説明

筆記具用キャップ

【課題】 コイルスプリングで内キャップを吊るすように保持しても、キャップ装着時にコイルスプリングにねじれ応力がかからないねじ嵌合式の筆記具用キャップを提供する。
【解決手段】 筆記具本体に装着したときにコイルスプリング3の弾発力により先端縁が筆記具本体9のペン体93周囲の端面92に密着してペン体を密封する内キャップ2が蓋体内に配置されたねじ嵌合式の筆記具用キャップにおいて、コイルスプリングの一端を内キャップの尾端面に形成された突出部材21に圧入するとともに、コイルスプリングの他端を蓋体の尾端部に固着された継ぎ手に回転可能に取り付けられたスプリング保持部材5に圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用キャップに関し、更にはキャップの蓋体内にペン体を密封す内キャップが配置されたねじ嵌合式の筆記具用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆などの水性インキを使用する筆記具においては、インキの蒸発を防止するために、キャップ装着時にペン体を密封する必要がある。このため、蓋体内に有底筒状の内キャップを配置し、この内キャップがペン体を密封するようにしたものが多いが、キャップ装着時に内キャップ内の容積が減少するものは内キャップ内部が加圧され、加圧空気が筆記具本体内に侵入してインキが噴き出すなどの不具合が生じるので、キャップ装着時に、スプリングで合口側に弾発された内キャップの先端縁が筆記具本体のペン体周囲の端面に密着するようにし、内キャップの内容積をほとんど減少させることなくペン体を密封することが行われる。
【0003】
筆記具本体に対するキャップの嵌合は、筆記具本体の外周面に形成された外向き突起がキャップの蓋体の内周面に形成された内向き突起を乗り越えて嵌合するものが多用されているが、高級な万年筆などにおいては、重厚感などを強調するために、筆記具本体の外周面とキャップ蓋体の内周面に形成されたねじ溝とねじ山が螺合するねじ嵌合が使用されることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓋体内に内キャップを配置したキャップにおいては、キャップを筆記具本体から取り外して合口を下向きにしたときに内キャップが合口から抜け落ちないようにする必要がある。このため、蓋体内面にストッパー段部を設け、内キャップがこのストッパー段に係合するようにすればよいが、合成樹脂で成形される蓋体内に内方突起であるストッパー段を設けるためには、蓋体の内面を成形するための中子型を割り型にする必要があり、金型構造が複雑になる不具合がある。
【0005】
また、内キャップを合口側に弾発するコイルスプリングの一端をキャップに固定するとともにコイルスプリングの他端を内キャップに固定して内キャップをコイルスプリングで吊るすような構造にすると、キャップを筆記具本体から取り外して合口を下向きにしたときに内キャップは抜け落ちることはない。しかし、ねじ嵌合式のキャップにおいては、内キャップの先端縁が筆記具本体のペン体周囲の端面に密着した後も更に少しねじ込むが、このとき、内キャップの先端縁と筆記具本体の端面との摺動抵抗により内キャップも筆記具本体と共に回転する。したがって、内キャップをキャップに吊るすようにして固定しているコイルスプリングにねじれ応力がかかるが、長期間使用していると、この繰り返しかかるねじれ応力によりコイルスプリンのばね力が弱くなり、場合によっては破損してしまうことがある。
【0006】
そこで本発明は、キャップを筆記具本体から取り外して合口を下向きにしたときに内キャップが合口から抜け落ちないために、コイルスプリングで内キャップを吊るすように保持しても、キャップ装着時にコイルスプリングにねじれ応力がかからないねじ嵌合式の筆記具用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明は、筆記具本体に装着したときにコイルスプリングの弾発力により先端縁が筆記具本体のペン体周囲の端面に密着してペン体を密封する内キャップが蓋体内に配置されたねじ嵌合式の筆記具用キャップにおいて、コイルスプリングの一端を内キャップの尾端面に形成された突出部材に固着するとともに、コイルスプリングの他端を、蓋体の尾端部又は蓋体の尾端部に固着された継ぎ手に回転可能に取り付けられたスプリング保持部材に固着する。
【発明の効果】
【0008】
