選択される。他の実施態様では、Prはヒドロキシ又はアルコキシ、あるいはハロゲン、例えばClで置換されていてもよく、又はFで三置換されていてもよいアルカノイルである。他の実施態様では、Prは2-トリクロロエチルオキシカルボニル、ヒドロキシ又はエトキシである。他の実施態様では、Prはアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルオキシ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニル、アリールアルカノイル又はアリールアルカノイルオキシからなる群から選択される炭素環を含む。このタイプのPr基には、ベンゾイル、1又は2のCF基で置換されたベンゾイル、1又は2のCF基で置換されたベンゾイルオキシが含まれる。Prはフェノキシ、ベンジルオキシ、フェニル環のオルト、メタ、又はパラ位で基が置換されたベンジルオキシでありうる。Prは、両メタ位がCFで置換された(つまり、3,5-二置換)ベンゾイル、メタ位とパラ位の双方がCFで置換された(つまり、3,4-二置換)ベンゾイル、オルト位とメタ位の双方がCFで置換された(つまり、2,3-二置換)ベンゾイル、又はCFで置換された(2,3-、3,4-又は3,5-二置換)ベンジルオキシカルボニルでありうる。あるいは、PrがHであり、Prが特定した基の一つから選択される。そのような実施態様では、Prはアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、又はアリルオキシである。
【0032】
R'とR"はそれぞれ独立してH、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニルであり;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ及びアルコキシカルボニル基はアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよく;上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1〜3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよい。
一実施態様では、R'はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノであり、ここで上記アルキル及びアルコキシは、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール及びアリールオキシで置換されていてもよい。他の実施態様では、R'はCl、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチル、ベンゾイルオキシエチルである。他の実施態様では、R'はメチルであり、R11はHである。
【0033】
他の実施態様では、R"は、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよいアルキル;アルカノイル、アルコキシカルボニルオキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アシルオキシアルキル又は複素環(ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はカルボキシルで置換されていてもよい)である。一実施態様では、R"は、H、エチル、プロピル、t-ブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1-メトキシ-1-メチルエチル、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル、メトキシメチル、アミノメチル、N-ジメチルアミノメチル、N-アセチルアミノメチル、N-アセチル-N-メチルアミノメチル、アセチルエチル、プロパノイル、アセチル、エチルオキシカルボニルオキシエメチル、アセチルオキシエチル、t-ブチルカルボニルオキシエチル、ベンゾイルオキシエチル、3,5-ジCF- ベンゾイルオキシエチル、トリクロロアセチルオキシエチル、プロパノイルオキシエチル、N-モルホリノ又はイミジゾール-1-イルである。一実施態様では、R"はH、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル又はプロピルである。
【0034】
はH、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、NR又はSRであり;ここで上記アルキル、アルコキシ、及びアルカノイルはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシ又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい。一実施態様では、RはH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノであり、ここで上記アルキル及びアルコキシはヒドロキシ、ハロゲン、アルコキシ、アリール及びアリールオキシで置換されていてもよく;R11はHである。他の実施態様では、RはH、メトキシ、エトキシ、エチル、プロピルエチニル、Cl、I、プロピン-1-イル又は1-クロロビニルである。他の実施態様では、Rはエチルである。他の実施態様では、Rはエトキシである。
11はH、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、O-C-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R及びRは独立してH又は未置換又は置換C-C10アルキルであり、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は上述の複素環であり、nは1又は2である。特定の実施態様では、R11はNR-Cアルキル-C(O)NR、NRS(O)n-R又はNRS(O)n-R12であり、ここで、RとR12は未置換か上に定義されたように置換されている。好適な置換されたRとR12には、上述のようにして置換された基、例えば一又は二のC-Cアルコキシ、C-Cアルコキシ-C-Cアルコキシ、ハロ、C-Cハロアルキル、C-Cヒドロキシアルキル、C-Cアミノアルキル、OC(O)-C-Cアルキル、C(O)O-C-Cアルキル、C-CアルキルC(O)OR、C-CアルキルOC(O)R又はC(O)OHを有するものが含まれる。一実施態様では、R11はHである。
【0035】
他の実施態様では、YはS(O)n-R(ここでnは1又は2である)である。この実施態様では、Rは上で定義されたようなもので、それぞれの残りの可変種は独立して選択され上に記載された定義の何れかを有しうる。
他の実施態様では、A及びBは独立してCH又はCRであり、ここでRはH、C1-6アルキル又はOHであり、残りの可変種は独立して選択されて上記の定義の何れかを有しうる。
他の実施態様では、RはHであり、又はRはCHであり、ここで残りの可変種は独立して選択され、上記した定義の任意のものを有しうる。
他の実施態様では、Xはカルボニル基(C=O)であり、ここで残りの可変種は独立して選択され、上記された定義の任意のものを有しうる。
【0036】
表1は一般式IIを有する本発明の幾つかの例示的な未置換のアミン化合物を示している。特定の化合物群がこの表に開示されており、各可変種として表の各欄から一つずつ選んだ置換基の全ての組み合わせを選択し、表1に開示された構造にこれらの基を組み合わせることにより得られる。



【0037】
本発明の特定の化合物には次のものが含まれる:



【0038】
本発明の他の化合物には次のものが含まれる:


【0039】
本発明の式Iの化合物には、次の式を有するものが含まれる。

【0040】
本発明の化合物にはまた式Iの化合物の製造に有用な新規な中間体が含まれる。そのような中間体には、式III:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
R'とR"はそれぞれ独立してH、カルボキシル、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルカノイル、C-Cアルカノイルオキシ又はC-Cアルコキシカルボニルであり;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ及びアルコキシカルボニル基はアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよく;上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
はC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は二つのNR及びNR基は共同して複素環を形成し;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
は、H、未置換又は置換C-Cアルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択され;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R及びOC(O)Rから選択される群から選択され;
とRは独立してH又はC-Cアルキルであり;
はH、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、アルコキシ、アルカノイル、NR又はSRであり;ここで上記アルキル、アルコキシ、及びアルカノイルはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシ又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
11はH、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、O-C-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環で、nは1又は2であり;
12はH、Cl、Br、I、CN、C(=NPr)(NHPr)、COOH、C(O)-NR及びCOORから選択され;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニルであり;
上記アルコキシカルボニルは、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよい]の化合物と、その酸及び塩基付加塩及びプロドラッグが含まれる。
【0041】
式IIIの化合物の一実施態様には次の式を有する化合物が含まれる:

【0042】
ベンゾフラン化合物の合成
本発明の化合物は、標準的な教科書に記載され、引用されている標準的な化学の方法論を用いた方法によって調製することができる(例えば、Smith, M.及びMarch, J. "March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th Edition" McGraw-Hill, New York, 2001); Collman, J.P., Hegedus, L.S., Norton, J.R., Finke, R.G. "Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry" University Science, Mill Valley, 1987; Larock, R.C. "Comprehensive Organic Transformations" Verlag, New York, 1989)。本発明の実施態様で明らかにされた変換のための試薬は標準的なものであり、標準的な参考本及び“Fiesers' Reagents for Organic Synthesis” Volumes 1-22 (John Wiley, New York)のようなシリーズに見出すことができる。
【0043】
ベンゾフラン中間体は、所望される本発明の最終のベンゾフラン化合物を得るために以下に記載される様々な合成経路において使用することができる標準的な有機合成技術を使用して調製することができる。置換基R"、R及びR11を有する例示的なベンゾフランアルデヒド中間体(c)は次のスキーム

に従って調製することができ、ここで、出発化合物(a)をカストロ-ステフェン(Castro-Stephens)カップリング反応(J Med Chem, 1996, 39(17):3269を参照)で銅触媒の存在下ピリジン中で、又は別法としてパラジウム触媒及び強塩基テトラメチルグアニジンと共にDMF中でR"置換アルキン(b)と反応させる。得られるアルデヒド中間体(c)を以下に記載する様々な合成経路で簡便に用いて本発明の最終のベンゾフラン化合物を得る。一実施態様では、R11はHである。別法として、次のスキームに従って、出発化合物(a)をシアノアニリンにカップリングして中間体(d)を得た後、これを環化させて中間体(e)を得る。

【0044】
シアノアニリンとの(a)の縮合は、触媒、例えばルイス酸触媒と、アルキルアルコール(ROH)、例えば低級、つまりメタノール、エタノール、i-プロパノール等のC-Cのアルキルアルコールの存在下で実施し、その中間体の加水分解が続く。加水分解条件は過剰の水、一般には10以上の当量の水を含みうる。適したルイス酸にはBFエーテル、AlCl等が含まれる。W-NCは、Wが任意の好適な炭化水素基、一般には例えば約12以下の炭素原子を有するアルキル、カルボシクロアルキル、又はアラルキル基でありうるイソニトリルである。一つのイソニトリルはベンジルイソニトリルである。エステル生成物は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィー、再結晶化等を含む標準的な技術によって精製することができ、シアノ基は、例えばピンナー反応のような既知の手順を使用してアミジノ基(C(NH)NH)に転換することができる。中間体化合物(e)のシアノ基は、例えばアルコール溶媒中でヒドロキシルアミンと反応させた後、アルコール溶媒中でレーニーNiで還元させることによってアミジンに転換され、又は最初にエタノール性HClと、次にアルコール性アンモニアと反応させることができる。別法として、ピリジン/ジエチルアミン(1/1)/硫化水素の次にヨウ化メチル/アセトニトリル、ついで酢酸アンモニウム/エタノールを用いる改変ピンナー(Pinner)反応を用いて、シアノ基を所望のアミジノ化合物に転換することができる。
【0045】
R'、R及びR11に置換基を持つ他の例示的なベンゾフランアルデヒド中間体(c)は次のスキーム

