説明

筆記具用キャップ

【課題】 合成樹脂で成形するときに尾端面の通気孔の周囲にバリが発生しにくい筆記具用キャップを提供する。
【解決手段】 合成樹脂で成形されたキャップ本体10の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体20が配置され、筆記具本体に装着したときにペン体32の先端部がシール体に埋没してペン体がシールされる筆記具用キャップにおいて、キャップ本体の尾端面に1個の通気孔13を形成するとともに、シール体をスプリングにて合口側に弾発し、筆記具本体から取り外すと、シール体が通気孔から離間して通気可能になるようにする。また、キャップ本体の内部に複数個の縦リ12を形成し、シール体をこの縦リブに沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用キャップに関し、更には乳幼児が誤って飲み込んでも安全な筆記具用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具用キャップの機能の1つは、非使用時に筆記具本体に装着してペン体からのインキの蒸発を防止することであるが、キャップを装着したときに形成される密封空間によりペン体からのインキの蒸発を防止すると、キャップの着脱時に密封空間の容積が変化してポンピング作用が生じ、インキが漏れ出すことがある。このため、ボールペンのような筆記具においては、キャップ本体の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体を配置し、筆記具本体に装着したときにペン体の先端部がこのシール体に埋没してペン体がシールされるようにしたものが多用されている。
【0003】
一方、筆記具用キャップは、大きさが乳幼児用の「おしゃぶり」に似た大きさであり、乳幼児が口に入れる可能性があるが、誤って飲み込んでも窒息しないように、呼吸が可能な通気性を確保する必要があり、いろいろの構造をした飲み込んでも安全なキャップが提案され、また実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誤って飲み込んだ場合の安全性を確保するために、キャップ本体の尾端面に通気孔を形成するのが簡単であるが、前記のキャップ本体の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体を配置したキャップにおいては、尾端面の中央にシール体が存在するので、尾端面の中央に呼吸可能な1個の大きな通気孔を設けることができず、したがって、シール体の周囲に複数個の小さな通気孔を円環状に設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、キャップ本体を合成樹脂で成形するときに、複数個の小さな通気孔を円環状に設けるためには、金型の外型とコア型の接触部分が多くなり、かつ複雑な接触になるので、外型とコア型の接触部分に隙間ができてしまう可能性が大きい。このため、成形された通気孔の周囲にバリが発生しやすい不具合がある。そこで本発明は、合成樹脂で成形するときに通気孔の周囲にバリが発生しにくい筆記具用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、合成樹脂で成形されたキャップ本体の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体が配置され、筆記具本体に装着したときにペン体の先端部が該シール体に埋没してペン体がシールされる筆記具用キャップにおいて、キャップ本体の尾端面に1個の通気孔を形成するとともに、シール体をスプリングにて合口側に弾発し、筆記具本体から取り外すと、シール体が通気孔から離間して通気可能になるようにする。また、キャップ本体の内部に複数個の縦リブを形成し、シール体がこの縦リブに沿って移動するようにするのがよい。
【発明の効果】
【0007】
キャップ本体の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体が配置されたキャップであるにもかかわらず、シール体をスプリングにて合口側に弾発して筆記具本体から取り外したときに移動するようにしたので、キャップ本体の尾端面の中央に、誤って飲み込んだ場合にも呼吸可能な1個の通気孔を形成することができる。このため、合成樹脂で成形するときの金型の外型とコア型の接触構造が単純になり、通気孔の周囲にバリが発生しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施例を示す断面図であり、図2は図1のA−A線における断面図を示すが、図1および図2において、キャップ本体10は合成樹脂にてクリップ11と一体に成形されされたものであり、内周面には複数本の縦リブ12が形成されている。また、尾端面10aの中央には、乳幼児が誤って飲み込んでも呼吸が可能な通気量を確保できる大きさの通気孔13が1個形成されている。軟質弾性体、例えばシリコンゴムからなるシール体20が、縦リブ12の先端縁が描く仮想円に沿って移動可能に配置されている。そして、シール体20はスプリング21にて合口側に弾発されており、キャップを筆記具本体から取り外したときは、シール体20は通気孔13から離間し、先端がストッパー突起14に当接している。
【0009】
筆記具本体30の軸筒を兼ねるインキ収容管31の先端開口に、図3に示すように、ペン体であるボールペンチップ32が嵌着されている。インキ収容管31内には、静的には高い粘性を有し、筆記時のボール33の回転で粘性が低下するゲルインキが収容されており、インキの後端にはインキの減少に伴ってインキに追従するフォロアが設けられている。ボールペンチップ32は、ステンレスにて砲弾型に成形されており、先端のボールハウスに直径が例えば0.5mmの超硬ボール33がその一部が臨出した状態で回転自由に抱持されている。そして、ボールペンチップ32内には質量の小さなスプリング(図示せず)が配置されており、このスプリングがボール33を弾発してボールペンチップ32の内向きの先端縁に圧接している。つまり、ボール33とボールペンチップ32の内向きの先端縁とで弁機構を構成し、不使用時にインキがボールペンチップ32の先端から漏れ出さないようになっている。
【0010】
非使用時には、図3に示すように、筆記具本体30にキャップが装着されるが、このとき、ボールペンチップ32がスプリング21の弾発力に抗してシール体20を押し込んで通気孔13を塞ぐとともに、ボールペンチップ32の先端部がシール体20の埋没してシールされ、インキの蒸発が防止される。
次に、筆記時にキャップを筆記具本30から取り外すと、キャップは図1に示す状態になる。つまり、シール体20が通気孔13から離間するので、キャップ本体10の内部は縦リブ12.12の間の空間および通気孔13を介して外部と連通する。したがって、乳幼児が誤ってキャップを飲み込んでも、縦リブ12.12の間の空間および通気孔13を通して呼吸することが可能であり、安全性が確保される。
【0011】
このように、 キャップ本体10の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール20が配置されているにもかかわらず、シール体20をスプリング21にて合口側に弾発して筆記具本体30から取り外したときに移動するようにしたので、キャップ本体10の尾端面10aの中央に、誤って飲み込んだ場合にも呼吸可能な1個の通気孔13を形成することができる。このため、合成樹脂で通気孔13を成形するための金型の外型とコア型の接触構造が単純になり、外型とコア型の接触部分に隙間がほとんどできない。このため、通気孔13の周囲にバリが発生しにくくなり、バリを除去する後処理も必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】キャップを筆記具本体に装着した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0013】
10 キャップ本体
11 クリップ
12 縦リブ
13 通気孔
14 ストッパー突起
20 シール体
21 スプリング
30 筆記具本体
31 インキ収容管
32 ボールペンチップ
33 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で成形されたキャップ本体の尾端側の奥底部に軟質弾性体からなるシール体が配置され、筆記具本体に装着したときにペン体の先端部が該シール体に埋没してペン体がシールされる筆記具用キャップにおいて、
キャップ本体の尾端面に1個の通気孔が形成されるとともに、該シール体がスプリングにて合口側に弾発されており、筆記具本体から取り外すと、該シール体が該通気孔から離間して通気可能になることを特徴とする筆記具用キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の内部に複数個の縦リブが形成され、該シール体が該縦リブに沿って移動することを特徴とする請求項1記載の筆記具用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−7451(P2006−7451A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184389(P2004−184389)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)