内キャップがコイルスプリングで吊るように保持されているので、キャップを筆記具本体から取り外して合口を下向きにしたときに内キャップが合口から抜け落ちないが、コイルスプリングの端部が固着されたスプリング保持部材が蓋体に固着されたクリップ押え部材に回転可能に取り付けられているので、キャップを装着するときに、ねじ嵌合により内キャップが回転するとコイルスプリングも回転するのでコイルスプリングにねじれ応力がかからず、長期間使用してもコイルスプリングのばね力が弱くなったり、破損したりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面に基づいて発明を実施するための最良の形態を説明する。図面は万年筆に本発明を適用した例を示すが、図1に示すように、筆記具本体9の先端側外周面にねじ山91が形成され、一方、合成樹脂で成形されたキャップの蓋体1の合口側内面にねじ溝11が形成されており、ねじ山91とねじ溝11を螺合することによりキャップを筆記具本体9に装着するねじ嵌合式のキャップである。また、蓋体1内にペン体93を密封するための有底筒状の内キャップ2が配置されている。
なお、蓋体1の内面には、キャップを筆記具本体9から取り外して合口を下向きにしたときに、内キャップ2が脱落するのを防止するためのストッパー段部などは形成されていない。
【0010】
図2において、継ぎ手4は円筒部42の中腹に鍔部41が形成された形状をしており、円筒部42先端のねじ部が蓋体1の尾端部に螺着されている。そして、蓋体1の尾端面と継ぎ手4の鍔部41によりクリップ7の固定部71を挟圧保持している。つまり、継ぎ手4はクリップ押え部材を兼ねているが、クリップ7のないキャップの場合は、継ぎ手4を蓋体1と一体に成形することも可能である。そして、継ぎ手4の円筒部42に尾栓6が嵌着されている。
【0011】
継ぎ手4の円筒部42の尾端には、ボルト部51とナット部52からなるスプリング保持部材5が回転可能に取り付けられている。なお、継ぎ手4を使用しないときは、スプリング保持部材5は蓋体1の尾端部に回転可能に取り付けられる。円筒部42の尾端とスプリング保持部材5の間にはOリング8が介在しており、スプリング保持部材5が勢いよく空回りしないようになっている。内キャップ2の尾端面に棒状の突出部材21が形成されており、コイルスプリング3の一端が突出部材21に圧入されて固着され、コイルスプリング3の他端がスプリング保持部材5のナット部52に圧入されて固着されている。つまり、内キャップ2はコイルスプリング3で吊るされた構造になっており、キャップを筆記具本体9から取り外して合口を下向きにしたときに内キャップ2は抜け落ちることはない。
【0012】
しかして、キャップを装着するために、ねじ山91とねじ溝11を螺合すると、図1に示すように、内キャップ2の先端縁2aがペン体93の周囲の端面92にコイルスプリング3の弾発力により密着してペン体93を密封するが、内キャップ2の先端縁2aがペン体93の周囲の端面92に衝合した後も更に1ターン程度ねじ込む。このとき、内キャップ2の先端2aと筆記具本9の端面92との摺動抵抗により内キャップ2も筆記具本体9と共に回転する。しかし、スプリング保持部材5が回転可能に取り付けられているので、内キャップ2が回転するとコイルスプリング3も回転する。したがって、コイルスプリング3にねじれ応力がかからず、長期間使用してもコイルスプリング3のばね力が弱くなったり、破損したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例の一部を切り欠いた正面図である。
【図2】同じく要部の断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 蓋体
11 ねじ溝
2 内キャップ
21 突出部材
3 コイルスプリング
4 継ぎ手
5 スプリング保持部材
6 尾栓
7 クリップ
8 Oリング
9 筆記具本体
91 ねじ山
92 端面
93 ペン体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具本体に装着したときにコイルスプリングの弾発力により先端縁が筆記具本体のペン体周囲の端面に密着してペン体を密封する内キャップが蓋体内に配置されたねじ嵌合式の筆記具用キャップにおいて、
前記コイルスプリングの一端が内キャップの尾端面に形成された棒状の突出部材に固着されるとともに、コイルスプリングの他端は、蓋体の尾端部又は蓋体の尾端部に固着された継ぎ手に回転可能に取り付けられたスプリング保持部材に固着されたことを特徴とする筆記具用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−289754(P2006−289754A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112937(P2005−112937)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)