に従って調製することができ、ここでは、出発材料(a)をDMF中で臭化アリル試薬及びCsCOと反応させてアリル置換化合物を得て、Larock等(Tetrahedron Lett, 1988, 29:4687)の手順に従ってジメチルアセトアミド(DMA)中でNaCO、HCONa、BuNCl、ついで酢酸パラジウム(II)と反応させることによってこれをついで環化してベンゾフラン中間体(f)を得る。あるいは、次のスキームに従ってアリル置換フェノールを環化前にシアノアニリン化合物にカップリングさせて中間体(g)を得ることができる。

【0046】
出発化合物(a)は商業的に入手できるか又は標準的な有機合成技術を使用して調製される。特定の実施態様では、Rがアルキルである化合物(a)は次のスキーム:

に従って調製することでき、ここでは、出発の2-アルキルフェノールを、ジイソプロピルエチルアミン中のN-ブロモスクシンイミド及びCHClと、又は他の何らかの求電子臭素化剤と反応させた後、ヘキサメチレンテトラアミン及び酢酸と共に還流させてアルデヒド(a')を得て、ついでこれを既に記載したようにして環化することができる。
【0047】
置換ベンゾフラン中間体を調製する他の方法を次のスキームにおいて詳細に説明する。ここでは、パラ-ブロモフェノール化合物をハロメチルケトンでアルキル化させ、これにフランを生成するために酸性環化、ブロモ位のメタレーション及びアシル化が続く。

上のスキームに従うベンゾフランアルデヒド中間体の合成例を以下に示す:

【0048】
本発明の化合物の合成における他の中間体の例は以下に示す式を有する:

この式において、A、B、R、R4a、R4b、R、R、及びmは上述の意味を持つ。この化合物は幾つかの代替の合成経路を用いて調製することができる。調製後、例えばピンナー反応のような既知の手順を用いて、シアノ基はアミジノ基(C(NH)NH)に変換されうる。上に示されるような式を持つシアノ化合物は、ヒドロキシアミンに例えばアルコール溶媒中で反応させられ、続いてのレーニーNiを用いたアルコール溶媒中における還元、又は初めにエタノール性HClを用いて反応させ、ついでアルコール性アンモニアと反応させて対応のアミジノ化合物を生成することができる。別法としては、(1/1)ピリジン/ジエチルアミン及び水素硫化物に続いてヨウ化メチル/アセトニトリル、ついで酢酸アンモニウム/エタノールを用いる改変ピンナー反応により所望のアミジノ生成物が得られる。
【0049】
上に示した式を持つ化合物に対する一合成経路は以下のスキームに示されるように適切に置換した前駆体化合物を使用する縮合反応である。

この縮合は触媒、例えばルイス酸触媒、及びアルキルアルコール(ROH)、好ましくはメタノール、エタノール、i-プロパノール等の低級アルキルアルコールの存在下で進み、続いて過剰な水での、中間体の加水分解がなされる。好適なルイス酸には、BFエーテル化合物、AlCl等が含まれる。W-NCは、Wが約12以下の炭素原子を有する任意の好適な炭酸水素基、一般的にはアルキル、カルボシクロアルキル、又はアラルキル基でありうるイソニトリルである。例示的なイソニトリルはベンジルイソニトリルである。エステル生成物は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィー、再結晶化等を含む標準的な技術によって精製することができる。
【0050】
得られたエステルのアルコールへの還元は、ニトリルの前にエステルを還元する任意の既知の還元剤(H)を用いて達成することができる。好適な還元剤と手段はこの分野でよく知られている。例えば、Modern Synthetic Reaction, H. O. House, W. A. Benjami, Inc., 第2版, 1972を参照のこと。有用な還元剤は水素化ホウ素リチウムである。ついでアルコールは既知の化学反応を用いてアミンに変換されうる。適した条件は、アルコールを、最初はアジ化水素、DEAD、及びトリフェニルホスフィン(PPh)と反応させ、続いてPPh及び水と反応させるか、又は最初はフタルイミド、DEAD、PPhと反応させ、続いてヒドラジンと反応させる。これらの反応は以下の式に示される。あるいは、エステルを、好適なR4a基を導入するために求核炭素原子を持つ試薬と反応させてもよい。そのような試薬は、活性化メチレン炭素、例えばニトロ(NO)、カルボアルコキシ(COOR4a)等、グリニャール試薬(R4aMgHal、ここでHalはハロゲン)等のような一又は複数の強電子吸引基に隣接するメチレンを含み、ついでアルコールとアミンとに変換されうる。

【0051】
アミン官能基のスルホンアミドへの転換、及びニトリル官能基のアミジンへの転換は任意の所望の順序でなされうる。例示的な反応式は下の式に示される。

これらの変換は既知の化学反応、精製及び分離の方法を用いて達成される。アミンは塩基の存在中で、適切に置換した塩化スルホニル(ClSO)を用いた反応によりスルホンアミドと変換されうる。ニトリルはアルコール溶媒中でヒドロキシルアミンと反応させられ、続いて例えばレイニーニッケル及び水素原子を用いた還元、又はHCl/アルコール、及びそれにつぐアンモニア/アルコールとの反応となる。
【0052】
適した反応系の例を以下に示す。工程f及びgはR11=NOからR11=NHSOへの転換の場合は任意工程である。

a=BFOEt/EtOH、b=LiBH/DME、c=フタルイミド、DIAD/PPh/THF、d=HNNH/EtOH、e=RSOCl、(R11=NO:f=H/Pt/C/EtOH、及びg=RSOCl/NEt)、NHOH-HCl/NEt、H/Ra-Ni/MeOH。
【0053】
類似の関連した合成反応を、以下に示されるようなXがカルボニル(C=O)である対応する化合物を調製するために使用することができる。

m=2である化合物は、以下のスキームに示されるアルコールに相同であり、類似の方法でアミン(及びさらに複雑な化合物)に変換されうるアルコールを与える以下に示されるスキームにより調製できる。以下のスキームで、(a)は塩基、(b)はLiBHのような還元剤である。

【0054】
YがC(O)-R;C(O)-OR;C(O)-NRである化合物は、以下のスキームに示されるように、対応するアシルハロゲン化合物(例えばアシル塩化物)、アルキルハロホルメート(alkyl haloformate)(例えばクロロホルメート)又はイソシアネートを用いて上記のようにして調製される;

【0055】
適した反応列の一例を以下に示す。

【0056】
また上に示される縮合反応によって得られるエステルは、Xがカルボニル基である化合物の合成における中間体として機能しうる。エステルのカルボン酸への変換は、水酸化リチウム、ナトリウム、又はカリウムのようなアルカリ金属水酸化物を用いた鹸化によって容易に実施できる。スルホンアミドの酸へのカップリングは、カップリングのためのカルボン酸塩を、例えばカルボキシルジイミダゾール、又はペプチド合成で使用される他の通常の活性化剤を使用して先ず活性化させることにより達成される。カップリングの第2部分は、DBU又は水素化ナトリウムのような強塩基と、例えば炭化水素又はエーテル溶媒のような無水溶媒中、例えばテトラヒドロフラン中で、アルキル又はアリールスルホンアミドを混合することによりなされる。ニトリルは既に記述した方法でアミジンに変換される。

【0057】
XがC(O)であり、YがS(O)-NRである化合物(アシルスルファミド)は、次のスキーム

に従って対応するカルボン酸から調製することができ、ここでは、カルボン酸化合物がDMF中でHN-SO-NR(例えばHN-SO-NH)及び1,1'-カルボニルジイミダゾールと反応させられてスルファミドが得られる。
【0058】
本発明の化合物を調製するのに有用な中間化合物を調製する更なる方法は、以下に示され、直ぐに利用できるアルデヒド及びケトンからイミン化合物の合成、続いて求核炭素原子を含む試薬、例えば一般には「Nu]の求核付加反応を含む。「Nu」はCHR4aNO、CHR4aCOOR、CH(NO)(COOR)等のような部分であり、よく知られたグリニャール反応、塩基が電子離脱基(CO、COO、NO)に隣接して炭素原子からプロトンを取り除くのに使用される反応等を用いて生成される。

【0059】
「Nu」は以下に示されるような既知の還元反応によりCHR4aNH又はCHR4aCHOH又はCHR4aNHCHOHのような基に変換されうる。これらの中間体において、アミノ基は更にスルホン化され、そうでなければ上記したようにアシル化される。適した反応列の一例が以下に示される。

【0060】
代替合成方法を、上述のアルコール中間体を調製するのに使用することができる。以下のスキームに示されるように、通常は過酸を用いた初期スチレン誘導体の反応により、以下に示されるような非水素R4a及び/又はR置換基を含む生成物の混合物が生産され、これをシアノ-アニリン又は対応するシアノ-ピリジンを用いた反応により分離することなくアルコールに変換することができる。

アルコールはついで上述の本発明の化合物の調製に使用され得る。
A及びBが窒素である対応する化合物が望まれる場合には、上記の反応に使用されるアニリン又は置換アニリンが、対応するアミノ-ピリジン又は置換アミノ-ピリジン化合物と置き換えられる。
【0061】
また、本発明の範囲に含まれるものは、上述した化合物のプロドラッグである。適切なプロドラッグには、生理学的条件下で親化合物を生成するために例えば加水分解されて遊離される公知のアミノ保護-及びカルボキシ保護基が含まれる。一クラスのプロドラッグは、アミノ、アミジノ、アミノアルキレンアミノ、イミノアルキレンアミノ又はグアニジノ基の窒素原子が、ヒドロキシ(OH)基、アルキルカルボニル(-CO-W)基、アルコキシカルボニル(-CO-OW)、アシルオキシアルキル-アルコキシカルボニル(-CO-O-W-O-CO-W)基(ここで、Wは一価又は二価の基であり、上述の通りである)又は式-C(O)-O-CP1P2-ハロアルキルを有する基(ここで、P1及びP2は同一か又は異なっており、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、シアノ、C-Cハロアルキル又はアリールである)で置換された化合物である。窒素原子は、本発明の化合物のアミジノ基の窒素原子の一つでありうる。これらのプロドラッグ化合物は、上述した本発明の化合物を活性化アシル化合物と反応させ、本発明の化合物中の窒素原子を活性化アシル化合物のカルボニルに結合させることで調製される。適切な活性化カルボニル化合物はカルボニル炭素に結合する良好な脱離基を有しており、アシルハロゲン化物、アシルアミン、アシルピリジニウム塩、アシルアルコキシド、特にアシルフェノキシド、例えばp-ニトロフェノキシアシル、ジニトロフェノキシアシル、フルオロフェノキシアシル、及びジフルオロフェノキシアシルを含む。反応は一般的に発熱反応で、例えば−78から約50℃の低い温度にて不活性溶媒中で行われる。反応は通常は無機塩基、例えば炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウム、あるいは有機塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン等を含むアミンの存在下で行われる。プロドラッグの調製方法の一つは1998年10月22日公開の国際公開98/46576に記載されている。
【0062】
本発明の化合物は一又は複数の不斉炭素原子を含む。従って、化合物はジアステレオマー、エナンチオマー又はそれらの混合物として存在する。上述の合成は、出発物質又は中間生成物として、ラセマート、ジアステリオマー又はエナンチオマーを使用することができる。ジアステレオマー化合物はクロマトグラフィー又は結晶化法により分離することができる。同様に、エナンチオマー混合物は、同技術又は当該分野で公知の他の技術を使用して分離することができる。各不斉炭素原子はR又はS配置に存在し、これらの配置の双方が本発明の範囲内である。
【0063】
活性
ここに開示されたようにして製造され選択された本発明の化合物は、セリンプロテアーゼ酵素、例えば第VIIa因子、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、カリクレイン及び/又はトロンビンの阻害剤として驚くべきかつ予期できない結果を示すことが発見された。これらの化合物はこれらの酵素の触媒作用を阻害でき、しかして凝血カスケードを抑制し、凝血、及び/又は血管中での血栓又は閉塞の形成及び/又は血液の凝固時間の増加を予防又は制限するように機能する。従って、本発明の化合物は第X因子を第Xa因子に変換する組織因子/第VIIa因子の能力を阻害し、プロトロンビンをトロンビン(第IIa因子)に変換する第Xa因子の能力を阻害し;及び/又はフィブリノーゲンをフィブリン単量体に変換するトロンビンの能力を阻害する。
これらの酵素の阻害剤としての本発明の化合物の選択は、下の実施例に記載されているようなKi値を用いて決定することができる。
【0064】
本発明の化合物の抗凝固作用はアッセイを用いて試験することができる。プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)凝固時間アッセイは、増大した濃度の阻害剤を血漿に加えた後にプールした正常血漿(ヒト又は様々な動物種)中で実施される。凝固時間はACL300自動凝固アナライザー(Coulter Corp., Miami, FL)及び次に示される商業的に入手可能な試薬を用いて決定される。
PTアッセイ:様々な濃度での阻害剤の水溶液が、阻害剤1部に対して血漿が9部の割合でプールされた正常血漿に加えられる。ついで、これらの混合物はアナライザーのサンプルカップに加えられる。ヒト再脂肪化組織因子及びCa++イオンの混合物であるイノビン(Innovin)(登録商標)(Dade International Inc., Miami, FL)が試薬カップに加えられる。サンプルとイノビン(登録商標)の正確な容積が、37℃に予め恒温したアクリル回転体のセルに自動的に移される。2分間のインキュベーション時間の後、遠心により2つの化合物が一緒に混合された時点で凝血が開始する。凝血は光学的に監視され、凝固時間は秒単位で記録される。Janson等 (Janson, T.L.,等1984, Haemostasis 14: 440-444)と一致して、再脂肪化ヒト組織因子は試験した全ての種において凝血に有効な開始剤である。このシステムにおいて、コントロール血漿(血漿プラス阻害剤希釈剤)の凝固時間は通常8〜10秒である。曲線は凝固時間対阻害剤濃度のデータに適合され、PTがコントロール血漿に比べて2倍になった濃度がそれぞれの阻害剤に対して決定される。
【0065】
APTTアッセイ:阻害剤と血漿が一緒に混合され、上記のようにしてACL300サンプルカップに移される。アクチンFS(商品名)及びCaCl(Dade International Inc.,Miami, FL)がそれぞれ試薬カップ1及び2に加えられる。正確な容量のサンプル及び活性剤(アクチンFS(登録商標))が予め恒温した回転体(37℃)のセルに自動的に移され、遠心により混合される。2分間の活性化後、CaClの添加により凝血が開始される。PT法において記載されたようにして、凝血が監視され、データが算出される。血漿コントロールのAPTTは典型的には12から32秒であり、アッセイに使用される血漿の種に依存する。
表2は組織因子/第VIIa因子阻害剤8に対するアッセイ結果を示している。


【0066】
アカゲザルにおける血漿中濃度
図1は、実施例22におけるプロトコル後のアカゲザルにおけるIVボーラス投与後のベンゾフラン、p-アミノフェニルスルホンアミド第VIIa因子阻害剤及び3,5ビス-エトキシフェニル、p-アミノフェニルスルホンアミド第VIIa因子阻害剤の血漿中濃度のグラフを示す。
図2は、アカゲザルにおけるIVボーラス投与後のベンゾフラン、エチルスルホンアミド第VIIa因子阻害剤及び3,5ビス-エトキシフェニル、エチルスルホンアミド第VIIa因子阻害剤の血漿中濃度のグラフを示す。3,5ビス-エトキシフェニル、エチルスルホンアミドは75分の半減期と8.6mL/分/kg体重のクリアランスを有している。ベンゾフラン、エチルスルホンアミド第VIIa因子阻害剤は実施例22のプロトコル後に113分の半減期と5mL/分/kg体重のクリアランスを有している。
図3は、実施例22のプロトコル後に2mg/kgで経口投与された化合物8及び26のアカゲザルにおける血漿中濃度のグラフを示す。
【0067】
診断試薬
本発明の化合物は採血管中での凝固を阻害するためのインビトロの診断用試薬として有用である。採血する手段としてその中を真空したストッパーを備えた試験管の使用がよく知られている。Kasten, B. L., "Specimen Collection", Laboratory Test Handbook, 2版, Lexi-Comp Inc.,Cleveland , PP 16-17, Jacobs, D.S.等編, 1990。そのような真空管は凝固阻害添加剤の入っていないものであり得るが、その場合、それらは血液からの哺乳動物血清の分離に有用である。またそれらはヘパリン塩、クエン酸塩、シュウ酸塩のような凝固阻害添加剤を含んでいるかもしれないが、その場合は、それらは血液からの哺乳動物血漿の分離に有用である。本発明の化合物は血液収集管に導入され、組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン及び/又はカリクレインを阻害する機能をし、管中へ採血された哺乳動物の血液の凝固を防止する。
血液収集管で使用した場合、本発明の化合物は単独でも、混合物又は他のこの分野で知られる凝固抑制化合物と併用して使用してもよい。本発明の化合物の量は、管に血液が採血された場合に凝血塊の形成を防止又は阻害するのに十分な量でなければならない。これらの化合物はヘパリン塩のような既知の凝固阻害化合物と同様の方法で管に導入されうる。通常、液体は既知の方法を使用して凍結乾燥される。典型的には、管は約2から約10mlの哺乳動物血液を含み、化合物はこの量の血液の凝血を防止するのに十分な量で加えられる。適した濃度は約10−1000nMである。
【0068】
治療への利用
本発明のベンゾフラン化合物は哺乳動物の循環器系での塞栓及び血栓の形成を阻害し、従ってインビボでも有用である。血栓塞栓性の障害は哺乳動物の塞栓及び血栓の形成の感受性に直接的に関連していることが示されている。例えば、静脈管での血栓の形成は血栓性静脈炎を招き、典型的には安静と抗凝血剤の投与で治療される。本発明の抗凝血化合物で治療することができる他の症状には、血栓性リンパ管炎、血栓性静脈洞炎、血栓性心内膜炎、血栓性血管炎及び血栓性動脈炎が含まれる。
血管形成術や血栓溶解療法のような医療処置を受けた哺乳動物は特に血栓形成を生じやすい。本発明の化合物は血管形成術に伴う血栓形成の阻害に使用できる。これらは、また、組織プラスミノーゲン活性化因子及びその誘導体(米国特許第4752603号;第4766075号;第4777043号;欧州特許第199574号;欧州特許第238304号;欧州特許第228862号;欧州特許第297860号;PCT国際公開第89/04368号;PCT国際公開第89/00197号)、ストレプトキナーゼ及びその誘導体、又はウロキナーゼ及びその誘導体のような抗血栓剤と組み合わせて使用されて、血栓溶解療法に伴う動脈の再閉塞を防止することができる。上述の血栓溶解剤と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物は抗凝血剤より前に、同時に又は後で投与されうる。
【0069】
腎臓透析、血液酸素付加、心臓カテーテル及び同様の医療処置を受けた哺乳動物、並びに人工器官を導入した哺乳動物はまた血栓塞栓性障害にかかりやすい。生理学的条件において、また既知の原因で又はそれ無しで血栓塞栓性障害を引き起こしうる。
このように、ここで記載された化合物は哺乳動物における血栓塞栓性疾患の治療において有用性を有しうる。ここで記載された化合物はまた抗凝血剤治療の添加剤として、例えばアスピリン、ヘパリン、又はワルファリン(COUMADIN(登録商標))及び他の抗凝血剤と組み合わせて使用されうる。上述の様々な凝血障害は、疾患の結果として生じる出血を防止するように本発明の化合物で治療される。これら及び関連する疾患のためのここで記載された化合物の用途は当業者には明らかであろう。
この発明の化合物はまた、一般に中間体として、又は凝血セリンプロテアーゼ阻害剤の前駆体として有用であり、よって心疾患の治療に加えて、これら化合物を転移性疾患に、又は凝血の阻害を必要とする任意の疾患に有用に用いることができる。
【0070】
ベンゾフラン化合物の投与
本発明のベンゾフラン化合物は治療される症状に適した任意の経路によって投与されうる。好適な経路には、経口、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内及び硬膜外)、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、膣等が含まれる。好ましい経路は例えばレシピエントの状態に応じて変わりうることは理解される。ベンゾフラン化合物が経口投与される場合、化合物は、丸薬、カプセル剤、錠剤等々として薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と共に製剤化できる。ベンゾフラン化合物が非経口的に投与される場合、化合物は、薬学的に許容可能な非経口ビヒクルと共に単位投薬注射可能形態で製剤化できる。
【0071】
ベンゾフラン化合物の薬学的製剤
本発明の治療用ベンゾフラン化合物の薬学的製剤は様々な経路と投与タイプ用として調製することができる。所望の度合いの純度を持つベンゾフラン化合物を任意には薬学的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤又は安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences (1980) 16版, Osol, A.編)と、凍結乾燥製剤、粉砕粉末、又は水溶液の形態で混合する。製剤化は、周囲温度、適切なpH、所望する純度で、生理学的に許容可能な担体、すなわち使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である担体と混合することにより実施することができる。製剤のpHは主として化合物の特定の用途と濃度に依存するが、約3から約8の間の範囲とできる。pH5の酢酸バッファー中での製剤化が適切な実施態様である。
ここで使用される阻害化合物は、好ましくは滅菌されている。通常、化合物は固体組成物として保存されるが、凍結乾燥製剤又は水溶液も許容できる。
本発明の化合物は良好な医療行為に一致した形で処方され、用量が決められ、投与されうる。この点で考慮すべき要因には、治療中の特定の疾患、治療中の特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、並びに医療師に知られている他の因子が含まれる。投与される化合物の「治療的に有効な量」はそのような考慮によって左右され、凝血因子媒介疾患を防止し、軽減し又は治療するのに必要な最少の量である。そのような量は好ましくはホストに毒性であるか又はホストを出血に対してより高い感受性にする量以下である。
【0072】
一般的な事項として、非経口投与される阻害剤の各投薬当たりの最初の治療的に有効な量は、一日当たり約0.01−100mg/kg患者体重の範囲で、好ましくは一日当たり約0.1から20mg/kg患者体重で、使用される化合物の典型的な最初の範囲は0.3から15mg/kg/日である。
本発明のベンゾフラン化合物は、経口、局所、経皮的、非経口、皮下、腹膜内、肺内及び鼻腔内、及び免疫抑制局所治療に対して望まれるならば、病巣内投与(移植前に移植片に注入又は他の接触させることを含む)を任意の適した手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。許容される希釈剤、担体、賦形剤、及び安定化剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEENTM)、プルロニクス(PLURONICSTM)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、活性な薬学的成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマクロエマルション中に捕捉されていてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Science 16版, Osol, A. 編(1980)に開示されている。
【0073】
徐放製剤を調製することができる。徐放製剤の好適な例には、ベンゾフラン化合物を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
インビボ投与のために使用される製剤は滅菌されていなければならず、これは滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
製剤には上記の投与経路に適したものが含まれる。製剤は簡便には単位投薬形態で提供することができ、薬学の分野でよく知られている方法の任意のものによって調製することができる。一般に技術及び製剤はRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, PA)に見出される。このような方法は、一又は複数の補助成分を構成する担体と活性成分を混合する工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液体の担体又は細かく粉砕された固体担体又はその両方と均一にかつ密に混合し、ついで必要ならば生成物を成形することによって調製される。
【0074】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の感染に対しては、製剤は、好ましくは、例えば0.075から20%w/wの量で活性成分を含む局所用軟膏又はクリームとして適用される。軟膏に製剤される場合、活性成分はパラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に用いることができる。あるいは、活性成分は水中油クリーム基剤でのクリームに製剤化することができる。
所望される場合、クリーム基剤の水性相は多価アルコール、すなわち、例えばプロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)及びその混合物のような二又はそれ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含みうる。局所用製剤は、好ましくは、皮膚又は患部領域を通しての活性成分の吸収又は浸透を向上させる化合物を含みうる。そのような皮膚浸透向上剤の例はジメチルスルホキシド及び関連類似体を含む。
【0075】
本発明のエマルションの油性相は知られた方法で既知の成分から構成することができる。該相は単に一種の乳化剤(他にエマルジェント(emulgent)としても知られている)を含んでいてもよいが、望ましくは脂肪又は油との、あるいは脂肪と油との少なくとも一の乳化剤の混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含有せしめられる。油と脂肪の双方を含むことがまた好ましい。併せて、安定化剤と共に又は安定化剤を伴わないで乳化剤はいわゆる乳化ロウを構成し、油及び脂肪と共にロウはクリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤に使用するのに適したエマルジェント及びエマルション安定化剤には、トゥイーン(Tween(登録商標))60、スパン(Span(登録商標))80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノ-ステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0076】
本発明の水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合せしめられて活性物質を含む。そのような賦形剤には、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメローゼ、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、及び分散又は湿潤剤、例えば天然に生じるホスファチド(例えばレシチン)、脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が含まれる。水性懸濁液はまた一又は複数の保存料、例えばエチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾアート、一又は複数の着色剤、一又は複数の香味剤及び一又は複数の甘味料、例えばスクロース又はサッカリンを含みうる。
【0077】
ベンゾフラン化合物の薬物学的組成物は滅菌された注射用製剤の形態、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液であってもよい。この懸濁液は上に述べた好適な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知技術に従って処方することができる。滅菌された注射用製剤はまた1,3-ブタン-ジオール溶液又は凍結乾燥粉末として調製したもののように、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒は水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌固定化油を溶媒又は懸濁媒質として常套的に用いることができる。この目的に対して、合成のモノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定化油を用いることができる。また、オレイン酸のような脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。
単位投薬形態をつくるために担体物質と混合されうる活性成分の量は治療されるホストと特定の投与形式に応じて変わる。例えば、ヒトへの経口投与のための時間放出製剤は、全組成物の約5から約95%(重量:重量)と変わりうる適切で簡便な量の担体物質と共に配合されておよそ1から1000mgの活性物質を含みうる。薬物学的組成物は投与のために容易に測定可能な量をもたらすように調製することができる。例えば、静脈点滴のための水溶液は、約30mL/hrの割合で適した体積の点滴が生じうるようにするために溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含みうる。
【0078】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤及び意図したレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含みうる水性及び非水性滅菌注射用溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
眼への局所投与に適した製剤には、好適な担体、特に活性成分のための水性溶媒に活性成分が溶解又は懸濁させられた点眼液がまた含まれる。活性成分はそのような製剤中に好ましくは0.5から20%、有利には0.5から10%、特に約1.5%w/wの濃度で存在する。
口への局所投与に適した製剤には、香味基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤に活性成分を含むパスティユ;及び適切な液体担体に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0079】
直腸投与のための製剤は、例えばココアバター又はサリチレートを含む好適な基剤を用いて座薬として提供することができる。
肺内又は経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロン(例えば0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等々のような増分ミクロンで0.1から500ミクロンの範囲の粒子径を含む)の範囲の粒子径を有し、これが鼻経路を通る迅速な吸入又は肺胞嚢に達するように口からの吸入によって投与される。好適な製剤には、活性成分の水性又は油性溶液が含まれる。エアゾール又は乾燥粉末投与に適した製剤は常法によって調製することができ、以下に記載されるようなHIV感染の治療又は予防にこれまで血要されている化合物のような他の治療剤と共に送達できる。
膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当該分野で適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができる。
【0080】
タンパク質治療剤の経口投与は腸での加水分解又は変性のために好ましくないが、経口投与に適したベンゾフラン化合物の製剤は、予め決められた量のベンゾフラン化合物をそれぞれ含むカプセル、カチェット(cachets)又は錠剤のような個別単位として調製することができる。
圧縮錠は、場合によってはバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、界面活性又は分散剤と混合せしめて粉末又は顆粒のような自由に流動する形態で活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は不活性な液体希釈剤で湿潤させた粉末化活性成分の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は場合によっては被覆し又は切り込み線を入れ、場合によっては活性成分の遅延又は制御放出をもたらすように製剤化される。
【0081】
錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性又は油性懸濁液、分散可能パウダー又は顆粒、エマルション、硬カプセル又は軟カプセル剤、例えばゼラチンカプセル、シロップ又はエリキシル剤を経口用途のために調製することができる。経口用途のためのベンゾフラン化合物の製剤は薬学的組成物の製造のために当該分野で知られている任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、口に合う製剤を提供するために、甘味料、香味料、着色剤及び保存剤を含む一又は複数の薬剤を含みうる。錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合せしめられて活性成分を含む錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム又はナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクでありうる。錠剤は非被覆でも、又は胃腸管中での崩壊と吸着を遅延させるマイクロカプセル化を含む既知の方法によって被覆してもよく、それによって長時間にわたる持続作用をもたらす。例えば、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを単独で又はろうと共に用いることができる。
【0082】
製剤は、単位投薬又は複数投薬容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用の滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即時混合注射溶液及び懸濁液は既に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好適な単位投薬製剤は、活性成分の、上に記載されたような毎日の投薬又は毎日の部分用量単位、又はその適切な画分を含むものである。
本発明は更に獣医学的担体と共に上述の少なくとも一の活性成分を含む獣医学的組成物を提供する。獣医学的担体は組成物を投与する目的に有用な物質であり、不活性な又は獣医学分野で許容され活性成分と相容性がある固形、液体又は気体物質でありうる。これらの獣医学的な組成物は非経口的、経口的又は任意の他の所望の経路によって投与することができる。
【0083】
併用療法
本発明のベンゾフラン化合物は、抗凝固特性を有し又は血栓塞栓性疾患を治療するのに有用な第二化合物と、薬学的併用製剤又は併用療法としての投薬計画で併用することができる。薬学的併用製剤又は投薬計画の第二化合物は好ましくは互いに悪影響を及ぼさないように併用のベンゾフラン化合物に相補的な活性を持つ。そのような分子は、好適には、意図された目的に効果的な量で併用薬中に存在する。
併用療法は同時又は逐次の計画として投与されうる。逐次的に投与される場合、併用薬は二回以上の投与で投与することができる。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、何れかの順での逐次投与が含まれ、その場合、好ましくは時間があり、両方の(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を作用させる。
上記の同時投与薬剤の任意のものに適した投薬量は現在使用されているものであり、新たに同定された薬剤と他の化学療法剤又は治療の併用作用(相乗作用)のために低下させることができる。
【0084】
併用療法は、併せて使用される活性成分が化合物を別個に使用して得られた効果の合計よりも大きい場合に「相乗効果」をもたらし、「相乗的」、つまり効果が達成されることが分かる。相乗効果は、活性成分が:(1)同時処方され、併用された単位投薬製剤として同時に投与又は送達され;(2)別個の製剤として交互に又は平行して送達される場合;又は(3)ある種の他の計画によって、達成することができる。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば別個にシリンジで異なった注射によって逐次的に投与され又は送達されるときに達成できる。一般に、交互療法の間、各活性成分の有効用量が逐次的、つまり連続的に投与される一方、併用療法では二又はそれ以上の活性成分の有効用量が併せて投与される。
【0085】
ベンゾフラン化合物の代謝産物
本発明の範囲にまた入るものは、その生成物が先行技術に対して新規で非自明である範囲で、ここに記載されたベンゾフラン化合物のインビボ代謝産物である。そのような産物は例えば投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化、酵素分解等々から生じうる。従って、本発明は、本発明の化合物を、その代謝産物を生じるのに十分な時間哺乳動物に接触させることを含む方法によって産生される新規で非自明な化合物を含む。
代謝産物は典型的には放射標識(例えばC14又はH3)ADCを調製し、それを動物、例えばラット、マウス、モルモット、サルのような動物、又はヒトに検出可能な用量(例えば約0.5mg/kgより多い)で非経口的に投与し、十分な時間かけて代謝を生じさせ(典型的には約30秒から30時間)、尿、血液又は他の生物学的試料からその転換産物を単離することによって同定される。これらの産物は、標識されているので容易に単離される(他のものは代謝産物中で生存するエピトープに結合可能な抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造は常套的な方法、例えばMS、LC/MS又はNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は当業者によく知られた一般的な薬剤代謝研究と同じ方法でなされる。転換産物は、それらがインビボで別に見出されない限り、本発明のベンゾフラン化合物の治療用投薬の診断アッセイにおいて有用である。
【0086】
製造品
本発明の他の実施態様では、上述の疾患の治療に有用な物質を含む製造品又は「キット」が提供される。製造品は容器と該容器上の又はそれに付随したラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、症状を治療するのに有効なベンゾフラン化合物又はその製剤を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明のベンゾフラン化合物である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療のために使用されることを示している。一実施態様では、ラベル又はパッケージ挿入物は、ベンゾフラン化合物を含有する組成物が血栓塞栓性疾患を治療するのに使用できることを示している。また、ラベル又はパッケージ挿入物は、治療される患者が過剰な出血によって特徴付けられる血栓塞栓性疾患を持つ者であることを示しうるラベル又はパッケージ挿入物はまた組成物が他の疾患を治療するのに使用できることを示しうる。
製造品は(a)そこにベンゾフラン化合物を含む第一の容器と;(b)そこに第二の薬学的製剤を含む第二の容器とを含み得、ここで第二の薬学的製剤は抗凝固活性を持つ第二化合物を含有する。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二化合物が発作、血栓、血栓症疾患の危険のある患者を治療することができることを示すパッケージ挿入物を更に含みうる。あるいは、又は付加的に、製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器を更に含んでもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0087】
分離方法
各例示的スキームでは、互いに及び/又は出発物質から反応生成物を分離するのが有利でありうる。各工程又は工程列の所望の生成物が当該分野で一般的な技術によって所望の均質度まで分離され、及び/又は精製される(以下、分離される)。典型的には、そのような分離は、多相抽出、溶媒又は溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、又はクロマトグラフィーを含む。クロマトグラフィーは例えば逆相及び順相;サイズ排除;イオン交換;高圧、中圧、低圧液体クロマトグラフィー法及び装置;小規模分析;疑似移動床(SMB)及び調製用薄膜又は厚膜クロマトグラフィー、並びに小規模薄層及びフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む任意の数の方法を含みうる。
他のクラスの分離方法は、所望の生成物、未反応物質、反応副産物等に結合し又はこれらを分離可能にするように選択された試薬での混合物の処理を含む。そのような試薬には、吸着剤又は活性炭のような吸着剤、モレキュラーシーブ、イオン交換媒質等が含まれる。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合の酸、酸性物質の場合の塩基、結合試薬、例えば抗体、結合タンパク質、選択的キレート剤、例えばクラウンエーテル、液/液イオン交換試薬(LIX)等でありうる。
【0088】
適した分離法の選択は関与する物質の性質に依存する。例えば、沸点、蒸留及び昇華における分子量、クロマトグラフィーでの極性官能基の有無、多相抽出における酸性及び塩基性媒質中での物質の安定性等である。当業者であれば所望の分離を達成するのに最も可能性のある技術を利用するであろう。
その立体異性体を実質的に含まない単一の立体異性体、例えばエナンチオマーは、光学的に活性な分解剤を使用するジアステレオマーの形成のような方法を用いてラセミ混合物を分割することによって得ることができる(Eliel, E.及びWilen, S. (1994) “Stereochemistry of Organic Compounds,” John Wiley & Sons, Inc.;Lochmuller, C. H., (1975) J. Chromatogr., 113(3):283-302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物とのイオン性ジアステレオマー塩の生成と分別再結晶又は他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬でのジアステレオマー化合物の生成、ジアステレオマーの分離、及び純粋な立体異性体への転換、及び(3)キラル条件下での実質的に純粋な又は濃縮された立体異性体の直接分離を含む任意の好適な方法によって分離し単離することができる。“Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology,” Irving W. Wainer編, Marcel Dekker, Inc., New York (1993)を参照のこと。
【0089】
ここに示された構造において、何れかの特定のキラル原子の立体化学が指定されていない場合、全ての立体異性体が考えられ本発明の化合物として含まれる。立体化学が特定の配置を表す実線の楔又は鎖線によって指定されている場合、その立体異性体はそのように特定され定義される。
方法(1)では、ジアステレオマー塩は、エナンチオマー的に純粋なキラル塩基、例えばブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α-メチル-β-フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等を、酸性官能基を担持する不斉化合物、例えばカルボン酸及びスルホン酸と反応させることによって生成することができる。ジアステレオマー塩は分別再結晶又はイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘導することができる。アミノ化合物の光学異性体の分離の場合は、キラルカルボン酸又はスルホン酸、例えばショウノウスルホン酸、酒石酸、マンデリン酸、又は乳酸の付加がジアステレオマー塩の生成を生じうる。
【0090】
別法として、方法(2)によって、分割される基質をキラル化合物の一エナンチオマーと反応させてジアステレオマー対を形成する(Eliel, E.及びWilen, S. (1994) Stereochemistry of Organic Compounds, John Wiley & Sons, Inc., p. 322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬、例えばメンチル誘導体と反応させた後、ジアステレオマーの分離と加水分解によって、純粋な又は濃縮されたエナンチオマーを得ることができる。光学純度を決定する方法は、ラセミ混合体のキラルエステル、例えばメンチルエステル、例えば塩基の存在下で(-)メンチルクロロホルメート、又はMosherエステル、α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III. (1982) J. Org. Chem. 47:4165)を製造し、二つのアトロプ異性体エナンチオマー又はジアステレオマーの有無についてNMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性体化合物の安定なジアステレオマーは、アトロプ異性体ナフチル-イソキノリンの分離方法に従って順相及び逆相クロマトグラフィーによって分離し単離することができる(国際公開第96/15111号)。方法(3)によって、二つのエナンチオマーのラセミ混合物をキラル定常期を使用するクロマトグラフィーによって分離することができる(Chiral Liquid Chromatography (1989) W. J. Lough編 Chapman and Hall, New York;Okamoto, (1990) J. of Chromatogr. 513:375-378)。濃縮又は精製したエナンチオマーは、不斉炭素原子を持つ他のキラル分子を区別するために使用される方法、例えば旋光及び円偏光二色性によって区別することができる。
【実施例】
【0091】
本発明は、次の実施例を参照することにより更に十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。全ての特許及び引用文献はその全体を出典明示によりここに取り込む。
実施例1

N-ブロモスクシンイミド(29.1g、163.7mmol)をCHCl懸濁液(200mL)として2時間かけて2-エチルフェノール(20.0g、163.7mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.3mL、16.4mmol)、及びCHCl(300mL)の溶液に添加した。得られた溶液を室温で2時間維持した。1規定のHCl(100mL)を加え、混合物を0.5時間激しく撹拌した。層を分離し、有機相を1NのHCl(2x100mL)で洗浄した。混合した水性層をCHCl(1x100mL)で抽出し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(SiO、勾配溶出5から10%CHCl/ヘキサン)によって精製して、26.5g(80%)の2-ブロモ-6-エチルフェノール1を黄色油として得た。
【0092】
実施例2

2-ブロモ-6-エチルフェノール1(3.8g、18.8mmol)ヘキサメチレンテトラアミン(10.6g、75.4mmol)、及び酢酸(120mL)の溶液を還流下で12時間加熱した。殆どの溶媒を減圧下で除去し、残留物を水(500mL)に注ぎ、酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。混合した有機層を、ガスの発生が止まるまで飽和した水性NaHCOで洗浄した。有機層を鹹水(1x100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(SiO、勾配溶出5から10%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、2.0g(46%)の3-ブロモ-5-エチル-4-ヒドロキシベンズアルデヒド2を無色固形物として得た。
【0093】
実施例3

3-ブロモ-5-エチル-4-ヒドロキシベンズアルデヒド2(2.90g、12.6mmol)、4-アミノベンゾニトリル(1.64g、13.9mmol)、及びメタノール(30mL)の溶液を1時間室温に維持した。溶液を0℃まで冷却し、トシルメチルイソシアニド(2.95g、15.2mmol)及びBF・EtO(5.70mL、45.4mmol)を逐次添加した。混合物を5時間かけて室温まで温めた後、水(1.13mL、63mmol)を加え、混合物を12時間激しく撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル(200mL)と飽和水性NaHCO(200mL)の間で分配した。水性層を酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。混合した有機層を飽和水性NaHCO(1x100mL)、鹹水(1x100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過した。その溶液を濃縮し、セライト(Celite)(登録商標)に吸着させた後、シリカゲルクロマトグラフィー(SiO、勾配溶出10−15−20%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、3.8g(77%)の2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(3-ブロモ-5-エチル-4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル3を無色固形物として得た。
【0094】
実施例4

臭化アリル(0.92mL、10.7mmol)を、2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(3-ブロモ-5-エチル-4-ヒドロキシフェニル)アセテート3(3.8g、9.76mmol)、CsCO(3.5g、10.74mmol)及びDMF(40mL)の激しく撹拌した混合物に5分かけて滴下して添加した。その混合物を4時間激しく撹拌した後、1/2-飽和NHCl(400mL)に注いだ。その混合物をEtO(3x100mL)で抽出した。混合した有機層を水(3x50mL)、鹹水(1x100mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(SiO、勾配溶出10−15−20%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、3.4g(81%)の2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(4-(アリルオキシ)-3-ブロモ-5-エチルフェニル)酢酸メチル4を無色固形物として得た。
【0095】
実施例5

Larock等(Tetrahedron Lett, 1988, 29:4687)の一般的手順に従って、2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(4-(アリルオキシ)-3-ブロモ-5-エチルフェニル)酢酸メチル4(5.00g、11.7mmol)、NaCO(3.09g、29.1mmol)、HCONa(800mg、11.7mmol)、BuCl(3.56g、12.8mmol)及びDMAの混合物を、Nを1時間バブリングして脱気した。酢酸パラジウム(II)(130mg、0.58mmol)を添加し、フラスコをガラスストッパーで密封し、80℃で19時間加熱した。混合物を1/2-飽和NHCl(500mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(EtO、4x125mL)で抽出した。混合した有機層を飽和NHCl(1x125mL)、水(1x125mL)、鹹水(1x125mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をセライト(Celite(登録商標))に吸着させた後、シリカゲルクロマトグラフィー(SiO、勾配溶出10−15−20%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、1.11g(27%)の2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)酢酸メチル5を無色固形物として得た。
【0096】
実施例6

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)酢酸メチル5(1.11g、3.18mmol)、LiOH・HO(700mg、15.9mmol)、THF(10mL)及び水(5ml)の王物を3時間激しく撹拌した。その混合物を1NのHCl(100ml)と酢酸エチル(100ml)の間で分配した。水性層を酢酸エチル(3x50mL)で抽出した。混合した有機層を鹹水(1x125mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、1.09g(98%)の2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)酢酸6をオフホワイトの固形物として得た。
【0097】
実施例7

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)酢酸6(5.45g、16.4mmol)、カルボニルジイミダゾール(CDI、5.28g 32.6mmol)を窒素雰囲気下で混合しTHF(50ml)を添加した。反応物を1時間撹拌した。スルファミド(4.7g、49mmol)を反応物に添加した後、1,8-ジアザバイオシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU、7.3ml、49mmol)を滴下して添加した。ついで、反応物を室温で更に2時間撹拌し、溶媒を真空除去した。残留物を酢酸エチル(約150ml)に取り上げ、2Nの水性HClで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、黄色フォームに濃縮した。ついで、粗生成物を、40%酢酸エチル/60%ヘキサンで溶出させるシリカフラッシュカラムで精製して、2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(4.7g)を得た。
【0098】
実施例8

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(1gm)を4mlのドライエタノールに溶解させ、氷浴で0℃に冷却した。HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中2Nのアンモニアで置き換えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:水:0.1%TFA)によって精製して、精製された2-(4-アセトアミジンフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド8を得た。ラセミ体8を、S-Welkoキラルカラムを使用してその個々のエナンチオマーに分離することができ、pH=5.5で緩衝させたイソプロピルアルコール/水で溶出させた。ついで、個々のエナンチオマーを、0.1%TFAと共に水/アセトニトリルを用いた逆相カラムでもう一度精製した。
【0099】
実施例9

カルボン酸6(1.69gm、5mmol)、カルボニルジイミダゾール(1.6gm、10mmol)を窒素雰囲気下で混合し、THF(17ml)を添加した。反応物を1時間撹拌した。1-メチルイミダゾール-4-スルホンアミド(1.6g、10mmol)を反応物に加えた後、1,8-ジアザバイオシクロ[5.4.0]ウンデク-7エン(DBU、3ml、20mmol)を滴下して添加した。ついで、反応物を室温で更に2時間撹拌し、溶媒を真空除去した。ついで、粗生成物を、40%酢酸エチル/60%ヘキサンで溶出させるシリカフラッシュカラムで精製して、2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルホンアミド2-(1-メチル)イミダゾール9(1.17g)を得た。
【0100】
実施例10

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルホンアミド2-(1-メチル)イミダゾール9(269mg)を4mlのドライエタノールに溶解させ、HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中2Nのアンモニアで置き換えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:水:0.1%TFA)によって精製して、2-(4-アセトアミジンフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルホンアミド2-(1-メチル)イミダゾール23を得た。ラセミ体23を、S-Welkoキラルカラムを使用してその個々のエナンチオマーに分離することができ、pH=5.5で緩衝させたイソプロピルアルコール/水で溶出させた。ついで、個々のエナンチオマーを、0.1%TFAと共に水/アセトニトリルを用いた逆相カラムでもう一度精製した。
【0101】
実施例11

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(1gm)を4mlのドライエタノールに溶解させ、氷浴で0℃に冷却した。HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中O-(4-メトキシベンジル)ヒドロキシルアミン(0.5g)で置き換えた。ジイソプロピルエチルアミン(iPrNEt、5ml)を加えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:0.1%TFA)によって精製して、精製されたO-パラ-メトキシベンジルオキシムアセチルスルファミド生成物26を得た。ラセミ体26を、S-Welkoキラルカラムを使用してその個々のエナンチオマーに分離することができ、pH=5.5で緩衝させたイソプロピルアルコール/水で溶出させた。ついで、個々のエナンチオマーを、0.1%TFAと共に水/アセトニトリルを用いた逆相カラムでもう一度精製した。非晶質固形物としての化合物26はpH2で115μM、pH6.5で98μMの水への溶解度を有していた。
【0102】
実施例12

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(630mg)を4mlのドライエタノールに溶解させ、氷浴で0℃に冷却した。HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中ヒドロキシルアミン(0.526mg)で置き換えた。ジイソプロピルエチルアミン(2.7ml)を加えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:水:0.1%TFA)によって精製して、精製されたオキシムアセチルスルファミド生成物27を得た。
【0103】
実施例13

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(1mg)を4mlのドライエタノールに溶解させ、氷浴で0℃に冷却した。HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中O-アリルヒドロキシルアミン(0.530mg)で置き換えた。ジイソプロピルエチルアミン(2.7ml)を加えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:水:0.1%TFA)によって精製して、精製されたO-アリルオキシムアセチルスルファミド生成物28を得た。ラセミ体28を、S-Welkoキラルカラムを使用してその個々のエナンチオマーに分離することができ、pH=5.5で緩衝させたイソプロピルアルコール/水で溶出させた。ついで、個々のエナンチオマーを、0.1%TFAと共に水/アセトニトリルを用いた逆相カラムでもう一度精製した。
【0104】
実施例14

2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)アセチルスルファミド7(1mg)を4mlのドライエタノールに溶解させ、氷浴で0℃に冷却した。HCl飽和エタノール(30ml)を添加し、反応物を0℃で6時間撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(50ml)中O-(ビス3,5トリフルオロメチルベンジル)ヒドロキシルアミン(1.25mg)で置き換えた。ジイソプロピルエチルアミン(2.1ml)を加えた。反応物を48時間撹拌し、溶媒を真空除去した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル:水:0.1%TFA)によって精製して、精製されたO-(3,5ビス-トリフルオロメチル)ベンジルオキシムアセチルスルファミド生成物29を得た。
【0105】
実施例15

4-ブロモ-2-エチルフェノール(72.79g、362mmol)をアセトン(1.3リットル)に溶解し、炭酸カリウム(100g、724mmol)を添加した。反応物を5分間撹拌した。クロロアセトン(43.2ml、543mmol)とヨウ化ナトリウム(13.6、90mmol)を添加し、撹拌すると反応物がオレンジ色に変わった。その反応物を室温で一晩撹拌し、溶媒を真空除去した。酢酸エチル(2.5l)と水(800ml)を添加した。有機層を分離し、水性Naで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空除去し、粗生成物をシリカゲル(約500g)のプラグに流通させ、ヘキサン中20%の酢酸エチルで溶出した。溶媒を除去して、95gの1-(4-ブロモ-2-エチルフェノキシ)プロパン-2-オン30を得た。
【0106】
実施例16

ポリリン酸(461ml)の撹拌溶液を95℃に加熱し、1-(4-ブロモ-2-エチルフェノキシ)プロパン-2-オン30(93gm)を少しずつ添加した。反応物を1時間撹拌した。反応が完全であることを確認し、内容物を1:1ヘキサン;10%水性水酸化ナトリウム(2リットル)に注いだ。強い発熱が認められた。有機層を分離し1NのNaで2回洗浄した。ついで、有機層を木炭及び無水硫酸マグネシウムと共に30分間撹拌した。反応物をセライトで濾過し、溶媒を真空除去した。粗生成物をシリカゲル(375g)のプラグに流通させ、ヘキサンで溶出した。溶媒を真空除去して、67.58gの5-ブロモ-7-エチル-3-メチルベンゾフラン31を得た。
【0107】
実施例17

5-ブロモ-7-エチル-3-メチルベンゾフラン31(21.25g、89mmol)をドライTHF(470ml)に溶解し、窒素雰囲気下で−78℃まで冷却した。sec-ブチルリチウム(69.8mlの1.4M溶液、98mmol)を、冷却された反応物に滴下して添加した。反応混合物は赤みがかった色に変わった。ジメチルホルムアミド(51.6ml、666mmol)を−78℃で反応物に添加した。反応物を室温まで温め、一晩撹拌した。反応物を800mlの氷/酢酸エチル中に注ぎ、有機層を分離した。水性相を酢酸エチルで洗浄し、混合した有機層を水で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(750gシリカ、ヘキサン中8%の酢酸エチル)によって精製して、7.02gの7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-カルバルデヒド32を得た。
【0108】
実施例18

7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-カルバルデヒド32(2g、10.9mmol)、ドライメタノール(40ml)、及び4-アミノベンゾニトリル(1.42g、12mmol)を混合し、窒素雰囲気下で加熱して還流させた。反応物を2.5時間還流した後、室温まで冷却した。トシルメチルイソニトリル(2.12g、10.0mmol)を9mlのメタノールと共に添加した。反応混合物を0℃まで冷却し、BF3-OEt2を40分かけて滴下して加えた。反応物を2時間撹拌し、水(2ml)を添加し、反応物を少なくとも1時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルと水性クエン酸の間で分配した。有機層を分離し、鹹水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中25%の酢酸エチル)によって精製して、2.19gの2-(4-シアノフェニルアミノ)-2-(7-エチル-3-メチルベンゾフラン-5-イル)酢酸メチルを得た。
【0109】
実施例19
組織因子/第VIIa因子アンタゴニストアッセイ
この手順は本発明のサンプル化合物に対する阻害定数(Ki)を決定するために使用できる。
材料
アッセイバッファー:100mM Hepes pH7.8、140mM NaCl、0.1%PEG-8000、0.02%Tween-80、5mMのCaCl
血液凝固因子:組換えヒト第VIIa因子(NB#25942-16)
コファクター:可溶型組織因子(1-219)
基質:Chromozym-tPA(ベーリンガー・マンハイム、カタログ#1093 037)。HO中20mMで再構成。使用前にCaClを有するアッセイバッファーで4mMに希釈。
サンプル:(CaClを欠く)アッセイバッファーで3%DMSOにサンプルを希釈。
【0110】
手順
1. CaClを有するアッセイバッファー中、2μg/mL(90nM)の組織因子と1.5μg/mL(30nM)の第VIIa因子の溶液を調製。
2. 室温で15分間インキュベート。
3. 各ウェルに50μLのサンプルを添加。
4. 各ウェルに50μLの組織因子/第VIIa因子溶液を添加。
5. 穏やかに撹拌して室温で15分間インキュベート。
6. 各ウェルに50μLの基質を添加。
7. 20−25秒、プレートを撹拌。
8. 室温で全体で5分間10秒ごとに405nMの吸光度をモニター。
9. 10ポイントにわたってVmaxを算定。
【0111】
実施例20
第Xa因子、トロンビン、及び血漿カリクレインのアッセイ
これらの手順は本発明のサンプル化合物に対する阻害定数(Ki)を決定するために使用できる。
材料
アッセイバッファー:100mM Hepes pH7.8、140mM NaCl、0.1%PEG-8000、0.02%Tween-80
血液凝固因子:ヒト第Xa因子、トロンビン、又は血漿カリクレイン(Hematologic Technologies)。アッセイバッファーで0.45μg/mL(9.8nM)まで希釈。
基質:S-2222、S2366又はS2302 −(以下を参照-Chromogenix Inc,)。HO中5mMで再構成。使用前にアッセイバッファーで1.5mMに希釈。
サンプル:アッセイバッファーで3%DMSOにサンプルを希釈。
【0112】
手順
1. 各ウェルに50μLのサンプルを添加。
2. 各ウェルに50μLの適切に希釈した血液凝固因子を添加。
3. 穏やかに撹拌して室温で5分間インキュベート。
4. 各ウェルに50μLの適切に希釈した基質を添加。
5. 20−25秒、プレートを撹拌。
6. 室温で全体で5分間10秒ごとに405nMの吸光度をモニター。
7. 10ポイントにわたってVmaxを算定。
アッセイ−酵素、基質及び最終濃度

【0113】
実施例21
薬物動態学アッセイ
透過性− カコ(Caco)-2又はMDCK細胞を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、及び1%MEM非必須アミノ酸溶液を補填したダルベッコ変法イーグル培地に維持した。細胞を、5%CO2及び95%相対湿度の雰囲気中、37℃で培養した。トリプシン-EDTA溶液を用いて80−90%の集密度で細胞を継代させた。細胞を、ラット尾部のコラーゲンを前もって被覆したポリカーボネートトランスウェル(Transwell)(登録商標)フィルター上に播種した。孔径は0.4μmで1cmの成長面積であり、細胞は16x10細胞/mL又は10x10細胞/mL(それぞれカコ-2又はMDCK)の集密度で播種した。アッセイを始める前に、単層をハンクス平衡塩液(HBSS)ですすいだ。輸送アッセイドナー液はpH5.5、6.5又は7.4のHBSS液200μMであった。必要に応じて、1%DMSO又は1%カプチソール(Captisol)を可溶化剤として添加した。細胞を振盪水浴(35rpm)中でインキュベートした。200μLの試料を0、1.5及び3時間においてレシーバー側から採取した。試料をまた0及び3時間においてドナー側から採取した。細胞層の完全性をルシファーイエローでモニター(<1x10−6cm/秒)した。ルシファーイエロー試料をCytoFluor(登録商標)多ウェルプレートリーダー、シリーズ4000(励起1:485、発光1:530)で分析した。全ての他の試料をRP-HPLC及びPhenomenexC18Lunaの3μm粒子カラム(50x2.0mm)を使用してAgilentの1100HPLCシステムで分析した。移動相はHO中0.1%FA及びアセトニトリル中0.1%TFAであった。
【0114】
クリアランス及び半減期
頸静脈カニューレ処置−動物を、ケタミン/キシラジン/生理食塩水溶液(0.25mL/kgで)を使用するIP注射によって麻酔する。適切な投薬量を決定するために麻酔剤投薬の前に動物の体重を計量する。殺菌した機器及び無菌技術を手術の全体にわたって使用する。これは、マスク、正常なラボコート又はスクラブ及び滅菌手袋を装着することを含む。背側及び腹側の首領域を剃り、ベタディネ及びアルコールで準備する。小さい皮膚の切開を頸静脈に対して行う。ブラント切開法を用いて、周囲の組織から意図された血管を遊離させ、静脈下の二つの縫合に糸を通す。頭蓋の縫合を結び、血管に切れ目を入れ、カテーテルを挿入し、遠位縫合を使用してカテーテルを固定する。カテーテル挿入点と肩胛骨内空間間の皮下経路を解剖する;首の項部に小さな排出孔を開ける。ついで、ヘマスタットを用いて、経路を通して背側首領域までカニューレを引っ張る。カテーテルがなお正しく位置していることを確認し、適切なヘパリン/生理食塩水溶液を流し、カニューレの遠位端を結ぶ。結びの回りに縫合結びを配し、皮膚下でカニューレをコイル化し、背側の解剖部を閉じ、「結び」をカテーテルの外在化の容易化のために僅かに暴露して残す。腹側切開部を閉じる。動物は循環加熱ブランケット又は均等物で回復させ、それ自身で直立できるときにその部屋に戻さなければならない。
【0115】
試験品
化合物を30%(IV)又は60%(PO)のポリエチレングリコール400(PEG)で製剤化する。
用量投与
静脈(IV)投与は側方尾静脈中への大量瞬時投与で達成される。動物は誤投薬を最小化し動物のストレスを低減させるためにラット拘束器を使用して拘束する。個々の用量は投薬の朝に計った体重に基づいて計算する。
経口(PO)投与は3・1/2インチのステンレス鋼動物給餌チューブを使用して経口胃管栄養法によって達成される。動物は動物のストレスを減らすために手でやさしく掴むことによって拘束する。個々の用量は投薬の朝に計った体重に基づいて計算する。
【0116】
血液試料収集
血液(およそ0.2mL)を頸静脈カニューレから収集する。頸静脈カニューレが失敗する場合には、血液は残りの側方尾静脈から除去する。全血を、K2EDTA抗凝固剤を含むマイクロテイナー(Microtainer(登録商標))管中に配した。試料を数回逆さにして抗凝固剤との適切な混合を確保し、遠心分離するまで氷上に保存する。試料を5分間10000xgで遠心分離し、血漿を1.5mLの微量遠心チューブに移す。IV投薬投与のための血液試料は投薬の前(投薬前)及び投薬の後2、5,10、20、30、45、60、120分、4、6、8及び10時間に集める。PO投薬投与に対しては、血液収集時点はIV投薬投与の場合と同じであるが、2分には血液試料を収集しない。
全ての血漿試料はLC/MS/MSによって測定する。薬物動態学的パラメータ、クリアランス(CL)、半減期(t1/2)、曲線下面積(AUC)及び最大濃度(Cmax)をWinNonin(バージョン3.2)を使用して決定する。
【0117】
実施例22
アカゲザルにおけるベンゾフラン化合物の投薬
IVボーラス: 阻害剤を20−30%PEG400/滅菌水の1mg/ml溶液で処方した。薬剤を1mg/kgで1分にわたってIVボーラスとして投与した。1.0mlの血液試料を20μlの8.5%KEDTAに各時点で集めた。IV投薬動物のための血液試料を、投薬後3時間までの全時点で伏在静脈又は頭静脈に配した短く大きな穿孔カテーテル(針<25G)から集めた。ついで、カテーテルを取り除き、動物をそのケージに戻し、後者の試料を静脈穿刺によって集めた。静脈穿刺試料は、容易に圧縮することができる任意の表層静脈(例えば頭部、又は伏在のもので大腿神経叢のものではない)から得ることができる。試料時点は一般に次の時点で採取した:投薬前、2、5、10、20、30、40、60、90、120、150、180分及び4、6、12、24、及び48時間。図1及び2を参照のこと。
【0118】
経口(PO): 阻害剤を20−30%PEG400/滅菌水の1mg/ml溶液で処方した。薬剤を2mg/kgで経鼻胃管によって投与し、管を投薬後に10mlの水でフラッシングした。経口投薬後に全ての血液試料を静脈穿刺によって得た。静脈穿刺試料は、容易に圧縮することができる任意の表層静脈(例えば頭部、又は伏在のもので大腿神経叢のものではない)から得ることができる。試料時点は一般に次の時点で採取した:投薬前、0.5、1、2、3、4、6、8、10、12、24、36及び48時間。図3を参照のこと。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】アカゲザルにおけるIVボ-ラス投与後のベンゾフラン、p-アミノフェニルスルホンアミドVIIa阻害剤及び3,5ビス-エトキシフェニル、p-アミノフェニルスルホンアミドVIIa阻害剤の血漿中濃度のグラフを示す。
【図2】アカゲザルにおけるIVボ-ラス投与後のベンゾフラン、エチルスルホンアミドVIIa阻害剤及び3,5ビス-エトキシフェニル、エチルスルホンアミドVIIa阻害剤の血漿中濃度のグラフを示す。
【図3】2mg/kgで経口投与された化合物8及び26のアカゲザルにおける血漿中濃度のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
XはC=O又は(CR4a4b)で、ここでmは1又は2であり;
YはS(O)-R、S(O)-NR、S(O)-OR、C(O)R、C(S)R、C(O)-OR、又はC(O)-NRで、ここでnが1又は2であり;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシであり;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシ又はアリールアルコキシは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
R'とR"はそれぞれ独立してH、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニルであり;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ及びアルコキシカルボニル基はアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよく;上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
はC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は二つのNR及びNR基は共同して複素環を形成し;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
4aとRは、独立して、H、未置換又は置換アルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択されるメンバーであり;
4bはH、アルキル、又は置換アルキルであり;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R及びOC(O)Rから選択される群から選択され;
とRは独立してH又はC-Cアルキルであり;
はH、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、NR又はSRであり;ここで上記アルキル、アルコキシ、及びアルカノイルはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシ又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
11はH、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、O-C-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環で、nは1又は2である]の化合物と、その酸及び塩基付加塩及びプロドラッグ。
【請求項2】
がH、ハロゲンアルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノであり、ここで上記アルキル及びアルコキシがヒドロキシ、ハロゲン、アルコキシ、アリール及びアリールオキシで置換されていてもよく;R11がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がH、メトキシ、エトキシ、エチル、プロピル、エチニル、Cl、I、プロピン-1-イル又は1-クロロビニルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がエチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R'がH、ハロゲンアルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノであり、上記アルキル及びアルコキシがヒドロキシ、ハロゲン、アルコキシ、アリール及びアリールオキシで置換されていてもよく;R11はHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R'がCl、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチル又はベンゾイルオキシエチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R'がメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R"が、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよいアルキル;アルカノイル、アルコキシカルボニルオキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アシルオキシアルキル又は複素環であり;ここで、上記炭素環又は複素環はハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ又はカルボキシルで置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R"がH、エチル、プロピル、t-ブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1-メトキシ-1-メチルエチル、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル、メトキシメチル、アミノメチル、N-ジメチルアミノメチル、N-アセチルアミノメチル、N-アセチル-N-メチルアミノメチル、アセチルエチル、プロパノイル、アセチル、エチルオキシカルボニルオキシエメチル、アセチルオキシエチル、t-ブチルカルボニルオキシエチル、ベンゾイルオキシエチル、3,5-ジCF-ベンゾイルオキシエチル、トリクロロアセチルオキシエチル、プロパノイルオキシエチル、N-モルホリノ又はイミダゾール-1-イルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R"がHである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
YがS(O)-NRであり、ここで、両方のRがH又はアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
両方のRがHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Xがカルボニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
YがS(O)-Rであり、ここで、nは2;RはC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル並びに炭素原子及び1−2のヘテロ原子(ここで、ヘテロ原子はN、S、又はOである)から選択される5−6の環原子を持つヘテロアリール、並びにハロ、ニトロ、C-Cアルキル、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-OR、C-Cハロアルキル、C-Cアルキル-NR、C(O)OR、OC(O)R、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)R、及びNHC(O)NR(ここで、RとRは独立してH又はC-Cアルキルである)からなる群から選択される1−3の置換基で置換されていてもよいRからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
AとBが共にCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
両方のRがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
次の化合物:



から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
次の化合物:


から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
PrがH、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アリールオキシ又はアリールであり;ここで、上記アルコキシ、アルカノイル、アリールオキ及びアリールはハロゲンで置換されていてもよく;PrはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン活性を阻害する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物に組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレインを接触させることを含んでなる方法。
【請求項21】
組織因子/第VIIa因子、第Xa因子、トロンビン又はカリクレイン媒介疾患を治療する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項22】
血栓症を予防し又は異常な血栓症を治療する方法において、有効量の請求項1に記載の化合物を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項23】
式II:

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
式:

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
式:

を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
が独立してH又はC-Cアルキルであり、R11がHである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
R'、R"、Rが独立してH又はC-Cアルキルであり、PrとPrがHである、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
R'、R"、Rが独立してH又はC-Cアルキルであり;PrがH;Prがヒドロキシ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルカノイル、C-Cアルカノイルオキシ、C-Cアルコキシカルボニル、アリールオキシ、又はアリールアルコキシである、請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
Prがベンジルオキシ(OBn)又は置換ベンジルオキシである、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
式III:

[上式中、
AとBは独立してCH、CR又はNであり;
R'とR"はそれぞれ独立してH、カルボキシル、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルカノイル、C-Cアルカノイルオキシ又はC-Cアルコキシカルボニルであり;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ及びアルコキシカルボニル基はアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、置換又は未置換の炭素環又は複素環で置換されていてもよく;上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよく;
はC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、C(O)R又はC(NH)Rであり、又は二つのNR及びNR基は共同して複素環を形成し;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、ハロゲン又はOHであり;
は、H、未置換又は置換C-Cアルキル、未置換又は置換アルコキシアルキル、未置換又は置換ハロアルキル、未置換又は置換アリール、アルキル-OR、アルキル-NR、アルキル-OC(O)R、アルキル-C(O)OR、アルキル-C(O)R、OC(O)R、C(O)OR、C(O)R並びにアルキル、R又はRが1−3のF、Cl、Br、I、OR、SR、NR、OC(OR)、C(O)OR、C(O)R、C(O)NR、NHC(NH)NH、PO、未置換又は置換インドリル又は未置換又は置換イミダゾリル基で置換されたメンバーからなる群から選択され;
はH、C-Cアルキル、C-Cアルキル-OR、C-Cアルキル-NR、C-Cハロアルキル、ハロ、シアノ、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)R及びOC(O)Rから選択される群から選択され;
とRは独立してH又はC-Cアルキルであり;
はH、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、アルコキシ、アルカノイル、NR又はSRであり;ここで上記アルキル、アルコキシ、及びアルカノイルはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシ又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよく;
11はH、ハロ、ニトロ、シアノ、C-Cアルキル、C-C10アリール、NR、OR、SR、C-Cアルキル-C(O)R、C-Cアルキル-C(O)NR、C-Cアルキル-C(O)OR、C-Cアルキル-OC(O)R、C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)R、OC-Cアルキル-C(O)OR、OC-Cアルキル-OC(O)R、O-C-Cアルキル-OR、OC-Cアルキル-C(O)NR、C-Cハロアルキル、OR12、C-Cアルキル-R12、O-C-Cアルキル-R12、C(O)OR、C(O)OR12、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)R、NRC(O)R12、NRC(O)-NR、NR-(C-Cアルキル)-C(O)-NR、NRC(O)OR、NRC(O)OR12、NRS(O)n-R、NRS(O)n-R及びNRS(O)n-R12からなる群から選択され、ここで、R12は未置換又は置換C-C10アリール又は複素環で、nは1又は2であり;
12はH、Cl、Br、I、CN、C(=NPr)(NHPr)、COOH、C(O)-NR及びCOORから選択され;
PrとPrは独立してH、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニルであり;
上記アルコキシカルボニルは、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、ハロ置換アルキル、アルコキシ、炭素環又は複素環で置換されていてもよく;
上記炭素環及び複素環は1−5のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシル、アルキル、又はハロ置換アルキルで置換されていてもよく;
上記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ又はアルコキシカルボニル鎖の1から3の炭素原子はO、C(O)、NH、S、SO、-OC(O)-、C(O)O-又は-OC(O)NH-に置き換えられてもよい]の化合物と、その酸及び塩基付加塩及びプロドラッグ。
【請求項31】
式:

を有する、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
12がCNである、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
12がC(=NPr)(NHPr)である、請求項31に記載の化合物。
【請求項34】
有効量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な希釈剤、担体又は賦形剤を含有する薬学的組成物。
【請求項35】
単位投薬形態に製剤化された請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
経口投与される請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
非経口投与される請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
請求項34に記載の薬学的組成物と;
容器と;
薬学的組成物が血栓症疾患の治療に使用できることを示すパッケージ挿入物又はラベル
を含んでなる製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500221(P2007−500221A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533269(P2006−533269)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015937
【国際公開番号】WO2004/113316
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】